JP2011068235A - 減衰力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 DCブラシ付モータの回転中に発生する火花の発生頻度が抑えられることによりブラシの寿命が向上するように減衰力を制御する減衰力制御装置を提供すること。
【解決手段】 バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動により回転するDCブラシ付モータに流れる発電電流値(実電流値i)が基準電流値i未満であるときに、発電電流のデューティ制御の周期が最小周期Tminに設定される。また、発電電流値(実電流値i)が基準電流値i以上であるときに、減衰力の制御モードに応じてデューティ制御の周期が最小周期Tminまたは中周期Tminに設定される。減衰力が制御されていないときは、デューティ制御の周期は最大周期Tmaxに設定される。
【選択図】 図6

Description

本発明は、車両のショックアブソーバ装置の減衰力を制御する減衰力制御装置に係り、特に、車両のバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転する電気モータにより上記振動に対する減衰力を発生させる電気式ショックアブソーバ装置の減衰力を制御する減衰力制御装置に関する。
車両のバネ上部材(車体側)とバネ下部材(車輪側)との間に設けられ、バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転する電気モータを有する電気式ショックアブソーバ装置が知られている。電気式ショックアブソーバ装置は、電気モータの回転により生じる誘導起電力により電気モータのコイルに発電電流が流れることにより、上記相対振動に対する抵抗力としての減衰力を発生する。この減衰力は発電電流の大きさに比例するので、発電電流をデューティ制御により調整することで減衰力を制御することができる。
特許文献1は、ラックアンドピニオン機構により車輪の上下動を電気モータの回転に変換する変換機構を有する電気式ショックアブソーバ装置を開示している。この電気式ショックアブソーバ装置の減衰力は、車体に対する車輪の上下動位置を検出するストロークセンサの検出信号に基づいてモータ駆動部のブリッジ回路を流れる電流をPWM制御することにより制御される。
特開2009−113624号公報
ところで、電気式ショックアブソーバ装置に用いられる電気モータとしてDCブラシ付モータが用いられることがある。DCブラシ付モータにはブラシと整流子が設けられており、回転中にブラシと整流子との接触および離間が繰り返される。DCブラシ付モータに大電流が流れた場合、ブラシと整流子との間に空中放電による火花が発生する。この火花の発生頻度が多い場合にはブラシの耐久性が悪化する。
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、DCブラシ付モータを有する電気式ショックアブソーバ装置の減衰力を制御する減衰力制御装置であって、DCブラシ付モータの回転中に発生する火花の発生頻度を抑制することによりブラシの耐久性が向上するように減衰力を制御する減衰力制御装置を提供することを目的とする。
本発明の特徴は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に設けられるとともにバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転することにより誘導起電力を発生するDCブラシ付モータを有し、前記誘導起電力により前記DCブラシ付モータに発電電流が流れることにより前記相対振動に対する減衰力を発生する電気式ショックアブソーバ装置に適用され、前記発電電流をデューティ制御することにより前記減衰力を制御する減衰力制御装置において、車両の振動状態に基づいて設定される前記減衰力の制御モードに基づいて前記発電電流の目標値である目標電流値を設定する目標電流値設定手段と、前記DCブラシ付モータに流れる発電電流値が、前記DCブラシ付モータの回転に伴い火花が発生するか否かの閾値の電流値として予め設定された基準電流値未満あるいは前記基準電流値以下であるときに、前記デューティ制御の周期を基準周期に設定し、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きいときに、前記制御モードに応じて前記周期を前記基準周期または前記基準周期よりも長い周期に設定する周期設定手段と、前記目標電流値設定手段により設定された前記目標電流値および前記周期設定手段により設定された前記周期に基づいて前記発電電流をデューティ制御することにより、車両の振動を抑制するように前記減衰力を制御するデューティ制御手段と、を備えた減衰力制御装置とすることにある。
この場合、車両の振動状態に基づいて設定され得る前記減衰力の制御モードは、車両に作用するバネ上共振周波数近傍の振動を抑制するように前記減衰力を制御する乗り心地制御モードと、車両に作用するバネ下共振周波数近傍の振動を抑制するように前記減衰力を制御するバネ下制御モードと、車両に作用するロールを抑制するように前記減衰力を制御する操安性制御モードとを含むものであるのがよい。乗り心地制御モードは、例えばバネ上部材に上下方向に作用する加速度(バネ上加速度)の大きさが予め設定された所定の加速度閾値を越えたときに設定されるとよい。バネ下制御モードは、バネ下部材に上下方向に作用する加速度(バネ下加速度)の大きさが予め設定された所定の加速度閾値を越えたときに設定されるとよい。操安性制御モードは、車両に作用する横加速度が予め設定された所定の加速度閾値を越えたときに設定されるものであると良い。
上記発明によれば、バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転するDCブラシ付モータに流れる発電電流値が基準電流値未満(または以下)であるときに、発電電流のデューティ制御の周期が基準周期に設定される。また、発電電流値が基準電流値以上(または基準電流値よりも大きい)であるときに、減衰力の制御モードに応じてデューティ制御の周期が基準周期または基準周期よりも長い周期に設定される。つまり、発電電流が大きいときに、デューティ制御の周期は、減衰力の制御モードに応じて長くなるように設定される。
DCブラシ付モータにて火花が発生する状況であるとき、つまり発電電流値が基準電流値以上あるいは基準電流値よりも大きいときに、発電電流のデューティ制御が実行された場合、パルス信号がオンであるタイミングに合わせてブラシと整流子との間で火花が発生する。このときデューティ制御の周期が長い場合には、単位時間当たりにおけるパルス信号がオンである箇所が少ないため、火花の発生頻度も少ない。一方、デューティ制御の周期が短い場合には、単位時間当たりにおけるパルス信号がオンである箇所が多いため、火花の発生頻度も多い。つまり、デューティ制御の周期が長いほど火花の発生頻度が少ない。よって、デューティ制御の周期を長く設定することにより、火花の発生頻度が抑えられる。
したがって、本発明によれば、制御モードに応じてデューティ制御の周期が基準周期より長い周期に設定された場合に火花の発生頻度が抑えられる。火花の発生頻度が抑えられる結果、ブラシの耐久性が向上する。
デューティ制御の周期が長い場合、減衰力の制御応答性が悪化するおそれがある。このため本発明によれば、発電電流値が基準電流値以上(または基準電流値よりも大きい)であっても、デューティ制御の周期は設定される減衰力の制御モードに応じて基準周期または基準周期よりも長い周期に設定される。特に、周期設定手段は、発電電流値が基準電流値以上または基準電流値よりも大きく、且つ設定される制御モードが制御応答性の悪化が制御性能に影響を及ぼすような制御モードであるときには、デューティ制御の周期を基準周期に設定し、制御応答性の悪化が制御性能に余り影響を及ぼさないような制御モードであるときには、デューティ制御の周期を基準周期よりも長い周期に設定するとよい。
この場合、前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両に作用するバネ上共振周波数近傍の振動を抑制する乗り心地制御モードであるときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期よりも長い周期に設定するものであるのがよい。乗り心地制御モードによって抑制される振動はバネ上共振周波数近傍(例えば0.1〜3Hz)の周波数を持つ振動であり、振動周波数が小さいので、制御応答性の悪化が制御性能に余り影響を及ぼさない。よって、発電電流値が基準電流値以上あるいは基準電流値よりも大きく、且つ乗り心地制御モード中であるときにデューティ制御の周期を基準周期よりも長い周期に設定することで、減衰力の制御性能をそれほど損なわずにDCブラシ付モータにおける火花の発生頻度を抑制することができる。
また、前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両のロールを抑制する操安性制御モードであり、さらに操舵初期状態ではないときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期よりも長い周期に設定するものであるのがよい。操安性制御モードは車両に作用するロールを抑制するように減衰力を制御する制御モードであり、乗り心地制御モードと同様に抑制すべき振動周波数が小さいので、制御応答性の悪化が制御性能に余り影響を及ぼさない。ただし、操舵初期状態であるとき、つまり、ドライバーが車両を旋回させようとして操舵ハンドルを回動操作した直後の状態であるときは、ドライバーがロールに対して敏感であるので、制御応答性が悪化した場合にドライバーが満足するようなロールの減衰制御ができないおそれがある。逆に、操舵ハンドルの回動操作開始から所定時間経過した後、つまり操舵初期状態ではないときは、ドライバーがロールに対して多少鈍感になっているので、操安性制御の応答性が多少悪化してもドライバーはそれほど不快に感じることはない。よって、発電電流値が基準電流値以上あるいは基準電流値よりも大きく、且つ操安性制御モード中であり、さらに操舵初期状態ではないときに、デューティ制御の周期を基準周期よりも長い周期に設定することで、減衰力の制御性能の悪化をドライバーに感じさせることなくDCブラシ付モータにおける火花の発生頻度を抑制することができる。
また、前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両に作用するバネ下共振周波数近傍の振動を抑制するバネ下制御モードを含むときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期に設定するものであるのがよい。バネ下制御モードによって抑制される振動はバネ下共振周波数近傍(例えば8〜15Hz)の周波数を持つ振動であり、抑制すべき振動周波数が大きいので、制御応答性の悪化が制御性能に影響する。よって、発電電流値が基準電流値以上あるいは基準電流値よりも大きい場合であっても、バネ下制御モード中であるときは、火花の発生頻度の抑制よりも制御性能の悪化の抑制が優先されるように、デューティ制御の周期が基準周期に設定される。
また、前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両のロールを抑制する操安性制御モードを含み、さらに操舵初期状態であるときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期に設定するものであるのがよい。上述のように操安性制御を実行する場合において、操舵初期であるときはドライバーがロールに対して敏感であるので、制御応答性が悪化した場合にドライバーが満足するようなロールの減衰制御ができないおそれがある。よって、電流値が基準電流値以上あるいは基準電流値よりも大きく、且つ、操安性制御モード中であり、さらに操舵初期状態であるときに、デューティ制御の周期を基準周期に設定することで、ロールに対する制御性能の悪化が防止される。
操舵初期状態であるか否かは、例えば、操舵ハンドルの操舵角度が中立位置から変化した時から予め設定した所定の時間に達したか否かにより判断しても良い。上記所定の時間は、予め実験をすることによって設計者が任意に設定できる。また、一連の回動操舵の中で、中立位置から切り込まれている操舵状態を操舵初期状態とみなし、中立位置に切り戻されている操舵状態を操舵初期状態ではないとみなしてもよい。
なお、複数の減衰力の制御モードが同時に設定される場合も起こりうる。例えば乗り心地制御モードとバネ下制御モードが同時に設定されることもある。また、乗り心地制御モードと操安性制御モードが同時に設定されることもある。このような場合において、本発明によれば、設定された制御モードにバネ下制御モードが含まれていれば、他の設定された制御モードにかかわらず、デューティ制御の周期は基準周期に設定される。同様に、設定された制御モードに操安性制御モードが含まれており、且つ操舵初期状態であるならば、他の設定された制御モードにかかわらず、デューティ制御の周期は基準周期に設定される。
また、前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ前記制御モードが設定されていないときに、前記周期を前記基準周期よりも長い周期に設定するものであるのがよい。減衰力の制御が行われていないときにデューティ制御の周期を長く設定することにより、火花の発生頻度を抑えることができる。この場合において、制御モードが設定されていないときに周期設定手段により設定される周期は、制御モードが設定されているときに設定される周期よりも長いものであるとよい。例えば、基準周期が最小周期Tmin、制御モードが乗り心地制御モードであるときに設定される周期が例えばTmid(Tmid>Tmin)とすると、制御モードが設定されていないときに設定される周期はTmax(Tmax>Tmid)であるとよい。このように周期を設定することにより、制御モードが設定されていないときにより火花の発生を抑えることができる。
本実施形態に係るサスペンション装置のシステム構成の概略図である。 サスペンション本体10の概略図である。 外部回路100の回路図である。 サスペンションECUを機能ブロックごとに表した図である。 目標電流設定ルーチンを表すフローチャートである。 周期設定ルーチンを表すフローチャートである。 電流制御ルーチンを表すフローチャートである。 デューティ制御の周期と火花発生期間とを対比したグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る減衰力制御装置を含むサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るサスペンション装置のシステム構成の概略図である。
このサスペンション装置は、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRと車体Bとの間にそれぞれ設けられる4組のサスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRと、各サスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRの減衰力を制御するサスペンションECU50とを備える。サスペンションECU50および後述する外部回路100が本発明の減衰力制御装置である。以下、4組のサスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRおよび車輪WFL,WFR,WRL,WRRについては、特に前後左右を区別する場合を除いて、単にサスペンション本体10および車輪Wと総称する。
図2は、サスペンション本体10の概略図である。図2に示されるように、サスペンション本体10は、並列的に配置されたコイルスプリング20および電気式ショックアブソーバ装置30を備える。コイルスプリング20は、車輪Wに連結されるロアアームLAと車体Bとの間に設けられ、路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車体Bを弾性的に支持する。コイルスプリング20の上部側、つまり車体B側の部材を「バネ上部材」と呼び、コイルスプリング20の下部側、つまり車輪W側の部材を「バネ下部材」と呼ぶ。したがって、コイルスプリング20および電気式ショックアブソーバ装置30は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に設けられていることになる。電気式ショックアブソーバ装置30は、コイルスプリング20の上下振動、すなわちバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に対する減衰力を発生する。
電気式ショックアブソーバ装置30は、同軸状に配置されるアウタシリンダ31およびインナシリンダ32と、インナシリンダ32の内側に設けられるボールネジ機構35と、ボールネジ機構35の動作によりロータ(図示略)が回されることにより誘導起電力を発生する電気モータ40とを備える。本実施形態においては、電気モータ40はDCブラシ付モータである。
アウタシリンダ31は有底円筒状に形成され、底面部分にてロアアームLAに接続される。インナシリンダ32はアウタシリンダ31の内周側に配置される。インナシリンダ32は、アウタシリンダ31内にて軸方向に移動可能となるように、アウタシリンダ31の内周側に取り付けられた軸受33,34により支持される。
ボールネジ機構35は、電気モータ40のロータと一体的に回転するボールネジ36と、ボールネジ36に形成された雄ネジ部分37に螺合する雌ネジ部分38を有するボールネジナット39とを備える。ボールネジナット39は、図示しない周り止めによりその回転運動が規制されている。したがって、ボールネジナット39がボールネジ36の軸方向に沿って直線運動した場合、その直線運動がボールネジ36の回転運動に変換される。逆に、ボールネジ36が回転運動した場合、その回転運動がボールネジナット39の直線運動に変換される。
ボールネジナット39の下端は、アウタシリンダ31の底面から立設されたナット支持筒31aに固着される。ボールネジナット39およびアウタシリンダ31は、ロアアームLAを介して車輪側、つまりバネ下部材側に連結される。
インナシリンダ32の上端は取付プレート41に固定される。取付プレート41は、電気モータ40を収容するモータケーシング42の下部に固定される。また取付プレート41の中央には貫通孔43が形成されており、この貫通孔43にボールネジ36が挿通される。ボールネジ36は、モータケーシング42内にて電気モータ40のロータに連結されるとともに、インナシリンダ32内に配設された軸受44により回転可能に支持される。
電気モータ40には取付ブラケット46が連結される。取付ブラケット46の上面には、車体Bに連結された弾性材料からなるアッパーサポート26が取り付けられる。電気モータ40、電気モータ40のロータに連結されたボールネジ36、取付プレート41およびモータケーシング42を介して電気モータ40に連結されたインナシリンダ32は、アッパーサポート26を介して車体B側、つまりバネ上部材側に連結される。コイルスプリング20は、アウタシリンダ31の外周面に設けられた環状のリテーナ45と取付ブラケット46との間に介装される。
このような構成の電気式ショックアブソーバ装置30において、車両の走行中に車輪W(バネ下部材側)が車体B(バネ上部材側)に対して上下動、つまり相対振動したときは、バネ上部材側に取り付けられたインナシリンダ32に対してバネ下部材側に取り付けられたアウタシリンダ31が軸方向に相対移動する。アウタシリンダ31の軸方向相対移動によりコイルスプリング20が伸縮する。コイルスプリング20の伸縮により、路面からバネ上部材が受ける衝撃が吸収されて乗り心地が高められる。また、上記相対振動により、バネ上部材側に取り付けられたボールネジ36に対してバネ下部材側に取り付けられたボールネジナット39がボールネジ36の軸方向に沿って相対移動する。ボールネジナット39の軸方向相対移動によりボールネジ36が回転する。ボールネジ36の回転により電気モータ40のロータも回転する。このように、電気モータ40は、バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転する。
電気モータ40が回転した場合、電気モータ40のロータに設けられた電磁コイル(図示略)は、ステータに設けられた永久磁石(図示略)から発生する磁束を横切ることによって誘導起電力を発生する。誘導起電力により、後述する外部回路100を介して発電電流が電気モータ40の電磁コイルに流れる。この発電電流により、電気モータ40のロータは、その回転を停止する方向に作用する抵抗力を受ける。斯かる抵抗力が電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力として作用し、減衰力によって上記相対振動が減衰される。
図1に示されるように、サスペンションECU50は車体Bに搭載されている。サスペンションECU50には、バネ上加速度センサ61,バネ下加速度センサ62,ストロークセンサ63および横加速度センサ64が接続される。バネ上加速度センサ61は、バネ上部材のうち各サスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRが取り付けられている部分の近傍位置に配置されており、その位置におけるバネ上部材の上下方向に沿った加速度(バネ上加速度)Gを検出する。バネ下加速度センサ62は、各サスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRに連結したバネ下部材(例えばロアアーム)に配置されており、その位置におけるバネ下部材の上下方向に沿った加速度(バネ下加速度)Gを検出する。バネ上加速度センサ61およびバネ下加速度センサ62は、上方向に向かう加速度を正の加速度として検出し、下方向に向かう加速度を負の加速度として検出する。ストロークセンサ63は各電気式ショックアブソーバ装置30の近傍に配置されており、各電気式ショックアブソーバ装置30のストローク変位量、すなわちインナシリンダ32に対するアウタシリンダ31の相対移動量を検出する。このストローク変位量は、バネ上部材とバネ下部材との間の上下方向に沿った相対変位量(バネ上−バネ下間相対変位量)Xに等しい。横加速度センサ64はバネ上部材側に取り付けられており、例えば車両の旋回時に車両に作用する横加速度Gを検出する。
また、サスペンションECU50には、各電気式ショックアブソーバ装置30毎に設けられた外部回路100に電気的に接続される。各電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力は外部回路100を介してサスペンションECU50により制御される。各外部回路100は、車載バッテリなどの蓄電装置110に電気的に接続される。
サスペンションECU50はマイクロコンピュータを主要部として備える。そして、外部回路100のスイッチング制御により電気モータ40に流れる電流量を調整して、電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力を制御する。各外部回路100のスイッチング制御は各々独立に行われる。
図3は、外部回路100の回路図である。図中において、Rmは電気モータ40の内部抵抗、Lはモータインダクタンスを表す。これらは図において電気モータ40の表示記号の外に表されている。外部回路100は、バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動により電気モータ40がボールネジ機構35を介して回されたとき、電気モータ40で発生した誘導起電力により電気モータ40の端子間(第1端子t1と第2端子t2との間)に発電電流が流れることを許容する回路である。また、外部回路100は、電気モータ40の誘導起電力(誘起電圧)が大きいときには、発電電流の一部を蓄電装置110に流して蓄電装置110を充電する回路でもある。
外部回路100は、電気モータ40の第1端子t1に電気的に接続された配線L1と、電気モータ40の第2端子t2に電気的に接続された配線L2と、配線L1上のa点と配線L2上のb点とを結ぶ配線abと、配線L1上のc点と配線L2上のd点とを結ぶ配線cdとを備える。
配線abには第1ダイオードD1および第2ダイオードD2が設けられる。第1ダイオードD1はb点と配線abの中間点であるe点との間に、第2ダイオードはa点とe点との間に設けられる。第1ダイオードD1は、e点からb点に向かう方向に流れる電流を許容しb点からe点に向かう方向に流れる電流を阻止する。第2ダイオードD2は、e点からa点に向かう方向に流れる電流を許容しa点からe点に向かう方向に流れる電流を阻止する。
配線cdには、c点側から順に、第1スイッチング素子SW1,第1抵抗器R1,第2抵抗器R2,第2スイッチング素子SW2が設けられる。第1抵抗器R1,第2抵抗器R2は減衰力を設定する固定抵抗器である。また、第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2として、本実施形態においてはMOS−FETが用いられるが、他のスイッチング素子を使用することもできる。第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2は、それぞれのゲートがサスペンションECU50に接続され、サスペンションECU50からのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号により設定されるデューティ比および周期にしたがってオンオフ作動する。なお、本明細書におけるデューティ比とは、オンディーティ比、つまり、パルス信号のオン時間とオフ時間とを足し合わせた時間に対するパルス信号のオン時間の比を表す。
配線abと配線cdは、配線ab上のe点と配線cd上のf点とを結ぶ配線efにより接続される。f点は、配線cdのうち第1抵抗器R1が取り付けられている位置と第2抵抗器R2が取り付けられている位置との間に位置する。したがって配線cf上には第1スイッチング素子SW1と第1抵抗器R1が、配線df上には第2スイッチング素子SW2と第2抵抗器R2が取り付けられていることになる。配線efには電流センサ111が設けられる。電流センサ111は、電気モータ40に流れる電流(発電電流)を検出して、通電方向を示す情報を含めた測定値(実電流値)iを表す検出信号をサスペンションECU50に出力する。
配線cfのうち第1スイッチング素子SW1が取り付けられている位置と第1抵抗器R1が取り付けられている位置との間のg点からは、配線giが分岐している。この配線giは、車載電源バッテリとして設けられた蓄電装置110への充電路である。また、配線dfのうち第2スイッチング素子SW2が取り付けられている位置と第2抵抗器R2が取り付けられている位置との間のh点からは、配線hiが分岐している。この配線hiも配線giと同様に、蓄電装置110への充電路である。配線giと配線hiはi点にて合流する。i点は、蓄電装置110の正極jと配線ijにより電気的に接続される。配線ijが主充電路である。また、f点と蓄電装置110の負極kはグランドラインkfにより接続される。なお、蓄電装置110には車両内に設けられた各種の電気負荷が接続される。
配線giには、g点からi点に向かう方向に流れる電流を許容しi点からg点に向かう方向に流れる電流を阻止する第3ダイオードD3が設けられる。配線hiには、h点からi点に向かう方向に流れる電流を許容しi点からh点に向かう方向に流れる電流を阻止する第4ダイオードD4が設けられる。これらのダイオードD3,D4により、外部回路100から蓄電装置110への充電が許容され、蓄電装置110から外部回路100への放電が阻止される。
次に、外部回路100の動作について説明する。バネ上部材とバネ下部材との間の相対振動によりボールネジ機構35を介して電気モータ40のロータが回されたとき、電気モータ40はロータの回転方向に応じた向きに誘導起電力を発生する。例えば、バネ下部材とバネ上部材が接近して電気式ショックアブソーバ装置30が圧縮される圧縮動作時に、電気モータ40の第1端子t1が高電位となり第2端子t2が低電位となる。逆に、バネ下部材とバネ上部材が離れて電気式ショックアブソーバ装置30が伸ばされる伸張動作時に、電気モータ40の第2端子t2が高電位となり第1端子t1が低電位となる。
したがって、圧縮動作時には、c点,f点,e点,b点を通って第1端子t1から第2端子t2に発電電流が流れる第1接続回路cfebが形成される。また伸張動作時には、d点,f点,e点,a点を通って第2端子t2から第1端子t1に発電電流が流れる第2接続回路dfeaが形成される。つまり、電気式ショックアブソーバ装置30の圧縮動作と伸張動作とで発電電流の流れる回路が異なる。この例では、配線cfに設けられた第1抵抗器R1が第1接続回路cfebを流れる発電電流に対する抵抗であり、配線dfに設けられた第2抵抗器R2が第2接続回路dfeaを流れる発電電流に対する抵抗である。また、配線cf上に設けられた第1スイッチング素子SW1が第1接続回路cfebに流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器であり、配線df上に設けられた第2スイッチング素子SW2が第2接続回路dfeaに流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器である。
第1接続回路cfebまたは第2接続回路dfeaを通って発電電流が電気モータ40に流れることにより、電気モータ40に発電ブレーキが作用する。この発電ブレーキによりボールネジ36の回転が抑制される。つまりバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動を減衰する減衰力が発生する。電気式ショックアブソーバ装置30の圧縮動作に対する減衰力は、第1抵抗器R1の抵抗値と第1スイッチング素子SW1のデューティ比によって第1接続回路cfebを通って電気モータ40に流れる発電電流の大きさを調整することにより制御される。一方、伸張動作に対する減衰力は、第2抵抗器R2の抵抗値と第2スイッチング素子SW2のデューティ比によって第2接続回路dfeaを通って電気モータ40に流れる発電電流の大きさを調整することにより制御される。なお、各電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力の制御は、各外部回路100のスイッチング制御を行うことにより各々独立して行われる。
電気モータ40で発生する誘導起電力は、モータ回転速度が大きいほど大きい。そして、誘導起電力(誘起電圧)が蓄電装置110の出力電圧(蓄電電圧)を越えると、電気モータ40で発電された電力の一部が蓄電装置110に回生される。例えば、電気式ショックアブソーバ装置30の圧縮動作時に第1接続回路cfebを流れる発電電流が配線cf上のg点で2方向に分流し、一方はそのまま第1接続回路cfebを流れ、他方は配線giを流れる。そして、配線giを流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。また、電気式ショックアブソーバ装置30の伸張動作時に第2接続回路dfeaを流れる発電電流が配線df上のh点で2方向に分流し、一方はそのまま第2接続回路dfeaを流れ、他方は配線hiを流れる。そして、配線hiを流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。
次に、サスペンションECU50による電気式ショックアブソーバ装置30の制御内容について説明する。図4は、サスペンションECU50を機能ブロックごとに表した図である。図に示されるように、サスペンションECU50は、目標電流設定部51と、周期設定部52と、電流制御部53とを備える。目標電流設定部51は、電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力の制御モードを設定するとともに、設定された制御モードに基づいて発電電流の目標値である最終目標電流値i*を設定する。周期設定部52は、電気モータ40に流れる発電電流値(実電流値i)および設定された制御モードに基づいて、第1スイッチング素子SW1または第2スイッチング素子SW2のスイッチング周期(デューティ制御の周期)Tを設定する。電流制御部53は、最終目標電流値i*および周期Tを入力し、入力したこれらの値に基づいて発電電流をデューティ制御する。
図5は、サスペンションECU50の目標電流設定部51が実行する目標電流設定ルーチンを表すフローチャート、図6は周期設定部52が実行する周期設定ルーチンを表すフローチャート、図7は電流制御部53が実行する電流制御ルーチンを表すフローチャートである。各ルーチンはイグニッションスイッチがオンされてからオフされるまで所定の短い周期(演算周期)で繰り返し実行される。また、各ルーチンは、各電気式ショックアブソーバ装置30ごとに独立して実行される。
目標電流設定ルーチンが起動すると、目標電流設定部51は、まず図5のステップ101(以下、ステップ番号をSと略記する)にて、バネ上加速度G,バネ下加速度G,横加速度Gおよびバネ上−バネ下間相対変位量Xを読み込む。次いで、S102にて、バネ上加速度Gの大きさ|G|が、予め設定された加速度の大きさである基準バネ上加速度値GB0よりも大きいか否かを判定する。基準バネ上加速度値GB0は、バネ上部材の振動を抑制した方が良いか否かの閾値としての加速度であり、例えば10(m/s)程度に設定される。
S102にてバネ上加速度Gの大きさ|G|が基準バネ上加速度値GB0よりも大きいと判定したときは、目標電流設定部51はS103に進み、乗り心地制御フラグFLGを1に設定する。一方、S102にてバネ上加速度Gの大きさ|G|が基準バネ上加速度値GB0よりも大きくないと判定したときはS104に進み、乗り心地制御フラグFLGを0に設定する。この乗り心地制御フラグFLGは、減衰力の制御モードが乗り心地制御モードに設定されているか否かを表すフラグであり、1に設定されているときは制御モードが乗り心地制御モードに設定されていることを表し、0に設定されているときは制御モードが乗り心地制御モードに設定されていないことを表す。なお、制御モードが乗り心地制御モードに設定されている場合、バネ上共振周波数近傍(例えば0.1Hz〜3Hz)の振動が抑制されるように電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力が制御される。これにより乗り心地性が向上する。
S104にて乗り心地制御フラグFLGが0に設定された場合、つまり減衰力の制御モードが乗り心地制御モードに設定されていない場合、目標電流設定部51はS108に進む。一方、S103にて乗り心地制御フラグFLGが1に設定された場合、つまり減衰力の制御モードが乗り心地制御モードに設定されている場合、目標電流設定部51はS105に進み、乗り心地制御用目標減衰係数C*を演算する。乗り心地制御用目標減衰係数C*は、バネ上共振周波数近傍(例えば0.1Hz〜3Hz)の振動が効果的に抑制されるような減衰力の係数である。この乗り心地制御用目標減衰係数C*は、例えばスカイフック制御則に基づいて求めることができる。この場合、乗り心地制御用目標減衰係数C*は以下の式から計算することができる。
*=C(V/V
上記式において、Cは予め設定されているスカイフック減衰係数、Vは、例えばバネ上加速度Gを積分することにより求められるバネ上部材の上下方向に沿った速度(バネ上速度)、Vは、例えばバネ上−バネ下間相対変位量Xを微分することにより求められる、バネ上部材に対するバネ下部材の上下方向に沿った相対速度(バネ上−バネ下間相対速度)である。ただし、上記式は、バネ上速度Vとバネ上−バネ下間相対速度Vとの積が正であるときに用いられる。上記積が負であるときは、乗り心地制御用目標減衰係数C*は電気式ショックアブソーバ装置30が発生し得る最小の減衰係数Cmin(例えば0)に設定される。なお、バネ上−バネ下間相対速度Vの正負に関し、バネ上部材とバネ下部材が離間する方向に向かう速度、すなわち電気式ショックアブソーバ装置30の伸び速度が正の速度であり、バネ上部材とバネ下部材が接近する方向に向かう速度、すなわち電気式ショックアブソーバ装置30の縮み速度が負の速度である。
S105にて乗り心地制御用目標減衰係数C*を演算した後は、目標電流設定部51はS106に進み、乗り心地制御用目標減衰係数C*にバネ上−バネ下間相対速度Vを乗じることにより乗り心地制御用目標減衰力F*を演算する。続いて、S107にて、乗り心地制御用目標電流値i*を演算する。乗り心地制御用目標電流値i*は、電気式ショックアブソーバ装置30が乗り心地制御用目標減衰力F*を発生するために必要な発電電流の目標値であり、乗り心地制御用目標減衰力F*を電気モータ40のトルク定数で除算することにより求められる。なお、乗り心地制御用目標電流値i*や、後述するバネ下制御用目標電流値i*,操安性制御用目標電流値i*は、電気式ショックアブソーバ装置30の伸縮動作に抵抗を与えるように電気モータ40に流れる発電電流の目標値であるから、その通電方向は電気式ショックアブソーバ装置30の動作方向に応じて異なる。つまり、電気式ショックアブソーバ装置30の圧縮動作時であれば、発電電流は電気モータ40の第1端子t1から外部回路100の第1接続回路cfebを通って第2端子t2に流れ、伸縮動作時であれば、発電電流は第2端子t2から外部回路100の第2接続回路dfeaを通って第1端子に流れる。S107にて乗り心地制御用目標電流値i*を演算した後は、目標電流設定部51はS108に進む。
S108にて、目標電流設定部51は、バネ下加速度Gの大きさ|G|が、予め設定された基準バネ下加速度値GW0よりも大きいか否かを判定する。基準バネ下加速度値GW0は、バネ下部材の振動を抑制した方が良いか否かの閾値としての加速度であり、例えば1(m/s)程度に設定される。
S108にてバネ下加速度Gの大きさ|G|が基準バネ下加速度値GW0よりも大きいと判定したときは、目標電流設定部51はS109に進み、バネ下制御フラフFLGを1に設定する。一方、S108にてバネ下加速度Gの大きさ|G|が基準バネ下加速度値GW0よりも大きくないと判定したときはS110に進み、バネ下制御フラグFLGを0に設定する。このバネ下制御フラグFLGは、減衰力の制御モードがバネ下制御モードに設定されているか否かを表すフラグであり、1に設定されているときは制御モードがバネ下制御モードに設定されていることを表し、0に設定されているときは制御モードがバネ下制御モードに設定されていないことを表す。なお、制御モードがバネ下制御モードに設定された場合、バネ下共振周波数近傍(例えば8Hz〜15Hz)の振動が抑制されるように電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力が制御される。これにより車輪の接地性が向上する。
S110にてバネ下制御フラグFLGが0に設定された場合、つまり減衰力の制御モードがバネ下制御モードに設定されていない場合、目標電流設定部51はS114に進む。一方、S109にてバネ下制御フラグFLGが1に設定された場合、つまり減衰力の制御モードがバネ下制御モードに設定されている場合、目標電流設定部51はS111に進み、バネ下制御用目標減衰係数C*を演算する。バネ下制御用目標減衰係数C*は、バネ下共振周波数近傍(例えば8Hz〜15Hz)の振動が効果的に抑制されるような減衰力の係数である。このバネ下制御用目標減衰係数C*は、例えばグランドフック制御則に基づいて求めることができる。この場合、バネ下制御用目標減衰係数C*は以下の式から計算することができる。
*=C(V/V
上記式において、Cは予め設定されているグランドフック減衰係数、Vは、例えばバネ下加速度Gを積分することにより求められるバネ下部材の上下方向に沿った速度(バネ下速度)である。ただし、上記式は、バネ下速度Vとバネ上−バネ下間相対速度Vとの積が正であるときに用いられる。上記積が負であるときは、バネ下制御用目標減衰係数C*は電気式ショックアブソーバ装置30が発生し得る最小の減衰係数Cmin(例えば0)に設定される。
S111にてバネ下制御用目標減衰係数C*を演算した後は、目標電流設定部51はS112に進み、バネ下制御用目標減衰係数C*にバネ上−バネ下間相対速度Vを乗じることによりバネ下制御用目標減衰力F*を演算する。続いて、S113にて、バネ下制御用目標電流値i*を演算する。バネ下制御用目標電流値i*は、電気式ショックアブソーバ装置30がバネ下制御用目標減衰力F*を発生するために必要な発電電流の目標値であり、バネ下制御用目標減衰力F*を電気モータ40のトルク定数で除算することにより求められる。その後、目標電流設定部51はS114に進む。
S114にて、目標電流設定部51は、横加速度Gの大きさ|G|が予め設定された基準横加速度値GY0よりも大きいか否かを判定する。基準横加速度値GY0は、車両に作用するロール方向の振動を抑制した方が良いか否かの閾値としての加速度であり、例えば10(m/s)程度に設定される。
S114にて横加速度Gの大きさ|G|が基準横加速度値GY0よりも大きいと判定したときは、目標電流設定部51はS115に進み、操安性制御フラフFLGを1に設定する。一方、S114にて横加速度Gの大きさ|G|が基準横加速度値GY0よりも大きくないと判定したときはS116に進み、操安性制御フラグFLGを0に設定する。この操安性制御フラグFLGは、減衰力の制御モードが操安性制御モードに設定されているか否かを表すフラグであり、1に設定されているときは制御モードが操安性制御モードに設定されていることを表し、0に設定されているときは制御モードが操安性制御モードに設定されていないことを表す。なお、制御モードが操安性制御モードに設定された場合、車両のロール振動が抑制される。これにより操舵に基づくバネ上部材の挙動の安定性が向上する。
S116にて操安性制御フラグFLGが0に設定された場合、つまり減衰力の制御モードが操安性制御モードに設定されていない場合、目標電流設定部51はS119に進む。一方、S115にて操安性制御フラグFLGが1に設定された場合、つまり減衰力の制御モードが操安性制御モードに設定されている場合、目標電流設定部51はS117に進み、操安性制御用目標減衰力F*を演算する。操安性制御用目標減衰力F*は、予め設定されている制御ゲインKに横加速度Gを乗じることにより求められる。この場合、右側の車輪に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインと左側の車輪に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインは異なる。例えば左車輪(左前輪および左後輪)側に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインをKとした場合、右車輪(右前輪および右後輪)側に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインは−Kである。あるいは、例えば車両が左旋回したときに発生する横加速度に対し、右車輪側に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインKRが、左車輪側に連結された電気式ショックアブソーバ装置30についての制御ゲインKLよりも大きくなるように設定される。つまり、車両のロールが抑制されるように、右車輪側のゲインと左車輪側のゲインが設定される。
S117にて操安性制御用目標減衰力F*を演算した後は、目標電流設定部51はS118に進んで操安性制御用目標電流値i*を演算する。操安性制御用目標電流値i*は、電気式ショックアブソーバ装置30が操安性制御用目標減衰力F*を発生するために必要な発電電流の目標値であり、操安性制御用目標減衰力F*を電気モータ40のトルク定数で除算することにより求められる。その後、目標電流設定部51はS119に進む。
S119にて、目標電流設定部51は、乗り心地制御フラグFLG,バネ下制御フラグFLG,操安性制御フラグFLGのいずれか1つが1に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合、つまり制御モードが乗り心地制御モード、バネ下制御モード、操安性制御モードの少なくともいずれか一つの制御モードに設定されている場合は、目標電流設定部51はS120に進む。そして、演算された各目標電流値i*,i*,i*のうち最も大きい電流値を選択し、選択した電流値を最終目標電流値i*に設定する。一方、S119の判定結果がNoである場合、つまり制御モードが乗り心地制御モード、バネ下制御モード、操安性制御モードのいずれにも設定されていない場合はS121に進み、予め決められているデフォルトの電流値idefを最終目標電流値i*に設定する。なお、電流値idefは、電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力が上記の制御(乗り心地制御、バネ下制御、操安性制御)以外の制御に基づいて制御される場合には、その制御に基づいて設定されるものでもよい。S120またはS121にて最終目標電流値i*を設定した後は、S122にて最終目標電流値i*を出力する。その後このプログラムを一旦終了する。このような目標電流設定ルーチンを所定の短時間ごとに繰り返し実行することにより、目標電流設定部51は最終目標電流値i*を逐次演算し、出力する。この目標電流設定部51にて行われる処理(目標電流設定ルーチン)が、本発明の目標電流値設定手段に相当する。
なお、上述の処理からわかるように、複数の制御モードが設定された場合(つまり複数の制御フラグが1に設定されている場合)、各制御モードに基づいて演算された目標電流値のうちの最大の目標電流値が最終目標電流値i*として選択される。この場合において、各制御モードに基づいて演算される目標電流値は、その制御モードが対象とする振動の減衰度合いによって逐次変化するので、最終目標電流値i*として選択される目標電流値も各制御モードが対象とする振動の減衰度合いによって逐次変化するものと考えられる。したがって、複数の制御モードに基づいて演算された目標電流値の中から最大の電流値が最終目標電流値i*に設定されている場合であっても、複数の制御が実行されているとみなすことができる。
次に、周期設定部52が実行する周期設定ルーチンについて説明する。この周期設定ルーチンでは、外部回路100を通って電気モータ40に流れる発電電流をデューティ制御する際における、デューティ制御の周期(スイッチング周期)Tが設定される。本実施形態においては、最小周期Tmin,中周期Tmidおよび最大周期Tmaxのいずれかの周期がスイッチング周期Tに設定される。最小周期Tminは最も短い周期、最大周期Tmaxは最も長い周期、中周期Tmidは最小周期Tminよりも長く最大周期Tmaxよりも短い周期である。例えば、中周期Tmidは最小周期Tminの2倍の周期2Tminに、最大周期Tmaxは最小周期Tminの3倍の周期3Tmaxに設定することができる。また、最小周期Tminは例えば20msec.程度に設定することができる。最小周期Tminが本発明の基準周期に相当し、中周期Tmidおよび最大周期Tmaxが本発明の基準周期よりも長い周期に相当する。
図6に示されるように、周期設定ルーチンが起動すると、まず周期設定部52はS201にて、電流センサ111から検出された実電流値iを読み込む。次いで、S202にて、実電流値iが基準電流値iよりも大きいか否かを判定する。基準電流値iは、電気モータ40のブラシと整流子との間で空中放電により火花が発生するか否かの閾値としての電流値であり、モータの仕様にもよるが、例えば20Aに予め設定される。実電流値iが基準電流値iよりも大きければ、電気モータ40の回転中に火花が発生すると考えられ、実電流値iが基準電流値i以下であれば、火花が発生しないと考えられる。
S202の判定結果がNoである場合、つまり実電流値iが基準電流値i以下である場合は、S207に進む。そして、S207にてスイッチング周期Tを最小周期Tminに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。このような処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40の回転中に火花が発生しない程度の小さい電流値である場合には、スイッチング周期Tは基準周期である最小周期Tminに設定される。
一方、S202の判定結果がYesである場合、つまり実電流値iが基準電流値iよりも大きい場合には、周期設定部52はS203に進む。そして、減衰力の制御モードがバネ下制御モードに設定されているか否か、つまり現在バネ下制御中であるか否かを判定する。この判定は、バネ下制御フラグFLGが1に設定されているか否かに基づいて行うことができる。現在の制御モードがバネ下制御モードに設定されている場合(S203:Yes)は、周期設定部52はS207に進み、スイッチング周期Tを最小周期Tminに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。この処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40の回転中に火花が発生する程度の大きな電流値であっても、制御モードがバネ下制御モードに設定されている場合には、スイッチング周期Tは基準周期である最小周期Tminに設定される。
S203にて減衰力の制御モードがバネ下制御モードに設定されていないと判定した場合(S203:No)は、周期設定部52はS204に進む。S204にて、減衰力の制御モードが操安性制御モードに設定されているか否か、つまり現在操安性制御中であるか否かを判定する。この判定は、操安性制御フラグFLGが1に設定されているか否かに基づいて行うことができる。制御モードが操安性制御モードに設定されている場合(S204:Yes)は、周期設定部52はS205に進み、操舵初期状態であるか否かを判定する。操舵初期状態とは、ドライバーが車両を旋回させるために操舵ハンドルを回動操作した直後から一定の期間であって、一連の回動操舵の初期段階と認められる状態をいう。操舵初期状態であるか否かは、例えば操舵ハンドルが中立位置から変化したときに、その変化開始から予め設定された所定時間が経過したか否か、あるいはその変化開始から予め設定された操舵角度だけ操舵されたか否か、により判断することができる。また、一連の回動操舵の中で、中立位置から切り込まれている操舵状態を操舵初期状態とみなし、中立位置に切り戻されている操舵状態を操舵初期状態ではないとみなしてもよい。
S205にて車両が操舵初期状態であると判定した場合(S205:Yes)はS207に進み、スイッチング周期Tを最小周期Tminに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。この処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40の回転中に火花が発生する程度の大きな電流値であっても、操安性制御中であり、且つ操舵初期状態である場合には、スイッチング周期Tが基準周期である最小周期Tminに設定される。
一方、S205の判定結果がNoである場合、つまり操舵初期状態ではない場合はS208に進む。そして、S208にて、スイッチング周期Tを中周期Tmidに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。この処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40の回転中に火花が発生する程度の大きな電流値であり、且つ操安性制御中であり、さらに操舵初期状態でない場合には、スイッチング周期Tが基準周期である最小周期Tminよりも長い中周期Tmidに設定される。
またS204にて、減衰力の制御モードが操安性制御モードに設定されていないと判定した場合(S204:No)は、周期設定部52はS206に進む。そして、S206にて、減衰力の制御モードが乗り心地制御モードに設定されているか否か、つまり現在乗り心地制御中であるか否かを判定する。この判定は、乗り心地制御フラグFLGが1に設定されているか否かに基づいて行うことができる。現在の制御モードが乗り心地制御モードに設定されている場合(S206:Yes)はS208に進み、スイッチング周期Tを中周期Tmidに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。この処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40にて火花が発生する程度の大きな電流値であり、且つ乗り心地制御中である場合には、スイッチング周期Tが基準周期である最小周期Tminよりも長い中周期Tmidに設定される。
S206にて減衰力の制御モードが乗り心地制御モードでもないと判定した場合(S206:No)は、周期設定部52はS209に進む。そして、S209にて、スイッチング周期Tを最大周期Tmaxに設定する。その後周期Tを出力し(S210)、このルーチンを一旦終了する。この処理の流れからわかるように、実電流値iが電気モータ40にて火花が発生する程度の大きな電流であり、且つ、減衰力の制御モードが乗り心地制御モード、バネ下制御モード、操安性制御モードのいずれにも設定されていない場合には、スイッチング周期Tが最も長い周期Tmaxに設定される。このように周期設定部52は、外部回路100を通って電気モード40に流れる発電電流の大きさ(実電流i)および減衰力の制御モードに基づいて、発電電流をデューティ制御する際におけるスイッチング周期Tを設定する。周期設定部52にて行われる処理(周期設定ルーチン)が、本発明の周期設定手段に相当する。
次に、電流制御部53が実行する電流制御ルーチンについて説明する。図7に示されるように、電流制御ルーチンが起動すると、まず電流制御部53は、S301にてスイッチング周期Tを読み込む。次いで、S302にて実電流値iを読み込み、さらにS303にて最終目標電流値i*を読み込む。これらを読み込んだ後、S304にて、第1スイッチング素子SW1あるいは第2スイッチング素子SW2にPWM制御信号を送ってデューテュ比を調整することにより、実電流値iが最終目標電流値i*と等しくなるように、最終目標電流値i*と実電流値iとの偏差Δi(=i*−ix)に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)を行う。この場合、電流制御部53は、電気式ショックアブソーバ装置30の圧縮動作時であれば第1スイッチング素子SW1のデューティ比を調整することにより、電気式ショックアブソーバ装置30の伸張動作時であれば第2スイッチング素子SW2のデューティ比を調整することにより、実電流値iが最終目標電流i*と等しくなるように、対象となるスイッチング素子をデューティ制御する。また、デューティ制御の周期はS301にて読み込んだスイッチング周期Tとされる。なお、デューティ比を調整しない側のスイッチング素子(圧縮動作時であれば第2スイッチング素子SW2,伸張動作時であれば第1スイッチング素子SW1)については、デューティ比を例えば0%に固定しておけばよい。
このように、電流制御部53は、目標電流設定部51にて設定された最終目標電流値i*および周期設定部52にて設定されたスイッチング周期Tに基づいて発電電流をデューティ制御する。これにより、車両の振動を抑制するように電気式ショックアブソーバ装置30の減衰力が制御される。電流制御部53および外部回路100が、本発明のデューティ制御手段に相当する。
本実施形態によれば、実電流値i(発電電流値)が基準電流値iよりも大きい場合には、設定された制御モードに基づいてスイッチング周期Tが最小周期Tmin,中周期Tmidおよび最大周期Tmaxのいずれかに設定される。ここで、電気モータ40が回転しているときに発生する火花の発生期間の長さと、スイッチング周期Tとの関係について説明する。一般的にデューティ制御の周期は非常に短い。例えば第1スイッチング素子SW1および第2スイッチング素子SW2のスイッチング周期は20msec.(Tmin)〜60msec.(Tmax)程度に設定することができる。一方、火花の発生期間は電気モータ40の回転速度にもよるが、スイッチング周期Tに比べてかなり長い。例えば電気モータ40に常時通電した場合(デューティ比100%の場合)、100msec.程度は連続して火花が発生することもある。
したがって、火花の発生期間中にデューティ制御が行われている場合、デューティ制御の周期が長いほど単位時間当たり(例えば火花の発生期間当たり)における火花の発生頻度が減少する。例えば、デューティ比が50%であり、最小周期Tminが20msec.、中周期Tmidが40msec.、最大周期Tmaxが60msec.であり、火花発生期間が120msec.である場合を考えてみる。また実電流値iは基準電流値iよりも大きいものであるとする。火花発生期間と各周期が図8に示されるような関係であるとすると、デューティ制御の周期が最小周期Tminである場合、火花発生期間中にパルス信号がオンである箇所は7箇所である。パルス信号がオンであるタイミングに合わせて火花が発生するので、この場合火花発生期間中に7回火花が発生する。また、デューティ制御の周期が中周期Tmidである場合は、火花発生期間中にパルス信号がオンである箇所が4箇所であるので、火花発生期間中に4回火花が発生する。またデューティ制御の周期が最大周期Tmaxである場合は、火花発生期間中にパルス信号がオンである箇所が3箇所であるので、火花発生期間中に3回火花が発生する。このように、デューティ制御の周期が長いほど単位時間当たりにおける火花発生頻度が減少する。
また、デューティ制御の周期(スイッチング周期T)は、減衰力の制御応答性に影響する。デューティ制御の周期が短い場合は、非常に短い時間間隔できめ細かに減衰力を変更制御することができるのに対し、デューティ制御の周期が長い場合はきめ細かな制御ができない。つまり、デューティ制御の周期が短い場合は制御応答性が良く、デューティ制御の周期が長い場合は制御応答性が悪い。
本実施形態によれば、実電流値iが基準電流値iよりも大きく、且つ乗り心地やバネ下制振に係る減衰力の制御が行われていない場合、つまり減衰力の制御モードが、乗り心地制御モード、バネ下制御モード、操安性制御モードのいずれにも設定されていない場合は、減衰力の制御応答性を考慮する必要がないため、デューティ制御の周期が最大周期Tmaxに設定される。これにより火花の発生頻度を十分に抑えることができる。
また、設定される減衰力の制御モードがバネ下制御モードを含む場合、つまり、バネ下共振周波数近傍(例えば8〜15Hz)の速い振動を抑制する制御を実行する場合は、速い振動変化に追随したきめ細かな制御応答性が要求される。すなわちバネ下制御を実行する上で制御応答性の悪化は制御性能に大きく影響する。したがって、この場合、実電流値iが基準電流値iよりも大きくてもデューティ制御の周期が最小周期Tminに設定されて制御応答性の悪化が防止される。つまり、バネ下制御中は、火花の発生頻度の抑制よりもバネ下制御の応答性が優先される。
また、設定される減衰力の制御モードが乗り心地制御モードである場合、つまり、バネ上共振周波数近傍(例えば0.1〜3Hz)の比較的ゆるやかな振動を抑制する制御を実行する場合は、それほど速い制御応答性が要求されない。すなわち乗り心地制御を実行する上で制御応答性の悪化は制御性能に余り影響を及ぼさない。したがって、実電流値iが基準電流値iよりも大きく、且つ設定される制御モードが乗り心地制御モードである場合はデューティ制御の周期が中周期Tmidに設定される。これにより減衰力の制御性能を損なうことなく火花の発生頻度が抑えられる。
また、設定される減衰力の制御モードが操安性制御モードである場合、つまり車両のロールに係る振動を抑制する制御を実行する場合も、それほど速い制御応答性が要求されない。すなわち操安性制御を実行する上で制御応答性の悪化は制御性能に余り影響を及ぼさない。ただし、操舵初期状態であるときには、ドライバーがロールに敏感であるので、制御応答性のわずかな悪化がドライバーにロールの抑制の悪化に対する不快感を与える。よってこの場合、つまり実電流値iが基準電流値iよりも大きく、設定された制御モードに操安性制御モードが含まれ、且つ操舵初期状態である場合は、火花の発生頻度の抑制よりも操安性制御の応答性を優先すべく、デューティ制御の周期が最小周期Tminに設定される。これにより制御応答性の悪化が防止される。
一方、設定される減衰力の制御モードが操安性制御モードであっても、操舵初期状態ではない場合は、ドライバーは操舵初期ほどにロールに敏感でない。よってこの場合、つまり実電流値iが基準電流値iよりも大きく、設定された制御モードが操安性制御モードであって且つ操舵初期状態ではない場合、デューティ制御の周期が中周期Tmidに設定される。これによりドライバーに制御応答性の悪化を感じさせることなく火花の発生頻度を抑えることができる。
また、各種制御(乗り心地制御、バネ下制御、操安性制御)を実行するか否かの閾値としての加速度(バネ上加速度、バネ下加速度、横加速度)の種類はそれぞれ異なるため、複数の制御モードが同時に設定される場合がある。例えば乗り心地制御モードとバネ下制御モードが、あるいは操安性制御モードと乗り心地制御モードが同時に設定されることもある。複数の制御モードが同時に設定された場合、それぞれの制御モードに基づいて設定されるべきスイッチング周期Tのうち、最も短い周期が、最終的なスイッチング周期Tとして採用される。本実施形態においては、制御モードがバネ上制御モードであるとき、および、制御モードが操安性制御モードであり且つ操舵初期状態であるときに、スイッチング周期Tが最小周期Tminに設定される。したがって、複数の制御モードが同時に設定されている場合であっても、それら複数の制御モードの中にバネ下制御モードが含まれているときは、他の設定された制御モードにかかわらず、スイッチング周期Tは最小周期Tminに設定される。同様に、複数の制御モードが同時に設定されている場合であっても、それら複数の制御モードの中に操安性制御モードが含まれており、且つ操舵初期状態であれば、他の設定された制御モードにかかわらず、スイッチング周期Tは最小周期Tminに設定される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば上記実施形態において、設定されるスイッチング周期は、基準周期としての最小周期Tmin,基準周期よりも長い周期としての中周期Tmidおよび最大周期Tmaxといった3種類の周期であるが、基準周期よりも長い周期として設定される周期をより多く用意し、制御モードや実電流値の大きさによって適宜周期を設定してもよい。また、制御モードおよび実電流値iとスイッチング周期との関係式やマップなどに基づいて周期を連続的に変化させてもよい。また、上記実施形態においては乗り心地制御の例としてスカイフック制御を、バネ下制御の例としてグランドフック制御を示したが、その他の制御(例えば非線形H制御)を採用してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
10FL,10FR,10RL,10RR…サスペンション本体、20…コイルスプリング、30…電気式ショックアブソーバ装置、40…電気モータ(DCブラシ付モータ)、50…サスペンションECU(減衰力制御装置)、51…目標電流設定部(目標電流値設定手段)、52…周期設定部(周期設定手段)、53…電流制御部(デューティ制御手段)、61…バネ上加速度センサ、62…バネ下加速度センサ、63…ストロークセンサ、64…横加速度センサ、100…外部回路(減衰力制御装置、デューティ制御手段)、110…蓄電装置、111…電流センサ、Tmin…最小周期(基準周期)、Tmid…中周期、Tmax…最大周期

Claims (6)

  1. 車両のバネ上部材とバネ下部材との間に設けられるとともにバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動に応じて回転することにより誘導起電力を発生するDCブラシ付モータを有し、前記誘導起電力により前記DCブラシ付モータに発電電流が流れることにより前記相対振動に対する減衰力を発生する電気式ショックアブソーバ装置に適用され、前記発電電流をデューティ制御することにより前記減衰力を制御する減衰力制御装置において、
    車両の振動状態に基づいて設定される前記減衰力の制御モードに基づいて前記発電電流の目標値である目標電流値を設定する目標電流値設定手段と、
    前記DCブラシ付モータに流れる発電電流値が、前記DCブラシ付モータの回転に伴い火花が発生するか否かの閾値の電流値として予め設定された基準電流値未満あるいは前記基準電流値以下であるときに、前記デューティ制御の周期を基準周期に設定し、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きいときに、前記制御モードに応じて前記周期を前記基準周期または前記基準周期よりも長い周期に設定する周期設定手段と、
    前記目標電流値設定手段により設定された前記目標電流値および前記周期設定手段により設定された前記周期に基づいて前記発電電流をデューティ制御することにより、車両の振動を抑制するように前記減衰力を制御するデューティ制御手段と、
    を備えることを特徴とする、減衰力制御装置。
  2. 請求項1に記載の減衰力制御装置において、
    前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両に作用するバネ上共振周波数近傍の振動を抑制する乗り心地制御モードであるときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期よりも長い周期に設定することを特徴とする、減衰力制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の減衰力制御装置において、
    前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両のロールを抑制する操安性制御モードであり、さらに操舵初期状態ではないときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期よりも長い周期に設定することを特徴とする、減衰力制御装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減衰力制御装置において、
    前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両に作用するバネ下共振周波数近傍の振動を抑制するバネ下制御モードを含むときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期に設定することを特徴とする、減衰力制御装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減衰力制御装置において、
    前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ、前記制御モードが車両のロールを抑制する操安性制御モードを含み、さらに操舵初期状態であるときに、前記デューティ制御の周期を前記基準周期に設定することを特徴とする、減衰力制御装置。
  6. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の減衰力制御装置において、
    前記周期設定手段は、前記発電電流値が前記基準電流値以上あるいは前記基準電流値よりも大きく、且つ前記制御モードが設定されていないときに、前記周期を前記基準周期よりも長い周期に設定することを特徴とする、減衰力制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102259569A (zh) * 2011-04-13 2011-11-30 浙江吉利汽车研究院有限公司 基于乘坐舒适性的反馈式振动控制系统
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