以下に、本発明に係る車両用制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置の模式的な概略構成図、図2は、本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置の制御量変化低減制御の一例を説明するタイムチャート、図3は、本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置の制御量変化低減制御の一例を説明するフローチャートである。
本実施形態に係る車両用制御装置としてスタビライザ制御装置1は、図1に示すように、車両2に適用されこの車両2のロール剛性を制御するものである。ここで、車両2のロール剛性とは、車両2の前後方向に沿った軸周り方向であるロール方向の剛性に相当する。このスタビライザ制御装置1は、車両2に搭載され、車両2のロール剛性を確保することで車両2の車体21をロール方向に回転させるロール運動(ロール振動)を抑制し車両2の安定した姿勢を確保すると共に、このロール剛性を可変とし車両2の運転状態に応じて調節することで車両2の操縦安定性を向上することができるものである。
具体的には、本実施形態のスタビライザ制御装置1は、ロール剛性調整手段としてのスタビライザ装置3と、制御手段としての制御装置4とを備えている。
車両2は、車体21に従動輪となる左右の前輪(左前輪)5L、前輪(右前輪)5Rを有しており、ステアリングホイール6を操作することでパワーステアリング装置(不図示)等を介して操舵輪である前輪5L、5Rを操舵することができる。
スタビライザ装置3は、左の前輪5Lと右の前輪5Rとの間に設けられている。スタビライザ装置3は、スタビライザバー31の捩り反力を利用して、車体21のロールを抑制するものである。このスタビライザ装置3は、いわゆる、アクティブスタビライザ装置であり、スタビライザバー31と、アクチュエータ32とを含んで構成される。スタビライザ装置3は、アクチュエータ32が駆動し、左右に二分割されたスタビライザバー31を相対回転させることでこのスタビライザバー31の捩れ量を調節し捩り反力を調節して車両2のロール剛性を調整可能なものである。すなわち、スタビライザ装置3は、スタビライザバー31の捩れ量、言い換えれば、捩れ剛性をアクチュエータ32で調節して車両2の車体21のロール剛性を調節しロール運動の制御を行う。
なお、車両2は、車体21に駆動輪となる左右の後輪(不図示)を有しており、この左右の後輪の間にもロール剛性調整手段としてのスタビライザ装置(不図示)を備えている。左右の後輪の間に設けられるスタビライザ装置は、基本的にはスタビライザ装置3と同様な構成をしており、よってここではその説明を省略する。また、車両2の駆動形式は、本図に示す形式に限らず、FR形式、FF形式、四輪駆動形式のいずれの形式であってもよい。
スタビライザバー31は、車両2の車体21の左右の傾きを減らすために取付けられ、車両2のロール剛性を確保することで車両2の安定した姿勢を確保するものである。このスタビライザバー31は、左右一対のトーションバー部33L、33Rと、左右一対のアーム部34L、34Rとを含んで構成される。
スタビライザバー31は、左側の前輪5Lに対して設けられる左側のトーションバー部33Lと、右側の前輪5Rに対して設けられる右側のトーションバー部33Rとの間で左右に二分割されている。スタビライザバー31は、このトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとがアクチュエータ32により相対回転可能に連結される。
トーションバー部33Lは、車両2の前後方向と直交する車両2の横方向に沿って延在する線状部分である。トーションバー部33Lは、アクチュエータ32から前輪5Lに向かって延在する。アーム部34Lは、トーションバー部33Lと連続するようにして設けられる屈曲部分である。アーム部34Lは、トーションバー部33Lの前輪5L側の端部に連続してもうけられる。つまり、トーションバー部33Lは、前輪5L側の端部にアーム部34Lが連続して設けられ、反対側の端部にアクチュエータ32が設けられる。
そして、トーションバー部33Lは、その軸線回りに回動自在に車体21に支持される一方、アーム部34Lは、先端部が車両2の前方に屈曲してサスペンション7L(例えばサスペンション7Lのロアアーム)に連結されている。このサスペンション7Lは、前輪5Lと車体21との間に介在する懸架装置であり、路面から車体21に伝わる衝撃や振動を緩和するものである。なお、右側の前輪5Rに対して設けられるトーションバー部33R、アーム部34R、サスペンション7R等の構成は、左側の前輪5Lに対して設けられるトーションバー部33L、アーム部34L、サスペンション7L等の構成と左右対称形であり、ほぼ同様な構成であることから、ここではその説明を省略する。
アクチュエータ32は、上述したように、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間に設けられ、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとを相対回転可能に連結する。すなわち、アクチュエータ32は、スタビライザバー31における左前輪5L側のトーションバー部33Lと右前輪5R側のトーションバー部33Rとの間に相対的な捩れを付与するものである。
アクチュエータ32は、電動モータ35を含んで構成され、この電動モータ35の駆動力を利用してトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとを相対回転させ、このトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間に所定の捩れ量を付与する。
アクチュエータ32は、例えば、電動モータ35と減速歯車(又は減速機)を備えたものであり、電動モータ35の出力軸の回転を減速歯車で減速してトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとに伝えるように構成されている。例えば、このアクチュエータ32は、電動モータ35としてブラシレスモータを採用し、そのモータハウジングの中にモータシャフト(出力軸)と繋がれた減速歯車を配置する。そして、このアクチュエータ32は、電動モータ35の中空のモータシャフト(出力軸)の中にトーションバー部33L又はトーションバー部33Rのうちのいずれか一方を通して減速歯車に連結し、他方をモータハウジングに連結する。これにより、このアクチュエータ32は、電動モータ35が駆動し電動モータ35の出力軸を回転させることによって、スタビライザバー31をなすトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間に周方向への相対的な捩れを発生させることができる。
ここで、このアクチュエータ32の電動モータ35は、後述する制御装置4からの制御要求に応じて出力軸を正転又は逆転させるので、スタビライザバー31をなすトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間には、その出力軸の回転方向に従って図1に示す実線R1又は破線R2のうちのいずれか一方の周方向への捩れが生じる。このとき、アクチュエータ32は、電動モータ35のモータトルクに応じた出力トルク、さらに言い換えれば、アクチュエータ32の出力軸の回転角度に応じた捩れ量がトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間に発生し、この捩れ量に応じた捩れ反力がスタビライザバー31に作用する。そして、アクチュエータ32は、後述する制御装置4により電動モータ35の駆動が制御され、アクチュエータ32の出力トルク(回転駆動力)が調節されアクチュエータ32の回転角度が調節されることで、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間の捩れ量が調節され、スタビライザバー31に作用する捩れ反力の大きさが調節される。そして、スタビライザ制御装置1は、スタビライザバー31に作用する捩れ反力の大きさが調節され、車両2の車体21のロール剛性が調整されることで、車体21のロール姿勢(すなわち、ロール角など)を挙動安定性等の目的に合わせた最適な状態へと制御することができる。なお、ここでは、アクチュエータ32の出力軸の回転角度は、スタビライザバー31のトーションバー部33L、トーションバー部33Rの軸線を中心とした回転角度とほぼ一致する。
制御装置4は、スタビライザ装置3の駆動を制御するものである。制御装置4は、アクチュエータ32の電動モータ35に電気的に接続されると共に各種センサに電気的に接続される。制御装置4は、各種センサの検出結果に基づいて、車両2の状態に応じてアクチュエータ32の電動モータ35の駆動を制御することで、スタビライザ装置3により車両2のロール剛性を調整することができる。なお、この制御装置4は、車両2の各部を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に内蔵され一体に構成されてもよい。
具体的には、制御装置4は、車両2の車体21のロール状態(すなわち、ロール角など)に応じて、アクチュエータ32の目標の制御量である目標制御量を設定する。そして、制御装置4は、アクチュエータ32の実際の制御量である実制御量が目標制御量に収束するように、実制御量と目標制御量との偏差に基づいて、アクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を調節しこの電動モータ35の駆動を制御して、車両2の車体21のロール剛性を調整する。制御装置4は、例えば、電動モータ35に供給する電流を大きくするほど、アクチュエータ32の出力トルク(回転駆動力)が大きくなり、アクチュエータ32の回転角度が大きくなり、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間の捩れ量が大きくなり、スタビライザバー31に作用する捩れ反力が大きくなり、車両2の車体21のロール剛性が高くなる。
このスタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の目標制御量を算出するための車両2の車体21のロール状態を検出する手段として、例えば、車速センサ80、舵角センサ81及び横加速度センサ82などを備えている。また、このスタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の実制御量を検出する手段として、例えば、回転角度センサ83などを備えている。車速センサ80、舵角センサ81、横加速度センサ82及び回転角度センサ83は、制御装置4に電気的に接続されている。
車速センサ80は、車両2の速度である車速を検出するものであり、検出した検出値を車速信号として制御装置4に送信する。舵角センサ81は、ステアリングホイール6の操舵角(あるいは、操舵輪である前輪5L、5Rの転舵角)を検出するものであり、検出した検出値を舵角信号として制御装置4に送信する。横加速度センサ82は、車両2に作用する横方向の加速度である横加速度を検出するものであり、検出した検出値を横加速度信号として制御装置4に送信する。回転角度センサ83は、スタビライザ装置3に設けられ、アクチュエータ32の回転角度、より具体的に言えば、アクチュエータ32の電動モータ35の回転角度を検出するものあり、検出した検出値を回転角度信号として制御装置4に送信する。
そして、制御装置4は、車速センサ80が検出した車速、舵角センサ81が検出した舵角、横加速度センサ82が検出した横加速度などに基づいて、アクチュエータ32の目標制御量として、例えば、アクチュエータ32の目標回転角度を設定する。制御装置4は、例えば、車速センサ80が検出した車速、舵角センサ81が検出した舵角、横加速度センサ82が検出した横加速度などに基づいて、車両2の車体21に作用するロールモーメントを推定し、このロールモーメントを打ち消す目標のアンチロールモーメントを推定する。この目標アンチロールモーメントとは、車両2の旋回時にアクチュエータ32を駆動させないときの車体21に作用するロールモーメントに抗して反対方向へと作用させる目標のロールモーメント(アンチロールモーメント)のことであり、アクチュエータ32を駆動させて車体21を目標ロール角に抑えるための目標値である。アクチュエータ32を駆動させないときの車体21のロールモーメントは、車速や操舵輪の舵角から推定でき、そのロールモーメントからはアクチュエータ32を駆動させないときの車体21のロール角の推定が可能である。したがって、車体21が目標ロール角のときの車体21のロールモーメントについても推定することができるので、目標アンチロールモーメントは、その推定された2つのロールモーメントの差から導き出すことができる。
そして、制御装置4は、例えば、この目標のアンチロールモーメントを発生させるためのスタビライザ装置3におけるトーションバー部33L、33Rの目標回転角度、言い換えれば、アクチュエータ32の目標回転角度を算出する。
そして、制御装置4は、車体21のロールを抑制するべく、回転角度センサ83が検出する実際のアクチュエータ32の回転角度である実制御量としての実回転角度が上記目標回転角度に収束するように、実回転角度と目標回転角度との偏差に基づいてアクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を制御しアクチュエータ32の出力トルクを調節して、回転角度センサ83が検出する実回転角度に基づくフィードバック制御(ロール抑制制御)を実行する。制御装置4は、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束するように回転角度センサ83が検出する実回転角度に基づくフィードバック制御を実行することで、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間の捩れ量が目標の捩れ量に調節され、車両2の車体21のロール剛性が目標のロール剛性に調整され、車体21のロール角を挙動安定性等の目的に合わせた最適な目標ロール角に抑え込むことができる。言い換えれば、制御装置4は、旋回時の車両2の車体21のロール角を最適な目標ロール角に抑えるために必要な捩れ反力がスタビライザバー31に作用し車両2の車体21のロール剛性が目標のロール剛性となるように、アクチュエータ32の出力トルクを調節してアクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度となるように制御する。
上記のように構成されるスタビライザ制御装置1は、例えば、車両2の旋回時など車体21にロールモーメントが作用したときには、この車両2の車体21に作用するロールモーメントに対して、アクチュエータ32の電動モータ35がスタビライザバー31のトーションバー部33Lとトーションバー部33Rとを互いに反対方向に回転駆動し、このロールモーメントを打ち消すアンチロールモーメントを発生させることで、ロールモーメントを低減することができ、車両2の操縦安定性を向上させることができる。このとき、スタビライザ制御装置1は、制御装置4によりアクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束するようにフィードバック制御が実行されることで、トーションバー部33Lとトーションバー部33Rとの間の捩れ量が目標の捩れ量に調節され、車体21に付与されるアンチロールモーメントが調節され車体21のロール剛性が可変制御され、車体21のロール角を挙動安定性等の目的に合わせた最適な目標ロール角に抑え込むことができる。
なお、アクチュエータ32の回転角度は、電動モータ35の動作角であるモータ回転角度と対応関係にあるため、制御装置4は、モータ回転角度をアクチュエータ32の回転角度として扱い、モータ回転角度に基づいてフィードバック制御を実行してもよい。
ところで、このようなスタビライザ制御装置1では、アクチュエータ32の電動モータ35の駆動力によりスタビライザバー31の左右のトーションバー部33L、33Rを相対回転させこのスタビライザバー31に所定の捩れ量を付与することで車両2の車体21のロール剛性を調節する際に、例えば、電動モータ35の目標制御量、すなわち、目標回転角度が急変しモータ負荷が急変した場合に異音が発生するおそれがあるなど、さらなる適正なロール剛性制御が望まれていた。
例えば、このようなスタビライザ制御装置1では、車両2が走行する路面の状態に応じていわゆる悪路制御を実行することがある。すなわち、スタビライザ制御装置1は、車両2が走行する路面の状態を推定し、車両2が走行する路面として、凹凸などが比較的に多い悪路を検出した際に、車両2の車体21のロール剛性を強制的に低下させる悪路制御を実行し、これにより、車両2の悪路走行時における乗り心地の向上を図る場合がある。この場合、制御装置4は、悪路制御として、アクチュエータ32の目標制御量である目標回転角度を強制的に低下させアクチュエータ32の実制御量である実回転角度を強制的に低下させることで、車体21のロール剛性を強制的に低下させる。一方、スタビライザ制御装置1は、車両2が走行する路面の状態を推定し、車両2が走行する路面として、凹凸などが比較的に少ない通常路を検出した際に、上記のように車速センサ80が検出した車速、舵角センサ81が検出した舵角、横加速度センサ82が検出した横加速度などに基づいてアクチュエータ32の目標回転角度を設定し、アクチュエータ32の実回転角度をこの目標回転角度に収束させる通常路制御を実行する。
このとき、スタビライザ制御装置1では、悪路制御から通常路制御への切り替わりの際、あるいは、通常路制御から悪路制御への切り替わりの際に、アクチュエータ32の目標回転角度が一気に急変し、アクチュエータ32の実回転角度が急変すると、これに伴ってモータ負荷が急変することで異音が発生するおそれがある。
そこで、本実施形態のスタビライザ制御装置1は、制御装置4によって、アクチュエータ32の目標制御量の変化量が予め設定された第1所定変化量以上となる場合に、実制御量の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行することで、例えば、モータ負荷が急変することによる異音の発生を抑制し、これにより、車両2のロール剛性を適正に可変制御するようにしている。
具体的には、本実施形態のスタビライザ制御装置1は、図1に示すように、機能概念的に、路面状態判定部40と、目標制御量設定部41と、モータ制御部42と、制御量変化低減制御部43とが制御装置4に設けられる。
ここで、この制御装置4は、マイクロコンピュータを中心として構成され、処理部4a、記憶部4b及び入出力部4cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部4cにはスタビライザ制御装置1の各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部4cは、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部4bには、スタビライザ制御装置1の各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部4bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部4aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも上述の路面状態判定部40、目標制御量設定部41、モータ制御部42、制御量変化低減制御部43を有している。制御装置4による各種制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部4aが前記コンピュータプログラムを当該、処理部4aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に、処理部4aは、適宜記憶部4bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このスタビライザ制御装置1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、制御装置4とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
そして、路面状態判定部40は、車両2が走行する路面の状態を判定するものである。
ここで、このスタビライザ制御装置1は、車両2が走行する路面の状態を検出する手段として、例えば、上下加速度センサ84などを備えている。上下加速度センサ84は、制御装置4に電気的に接続されている。上下加速度センサ84は、車両2の車体21のバネ上の上下方向への加速度を検出するものであり、検出した検出値を上下加速度信号として制御装置4に送信する。
路面状態判定部40は、上下加速度センサ84が検出した車両2の上下加速度などに基づいて、車両2が走行する路面の状態を判定する。路面状態判定部40は、例えば、車両2の上下加速度の検出値が予め設定される悪路判定値以上である場合に、車両2が走行する路面の状態を悪路状態と判定し、車両2の悪路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が悪路であることを検出することができる。路面状態判定部40は、例えば、車両2の悪路走行を検出した場合には悪路フラグをONに設定する。
一方、路面状態判定部40は、例えば、車両2の上下加速度の検出値が予め設定される悪路判定値より小さい場合に、車両2が走行する路面の状態を通常路状態と判定し、車両2の通常路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が通常路であることを検出することができる。路面状態判定部40は、例えば、車両2の通常路走行を検出した場合には悪路フラグをOFFに設定する。
なお、路面状態判定部40は、車両2が走行する路面の状態を判定する際には車両2の上下加速度の検出値から路面の凹凸に対応した周波数成分を抽出するために上下加速度の検出値に所定の通過帯域のバンドパス処理を施すようにしてもよい。また、路面状態判定部40は、ここでは、上下加速度センサ84の検出値に基づいて悪路検出を行うようにしたが、これに代えて、例えば、車両2の車輪速の変動に基づいて悪路判定を行うようにしてもよい。この場合、スタビライザ制御装置1は、例えば、制御装置4に電気的に接続され車輪速を検出する車輪速センサ(不図示)を備え、制御装置4がこの検出車輪速を微分して車輪速の変動を算出し、この車輪速の変動を表す信号に基づいて悪路判定を行うようにすればよい。
そして、目標制御量設定部41は、アクチュエータ32の目標制御量として、アクチュエータ32の目標回転角度を設定するものであり、モータ制御部42は、このアクチュエータ32の目標回転角度に基づいてアクチュエータ32の電動モータ35の駆動を制御するものである。
目標制御量設定部41は、悪路フラグがOFFである場合には通常路制御用の目標制御量を設定する一方、悪路フラグがONである場合には悪路制御用の目標制御量を設定する。そして、モータ制御部42は、悪路フラグがOFFである場合には通常路制御用の目標制御量に基づいて通常路制御を実行する一方、悪路フラグがONである場合には悪路制御用の目標制御量に基づいて悪路制御を実行する。
具体的には、目標制御量設定部41は、車両2の通常路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が通常路であることが検出された場合、通常路制御用の目標制御量として、上記のように車速センサ80が検出した車速、舵角センサ81が検出した舵角、横加速度センサ82が検出した横加速度などに基づいてアクチュエータ32の目標回転角度を設定する。そして、モータ制御部42は、通常路制御として、アクチュエータ32の実回転角度がこの通常路制御用の目標回転角度に収束するように、実回転角度と目標回転角度(通常路制御用)との偏差に基づいてアクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を制御しアクチュエータ32の出力トルクを調節して実回転角度に基づくフィードバック制御を実行する。
一方、目標制御量設定部41は、車両2の悪路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が悪路であることが検出された場合、例えば、悪路制御用の目標制御量として、アクチュエータ32の目標回転角度を0(ゼロ)に設定する。そして、モータ制御部42は、悪路制御として、アクチュエータ32の実回転角度がこの悪路制御用の目標回転角度、すなわち0(ゼロ)に収束するように、実回転角度と目標回転角度(悪路制御用)との偏差に基づいてアクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を制御しアクチュエータ32の出力トルクを調節して実回転角度に基づくフィードバック制御を実行する。この結果、スタビライザ制御装置1は、車両2の悪路走行の検出に応答して車両2の車体21のロール剛性を強制的に低く切り替えることができ、車両2の悪路走行時における乗り心地を良好に維持することができる。
そして、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量が予め設定された第1所定変化量以上となる場合に、アクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行する。ここで、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量に対して設定される第1所定変化量は、例えば、アクチュエータ32の構成、電動モータ35の仕様などに応じて適宜予め設定すればよい。
本実施形態の制御量変化低減制御部43は、車両2が走行する路面状態が変化した場合、すなわち、車両2が走行する路面が通常路から悪路になった場合、あるいは、悪路から通常路になった場合に、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量が第1所定変化量以上となるとみなして、制御量変化低減制御を実行する。さらに言えば、制御量変化低減制御部43は、通常路制御と悪路制御とを切り替える場合に、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量が第1所定変化量以上となるとみなして、制御量変化低減制御を実行する。
制御量変化低減制御部43は、制御量変化低減制御として、アクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御を実行する。本実施形態の制御量変化低減制御部43は、制御量変化低減制御として、アクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を相対的に低下させる制御(追従性低下制御)を実行する。
制御量変化低減制御部43は、例えば、アクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を調節するためのサーボゲインを相対的に低減して設定することで、アクチュエータ32の目標回転角度に対するアクチュエータ32の実回転角度の追従性を相対的に低下させる制御を実行することができる。ここでサーボゲインとは、フィードバック制御の際に適用する係数であり、例えば、アクチュエータ32の目標回転角度と実回転角度との偏差、偏差積分値、偏差微分値にそれぞれ掛け合わせることで制御指令値を変化させアクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を調節するための係数である。これにより、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束するまでの時間を相対的に長くすることができ、言い換えれば、アクチュエータ32の実回転角度の単位時間当たりの変化量(実回転角度の変化速度)を相対的に低減することができ、制御量変化低減制御を実行することができる。
そして、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度にほぼ収束すると、サーボゲインを通常の値(制御量変化低減制御の実行中以外の通常の制御で用いる値)に復帰させ、アクチュエータ32の目標回転角度に対するアクチュエータ32の実回転角度の追従性を相対的に低下させる制御を終了し、制御量変化低減制御を終了する。
ここで、図2のタイムチャートを参照して、本実施形態に係るスタビライザ制御装置1の制御量変化低減制御の一例を説明する。本図では、横軸を時間軸とし、縦軸をアクチュエータ32の回転角度、サーボゲイン低減フラグのON・OFF、悪路フラグのON・OFFとしている。本図中、アクチュエータ32の回転角度において、一点鎖線は悪路制御を実行した場合の目標回転角度L1を表し、実線は悪路制御を実行した場合の実回転角度L2を表し、点線は通常路制御を実行した場合の目標回転角度L3を表している。
例えば、時刻t1にて、路面状態判定部40は、車両2の悪路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が悪路であることを検出すると、悪路フラグをONに設定する。時刻t1にて悪路フラグがONに設定されると、目標制御量設定部41は、アクチュエータ32の目標回転角度L1を0(ゼロ)に設定する。モータ制御部42は、悪路制御として、アクチュエータ32の実回転角度L2がこの悪路制御用の目標回転角度L1、すなわち0(ゼロ)に収束するように、アクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を制御し実回転角度に基づくフィードバック制御を実行する。
このとき、制御量変化低減制御部43は、悪路フラグがONに設定された時刻t1にて、サーボゲイン低減フラグをONに設定し、アクチュエータ32の目標回転角度L1に対する実回転角度L2の追従性を調節するためのサーボゲインを相対的に低減して設定する。すなわち、制御量変化低減制御部43は、悪路フラグがONに設定された時刻t1にて、アクチュエータ32の目標回転角度L1に対する実回転角度L2の追従性を相対的に低下させアクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を開始する。
制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度L2が目標回転角度L1にほぼ収束した時刻t2にて、サーボゲイン低減フラグをOFFに設定し、サーボゲインを通常の値に復帰させる。すなわち、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度L2が目標回転角度L1にほぼ収束した時刻t2にて、アクチュエータ32の目標回転角度L1に対する実回転角度L2の追従性を相対的に低下させる制御を終了し、制御量変化低減制御を終了する。
そして、例えば、時刻t3にて、路面状態判定部40は、車両2の通常路走行、すなわち、車両2が現在走行している路面が通常路であることを検出すると、悪路フラグをOFFに設定する。時刻t3にて悪路フラグがOFFに設定されると、目標制御量設定部41は、アクチュエータ32の目標回転角度を通常路制御用の目標回転角度L3に戻す。モータ制御部42は、通常路制御として、アクチュエータ32の実回転角度L2がこの通常路制御用の目標回転角度L3に収束するように、アクチュエータ32の電動モータ35に供給する電流を制御し実回転角度に基づくフィードバック制御を実行する。
このとき、制御量変化低減制御部43は、悪路フラグがOFFに設定された時刻t3にて、サーボゲイン低減フラグをONに設定し、アクチュエータ32の目標回転角度L3に対する実回転角度L2の追従性を調節するためのサーボゲインを相対的に低減して設定する。すなわち、制御量変化低減制御部43は、悪路フラグがOFFに設定された時刻t3にて、アクチュエータ32の目標回転角度L3に対する実回転角度L2の追従性を相対的に低下させアクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を開始する。
そして、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度L2が目標回転角度L3にほぼ収束した時刻t4にて、サーボゲイン低減フラグをOFFに設定し、サーボゲインを通常の値に復帰させる。すなわち、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度L2が目標回転角度L3にほぼ収束した時刻t4にて、アクチュエータ32の目標回転角度L3に対する実回転角度L2の追従性を相対的に低下させる制御を終了し、制御量変化低減制御を終了する。
つまり、図2の例では、車両2の悪路走行が検出され悪路フラグがONに設定される時刻t1から車両2の通常路走行が検出され悪路フラグがOFFに設定される時刻t3までの期間が悪路制御の実行期間である。そして、悪路フラグがONにされる時刻t1から実回転角度L2が悪路制御用の目標回転角度L1にほぼ収束する時刻t2までの期間、及び、悪路フラグがOFFにされる時刻t3から実回転角度L2が通常路制御用の目標回転角度L3にほぼ収束する時刻t4までの期間が制御量変化低減制御の実行期間である。
上記のように構成されるスタビライザ制御装置1は、制御装置4によって、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量が予め設定された第1所定変化量以上となる場合、ここでは、車両2が走行する路面状態が変化した場合、典型的には通常路制御と悪路制御とを切り替える場合に、アクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行することで、アクチュエータ32の応答性を低下させることができ、例えば、電動モータ35の負荷が急変することを抑制することができるので、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することを抑制することができ、これにより、車両2のロール剛性を適正に可変制御することができる。
そして、スタビライザ制御装置1は、制御装置4によって、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束した際に制御量変化低減制御を終了することから、常にアクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を低下させた状態とするのではなく、目標回転角度の変化量が比較的大きくアクチュエータ32の負荷が大きく変動し易い状態のときに実回転角度の追従性、言い換えればアクチュエータ32の応答性を一時的に低下させることができる。この結果、このスタビライザ制御装置1は、車両2の操縦安定性の低下も抑制することができ、車両2の操縦安定性の確保とアクチュエータ32の作動音の抑制とを両立することができる。
ここで、本実施形態のスタビライザ制御装置1は、図1に示すように、さらに制御装置4に、切替待機制御部44が設けられていてもよい。この切替待機制御部44は、所定の条件下で悪路制御と通常路制御との切り替え、すなわち、悪路制御から通常路制御への切り替え、あるいは、通常路制御から悪路制御への切り替えを行わない制御を実行するものである。
切替待機制御部44は、アクチュエータ32の実回転角度が予め設定される所定角度(所定量)以上である場合、又は、アクチュエータ32の実回転角度の変化量が予め設定される第2所定変化量以上である場合に、悪路制御と通常路制御との切り替えを行わない制御(切り替え待機制御)を実行する。ここで、アクチュエータ32の実回転角度に対して設定される所定角度、アクチュエータ32の実回転角度の変化量に対して設定される第2所定変化量は、上述した第1所定変化量と同様に、例えば、アクチュエータ32の構成、電動モータ35の仕様などに応じて適宜予め設定すればよい。
ここで、このようなスタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の実回転角度が予め設定される所定角度以上である場合、例えば、車両2に作用する横方向の加速度である横加速度が大きく、比較的に高いロール剛性が必要とされる場合には、現時点での実回転角度自体が比較的に大きな値に設定されているため、フィードバック制御における実回転角度の変化量が特に大きくなり易い傾向にある。このため、このような場合に悪路制御と通常路制御との切り替えを行うと、制御量変化低減制御を実行したとしてもアクチュエータ32から異音が発生するおそれがある。
そこで、切替待機制御部44は、このような場合、すなわち、アクチュエータ32の実回転角度が所定角度以上である場合、悪路制御と通常路制御との切り替えを行わず、アクチュエータ32の実回転角度が所定角度より小さくなるまで悪路制御と通常路制御との切り替えを待機させる制御を実行する。そして、切替待機制御部44は、車両2に作用する横加速度が小さくなりアクチュエータ32の実回転角度が所定角度より小さくなった後に悪路制御と通常路制御との切り替えを行う。これにより、スタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することをより確実に抑制することができ、車両2のロール剛性をより適正に可変制御することができる。
なお、切替待機制御部44は、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度以上である場合にアクチュエータ32の実回転角度が所定角度以上であるとみなすことができる。ここでは、切替待機制御部44は、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度以上である場合にアクチュエータ32の実回転角度が所定角度以上であるとみなし、悪路制御と通常路制御との切り替えを待機させる制御を実行する。
また、このようなスタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の実回転角度の変化量が予め設定される第2所定変化量以上である場合、例えば、車両2の車体21のロール方向の挙動変化が大きく、すなわち、ロールレートが大きく、フィードバック制御における実回転角度が急変している場合に、悪路制御と通常路制御との切り替えを行うと、制御量変化低減制御を実行したとしてもアクチュエータ32から異音が発生するおそれがある。またこの場合、車体21のロール角の急変中に車両2の挙動が変化してしまうこととなるので、ロール剛性の変化時に車両2の走行安定性が悪化するおそれもある。
そこで、切替待機制御部44は、このような場合、すなわち、アクチュエータ32の実回転角度の変化量が第2所定変化量以上である場合、悪路制御と通常路制御との切り替えを行わず、アクチュエータ32の実回転角度の変化量が第2所定変化量より小さくなるまで悪路制御と通常路制御との切り替えを待機させる制御を実行する。そして、切替待機制御部44は、車両2の車体21のロールレートが小さくなりアクチュエータ32の実回転角度の変化量が第2所定変化量より小さくなった後に悪路制御と通常路制御との切り替えを行う。これにより、スタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することをより確実に抑制することができ、車両2のロール剛性をより適正に可変制御することができ、また、車体21のロール角の急変中に車両2の挙動が変化することを抑制することができ、車両2の走行安定性が悪化することを抑制することができる。
なお、切替待機制御部44は、車両2のロールレートが予め設定される所定レート以上である場合にアクチュエータ32の実回転角度の変化量が第2所定変化量以上であるとみなすことができる。ここでは、切替待機制御部44は、車両2のロールレートが予め設定される所定レート以上である場合にアクチュエータ32の実回転角度の変化量が第2所定変化量以上であるとみなし、悪路制御と通常路制御との切り替えを待機させる制御を実行する。
なお、車両2のロールレートは、車体21のロール角の時間微分値に相当し、ロール角の変化速度に相当する。このスタビライザ制御装置1は、車両2のロールレートを検出する手段として、例えば、ロールレートセンサ85などを備えている。ロールレートセンサ85は、制御装置4に電気的に接続されている。ロールレートセンサ85は、例えば、車体21のロール方向の回転に応じて所定の質量に生じる力を検出する加速度センサやガスジャイロなどを用いることができる。ロールレートセンサ85は、車両2のロールレートを検出し、検出した検出値をロールレート信号として制御装置4に送信する。また、スタビライザ制御装置1は、車両2のロールレートを検出する手段として車速センサ80、舵角センサ81を兼用してもよく、この場合、制御装置4は、車速センサ80、舵角センサ81の検出値に基づいてロールレートを算出するようにしてもよい。
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るスタビライザ制御装置1の制御量変化低減制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
図3に例示する制御量変化低減制御では、まず、スタビライザ制御装置1が備える制御装置4の制御量変化低減制御部43は、悪路フラグが前回の制御周期における悪路フラグと異なるか否か、すなわち、悪路フラグがONからOFFに、あるいは、OFFからONになったか否かを判定する(S100)。この悪路フラグは、路面状態判定部40により車両2の上下加速度などに基づいて車両2の悪路走行が検出された場合にONに設定され、車両2の通常路走行が検出された場合にOFFに設定される。
制御量変化低減制御部43は、悪路フラグが前回の制御周期における悪路フラグと同じであると判定した場合(S100:No)、悪路フラグが前回の制御周期における悪路フラグと異なると判定するまでこの判定を繰り返し実行する。
切替待機制御部44は、制御量変化低減制御部43により悪路フラグが前回の制御周期における悪路フラグと異なると判定された場合(S100:Yes)、横加速度センサ82の検出値に基づいて、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度より小さいか否かを判定する(S102)。
切替待機制御部44は、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度以上であると判定した場合(S102:No)、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度より小さいと判定するまでこの判定を繰り返し実行する。
切替待機制御部44は、車両2の横加速度が予め設定される所定加速度より小さいと判定した場合(S102:Yes)、ロールレートセンサ85の検出値に基づいて、車両2のロールレートが予め設定される所定レートより小さいか否かを判定する(S104)。
切替待機制御部44は、車両2のロールレートが予め設定される所定レート以上であると判定した場合(S104:No)、S102に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
切替待機制御部44は、車両2のロールレートが予め設定される所定レートより小さいと判定した場合(S104:Yes)、車両2が走行する推定の路面状態を更新し、悪路制御から通常路制御への切り替え、あるいは、通常路制御から悪路制御への切り替えを許可し切り替えを実行する(S106)。
次に、制御量変化低減制御部43は、サーボゲイン低減フラグをONに設定する(S108)。
次に、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度に基づくフィードバック制御において、目標回転角度に対する実回転角度の追従性を調節するためのサーボゲインを相対的に低減して設定する(S110)。
次に、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度と目標回転角度との偏差が十分に縮まったか否か、すなわち、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度にほぼ収束したか否かを判定する(S112)。
制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度と目標回転角度との偏差が十分に縮まっていないと判定した場合(S112:No)、アクチュエータ32の実回転角度と目標回転角度との偏差が十分に縮まったと判定するまでこの判定を繰り返し実行する。
制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の実回転角度と目標回転角度との偏差が十分に縮まったと判定した場合(S112:Yes)、サーボゲイン低減フラグをOFFに設定する(S114)。
次に、制御量変化低減制御部43は、S110にて相対的に低減して設定したサーボゲインを通常の値に復帰させ(S116)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
なお、本実施形態では、制御量変化低減制御部43は、アクチュエータ32の目標回転角度に対するアクチュエータ32の実回転角度の追従性を相対的に低下させることで制御量変化低減制御を実行するものとして説明したがこれに限らない。制御量変化低減制御部43は、制御量変化低減制御として、アクチュエータ32の目標回転角度を制限する制御(目標制御量制限制御)を実行するようにしてもよい。この場合、制御量変化低減制御部43は、例えば、アクチュエータ32の目標回転角度を予め設定される上限値によって制限し、モータ制御部42がこの制限後の目標回転角度である制限目標回転角度を用いてフィードバック制御を実行することでアクチュエータ32の目標回転角度を制限する制御を実行することができる。これにより、制御量変化低減制御部43は、実質的に制限目標回転角度の変化量を上記の第1所定変化量より小さくすることができ、この制限目標回転角度に収束するように制御されるアクチュエータ32の実回転角度の単位時間当たりの変化量を相対的に低減することができ制御量変化低減制御を実行することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、アクチュエータ32が駆動することで車両2のロール剛性を調整可能なスタビライザ装置3と、車両2の状態に応じてアクチュエータ32の目標回転角度(目標制御量)を設定しアクチュエータ32の実際の実回転角度(実制御量)がこの目標回転角度に収束するようにアクチュエータ32を制御すると共に、目標回転角度の変化量が予め設定された第1所定変化量以上となる場合に、実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行する制御装置4とを備える。
したがって、スタビライザ制御装置1は、制御装置4によって、アクチュエータ32の目標回転角度の変化量が予め設定された第1所定変化量以上となる場合に、アクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行することで、アクチュエータ32の応答性を低下させることができ、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することを抑制することができ、これにより、車両2のロール剛性を適正に可変制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束した際に制御量変化低減制御を終了する。したがって、スタビライザ制御装置1は、目標回転角度の変化量が比較的大きくアクチュエータ32の負荷が大きく変動し易い状態のときにアクチュエータ32の応答性を一時的に低下させることができ、車両2の操縦安定性の低下も抑制することができ、車両2の操縦安定性の確保とアクチュエータ32の作動音の抑制とを両立することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、車両2が走行する路面状態が変化した場合に制御量変化低減制御を実行する。したがって、スタビライザ制御装置1は、車両2が走行する路面状態が変化した場合に、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することを抑制することができ、車両2のロール剛性を適正に可変制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、車両2が走行する路面が通常路である場合に実行される通常路制御と、車両2が走行する路面が悪路である場合に実行され車両2のロール剛性を強制的に低下させる悪路制御との切り替えの際に制御量変化低減制御を実行する。したがって、スタビライザ制御装置1は、通常路制御と悪路制御とを切り替える場合に、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することを抑制することができ、車両2のロール剛性を適正に可変制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、アクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を相対的に低下させることで制御量変化低減制御を実行する。したがって、スタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の目標回転角度に対する実回転角度の追従性を相対的に低下させることで、アクチュエータ32の実回転角度が目標回転角度に収束するまでの時間を相対的に長くすることができ、アクチュエータ32の実回転角度の単位時間当たりの変化量(実回転角度の変化速度)を相対的に低減することができ、制御量変化低減制御を実行することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、アクチュエータ32の目標回転角度を制限することで制御量変化低減制御を実行するように構成してもよい。この場合、スタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の目標回転角度を制限することで、実質的に制限目標回転角度の変化量を小さくすることができ、この制限目標回転角度に収束するように制御されるアクチュエータ32の実回転角度の単位時間当たりの変化量を相対的に低減することができ制御量変化低減制御を実行することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、アクチュエータ32の実回転角度が予め設定される所定角度(所定量)以上である場合、又は、アクチュエータ32の実回転角度の変化量が予め設定される第2所定変化量以上である場合に、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、制御装置4は、車両2の横加速度(横方向加速度)が予め設定される所定加速度以上である場合、又は、車両2のロールレートが予め設定される所定レート以上である場合に、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない。
したがって、スタビライザ制御装置1は、悪路制御と通常路制御との切り替えのタイミングの適正化を図ることができ、アクチュエータ32から作動音などの異音が発生することをより確実に抑制することができ、車両2のロール剛性をより適正に可変制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るスタビライザ制御装置1によれば、アクチュエータ32は、電動モータ35を含んで構成される。したがって、スタビライザ制御装置1は、アクチュエータ32の実回転角度の変化量を相対的に低減する制御量変化低減制御を実行することで、電動モータ35の負荷が急変することを抑制することができるので、電動モータ35から作動音などの異音が発生することを抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、制御手段は、車両が走行する路面状態が変化した場合、さらに具体的に言えば、通常路制御と悪路制御とを切り替える場合に、アクチュエータの目標制御量の変化量が第1所定変化量以上となるとみなして、制御量変化低減制御を実行するものとして説明したが、これに限らず、アクチュエータの目標制御量の変化量が第1所定変化量以上となるか否かを実際に判定し、制御量変化低減制御を実行するようにしてもよい。
以上の説明では、制御手段は、車両の横方向加速度が予め設定される所定加速度以上である場合に、アクチュエータの実制御量が予め設定される所定量以上であるとみなして、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない制御を実行するものとして説明したが、これに限らず、アクチュエータの実制御量が予め設定される所定量以上であるか否かを実際に判定し、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない制御を実行するようにしてもよい。
以上の説明では、制御手段は、車両のロールレートが予め設定される所定レート以上である場合に、アクチュエータの実制御量の変化量が予め設定される第2所定変化量以上であるとみなして、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない制御を実行するものとして説明したが、これに限らず、アクチュエータの実制御量の変化量が予め設定される第2所定変化量以上であるか否かを実際に判定し、通常路制御と悪路制御との切り替えを行わない制御を実行するようにしてもよい。