JP2611455B2 - 高炭素冷延鋼帯の製造方法 - Google Patents

高炭素冷延鋼帯の製造方法

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【発明の詳細な説明】 「発明の目的」 (産業上の利用分野) 本発明は高炭素冷延鋼帯の製造方法に係り、高炭素冷
延鋼帯の製造において、製造工程の簡略化と同時に品質
の向上を可能とする方法に関するものである。
(従来の技術) 高炭素冷延鋼板の製造においては、一般には冷間圧延
の前に焼鈍を施す必要があり冷間圧延後の焼鈍と合わせ
て最低2回の焼鈍を施しているが、焼鈍が2回必要であ
るため製造に長期間を要する。そこで、最初の焼鈍を省
略し製造工程を合理化する方法が考えられるが、従来、
提案されているのは次のようなものである。
(1) 特公昭60−27734は、冷間圧延におけるコイル
の破断を防止するために、パーライトのラメラー間隔y
を炭素量c、板厚t、熱延巻取温度C/Tを変数とする下
記(1),(2)の不等式で表される範囲内に制御する
ものである。
(2) 特開昭58−55532は、熱延鋼板の組織を微細パ
ーライトとするために、ランナウトテーブル上で急冷し
相変態を完了させてからの巻取温度を500〜620℃とし、
該母材を圧延率20%以上で冷間圧延し、その後Ac1点以
上770℃以上の温度で焼鈍するものである。
(3) 特開昭62−284019はAr3あるいはAcm変態点以上
で圧延し、熱延後の急冷において冷却開始から終了まで
の平均冷却速度を20〜120℃/sとし、550〜640℃で巻取
り、冷間圧延の原板とするものである。
(発明が解決しようとする課題) 上記(1)は、巻取温度の上限のみ規制しているが、
板厚3mmについて計算すると、S50C、SK5に対して、それ
ぞれ950℃、720℃前後で、更に板厚2mmについては、そ
れぞれ1080℃、850℃前後となり、通常の熱延操業条件
における巻取温度が700℃以下であるのに比べ、かなり
高い温度を上限として設定している。これでは、巻取温
度に対してなんら規制がないのと変わらず、この方法で
は後述のようにエッジ割れ、球状化不良が避けられな
い。また、冷延以降の製造条件が示されていないため、
適切な製造条件を知ることができない。
これとは逆に(2)は、巻取温度が低く設定されてお
り、そのため炭素量の高い領域では熱延鋼板の硬化が著
しく、コイルエッジのトリムが困難となる。例えば、SK
4で巻取温度620℃未満では、Hv350以上に硬化する。ま
た、焼鈍温度がAc1以上であるため、炭素量の低い鋼で
は組織がフェライトとパーライトに分離し、炭化物の分
布が不均一となり正常な球状化組織とは言えなくなる。
また、(3)は、熱延後の冷却速度の下限を20℃/sと
しているが、この条件では炭素量の低い鋼で球状化率が
良好とならず、炭素量による適切な冷却速度が解明され
ていない。また、冷却速度の上限が120℃/sであるが、
このように冷却速度が高くなると、大容量の冷却速度が
必要となると同時に、冷却停止温度の制御が困難とな
り、過冷却によるコイルの焼割れ等のトラブルが発生す
る。巻取温度については、要旨で550〜640℃とするが、
実施例では発明鋼について517〜602℃となっており、温
度域が一致していない。即ち、この発明における巻取温
度は実施例に従い、517〜602℃が正しい値と推定され
る。これは(2)と同様、炭素量の高い領域では巻取温
度として低すぎるため硬化が著しく、コイル通板等の操
業性が悪化する。また、この方法においても、冷間圧延
以降の製造条件は示されておらず、熱延条件と冷延・焼
鈍条件の最適条件は不明である。
このように、従来方法においては、熱延条件あるいは
冷延条件が不適切であり、そのまま適用すると操業・品
質の両方について種々の不都合が生じていた。これは、
従来技術が、製造条件の一部のみに注目し、熱延・冷延
を総合的な観点から検討されていないことによるものと
言える。
「発明の構成」 (課題を解決するための手段) 本発明は、このような従来技術の問題点を解決するた
めに創案されたもので、製造工程を簡略化できるととも
に、操業が円滑に行われ、品質の良好な製品を得ること
に成功した。即ち本発明においては、上記課題を、熱延
における冷却速度、巻取温度、冷延における圧下率、焼
鈍条件を、鋼の炭素量に応じて、狭い範囲に適切に制御
することにより解決するもので、以下の如くである。
wt%でC:0.32〜1.10%を含有する炭素鋼を熱間圧延し
てからの冷却において、冷却速度を炭素量0.6wt%未満
では30〜40℃/s、同0.6wt%以上では15〜45℃/sとし、
その後の巻取りを炭素量0.6wt%未満では460〜600℃、
同0.6wt%以上0.8wt%未満で550〜640℃、同0.8wt%以
上では620〜680℃で行い、冷間圧延を炭素量0.6wt%未
満では圧下率50〜85%、同0.6wt%以上0.8wt%未満では
30〜70%、同0.8wt%以上では25〜60%で施した後、球
状化焼鈍を炭素量0.6wt%未満では680℃〜Ac1、同0.8wt
%以上では680〜750℃で施すことを特徴とする高炭素冷
延鋼帯の製造方法。
(作用) 上記手段について、その作用を限定理由とともに説明
すると以下の如くである。
(1) 熱延後の冷却速度 下限より低い冷却速度では、wt%(以下単に%とい
う)で、炭素量0.6%未満で冷却中にフェライト相が生
成し球状化焼鈍後の炭化物の分布が不均一になる。炭素
量0.6%以上でも、冷却の途中で変態が開始し、この場
合はフェライト相の生成も若干認められるが、それより
もパーライトのラメラ間隔が粗くなることによる球状化
率の低下がある。即ち上限より高い冷却速度では、前述
のように、冷却停止温度を精度良く制御するのが困難と
なり、また、単位時間当りの冷却水量が増加し、冷却装
置の能力の点で改造あるいは特別の冷却装置が必要とな
り好ましくない。
(2) 巻取温度 巻取温度については、従来技術では設定値が種々異っ
ており、適切な条件が不明であるので、実験により検討
した。実験は、S50CM、S70CM、SK4Mのスラブを、仕上温
度830℃板厚2.0mmに熱間圧延し、種々の温度で巻取り、
冷間圧延をそれぞれ圧下率60,50,40%で施し、球状化焼
鈍をS50CM、S70CMについては700℃で24h、SK4Mについて
は740℃で24h施した。第1図は、巻取温度と冷延焼鈍後
の球状化率の関係を示す。巻取温度の上昇に伴い、炭素
量0.6%未満ではフェライト相の生成が無視できなくな
り、同0.6%以上では粗いパーライトが生成し球状化焼
鈍後も球状化せずに残り、その結果、球状化率が低下す
る。球状化率が90%となる点で、巻取温度の上限をとる
と、それぞれ、600℃、640℃、680℃となる。更に、完
全に球状化(球状化率100%)する巻取温度の上限は、
図示より、それぞれ、560℃、630℃、670℃となり、高
級品等にはこの条件を適用することが望ましい。
巻取温度と熱延鋼板の硬度の関係を、第2図に示した
が、低い巻取温度では、熱延鋼板の硬度が上昇する。エ
ッジトリム等における作業性から考えると、熱延鋼板の
硬度の上限はHv350とする必要があり、巻取温度の上限
としては、炭素量0.6%未満、0.8%未満、0.8%以上に
対して、それぞれ、460℃、550℃、620℃となる。更
に、通常の軟質鋼板の製造ラインで製造するには、硬度
の上限はHv300とするのが好ましく、この場合は、巻取
温度の上限を、それぞれ、500℃、580℃、640℃とする
のがよい。
(3) 冷間圧延 炭素量0.5〜0.9%の炭素鋼を仕上温度830℃で板厚2.0
mmに熱間圧延し、巻取温度をS50CM、S70CM、SK4Mについ
て、それぞれ560℃、610℃、640℃で巻取り、冷間圧延
を種々の圧下率で施し、球状化焼鈍をS50CM、S70CMにつ
いては700℃で24h、SK4Mについては740℃で24h施した。
冷間圧延における圧下率とエッジ割れの関係を、エッ
ジ割れをエッジからの割れの長さで評価して、第3図に
示す。圧下率の増加に伴いエッジ割れが生成し割れ長さ
が増加している。エッジ割れを防止するためには、圧下
率の上限を、炭素量0.6%未満で85%、同0.6%以上、炭
素量0.8%未満で70%、同0.8%以上で60%とする必要が
ある。
圧下率と焼鈍後の硬度の関係を、第4図に示す。十分
に軟化させるためには、圧下率を高くする必要があり、
硬度の目標値としてJIS規格よりHv20ポイント低い硬度
をとると、圧下率の下限は、炭素量0.6%未満では50
%、同0.6%以上0.8%未満では30%、同0.8%以上では2
5%以上とする必要がある。
(4) 球状化焼鈍 下限の680℃は、これより焼鈍温度が低いと球状化率
が低下する。上限の炭素量0.8%未満でAc1、0.8%以上
で750℃は、これより温度が高いと、炭素量0.6%未満で
は組織がフェライト+パーライトに分離するため、炭化
物分布が不均一となると同時に球状化率が低下し、炭素
量0.6%以上でも一部が完全にオーステナイト化するた
め、焼鈍後の冷却において粗いパーライトが生成しやは
り球状化率が低下する。
(実施例) 本発明によるものの具体的な実施例について、比較例
と共に示すと、以下の如くである。
JIS規格の鋼S35CM、S50CM、S70CM、SK4M、SK3Mに対し
て、下記する次表の条件で、熱間圧延、冷間圧延、球状
化焼鈍を施したところ、材質は以下のようになった。
即ち、鋼3は、冷却速度が低いためフェライト相が生
成し、鋼4は、焼鈍温度が高過ぎたためフェライト+パ
ーライト組織となったもので、いずれも炭化物分布が不
均一となり、品質上好ましくない。鋼6は、やはり焼鈍
温度が高過ぎたためパーライトが生成したもので、球状
化焼鈍の目的に反し、鋼7は、これとは逆に焼鈍温度が
低過ぎたため球状化が進行しなかったもので、いずれも
球状化組織が得られない。鋼9は、冷却速度が低いた
め、ラメラ間隔の粗いパーライトが生成し、これが球状
化しにくいことから焼鈍後もラメラパーライトが残留し
ている。これらに対し鋼1、2、5、8及び10のものは
何れも球状化率が100%で、好ましい材質が得られてい
る。このように、巻取温度と圧下率のみならず、冷却速
度と焼鈍条件のいずれか一つでも発明範囲から外れる
と、良好な品質を得ることが不可能となる。
「発明の効果」 以上説明したような本発明の方法によれば、冷延前の
焼鈍を省略して製造工程の簡略化を図ると同時に、球状
化不良、硬度不良を防止し、好ましい品質の鋼帯を的確
に得しめることが可能となるものであって、工業的にそ
の効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、熱延における巻取温度と冷却・焼鈍後の球状
化率の関係を示す図表、第2図は、熱延における巻取温
度と熱延板の硬度の関係を示した図表、第3図は、冷延
における圧下率とエッジ割れ長さの関係を示す図表、第
4図は、冷延における圧下率と焼鈍後の硬度の関係を示
す図表である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】wt%でC:0.32〜1.10%を含有する炭素鋼を
    熱間圧延してからの冷却において、冷却速度を炭素量0.
    6wt%未満では30〜40℃/s、同0.6wt%以上では15〜45℃
    /sとし、その後の巻取りを炭素量0.6wt%未満では460〜
    600℃、同0.6wt%以上0.8wt%未満で550〜640℃、同0.8
    wt%以上では620〜680℃で行い、冷間圧延を炭素量0.6w
    t%未満では圧下率50〜85%、同0.6wt%以上0.8wt%未
    満では30〜70%、同0.8wt%以上では25〜60%で施した
    後、球状化焼鈍を炭素量0.6wt%未満では680℃〜Ac1
    同0.8wt%以上では680〜750℃で施すことを特徴とする
    高い炭素冷延鋼帯の製造方法。
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