JP2605417B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2605417B2
JP2605417B2 JP1223066A JP22306689A JP2605417B2 JP 2605417 B2 JP2605417 B2 JP 2605417B2 JP 1223066 A JP1223066 A JP 1223066A JP 22306689 A JP22306689 A JP 22306689A JP 2605417 B2 JP2605417 B2 JP 2605417B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、磁気テープ、フロッピーディスク等の磁気
記録媒体の構造に関する。
[従来の技術] 磁気記録媒体は、通常、ベースフイルムに磁性層を積
層(たとえば塗布)することにより作製されるが、磁性
層の接着性を向上するためには、ベースフイルムの表面
に微小凹凸(突起)が形成されていることが望ましい。
このようなベースフイルム表面特性の改良をはかったも
のとして、熱可塑性樹脂であるポリエステルにコロイド
状シリカに起因する実質的に球形のシリカ粒子を含有さ
せた二軸配向熱可塑性樹脂フイルムが知られている(た
とえば特開昭59−171623号公報)。
このような二軸配向熱可塑性樹脂フイルムにおいて
は、含有されたシリカ粒子により、フイルム表面に突起
を形成し、磁気記録媒体作製の際の磁性層の接着性を向
上したり、表面の摩擦係数を下げて加工時のハンドリン
グ性、走行性を向上したりすることが可能である。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記のような従来の二軸配向熱可塑性
樹脂フイルムでは、含有されたシリカ粒子が、フイルム
の厚さ方向全域にわたって略ランダムに分布するため、
フイルム表面における含有粒子による突起の密度増大に
は限界があり、しかもその突起高さもランダムに相当ば
らつくことになる。そのため、磁気記録媒体における磁
性層の接着性向上効果にも限界があった。
本発明は、磁気記録媒体のベースフイルム層表面に、
効果的に、高密度でかつ高さの均一な突起を形成し、磁
性層の接着性を向上することを目的とする。
[課題を解決するための手段] この目的に沿う本発明の磁気記録媒体は、熱可塑性樹
脂からなるベースフイルムの少なくとも片面に、結晶化
パラメータ△Tc gが80℃以上のポリマを0.1〜1μmの
厚さで積層し、前記ベースフイルムを構成する熱可塑性
樹脂又は前記積層ポリマの少なくとも一方に、積層ポリ
マ層の表面に突起を形成可能な不活性粒子を含有せし
め、該積層ポリマ層の表面に、磁性層を積層したものか
ら成る。
なお、以下の本発明の説明においては、上記熱可塑性
樹脂からなるベースフイルムを「ベースフイルム」と称
し、前記従来の技術の説明における、「磁気記録媒体の
ベースフイルム」とは区別して用いる。
本発明において、ベースフイルムを構成する熱可塑性
樹脂は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、
ポリフェニレンスルフィドなど特に限定されることはな
いが、特に、ポリエステル、中でも、エチレンテレフタ
レート、エチレンα、β−ビス(2−クロルフェノキ
シ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート、エチレン2,6
−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造
単位を主要構成成分とするものが、磁気記録媒体として
の良好な強度、耐久性を得る上で好ましい。
このベースフイルムの少なくとも片面に、結晶化パラ
メータ△Tc gが80℃以上のポリマが積層される。結晶化
パラメータ△Tc gは、後述の如く、冷結晶化温度Tccと
ガラス転移点Tgとの差として定義されるもので、ポリマ
がガラス転移点に達した後の結晶化のしやすさの度合を
示すパラメータである。結晶化パラメータ△Tc gが大き
い程結晶化しにくく、△Tc gが小さい程結晶化しやす
い。したがって、△Tc gが80℃以上のポリマを積層する
ということは、ベースフイルムに対し、敢えて結晶化し
にくいポリマを積層するということになる。
△Tc gが80℃以上の条件を満足するポリマとして、こ
の条件を満足するように調製されたポリエステル、中で
もポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−
ナフタレート等が好ましい。また、これら基本ポリエス
テルに、適切なモノマーを共重合し△Tc gを調節しても
よい。共重合の際の共重合酸としては、イソフタル酸、
金属スルホネートを有する芳香族ジカルボン酸等が挙げ
られ、量的には2〜30mol%が好ましい。共重合ジオー
ル成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、
ネオペンチルグリコール等が挙げられ、量的には2〜30
mol%が好ましい。
積層されるベースフイルムおよびポリマの少なくとも
いずれか一方に、不活性粒子が含有される。この不活性
粒子としては、後述のようなメカニズムで、積層ポリマ
の表面に突起を形成可能なものであればとくに限定され
ないが、均一な高さの突起を高密度に形成するために、
粒径比(粒子の長径/短径)が1.0〜1.3の粒子、特に、
球形状の粒子が好ましい。また、不活性粒子の単一粒子
指数が0.7以上、好ましくは0.9以上のものが特に望まし
い。
このような好ましい粒子特性を満足させるにはアルミ
ナ珪酸塩、1次粒子が凝集した状態のシリカ、内部析出
粒子などは好ましくない。好ましい粒子として、コロイ
ダルシリカに起因する実質的に球形のシリカ粒子、架橋
高分子による粒子(たとえば架橋ポリスチレン)などが
あるが、特に10重量%減量時温度(窒素中で熱重量分析
装置島津TG−30Mを用いて測定。昇温速度20℃/分)が3
80℃以上になるまで架橋度を高くした架橋高分子粒子が
好ましい。なお、コロイダルシリカに起因する球形シリ
カの場合にはアルコキシド法で製造された、ナトリウム
含有量が少ない、実質的に球形粒子が好ましい。しかし
ながら、その他の粒子、例えば炭酸カルシウム、二酸化
チタン、アルミナ等の粒子でも、積層ポリマ厚さと平均
粒径の適切なコントロールにより十分使いこなせるもの
である。
不活性粒子の大きさは、積層ポリマ中に該不活性粒子
を含有する場合、積層ポリマ中での平均粒径が該積層ポ
リマ層の厚さの0.1〜10倍、好ましくは0.5〜5倍、さら
に好ましくは1.1〜3倍の範囲とされる。つまり、積層
ポリマ層の厚さに近い、あるいはそれ以上の平均粒径の
粒子が好ましい。
本発明においては、ベースフイルムへの前記ポリマの
積層は、溶融ポリマ同士を積層することにより行われ
る。すなわち、本発明における共押出による積層とは、
ベースフイルムを構成する熱可塑性樹脂と、それに積層
されるポリマとをそれぞれ異なる押出装置で押出し、口
金から積層シートを吐出する前にこれらを積層すること
をいう。この積層は、シート状に成形、吐出するための
口金内(たとえばマニホルド)で行ってもよいが、積層
ポリマ層が極薄であることから、口金に導入する前のポ
リマ管内で行うことが好ましい。とくに、ポリマ管内の
積層部を、矩形に形成しておくと、幅方向に均一に積層
できるので特に好ましい。ポリマ管内矩形積層部で積層
された2層の溶融ポリマは、口金内マニホルドでシート
幅方向に所定幅まで拡幅され、口金からシート状に吐出
された後、二軸に延伸される。したがって、たとえ二軸
配向後の積層ポリマ層が極薄であっても、ポリマ管内矩
形積層部では、ベースフイルムへの積層ポリマを、かな
りの厚さで積層することになるので、容易にかつ精度よ
く積層できる。また、本発明においては、上記の如く共
押出により積層することによって、積層ポリマの結晶化
パラメータ△Tc gを80℃以上としたことの意味が、次の
ようなメカニズムで発揮される。
通常、シート状に成形される溶融樹脂中に粒子が含有
されていると、シート状に押出す口金から冷却ドラムへ
のキャスティング時に加わるドラフトにより、含有粒子
には該含有粒子を成形されようとする溶融樹脂シートの
表層方向に集中させようとする力が作用することが知ら
れている。このとき、溶融樹脂が結晶化しやすいもので
あると、シート表層あるいはその近傍の溶融樹脂がす速
く結晶化を起こして流動が固定されてしまうため、表層
部への粒子の集中は抑えられてしまう。逆に溶融樹脂が
結晶化しにくいものであると、シート表層近傍の結晶化
が遅いため、含有粒子の表層部への集中が起こる。しか
し、シートに成形される溶融樹脂全体を結晶化を起こし
にくい樹脂にしてしまうと、成形性が著しく損われて、
場合によっては満足し得る品質のシートへの成形が不可
能になってしまう。
そこで本発明では、ベースフイルムを構成する熱可塑
性樹脂には、成形性の十分に良好なものを選んでシート
状に成形されるべき溶融樹脂全体としては十分な成形性
を確保し、それに積層されるポリマは、敢えて結晶化の
起こりにくいものとして表層部の結晶化を遅らせ、前記
キャスティング時のドラフトによる含有粒子の表層部へ
の集中を強制的に起こさせるようにしている。このメカ
ニズムにより、シート状に成形されるベースフイルムと
ポリマとの積層フイルムには、積層ポリマの表面に含有
粒子による突起(凹凸)が形成される。
含有される不活性粒子は、少なくとも積層されるポリ
マに含有されていることが好ましいが、ベースフイルム
を構成する熱可塑性樹脂にのみ含有されていてもよい。
後者の場合には、前記メカニズムにより、主としてベー
スフイルム層の表層、つまり積層ポリマとの界面部に突
起が集中して形成され、この突起により、薄膜の積層ポ
リマ層を介して該ポリマ層表面にも突起が形成される。
したがって、積層ポリマ層は、薄い方がベースフイルム
層表層の影響を受けやすいが、あまり薄くなると、前記
表層への含有粒子の集中化のメカニズムが損われるの
で、製品形態での厚さで、0.1〜1μm好ましくは0.1〜
0.7μm、さらに好ましくは0.15〜0.5μmの範囲である
ことが必要である。積層ポリマ層に不活性粒子が含有さ
れている場合には、前記表層への含有粒子の集中による
突起形成とともに、該ポリマ層を薄く形成することによ
り次のように突起が形成される。
つまり、極薄積層ポリマ層に、そのポリマ層厚さ近傍
あるいはそれよりも大きな平均粒径の微小不活性粒子が
含有されることにより、ポリマ全体に対し、その厚さ方
向に、実質的に積層フイルム層のみに集中して不活性粒
子を分布させることができる。その結果、積層ポリマ中
における粒子密度を容易に高くすることができ、該粒子
により形成される表面突起の密度も容易に高めることが
できる。また、不活性粒子は、上記積層ポリマ層中に含
有されることで、フイルム全体に対し、その厚さ方向に
位置規制されることになり、しかも積層ポリマ層の厚さ
と平均粒径とは前述の如き関係にあるから、該粒子によ
り形成される表面突起の高さは、極めて均一になる。し
たがって、不活性粒子が極薄の積層ポリマ中に含有され
ていることによる効果と、積層ポリマが△Tc g80℃以上
の結晶化の起こりにくいポリマであることによる効果と
の相乗効果が得られ、形成される表面突起の高密度化、
高さの均一化が一層促進される。この相乗効果を得るた
めには、この場合にも積層ポリマの厚さは0.1〜1μm
の範囲にあることが必要であり、とくに前述の、不活性
粒子の平均粒径と積層ポリマ厚さとの望ましい比率を達
成するためには、上記範囲の中でも積層ポリマ厚さの薄
い方が好ましい。
共押出により積層されシート状に成形されたベースフ
イルムと積層ポリマとの積層シートは、二軸に延伸され
て二軸配向フイルムとされる。この二軸配向の積層フイ
ルムにて、幅方向ヤング率が400kg/mm2以上であること
が、磁気記録媒体形成時の耐久性、傷付き防止性を向上
する上で好ましい。幅方向ヤング率を上げるには、通常
幅方向延伸倍率を上げればよいが、積層ポリマ層が薄い
ので、該層が積層状態が不均一であると、延伸倍率を大
きくとれない(大きくとるとフイルム破れ等のトラブル
を引き起こす)。しかし前述の如く、矩形積層部を有す
るポリマ管で積層することによって、幅方向に均一な積
層が可能となり、それによって十分な幅方向延伸倍率を
とることが可能となって、幅方向ヤング率400Kg/cm2
容易に達成される。
このように十分な強度を有し、かつ均一かつ高密度の
表面突起を有する積層フイルムの積層ポリマ表面に磁性
層が積層される。磁性層の成分については、磁気記録媒
体の用途に応じて選択、調製される。磁性層の積層方法
は、コーティングによる塗布が常法であるが、他の方法
によってもよい。積層ポリマ表面には、突起(凹凸)が
形成されているので、たとえば磁性層を構成する成分を
溶媒とともに塗布した際、突起高さが均一であることに
より、溶媒とともに磁性層のバインダ成分が突起間凹部
に浸み込みやすくなり、該凹部に浸み込んだバインダに
より磁性層の接着性が向上されるとともに、突起密度が
高いことにより、磁性層のポリマ層表面に対する接着力
が向上される。
なお、本発明においては、ベースフイルム、積層ポリ
マ、磁性層の積層に関して、主として磁気記録媒体の用
途に応じて次のような態様をとることができる。
第1の態様としては、ベースフイルムの片面にポリマ
層を積層し、その上に磁性層を積層するものであり、通
常の磁気テープ用途等に供される。ベースフイルムの反
ポリマ層の面は、バックコートすることが好ましい。
第2の態様としては、ベースフイルムの両面に前記ポ
リマ層を積層し、その両外面に磁性層を積層するもの
で、主としてフロッピーディスク等に供せられる。両面
において磁性層の接着性が向上される。
第3の態様としては、ベースフイルムの両面に前記ポ
リマ層を積層し、両外面のうち片面に磁性層を積層し、
反対面をバックコート面としたものである。反磁性層面
にも所定の薄膜ポリマを積層することによって、バック
コートに対する接着性を向上できる。
次に本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明す
る。
まず、△Tc gが80℃以上のポリマおよび/又はベース
フイルムを構成する熱化塑性樹脂に不活性粒子を含有せ
しめる方法としては、重合後、重合中、重合前のいずれ
でも良いが、ポリマにベント方式の2軸押出機を用いて
練り込む方法が本発明範囲の表面形態のフイルムを得る
のに有効である。また、粒子の含有量を調節する方法と
しては、上記方法で高濃度マスターを作っておき、それ
を製膜時に不活性粒子を実質的に含有しない熱可塑性樹
脂で希釈して粒子の含有量を調節する方法が本発明範囲
の表面形態のフイルムを得るのに有効である。
かくして、積層用ポリマおよびベースフイルム用熱可
塑性樹脂を十分乾燥したのち、それぞれ別々の公知の溶
融押出機に供給し、融点以上分解点以下の温度で溶融
し、前述の如き積層用装置に供給して積層する。積層溶
融ポリマをスリット状のダイからシート状に押出し、キ
ャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フイル
ムを作る。すなわち、2または3台の押出機、2または
3層用の合流ブロックあるいは口金を用いて、これらの
積層シートを得る。合流ブロック方式を用いる場合は積
層部分を前述の如く矩形のものとし、両者の熱可塑性樹
脂の溶融粘度の差(絶対値)を0〜2000ポイズ、好まし
くは0〜1000ポイズの範囲にしておくことが本発明範囲
の表面形態のフイルムを安定して、幅方向の斑なく、工
業的に製造するのに有効である。
次にこの積層未延伸フイルムを二軸延伸し、二軸配向
せしめる。二軸延伸の方法は同時二軸延伸、逐次二軸延
伸法のいずれでもよいが、長手方向、幅方向の順に延伸
する逐次二軸延伸法の場合に本発明範囲の表面形態のフ
イルムを安定して、幅方向の斑なく、工業的に製造する
のに有効である。逐次二軸延伸の場合、長手方向の延伸
を、3段階、特に4段階以上に分けて、40〜150℃の範
囲で、かつ、1000〜50000%/分の延伸速度で、3〜6
倍行なう方法は本発明範囲の表面形態を有するフイルム
を得るのに有効である。幅方向の延伸温度、速度は、80
〜170℃、1000〜20000%/分の範囲が好適である。延伸
倍率は3〜10倍が好適である。また必要に応じてさらに
長手方向、幅方向の少なくとも一方向に延伸することも
できる。次にこの延伸フイルムを熱処理する。この場合
の熱処理条件としては、幅方向に弛緩、微延伸、定長下
のいずれかの状態で140〜280℃、好ましくは160〜220℃
の範囲で0.5〜60秒間が好適であるが、熱処理にマイク
ロ波加熱を併用することによって本発明範囲の表面形態
を有するフイルムが得られやすくなるので望ましい。
上記二軸配向積層フイルムの積層ポリマ側表面に、磁
性層を塗布し、乾燥することにより、磁性層の接着され
た所望の磁気記録媒体が得られる。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法] 本発明の特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次
の通りである。
(1)粒子の平均粒径 フイルムからポリエステルをプラズマ低温灰化処理法
(たとえばヤマト科学製PR−503型)で除去し粒子を露
出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが粒子
はダメージを受けない条件を選択する。これをSEM(走
査型電子顕微鏡)で観察し、粒子の画像(粒子によって
できる光の濃淡)をイメージアナライザー(たとえばケ
ンブリッジインストルメント製QTM900)に結び付け、観
察箇所を変えて粒子数5000個以上で次の数値処理を行な
い、それによって求めた数平均径Dを平均粒径とする。
D=ΣDi/N ここで、Diは粒子の円相当径、Nは個数である。
(2)粒子の含有量 ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択
し、粒子をポリエステルから遠心分離し、粒子の全体重
量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とする。
場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
(3)ガラス点移転Tg、冷結晶化温度Tcc、結晶化パラ
メータ△Tc g、融点 パーキシエルマー社製のDSC(示差走査熱量計)II型
を用いて測定した。DSCの測定条件は次の通りである。
すなわち、試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度
で5分間溶融した後、液体窒素中に急冷する。この急冷
試料を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。
さらに昇温を続け、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク
温度をもって冷結晶化温度Tccとした。さらに昇温を続
け、融解ピーク温度を融点とした。また、TccとTgの差
(Tcc−Tg)を結晶化パラメータ△Tc gと定義する。
なお、本発明においては、冷結晶化温度Tccが実質的
に検出されないような低結晶性ポリマを積層用ポリマと
して使用することもできる。このような場合、本発明に
おいては、結晶化パラメータ△Tc gを無限大として、80
℃以上の範囲にあるものとして扱った。
(4)表面突起の平均高さ 2検出器方式の走査型電子顕微鏡[ESM−3200、エリ
オニクス(株)製]と断面測定装置[PMS−1、エリオ
ニクス(株)製]においてフイルム表面の平坦面の高さ
を0として走査したときの突起の高さ測定値を画像処理
装置[IBAS2000、カールツァイス(株)製]に送り、画
像処理装置上にフイルム表面突起画像を再構築する。次
に、この表面突起画像で突起部分を2値化して得られた
個々の突起の面積から円相当径を求めこれをその突起の
平均径とする。また、この2値化された個々の突起部分
の中で最も高い値をその突起の高さとし、これを個々の
突起について求める。この測定を場所をかえて500回繰
返し、突起個数を求め、測定された全突起についてその
高さの平均値を平均高さとした。
(5)粒子濃度 2次イオンマススペクトル(SIMS)を用いて、フイル
ム中の粒子に起因する元素の内のもっとも高濃度の元素
とポリエステルの炭素元素の濃度比を粒子濃度とし、厚
さ方向の分析を行なう。測定装置、条件は下記のとおり
である。
測定装置 2次イオン質量分析装置(SIMS) 西独、ATOMIKA社製 A−DIDA3000 測定条件 1次イオン種:O2 + 1次イオン加速電圧:12KV 1次イオン電流:200nA ラスター領域:400μm□ 分析領域:ゲート30% 測定真空度:6.0×109Torr E−GUN:0.5KV−3.0A (6)単一粒子指数 フイルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で写真観
察し、粒子を検知する。観察倍率を100000倍程度にすれ
ば、それ以上分けることができない1個の粒子が観察で
きる。粒子の占める全面積をA、その内2個以上の粒子
が凝集している凝集体の占める面積をBとした時、(A
−B)/Aをもって、単一粒子指数とする。TEM条件は下
記のとおりであり1視野面積:2μm2の測定を場所を変え
て、500視野測定する。
・装置:日本電子製JEM−1200EX ・観察倍率:100000倍 ・切片厚さ:約1000オングストローム (7)粒径比 上記(1)の測定において個々の粒子の長径の平均値
/短径の平均値の比である。
すなわち、下式で求められる。
長径=ΣD1i/N 短径=ΣD2i/N D1i、D2iはそれぞれ個々の粒子の長径(最大径)、短径
(最短径)、Nは総個数である。
(8)ヤング率 JIS−Z−1702に規定された方法にしたがって、イン
ストロンタイプの引っ張り試験機を用いて、25℃、65℃
RHにて測定した。
(9)積層ポリマ層の厚さ 積層ポリマ中に不活性粒子を含有せしめる場合は次の
方法によった。
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フイルム
中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する元素とポリエ
ステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、
熱可塑性樹脂A層の表面から深さ(厚さ)方向の分析を
行なう。表層では表面という界面のために粒子濃度は低
く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発
明フイルムの場合は深さ[I]でいったん極大値となっ
た粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をも
とに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[II](ここでI
I>I)を積層厚さとした。条件は測定法(5)と同様
である。
なお、フイルム中にもっとも多く含有する粒子が有機
高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面か
らエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR
(赤外分光法)あるいはコンフォーカル顕微鏡などで、
その粒子濃度のデプスプロファイルを測定し、上記同様
の手法から積層厚さを求めても良い。
ベースフイルムを構成する熱可塑性樹脂中にのみ不活
性粒子が含有される場合は、フイルムの断面観察あるい
は薄膜段差測定機等によって積層ポリマ層の厚さを求め
た。
(10)磁性層接着性 磁性塗膜に市販のポリエステル粘着テープ(19mm巾)
を30mm長さに貼りつけ、一気に引き剥す。日本精密光学
製ヘイズメータSEP−H−2型で塗膜引き剥し部分の全
光線透過率を測定し(JIS−K−7105)、次式により塗
膜残量を求め接着性を判定した。
磁性塗膜剥離の残量 D=(To−T1)/To×100(%) ここで、 To:磁性塗料塗布前(原反)の全光線透過率(%) T1:磁性塗膜引き剥し部分の全光線透過率(%) Dの値 判定 20%未満 × 接着不良で本発明の目 的に達しない。
20以上40%未満 △ 接着不良で本発明の目 的に達しない。
40以上60%未満 ○ 接着性良好で本発明の 目的範囲 60%以上 ◎ 接着性特に良好で本発 明の目的範囲 (11)静摩擦係数 μs ハンドリング性の評価ファクターとしてμsを用い
た。
ASTM−D−1894−B−63に従い、スリップテスタを用
いてフイルム/フイルムの静摩擦係数を測定した。1.5
を超えるとハンドリング性不良となる。
[実施例] 本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1〜4、比較例1〜3 平均粒径の異なる架橋ポリスチレン粒子、コロイダル
シリカに起因するシリカ粒子を含有するエチレングリコ
ールスラリーを調製し、このエチレングリコールスラリ
ーを190℃で1.5時間熱処理した後、テレフタル酸ジメチ
ルとエステル交換反応後、重縮合し、該粒子を0.3〜55
重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下PET
と略記する)のペレットを作った。このペレットを用い
て結晶化パラメータ△Tc gを種々変更した積層用ポリマ
を調製し、また、常法によって、実質的に不活性粒子を
含有しないPETを製造し、ベースフイルム用熱可塑性樹
脂とした。これらのポリマをそれぞれ180℃で3時間減
圧乾燥(3Torr)した。積層用ポリマを押出機1に供給
し310℃で溶融し、さらに、ベースフイルム用熱可塑性
樹脂を押出機2に供給、280℃で溶融し、これらのポリ
マを矩形積層部を備えた合流ブロックで合流積層し、静
電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティン
グ・ドラムに巻きつけて冷却固化し、2層構造の未延伸
フイルムを作った。この時、それぞれの押出機の吐出量
を調節し総厚さ、積層ポリマ層の厚さを調節した。この
未延伸フイルムを温度80℃にて長手方向に4.5倍延伸し
た。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で
行なった。この一軸延伸フイルムをステンタを用いて延
伸速度2000%/分で100℃で幅方向に4.0倍延伸し、定長
下で、200℃にて5秒間熱処理し、総厚さ15μm、積層
ポリマ層厚さ0.2〜2μmの二軸配向積層フイルムを得
た。得られたフイルムの積層ポリマ側の表面に常法によ
り磁性層をコーテイングし磁気記録媒体を得た。これら
の磁気記録媒体の本発明のパラメータは第1表に示した
とおりであり、本発明のパラメータが範囲内の場合は磁
性層接着性、ハンドリング性の各特性は第1表に示した
とおり良好な値を示したが、そうでない場合は両特性を
兼備するフイルムは得られなかった。
実施例5〜8、比較例4〜6 ベースフイルムを構成する熱可塑性樹脂中に不活性粒
子を含有せしめ、積層ポリマ中には、表面突起形成用の
粒子を予め含有させないで、両者を共押出して積層し、
前記実施例と同じ方法で磁気記録媒体を得た。第2表に
示すように、各パラメータを本発明範囲内とすることに
より、良好な磁性層接着性、ハンドリング性が得られ
る。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明の磁気記録媒体によると
きは積層ポリマを△Tc gが80℃以上のポリマとして極薄
にて積層することにより、該ポリマ層表面に高密度かつ
高さの均一な含有不活性粒子による突起を形成できるよ
うにしたので、積層フイルムの成形性を確保しつつ、該
フイルムに積層される磁性層の接着性を向上することが
できる。また、上記突起形成面を、磁性層接着面のみな
らずバックコート面にも適用でき、バックコートにおけ
る接着性向上をはかることもできる。
また、本発明磁気記録媒体のフイルムは、製膜工程内
で、コーティングなどの操作なしで共押出により直接複
合積層することによって作ったフイルムであり、製膜工
程中あるいはその後のコーティングによって作られる積
層フイルムに比べて、最表層の分子も二軸配向であるた
め、上述した特性以外、例えば、表面の耐削れ性もはる
かに優れ、しかもコスト面、品質の安定性などにおいて
有利である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂からなるベースフイルムの少
    なくとも片面に、結晶化パラメータ△Tc gが80℃以上の
    ポリマを0.1〜1μmの厚さで共押出により積層し、前
    記ベースフイルムを構成する熱可塑性樹脂又は前記積層
    ポリマの少なくとも一方に、積層ポリマ層の表面に突起
    を形成可能な不活性粒子を含有せしめ、該積層ポリマ層
    の表面に、磁性層を積層したことを特徴とする磁気記録
    媒体。
  2. 【請求項2】前記ベースフイルムとポリマとの積層フイ
    ルムの幅方向ヤング率が400kg/mm2以上である請求項1
    記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】前記ベースフイルムと積層ポリマとが、と
    もに二軸に配向されている請求項1記載の磁気記録媒
    体。
  4. 【請求項4】前記不活性粒子が前記積層ポリマに含有さ
    れており、該不活性粒子の平均粒径が、積層ポリマ層の
    厚さの0.1〜10倍の範囲にある請求項1記載の磁気記録
    媒体。
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