JP3083081B2 - 磁気記録媒体用ベースフイルム - Google Patents

磁気記録媒体用ベースフイルム

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JP3083081B2
JP3083081B2 JP08356670A JP35667096A JP3083081B2 JP 3083081 B2 JP3083081 B2 JP 3083081B2 JP 08356670 A JP08356670 A JP 08356670A JP 35667096 A JP35667096 A JP 35667096A JP 3083081 B2 JP3083081 B2 JP 3083081B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二軸配向ポリエス
テルフイルムからなる磁気記録媒体用ベースフイルムに
関し、とくに、磁気記録媒体用ベースフイルムとして表
面特性とともにフイルム全体としての特性の改良をはか
った、積層構成のフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】表面特性の改良をはかった磁気記録媒体
用ベースフイルム用二軸配向ポリエステルフイルムとし
て、ポリエステルにコロイド状シリカに起因する実質的
に球形のシリカ粒子を含有させたフイルムが知られてい
る(たとえば特開昭59−171623号公報)。
【0003】このような二軸配向ポリエステルフイルム
においては、含有されたシリカ粒子により、フイルム表
面に突起を形成し、表面の摩擦係数を下げてハンドリン
グ性、走行性を向上したり、磁気記録媒体用途での磁性
層の接着性を向上したりすることが可能である。
【0004】一方、上記のような、粒子を含有したフイ
ルムではないが、磁気テープのドロップアウト特性等を
改良するために、二軸配向ポリエステルフイルムの低分
子量物のフイルム表面への析出を、フイルムの固有粘度
の調製によって抑えるようにした技術が知られている
(特公昭62−27980号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開昭59−171623号公報開示の二軸配向ポリエス
テルフイルムでは、含有されたシリカ粒子が、フイルム
の厚さ方向全域にわたってランダムに分布するため、フ
イルム表面における含有粒子による突起の密度増大には
限界があり、しかもその突起高さもランダムに相当ばら
つくことになる。この突起高さが不均一であること、突
起密度が低いことに起因して、最近つぎのような問題が
指摘されだした。
【0006】フイルム表面の突起高さが不均一である
と、高さの高い突起部分が削れやすくなり、フイルムの
加工工程、たとえば磁気記録媒体用途における磁性層塗
布・カレンダー工程などの工程速度の増大にともない、
接触するロールによってフイルム表面に傷がつくという
欠点が、最近、問題となってきている。
【0007】また、磁気記録媒体用途、とくにビデオテ
ープは、最近、ソフト用(制作された映像作品をパッケ
ージ媒体に記録固定、複製・増製したもの)に用いられ
るケースが多いが、この場合、上記従来のフイルムをベ
ースとしたビデオテープでは、映像作品を録画する工程
でマスターテープから高速でダビング(記録複写)する
時のS/N(シグナル/ノイズ比、画質のパラメータ)
の低下が大きく画質が悪くなるという問題も出てきてい
る。
【0008】さらに、フイルム表面の突起密度が低い
と、フイルム表面の滑り性改良の効果が低く、ハンドリ
ング性、走行性改良の効果が期待した程得られない。
【0009】一方、前記特公昭62−27980号公報
開示のフイルムでは、低分子量物のフイルム表面への析
出はある程度抑えられるものの、フイルム表面形態が適
切でないため、低分子量物の析出を抑えた時のドロップ
アウト低減効果が不十分であり、また、フイルム表面へ
の傷付きを防止したり、ダビング時のS/Nの低下を抑
制したりする特性は、基本的に有していない。
【0010】本発明は、上記のような従来フイルムの限
界に鑑み、二軸配向ポリエステルフイルムの表面に高密
度で均一な高さの突起を形成して、磁気記録媒体用途に
おけるダビングによる画質(S/N)の低下の防止(以
下耐ダビング性という)をはかり、併せて、フイルム表
面への低分子量物の析出を抑え、また少量の析出物が表
面に存在してもその特異な表面形態の凹凸の中に析出物
を存在させることにより磁気記録媒体用途におけるドロ
ップアウト増加を防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的に沿う本発明の
磁気記録媒体用ベースフイルムは、ポリエステルAと粒
子とを主成分とするフイルムをポリエステルBを主成分
とするフイルムの少なくとも片面に積層した二軸配向ポ
リエステルフイルムからなり、前記ポリエステルAの積
層フイルムの厚さが0.005 〜3μm、該積層フイルム中
に含有される前記粒子の平均粒径が積層フイルム厚さの
0.1 〜10倍、該粒子の積層フイルム中の含有量が0.3 重
量%以上2重量%未満であり、かつ、二軸配向ポリエス
テルフイルム全体の低分子量物含有量が1.0 %以下であ
るフイルムから成る。
【0012】また、上記目的は、本発明による次の磁気
記録媒体用ベースフイルムによっても達成される。ポリ
エステルAと粒子とを主成分とするフイルムをポリエス
テルBを主成分とするフイルムの少なくとも片面に積層
した二軸配向ポリエステルフイルムからなり、前記ポリ
エステルAの積層フイルムの厚さが0.005 〜3μm、該
積層フイルム中に含有される前記粒子の平均粒径が積層
フイルム厚さの0.1 〜10倍、該粒子の積層フイルム中の
含有量が0.3 重量%以上2重量%未満であり、かつ、二
軸配向ポリエステルフイルム全体の固有粘度が0.7 dl
/g以上であることを特徴とする磁気記録媒体用ベース
フイルム。
【0013】これら二軸配向ポリエステルフイルムから
なる磁気記録媒体用ベースフイルムにおいては、ポリエ
ステルフイルムA層含有の粒子によりその表面に高密度
かつ高さの均一な突起が形成され、磁気テープ用途にお
ける耐ダビング性が向上され、二軸配向ポリエステルフ
イルム全体の低分子量物含有量あるいは固有粘度を上記
の特定範囲に保つことにより、磁気記録媒体としたとき
のベースフイルムからの低分子量物の析出が実質的に防
止され、ドロップアウト特性がより悪化することが防止
される。
【0014】本発明におけるポリエステルAは、特に限
定されることはないが、特に、エチレンテレフタレー
ト、エチレンα、β−ビス(2-クロルフェノキシ)エタ
ン-4,4'-ジカルボキシレート、エチレン2,6-ナフタレー
ト単位から選ばれた少なくとも一種の構造単位を主要構
成成分とする場合に表面突起の形成、および磁気テープ
用途における耐ダビング性がより一層良好となるので望
ましい。また、本発明を構成するポリエステルは結晶性
である場合に耐ダビング性がより一層良好となるのでき
わめて望ましい。ここでいう結晶性とはいわゆる非晶質
ではないことを示すものであり、定量的には結晶化パラ
メータにおける冷結晶化温度Tccが検出され、かつ結晶
化パラメータΔTcgが150 ℃以下のものである。さら
に、示差走査熱量計で測定された融解熱(融解エンタル
ピー変化)が7.5cal/g以上の結晶性を示す場合に透明
性がより一層良好となるのできわめて望ましい。また、
エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエス
テルの場合に、磁気テープ用途における耐ダビング性が
より一層良好となるので特に望ましい。なお、本発明を
阻害しない範囲内で、2種以上のポリエステルを混合し
てもよいし、共重合ポリマを用いてもよい。
【0015】本発明のポリエステルA中の粒子の形状
は、特に限定されないが、フイルム中での粒径比(粒子
の長径/短径)が1.0 〜1.3 の粒子、特に、球形状の粒
子の場合に、表面に形成される突起の高さを均一化しや
すく、かつ高密度化しやすくなるので、耐ダビング性を
大きく高めることができる。
【0016】また、本発明のポリエステルA中の粒子は
フイルム中での単一粒子指数が0.7以上、好ましくは0.9
以上である場合に、均一高さの突起が形成されやす
く、耐ダビング性がより一層良好となるので特に望まし
い。
【0017】本発明のポリエステルA中の粒子の種類は
特に限定されないが、上記の好ましい粒子特性を満足さ
せるには好ましい粒子として、コロイダルシリカに起因
する実質的に球形のシリカ粒子、架橋高分子による粒子
(たとえば架橋ポリスチレン)などがある。特に10重量
%減量時温度(窒素中で熱重量分析装置島津TG−30M
を用いて測定。昇温速度20℃/分)が380 ℃以上になる
まで架橋度を高くした架橋高分子粒子が特に望ましい。
なお、コロイダルシリカに起因する球形シリカの場合に
はアルコキシド法で製造された、ナトリウム含有量が少
ない、実質的に球形のシリカが特に望ましい。しかしな
がら、その他の粒子、例えば炭酸カルシウム、二酸化チ
タン、アルミナ等の粒子でもフイルム厚さと平均粒径の
適切なコントロールにより十分使いこなせるものであ
る。
【0018】本発明のポリエステルAを主成分とするフ
イルム層の厚さは0.005 〜3μm、好ましくは0.01〜1
μm、さらに好ましくは0.03〜0.5 μmである。フイル
ム厚さが上記の範囲より小さいと積層フイルム層として
の耐久性が確保できなくなり、逆に大きいと含有粒子と
の関係から、適切な高さの表面突起を高密度に形成する
のが困難になる。
【0019】また、本発明における粒子の大きさは、該
粒子を含有する積層フイルム中での平均粒径が該積層フ
イルム厚さの0.1 〜10倍、好ましくは0.5 〜5倍、さら
に好ましくは1.1 〜3倍の範囲とされる。平均粒径/積
層フイルム厚さ比が上記の範囲より小さいと表面に形成
される突起の高さが不均一になり、耐ダビング性が不良
となり、逆に大きくても粒子により形成される表面突起
が削れやすくなるので好ましくない。
【0020】また、ポリエステルA中の粒子のフイルム
中での平均粒径(直径)が0.005 〜3μm、好ましくは
0.02〜0.45μmの範囲である場合に、耐ダビング性がよ
り一層良好となるので望ましい。
【0021】そして、このような粒子が、0.3 重量%以
2重量%未満ポリエステルAのフイルム中に含有され
【0022】また、上記粒子により形成される、ポリエ
ステルAの積層フイルム層の表面の突起の平均高さは、
粒子の平均粒径の1/4以上である。このような平均高
さの表面突起は、前述の範囲から、積層フイルム厚さに
対し含有粒子の平均粒径を適切に選択、設定することに
より、得られる。
【0023】あるいはまた、上記粒子により形成される
ポリエステルAの積層フイルム表面の突起について、該
粒子の平均粒径の1/3以下の高さの突起数が全突起数
の70%以下に抑えられる。つまり、高さの低すぎる突
起、換言すれば、耐ダビング性向上効果の低い突起の数
が多くなりすぎないように抑えられる。
【0024】さらにまた、上記粒子により形成されるポ
リエステルAの積層フイルム表面の突起の高さ分布の相
対標準偏差が0.6 以下、好ましくは0.55以下、さらに好
ましくは0.5 以下とされる。つまり、高さの揃った均一
な突起とされることにより、耐ダビング性が効果的に向
上される。
【0025】つまり、本発明における二軸配向ポリエス
テルフイルムの積層フイルム層には、該フイルム層厚さ
近傍あるいはそれよりも大きな平均粒径の粒子が含有さ
れる。換言すれば、極薄積層フイルムに、そのフイルム
厚さ近傍あるいはそれよりも大きな平均粒径の微小粒子
が含有される。したがって、二軸配向ポリエステルフイ
ルム全体に対し、その厚さ方向に、実質的に積層フイル
ム層のみに集中して粒子を分布させることができる。そ
の結果、積層フイルム中における粒子密度を容易に高く
することができ、該粒子により形成されるフイルム表面
の突起の密度も容易に高めることができる。また、粒子
は、上記積層フイルム中に含有されることで、二軸配向
ポリエステルフイルム全体に対し、その厚さ方向に位置
規制されることになり、しかも積層フイルムの厚さと平
均粒径とは前述の如き関係にあるから、該粒子により形
成される表面突起の高さは、極めて均一になる。したが
って、この積層フイルムの磁気テープ用途における耐ダ
ビング性が向上される。
【0026】このようなポリエステルAと粒子とを主成
分とするフイルムがポリエステルBを主成分とするフイ
ルムに積層される。
【0027】ポリエステルBは、前述のポリエステルA
と同様のものからなり、ポリエステルBとポリエステル
Aとは同じ種類のものでも異なるものでもよい。ポリエ
ステルAのフイルム層は、ポリエステルBからなるフイ
ルム層の両面、又は片面に積層される。つまり、積層構
成がA/B/A、A/Bの場合であるが、もちろん、A
と異なる表面状態を有するC層をAと反対面に設けたA
/B/Cでも、あるいはそれ以上の多層構造でもよい。
(ここで、A、B、Cそれぞれの樹脂の種類は同種で
も、異種でもよい。また、少なくとも片方の表面はA層
であることが必要である。磁性層を設ける場合は、A/
B構成の場合はB層、A/B/C構成の場合は平滑な方
の面に設けるのが好適である。)
【0028】ポリエステルBとしても、結晶性ポリマが
望ましく、特に、結晶性パラメータΔTcgが20〜100 ℃
の範囲の場合に、該ポリエステルBのフイルム表面の耐
スクラッチ性等がより一層良好となるので望ましい。具
体例として、エチレンテレフタレート、エチレンα、β
−ビス(2-クロルフェノキシ)エタン-4,4'-ジカルボキ
シレート、エチレン2,6-ナフタレート単位から選ばれた
少なくとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に
耐スクラッチ性が特に良好となるので望ましい。ただ
し、本発明を阻害しない範囲内、望ましい結晶性を損な
わない範囲内で、好ましくは5モル%以内であれば他成
分が共重合されていてもよい。
【0029】本発明のポリエステルBにも、本発明の目
的を阻害しない範囲内で、他種ポリマをブレンドしても
よいし、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収
剤などの有機添加剤が通常添加される程度添加されてい
てもよい。
【0030】ポリエステルBを主成分とするフイルム中
には粒子を含有している必要は特にないが、このフイル
ム層が基材フイルムの一面を形成する場合、平均粒径が
0.007 〜2μm、特に0.02〜0.45μmの粒子がごく少
量、たとえば0.001 〜0.2 重量%、特に0.005 〜0.15重
量%、さらには0.005 〜0.12重量%含有されていると、
加工工程上、使用上において、摩擦係数が良好となるの
みならず、フイルムの巻姿が良好となるのできわめて望
ましい。含有する粒子の種類はポリエステルAに望まし
く用いられるものを使用することが望ましい。ポリエス
テルAとBに含有される粒子の種類、大きさは同じでも
異なっていてもよい。
【0031】上述の如き粒子を含有するポリエステルA
と、ポリエステルBとが共押出により積層され、シート
状に成形された後二軸に延伸され、二軸配向ポリエステ
ルフイルムとされる。本発明における共押出による積層
とは、粒子を含有するポリエステルAと、ポリエステル
Bとをそれぞれ異なる押出装置で押出し、口金から積層
シートを吐出する前にこれらを積層することをいう。こ
の積層は、シート状に成形、吐出するための口金内(た
とえばマニホルド)で行ってもよいが、前述の如く積層
フイルム層が極薄であることから、口金に導入する前の
ポリマ管内で行うことが好ましい。とくに、ポリマ管内
の積層部を、矩形に形成しておくと、幅方向に均一に積
層できるので特に好ましい。ポリマ管内矩形積層部で積
層された溶融ポリマは、口金内マニホルドでシート幅方
向に所定幅まで拡幅され、口金からシート状に吐出され
た後、二軸に延伸される。したがって、たとえ二軸配向
後の積層フイルム層が極薄であっても、ポリマ管内矩形
積層部では、粒子含有ポリエステルポリマを、かなりの
厚さで積層することになるので、容易にかつ精度よく積
層できる。
【0032】このように積層構成とされた本発明におけ
る二軸配向ポリエステルフイルムからなる磁気記録媒体
用ベースフイルムにおいては、フイルム全体の低分子量
物(たとえばモノマ、オリゴマ)含有量が、1.0 %以
下、好ましくは0.8 %以下とされる。このように低分子
量物含有量を低く抑えることにより、磁気記録媒体とし
たときに、ベースフイルム側から磁性面側へ析出しよう
とする低分子量物は最初から極めて低く抑えられ、ドロ
ップアウト低下が抑えられる。そして本発明フイルムに
おいては、前述の如く、ポリエステルB層に、薄いポリ
エステルA層が積層されており、かつこのポリエステル
A層は粒子が集中させて含有されち密な構成を有するも
のとされているので、ポリエステルA層自身が低分子量
物のフイルム内部からの析出を防止する役目を担い、一
層ドロップアウト低下が抑えられる。
【0033】また、本発明における磁気記録媒体用ベー
スフイルムにおいては、フイルム全体の固有粘度が0.7
dl/g以上、好ましくは0.75〜0.9 dl/gとされ
る。このように高い固有粘度とすることにより、フイル
ム全体がち密な構成を有することになり、たとえフイル
ム内部に多少低分子量物が含有されていたとしても、該
低分子量物がフイルム表面へと移動、析出しにくくな
り、磁気記録媒体用途におけるドロップアウト低下が抑
えられる。さらにまた、固有粘度を高くすることによ
り、二軸延伸時にフイルムが破れにくくなり、製膜安定
性が大幅に向上される。
【0034】また、本発明の二軸配向ポリエステルフイ
ルムからなる磁気記録媒体用ベースフイルムにおいて
は、粒子を含む積層フイルム側の表層の粒子による粒子
濃度比が0.1 以下であることが好ましい。この表層粒子
濃度比は、後述の測定法に示す如く、フイルム表面突起
を形成する粒子がフイルム表面において如何にポリエス
テルAの薄膜で覆われているかを示すものであり、粒子
がフイルム表面に実質的に直接露出している度合が高い
程表層粒子濃度比が高く、表面突起は形成するがポリエ
ステルAの薄膜に覆われている度合が高い程表層粒子濃
度比は低い。突起を形成する粒子がポリエステルAの薄
膜で覆われていることにより、粒子が高密度に極薄積層
フイルム層に分布している状態にあっても、該粒子が該
積層フイルム層、ひいてはポリエステルBのベースフイ
ルム層にしっかりと保持されることになる。したがっ
て、表層粒子濃度比を上記値以下とすることにより、粒
子の脱落等が防止されて、フイルム表面の耐ダビング性
が高く維持される。このような表層粒子濃度比は、共押
出による積層を行うことによって達成可能となる。ちな
みに、コーティング方法によっても、本発明と同様の密
度の表面突起を有するフイルム、すなわち、ポリエステ
ルBのフイルム層に対し極薄厚さで樹脂層をコーティン
グし、該樹脂層内に粒子を含有させることは可能である
が、表層粒子濃度比が著しく高くなり(つまり粒子が実
質的に表面に直接露出する度合が著しく高くなり)、本
発明フイルムに比べ表面の極めて脆いものしか得られな
い。
【0035】次に本発明の磁気記録媒体用ベースフイル
ムの製造方法について説明する。まず、ポリエステルA
に粒子を含有せしめる方法としては、重合後、重合中、
重合前のいずれでも良いが、ポリマにベント方式の2軸
押出機を用いて練り込む方法が本発明範囲の表面形態の
フイルムを得るのに有効である。また、粒子の含有量を
調節する方法としては、上記方法で高濃度マスターを作
っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポ
リエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が本
発明範囲の表面形態のフイルムを得るのに有効である。
さらにこの粒子高濃度マスターポリマの溶融粘度、共重
合成分などを調節して、その結晶化パラメータΔTcgを
30〜80℃の範囲にしておく方法は延伸破れなく、本発明
範囲の表面形態のフイルムを得るのに有効である。
【0036】かくして、粒子を含有するペレットAを十
分乾燥したのち、公知の溶融押出機に供給し、ポリエス
テルの融点以上分解点以下の温度で溶融し、もう一方の
実質的に粒子を含有しないポリエステルB(種類は粒子
を含有するポリエステルと同一であっても異なっていて
もよい)を前述の如き積層用装置に供給し、スリット状
のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上
で冷却固化せしめて未延伸フイルムを作る。すなわち、
2または3台の押出機、2または3層用の合流ブロック
あるいは口金を用いて、これらのポリエステルポリマを
積層する。合流ブロック方式を用いる場合は積層部分を
前述の如く矩形のものとし、両ポリエステルの溶融粘度
の差(絶対値)を0〜2000ポイズ、好ましくは0〜1000
ポイズの範囲にしておくことが本発明範囲の表面形態の
フイルムを安定して、幅方向の斑なく、工業的に製造す
るのに有効である。
【0037】次にこの複層の未延伸フイルムを二軸延伸
し、二軸配向せしめる。二軸延伸の方法は同時二軸延
伸、逐次二軸延伸法のいずれでもよいが、長手方向、幅
方向の順に延伸する逐次二軸延伸法の場合に本発明範囲
の表面形態のフイルムを安定して、幅方向の斑なく、工
業的に製造するのに有効である。逐次二軸延伸の場合、
長手方向の延伸を、3段階、特に4段階以上に分けて、
40〜150 ℃の範囲で、かつ、1000〜50000 %/分の延伸
速度で、3〜6倍行なう方法は本発明範囲の表面形態を
有するフイルムを得るのに有効である。幅方向の延伸温
度、速度は、80〜170 ℃、1000〜20000 %/分の範囲が
好適である。延伸倍率は3〜10倍が好適である。また必
要に応じてさらに長手方向、幅方向の少なくとも一方向
に延伸することもできる。いずれにしても粒子を含有す
るきわめて薄い層を設けてから、面積延伸倍率(長手方
向倍率×幅方向倍率)として9倍以上の延伸を行なうこ
とが本発明のポイントである。次にこの延伸フイルムを
熱処理する。この場合の熱処理条件としては、幅方向に
弛緩、微延伸、定長下のいずれかの状態で140 〜280
℃、好ましくは160 〜220 ℃の範囲で0.5 〜60秒間が好
適であるが、熱処理にマイクロ波加熱を併用することに
よって本発明範囲の表面形態を有するフイルムが得られ
やすくなるので望ましい。
【0038】本発明フイルムの製法の特徴は、特殊な方
法で調製した特定範囲の熱特性を有する高濃度粒子ポリ
マを用いて、粒子を含有するきわめて薄い層を設けた後
にフイルムを二軸延伸することであり、製膜工程内で、
フイルムを一軸延伸した後、コーティングなどを施しさ
らに延伸する方法、あるいは二軸延伸フイルムにコーテ
ィングして作られる積層フイルムでは本発明フイルムの
性能には遠く及ばず、また、コスト面でも本発明フイル
ムが優れている。
【0039】[物性の測定方法ならびに効果の評価方
法]本発明の特性値の測定方法並びに効果の評価方法は
次の通りである。 (1)粒子の平均粒径 フイルム表面からポリエステルをプラズマ低温灰化処理
法(たとえばヤマト科学製PR−503 型)で除去し粒子
を露出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが
粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSE
M(走査型電子顕微鏡)で観察し、粒子の画像(粒子に
よってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(たと
えばケンブリッジインストルメント製QTM900 )に結
び付け、粒子の個数を測定するとともに、観察箇所を変
えて粒子数5000個以上で次の数値処理を行ない、それに
よって求めた平均径Dを平均粒径とする。 D=ΣDi /N ここで、Di は粒子の円相当径、Nは個数である。
【0040】(2)粒子の含有量 ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択
し、粒子をポリエステルから遠心分離し、粒子の全体重
量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とする。
場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
【0041】(3)ガラス転移点Tg、冷結晶化温度T
cc、結晶化パラメータΔTcg、融点パーキシエルマー社
製のDSC(示差走査熱量計)II型を用いて測定した。
DSCの測定条件は次の通りである。すなわち、試料10
mgをDSC装置にセットし、300 ℃の温度で5分間溶融
した後、液体窒素中に急冷する。この急冷試料を10℃/
分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。さらに昇温
を続け、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク温度をもっ
て冷結晶化温度Tccとした。さらに昇温を続け、融解ピ
ーク温度を融点とした。また、TccとTgの差(Tcc−
Tg)を結晶化パラメータΔTcgと定義する。
【0042】(4)表面突起の平均高さ、高さ分布の相
対標準偏差 2検出器方式の走査型電子顕微鏡[ESM−3200、エリ
オニクス(株)製]と断面測定装置[PMS−1、エリ
オニクス(株)製]においてフイルム表面の平坦面の高
さを0として走査したときの突起の高さ測定値を画像処
理装置[IBAS2000、カールツァイス(株)製]に送
り、画像処理装置上にフイルム表面突起画像を再構築す
る。次に、この表面突起画像で突起部分を2値化して得
られた個々の突起の面積から円相当径を求めこれをその
突起の平均径とする。また、この2値化された個々の突
起部分の中で最も高い値をその突起の高さとし、これを
個々の突起について求める。この測定を場所をかえて50
0 回繰返し、突起個数を求め、測定された全突起につい
てその高さの平均値を平均高さとした。また個々の突起
の高さデータをもとに、高さ分布の標準偏差を求めた。
求められた標準偏差を上記高さの平均値で割った値を、
相対標準偏差とした。また走査型電子顕微鏡の倍率は、
1000〜8000倍の間の値を選択する。なお、場合によって
は、高精度光干渉式3次元表面解析装置(WYKO社製
TOPO−3D、対物レンズ:40〜200 倍、高解像度カ
メラ使用が有効)を用いて得られる高さ情報を上記SE
Mの値に読み替えて用いてもよい。
【0043】(5)表層粒子濃度比 2次イオンマススペクトル(SIMS)を用いて、フイ
ルム中の粒子に起因する元素の内のもっとも高濃度の元
素とポリエステルの炭素元素の濃度比を粒子濃度とし、
厚さ方向の分析を行なう。SIMSによって測定される
最表層粒子濃度(深さ0の点)における粒子濃度Aとさ
らに深さ方向の分析を続けて得られる最高濃度Bの比、
A/Bを表層粒子濃度比と定義した。測定装置、条件は
下記のとおりである。 測定装置 2次イオン質量分析装置(SIMS) 西独、ATOMIKA 社製A-DIDA3000 測定条件 1次イオン種 :O2 + 1次イオン加速電圧:12KV 1次イオン電流 :200nA ラスター領域 :400 μm□ 分析領域 :ゲート30% 測定真空度 :6.0 ×103 Torr E−GUN :0.5KV-3.0 A
【0044】(6)単一粒子指数 フイルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で写真観
察し、粒子を検知する。観察倍率を100000倍程度にすれ
ば、それ以上分けることができない1個の粒子が観察で
きる。粒子の占める全面積をA、その内2個以上の粒子
が凝集している凝集体の占める面積をBとした時、(A
−B)/Aをもって、単一粒子指数とする。TEM条件
は下記のとおりであり1視野面積:2μm2 の測定を場
所を変えて、500 視野測定する。 ・装置 :日本電子製JEM−1200EX ・観察倍率:100000倍 ・切片厚さ:約1000オングストローム
【0045】(7)粒径比 上記(1)の測定において個々の粒子の長径の平均値/
短径の平均値の比である。すなわち、下式で求められ
る。 長径=ΣD1i /N 短径=ΣD2i /N D1i 、D2i はそれぞれ個々の粒子の長径(最大
径)、短径(最短径)、Nは総個数である。
【0046】(8)積層されたフイルム中のポリエステ
ルA層の厚さ 2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フイル
ム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する元素とポリ
エステルの炭素元素の濃度比(M+ /C+ )を粒子濃度
とし、ポリエステルA層の表面から深さ(厚さ)方向の
分析を行なう。表層では表面という界面のために粒子濃
度は低く表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くな
る。本発明フイルムの場合は深さ[I]でいったん極大
値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布
曲線をもとに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[I
I](ここでII>I)を積層厚さとした。条件は測定法
(5)と同様である。なお、フイルム中にもっとも多く
含有する粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測
定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS
(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)あるいはコ
ンフォーカル顕微鏡などで、その粒子濃度のデプスプロ
ファイルを測定し、上記同様の手法から積層厚さを求め
ても良い。
【0047】(9)固有粘度[η](単位はdl/g) オルソクロルフェノール中、25℃で測定した溶液粘度か
ら下記式から計算される値を用いる。すなわち、 ηsp/C=[η]+K[η]2 ・C ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒
100 mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100 ml、通常
1.2)、Kはハギンス定数(0.343 とする)。また、
溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定
した。
【0048】(10)低分子量物含有量 試料フイルムを粉砕しソックスレー抽出器を用いて、ク
ロロホルムを溶媒として、還流下で24時間抽出を行な
う。クロロホルムを蒸発させて得られた抽出物の重量の
もとの試料の重量に対する比率(重量%)をもって低分
子成分含有量とした。
【0049】(11)耐ダビング性 フイルムに下記組成の磁性塗料をグラビヤロールにより
塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。さらに、小型テス
トカレンダー装置(スチールロール/ナイロンロール、
5段)で、温度:70℃、線圧:200 kg/cmでカレンダー
処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テー
プ原反を1/2インチにスリットし、パンケーキを作成
した。このパンケーキから長さ250 mの長さをVTRカ
セットに組み込みVTRカセットテープとした。(磁性
塗料の組成) ・Co含有酸化鉄(BET値50m2 /g) :100 重量部 ・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体) :10重量部 ・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部 ・コトネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) :5重量部 ・レシチン :1重量部 ・メチルエチルケトン :75重量部 ・メチルイソブチルケトン :75重量部 ・トルエン :75重量部 ・カーボンブラック :2重量部 ・ラウリン酸 :1.5 重量部 このテープに家庭用VTRを用いてシバソク製のテレビ
試験波形発生器(TG7/U706 )により100 %クロマ
信号を記録し、その再生信号からシバソク製カラービデ
オノイズ測定器(925 D/1)でクロマS/Nを測定し
Aとした。また上記と同じ信号を記録したマスターテー
プのパンケーキを磁界転写方式のビデオソフト高速プリ
ントシステム(たとえばソニーマグネスケール(株)製
のスプリンタ)を用いてAを測定したのと同じ試料テー
プ(未記録)のパンケーキへダビングした後のテープの
クロマS/Nを上記と同様にして測定し、Bとした。こ
のダビングによるクロマS/Nの低下(A−B)が3d
B未満の場合は耐ダビング性:優、3dB以上5dB未
満の場合は良、5dB以上は不良と判定した。優が望ま
しいが、良でも実用的には使用可能である。
【0050】
【実施例】本発明を実施例に基づいて説明する。 実施例1、比較例1〜4 平均粒径の異なる架橋ポリスチレン粒子、コロイダルシ
リカに起因する球状シリカ粒子を含有するエチレングリ
コールスラリーを調製し、このエチレングリコールスラ
リーを190 ℃で1.5 時間熱処理した後、テレフタル酸ジ
メチルとエステル交換反応後、重縮合し、該粒子を0.3
〜55重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下
PETと略記する)のペレットを作った。このペレット
を用いてポリエステルAを調製し、また、常法によっ
て、実質的に粒子を含有しないPETを製造し、ポリエ
ステルBとした。
【0051】これらのポリマをそれぞれ180 ℃で3時間
減圧乾燥(3Torr)した。ポリエステルAを押出機1に
供給し310 ℃で溶融し、さらに、ポリエステルBを押出
機2に供給、280 ℃で溶融し、これらのポリマを矩形積
層部を備えた合流ブロックで合流積層し、静電印加キャ
スト法を用いて表面温度30℃のキャスティング・ドラム
に巻きつけて冷却固化し、片面にポリエステルA層を有
する2層構造の未延伸フイルムを作った。この時、それ
ぞれの押出機の吐出量を調節し総厚さ、ポリエステルA
層の厚さを調節した(ただし比較例7はA層単層)。こ
の未延伸フイルムを温度80℃にて長手方向に4.5 倍延伸
した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階
で行なった。この一軸延伸フイルムをステンタを用いて
延伸速度2000%/分で100 ℃で幅方向に4.0 倍延伸し、
定長下で、200 ℃にて5秒間熱処理し、総厚さ15μm、
ポリエステルA層厚さ0.08〜4μmの二軸配向積層フイ
ルムを得た。
【0052】これらのフイルムを磁気テープとして用い
た場合の耐ダビング性を評価した。ベースフイルムとし
ての各パラメータは表1に示したとおりであり、これら
が本発明の範囲内の場合には、耐ダビング性は表1に示
したとおり良好な値を示したが、そうでない場合は特性
に優れたものを得ることはできなかった。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気記録
媒体用ベースフイルムによるときは、粒子を含有するポ
リエステルA層の表面に、高さの均一な突起を高密度で
形成し、かつ二軸配向フイルム全体の低分子量物含有量
を特定値以下に低く抑えるか、あるいは固有粘度を特定
値以上の高い値としたので、磁気記録媒体用に使用する
場合に優れた耐ダビング性を得ることができる。
【0055】また、本発明の磁気記録媒体用ベースフイ
ルムとしての二軸配向ポリエステルフイルムは、製膜工
程内で、コーティングなどの操作なしで共押出により直
接複合積層することによって作ったフイルムであり、製
膜工程中あるいはその後のコーティングによって作られ
る積層フイルムに比べて、最表層の分子も二軸配向であ
るため、上述した特性以外、例えば、表面の耐削れ性も
はるかに優れ、しかもコスト面、品質の安定性などにお
いて有利である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−77431(JP,A) 特開 平1−229040(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 G11B 5/73 - 5/738

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルAと粒子とを主成分とする
    フイルムをポリエステルBを主成分とするフイルムの少
    なくとも片面に積層した二軸配向ポリエステルフイルム
    からなり、前記ポリエステルAの積層フイルムの厚さが
    0.005 〜3μm、該積層フイルム中に含有される前記粒
    子の平均粒径が積層フイルム厚さの0.1 〜10倍、該粒子
    の積層フイルム中の含有量が0.3 重量%以上2重量%未
    満であり、かつ、二軸配向ポリエステルフイルム全体の
    低分子量物含有量が1.0 %以下であることを特徴とする
    磁気記録媒体用ベースフイルム。
  2. 【請求項2】 ポリエステルAと粒子とを主成分とする
    フイルムをポリエステルBを主成分とするフイルムの少
    なくとも片面に積層した二軸配向ポリエステルフイルム
    からなり、前記ポリエステルAの積層フイルムの厚さが
    0.005 〜3μm、該積層フイルム中に含有される前記粒
    子の平均粒径が積層フイルム厚さの0.1 〜10倍、該粒子
    の積層フイルム中の含有量が0.3 重量%以上2重量%未
    満であり、かつ、二軸配向ポリエステルフイルム全体の
    固有粘度が0.7 dl/g以上であることを特徴とする磁
    気記録媒体用ベースフイルム。
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