JP2605330B2 - 紙力増強方法 - Google Patents

紙力増強方法

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【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、パルプスラリーに薬剤を添加して紙力を増
強する方法に関する。より詳細には、パルプスラリーに
硫酸アルミニウムと両性の水溶性共重合体を添加して紙
力を増強する方法に関する。
〈従来の技術〉 従来から製紙工業において、アクリルアミド系重合体
をパルプスラリーに添加することにより紙力を増強する
ことは、広く行われている。この場合、アクリルアミド
系重合体の定着剤として、硫酸アルミニウムが広く用い
られている。一方で近年、省エネルギー対策や環境対策
等を考慮して、硫酸アルミニウムを使用しない、いわゆ
る中性抄紙が行われるようになってきているが、この中
性抄紙は、安価なロジン系サイズ剤が使用できないこ
と、パルプへのフィラーの定着が悪いこと、フィラーと
して用いる炭酸カルシウムの添加量を増すと紙の強度が
低下することなど、性能面での短所や、ワイヤーの汚
れ、毛布汚れ、スライムの発生など、抄造面での問題が
あるため、硫酸アルミニウムを用いた抄紙も、今なお広
く行われている。
また、紙力増強用のアクリルアミド系重合体として、
一分子内にカチオン性の官能基とアニオン性の官能基を
同時に有する両性の水溶性共重合体(以下、両性共重合
体という)が知られている。両性共重合体は、高度の紙
力増強効果を発現し、また排水負荷を低減できるという
特徴を有することから、広く検討されている。そして、
例えば特開昭54−30913号公報、特開昭58−60095号公
報、特開昭58−91897号公報、特開昭60−94697号公報等
には、アクリルアミドと、アクリル酸のようなα,β−
不飽和カルボン酸と、ジアルキルアミノアルキルアクリ
レートのようなカチオン性モノマーとからなる両性共重
合体を用いて、紙力増強を図ることが記載されている。
〈発明が解決しようとする課題〉 しかしながら、硫酸アルミニウムを用いた抄紙におい
て、上記のような従来の両性共重合体を用いて抄紙して
も、未だ紙力増強効果は不十分であり、より一層の効果
を示す薬剤の開発が望まれていた。
本発明者らは、かかる要望に応えるべく検討した結
果、(メタ)アクリルアミド系の両性共重合体であっ
て、ジアリルアミン誘導体モノマーを共重合体の必須成
分としたものを用いることにより、一層優れた紙力増強
効果が発現することを見出し、本発明を完成した。
〈課題を解決するための手段〉 すなわち本発明は、 (a) (メタ)アクリルアミド98〜60モル%、 (b) α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽
和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれ
た1又は2以上の化合物1〜20モル%、並びに (c) 一般式(1) (式中、R1及びR2は水素又はメチル基を、HXは有機酸又
は無機酸を表す) で示されるジアリルアミン誘導体モノマー1〜20モル% を共重合して得られる共重合体を有効成分とする紙力増
強剤と硫酸アルミニウムとを、パルプスラリーに添加し
て抄紙することを特徴とする紙力増強方法を提供するも
のである。
共重合体を構成する成分(a)の(メタ)アクリルア
ミドとは、アクリルアミド又はメタクリルアミドをい
い、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用しても
よい。工業的にはアクリルアミドが好ましく用いられ
る。
共重合体を構成する成分(b)の化合物としては、例
えば、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和モノカ
ルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような
不飽和ジカルボン酸、これらのナトリウム塩やカリウム
塩のようなアルカリ金属塩類又はアンモニウム塩類等が
挙げられる。また、これらの混合物を用いることもでき
る。
共重合体を構成する成分(c)の一般式(1)で示さ
れるジアリルアミン誘導体モノマーは、ジアリルアミン
及びビス(イソブテニル)アミンに代表される2級アミ
ンの無機又は有機酸塩である。また、これらの混合物を
用いることもできる。
本発明で用いる両性共重合体において、各構成モノマ
ー成分の割合は、成分(a)が98〜60モル%、好ましく
は96〜70モル%の範囲、成分(b)が1〜20モル%、好
ましくは2〜15モル%の範囲、そして成分(c)が1〜
20モル%、好ましくは2〜15モル%の範囲である。また
この共重合体には、上記した必須の構成モノマー成分
(a)、(b)及び(c)の他に、これらと共重合可能
なモノマー、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メ
タ)アクリル酸メチル、ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレート、スチレン、酢酸ビニルのようなノニオン性モ
ノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、それ
らの4級化物のようなカチオン性モノマー、エチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メ
タ)アクリルアミドのような二官能性モノマー等を、紙
力増強効果及び共重合体の水溶性を害しない程度に導入
することもできる。
本発明で用いる両性共重合体は、上記の各モノマー成
分を共重合することにより、得ることができる。この共
重合体の製造には、公知の方法が適用でき、重合形式は
限定されないが、水中又は水と水溶性の溶媒との混合溶
媒中で、重合開始剤の存在下に重合反応を行うのが好ま
しい。
重合開始剤としては通常のものが使用できる。例え
ば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような過硫
酸塩、2,2′−ジアミジノ−2,2′−アゾジプロパンジ塩
酸塩、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合
物、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパ
ーオキサイド、過酸化水素のような過酸化物等が挙げら
れる。また公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カ
リウムと亜硫酸水素ナトリウム又は3級アミンとの組合
せ等も使用できる。
さらには必要に応じて、イソプロピルアルコールやア
リルアルコールのような公知慣用の連鎖移動剤を用いる
こともできる。
重合は、通常10〜100℃、好ましくは40〜90℃で、1
〜20時間行われる。この重合は、酸素存在下で行うこと
もできるが、窒素ガスのような不活性ガスの雰囲気中で
行うのが好ましい。
共重合体の製造にあたり、必須成分(a)、(b)及
び(c)、あるいは必要に応じて用いられるこれら必須
成分と共重合可能なモノマーは、全成分を一括して仕込
んでから重合を開始してもよく、あるいは、ある成分の
一部若しくは全部又はすべての成分の一部を仕込んで重
合を開始し、その後残りのモノマーを連続的に又は分割
して添加し、重合を継続してもよい。
このようにして得られる共重合体のなかでも、その15
重量%濃度の水溶液の25℃における粘度が10〜1000ポイ
ズのもの、特に20〜200ポイズのものが好ましい。共重
合体水溶液の粘度は、紙力増強剤としての特性に影響
し、粘度があまり低いと、その紙力増強効果が低下し、
また粘度があまり高いと、紙の地合をくずす傾向にある
ので、10〜1000ポイズの粘度範囲を外れるものはあまり
好ましくない。
本発明で用いる硫酸アルミニウムは、製紙業界で俗に
alumといわれているものであって、Al2(SO4で表さ
れるが、通常は結晶水を16〜18分子有している。
本発明の方法は、従来公知の硫酸アルミニウムを使用
した抄紙方法に準じて行うことができる。すなわち、パ
ルプの水性分散液に、パルプの乾燥重合を基準として、
本発明に従う紙力増強剤を0.05〜3重量%添加し、硫酸
アルミニウムの存在下に抄紙する。ここでのパルプは、
紙の製造に通常用いられるものであることができ、各種
のパルスに対して、本発明の方法は優れた結果を与え
る。また、紙力増強剤と硫酸アルミニウムは、いずれを
先に添加してもよく、もちろん同時に添加してもよい。
硫酸アルミニウムの添加量は、パルプの乾燥重量を基準
として、通常0.05〜5重量%であり、好ましくは0.1〜
4重量%、より好ましくは0.2〜1.5重量%である。また
この際、通常の内添サイズ剤あるいは、クレー、タル
ク、酸化チタンのようなフィラーを添加することもでき
る。
〈実施例〉 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例
中にある%は、特にことわりのないかぎり重量%を表
す。
合成例1 撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備
えた四つ口フラスコに、成分(c)として、ジアリルア
ミン2.9gを36%塩酸水溶液3.0g及びイオン交換水178.2g
とともに仕込み、28%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを
4.5に調節し、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去
した。
次いで内温を70℃に上げ、重合開始剤として過硫酸ア
ンモニウム0.45gを投入した後、成分(a)の50%アク
リルアミド水溶液61.8gと成分(b)の80%アクリル酸
水溶液3.2gの混合物を、内温を70℃に保ったまま、2時
間かけて滴下した。滴下終了後、内温70℃で4時間保温
した。
冷却後、pH2.7、濃度15%で、25℃における粘度61ポ
イズの両性共重合体水溶液を得た。この両性共重合体を
重合体Aとし、その性状値を第1表に示す。
合成例2〜7 構成モノマー成分(a)、(b)及び(c)の種類並
びにその組成を第1表に示すようにした以外は、合成例
1と同様の操作を繰り返した。各合成例で得られた両性
共重合体をそれぞれ重合体B〜Gとし、それぞれの性状
値を第1表に示す。
比較合成例1 撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備
えた四つ口フラスコに、成分(a)として50%アクリル
アミド水溶液61.1g、成分(b)として80%アクリル酸
水溶液3.6g、成分(c)としてジメチルアミノエチルメ
タクリレート4.7g、及びイオン交換水184.5gを仕込み、
20N硫酸水溶液にてpHを4.5に調節し、窒素ガスを通じて
反応系内の酸素を除去した。
次いで撹拌しつつ昇温し、内温が55℃になったところ
で、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.10g及び亜
硫酸水素ナトリウム0.04gを投入した。その後60分かけ
て内温を90℃まで上げ、90℃で4時間保温した。
冷却後、pH4.0、濃度15%で、25℃における粘度56ポ
イズの共重合体水溶液を得た。この共重合体を重合体a
とし、その性状値を第1表に示す。
比較合成例2〜6 構成モノマー成分(a)、(b)及び(c)の種類並
びにその組成を第1表に示すようにした以外は、比較合
成例1と同様の操作を繰り返した。各比較合成例で得ら
れた共重合体をそれぞれ重合体b〜fとし、それぞれの
性状値を第1表に示す。
なお、第1表中のモノマーの略号は次のとおりであ
る。
成分(a)の欄: AM……アクリルアミド MAM……メタクリルアミド 成分(b)の欄: AA……アクリル酸 MAA……メタクリル酸 IA……イタコン酸 MA……マレイン酸 成分(c)の欄: DAA……ジアリルアミン DMM……ジメチルアミノエチルメタクリレート Q−DM……メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモ
ニウムクロライド DP……ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド 実施例1〜7及び比較例1〜6 カナディアン・スタンダード・フリーネス400mlのパ
イプ(段ボール故紙)の3%濃度スラリーに、硫酸アル
ミニウムを0.5%(対パルプ乾燥重量基準、以下同様)
添加混合し、次いで合成例1〜7及び比較合成例1〜6
で得られた重合体A〜G及びa〜fのいずれかを、それ
ぞれ固形分換算で0.8%添加混合した。1分間撹拌した
後、パルプスラリー濃度を1%に希釈し、TAPPI標準型
手抜き装置で抄紙し、脱水プレス後110℃で4分間乾燥
して、米坪量125±2g/m2の手抜き紙を作成した。
各試料につき、JIS P−8112に従って比破裂強さを、
またJIS P−8126に従って比圧縮強さを測定した。それ
らの結果を第2表に示す。
実施例8〜10及び比較例7〜9 実施例1又は比較例1と同様の手法によるが、硫酸ア
ルミニウム添加量を0.3%、0.5%及び1.0%に変更し、
重合体A又は重合体aをそれぞれ固形分換算で0.8%添
加して抄紙し、同様の測定を行った。結果を第3表に示
す。
〈発明の効果〉 第2表及び第3表からも明らかなように、本発明の方
法は、紙に対して優れた紙力増強効果を与える。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a) (メタ)アクリルアミド98〜60モ
    ル%、 (b) α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽
    和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれ
    た1又は2以上の化合物1〜20モル%、並びに (c) 一般式(1) (式中、R1及びR2は水素又はメチル基を、HXは有機酸又
    は無機酸を表す) で示されるジアリルアミン誘導体モノマー1〜20モル% を共重合して得られる共重合体を有効成分とする紙力増
    強剤と硫酸アルミニウムとを、パルプスラリーに添加し
    て抄紙することを特徴とする紙力増強方法。
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