JP2603730B2 - エレベータの主ロープ交換方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明はエレベータの主ロープ交換方法に関する。

［従来の技術］ 一般に、エレベータの昇降路内には、かごと釣合錘と
から成る昇降体が設けられており、これらは巻上機を介
した複数本の主ロープによつて連結されて昇降するよう
構成されている。この主ロープは、ある期間使用される
と、それまで使用されていた既設ロープから新設ロープ
へと定期的に交換することが必要になる。

従来、このようなエレベータの主ロープ交換方法につ
いては、特開昭63−282081号公報において論じられてい
る。

まず、最上階またはこれに近い階を新設ロープ繰出し
階として設定し、最下階またはこれに近い階を既設ロー
プ巻取り階として設定する。次に、かご上での運転によ
り、かごまたは釣合錘のうちの一方の昇降体の上端を、
昇降路上部の新設ロープ繰出し階の床面にほぼ一致させ
て停止させ、これらの昇降体をそれぞれ位置固定する。
普通、この昇降体は、昇降路上部にかごを、昇降路下部
に釣合錘を固定している。それから、プーリから見て釣
合錘側の既設ロープを、かごの上端とほぼ同一の高さに
設けられたロープ固定器具で固定し、そのロープ固定器
具の上方に位置する既設ロープの中間切断点で切断す
る。また、かごの上方に位置する既設ロープの上端切断
点で切断し、この切断部に、新設ロープ繰出し階に設置
された新設ロープ繰出し機からの新設ロープの先端を連
結する。次いで、既設ロープの上述した切断点間を機械
室に引き上げ、連結された新設ロープを巻上機に連結し
たプーリに巻き掛け、その先端を先程切断した中間切断
点の残つた既設ロープに連結する。その後、釣合錘の上
方に位置する既設ロープの下端切断点でその既設ロープ
を切断し、ロープ固定器具の固定を解除して、既設ロー
プ巻取り階の既設ロープ巻取り機で既設ロープを巻き取
つて行く。それによつて、新設ロープの先端は昇降路下
部の釣合錘まで導かれ、その新設ロープの両端を両昇降
体に連結することにより主ロープの交換を行なつてい
た。

［発明が解決しようとする課題］ 従来のエレベータの主ロープ交換方法は上述のように
行なわれていたため、昇降体を固定した後に既設ロープ
を２分して行なうことになり、新設ロープとの連結工程
が多く、作業人員や作業時間の増大が考えられた。ま
た、この主ロープは複数本であることから、上述した工
程をその本数分繰り返し行なわなければならない。さら
に、上述した新設ロープと既設ロープの端部相互の連結
工程や、ロープ固定器具による主ロープの固定や解除と
いつた作業が昇降路内の高所作業となるので、工具等の
落下や作業員の墜落等の事故の危険がある。

本発明の目的は、主ロープを安全にかつ能率的に交換
することのできるエレベータの主ロープ交換方法を提供
するにある。

［課題を解決するための手段］ 本発明は上記目的を達成するために、昇降路内のかご
と釣合錘とから成る昇降体の一方を昇降路上部に、他方
を昇降路下部に固設し、昇降路上部に設けられた一方の
昇降体側の端部で全既設ロープを切断すると共に、その
プーリ側の切断部を全既設ロープに対応した本数の新設
ロープの各一端をそれぞれ接合し、昇降路下部に設けら
れた他方の昇降体側の端部で全既設ロープを切断し、プ
ーリを低速運転させながら、昇降路下部で他方の昇降体
側の全既設ロープの端部から回収し、新設ロープ全てが
所定の位置に達したとき全新設ロープと全既設ロープと
の接合部で両ロープの接合を解除し、その後、全新設ロ
ープの両端をそれぞれ昇降体に連結することを基本と
し、 上記プーリを低速運転させながら上記昇降路下部で上
記他方の昇降体側の上記全既設ロープの端部から回収す
る際に、上記昇降路の上部に設けられた機械室に設置し
たブレーキ器具により速度を調整しながら上記既設ロー
プ及び上記新設ロープを送り出すことを特徴としてい
る。

［作用］ 本発明によるエレベータの主ロープ交換方法は上述の
如く行なうため、各昇降体をそれぞれの所定位置に固設
した後、昇降路上部の昇降体側で複数本の既設ロープを
全部切断し、その本数に対応した本数の新設ロープを全
部接合し、次に、昇降路下部の昇降体側で既設ロープを
全部切断し、プーリを低速運転させながら既設ロープを
回収することができ、それと共に新設ロープを設置する
ことができる。それによつて、既設ロープを１本ずつ交
換していたときには駆動させられなかつたプーリを低速
運転させることが可能になり、また、１度の作業工程に
より、複数本の既設ロープを一括して新設ロープに交換
できるので、作業工程の低減、人員の削減を大いに図る
ことができる。

また特に、機械室に設けたブレーキ器具により速度を
調整しながら既設ロープ及び新設ロープを送り出すよう
にしてあることから、これらのロープに張力を与えてプ
ーリの溝とロープとの摩擦力を増大させることができ、
したがつて、ロープの送り出しに際してロープの滑りを
防ぐことができる。

［実施例］ 以下本発明の一実施例を図面から説明する。

多数の階床を有して成る昇降路１内には、図示しない
それぞれのガイドレールに沿つて昇降するかご２と釣合
錘３との昇降体が納められている。昇降路１の上方に
は、第１機械室５と第２機械室６が設置されている。こ
の第１機械室５に設けられた巻上機のプーリ４に、複数
本の主ロープでなる既設ロープ７が巻回されており、か
ご２と釣合錘３のそれぞれの上方の端部a,bで接合さ
れ、これら昇降体を連結している。また第２機械室６に
は、主ロープを保持するロープ固定器具10と、主ロープ
の速度を調整するブレーキ器具11が設けられている。こ
のブレーキ器具11によりロープに張力を与え、プーリ４
の溝とロープとの摩擦力を増大させ、この間で滑りが出
ないようにするものである。

この主ロープは、例えば４本程の複数本で成るが、あ
る期間使用されると既設ロープ７として定期的に新設ロ
ープ８に交換される必要がある。

まず、昇降路１の下部において、釣合錘３をその受台
で保持し、昇降路１の上部において、かご２を図示しな
いチエーンブロツクで吊り上げる。ここで、例えば高揚
程のエレベータの場合には、既設ロープ７の張力がロー
プの自重による程度となつたら、ロープ固定器具10で既
設ロープ７を固定するようにしても良い。上述したよう
に、通常は釣合錘３を昇降路１の下部に、またかご２を
昇降路１の上部に固設する。

次に、かご２を吊り上げた図示しないチエーンブロツ
クを更に巻き上げて既設ロープが緩んだら、既設ロープ
７のかご２の上方の端部ａ近傍で全部切断する。

一方、新設ロープ繰出し階とされた最上階とその下の
階には、新設ロープ繰出し手段９がそれぞれ２個ずつ設
置されており、作業者はこれらから繰出された新設ロー
プ８の端部と、切断された既設ロープ７のプーリ４側の
端部とを接合する。また、釣合錘３の上方の端部ｂ近傍
で既設ロープ７を全部切断し、そのプーリ４側の端部
を、既設ロープ巻取り階とされた最下階の既設ロープ巻
取り手段12に接合する。

その後、プーリ４を低速運転させると、４本の既設ロ
ープ７は順次既設ロープ巻取り手段12に巻取られて行
き、同時に、４本の新設ロープ８は、新設ロープ繰出し
手段９から繰出されプーリ４に巻回されて所定位置にま
で到着する。このとき、ブレーキ器具11を操作すること
により、既設ロープ７及び新設ロープ８の下降速度を調
整することができる。

こうして、既設ロープ７と新設ロープ８との接合部が
釣合錘３側の端部ｂまで降りたならば、プーリ４の運転
を停止し、新設ロープ８のかご２側端部と釣合錘３側端
部を、それぞれの昇降体の上方の端部a,bで接合する。

それから、チエーンブロツクや受台の保持を解除し、
ブレーキ器具11,ロープ固定治具10を取外して、作業を
完了する。

これによつて、一度の作業工程で全既設ロープ７を回
収することができ、それと同時に、新設ロープ８を一括
巻回することができるので、作業効率の向上の点で効果
がある。

なお、新設ロープ８と既設ロープ７との接続について
は、ロープの自重を安全に保持できる強度を持ち、かつ
ロープの径が極端に太くならないようにすることが望ま
しい。その方法としては、電線圧着用のスリーブを使用
して油圧ラム等で圧着する方法や、ロープ相互を溶接す
る方法等がある。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明は、昇降体を昇降路の上下
の所定位置に固設した後、まず昇降路上部に固設された
一方の昇降体側の端部にて全既設ロープを切断し、この
既設ロープのプーリ側の端部と新設ロープの端部とを接
合し、次に昇降路下部に固設された他方の昇降体側の端
部にて全既設ロープを切断し、プーリを低速運転させな
がら昇降路下部において既設ロープを回収し、新設ロー
プを巻回するようにしたため、プーリを駆動させながら
１度の作業工程だけで、複数の既設ロープを一括して新
設ロープに交換することができ、作業工程の低減や高所
作業の低減による安全性の向上、また、能率の向上を図
ることができる。

さらに本発明は、機械室に設けたブレーキ器具により
速度を調整しながら既設ロープ及び新設ロープを送り出
すようにしてあることから、これらのロープに張力を与
えてプーリの溝とロープとの摩擦力を増大させることが
でき、したがつて、ロープの送り出しに際してロープの
滑りを防ぐことができ、これらのロープの回収を安全に
実施することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例によるエレベータの主ロープ
交換方法を示した昇降路近傍の横断面図である。 １……昇降路、２……かご、３……釣合錘、４……プー
リ、７……既設ロープ、８……新設ロープ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】昇降路内のかごと釣合錘とから成る昇降体
   にプーリを介して両端が接続された複数本の既設ロープ
   を、新設ロープと交換するエレベータの主ロープ交換方
   法において、上記昇降体の一方を上記昇降路上部に、他
   方を上記昇降路下部にそれぞれ固設し、上記昇降路上部
   に設けられた上記一方の昇降体側の端部で上記全既設ロ
   ープを切断すると共に、その上記プーリ側の切断部を上
   記全既設ロープに対応した本数の上記新設ロープの各一
   端にそれぞれ接合し、上記昇降路下部に設けられた上記
   他方の昇降体側の端部で上記全既設ロープを切断し、上
   記プーリを低速運転させながら、上記昇降路下部で上記
   他方の昇降体側の上記全既設ロープの端部から回収し、
   上記新設ロープ全てが所定の位置に達したとき上記全新
   設ロープと上記全既設ロープとの接合部で両ロープの接
   合を解除し、その後、上記全新設ロープの両端をそれぞ
   れ上記昇降体に連結することを基本とし、 上記プーリを低速運転させながら上記昇降路下部で上記
   他方の昇降体側の上記全既設ロープの端部から回収する
   際に、上記昇降路の上部に設けられた機械室に設置した
   ブレーキ器具により速度を調整しながら上記既設ロープ
   及び上記新設ロープを送り出すことを特徴とするエレベ
   ータの主ロープ交換方法。