JP2587310Y2 - 自動車の窓ガラスの取付構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、自動車のボディに開設
される窓開口部に嵌め付ける窓ガラスの取付構造に関す
る。

【０００２】

【従来の技術とその問題点】周知の様に、自動車の窓に
嵌め付けられる窓ガラスは、一般に窓の開口縁に沿って
ボディ表面から一段窪ませた凹部に周縁部を嵌め入れ、
この周縁部が当接する凹部の鍔状の底部に接着剤で固定
し、同時にこのガラスの周縁部と凹部の起立壁面との間
に出来る空隙に周縁モールを装着し空隙を埋めながらガ
ラスの周縁部を縁取りして装飾するようにしている。

【０００３】この窓ガラスの装着に当たって使用される
周縁モールにはガラスの嵌め付けに先立って予じめ周縁
に沿って装着し、その後ガラスと共に窓開口部に嵌め入
れる所謂先付けタイプのものと、ガラスを窓に嵌め入れ
たのちガラスの周縁部と窓開口部の凹部との間に出来る
空隙に挿入して装着する後付けタイプのものとがある。

【０００４】これらは通常自動車の設計に従って任意に
選択されているが、本考案はこれらの内、先付けタイプ
の周縁モールを使ってガラスを窓開口部に装着する場合
の窓ガラスの取付構造に関するもので、特にこの考案は
窓開口部にガラスを嵌め入れる際の作業上の欠点、並び
に装着後における使用時の欠点に鑑み、これを改善する
目的で考案されたものである。

【０００５】一般に先付けタイプの周縁モール、ことに
合成樹脂を素材に成形した周縁モールは断面コ字形に形
成してあり、この溝形をなす部分にガラスの周縁部を受
け入れて装着し、この状態でガラスと共に窓開口部に嵌
め付け接着剤で固着するが、このとき窓ガラスを窓開口
部の定位置に固定するためクリッブを使って止め付けて
いる。

【０００６】従来、このクリップによる止め付けは窓開
口部の凹部、更に詳述するならば凹部の底面に係止爪を
有した金属クリップを適当な間隔をおいて固着し、他方
ガラスの周縁部裏面（裏側面）には合成樹脂製の爪付き
クリップを接着剤を使って固着し、窓ガラスの嵌め付け
作業の際、これらクリップ同志を掛け合せてガラスを定
位置に収めるようにしている。

【０００７】このクリップの使用は接着剤が固化するま
でガラスを定位置に固定しておく重要な役目をもつが、
反面実際の作業においては各クリップが一定位置に正確
に固定されないとクリップ相互の融通性がないので僅か
な位置ずれで係合できないことがあり、ガラスが定位置
に止められないまま接着される欠陥があった。また一
方、このクリップによる固定はガラスとボディとが直接
連結する構造になっていることからボディに歪みが生じ
たとき直接この歪みがガラスに伝播して破損に繋がる危
険があった。

【０００８】本考案はこの様な先付けタイプの周縁モー
ルを用いて装着する窓ガラスの取付構造において問題と
なることに鑑みこれを改善する目的で考案されたもの
で、特にガラス装着時の作業性の改善、並びに使用時に
おけるガラス破損の危険性を回避することを目的に考案
されたものである。

【０００９】

【問題点を解決するための手段】本考案は、前記従来の
クリップ相互の係合によってガラスを窓開口部の定位置
に収める構造上の欠点に鑑み、クリップ相互の係合によ
る位置決めを排してガラスの周縁部に装着される周縁モ
ールを固定手段の一部にしてこれを窓開口部の凹部に止
着する係止クリップに掛け止め、所定位置にガラスを止
め付ける一方、上記周縁モールが有する弾性を活用して
ボディに生ずる歪みを吸収し、ガラス破損の危険を回避
するようにした窓ガラスの取付構造を提供せんとするも
のである。そして更に本考案は、上記係止クリップに複
数の係止爪を段設して周縁モールとの係合位置の選択を
可能にし、常に適性位置での係合を確保すると共に容易
迅速に係止作業が出来るようにした窓ガラスの取付構造
を提供せんとするものである。

【００１０】これを更に詳述するならば、本考案は窓開
口縁に沿って設けられる装着凹部にガラスを嵌合し接着
剤を介して固着する一方、前記ガラスの周縁部に沿って
周縁モールを止着し、該周縁モールを前記装着凹部の起
立壁部に沿って止着する係止クリップを介して止め付け
前記周縁モールの頭部で前記ガラスと自動車ボディの表
面との間にできる空隙部を被覆するようにした自動車の
窓ガラスの取付構造において、前記周縁モールの頭部下
面より垂設される係入脚部には前記凹部の起立壁面に対
面する一面に脚端部分と高さの途中に長手方向に沿って
係止突条と弾性当接片を並行条に突設し、且つ前記弾性
当接片には前記係止クリップに対応する位置に該係止ク
リップの長さに適合した切込みを設け、他方前記係止ク
リップの表面には高さ方向に沿って位置を異にする複数
個の係止爪を段設し、該係止爪の何れかを前記弾性当接
片の切込みを通して前記係止突条に選択的に掛け止める
と共に、該弾性当接片を前記装着凹部の起立壁部に直接
当接し、前記ガラスを定位置に嵌め付け固定するように
したことを特徴とする自動車の窓ガラスの取付構造を提
供することにある。次に、この考案を図示する実施例を
基に説明し、その特徴とするところを詳述する。

【００１１】

【実施例】図１は本考案の一実施例を示す使用状態の要
部の縦断面図で、図２は分解した要部の縦断面図であ
る。図面において、１は自動車のボディであり、２はこ
のボディに開設した窓開口部、３は窓の開口縁に沿って
ガラス４を受け入れるためボディ表面から一段後退する
ように窪ませ形成した装着凹部で、５は先付けタイプの
周縁モール、６はボディ側に固着して周縁モールを掛け
止める係止クリップ、７はダムラバーであり、８はガラ
ス４を固着する接着剤である。

【００１２】周縁モール５は塩化ビニル等の熱可塑性の
合成樹脂を素材に押出成形されるもので、帯板状をな
し、一端縁からやや肉薄にして弾性を付与した当接片９
ａを延設する頭部９と、この頭部９の下面から長さの全
長に亘って垂設される係入脚部１０と、係入脚部の一面
から頭部の下面に並行するように延設され、この頭部と
の間にガラス４の周縁部を咬え込む溝形の受部１１を設
ける突条１２とを一体に有し、係止脚部１０の脚端に近
い他面には上記突条１２に背向して長さの全長に亘って
係止突条１３を突設している。そして、この実施例では
係止脚部１０の上記他面の高さの途中からヒレ状の弾性
当接片１４を長さ方向に沿って延設し、前記係止突条１
３に並行させてある。

【００１３】一方、係止クリップ６は合成樹脂、ここで
はポリフチレンテレフタレートを材料に長方形状の肉薄
の板形に形成し、その表面の左右に上下に段差を付けて
Ｕ字形の２つの切込みヲ設け、斜め下方に向けて突き出
す２つの係止爪１５ａ，１５ｂを設けている。

【００１４】このクリップは上縁に沿った背面に位置決
めの突条１６を設け、この突条を基準にして止め付け用
の粘着テープ１７を貼り付けてあり、下縁は表面側に向
けて弧状に屈曲させ前記凹部３の屈曲面に添うようにし
てある。

【００１５】本考案の取付構造はガラス４を窓開口部２
に嵌め付けるのに先立って、先ずガラスの周縁部に沿っ
て長尺な周縁モール５を添わせ、その受部１１にガラス
の周縁部を受入れ組付ける。その一方、窓開口部２の凹
部３には起立壁面３ａに粘着テープ１７を利用して適宜
間隔をおいて複数個の係止クリップ６を止着しておき、
上記ガラス４の嵌め付けの際周縁モールの係入脚部１０
をこの係止クリップ６の前面に沿って侵入させる。

【００１６】ガラス４の装着に際してはその周縁部の裏
面側に接着剤８を付着し、凹部３への嵌め込みと同時に
ガラスの周縁部とこの凹部の底部３ｂとの間で接着剤を
押し潰し両者の接合をなすと共に、ダムラバー７によっ
て開口部２側への流出を防止する。

【００１７】前記ガラスの嵌め込みに伴い凹部３に侵入
する係止脚部１０は係止突条１３をクリップ６の係止爪
１５ａ，１５ｂに摺り付けながら侵入し、所定位置にガ
ラス４が収まったところで該係止突条１３に向かい合っ
た係止爪１５ａ又は１５ｂを係合することになる。

【００１８】ところで、周縁モール５はガラス４に装着
する前に図５に示したように凹部３に止着される係止ク
リップ６に対応する弾性当接片１４の部分を切込み１８
によって切除し、この当接片による係合の妨げを排除し
てあり、更にこの実施例では上記切除部分の当接片１４
の基部を残存させ第２の係止突条１９を設けてある。

【００１９】図１はガラス４の嵌め込みによって周縁モ
ール５の係止突条１３が係止クリップ６の下方の係止爪
１５ｂに係合した状態を示しており、この係合によって
ガラス４の浮き上がりが阻止される。そして、ガラス４
と周縁モール５の係入脚部１０は接着剤８に接触して装
着時にはこの状態を保って接着剤の固化を待ち固定する
ことになる。

【００２０】また、図３はガラス４を凹部３に深く押し
付けて下方の係止爪１５ｂを切込み１８によって形成し
た周縁モールの第２の係止突条１９に係合させた場合を
示している。更に図４はガラス４の押し付けを浅くして
周縁モールの係止突条１３に上方の係止爪１５ａを係合
させた場合を示している。このいずれの場合においても
ガラス４は窓開口部に対して所望の押し付け深さにおい
て係合し、浮き上りを止められることになる。

【００２１】ガラス４の嵌め込みに伴って凹部３に押し
込められる周縁モール５は頭部９の一方の当接片９ａを
ボディ１の表面に渡してガラスと凹部との間に出来る空
隙部を被覆する一方、弾性当接片１４を凹部３の起立壁
面３ａに当接させて周縁モール自体をガラス４側に押付
け周縁モール５とガラス４との噛み合わせを確保するこ
とになる。そして更に、この当接片１４は反発力によっ
てガラス４を窓開口部２の中央部に迫り出させ偏在した
状態でガラスが固着されるのを防止することになる。

【００２２】以上本考案を図示する実施例について説明
したが、本考案によるガラスの装着は前述の様にガラス
４の周縁部に沿って周縁モール５を装着する作業と、複
数個の係止クリップ６を凹部３の起立壁面に所定の間隔
で止着する作業、及び上記周縁モール付のガラスを開口
部２に向けて嵌め付ける作業を通して行うことができ、
このガラスの嵌め付けと同時に係止クリップ６のいずれ
かの係止爪１５ａ，１５ｂが周縁モールの係止突条１３
又は１９に自動的に係合し、嵌め付けた位置にガラスを
固定することになる。

【００２３】尚、前記実施例では係止クリップ６の係止
爪１５ａ，１５ｂを上下２段に設ける場合について説明
したが３段，４段と多段に設けてもよく、また更に係合
力を高める上でクリップの長さ方向に沿って高さを揃え
た複数個の係止爪を設けるようにしても本考案の実施を
妨げるものではない。

【００２４】

【考案の効果】本考案は以上説明の如く構成されるもの
で、窓開口部にガラスを押し入れると、起立壁部に止着
した係止クリップの係止爪とガラスに装着した周縁モー
ルの係止突条とが自動的に係合し、ガラスの止め付けが
行われると共に、複数点で両者の係合がなされるため所
望の嵌め込み位置でガラスを止め付けることができ、し
かもこの装着時には周縁モールに備える弾性当接片が係
止クリップを跨いで直接凹部の起立壁部に弾力的に当接
し、ガラス側に押し付けられることからガラスとの噛み
付きがよくなり、且つガラス自体が定位置に安定的に取
付られることになる。

【００２５】また本考案は、弾性を有した周縁モールを
介して係止クリップに係止する構成としたことからボデ
ィに生じた歪みを周縁モールが吸収することができ、従
って従来の様にこの歪みによってガラスが破損するよう
なことがない。また本考案は、ボディ側に係止クリップ
を止着するだけでよく、従来のようにガラス側に別のク
リップを位置合わせしながら取付ける必要がないので作
業性がよく、しかも部品数を減少させられるので製造コ
ストを下げられる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す使用状態の要部の拡大
縦断面図。

【図２】要部の分解縦断面図。

【図３】窓開口部に対してガラスを深く押し入れて装着
した他の使用状態を説明する要部の拡大縦断面図。

【図４】窓開口部に対してガラスを浅く押し入れて装着
した他の使用状態を説明する要部の拡大縦断面図。

【図５】周縁モールの拡大斜視図。

【図６】係止クリップの拡大正面図。

【図７】係止クリップの拡大平面図。

【符号の説明】 １ 自動車のボディ ２ 窓開口部 ３ 凹部 ３ａ 凹部の起立壁面 ３ｂ 凹部の底部 ４ ガラス ５ 周縁モール ６ 係止クリップ ８ 接着剤 ９ 周縁モールの頭部 １０ 周縁モールの係入脚部 １３ 周縁モールの係止突条 １４ 弾性当接片 １５ａ，１５ｂ 係止クリップの係止爪 １８ 切込み １９ 第２の係止突条

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 窓開口縁に沿って設けられる装着凹部に
   ガラスを嵌合し接着剤を介して固着する一方、前記ガラ
   スの周縁部に沿って周縁モールを止着し、該周縁モール
   を前記装着凹部の起立壁部に沿って止着する係止クリッ
   プを介して止め付け前記周縁モールの頭部で前記ガラス
   と自動車ボディの表面との間にできる空隙部を被覆する
   ようにした自動車の窓ガラスの取付構造において、前記
   周縁モールの頭部下面より垂設される係入脚部には前記
   凹部の起立壁面に対面する一面に脚端部分と高さの途中
   に長手方向に沿って係止突条と弾性当接片を並行条に突
   設し、且つ前記弾性当接片には前記係止クリップに対応
   する位置に該係止クリップの長さに適合した切込みを設
   け、他方前記係止クリップの表面には高さ方向に沿って
   位置を異にする複数個の係止爪を段設し、該係止爪の何
   れかを前記弾性当接片の切込みを通して前記係止突条に
   選択的に掛け止めると共に、該弾性当接片を前記装着凹
   部の起立壁部に直接当接し、前記ガラスを定位置に嵌め
   付け固定するようにしたことを特徴とする自動車の窓ガ
   ラスの取付構造。
2. 【請求項２】 請求項１の記載において、弾性当接片に
   形成する切込みは該弾性当接片の基部を残して切除し、
   該基部に第２の係止突条を設けるようにしたことを特徴
   とする自動車の窓ガラスの取付構造。