JP2586487B2 - プラスチック製眼鏡レンズ - Google Patents

プラスチック製眼鏡レンズ

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JP2586487B2 JP62146100A JP14610087A JP2586487B2 JP 2586487 B2 JP2586487 B2 JP 2586487B2 JP 62146100 A JP62146100 A JP 62146100A JP 14610087 A JP14610087 A JP 14610087A JP 2586487 B2 JP2586487 B2 JP 2586487B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、表面反射が少なく、且つ、耐擦傷性及び耐
衝撃性が共に優れたプラスチック製眼鏡レンズに関する
ものである。
〔従来の技術〕
1972年の米国のFDA規格の制定以来、眼鏡レンズの安
全性が見直されるようになっている中で、レンズ材料と
してより安全性の高い合成樹脂が、無機ガラスに代って
使用されるようになってきた。無機ガラスレンズから合
成樹脂レンズへの移行は、世界的な傾向であり、我国に
おいても年々合成樹脂レンズのシエアが拡大している。
特にジエチレングリコールビスアリルカーボネート(以
下、ADCと略す)樹脂によるレンズの比率は、アメリカ
に於て既に60%を越え日本でもほぼ半数の眼鏡レンズが
プラスチックレンズに置き代っている。ADC合成樹脂レ
ンズは安全性(耐衝撃性が高く、もし万一割れた場合に
も、無機ガラスのような微細な破片とならず、眼に損傷
を与える可能性が少ない)の向上に加え、無機ガラスに
比較して軽い、加工性が良い、着色が容易である等の多
くの利点を有している。
他方、ADC樹脂眼鏡レンズは、表面硬度が不十分で傷
がつきやすいという欠点を持っている。かかる欠点を改
善するために、ADC樹脂レンズの表面にハードコードと
呼ばれる耐擦傷性層を形成することが知られている。
耐擦傷性層を形成する方法としては、真空蒸着法又は
スパッタリング等の手法により1〜3μ程度の酸化ケイ
素膜(SiOx(x=1〜2))を形成する方法、及びシリ
コン系樹脂、メラミン系樹脂、又はアクリル系樹脂を主
成分とするコーティング組成物を塗布硬化する方法があ
るが、被膜の可とう性、染色性、耐熱性などの特性か
ら、後者の方法による耐擦傷性層が主流となっている。
耐擦傷性層を与えるコーティング組成物の一例とし
て、 (a)エポキシ基含有トリアルコキシシランの加水分解
生成物 (b)硬化触媒 からなるコーティング組成物が提案されている(特開昭
52−112698号)。
一方、レンズ表面の反射によるチラツキやゴーストを
防ぐ目的でADC樹脂レンズ表面に反射防止層を設けたレ
ンズが開発市販されている。
そのような反射防止層は、一般にはSiO、SiO2、Al
2O3、Y2O3、Yb2O3、CeO2、ZrO2、Ta2O5、TiO2、MgF2
の物質を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティ
ング等の薄膜形成技術によって単層又は多層に形成する
ことにより得られる。
ところが、ADC樹脂レンズ上に直接反射防止膜を形成
した場合には期待するほどの耐擦傷性が得られない。ま
た、基材と反射防止膜の熱膨張係数が大きく異なる為
に、密着性に劣る、耐熱性が劣りクラックが発生しやす
い等の欠点があり、実用に供し得るレンズは得にくい。
そこで、かかる欠点を改善する為に、ADC樹脂レンズの
表裏両面にまず耐擦傷性層を形成し、さらにその上に反
射防止膜を設けた耐擦傷性、反射特性及び耐熱性等を共
に満足するレンズが開発され市販されている(第2図参
照)。
ところが、不思議なことに、ADC樹脂レンズ基材に耐
擦傷性層を設けただけのレンズや、レンズ基材に直接反
射防止層だけを設けたレンズは、FDA規格で定めた「鋼
球落下テストによる耐衝撃テスト」(以下、FDAテスト
と略す)に合格するものの、ADC樹脂レンズ基材の上に
耐擦傷性層と反射防止層の双方を設けたレンズは、中心
厚が薄いと(凹レンズの場合)FDAテストに合格しなか
った。
この原因は、鋼球の衝突で無機質反射防止層に発生す
るクラックが耐擦傷性層ひいてはレンズ基材のクラック
を誘発するためと考えられる。これを解決する方法とし
て、レンズの中心厚を厚くすることでFDAテストに合格
することはできるが、レンズの縁厚が厚くなってしまい
美観上好ましくない。
一方、近年レンズの薄型化の傾向が強まり、ADC樹脂
より屈折率の高いプラスチックレンズ材料の開発が盛ん
に行なわれており、スチレン系樹脂、ハロゲン含有樹
脂、金属含有樹脂等を成分としたレンズ材料が多く報告
されている。
ところが、これらの樹脂はADC樹脂に比べ、染色、ハ
ードコート等の二次加工性に劣っている。
そこでかかる欠点を改良するために、レンズ基材と耐
擦傷性の間に密着性を改善する目的でプライマー層を設
けた眼鏡レンズが提案された(特開昭61−251801号公報
参照及び第3図参照)。
このプライマー層は、耐擦傷性層や基材に比べ柔かく
弾力性に富む材質であるため、耐衝撃性を高める効果も
あり、衝撃吸収層と考えてもよい。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、この提案されたレンズ(第3図参照)
は、比較的軟らかいプライマー層があるために、今度
は、プライマー層のないレンズ(第2参照)に比べて、
耐擦傷性が劣るという問題点が発生した。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、耐擦傷性に優れ且つFDAテストにも合
格する安全性の高いプラスチックレンズを提供すること
を目的として鋭意研究の結果、 眼鏡レンズの耐衝撃性を支配するのは、R2面側(接眼
側)のレンズ基材と耐擦傷性層界面に発生する引張り応
力を緩和することが重要であり、そのためにR2面のレン
ズ基材と耐擦傷性層の間に衝撃吸収層を設けることが有
効であること。即ち衝撃吸収層はR1面(対物側)だけに
設けたのでは殆んど効果がなく、R2面だけに設けた場合
には、R1面、R2面の両方に衝撃吸収層を設けた場合と同
等の効果があること。
眼鏡レンズで耐擦傷性が要求されるのは、主としてR1
面であり、R2面ではR1面に比べキズの入る機会が少ない
ことを見い出し、その結果、耐擦傷性、耐衝撃性を共に
満足する本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、 「プラスチックレンズ基材と、そのR2面に形成された衝
撃吸収層と、その上に形成された耐擦傷性層とその上に
形成された反射防止層と、基材のR1面上に形成された耐
擦傷性層と、その上に形成された反射防止層とからなる
プラスチック製眼鏡レンズ」 を提供する。
〔作用〕
R2面のみに塗布される衝撃吸収層を構成する材料とし
ては、一般に、レンズ基材及び上層の耐擦傷性層との
密着性が良いこと。
衝撃によって与えられたエネルギーを吸収するのに充
分なほどに弾性があること。
等の条件を満たす樹脂塗膜であれば、どの様な樹脂でも
使用することが可能である。
かかる衝撃吸収層を構成する材料の具体例としては、
アクリル酸系樹脂塗料、酢酸ビニル及びビニルアルコー
ル系樹脂塗料、含窒素ビニル系重合体樹脂、アミノ系樹
脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料、ポリアミド系樹脂塗
料、シリコン系樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、エポ
キシ樹脂塗料、繊維素系樹脂塗料及びこれらの混合物も
しくは共重合系塗料、又は一部が変性された樹脂塗料等
が挙げられる。
これらの衝撃吸収層には必要に応じ、耐候性を改善す
る為の紫外線吸収剤や光安定剤、耐熱劣化を防止するた
めに酸化防止剤、着色を目的として顔料、染料、フォト
クロミック材料等の着色剤、良好な塗膜を得るための界
面活性剤等の塗料添加剤、さらにこれら以外に本発明の
目的を防げない範囲において煙霧質シリカ、コロイダル
シリカなどの無機質充填材を適宜配合することも可能で
ある。
この衝撃吸収層の形成塗布方法としては、例えば、ハ
ケ塗り、流し塗り、浸漬塗り(R1面側をマスキング)、
スプレー塗り、スピンコーティングなど通常コーティン
グの分野で使用されている各種の方法を適宜選択して行
なうことが可能である。
また、衝撃吸収層の基材への付着性をさらに改善する
目的でプラスチックレンズ基材に予め、酸、アルカリ又
は有機溶剤等で化学的処理、プラズマ又はコロナ放電処
理又は紫外線オゾン処理等を施すことも可能である。
衝撃吸収層の厚みは0.05〜5μの間で任意に選択出来
る。最適な膜厚は上層の耐擦傷性層とのバランスにより
決まるが、好ましい膜厚の範囲は0.1〜3μの間であ
る。膜厚が0.05μ未満であると、衝撃吸収層としての充
分な役割を果すことは出来ず、また5μを越えると得ら
れる最終製品の膜物性殊に耐擦傷性、耐熱性等が著しく
劣化する。衝撃吸収層は、適当な塗料を塗布し、風乾処
理を行った後、自然放置又は熱硬化、光硬化、電子線硬
化等の強制的方法で固化又は硬化することにより、均一
な被膜として形成することができる。
また、耐擦傷性層を構成する材料としては、高度に三
次元化した網目構造を有するシリコーン系樹脂・アクリ
ル系樹脂・メラミン系樹脂などを使用することが可能で
ある。
なかでも好ましいものは、官能基置換アルコキシシラ
ンの加水分解縮合物(オリゴマー)を塗布し、加熱硬化
させて得られるシリコーン系樹脂であり、官能基の種類
としては、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、メタクロ
イル基、メルカプト基、シアノ基などが挙げられる。
前記アルコキシシランを一般式で示せば、 であり、式中、nは1〜3の整数であり、R1はアルキル
基、アルコキシアルキル基又はアリール基であり、n個
のR1は同一であも異別でもよい。R2は炭素数1〜6のア
ルキル基、ビニル基又はアリール基であり、R3は炭素数
1〜10のアルキレン基あるいはアルキレンオキサイド又
はポリアルキレンオキシド、Xは官能基又は官能基を含
む炭化水素基であり、例えばエポキシ基を例にとれば などである。
このようなアルコキシシランの具体例としては、グリ
シドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチ
ルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメ
トキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシ
ラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β
−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシ
プロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリ
エトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキ
シシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリプトキシシラン、γ−グ
リシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−
グリシドキシプロピルトリフエノキシシラン、α−グリ
シドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシ
ブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルト
リメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキ
シシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−
グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシド
キシブチルトリエトキシシラン、(3・4−エポキシシ
クロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3・4−
エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、
β−(3・4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメ
トキシシラン、β−(3・4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリエトキシシラン、β−(3・4−エポキ
シシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−
(3・4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキ
シシラン、β−(3・4−エポキシシクロヘキシル)エ
チルトリメトキシエトキシシラン、β−(3・4−エポ
キシシクロヘキシル)エチルトリフエノキシシラン、γ
−(3・4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメ
トキシシラン、γ−(3・4−エポキシシクロヘキシ
ル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3・4−エポ
キシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−
(3・4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキ
シシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラ
ン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−
グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリ
シドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシド
キシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシ
エチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロ
ピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピ
ルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピル
メチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメ
チルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチ
ルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチル
ジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジ
プロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジ
プトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメ
トキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチ
ルジフエノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチ
ルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチル
ジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジ
メトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフエニルジメ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフエニルジエ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルモノ
メトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルモ
ノエトキシシランなどの有機ケイ素化合物が挙げられ
る。
エポキシ基以外の官能基を含む化合物の具体例として
は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキ
シエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリ
メトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メル
カプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプ
ロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエ
チルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピ
ルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロ
ピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピル
メチルジメトキシシラン、γ−メルカププトプロピルメ
チルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメ
トキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシ
ランメチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエ
トキシシランなどがある。また、前記官能基置換アルコ
キシシランと併用しても良い。
アルコキシシランとしては、例えばメチルシリケー
ト、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−
プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブ
チルシリケートおよびt−ブチルシリケートなどのテト
ラアルコシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチ
ルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシ
ラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキ
シシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエト
キシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルト
リエトキシシラン、フエニルトリアセトキシシラン、γ
−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロ
ピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセ
トキシシラン、3・3・3−トリフロロプロピルトリメ
トキシシラン、メチルトリフエノキシシラン、クロロメ
チルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシ
ランなどのトリアルコキシ、トリアシルオキシまたトリ
フエノキシシラン類ジメチルジメトキシシラン、フエニ
ルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラ
ン、フエニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロ
ピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチ
ルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、な
どのジアルコキシシランまたはジアシルオキシシラン類
などが挙げられる。
これらアルコキシシランの加水分解縮合物は、前述の
アルコキシシラン化合物を単独又は2種以上組み合せ、
純水または塩酸、酢酸あるいは硫酸等の酸性水溶液で、
加水分解することによって製造される。通常は上記アル
コキシシラン中に酸性水溶液を一度に添加することによ
って行なわれるが、添加速度あるいは外温を調整するこ
とにより、加水分解速度をコントロールすることも容易
に可能である。
また目的に応じ、アルミニウム含有加水分解触媒例え
ばアルミニウム・トリアセチルアセトナートの如きアル
ミニウムキレート又はアルミニウム・イソプロポキシド
の如きアルミニウム・アルコキシドを用いて中性条件で
加水分解することも可能である。
アルコキシシランの加水分解物には、これ単独または
塗布性、可とう性、染色性等実用性をさらに改善するこ
とを目的として、ポリビニルブチラール、ポリアミド、
エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体
などの有機ポリマーの適量を組み合せ、さらに必要に応
じ、硬化触媒、界面活性剤、充填剤、着色剤、溶媒など
を添加してコーティング剤を調整する。
充填剤としては、耐擦傷性又は染料透過性の向上、塗
膜の屈折率の調節、反射防止膜との密着性の向上を目的
として粒径5〜1000Åの無機微粒子状酸化物を使用する
ことが可能である。
その具体的な例としては、水又は有機溶媒に分散した
コロイダルシリカ、酸化アンチモンゾル、ジルコニアゾ
ル、チタニアゾルなどが挙げられる。
耐擦傷性層は衝撃吸収層と同様一般的に使用されてい
るコーティング方法を用いR1面、R2面の両面に形成され
る。コーティングの後、形成された塗膜を硬化させる方
法としては、主に加熱処理が使われ、加熱温度は使用す
るプラスチックレンズ基材の耐熱温度により左右される
が、一般的には60〜150℃の範囲が最も広く用いられ
る。
得られる最終製品としての眼鏡レンズが、良好な耐擦
傷性、耐熱性、耐温水性を保有するためには、耐擦傷性
層の膜厚が1〜10μの間で選択されることが好ましい。
これより薄い場合は、耐擦傷性、耐熱性、耐温水性が低
下し、厚い場合には塗膜の均一性に問題を生ずる。
耐擦傷性層の上には反射防止層がR1、R2の両面に設け
られる。反射防止層は、光学理論に基づき、反射防止膜
の屈折率をna、膜厚をd、レンズ基材の屈折率をns、基
準波長をλとすれば、単層膜の場合、 nd・d=λ0/4 を満足するものである。ただ一般には、λの範囲を広
げるために多層構造が採用される。材料としては、Si
O、SiO2、Al2O3、Y2O3、Yb2O3、CeO2、ZrO2、Ta2O5、Ti
O2、MgF2などの無機誘電体が使用される。
反射防止層の形成には、一般には真空蒸着、スパッタ
リング、イオンプレーティング、CVDなどが利用される
が、場合により厚膜法と呼ばれるディッピング→焼成の
手法をとっても良い。
さらに必要に応じて、反射防止層の上に反射防止膜の
汚れ防止、水ヤケ防止を目的として、側鎖にアルキル
基、フェニル基、ポリフルオロアルキル基等の疎水性基
を有する有機ケイ素化合物又はフッ素含有炭化水素系化
合物の超薄膜(厚さが例えば100Å以下)を形成するこ
とも可能である。
基材として使用されるプラスチックレンズの材料は、
透明性及びアッベ数光学的特性を満足するものであれ
ば、任意に選択することが可能であるが、眼鏡レンズと
して要求される二次加工性、例えば染色性、研摩加工
性、玉摺り加工性等及びその他の物理的、機械的、科学
的特性から判断すると、現在視力矯正用眼鏡レンズ用に
最も広範に使用されているADC樹脂が最も適している。
しかしながら、基材材料として、核置換ハロゲン含有
芳香族モノマー、各種芳香族系モノマー、金属含有モノ
マー等を主成分として重合して得られる高屈折プラスチ
ック樹脂を使用することももちろん可能である。
これらの樹脂以外にも、熱可塑性透明樹脂材料例えば
ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボ
ネート、ポリメチルペンテン樹脂等を使用することも可
能である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明す
るが、本発明は以下に示す実施例によって限定されるも
のではない。
〔実施例〕
(1)衝撃吸収用塗料の調整: ・ウレタン系塗料主剤(関西ペイント(株)製:レタン
・クリヤー#2026) 200g ・レタン硬化剤(関西ペイント(株)製) 66g ・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分
解物 50g ・界面活性剤東レシリコーン(株)DC11PA 1ml ・エチルセロソルブ 400g を秤量した後、混合溶解し、樹脂塗料を得た。
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシラン加水分解
物は、衝撃吸収層の硬度及び上層の耐擦傷性との付着性
を調整する為の助剤(シリコーン樹脂)であり、次に示
す方法で調整される。
(2)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加
水分解物の調整: 回転子を備えた反応器中に信越シリコーン(株)製γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン236g、純水
54g、アセチルアセトンアルミニウム5gを秤量し仕込
み、65℃の温度下で約1時間攪拌することにより部分的
に縮合した加水分解物を得た。
(3)耐擦傷性塗料の調整: シランの加水分解物の調整: 前項記載の「γ、グリシドキシプロピルトリメトキシ
シラン加水分解物の調製」と同様の方法により部分的に
縮合した加水分解物を得た。得られた加水分解物の固形
分(90℃の熱風乾燥機中で2時間放置後の残存物)は60
%であった。
塗料の調整: (a)成分として上記の加水分解生成物100重量部; (b)成分として、日産化学(株)製の「メタノール・
シリカゾル」(固形分30重量%、粒径10〜20ミリミクロ
ン)100重量部; 硬化触媒としてアセチルアセトンインジウム0.5重量
部を添加し、他に調整量のメタノールを加えて均一に攪
拌し、粘度約4センチポイズのコーティング液を調整し
た。
(4)プラスチックレンズ基材の製造(成形): ・ジエチレングリコールビスアリルカーボネート・モノ
マー(ADC)100重量部 ・紫外線吸収剤Z−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフ
ェノン(住友化学(株)製SUMISORB110)0.1重量部 ・重合開始剤ジイソプロピル・パーオキシジカーボネー
ト(日本油脂(株)製IPP)3重量部 を秤量し、均一に攪拌混合し、1μのメンブランフィル
ターでろ過し、モノマー溶液を得た。
このモノマー溶液をガスケットと呼ばれるスペーサー
を介してシールされた光学的に研摩された凹凸2枚のガ
ラス母型の間に注入し、初期温度45℃、最高温度85℃、
最高温度到達時間が17時間となるように徐々に昇温さ
せ、その後85℃で4時間保持した後、ガスケットを取り
除し、衝撃により「重合の完了したプラスチックレンズ
基材」をガラス母型から分離した。このレンズ基材はさ
らに140℃、30分間のアニール処理を施し、レンズ内部
の歪を除去した。
予めガスケット及び母型を所定の形状に設計製作する
ことにより、中心厚1.6mmの度なし凹レンズ(0Diopte
r)形状を有するレンズ基材を得た。
(5)衝撃吸収層の形成: 前項記載の方法で作られたレンズ基材を衝撃吸収層の
密着性を改良する目的で、ワールドエンジニアリング
(株)製「紫外線オゾン洗浄機」を用い3分間のオゾン
洗浄を行った。
このレンズ基材のR2面側を上向きにして、ミカサ
(株)製スピンコーターにセットし、前記の衝撃吸収用
塗料を1ml滴下し、直ちに回転速度1,000rpmで20秒間回
転させ均一塗膜を得た。この後、塗膜の乾燥硬化は、熱
風循環炉中で120℃、30分間の加熱により行った。
このようにして得られた衝撃吸収層の膜厚は2.7ミク
ロンであった。
(6)耐擦傷性層の形成: R2面側に衝撃吸収層を設けたレンズ基材を密着性の改
良を目的として、60℃、10%NaOH水溶液中に約3分間浸
漬処理し、水洗後乾燥した。
次いで、浸漬法(引上げ速度120mm/min)により前記
(3)項記載の耐擦傷性塗料をR1面、R2面両面同時に塗
布した後、120℃の熱風乾燥機中に2時間放置し均一な
耐擦傷性層を形成させた。得られた耐擦傷性層の膜厚
は、2.8μであった。
(7)反射防止層の形成: 前記(6)項で得られたレンズに対し、R1、R2の両面
に真空蒸着法により空気側/SiO2750Å/ZrO2500Å/SiO22
00Å/ZrO2500Å/基材側の順で構成される4層反射防止
層を形成した。
〔比較例1〕 実施例で用いたレンズ基材それ自体を比較例1とす
る。
〔比較例2〕 実施例で用いたレンズ基材を60℃、10%NaOH水溶液に
3分間浸漬後、実施例と同様の耐擦傷性層をR1、R2両面
に設けただけのものである。
〔比較例3〕 実施例で用いたレンズ基材に直接に実施例と同様の反
射防止層をR1・R2両面に設けたものである。
〔比較例4〕 実施例で用いたレンズ基材を60℃、10%NaOH水溶液に
3分間浸漬後、実施例と同様の耐擦傷性層及び反射防止
層をR1、R2両面に形成したものである。
〔比較例5〕 中心厚:1.6mmを2.2mmの厚くしたほかは、実施例の
(4)項と同様にして、レンズ基材を製造(成形)した
後、比較例4と同様にR1、R2両面に耐擦傷性層及び反射
防止層を形成したものである。
〔比較例6〕 中心厚:1.6mmを2.4mmと厚くしたほかは、実施例の
(4)項と同様にしてレンズ基材を製造(成形)した
後、比較例4と同様にR1、R2両面に耐擦傷性層及び反射
防止層を形成したものである。
〔比較例7〕 実施例において衝撃吸収層をR1、R2の両面に形成する
こと以外は実施例と同様にしてレンズを製造した。尚、
衝撃吸収層の塗布は、浸漬法(1mm/secの引上げ速度)
で行った。衝撃吸収層の膜厚は2.7μであった。
〔比較例8〕 実施例において衝撃吸収層をR2面の代りにR1面に設け
ること以外は実施例と全く同様にしてレンズを製造し
た。但し、スピンコートの条件は滴下量1ml、第1段階
回転数500rpm:5秒間、第2段階1000rpm、20秒であり衝
撃吸収層の膜厚は3.0μであった。
〔性能試験〕
前記実施例及び比較例のレンズについて下記試験を試
みた。この結果を第1表に示す。
耐衝撃性: 米国のFDA(Food and Drug Administration:アメリカ
更生教育省に属する食品医薬品局)が制定した眼鏡レン
ズの安全に関する鋼球落下試験(以後FDAテストと略
す)に基づきテストした。
即ち、重量0.56オンス(約16.4g)、直径5/8インチ
(約16mm)の鋼球を50インチ(1.27m)の高さから、R1
面(対物面側)を上にして水平に置いたレンズ表面の幾
何学的中心から直径5/8インチ以内に自然落下させ、レ
ンズのクラック及び割れをチェックし、次のランク付け
を行った。
A:全く割れない。更に同一レンズで同じテストを繰り返
し、全く割れずにパスした回数を付記する。なお、テス
ト回数の上限は20回とした。
B:クラックが発生した。
C:幾つかの破片となって割れた。
なお、FDAの規格ではクラックの場合でも、肉眼で識
別し得る何らかのレンズ材料が、接眼側表面から分離す
る場合、そのレンズは割れたものと判断される。
耐擦傷性: (A)スチールウール・テスト 日本スチールウール(株)製のスチールウール#0000
を使用し、レンズ表面をこすり、キズのつき具合をチェ
ックし、ランク付けを行った。この試験は荷重1kg、40m
mのストロークを50往復させる条件下で行った。
ランク付けは、20Wの螢光灯下で目視により行った。
A:傷が全くつかない。
B:10本以内の傷がつく。
C:10本以上の傷がつくがなお光沢を保持している。
D:無数の傷で光沢を失う。
未コートのレンズ基材(比較例1)のランクはDに相
当する。
(B)モニターテスト 実施例及び比較例のレンズを眼鏡枠に入れ、4ケ月間
の加速モニターテストを実施した。即ち、就寝時以外常
時装用及び1日2回各50回ハンカチによる手拭きを上記
期間中継続して行った。
評価は次の基準で行った。20Wの蛍光灯下で目視し、
キズの種類及び本数を分類した。
1)キズの種類 白キズ:白く見えるキズ(かなり深いキズ) キラキズ:レンズを回転すると薄くなるキズ(浅いキ
ズ) 2)キズの等級 等級 キズの本数 I 0 II 1〜 5 III 6〜10 IV 11〜15 V 16〜20 VI 21〜 密着性: JIS−D−0202に従い、ナイフで最上層からレンズ基
材にまで達する切れ目を入れる。切れ目は、1mm間隔で1
mm2の碁盤目を100ケ作るように入れる。その上にセロハ
ン粘着テープ(日東化学製)を強く付着させた後、レン
ズ表面に対し垂直方向にテープを引っぱり、剥す。この
とき、テープと共に積層膜が剥れた升目の数nをn/100
で表わし、評価した。
耐温水性: 実施例及び各比較例のレンズを60℃の温水中に30分間
浸漬した後、積層膜の外観及び剥離状態を観察した。
以上の試験結果を次の第1〜3表に示す。ほかに美観
及び反射防止効果を1項目として、各レンズについて評
価した。この結果と第1〜3表の結果とをまとめて、総
合評価(◎○△×の4段階評価)した結果を第4表に示
す。
〔発明の効果〕 以上の通り、本発明によれば、反射防止効果を有しな
がら、耐擦傷性及び耐衝撃性の両方について充分満足で
きるプラスチック製眼鏡レンズが初めて得られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例にかかる眼鏡レンズの概略縦
断面図である。 第2〜3図は、従来の眼鏡レンズの概略縦断面図であ
る。 〔主要部分の符号の説明〕 1……レンズ基材 2……耐擦傷性層 3……反射防止層 4……衝撃吸収層又はプライマー層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラスチックレンズ基材と、そのR2面(接
    眼側)に形成された衝撃吸収層と、その上に形成された
    耐擦傷性層と、その上に形成された反射防止層と、基材
    のR1面(対物側)上に形成された耐擦傷性層と、その上
    に形成された反射防止層とからなるプラスチック製眼鏡
    レンズ。
  2. 【請求項2】前記プラスチックレンズ基材がジエチレン
    グリコールビスアリルカーボネート樹脂である特許請求
    の範囲第1項記載のプラスチック製眼鏡レンズ。
  3. 【請求項3】前記プラスチックレンズ基材の中心厚が0.
    5mm〜2.0mmの範囲にある特許請求の範囲第1項記載のプ
    ラスチック製眼鏡レンズ。
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