JP2583660B2 - パーム油の精製分別方法 - Google Patents

パーム油の精製分別方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明はパーム油またはパーム分別油の精製分別方
法及び装置に関する発明である。
(従来の技術) パーム油は、溶剤分別方法、ディタージェント分別方
法、及び乾式分別方法などによって一段または二段分別
され、二段分別の場合は一段目の分別により得られたオ
レイン画分(低融点画分)をいわゆるスーパーオレイン
と称される画分と中融点画分(PMF)とに分離すのが通
常である。
上記パーム油の分別方法の中で今日最も一般的に採用
されているのは、安価に処理できる乾式分別方法であ
る。しかし、該分別方法は、結晶成長過程において結晶
の内部に取り込まれる液体部が他の分別方法に比べて多
いために、分別精度が低いという欠点がある。例えば、
パーム油を一段で分別する場合に得られるオレイン収率
は、溶剤分別方法、ディタージェント分別方法なら70%
以上であるのに対して、乾式分別方法では65%未満であ
ることが多い〔J.A.O.C.S.,62(2)210−219(198
5)〕。
この傾向は、生成結晶部の量が多くなるほど強くな
り、従って上記一般的な二段分別では一段目より二段目
の方が分別精度がより問題となる。特にハードバターと
して使用するRMF製造の観点からはより低いIVのPMFを得
ることが望まれるのに対し、IV50からより低くするため
に、分別精度を増すための他の手段、例えば、固液分離
のための圧搾圧力をより増すなどの手段を必要とする。
尚、粗パーム油には種々の不純物が含まれ、結晶化装
置やフィルターにかけると目詰まりを起こしたり品質が
一定しなかったりするので、乾式分別を行う前には、脱
ガム、脱色、フィジカル脱酸といった精製工程を経る
(RBD:Refined Bleached Deodorized)か、中和、脱
色、フィジカル脱酸もしくは脱臭工程を経る(NBD:Neut
ralized Bleached Deodorized)ことが行われるのが一
般であり、装置もフィジカル精製手段に乾式分別手段が
連結している。
(発明が解決しようとする課題) この発明は、パーム油またはパームオレインの乾式分
別における分別性能を向上させる精製分別方法及び装置
を開発することを目的とし、とりわけ、ハードバターと
して良好な品質のPMFの生産を容易にすることを課題と
する。
(課題を解決するための手段) 本発明者は、上記課題達成のため種々の研究を行って
来、パーム油には、結晶生成時内部に取り込まれる液体
部の量が少ない良好な結晶の成長を抑制する何らかの因
子があり、それを除去することにより良好な結晶が生成
するのではないか、と着想し、精製工程との関連で種々
の検討を行った。その結果、脱色工程で採用したのでは
結晶生成上は何の効果もない活性炭などの吸着剤による
処理を、特定の段階即ち、フィジカル精製よりも後、乾
式分別より前に行うことによって、良好な結晶、即ち固
液分離が顕著で固液分離しやすい粗大な結晶を生じるこ
とを見出した。
この発明は、フィジカル精製処理したパーム油または
パーム分別油を吸着剤処理してから乾式分別することを
骨子とするパーム油の精製分別方法、及び、吸着剤処理
手段と乾式分別手段を連結してなるパーム油の精製分別
装置である。
以下この発明を詳細に説明する。
この発明でフィジカル精製(physical refining)
は、フィジカル脱酸あるいは脱臭(deodorisation)と
いわれる、加熱下に行われる蒸留処理であり、通常200
℃より高い温度で減圧下におくことにより行われる。従
来と同様、この精製は乾式分別を効率よく行うために必
要であり、また、その前処理工程としての、脱ガム、脱
色といった精製工程を経るのが好ましい。
このようなフィジカル精製処理したパーム油またはパ
ーム分別油の分別は、公知の方法で行うことができ、パ
ーム分別油はその融点画分がいずれでもよいが最も通常
にはオレイン画分である。またRBDもしくはNBDパーム油
またはそのオレインとして市販されているものを使用す
ることもできる。
フィジカル精製処理したパーム油またはパーム分別油
は、次に吸着剤処理を行う。
吸着剤としては、活性炭、活性白土、シリカゲルなど
を使用できるが、最も好ましい吸着剤は活性炭、次い
で、酸度の高い(アルカリによる中和滴定量で3mgKOH/g
以上好ましくは8mgKOH/g以上の)酸性白土であり、他は
比較的効果が少ない。
吸着剤処理は、パーム油またはパーム分別油の結晶が
殆ど出ない温度よりは高く、140℃以下好ましくは120℃
以下の温度で吸着剤と接触させることにより行われ、処
理時間は撹拌装置、撹拌効率等によって若干相違するが
通常10分〜1時間で足りる。ただし約80℃以上の加熱下
で処理するときは油脂の劣化を防ぐために、空気に触れ
ない条件下、例えば減圧下もしくは不活性気体中で処理
するのが好ましい。吸着剤の使用量は、パーム油または
パーム分別油に添加する場合、油脂に対して0.01〜3
%、好ましくは0.05〜1%がよいが、吸着剤を充填した
カラム中を通して処理する場合は、量的規定にあまり意
味がない。
ついで乾式分別を行うが、この発明では、上記吸着処
理後と乾式分別するまでの間に、140℃を越える工程、
例えばフィジカル精製の工程を採用しない。この間に油
脂温度が140℃を越えると、分別精度が低下するのであ
る。
乾式分別は、溶剤やディタージェントを使用しない分
別方法であって、周知のように融解した状態の油脂を冷
却して結晶核を生成させ、低温での熟成により結晶が成
長する過程を経、次いで固液分離する過程からなる。代
表的な方式として、ティルティオ(Tirtiaux)方式、デ
スメット(Desmet)方式等があり、また最近開発された
特開平2−14290号記載のような結晶化を静置状態で行
い、解砕流動化後固液分離する方法も好適に採用でき、
いずれの方式であるかは特に限定されない。なお固流分
離は、濾過、遠心分離があるが、最も一般的には、ベル
トプレス、フィルタープレスが採用される。
以上の精製分別方法についての説明から容易に理解さ
れるとおり、本発明の他の一つは、吸着剤処理手段と乾
式分別手段を連結してなるパーム油の精製分別装置であ
り、吸着剤処理手段の前はフィジカル精製手段が連結さ
れていてもよい。
吸着剤処理手段としては、撹拌手段を備えた混合装
置、インラインミキサー、吸着剤を充填したカラム等を
例示でき、乾式分別手段は、公知の乾式分別装置例え
ば、ティルティオ装置、デスメット装置が例示される。
実施例1 IV52.0のRBDパーム油、即ち、粗パーム油を脱ガム、
脱色し、フィジカル脱酸して得た精製パーム油を、その
まま、または該油に対して活性炭を対油脂0.5重量%加
え、120torrの真空下で100℃30分撹拌後真空濾過したも
のを、70℃でTirtiaux分別プラント(撹拌子付縦型チラ
ーでの晶析と、フィルタープレスを用いての圧搾を行
う)に供給し、そこで冷却して結晶を生成させ、最終品
温26℃または22℃で30時間かけて熟成することにより、
乾式分別を行い下表の分別油脂を得た。
下表の結果から明らかなように、No.1及びNo.2の対比
では、液体側画分のIV(沃素価)がほぼ同じでありなが
ら収率はNo.2が低いこと、固体側画分ではIVと収率の両
方に差異があり、No.2の方がIV及び収率が高いことが示
されている。このことは、活性炭処理を施すことによ
り、それを施さないNo.2に比べて、本来の液体側成分が
圧搾ケーキからの離脱が十分に行われ、固体側画分のIV
の低さと液体側画分の収量の高さとなってあらわれてお
り、分別精度が高まったことが示される。同様の対比は
No.3とNo.4の対比によって明らかである。
実施例2 実施例1No.2によって得たRBDパームオレイン油に対し
て、活性炭を対油脂0.2重量%加えるか加えずして、100
℃120torrの真空下で30分撹拌後、真空濾過し、これを
撹拌子付縦型チラーを使っての晶析と、フィルタープレ
スを用いての圧搾を行うことにより、分別を行い、下表
の分別油脂を得た。
No.1及びNo.2、No.3及びNo.4、並びにNo.5及びNo.6の
何れの対比においても、活性炭処理を行うことにより、
分別精度が高まることが示された。本発明処理による、
No.1やNo.3は、より高圧で固液分離したNo.6に匹敵する
あるいはこれを凌駕する分別精度の向上があった。
なお、別の比較として、No.1の活性炭処理後の油脂を
3torrの真空下に150℃で90分間水蒸気蒸留し、その後N
o.3と同様に乾式分別した結果では、固体側分別品のIV
は50.5、収率51.3%となって分別精度は低下した。
実施例3 IV(沃素価)52.0のRBDパーム油に対して、活性炭、
中和滴定量で10.7mgKOH/gの酸度の酸性白土、もしくは
シリカを対油脂0.5重量%加えるか加えずして、120torr
の真空下で30分撹拌後、真空濾過し、これを撹拌子付縦
型チラーを使っての晶析と、フィルタープレスを用いて
の圧搾を行うことにより、分別を行い、下表の分別油脂
を得た。
下表の結果に示されるように、分別性能の良さの順
は、活性炭処理、酸性白土処理、シリカ処理、無処理の
順であった。
(発明の効果) 以上説明したとおり、この発明によって、パーム油ま
たはパームオレインの乾式分別性能を向上させることが
でき、またハードバターとして良好な品質のPMFを容易
に得ることができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−75708(JP,A) 特開 昭51−109907(JP,A) 特開 昭51−109906(JP,A) 特公 昭29−636(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィジカル精製処理したパーム油またはパ
    ーム分別油を活性炭によって吸着処理してから乾式分別
    する方法であって、当該吸着処理後と乾式分別までの間
    に、140℃を越える工程を採用しないことを特徴とする
    パーム油の精製分別方法。
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