JP2566805B2 - 複合酸化物粉体の製造方法 - Google Patents

複合酸化物粉体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は磁性材料、セラミック原料として有用な金属
の複合酸化物を製造する方法に関し、さらに詳しくは蒸
気圧の高い原料金属化合物と低い原料金属化合物の混合
溶液からも、混合組成に極めて近い組成の複合酸化物を
焙焼法によって得る方法に関する。
〔従来の技術〕
従来、噴霧焙焼法を用いる複合酸化物の製造法として
は、金属の硝酸塩、塩化物あるいはアルコキシドなどの
化合物の混合水溶液、あるいは混合有機溶液を燃焼火炎
中に直接噴霧して熱分解焙焼する方法がある(例えば特
公昭47−11550号、フランス特許第1216574号明細書)。
さらに蒸気圧の比較的高い原料物質を含む複合酸化物に
あっては、蒸気圧の低い原料のみ所定のモル比で混合し
てから酸化焙焼し、蒸気圧の高いものについては後から
酸化物粉体の形で添加混合して焼成し、所定の組成の複
合酸化物とする方法(特開昭55−144421号)があり、ま
た流動層を用いる方法なども提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
前述の特公昭47−11550号公報に示されている、直接
火炎中に金属塩化物の混合水溶液を噴霧する方法は主に
塩化物の蒸気圧の小さい金属から構成されるフエライト
を対象としたものであり、同じ出願人の前記特開昭55−
144421号公報の記載によれば、前者の方法では出発原料
をすべて金属塩化物の形で使用すると、塩化亜鉛のよう
な蒸気圧の高いものが原料に含まれるときは、これが焙
焼中に揮散して最終製品における目標濃度を大幅に下回
るとされている。従って目標濃度を保つために前者の方
法では揮発性成分を初めから過剰に混合して揮散損失分
を補う必要があり、原料を余分に要する上、僅かな反応
温度等の条件変動によって組成が変動するおそれがあっ
た。さらに未反応成分は何等かの手段を用いて回収し再
利用する必要を生じる。
後者の方法では焙焼と混合、再度の焙焼と工程が増え
る上、折角の噴霧焙焼法の特長である分子レベルでの混
合可能という利点が失われる。
さらに、直接火炎中に水溶液を噴霧するこれらの方法
は、燃焼炎が急冷されるため、微細な炭素粒子の生成に
よる不純物の増大、炭化物の生成、火炎の不安定化に帰
因する生成物の品質の不均一性等の不都合を生じ易い等
種々の問題点があった。
また流動焙焼による方法は特にガスの流れと固体生成
物の流れが分離し易い構成であり、揮発性塩の損失が顕
著で組成の安定均一化が困難であるという欠点があっ
た。
〔課題を解決するための手段〕
本発明はこのような蒸気圧の高い原料を含む多成分系
の原料を用いても、一工程で原料の金属元素比とほぼ同
じ金属元素比をもつ、不純物の少ない組成の安定した複
合酸化物を得ることのできる噴霧焙焼法を提供するもの
である。
すなわち本発明は上記目的を達成するためなされたも
ので、金属塩化物の混合液を高温ガスを用い、水蒸気を
含む酸化性雰囲気下において焙焼することにより、複合
酸化物微粒子を製造する方法において、還元性物質を殆
ど、または全く含有しない高温度の高速ガス流と、原料
金属塩化物の混合溶液を噴霧混合して、急速に600〜100
0℃の範囲内の所定の焙焼温度に保つと共に、原料並び
に分解生成物の流れを熱ガス流に並流的に同伴させつつ
金属塩化物混合物の分解を行うことによって、原料の金
属元素比とほぼ同じ金属元素比を有する複合酸化物を得
ることを特徴とする複合酸化物粉体の製造方法である。
本発明を図を用いて説明する。
第1図は本発明を実施するために用いられる装置の一
態様である。
1は焙焼炉本体であり、通常竪長円筒型の耐火物を内
張りした炉が好適に用いられるが、必ずしも竪型である
必要はない。2は高負荷短炎バーナーで、燃料入口7、
燃焼用空気入口8を有している。本発明においては原料
混合液を燃焼中の火炎と混合することを避けることが大
切である。この目的のために高負荷の短炎バーナーを用
いることが極めて好ましい。これは混合をよくするため
の高速のガス流が得られること、未燃カーボンの殆ど含
まれない高温ガスが容易に得られるなど種々の利点があ
る。
このようにして得られた未燃物を殆ど含まない、すな
わち還元性物質を殆ど、または全く含まない高温の高速
ガスは炉の頂部付近から炉内切線方向に吹きこまれる。
一方原料塩化物の混合液9は噴霧ノズル3から炉内の
高速旋回高温ガス中に噴霧される。10は霧化用の加圧空
気である。この際の噴霧粒径は均一な細かい方がよい
が、通常5〜100μmの範囲である。噴霧は機械式のも
の、超音波を用いるもの、空気の代りに水蒸気を用いる
ものなどいずれを用いてもよい。噴霧された混合液は高
温の旋回気流と急速に混合し、蒸発潜熱と分解熱等によ
って綜合的に所定の反応温度に保持され、金属塩の分解
がおこる。この際の反応温度は600〜1000℃とすること
が好ましい。600℃未満ではフエライトを目的とする場
合、好ましい型とされるスピネル構造への結晶化が進み
難くなること及び滞留時間を長くしなければならぬため
炉が大きくなること等の不都合を生じる。また1000℃を
超えると原料に揮発性の物質が含まれるとき、気化が早
く、気相で分解して生成する微細粒子の再結晶が遅れて
最終生成物の組成ずれや、分子レベルでの結合性が劣っ
てくる等の現象が強くなる傾向がある。
このような不都合は第1図のような装置を用いること
によってある程度救済される。すなわち高速の旋回気流
の遠心力によって気流内部は外周部と比べて負圧とな
り、中心部へ還流が生じ、ガスに乗った微粒子も同伴さ
れ易くなるので全体として混合がよくなり、揮発性物質
から生じた微粒子の分子レベルでの再結合が促進される
こととなる。しかして生成物の流れと高温ガスの流れは
綜合的にみて並流であることが、揮発性の高い原料を含
む場合の組成ずれを防ぐために必要である。
このような反応器は第1図のもののほか、例えば炉頂
中心部に高温の旋回気流を生じる所謂ボルテックスバー
ナーを設置し、後流部分の炉壁円周に、1乃至複数の原
料供給ノズルを配置するような方式も好適に用い得る。
要は高速の高温ガス流に原料混合溶液の噴霧微粒子が接
触して急速に蒸発熱分解しつつ、所定の時間反応温度に
保持され、綜合的にみて原料並びに生成物と高温ガスの
流れが少なくとも生成微粒子の分離装置に達するまでは
並流的であることが骨子となる。なおこの際の滞留時間
は目的によって異なるが、0.1〜10秒、通常0.5〜3秒間
である。
焙焼炉1を出た生成微粒子と高温ガスの混合物は冷却
チャンバー4で冷却され、さらにガスクーラー5で冷却
され、バグフィルター6で生成微粒子がガスと分離され
捕集される。冷却チャンバー4は腐食防止のための露点
温度以上に保持され、気体あるいは液体で冷却されるも
のであるが、必ずしも必須のものではなく、次のガスク
ーラー5が充分(但し、露点以上でバグフィルターが結
露しないこと)冷却能力があれば、場合によってはなく
てもよい。冷却チャンバー4の機能は若し反応生成物微
粒子が比較的低融点でガスクーラーや配管の閉塞のおそ
れがある場合の輻射伝熱による冷却部、あるいは一次生
成粒子のアグロメレーションのために空間の提供が必要
な場合に効果を発揮する従的なものである。
生成複合酸化物微粒子の捕集には、図示のバグフィル
ターのほか、電気集塵器、沈降器あるいはサイクロン、
フエライト等には磁気収塵器等のほかベンチュリースク
ラッバ等も必要に応じて使用できる。
なおマンガンのような可変原子価金属を含むフエライ
ト系複合酸化物を製造する場合は雰囲気中の酸素濃度も
重要であり、3価のマンガンの生成をおさえるには酸素
分圧を下げ、例えば残存濃度6vol%以下とし、反応後は
急冷するなどの操作が必要な場合もある。
〔作 用〕
本発明においては燃焼中の火炎を、分解のために用い
ないから、安定して高温ガスを反応雰囲気として用いる
ことができ、反応の不均一性となる変動要因が少ない。
また未燃カーボン等の悪影響もない。
一方高温雰囲気ガスと原料噴霧液滴、生成物微粉末、
生成ガス等は全体として混合よく並流となるようにした
から、一部気化した未反応物、あるいは反応生成物があ
っても反応及び冷却過程において生成酸化物に最終的に
取込まれ組成のずれがなくなる。
〔実施例〕
第1図の型式の焙焼炉を用いて実験を行った。
先ずLPG3.3ppH(ppH=容積部/時、以下同じ)を燃焼
用空気108ppHを用いて高負荷熱焼し、約30m/secの高速
ガスとして円筒炉内切線方向に吹き込んだ。噴霧ノズル
3から水を噴霧しつつ炉内温度を所定の焙焼温度に下
げ、次いでその吸熱に見合う量の原料混合液と切替えて
焙焼を行った。
原料混合液としてFeCl2(bp.1030℃、287g/)、MnC
l2(bp.1190℃、84g/)、ZnCl2(bp.732℃、40g/)
の濃度からなる水溶液25×10-3ppHを5.1ppHの噴霧用空
気(圧力5Kg/cm2G)を用いて粒径10〜100μmの液滴と
して噴霧した。焙焼温度を800℃とし、滞留時間1.5秒の
条件で反応した後、収塵器6から得られた複合酸化物の
組成の分析結果を第1表に示す。なおこれは反応開始後
1.5時間において捕集されたものであり、このときの高
温ガス中の残存酸素濃度は4〜5%であった。
第 1 表 (%) Fe2O3 MnO ZnO 原料組成 71.7 18.8 9.5 1.5時間後 71.8 18.5 9.7 *塩化物からの計算値 第1表に示された通り、組成のずれは極めて少ないこ
とが明らかである。得られた粒子は、BET法による比表
面積15m2/g、平均粒子径0.08μmという微粒子であり、
X線解析の結果は充分発達したスピネル構造をなしてい
た。
〔発明の効果〕
本発明においては燃焼中の火炎に原料混合液が接触し
ないので反応温度を一定に保持しやすく、かつ生成物に
未燃分の混入がない。また局所的な過熱もない上、反応
物質と生成物とは混合しつつ一体となって反応帯を流れ
るので原料成分の揮発性に大きな差があっても、組成が
原料と生成物でずれることが極めて少ない。このため原
料の無駄が少なく、操作が容易であるなど複合酸化物の
製造上、益するところ大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を実施するための装置の一実施態様の概
略図である。 1……焙焼炉、2……高負荷短炎バーナー 3……噴霧ノズル、4……冷却チャンバー 5……ガスクーラー、6……集塵器(バグフイルター) 7……燃料入口、8……燃焼用空気 9……原料混合液、10……噴霧用流体 11……製品受器、12……冷却用流体 13……廃ガス出口、14……熱風吹出し口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗原 敏昭 茨城県北相馬郡藤代町宮和田2848―5 (72)発明者 野中 信男 埼玉県所沢市久米1466―4 (56)参考文献 特開 昭58−223606(JP,A) 特開 平1−145307(JP,A) 特公 昭47−11550(JP,B1)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属塩化物の混合液を高温ガスを用い、水
    蒸気を含む酸化性雰囲気下において焙焼することによ
    り、複合酸化物微粒子を製造する方法において、還元性
    物質を殆ど、または全く含有しない高温度の高速ガス流
    と、原料金属塩化物の混合溶液を噴霧混合して、急速に
    600〜1000℃の範囲内の所定の焙焼温度に保つと共に、
    原料並びに分解生成物の流れを熱ガス流に並流的に同伴
    させつつ金属塩化物混合物の分解を行うことによって、
    原料の金属元素比とほぼ同じ金属元素比を有する複合酸
    化物を得ることを特徴とする複合酸化物粉体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】原料の金属塩化物の混合溶液が、蒸気圧の
    異なる金属塩化物を含む混合液である請求項(1)記載
    の複合酸化物粉体の製造方法。
  3. 【請求項3】高温度の高速ガス流が、旋回高温ガスであ
    る請求項(1)または(2)記載の複合酸化物粉体の製
    造方法。
  4. 【請求項4】金属塩化物混合物の分解によって得られる
    複合酸化物粉体が磁性用材料である請求項(1)〜
    (3)のいずれかに記載の複合酸化物粉体の製造方法。
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