JP2563166B2 - 車両用2サイクルディーゼルエンジン - Google Patents

車両用2サイクルディーゼルエンジン

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は例えば自動二輪車や自動三輪車等の駆動に用
いられる車両用2サイクルディーゼルエンジンに関する
ものである。
〔従来の技術〕
自動車等の車両を駆動するディーゼルエンジンにおい
ては、クランク軸の一端側から車両を駆動するための動
力を取出し、他端側から燃料噴射ポンプや吸・排気弁な
どを駆動するための動力を取出すものが一般的である。
例えば燃料噴射ポンプは、燃料噴射ポンプ駆動用カム軸
に軸装された歯車を、アイドル歯車を介してクランク軸
の他端側に軸装された歯車に連結することによって、エ
ンジンの動力の一部を利用して回転駆動される構造にな
っていた。すなわち、この種の燃料噴射ポンプはクラン
ク軸に対して径方向外側となる位置に配置されていた。
なお、燃料噴射ポンプの燃料吐出口は噴射管を介してシ
リンダヘッドの燃料噴射弁に連通されていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような構造では、燃料噴射ポンプ
駆動用カム軸や燃料噴射ポンプの配置如何によっては燃
料噴射ポンプがシリンダ上部から離間してしまい、噴射
管が長くなってしまうという問題があった。
噴射管が長くなると、管内の燃料に脈動が生じ易くな
ってしまうと共に、エンジンの応答性が低くなってしま
う。
〔課題を解決するための手段〕
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、噴射
管を可及的に短くすることができる車両用2サイクルデ
ィーゼルエンジンを提供するものである。
本発明に係る車両用2サイクルディーゼルエンジン
は、クランク軸を軸線が車幅方向を指向するように軸支
するクランクケースの上部に、シリンダヘッドを上端に
固定しかつ車体の後方へ向けて延びる吸気管を車体後側
となる後面に接続するとともに排気出口を車体前側に形
成したシリンダ本体を、上方へ突出するように取付け、
このクランクケースによって形成されるクランク室の後
方であってクランクケースの後部に一体的に形成した変
速機ケース内に変速機を設け、この変速機の上方であっ
て前記変速機ケースの上面に突設したカムケース内のカ
ム室に、クランク軸から動力が伝達される燃料噴射ポン
プ駆動用カム軸をクランク軸と平行に配設し、このカム
軸のカムに、このカム軸より上方に位置づけられて前記
カム室を上方から覆う構造の燃料噴射ポンプを係合さ
せ、この燃焼噴射ポンプの上端とシリンダヘッドの燃料
噴射弁とを噴射管によって接続してなり、前記カム軸に
クランク軸から動力を伝達する動力伝達系を、クランク
軸の一方の軸端部に軸着した駆動歯車と、この駆動歯車
より車体後側に位置づけられてこれに噛合する第1被駆
動歯車と、この第1被駆動歯車より車体後側かつ上側に
位置づけられてこれに噛合するカム軸歯車とから構成
し、前記カム軸歯車と前記カムをカム軸の一端と他端に
配設してこのカム軸における前記カムと前記カム軸歯車
との間に燃料噴射量調整用ガバナおよび燃料噴射時期調
整用タイマを軸装し、前記吸気管を、前記シリンダ本体
より後方かつクランクケースの上方の空間における前記
歯車列と同じ一側に配設するとともに、前記燃料噴射ポ
ンプを前記吸気管とは車幅方向の反対側にシリンダ本体
とは離間させて配設したものである。
〔作用〕
燃料噴射ポンプがシリンダ本体の後方でクランクケー
スから上方へ突出することになるから、燃料噴射ポンプ
の上端がシリンダヘッドに近接することになる。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図により詳細に説明する。
第1図は本発明に係る車両用2サイクルディーゼルエン
ジンを示す展開断面図、第2図は同じく側面図、第3図
は平面図、第4図は本発明に係る車両用2サイクルディ
ーゼルエンジンが搭載された自動二輪車を示す側面図で
ある。
第4図において符号1で示すものはメインフレームを
示し、ステアリング・ヘッドパイプ1a,タンクレール1b
およびダウンチューブ1cを備えている。2はフロントフ
ォークであり、前輪3を懸架している。4は後輪であ
り、前記メインフレーム1に枢支されたリヤアーム5に
よって支持されている。
11はタンクレール1bとダウンチューブ1cとの間に形成
された空間に搭載されたクランク室圧縮式の空冷2サイ
クルディーゼルエンジンである。このエンジン11はクラ
ンクケース12の上方に固定されたシリンダ本体13が僅か
に車体の前方向へ傾斜するように配設されている。前記
クランクケース12は、クランク軸14を車幅方向に軸支す
ると共にクランクウェイト等を収容したり吸気を圧縮す
るクランク室15を形成している。クランク軸14の両端は
クランクケース12の側壁を貫通して外部に突出してお
り、一端部にはフライホイール16が軸装され、他端部に
は駆動歯車17が軸装されている。この駆動歯車17には後
述する変速機を構成している第1被駆動歯車18が噛合さ
れている。この第1被駆動歯車18は、前記駆動歯車17よ
り車体後側に位置づけられている。
21は前記シリンダ本体13によって形成されたシリンダ
22内に摺動自在に保持されたピストンである。23はシリ
ンダ22の上方を閉塞するシリンダヘッド、24は前記ピス
トン21とクランク軸14とを連結する連接棒、25および26
はシリンダ22の周面に開口された排気通路および掃気通
路である。
前記排気通路25はシリンダ本体13の全面中央部に一体
に形成された排気通路形成部27によってエンジン前面か
ら前下がりに延びている。一方エンジン背面の右より部
分からは吸気通路を形成する吸気通路形成部28が後上が
りに延びている。
29はクランクケース12の側方を覆うケースカバーで、
このケースカバー29のクランク軸14が対向している部位
には、クランク軸14に係合して駆動され潤滑油を吸気通
路を介してシリンダ壁面に供給する潤滑油ポンプ30が取
付けられている。31はクランクケース12の後方に一体的
に形成された変速機ケースで、クランク室15の後方に変
速機室32を形成している。この変速機室32に収容された
変速機は、クランク軸14の回転を減速してチェーン33に
伝達するものである。
41は変速機ケース31の上面に突設されたカムケース
で、内部に幅方向に延びるカム室42を形成している。43
はこのカム室42に幅方向に配設された燃料噴射ポンプ駆
動用カム軸で、カムケース41の両側壁に設けられた軸受
44,44を介してクランク軸14と平行に軸支されている。
これによりカム軸42は変速機室32の上方に配置されるこ
とになる。
このカム軸43は駆動部43aと、この駆動部43aによって
回転駆動される被駆動部43bとに二分割されており、駆
動部43aの一端はカムケース41外に突出され、ここにカ
ム軸43を駆動するカム軸歯車45が軸装されている。この
カム軸歯車45は、クランク軸14の駆動歯車17と等しい歯
数を有し、前記第1被駆動歯車18より車体後側かつ上側
に位置づけられてこの第1被駆動歯車18に噛合してい
る。このため、カム軸43はクランク軸14と等しい回転速
度で回転する。すなわち、前記駆動歯車17、第1被駆動
歯車18およびカム軸歯車45を介してカム軸43がクランク
軸14に連結されている。
ここで、第1被駆動歯車18は、大きな径を有している
ために、変速機室32の上方に配設されたカム軸43であっ
ても、カム軸歯車45をそれほど大きな径にする必要なく
互いに噛合させることができる。また、変速機室32の底
部に溜められた潤滑油を表面に付着させて駆動歯車17お
よびカム軸歯車45を潤滑できる。
前記被駆動部43bには後述する燃料噴射ポンプを駆動
する燃料カム46および燃料噴射量を調整するガバナ47が
軸装されている。また、駆動部43aと被駆動部43bとの間
には、これら部材を回転方向へ相対的に変位させて噴射
時期を調整するタイマ48が介装されている。前記燃料カ
ム46は前記カム軸歯車45とは反対側の軸端部に配設され
ており、カム軸43における前記燃料カム46と前記カム軸
歯車45との間に前記ガバナ47およびタイマ48が軸装され
ている。
51は燃料カム46の上方に設けられ、燃料カム46に係合
して駆動される燃料噴射ポンプである。この燃料噴射ポ
ンプ51は、吸気通路形成部28に接続されて後方へ延びる
吸気管52の左側に配設されており、カム室42を上方から
覆うようにシリンダ本体13と平行に取付けられている。
すなわち、この2サイクルディーゼルエンジンは、前記
吸気管52をシリンダ本体13より後方かつクランクケース
12の上方の空間における前記駆動歯車17、第1被駆動歯
車18およびカム軸歯車45からなる歯車列と同じ一側に配
設するとともに、燃料噴射ポンプ51を前記吸気管52とは
車幅方向の反対側にシリンダ本体13とは後方へ離間させ
て配設している。
このように燃料噴射ポンプ51を配置すると、燃料噴射
ポンプ51はシリンダ本体13の後方でクランクケース12か
ら上方へ突出することになる。そして、この燃料噴射ポ
ンプ51の吸込側は図示しない供給ポンプに連通され、吐
出側はこの燃料噴射ポンプ51の上端に接続された噴射管
53を介してシリンダヘッド23に螺着された燃料噴射弁54
に連通されている。
なお、カム室42内には潤滑油が溜められており、燃料
カム46やガバナ47、タイマ48は跳ねかけ潤滑されてい
る。
このように構成された2サイクルディーゼルエンジン
においては、クランク軸14が回転されると、この回転が
駆動歯車17および第1被駆動歯車18を介してカム軸43に
伝達される。このため、カム軸43の回転に伴って燃料カ
ム46が回転し、燃料噴射ポンプ51のプランジャ機構が押
上げられるので、燃料は高圧となって、噴射管53から燃
料噴射弁54へと送られる。その結果、燃料がノズルから
高圧高温となった燃焼内に噴射されて燃焼するので、エ
ンジンが始動される。その後、クランク軸14の回転に伴
って周期的に燃料の噴射が繰り返され、運転が続けられ
る。
したがって、燃料噴射ポンプ51がシリンダ本体13の後
方でクランクケース12から上方へ突出することになるか
ら、燃料噴射ポンプ51の上端がシリンダヘッド23に近接
することになる。
また、本実施例で示したようにカム軸43を変速機の第
1被駆動歯車18を介して駆動するようにすると、カム軸
43をクランク軸14に連結する歯車式伝動機構と変速機の
歯車機構とを兼用することができるので、部品点数を削
減できる。すなわち、カム軸を駆動する専用の歯車式伝
動機構を設ける場合に較べてエンジン11の小型化ならび
に軽量化がはかれる。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明に係る2サイクルディーゼ
ルエンジンは、クランクケースに上方へ突出するシリン
ダ本体を取付け、かつこのクランクケースによって形成
されるクランク室の後方に変速機を設け、この変速機の
上方に、クランク軸から動力が伝達される燃料噴射ポン
プ駆動用カム軸と、このカム軸の上方に配置されかつカ
ム軸のカムに係合する燃料噴射ポンプとを配置し、この
燃料噴射ポンプの上端とシリンダヘッドの燃料噴射弁と
を噴射管によって接続したため、燃料噴射ポンプがシリ
ンダ本体を後方でクランクケースから上方へ突出するこ
とになるから、燃料噴射ポンプの上端がシリンダヘッド
に近接することになる。
したがって、燃料噴射ポンプとシリンダヘッドの燃料
噴射弁との間に架け渡された噴射管を可及的に短くする
ことができ、噴射管内の容積が小さくなるから、高速運
転域において噴射管内で生じやすい燃料の脈動を抑える
ことができる。その上、エンジンの応答性が高くなる。
また、クランク室の後方に配設した変速機の上方に燃
料噴射ポンプ駆動用カム軸をクランク軸と平行に配設
し、このカム軸の一端に設けたカム軸歯車を第1被駆動
歯車および駆動歯車を介してクランク軸の一端に連結す
るとともに、このカム軸の他端に設けた燃料カムに燃料
噴射ポンプを係合させたため、燃料噴射ポンプを前記歯
車列から車幅方向に離間させることができるので、燃料
噴射ポンプが係合するカム軸の燃料カムと、前記歯車列
の一部となるカム軸歯車との間に燃料噴射量調整用ガバ
ナおよび燃料噴射時期調整用タイマを配設することがで
きる。すなわち、変速機の上方の空間を有効に利用して
燃料噴射ポンプの補機を配設できる。
さらに、シリンダ本体の後面から後方へ延びる吸気管
を、シリンダ本体より後方かつクランクケースの上方の
空間における前記歯車列と同じ一側に配設するととも
に、燃料噴射ポンプを前記吸気管とは車幅方向の反対側
に配設するという構成を採ることにより、シリンダ本体
の後方の従来はデッドスペースであった空間に、燃料噴
射ポンプと吸気管とを互いに干渉し合うことなく配設で
きる。
したがって、シリンダ本体の後方に燃料噴射ポンプ
と、吸気管と、ガバナおよびタイマからなる燃料噴射ポ
ンプ用補機とを配設でき、噴射管が上述したように短く
てよいことと相俟って、コンパクトなサイクルディーゼ
ルエンジンを得ることができる。
さらにまた、燃料噴射ポンプをシリンダ本体の後方に
配置してその上端に噴射管を接続すると共に、シリンダ
本体の前面に排気通路形成部を設けて排気通路をエンジ
ン前面から前下がりに延設したため、排気通路は噴射管
から離間されることになる。すなわち、噴射管内を流れ
る燃料に排気の熱が伝わり難くなる関係から、燃料のベ
ーパロックが生じ難くなる。
しかも、クランクケースの後部に一体的に形成した変
速機ケースにカムケースを突設し、このカムケースの上
部に燃料噴射ポンプをシリンダ本体から離間させて搭載
したため、シリンダ本体の熱は、クランクケース→変速
機ケース→カムケースという熱伝導系によって燃料噴射
ポンプに伝達される。このため、熱が伝導するときの経
路を長くとることができるから、シリンダ本体の熱が燃
料噴射ポンプにも伝達され難い。特に、燃料噴射ポンプ
の配設位置に影響を及ぼすカム軸は、クランク軸の駆動
歯車より後側に位置づけられた第1被駆動歯車と、この
第1被駆動歯車の上側かつ後側に位置づけられたカム軸
歯車とを介してクランク軸に連結していることから、ク
ランク軸より後方に大きく離間するので、燃料噴射ポン
プがより一層シリンダ本体から離間する。この点からも
前記熱伝導影響を受け難くすることができる。その上、
このように燃料噴射ポンプがシリンダ本体から大きく離
間すると、シリンダ本体から放散される輻射熱も受け難
くなる。
加えて、本願発明の2サイクルディーゼルエンジン
は、燃料噴射ポンプの上端と燃料噴射弁とを連通する噴
射管が短くなって燃料の脈動や噴射遅れが生じ難いばか
りか、燃料噴射量調整用ガバナおよび燃料噴射時期調整
用タイマを備えているので、燃料噴射を高精度に行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る車両用2サイクルディーゼルエン
ジンを示す展開断面図、第2図は同じく側面図、第3図
は平面図、第4図は本発明に係る車両用2サイクルディ
ーゼルエンジンが搭載された自動二輪車を示す側面図で
ある。 12……クランクケース、13……シリンダ本体、14……ク
ランク軸、15……クランク室、18……第1被駆動歯車、
23……シリンダヘッド、32……変速機室、43……カム
軸、46……燃料カム、51……燃料噴射ポンプ、53……噴
射管、54……燃料噴射弁。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】クランク軸を軸線が車幅方向を指向するよ
    うに軸支するクランクケースの上部に、シリンダヘッド
    を上端に固定しかつ車体の後方へ向けて延びる吸気管を
    車体後側となる後面に接続するとともに排気出口を車体
    前側に形成したシリンダ本体を、上方へ突出するように
    取付け、このクランクケースによって形成されるクラン
    ク室の後方であってクランクケースの後部に一体的に形
    成した変速機ケース内に変速機を設け、この変速機の上
    方であって前記変速機ケースの上面に突設したカムケー
    ス内のカム室に、クランク軸から動力が伝達される燃料
    噴射ポンプ駆動用カム軸をクランク軸と平行に配設し、
    このカム軸のカムに、このカム軸より上方に位置づけら
    れて前記カム室を上方から覆う構造の燃料噴射ポンプを
    係合させ、この燃焼噴射ポンプの上端とシリンダヘッド
    の燃料噴射弁とを噴射管によって接続してなり、前記カ
    ム軸にクランク軸から動力を伝達する動力伝達系を、ク
    ランク軸の一方の軸端部に軸着した駆動歯車と、この駆
    動歯車より車体後側に位置づけられてこれに噛合する第
    1被駆動歯車と、この第1被駆動歯車より車体後側かつ
    上側に位置づけられてこれに噛合するカム軸歯車とから
    構成し、前記カム軸歯車と前記カムをカム軸の一端と他
    端に配設してこのカム軸における前記カムと前記カム軸
    歯車との間に燃料噴射量調整用ガバナおよび燃料噴射時
    期調整用タイマを軸装し、前記吸気管を、前記シリンダ
    本体より後方かつクランクケースの上方の空間における
    前記歯車列と同じ一側に配設するとともに、前記燃料噴
    射ポンプを前記吸気管とは車幅方向の反対側にシリンダ
    本体とは離間させて配設したことを特徴とする車両用2
    サイクルディーゼルエンジン。
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