JP2558284B2 - アルコキシシランの製造方法 - Google Patents

アルコキシシランの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の技術分野] 本発明はアルコキシシランの製造方法に関し、さらに
詳しくは、高い収率で、分子中に少なくとも1個のSi−
H結合を有するアルコキシシランを得ることができるア
ルコキシシランの製造方法に関する。
[発明の技術的背景とその問題点] 従来から、分子中にSi−H結合を有するアルコキシシ
ランの製造方法としては、Si−H結合を有するクロロシ
ランとアルコールとを反応させる方法が知られている。
この方法においては、下記の反応式で示すように反応が
進行する。
(CH3aHbSiCl4-a-b+(4−a−b)ROH →(CH3aHbSi(OR)4-a-b+(4−a−b)HCl すなわち、上記反応式から明らかなとおり、かかるク
ロロシランとアルコールとの反応ではSi−H結合を有す
るアルコキシシランと共に塩化水素が副生するが、この
副生した塩化水素が生成したアルコキシシラン中に混入
してしまい、除去することが困難であるだけでなく、そ
の存在によりアルコキシシランのSi−H結合部分がアル
コキシ化されてしまうことからSi−H結合を有するアル
コキシシランの収率が低下してしまう。一例を掲げる
と、メチルジクロロシランとメタノールからメチルジメ
トキシシランを製造する場合においては、副生した塩化
水素の存在により、生成したメチルジメトキシシランが
メトキシ化されてメチルトリメトキシシランに変わる結
果、目的とするメチルジメトキシシランの収率が低下し
てしまう。
このようなアルコキシシランの収率低下を防止する方
法として、予め反応系にピリジンなどのアミンを添加し
ておくことにより、副生する塩化水素を中和し、Si−H
結合のアルコキシ化を防止する方法が知られている。
しかしながら、かかる方法では、生成したアミン塩酸
塩の微粉末を過・分離する工程が必要となり、また分
離したアミン塩酸塩からアミンを回収する工程が煩雑に
なる。さらに、上記方法では生成したアルコキシシラン
の一部はアミン塩酸塩中に吸蔵されてしまい、これを回
収するためには多量の溶剤で洗浄処理する必要があるこ
となどの問題点があり、工業的に不利である。また、同
様の目的から、エチレンジアミンやナトリウムメトキシ
ドを用いたアルコキシシランの製造法の場合には、アル
コキシシラン中のSi−H結合がアルコキシ化してしまう
ことから実用的ではない。
また、上記以外のクロロシランとアルコールとの反応
によりアルコキシシランを製造する方法としては、例え
ば、アルコールを気相中に存在するクロロシランと接触
させることなく、液状のクロロシラン中にアルコールを
導入し、クロロシランのアルコキシ化を段階的に進行さ
せ、最終のエステル化工程を加熱下で行う方法が提案さ
れている(特開昭54−95518号公報参照)。
しかしながら、かかる方法は、前記公報の実施例から
明らかなとおり、必ず−48〜−82℃までに冷却した還流
冷却器を具備した反応装置を用いなければ、目的とする
Si−H結合を有するアルコキシシランを高収率で得るこ
とはできないものである。すなわち、かかる技術は、最
終のエステル化工程を加熱化で行い、塩化水素の発生速
度及び塩化水素の除去速度を上昇させることにより、生
成したSi−H結合を有するアルコキシシランと塩化水素
の接触時間を短くすること及び冷却器を深冷することに
よって未反応のクロロシランや生成したアルコキシシラ
ンが塩化水素に同伴されて損失してしまうことを防止す
ることにより、収率を高めようとするものであるが、上
記のとおり冷却管を深冷することが必要であることから
エネルギーの消費量が非常に大きく、工業的に不利であ
る。
[発明の目的] 本発明の目的は、上記の問題点を解消し、Si−H結合
を有するアルコキシシランを高収率で製造する方法を提
供することである。
[発明の構成] 本発明者らは、上記目的を達成するべく研究を行った
結果、Si−H結合を有するクロロシランとアルコールと
の反応を、目的とするアルコキシシランの沸点より高沸
点の溶媒と低沸点の溶媒との共存下に行わせることによ
り、高収率でSi−H結合を有するアルコキシシランが得
られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアルコキシシランの製造方法は、
一般式(I): (CH3aHbSiCl4-(a+b) (I) (式中、aは0〜2の数を表わし、bは1〜3の数を表
し、a+bは4未満の数を表す) で示されるクロロシランと、 一般式(II): ROH (II) (式中、Rはアルキル基を表す) で示されるアルコールとを反応させることにより、 一般式(III): (CH3aHbSi(OR)cCl4-(a+b+c) (III) (式中、a、b及びRは上記と同じ意味であり、cは1
〜3の数を表し、a+b+cは4以下の数を表す) で示されるアルコキシシランの製造方法において、 前記クロロシランとアルコールの反応を(a)目的と
する前記一般式(III)で示されるアルコキシシランの
沸点より低い沸点を有し、その沸点差が4℃以上である
不活性の低沸点溶媒及び(b)前記目的とするアルコキ
シシランの沸点より高い沸点を有し、その沸点差が4℃
以上である不活性の高沸点溶媒、の共存下で行うことを
特徴とする。
本発明で用いるクロロシランは、少なくとも1個のSi
−H結合を有するもので、上記の一般式(I)で示され
るものである。かかるクロロシランとしては、例えば、
モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラ
ン、メチルジクロロシラン及びジメチルクロロシランを
挙げることができる。
本発明で用いるアルコールは一般式(II)で示される
ものであり、例えば、メタノール、エタノール、n−プ
ロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びイ
ソブタノールなどを挙げることができるが、これらの中
でも生成したアルコキシシランの反応性が大きいメタノ
ール及びエタノールの場合に特に本発明の方法が好まし
い。
クロロシランと反応させるアルコールの量は、クロロ
シランのSi−Cl結合の一部もしくは全部をアルコキシ化
するのに必要な理論量か、やや過剰量を用いる。
本発明においては、上記のクロロシランとアルコール
を反応させてアルコキシシランを生成せしめる際に、前
記アルコキシシランの沸点より低い沸点を有し、その沸
点差が4℃以上である溶媒(以下、これを単に「低沸点
溶媒」という)及び高い沸点を有し、その沸点差が4℃
以上である溶媒(以下、これを単に「高沸点溶媒」とい
う)を反応系に共存させた状態で前記反応を行うもので
ある。
ここで用いる低沸点溶媒及び高沸点溶媒は、いずれも
反応系中における生成するアルコキシシランの安定化、
とりわけ前記アルコキシシランのSi−H結合の保護に有
効に作用するものである。かかる高沸点溶媒及び低沸点
溶媒としては、いずれもクロロシランとアルコールとの
反応に対して不活性であり、生成するアルコキシシラン
の沸点との差が4℃以上であるものを用いる。ここで、
これらの溶媒の沸点差が4℃未満の場合には、反応終了
後に生成したアルコキシシランと前記溶媒とを分離する
ことが困難になる。
かかる低沸点溶媒及び高沸点溶媒は、得ようとするア
ルコキシシランの沸点に応じて適宜選択して用いる。低
沸点溶媒として使用可能なものとしては、例えば、n−
ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン
などの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムな
どのハロ炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル及びテトラ
ヒドロフランなどのエーテル系溶媒などを挙げることが
でき;高沸点溶媒として使用可能なものとしては、例え
ば、n−ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンなどの炭化
水素系溶媒などを挙げることができる。
低沸点溶媒の使用量は、クロロシラン100重量部に対
して好ましくは10〜200重量部であり、さらに好ましく
は20〜100重量部である。ここで溶媒の使用量が10重量
部未満の場合にはアルコキシシランの収率の向上が小さ
く、200重量部を超えて使用する場合にも収率は変わら
ず、むしろ容積収率が低下して製造コストが上昇してし
まう。
高収率溶媒の使用量は、クロロシラン100重量部に対
して好ましくは20〜200重量部であり、さらに好ましく
は20〜100重量部である。ここで、溶媒の使用量がこの
範囲外である場合には、目的とするアルコキシシランの
収率が低下する。
低沸点溶媒と高沸点溶媒の使用量は上記のとおりであ
るが、これらの低沸点溶媒と高沸点溶媒との比は使用す
る溶媒の種類により異なるものであり、通常は、重量比
で1:10〜10:1の範囲で用いることが好ましく、1:1〜3:1
の範囲で用いることがさらに好ましい。
本発明においては、上記のとおり低沸点溶媒及び高沸
点溶媒を、クロロシランとアルコールとの反応系に共存
させるが、ここで反応系とは反応容器中のみならず、反
応容器に接続した冷却器を含む意味である。また、反応
に際しては、発生する塩化水素の一部が反応容器中に残
存するので、これらを中和するために少量のピリジンな
どの弱アミンを用いることができる。
本発明におけるクロロシランとアルコールとの反応条
件は特に制限されるものではなく、常温で又は低沸点溶
媒の還流温度までの所望の温度に加熱することもでき
る。
反応終了後、反応液を蒸留することにより、目的とす
るアルコキシシラン、低沸点溶媒及び高沸点溶媒を別々
に分離・回収することができる。ここで、回収した低沸
点溶媒及び高沸点溶媒は再使用することができる。
本発明は、一般式(III)で示されるアルコキシシラ
ン、例えば、モノメトキシシラン、ジメトキシシラン、
トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン及びジメ
チルメトキシシラン又はこれらに対応する他のアルコシ
シランの製造方法として適用することができ、さらに、
アルコールの量を調節することにより、クロロジメトキ
シシラン、ジクロロメトキシシラン及びメチルクロロメ
トキシシラン及び対応する他の部分アルコキシ化クロロ
シランの製造方法としても適用できる。
[発明の効果] 本発明の製造方法によれば、例えば、反応容器に接続
した還流冷却器を深冷することなどの、特に限定された
製造条件を設定することなく、高い収率でSi−H結合を
有するアルコシシランを得ることができ、その精製も容
易である。
本発明の製造方法により得られるアルコキシシラン
は、分子中にSi−H結合及びアルコキシ基を有すること
から、反応性がよく、各種の有機ケイ素化合物やケイ素
官能性ポリマーなどの製造中間体として有用である。
[実施例] 以下、実施例及び比較例を掲げて、本発明をさらに詳
しく説明する。なお、以下において部は全て重量部を表
す。
実施例1〜3 冷却器、撹拌機、仕込んだクロロシラン及び溶媒の液
面下にメタノールを導入しうる導入管及び温度計を備え
た反応容器中に、第1表に示す量のメチルジクロロシラ
ン、n−ペンタン及びトルエンを添加したのち、常温で
均一になるように撹拌しながら、導入管からメタノール
を1部/分の割合で供給した。その後、メタノールの供
給量が第1表に示す第1次供給量に達したのち、供給を
いったん停止した。次いで、冷媒としてメタノールを用
いて冷却器の温度を−10℃に保持しながら、容器内を約
40℃で1時間加熱還流させた。その後、さらに残部のメ
タノールを同じ供給速度で供給したのち、さらに40℃で
20分間加熱を続けて反応を完結させた。
ガスクロマトグラフィーによって生成したメトキシシ
ランの収率(溶媒のピークを無視)を求めたところ第1
表のとおりであった。反応生成物を精留して沸点61℃の
メチルジメトキシシランと沸点102℃のメチルトリメト
キシシランを単離した。
実施例4〜6 低沸点溶媒と高沸点溶媒の種類と仕込量を第2表に示
すようにしたほかは実施例1と同様にして、メチルジク
ロロシランとメタノールの反応を行った。ただし、還流
温度は用いる低沸点溶媒の相違から、実施例4では45℃
とした。反応の結果、メトキシシランの収率は第2表の
とおりであった。
比較例1〜5 溶媒を全く用いないか又は高沸点溶媒もしくは低沸点
溶媒の一方のみを用い、それぞれの溶媒に応じた還流温
度で反応を行ったほかは実施例1と同様にして、メチル
ジクロロシランとメタノールの反応を行った。ここで、
比較例1、2は高沸点溶媒、比較例3、4は低沸点溶媒
を用いた例で、比較例5は溶媒を用いなかった例であ
る。用いた溶媒の種類と量、及び得られたシランの収率
は第3表のとおりであった。
実施例7、比較例6〜8 第4表に示す量のトリクロロシラン、溶媒及びメタノ
ールを用いたほかは実施例1と同様にして、沸点84℃の
トリメトキシシラン及び沸点121℃のテトラメトキシシ
ランを得た。収率は第4表のとおりであった。
実施例8 高沸点溶媒として38部のデカリンを用い、メタノール
の代わりにエタノールを用い、その供給速度を1.5部/
分とし、エタノールの量を第1次46部、全量101部とし
た以外は実施例3と同様にして、沸点95℃のメチルジエ
トキシシラン(収率88%)および沸点143℃のメチルト
リエトキシシラン(収率7%)を得た。
以上、第1〜4表および実施例8の結果から明らかな
とおり、生成したメチルジメトキシシラン又はトリメト
キシシランの沸点より低い沸点を有する溶媒と高い沸点
を有する溶媒(いずれも、前記シランとの沸点差は4℃
以上である)を反応系に共存させた実施例1〜8の場合
には77〜90%の収率で目的とするSi−H結合を有するシ
ランを得ることができた。これに対して、いずれか一方
の溶媒の存在下で反応を行った比較例1〜4、6及び7
の場合は、63〜74%の収率であり、溶媒を全く使用しな
かった比較例5の場合は40%、比較例8の場合は65%で
あり、実施例の場合に比べて大幅に収率が低下した。
すなわち、かかる結果から、Si−Hを結合を有するク
ロロシランとアルコールの反応に際して、溶媒を使用し
ない場合はもちろんのこと単に溶媒を存在させただけで
は、Si−H結合を有するアルコキシシランを充分な収率
で得ることができないことがわかる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I): (CH3aHbSiCl4-(a+b) (I) (式中、aは0〜2の数を表わし、bは1〜3の数を表
    し、a+bは4未満の数を表す) で示されるクロロシランと、 一般式(II): ROH (II) (式中、Rはアルキル基を表す) で示されるアルコールとを反応させることにより、 一般式(III): (CH3aHbSi(OR)cCl4-(a+b+c) (III) (式中、a、b及びRは上記と同じ意味であり、cは1
    〜3の数を表し、a+b+cは4以下の数を表す) で示されるアルコキシシランの製造方法において、 前記クロロシランとアルコールの反応を(a)目的とす
    る前記一般式(III)で示されるアルコキシシランの沸
    点より低い沸点を有し、その沸点差が4℃以上である不
    活性の低沸点溶媒及び(b)前記目的とするアルコキシ
    シランの沸点より高い沸点を有し、その沸点差が4℃以
    上である不活性の高沸点溶媒、の共存下で行うことを特
    徴とするアルコキシシランの製造方法。
  2. 【請求項2】前記一般式(II)で示されるROH中におい
    て、Rがメチル基又はエチル基である特許請求の範囲第
    1項記載の製造方法。
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