JP2555791B2 - 磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents

磁器組成物及びその製造方法

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JP2555791B2 JP3062887A JP6288791A JP2555791B2 JP 2555791 B2 JP2555791 B2 JP 2555791B2 JP 3062887 A JP3062887 A JP 3062887A JP 6288791 A JP6288791 A JP 6288791A JP 2555791 B2 JP2555791 B2 JP 2555791B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁器組成物及びその製造
方法、より詳細には電子機器等において発生するノイ
ズ、パルス、静電気等から半導体部品及び回路を保護す
るために利用される容量性バリスタと呼称される電子部
品を構成するための磁器組成物及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】コンピュータ及びOA機器等の情報処理
装置の普及にともない、これらデジタル機器が発生する
ノイズによるIC、トランジスタ等の半導体部品の誤動
作が問題となっており、また、半導体部品はサージ、パ
ルス、静電気等の高電圧で破壊されやすいという欠点が
あるので、電子回路にバリスタ素子を組み込んでそれぞ
れの部品を保護することが行なわれている。
【0003】バリスタとは印加電圧により抵抗値が非直
線的に変化する機能素子であり、その電圧−電流特性
は、
【0004】
【数1】 I=KV
【0005】で表わされる。ここで、Iは素子を流れる
電流値、Kはバリスタ固有係数、Vはバリスタ両端にか
かる電圧値、αは非直線性を示す係数(非直線係数)で
ある。
【0006】バリスタの評価は非直線係数αで表わさ
れ、非直線係数αが大きければ、それに伴ってバリスタ
効果も大きくなる。 SiC系バリスタの非直線係数αは3
〜7、ZnO 系バリスタの非直線係数αは50〜100に
もなる。しかし、SiC、 ZnO系等の従来のバリスタは静電
容量が低いため、高周波成分を持つノイズを殆ど吸収す
ることができなかった。
【0007】他方、セラミックコンデンサは見掛けの比
誘電率εapp が高く、ZnO 系バリスタの10〜20倍程
度であり、このため前記ノイズ等の吸収、除去に利用さ
れているが、逆に高電圧には弱く、サージ等により破壊
されるといった欠点を有していた。そこで、ZnO 系バリ
スタとコンデンサとを組み合わせて並列回路を構成し、
コンデンサに高周波ノイズを吸収させる一方、バリスタ
で高電圧を吸収、除去することが行なわれていたが、こ
のことは電子機器の小型化に反し、実装面で非常に不利
であった。そこで、一つの素子でコンデンサ特性及びバ
リスタ特性の両機能を有し、SrTiO3を主成分とする複合
機能素子として容量性バリスタが開発され実用化されて
いる。
【0008】 容量性バリスタには、SrTiO3系(特開昭
56-36103号公報)、Sr1-xBaxTiO3系(特開昭59-92503号
公報)等がある。これらの容量性バリスタは、Srを主成
分とし、半導体化剤であるNb、Y、 La、 W、 Ta、 Dy等、非
直線性改善剤としてCu、Co、Mn、Ni、V 等、焼結助剤で
あるSi、Al、B 等を組み合わせて添加したものを還元雰
囲気中で焼成して磁器焼結体を得た後、この磁器焼結体
の結晶粒界に絶縁層を形成するために、拡散物質として
Na化合物とB2O3、Sb2O3 、Bi2O3 、TiO2、MoO3、WO3
が用いられている(特開昭61-131501 号公報)。また、
半導体磁器物質の中にはSr1-xCaxTiO3にNbあるいはY と
CuあるいはMnを添加し、結晶粒界にBi、Cu、Naを拡散さ
せた組成物がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来の
SrTiO3系バリスタは、バリスタ特性とコンデンサ特性の
両方の機能を持つ複合機能素子であり、かつ小型である
という特徴をもつため、IC及びLSI等が組み込まれ
る小型電子機器の保護に適している。しかし、電子回路
の高密度化、低定格電圧化技術の発達により、バリスタ
としてより大きな非直線係数α及び低バリスタ電圧を有
し、かつコンデンサとして高い静電容量、低誘電損失を
持ったものが望まれている。
【0010】これまで、高静電容量でかつ低バリスタ電
圧を得るためには、素体の肉厚を薄くするか、あるいは
結晶粒子を大きくするか、いずれかの方法がとられてい
た。しかし、素体の肉厚を薄くする方法では強度が低下
し、素子が電気的に破壊されやすくなり耐圧が低下する
ために限界があり、また、結晶粒子を大きくする方法で
は焼成時に異常粒成長が起きて均一な粒子径が得られな
いので、非直線係数αが低下し、素子が電気的に破壊さ
れやすくなり耐圧が低下するという課題があった。
【0011】本発明は上記した課題に鑑み発明されたも
のであって、見掛けの比誘電率が高く、非直線係数αが
大きく、しかも高耐圧かつ誘電損失が小さい機能素子を
得ることができる高誘電率バリスタ用の磁器組成物及び
その製造方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る磁器組成物は、(Sr1-xCax)(Ti1-y AyBz)
uO3 (式中、AはNb及びSbから選んだ1種または2種の
元素で、BはCu及びMnから選んだ1種または2種の元素
で、u、x、y及びzはそれぞれ、0.85≦u≦1.
20、0<x≦0.30、0<y≦0.05、0<z≦
0.05の範囲の値)で示される組成を有し、結晶粒界
層にBi、Cu、NaならびにSi及びAlから選んだ1種または
2種を有することを特徴としている。
【0013】 また、上記記載の磁器組成物の製造方法
において、SrCO3、CaCO3TiO 2 の主原料にNb2O5 及びS
b2O5 から選んだ1種または2種と、CuO及びMnO2から選
んだ1種または2種と、SiO2及びAl2O3 から選んだ1種
または2種を添加し、半導体化焼成工程の後、半導体化
焼成した焼結体に少なくともBi2O3 、CuO 及びNa2CO3
含む拡散剤を塗布し、粒界絶縁化焼成することを特徴と
している。
【0014】
【作用】磁器は固体拡散を主な過程とする焼結を経て作
成されるが、この焼結に伴う結晶粒子間の反応により結
晶粒子が成長する。静電容量を有するバリスタの特性の
うち、バリスタとしての特性は主として上記結晶粒子間
の粒界が持つ特性を利用するものである。従って、バリ
スタ電圧V1mA 及び非直線係数αは、2つの電極間に存
在する結晶粒界の性質及び数によって決定される。一
方、コンデンサとしての特性である見掛けの比誘電率ε
app は粒界の誘電率εg を用いて
【0015】
【数2】 εapp=ε・r/t
【0016】で表わされ、全体の静電容量Cは
【0017】
【数3】 C=εapp・S/d
【0018】で与えられる。ここで、r:結晶粒子径、t:
粒界層の厚さ、S:電極面積、d:電極間距離をそれぞれ表
わしている。
【0019】従って、静電容量Cは結晶粒子径rに比例
し、粒界層の厚さtに反比例する。このような構造を持
つSrTiO3系バリスタでは、結晶粒子径を大きくすると電
極間に存在する結晶粒界の数が少なくなるため、バリス
タ電圧は減少し、かつ見掛けの比誘電率εapp 及び静電
容量Cは大きくなる。しかし一般に、SrTiO3磁器は異常
粒成長を起こして混粒組織になりやすいため、結晶粒子
径の大きな組織では電流の流れる方向の粒界の数が場所
によって異なり、かつ各粒界層の厚さや成分分布にバラ
ツキを生じ、その結果、個々の粒界に印加される電圧及
び個々の粒界の粒界障壁の高さにバラツキが生じる。こ
のような構造では印加電圧に対する電流の立ち上がりの
鋭さを表わす指標である非直線係数αは低下する。従っ
て、高静電容量、低バリスタ電圧、高非直線係数、低誘
電損失及び高耐圧のすべての要求を満足するためには、
異常粒成長を抑制し、均一で大きな結晶粒径を持つ組織
にすることが必要であり、それとともに粒界障壁の形成
に寄与する酸素が適当な濃度で均一に拡散しやすい粒界
を作る組成を選択する必要がある。
【0020】そこで、上記した構成によれば、(Sr1-xCa
x)(Ti1-y AyBz)uO3 (式中、AはNb及びSbから選んだ1
種または2種の元素で、BはCu及びMnから選んだ1種ま
たは2種の元素で、u、x、y及びzはそれぞれ、0.
85≦u≦1.20、0<x≦0.30、0<y≦0.
05、0<z≦0.05の範囲の値)で示される組成を
有し、結晶粒界層にBi、Cu、NaならびにSi及びAlから選
んだ1種または2種を有し、見掛けの比誘電率が高いと
ともに、非直線係数αが大きく、しかも高耐圧かつ誘電
損失が小さい機能素子を得ることができる高誘電率バリ
スタ用の磁器組成物が得られる。
【0021】 また、上記記載の磁器組成物の製造方法
において、SrCO3、CaCO3TiO 2 の主原料にNb2O5 及びS
b2O5 から選んだ1種または2種と、CuO及びMnO2から選
んだ1種または2種と、SiO2及びAl2O3 から選んだ1種
または2種を添加し、半導体化焼成工程の後、半導体化
焼成した焼結体に少なくともBi2O3 、CuO 及びNa2CO3
含む拡散剤を塗布し、粒界絶縁化焼成することにより、
従来技術のプロセスを損なうことなく、コンデンサ特性
とバリスタ特性との双方に優れた磁器組成物が得られ
る。
【0022】各成分を上記した範囲に限定したのは、(S
r1-xCax)(Ti1-y AyBz)uO3 のxの値が0では非直線係数
αは改善されず、xの値の範囲が0.30を越えると、
バリスタ電圧が高くなるためである。
【0023】また、yの値が0では半導体化が十分に進
まない。一方、yの値の範囲が0.05を越えると未反
応の半導体化剤が粒界に偏析し、拡散工程での粒界の高
抵抗化を著しく妨げることとなる。
【0024】また、zの値が0では酸素の拡散が不均一
となり、非直線係数αは改善されない。一方、zの値の
範囲が0.05を超えると見掛けの比誘電率εapp が低
下する。
【0025】SiO2及びAl2O3 は鉱化剤であり、粒界に存
在して均一な粒径を形成させ、高耐圧で高非直線係数α
を維持させる。また、(Sr Ca)/(Ti A B) 比が0.8
5≦u≦1.20で非化学量論的あっても、余剰成分を
粒界に析出させ、安定高特性を維持させる作用がある。
従って、SiO2あるいはAl2O3 が含有されてない場合は、
100Vの電圧を1分間印加した後にバリスタとしての
特性が消滅することがあり、耐圧がない。
【0026】さらに、Bi2O3 、CuO 及びNaの炭酸塩また
は酸化物は粒界に拡散して粒界を高抵抗化し、主として
非直線係数αの改善に寄与する。
【0027】
【実施例】以下本発明に係る高誘電率バリスタ用の磁器
組成物及びその製造方法の実施例を説明する。
【0028】まず、主成分として、純度99%以上のSr
CO3 、CaCO3 、TiO2及び純度99.9%以上のNb2O5
るいは Sb2O5のうちの少なくとも1種の金属酸化物粉末
と、純度99.9%以上のCuO 、MnO2のうちの少なくと
も1種の金属酸化物粉末と、純度99%以上のSiO2ある
いはAl2O3 のうちの少なくとも1種の金属酸化物粉末と
を第1表に示した組成で秤量配合し、これらをボールミ
ルにて24時間混合した。混合後、乾燥、粉砕し、この
粉末に10wt%のポリビニルアルコール水溶液をバイン
ダーとして3wt%添加混合し、80メッシュパスに造粒
し、この造粒粉末を直径10mm、厚さ0.8mmの円板
形状に加圧成形した。これら成形体を空気中において、
1000℃の温度で脱脂した後、N2(80〜99 vol
%)+H2(1〜20 vol%)の還元性雰囲気中で、14
00〜1560℃の温度範囲で2〜10時間焼成し、焼
結体を得た。
【0029】一方、Bi2O3 、CuO 及びNa2CO3を、表1に
示した組成になるように秤量、混合した。この混合物1
00重量部に対してエチルセルロースを主成分とする有
機溶剤を同量の100重量部混合し、これを3時間混練
して拡散剤ペーストを得た。次に、前記焼結体の一方の
表面に、前記拡散剤ペーストを塗布し、乾燥した。その
後、空気中、あるいは酸素雰囲気中にて1100℃、1
時間の熱処理を施し、焼結体の粒界にBi、Cu、Naを含む
酸化物を熱拡散させて、高誘電率の磁器組成物を得た。
ここで、Na2CO3はNa2Oとなって粒界中に拡散する。
【0030】さらに、前記磁器組成物の特性を調べるた
めに、その両面に銀ペーストを塗布し、800℃の温度
で焼き付けを行ない、電極を形成し、素子を完成させ
た。
【0031】また、SrCO3 、CaCO3 、TiO2、Nb2O5 、Sb
2O5 、CuO 、MnO2等は焼成後の磁器組成物の各成分に相
当する金属酸化物あるいは、炭酸塩形で示しているが、
最終的に所定の金属酸化物を得ることができれば良く、
出発成分は金属元素、炭酸塩、水酸化物、燐酸塩、硝酸
塩、あるいはシュウ酸塩としても良い。
【0032】また、焼結体の両表面に銀電極を形成した
が、他の公知材料の電極を用いても良い。さらに、焼結
条件も実施例の条件に限られるものではなく、焼結体が
十分に半導体化される雰囲気と、粒界が十分に絶縁化さ
れ得る条件であればよい。表1の組成によって得られた
磁器組成物について、素子の特性評価として非直線係数
α、バリスタ電圧V1mA 、見掛けの比誘電率εapp 及び
誘電損失tanδをそれぞれ測定し、結果を表1に示し
た。
【0033】なお、非直線係数αは1mAの電流が流れた
ときの端子間電圧V1mA と10mAの電流が流れたときの
端子間電圧V10mAとを測定し、次式によって決定した。
【0034】
【数4】
【0035】また、見掛けの比誘電率εapp 、誘電損失
tanδは1KHZ 、AC1Vを印加して測定した値で
ある。
【0036】
【表1】
【0037】
【表1の2】
【0038】
【表1の3】
【0039】
【表1の4】
【0040】表中*印のものは本発明の範囲内のものを
示し、それ以外はすべて本発明の範囲外のものを示して
いる。
【0041】表1から明らかなように、本発明の範囲内
のバリスタ用半導体磁器組成物はその特性として、非直
線係数αがほぼ6.5以上であり、バリスタ電圧V1mA
は100V以下、見掛けの比誘電率εapp が10000
以上と大きく、誘電損失tanδがほぼ2%以下と低
く、優れたコンデンサ及びバリスタの複合機能を有す
る。また、耐圧もすべての請求範囲の組成で250V/
mm以上で問題がなかった。
【0042】従って、コンデンサ単独、バリスタ単独と
しての使用はもちろんのこと、一個の素子にコンデン
サ、バリスタ双方の機能を持たせることができ、電気、
電子機器の小型化を図る上で非常に有効なものとなり、
電気、電子機器への使用価値のきわめて高いものを製造
することが可能となる。
【0043】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る磁器組
成物にあっては、(Sr1-xCax)(Ti1-y AyBz)uO3 (式中、
AはNb及びSbから選んだ1種または2種の元素で、Bは
Cu及びMnから選んだ1種または2種の元素で、u、x、
y及びzはそれぞれ、0.85≦u≦1.20、0<x
≦0.30、0<y≦0.05、0<z≦0.05の範
囲の値)で示される組成を有し、結晶粒界層にBi、Cu、
NaならびにSi及びAlから選んだ1種または2種を有する
ので、見掛けの比誘電率が高く、非直線係数αが大き
く、しかも高耐圧かつ誘電損失が小さい機能素子が得ら
れる高誘電率バリスタ用の磁器組成物を得ることができ
る。
【0044】 また、上記記載の磁器組成物の製造方法
において、SrCO3、CaCO3TiO 2 の主原料にNb2O5 及びS
b2O5 から選んだ1種または2種と、CuO及びMnO2から選
んだ1種または2種と、SiO2及びAl2O3 から選んだ1種
または2種を添加し、半導体化焼成工程の後、半導体化
焼成した焼結体に少なくともBi2O3 、CuO 及びNa2CO3
含む拡散剤を塗布し、粒界絶縁化焼成するので、従来技
術のプロセスを損なうことなく、コンデンサ特性とバリ
スタ特性との双方に優れた磁器組成物を得ることができ
る。
【0045】従って、コンデンサ単独、バリスタ単独と
しての使用はもちろんのこと、一個の素子にコンデン
サ、バリスタ双方の機能を持たせることができ、電気、
電子機器の小型化を図る上で非常に有効なものとなり、
電気、電子機器への使用価値のきわめて高いものを製造
することが可能となる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (Sr1-xCax)(Ti1-y AyBz)uO3 (式中、A
    はNb及びSbから選んだ1種または2種の元素で、BはCu
    及びMnから選んだ1種または2種の元素で、u、x、y
    及びzはそれぞれ、0.85≦u≦1.20、0<x≦
    0.30、0<y≦0.05、0<z≦0.05の範囲
    の値)で示される組成を有し、結晶粒界層にBi、Cu、Na
    ならびにSi及びAlから選んだ1種または2種を有するこ
    とを特徴とする半導体磁器物質。
  2. 【請求項2】 SrCO3 、CaCO3TiO 2 の主原料にNb2O5
    及びSb2O5 から選んだ1種または2種と、CuO 及びMnO2
    から選んだ1種または2種と、SiO2及びAl2O3 から選ん
    だ1種または2種を添加し、半導体化焼成工程の後、半
    導体化焼成した焼結体に少なくともBi2O3 、CuO 及びNa
    2CO3を含む拡散剤を塗布し、粒界絶縁化焼成する請求項
    1の半導体磁器物質の製造方法。
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