JP2545689B2 - 高速回転用フラットヘルド - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、織機の経糸を上下に作
動させるためのフラットヘルドに関する。さらに詳しく
は、織機の高速回転下でも使用可能なフラットヘルドに
関する。

【０００２】

【従来の技術】織物の製造上、経糸を上下に作動させる
ために、ヘルド（綜絖）が広く用いられている。従来、
このヘルドには、金属ワイヤー製（ワイヤーヘルド）、
金属シートから打ち抜いて成型したもの（フラットヘル
ド）などがある。このうちフラットヘルドは、耐久性が
あり、高速の上下動作にも耐えることからウォータージ
ェットルーム用ヘルドとして広く用いられている。

【０００３】図４は従来例のフラットヘルド１１の平面
図である。図４において、１５はメール部、１２はロッ
ドスロット、１３，１４はそれぞれロッドスロット１２
の長さ方向に沿った周縁部である。製織過程では、ロッ
ドスロット１２を織機のロッドに固定し、経糸をメール
部１５に通して、ヘルドを上下に動かすことによって、
経糸を上下させ、緯糸の開口部を形成する。

【０００４】図５は前記ロッドスロット１２の拡大図で
ある。従来のフラットヘルドのロッドスロットは、図４
〜５に示すように、一定のスロット幅を有し、両端はい
ずれも一定の曲率を有していた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記従来のフラットヘ
ルドを使用した場合、経糸がフラットヘルドのメール部
１を通過する際に接触し、摩擦力が生じる。特に高速回
転時には、その摩擦力を受けたヘルドが前後左右に激し
く振動するため、経糸の損傷ひいては糸切れが生じ、製
織性が著しく低下するという問題があった。そのため織
機の高速化には限界があった。

【０００６】本発明は、前記従来の問題点を解決するた
め、織機の高速回転下におけるヘルドの振動を軽減し、
ヘルドに接触する経糸の損傷を少なくして高速でも良好
な製織性を得ることができるフラットヘルドを提供する
ことを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明のフラットヘルドは、両端に長さ方向に沿っ
た所定の細長いロッドスロットを有し、前記ロッドスロ
ットの長さ方向に対し実質的に垂直な方向の少なくとも
一端の幅がスロット中央部の幅より広いことを特徴とす
る。

【０００８】前記構成においては、ロッドスロットの長
さ方向に沿った少なくとも一方の周縁部が中心を外側に
もつ円弧であることが好ましい。

【０００９】

【作用】前記本発明の構成によれば、ロッドスロットの
長さ方向に対し実質的に垂直な方向の少なくとも一端の
幅をスロット中央部の幅より広くすることにより、織機
を高速回転した時でも良好な製織性をもたらすフラット
ヘルドを実現できる。すなわち、経糸がフラットヘルド
のメール部分に接触しながら漸進通過する時、フラット
ヘルドが受ける振動がロッドスロットのコーナー部分で
緩和されるため、経糸の損傷及び糸切れが生じにくくな
る。その結果、織機の高速回転による操業が可能とな
る。

【００１０】また、ロッドスロットの長さ方向に沿った
少なくとも一方の周縁部が中心を外側にもつ円弧である
という本発明の好ましい構成によれば、さらに良好な製
織性をもたらすことができる。

【００１１】

【実施例】以下図面を用いて本発明をさらに具体的に説
明する。図１は本発明の一実施例のフラットヘルド１の
平面図である。図１において、５は経糸を通すためのメ
ール部、２はロッドスロットである。図２は前記ロッド
スロット２の拡大図である。図２において、３，４はそ
れぞれロッドスロット２の長さ方向に沿った周縁部であ
る。図２のロッドスロット２は、両端がそれぞれ端にい
くほど幅の広がった、いわゆるドッグボーン形状を示
す。

【００１２】フラットヘルドの材料は、ステンレススチ
ールが好ましい。ヘルドの好ましい大きさは、たとえば
全体の長さが約３１０ｍｍ、メール部５の穴の大きさが
長さ方向約６ｍｍ、幅が約１ｍｍである。ヘルドの厚さ
は、例えば約０．３ｍｍであることが好ましい。ロッド
スロットの長さ方向に対し実質的に垂直な方向の一端の
幅はスロット中央部の幅より、例えば０．０５ｍｍ以上
広いことが好ましい。フラットヘルドの両方のロッドス
ロットとも、スロット両端の幅がスロット中央部の幅よ
り広い形状であることが好ましい。

【００１３】図３はロッドスロット２の設計の方法の一
実施例の平面図である。すなわち、ロッドスロット２の
長さ方向に沿った周縁部３または４が、中心Ｏを外側に
もつ円弧である。その場合の好ましい曲率半径Ｌは、例
えば３０〜２００ｍｍである。

【００１４】以下具体的実施例を用いて説明する。 実施例１ 従来品のフラットヘルド及び本発明の一実施例のフラッ
トヘルドをそれぞれ織機に装着し、織機の回転数を６０
０ｒｐｍから１０００ｒｐｍまで上げて運転した時のフ
ラットヘルドの振動程度と製織性を比較した。

【００１５】使用したフラットヘルドのロッドスロット
は、全長約１５．２ｍｍ，中央幅約２．０３ｍｍ、両端
幅約２．５４ｍｍで、長さ方向の周縁部はスロットの長
さ方向の中心線に対する垂直二等分線上に中心をもつ曲
率半径（図３のＬ）８０ｍｍの円弧で，両端部はいずれ
も端にいくほど幅広な形状であった。

【００１６】織機はウォータージェットルームを使用
し、経糸としてはポリエステルフィラメント糸（５０デ
ニール、２４フィラメント、セミダルタイプ、丸断面
糸）を使用した。ウォータージェットルームの筬通し幅
は１５０ｃｍ、経糸総本数は４９９０本の条件であっ
た。表１は比較の結果を示す。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１から明らかな通り、従来品は６００ｒ
ｐｍまでが実用的範囲であり、７００ｒｐｍではヘルド
の振動が強く、糸切れが多発したために良好な製織性を
保つことが困難であった。また、８００ｒｐｍでは実施
することができなかった。それに対し、本実施例のフラ
ットヘルドは、１０００ｒｐｍでもヘルドの振動が少な
く、驚くべき良好な製織性が得られた。

【００１９】以上の実施例では、ウォータージェットル
ームを用いた例を示したが、本発明のフラットヘルドは
ウォータージェットルームに限られることなく、エアー
ジェットルームや有杼織機にも応用することができる。

【００２０】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明のフラットヘ
ルドによれば、高速回転下でフラットヘルドが受ける振
動がロッドスロットのコーナー部分で緩和されるため、
経糸の損傷及び糸切れが生じにくく良好な製織性を得る
ことができる。その結果、織機の高速回転による操業を
可能にする。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例のフラットヘルドの平面図。

【図２】図１のロッドスロット部分の拡大図。

【図３】図３は本発明のロッドスロット２の設計の方法
の一実施例の平面図。

【図４】従来例のロッドスロットの平面図。

【図５】図４のロッドスロット部分の拡大図。

【符号の説明】

１，１１ フラットヘルド ２，１２ ロッドスロット ３，４，１３，１４ ロッドスロットの周縁部 ５，１５ メール部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 明 石川県金沢市野町４丁目５番22号 株式 会社矢野工作所内 (72)発明者 チャールス エフ クレーマー アメリカ合衆国，サウスカロライナ州, 29602，グリーンヴィル ラザー フォ ード ロード 1801 スティール ヘッ ドル エムエフジー カンパニー内 (56)参考文献 実開 昭59−169378（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭54−116657（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 両端に長さ方向に沿った所定の細長いロ
   ッドスロットを有し、織機の経糸を上下に作動させるた
   めのフラットヘルドにおいて、前記ロッドスロットの長
   さ方向に対し実質的に垂直な方向の少なくとも一端の幅
   がスロット中央部の幅より広いことを特徴とする高速回
   転用フラットヘルド。
2. 【請求項２】 ロッドスロットの長さ方向に沿った少な
   くとも一方の周縁部が中心を外側にもつ円弧である請求
   項１に記載の高速回転用フラットヘルド。