JP3608645B2 - 扁平糸織物とその製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、繊維複合材料として優れた特性を発揮する扁平糸織物並びにその製造方法および製造装置に関するものである。さらに詳しくは扁平状の炭素繊維糸を用いた薄くて繊維密度の均一な扁平糸織物並びにその製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
比弾性率が大きく、かつ、比強度が大きい炭素繊維からなる炭素繊維織物は、通常、一般のシャトル織機やレピア織機により製織されており、合成樹脂と複合して所定形状に成形することにより炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」という)等の複合材料用補強基材として多用されている。
【0003】
このような複合材料用補強基材として、例えば、CFRPは、その優れた性能を生かして航空機の構造材等に使われ始めているが、さらにCFRPの使用範囲を拡大させるためには、成形のみならず炭素繊維や炭素繊維織物等の中間基材のコストダウンが大きな課題である。
【0004】
さて、炭素繊維は、繊維が太くなり繊度が大きくなるほどプリカーサおよび耐炎化工程や焼成工程での生産性が向上し、安価な炭素繊維糸を製造することが可能となる。
【0005】
しかし、通常の炭素繊維織物は、ほぼ円形断面に収束させた炭素繊維糸を織糸として織物にしているので、織り込まれた状態においては、たて糸とよこ糸が交錯する交錯部における炭素繊維糸の断面が楕円形で、織糸が大きくクリンプしている。特に、太い炭素繊維糸を使用した炭素繊維織物では、太いよこ糸と太いたて糸が交錯しているのでこの傾向が大である。
【0006】
このため、織糸たる炭素繊維糸が大きくクリンプした炭素繊維織物では、繊維密度が不均一となって炭素繊維の特徴である高強度特性が充分に発揮できない。また、太い炭素繊維糸を使用した炭素繊維織物は、一般に、織物目付や厚みが大きくなるため、プリプレグや繊維強化プラスチック(以下、「FRP」という)を成形するときの樹脂含浸性が悪くなる。
【0007】
従って、太い炭素繊維糸を使用した炭素繊維織物を用いて得られるCFRPは、樹脂中に存在するボイドが多くなり高い強度特性が期待できない。
【0008】
一方、太い炭素繊維糸を使用した目付の小さい炭素繊維織物では、炭素繊維糸間に形成される空隙が大きくなる。このため、目付の小さい炭素繊維織物を用いてCFRPを成形すると、炭素繊維糸の含有率が低く、炭素繊維糸間に形成される空隙部分に樹脂のボイドが集中的に発生し、高性能なCFRPが得られなくなるという欠点があった。
【0009】
このような欠点に対して、特開昭58−191244号公報に、薄くて幅の広い扁平な炭素繊維糸を織った、厚みが0.09mm以下で、目付が85g/m2以下の薄地織物とその製造法が開示されている。この薄地織物は、厚みが非常に薄いために、織糸のクリンプが小さく、高い補強効果を発揮し、薄いCFRPの成形には優れた基材である。
【0010】
このように扁平な炭素繊維糸を用いた炭素繊維織物の製織方法は、炭素繊維糸が必要本数巻かれたたて糸ビーム、またはクリールに仕掛けられた炭素繊維糸ボビンから供給されるたて糸シートを綜絖により順次開口させ、その開口にシャトルまたはレピアでよこ糸を挿入させるものである。
【0011】
たて糸に関しては、ビーム供給とボビンから直接供給する方法があるが、どちらにしても炭素繊維糸ボビンをゆっくり回転させながら解舒させる横取り解舒、あるいはボビンの軸方向に解舒させる縦取り解舒の2つの方法が採られている。
【0012】
また、よこ糸に関しては、供給速度がたて糸に比べて一段と速いため、繊維糸ボビンから縦取り解舒させる方法しかない。扁平糸に撚が掛からないようよこ糸を横取り解舒させる方法として、特開平2−74645号公報には、ボビンをモーターで積極的に回転させ、重力を利用してよこ糸挿入に必要な長さを貯溜させる方法が提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、たて糸に関し、扁平糸が巻かれたボビンを縦取り解舒させるとボビンが一周する毎に1回の撚が掛かり、扁平状態が潰されて部分的に収束してしまう問題がある。一方、横取り解舒させて撚が掛からないように供給しても、たて糸密度を揃えるコームならびに綜絖のメールによって扁平状態が潰されてしまい糸幅が均一に拡がった織物が得られない。
【0014】
また、よこ糸に関しては、特開平2−74645号公報に開示された方法によると、横取り解舒させるのでよこ糸に撚が掛かることはないが、積極的にボビンを回転させる方式では巻量によって解舒速度が異なるため、起動・停止が頻繁に起こり、特に停止動作の遅れによる弛みで扁平糸が捩じれてしまうという問題が起こる。
【0015】
しかも、たて糸とよこ糸の交錯部における織糸のクリンプを小さくするためには、織糸を構成する繊維は可能な限り繊度が大きく、かつ、織糸は厚みの薄い扁平糸であることが好ましく、たて糸とよこ糸とがそれぞれの糸幅とほぼ等しい糸間隔で織物構造をなしていることが望ましい。
【0016】
しかし、織糸の繊維が太くなると糸幅が極端に広くなり、製織時に扁平状態が潰されて繊維密度が均一な織物が得られないという問題がある。また、織糸が極端に幅が狭く薄い扁平糸であると、糸幅方向の剛性が小さくなって製織時に簡単に扁平状態が潰れてしまうという問題がある。この場合、織糸の扁平状態を維持させるためにサイジング剤を付着させることも考えられるが、多量に付着させると、CFRPの成形の際に樹脂の含浸性が阻害され、成形されるCFRPが高い強度特性を発揮できなくなるという問題がある。
【0017】
さらに、前記特開昭58−191244号公報に開示された薄地織物とその製造法においては、中肉あるいは厚肉のCFRPの成形に膨大な枚数の織物基材あるいは織物プリプレグを積層しなければならないことから、成形されるCFRPが高価になると共に、成形作業に非常に手間が掛かるという欠点がある。
【0018】
このように、従来は、炭素繊維が太いときには優れた強度特性を有するCFRPを成形できず、また、扁平糸を製織して扁平糸織物を製造する際、従来は満足すべき方法や装置もなく、その提供が望まれていた。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、前記従来技術の欠点を改善し、太い糸条からなる扁平糸であっても、その扁平状態が維持されたFRP用の補強基材として、安価で高い強度特性を発揮し得る扁平糸織物並びにその製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の扁平糸織物は、CF扁平糸からなるたて糸とよこ糸とが交錯した織物で、その織物組織は特に限定されるものではない。しかし、平織組織のように各織糸が一本一本交互に交錯してクリンプが大きくなり易い組織であっても、実際には織糸自体が扁平で薄いので、織糸のクリンプが非常に小さく抑えられ、強度特性が低下することはない。
【0021】
CF扁平糸は、繊維の製造工程において、複数の繊維からなる繊維束をサイジング工程に入るまでにリボン状にひき揃えておき、サイジング剤で形態を保持させてボビンに巻いてもよいし、別工程で扁平糸を開繊してリボン状にひき揃え、サイジング剤で固着してもよい。
【0022】
特に、炭素繊維糸は高強度・高弾性であるが、前記のように織糸がクリンプした状態では炭素繊維の有する高強度特性を充分発揮することができない。このため、織糸のクリンプ率が小さく、繊維密度が均一な炭素繊維織物を得るには、薄くて扁平な炭素繊維糸を用い、その糸幅とほぼ等しいピッチで織物とする必要がある。
【0023】
したがって、CF扁平糸を構成する繊維は、繊度が3,000〜20,000デニールで、適正な織物厚みから糸の厚みは0.05〜0.2mm、糸幅は4〜16mmであり、糸幅/糸厚み比が30以上である。
【0024】
扁平形状を保持するためには、扁平糸は0.5〜2.5重量%程度の小量のサイジング剤を付着させておく。
【0025】
また、CF扁平糸は、撚りがないことが条件である。扁平糸に撚りがあると、その撚りがある部分で糸幅が狭く収束して分厚くなり、製織された織物の表面に凹凸が発生する。このため、製織された織物は、外力が作用した際にその撚り部分に応力が集中し、FRP等に成形した場合に強度特性が不均一となってしまう。
【0026】
このように撚りのない扁平糸を用いて扁平糸織物を製織するため本発明の扁平糸織物の製造方法によれば、繊度が3,000〜20,000デニール、糸幅が4〜16mm、糸幅/糸厚み比が30以上、サイジング剤が0.5〜2.5重量%付着された炭素繊維扁平糸からなるよこ糸を巻回したよこ糸ボビンからよこ糸を引取りローラの回転により一定速度で横取り解舒し、水平ガイドローラおよび垂直ガイドローラを含む円筒状ガイドローラによってよこ糸をよこ糸供給位置において扁平状態を保持しながらよこ糸の高さ方向および水平方向の位置を決めるとともに、前記よこ糸ボビンと前記円筒状ガイドローラとの間で、たて糸に対する1回のよこ糸供給に必要な長さのよこ糸を保留しつつ緊張下によこ糸を供給するよこ糸供給工程を含む製造方法としたものである。
このとき、前記よこ糸の保留をスプリングによって行う。
【0027】
さらに、本発明の扁平糸織物の製造装置によれば、織機の主軸と連動して回転し、織機の主軸と連動して回転し、繊度が3,000〜20,000デニール、糸幅が4〜16mm、糸幅/糸厚み比が30以上、サイジング剤が0.5〜2.5重量%付着された炭素繊維扁平糸からなるよこ糸を巻回したよこ糸ボビンからよこ糸を一定速度で横取り解舒する引取りローラと、前記ボビンと引取りローラ間に配置され、前記ボビンに作用するブレーキと連動するテンションローラと、引き出されたよこ糸をよこ糸供給位置において扁平状態を保持しながらよこ糸の高さ方向および水平方向の位置を決める水平ガイドローラおよび垂直ガイドローラを含む少なくとも2個の円筒状ガイドローラと、たて糸に対する1回のよこ糸供給に必要な長さのよこ糸を、前記引取りローラと前記円筒状ガイドローラとの間で保留するよこ糸の弾性懸垂機構と、前記円筒状ガイドローラから送り出されてくるよこ糸を緊張下に保つ板バネ張力付与機構とを含むよこ糸供給手段を備えた製造装置としたものである。
【0028】
従来、高性能なCF扁平糸を用いても、織糸クリンプが大きいために高い強度特性を充分に発揮することはできなかった。上記本発明の製造方法および製造装置によって製織された本発明の扁平糸織物は、上記扁平糸を用いているので織糸クリンプが小さく、織物構造面から繊維の高強度特性が発揮される。
【0029】
この場合、使用するCF扁平糸の特性として、引張破断伸度が大きく、引張破断強度が高い必要があり、引張破断伸度は1.5〜2.3%、引張破断強度は200〜800kg・f/mm2、引張弾性率は20,000〜70,000kg・f/mm2であることが望ましい。
【0030】
上記CF扁平糸からなるたて糸とよこ糸を用いて製織された扁平糸織物は、それぞれの糸幅とほぼ等しい織物構造をなし、これによりたて糸とよこ糸が交錯する交錯部においては、空隙が殆どなく繊維密度の高い織物となっている。
【0031】
しかし、製織された扁平糸織物においては、実際にはたて糸とよこ糸が交錯しているため、糸幅と等しい糸間隔にすることは難しい。そこで、製織された扁平糸織物においては、たて糸またはよこ糸のいずれか一方の糸間は糸幅と等しく、他方の糸間隔は糸幅より若干大きくなっていてもよい。但し、糸間隔が、糸幅の1.2倍を越えると空隙が大きくなって繊維密度の高い織物が得られない。このため、たて糸やよこ糸の糸間隔は、糸幅の1.0〜1.2倍であることが望ましい。
【0032】
ここで、繊維密度とは、次式で定義される値をいう。
【0033】
繊維密度(g/cm3)=〔織物目付(g/m2)〕/〔織物厚さ(mm)〕
【0034】
また、織物目付(g/m2)および織物厚さ(mm)は、JIS R7602炭素繊維織物試験法に準拠して測定した値である。
【0035】
本発明の扁平糸織物は、CF扁平糸からなるたて糸とよこ糸から製織するときは、織物目付が100〜300g/m2、織物厚みが0.1〜0.4mm、CF扁平糸からなるたて糸またはよこ糸と、他の補助糸とから製織するときは、目付が 90〜200g/m2、厚みが0.1〜0.3mmである。
【0036】
このとき、繊度が3,000〜20,000デニールの糸条を用いた場合、目付が100g/m2よりも小さいと、非常に扁平度の高いCF扁平糸で扁平糸織物を製織することになって製織が難しく、たとえ製織できたとしても扁平糸の扁平状態が潰されて非常に織り目の粗い織物になってしまう。一方、目付が300 g/m2よりも大きくなると、プリプレグやFRPに成形する際の合成樹脂の含浸性が悪く、樹脂中に多数のボイドが発生してしまう。
【0037】
本発明の扁平糸織物は、上記条件を満たし、かつ、前記した式で定義される繊維密度が0.8g/cm3以上であることが特徴である。
【0038】
一般に、FRPの強度特性は繊維の体積含有率に依存し、特に、炭素繊維織物基材を用いたFRPにおいて高い強度特性を得るためには、繊維密度の高い織物基材が必要である。ここにおいて、FRP等における繊維の体積含有率とは、FRPの体積に対する繊維基材の体積割合をいい、次式で表される。
【0039】
繊維の体積含有率(%)=〔繊維基材重量(g)/繊維密度(g/cm3)〕/〔FRPの体積(cm3)〕
【0040】
この場合、繊維密度の高い炭素繊維織物を得るには、炭素繊維糸の織り密度を大きくすれば可能である。しかし、従来は、織り密度を大きくすると、炭素繊維織物における炭素繊維糸のクリンプが大きくなり、高強度のCFRPが得られなかった。
【0041】
このため、従来の炭素繊維織物では、繊維密度を0.8g/cm3よりも小さくする必要があった。特に、炭素繊維が太くその繊度が大きい場合には、織物の繊維密度をさらに小さくしなければならなかった。
【0042】
本発明の扁平糸織物は、繊度の大きい繊維からなるCF扁平糸を用いているが、糸幅が4〜16mmで、糸幅/糸厚み比が30以上の扁平糸をその糸幅とほぼ等しい1.0〜1.2倍の糸間隔で製織したものである。したがって、得られる扁平糸織物は、空隙の発生や織糸のクリンプが最小に抑えられ、繊維密度が高く、繊維密度が0.8g/cm3以上となっても高い強度特性を発揮する。
【0043】
また、本発明の扁平糸織物を、CF扁平糸からなるたて糸またはよこ糸と、他の補助糸とから製織する場合、補助糸としては、繊度が 2,000デニール以下の細い繊維からなる扁平糸を使用することが好ましく、さらに好ましくは50〜600デニールである。
【0044】
補助糸は、繊維の繊度が大きいと扁平糸のクリンプが大きくなり、また、繊度が小さいと製織や取扱いに際して扁平糸が切断し易い。
【0045】
補助糸は、並行する扁平糸を一体に保持することが目的で、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維が使用でき、種類に関しては特に限定はない。
【0046】
上記扁平糸織物を用いたプリプレグやFRPは、公知の方法により合成樹脂を含浸させて製造することができる。このとき使用する合成樹脂は、エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ナイロン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂,ビスマレイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が使用でき、30〜67重量%の合成樹脂を扁平糸織物に含浸させる。
【0047】
【作用】
繊度が3,000 〜20,000デニールで、糸幅が4〜16mm、糸幅/糸厚み比が30以上のCF扁平糸からなるたて糸とよこ糸あるいは前記たて糸またはよこ糸と、他の補助糸とが、前記糸幅の1.0〜1.2倍のピッチで製織され、かつ、厚みが0.1〜0.4mm、繊維密度が0.8g/cm3以上で、たて糸とよこ糸とを製織した場合の目付が100〜300g/m2、たて糸またはよこ糸と他の補助糸とを製織した場合の目付が90〜200g/m2の扁平糸織物とすると、扁平状態を維持した状態で扁平糸織物が製織され、太いたて糸とよこ糸であっても、交錯部におけるクリンプが小さく抑えられ、繊維密度が均一となる。
【0050】
上記扁平糸織物を補強基材とするプリプレグやFRPは、樹脂含浸性が良いことから、樹脂中に殆どボイドが発生せず、高い強度特性を示す。
【0051】
扁平糸織物の製造方法及び製造装置において、織機の主軸に連動させた引取りローラによりよこ糸ボビンを一定回転させながら一定速度で横取り解舒させ、たて糸に対する1回のよこ糸供給によるよこ糸の弛みをスプリングで吸収させ、次いでガイドローラによりよこ糸の位置決めを行うと共に、張力付与機構により張力を付与すると、よこ糸が捩じれた状態で織り込まれることがない。
【0052】
また、扁平糸織物の製造方法及び製造装置において、複数個のたて糸ボビンからたて糸を横取り解舒し、前記たて糸の扁平面をコームのワイヤーにのみ接触させて所望の密度に引き揃え、たて糸の扁平面を水平方向に変換して綜絖に導くと、たて糸の扁平状態を保持した状態で扁平糸織物が製織される。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の扁平糸織物、その製造方法及び製造装置に係る一実施例を図1乃至図5に基づいて詳細に説明する。
【0054】
図1は本発明の扁平糸織物の製造方法を適用して扁平糸織物を製造する製造装置を示すもので、この製造装置は、よこ糸供給装置として、ボビン1、引取りローラ3、テンション装置4、円筒状ガイドローラ(以下、単にガイドローラという)5〜7、板バネテンション装置8、押し板ガイド9及びレピア11等を備えており、たて糸供給装置として、クリール20、コーム21、水平ガイド22、綜絖23及び筬24を備えている。
【0055】
先ず、よこ糸供給装置に説明すると、ボビン1は、炭素繊維扁平糸(以下、単に「扁平糸」という)からなるよこ糸Twfが巻回され、よこ糸Twfはテンションローラ2を経て織機の回転主軸で駆動されている引取りローラ3に案内され、引取りローラ3の回転により一定速度で解舒される。ここで、テンションローラ2は、ボビン1からよこ糸Twfを解舒するときは上方に位置し、織機が停止すると自動的に下方に下がると共に、ブレーキが働いて惰性回転が停止する。
【0056】
よこ糸Twfの解舒速度は、織機の回転数(rpm)と1回転に必要なよこ糸長さ(m)が分かれば容易に求めることができる。
【0057】
よこ糸Twfやたて糸Twrとなる扁平糸は、予め扁平状に加工され、サイジング剤などで形態保持されて一定のトラバース幅で円筒状の管であるボビン1や後述するクリール20のボビン20a,20bに巻かれている。また、糸条の太さとしては、炭素繊維単糸数が3,000〜24,000本からなっており、糸条の扁平率は糸幅/糸厚み比で30〜80である。
【0058】
そして、引取りローラ3から引き出されたよこ糸Twfは、テンション装置4のガイド4aを経て、水平ガイドローラ5、垂直ガイドローラ6、水平ガイドローラ7に案内されて板バネテンション装置8へと導かれる。
【0059】
それぞれのガイドローラ5〜7は、直径が10〜20mm程度で、長さが100mm〜300mm程度のベアリングを内蔵した回転方式が好ましい。直径があまりにも小さいとよこ糸Twfを構成する炭素繊維が屈曲して単糸切れを起こし易く、また、20mm以上になると回転の惰性が大きくなって始動、停止時の張力変動が大きくなる問題がある。また、それぞれのガイドローラ5〜7の長さは、通過するよこ糸Twfが左右または上下方向に移動してガイドローラ5〜7を支持する支持部に接触しない長さが必要である。よこ糸Twfがガイドローラ5〜7の支持部に接触すると、扁平状態が潰れてしまう。
【0060】
水平ガイドローラ5およびガイドローラ7は、案内するよこ糸Twfの高さ方向の位置を決め、垂直ガイドローラ6はよこ糸Twfの水平方向の位置を決める。したがって、ガイドローラは、少なくとも水平方向と垂直方向のものが、それぞれ交互に配置されていればよい。
【0061】
このとき、水平ガイドローラ5と垂直ガイドローラ6との間および垂直ガイドローラ6と水平ガイドローラ7との間で、よこ糸Twfの扁平面を90°捩じる必要がある。このため、ガイドローラ5,6間及びガイドローラ6,7間の距離は、よこ糸Twfの幅によって異なるが、50mm以上離す必要がある。ガイドローラ間の距離が50mmより小さいと、よこ糸Twfが捩じれたまま垂直ガイドローラ6や水平ガイドローラ7を通過して織り込まれてしまう。また、短い距離で扁平糸を90°捩じると、扁平糸の両端部に張力が加わり、毛羽が発生する。
【0062】
ガイドローラ5〜7は1本であってもよいが、それぞれ2本の組にしてよこ糸TwfをS字状に通過させると、よこ糸Twfに作用する張力が安定し、よこ糸Twfの位置決めを確実に行うことができる。
【0063】
テンション装置4は、後述するレピア11による間欠的なよこ糸Twfの挿入に際し、引取りローラ3によって一定速度で解舒されるよこ糸Twfの引取りローラ3と水平ガイドローラ5間における弛みをスプリング4bで吸収させて、よこ糸Twfを常に緊張させておくものである。よこ糸Twfは、スプリング4bで緊張させておかないと、弛んだ際に捩じれてしまい、捩じれたままガイドローラ5〜7を通過して織り込まれてしまう問題が起こる。そして、スプリング4bの下端に設けたガイド4aは、扁平糸の扁平面が水平に案内されるように、横長に配置しておく。
【0064】
よこ糸Twfを緊張させておくその他の方法としては、エアの吸引による方法があるが、この方法では吸引中によこ糸Twfが捩じれてしまう問題がある。また、重りによるよこ糸Twfの緊張方法では、張力変動が大きくなり過ぎ、よこ糸Twfを構成する炭素繊維が損傷する問題があり、前記スプリングによる方法が最も簡単で、確実である。
【0065】
更に、よこ糸Twfの水平ガイドローラ7の下流側には、よこ糸Twfの張力を均一にさせるテンション装置8が配置されている。このテンション装置8は、幅の広い2枚の板バネ8a,8bでよこ糸Twfを挟み込むことにより、よこ糸Twfの張力を均一に保持するものである。
【0066】
本発明の扁平糸織物の製造装置のよこ糸供給方法においては、原理的には、垂直ガイドローラ6によりよこ糸Twfの糸道を決めているが、張力変動やレピア11への引っ掛け動作によりよこ糸Twfの糸道が変わることがある。したがって、よこ糸Twfが幅方向に移動してもよこ糸Twfの端部と干渉する物がないことが必要であり、そのために幅の広い板バネ8a,8bを備えたテンション装置8を用いる。板バネ8a,8bの幅としては、よこ糸Twfの糸幅の5倍以上あればよい。
【0067】
押し板ガイド9は、板バネテンション装置8のよこ糸Twfの下流側に配置されており、先端にV字形のガイド面9aが形成された板である。このガイド9は、レピア11への給糸と連動して、織機の回転が伝達されるカム機構を利用して矢印で示す前後方向に駆動される。
【0068】
また、押し板ガイド9の下流側近傍には、糸端把持ガイド10が配置されている。糸端把持ガイド10は、図3に示すように、L字形の受け部材10aと図示しない駆動手段によって上下方向に駆動される押圧部材10bとを有している。このガイド10は、レピア11へのよこ糸Twfの給糸時に、押し板ガイド9の前進作動と並行して押圧部材10bが下降し、よこ糸Twfを受け部材10aに押しつけて糸端を把持している。
【0069】
したがって、よこ糸Twfは、押し板ガイド9が矢印方向に押し出されて扁平面がV字形のガイド面9aの斜面に案内されて下降すると共に、糸端把持ガイド10も下降し、扁平形態が潰れずにレピア11の先端を横切る結果、後述するレピア11の爪11aに具合良く引っ掛けられる。
【0070】
ここで、通常、よこ糸Twfは、糸端把持ガイド10とガイド孔を有する給糸ガイドとによって、よこ糸Twfがレピア11を斜めに横断するように待機させておき、レピア11が給糸位置に到達したときに、両ガイドを下降させてレピア11の爪11aによこ糸Twfを引っ掛けさせている。
【0071】
しかし、レピア11への給糸に際して給糸ガイドを用いると、よこ糸Twfが扁平糸の場合に、前記ガイド孔でよこ糸Twfが擦られて扁平形態が潰れてしまう。このため、本発明の製造装置では、板バネテンション装置8と糸端把持ガイド10との間に押し板ガイド9を設け、レピア11への給糸時に糸端把持ガイド10を下降させると共に、押し板ガイド9を前進させることにより、織機の後方によこ糸Twfを押し付けてレピア11に対して横切るようにしたのである。
【0072】
レピア11は、図1に示したように、後述する筬24の前部に配置される長手条の部材で、間欠的に横方向に作動して、よこ糸Twfを製織部のたて糸Twr,Twr間に挿入するものである。レピア11は、図2に示すように、扁平なよこ糸Twfを引っ掛ける爪11aが先端に設けられ、爪11aの近傍には押え具11bが取付けられている。
【0073】
また、レピア11で扁平なよこ糸Twfを把持する方法として、図5に示すように、レピア11の先端に導かれたよこ糸Twfの端部を挟み具12で挟んで把持させることにより、ほとんど扁平状態を潰すことなくよこ糸挿入を達成することができる。
【0074】
本発明の扁平糸織物の製造装置においては、以上のようなよこ糸供給装置の横糸供給工程により、ボビン1に巻回されたよこ糸Twfが、引取りローラ3によって一定速度で解舒され、レピア11の間欠的なよこ糸挿入の際の弛みがテンション装置4のスプリング4bで吸収される。そして、ボビン1から解舒されたよこ糸Twfは、ガイドローラ5〜7で案内されると共に、板バネテンション装置8で均一な張力に保持されながら、押し板ガイド9と糸端把持ガイド10との協働により、レピア11の爪11aに引っ掛けられ、図1に示すように、製織部のたて糸Twr,Twr間に挿入される。
【0075】
このため、扁平糸からなるよこ糸Twfは、捩じれたり、扁平形態が潰されることなく織り込まれる。
【0076】
次に、たて糸供給装置について説明すると、クリール20は、多数のボビンが回転自在に支持され、図1においてはボビン20a,20bのみを図示してある。そして、ボビン20a,20bには、よこ糸供給装置のボビン1と同様に、扁平糸からなるたて糸Twrが巻回され、たて糸Twrは、横取り解舒で織機側に導かれる。ボビン12からのたて糸Twrの解舒速度は、よこ糸Twfに比べて極端に遅く、一定の速度であるから、ボビン20a,20bは軽いブレーキ付きであれば問題ない。
【0077】
コーム21は、上下に配置された支持枠21a,21a間に織物のたて糸Twrの間隔と同じ間隔に複数のワイヤー21bを上下方向に設けたものを多数連結したもので、ワイヤー21b,21b間にたて糸Twrを1本ずつ通して水平方向の位置を決める。ここにおいて、ワイヤー21bは、クリール20のボビン20a,20bから供給される扁平なたて糸Twrが支持枠21a,21aと接触せず、たて糸Twrの扁平面がワイヤー21bのみと接触するよう、所定の長さにする必要がある。ワイヤー21bの長さが所定長さ以下であると、たて糸Twrが潰れてしまう。ワイヤー21bの最適な長さは、クリール20の高さと、クリール20からコーム21ならびに水平ガイド22までの距離によって決まるが、300mm程度の長さが必要である。
【0078】
水平ガイド22は、2本のガイドバー22a,22aを有し、ボビン20a,20bから解舒されるたて糸Twr,TwrをS字状に巻回して、上下方向の位置を規制する。ここで、たて糸Twrは、コーム21と水平ガイド22との間で扁平面を90゜捩じる必要がある。このため、コーム21と水平ガイド22との間隔は、たて糸Twrの幅によって異なるが、50mm以上離す必要がある。コーム21と水平ガイド22との間隔が、50mm以下であるとたて糸Twrが捩じれたまま水平ガイド22を通過して織り込まれてしまう。
【0079】
綜絖23は、各たて糸Twrに一つずつ配置されており、水平ガイド22で上下方向の位置が位置決めされた各たて糸Twrを筬24へ案内するが、図示しない駆動手段によって昇降され、各たて糸Twrの筬24の下流側によこ糸Twfを通す杼道を作る。ここで、従来の綜絖においては、メールは隣接する糸と綜絖との間における干渉を少なくする目的で縦長形状になっている。しかし、このように縦長形状のメールに扁平糸を通すと、扁平形状が潰されてしまい、扁平形状のまま製織することが出来ない。したがって、綜絖23は、メール23aの形状を横長に形成することが好ましく、メール23aの横方向の長さは、たて糸Twrとして用いる扁平糸の糸幅と同等または若干長く設定する。メール23aの形状としては、矩形あるいは横長楕円が好ましい。
【0080】
筬24は、クリール20に設けた複数のボビン20a,20b等から解舒された複数のたて糸Twrを所定の密度に配列させて、織前へ案内するもので、フレーム24aに多数の筬羽24bが上下方向に配置されている。ここにおいて、たて糸Twrは、張力をできるだけ低く設定することが望ましい。これは、綜絖23に案内されてくるたて糸Twrの筬24の横方向の位置が僅かにずれて筬羽24bと接触しても、たて糸Twrの張力が低いと扁平形状が潰されることがなく、また、綜絖23が揺れてたて糸Twrの位置がずれ、たて糸Twrがメール23aの片側によっても扁平形状が潰されることがないからである。
【0081】
上記たて糸供給装置においては、以下の工程に従ってたて糸Twrが織前に導かれ、よこ糸供給装置から送られてくるよこ糸Twfに織り込まれて扁平糸織物が製造される。
【0082】
先ず、クリール20に設けた複数のボビン20a,20b等から複数のたて糸Twrが解舒される。
【0083】
各たて糸Twrは、コーム21で水平方向の位置が位置決めされた後、90゜捩じりを付与されて水平ガイド22へと導かれる。
【0084】
水平ガイド22へ導かれた各たて糸Twrは、上下方向の位置が位置決めされた後、綜絖23に案内され、図示しない駆動手段によって昇降されて筬24の下流側によこ糸Twfを通す杼道を形成する。
【0085】
このようにしてクリール20の複数のボビン20a,20b等から解舒された複数のたて糸Twrは、筬24で所定密度に配列させて、織前へ案内される。
【0086】
そして、綜絖23によって杼道が形成されたときに、レピア11の間欠作動により多数のたて糸Twr間によこ糸Twfが挿入され、図1に示すように、扁平糸織物が製造されてゆく。
【0087】
このたて糸供給工程により、各たて糸Twrは等間隔でシート状に揃えられ、安定した製織が可能になる。
【0088】
次に、上記製造方法に基づき、上記製造装置を用いて製織した扁平糸織物に関する実施例を以下に説明する。
【0089】
実施例1
引張破断強度が500 kg・f/mm2、引張弾性率が23,500kg・f/mm2、破断伸度が2.1%の炭素繊維糸(東レ(株)社製トレカT700 SC−12K(繊度7,200デニール))からなり、糸幅が6.5mm、糸の厚みが0.10mm、糸幅/糸厚み比が65の扁平形態で、サイジング剤を1%付着させて形態を保持させた扁平糸を使用し、たて糸およびよこ糸の密度が1.25本/cmの平織組織で、目付が200g/m2、織物厚みが0.22mm、繊維密度が0.91g/cm3の扁平糸織物を製織した。
【0090】
得られた扁平糸織物は、たて糸とよこ糸の交錯部において殆ど空隙のない繊維密度が均一な織物であった。また、製織速度は、類似の炭素繊維糸(東レ(株)社製トレカT300 B−3K(繊度1,800 デニール))を用いた、たて糸およびよこ糸の密度が5.0本/cmの平織組織で、目付が200g/m2の従来の扁平糸織物に比べて4倍という早い速度で、非常に生産性が向上していた。
【0091】
次いで、得られた前記織物にエポキシ樹脂を含浸させ、これを同方向に4枚積層させてオートクレーブ成形法で硬化板を作製し、JIS K7073のCFRPの引張試験法に準拠して引張破断強度を評価した。
【0092】
その結果を、炭素繊維の体積含有率および引張弾性率と共に表1に示す。
【0093】
比較例1
比較のため実施例1の扁平糸を使用し、たて糸およびよこ糸の密度が1.25本/cmの平織組織となっている扁平糸織物を、従来の製織法により製織した。
【0094】
得られた織物は、非常に織り目が粗く、目付が200g/m2、織物厚みが0.34mm、繊維密度が0.60g/cm3であった。
【0095】
この織物を、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂に含浸させ、これを同方向に4枚積層させてオートクレーブ成形法で硬化板を作製した。
【0096】
その結果、積層工程において、織物の空隙部の樹脂が離形フィルムに取られて欠けてしまい、その分樹脂を追加しなければならなかった。また、得られた硬化板は、表面が織物の空隙部が窪んで凹凸しており、ボイドが多数みられた。
【0097】
さらに、この硬化板を、実施例1の試験法により引張破断強度を評価し、その結果を、炭素繊維の体積含有率および引張弾性率と共に表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の扁平糸織物から作製した硬化板は、非常に高い引張破断強度を備え、引張弾性率においても、従来の炭素繊維織物基材では考えられない高い値を示している。
【0100】
また、比較例1の結果から明らかなように、繊維密度が0.60g/cm3のように小さい織物で、炭素繊維の体積含有率が高い硬化板を作製しようとしても、樹脂含浸性が悪いため強度の低い硬化板になってしまう。この場合、使用する樹脂量を増加させて樹脂含浸性を高めることも考えられるが、このようにすると炭素繊維の体積含有率が低い硬化板となってしまう。
【0101】
実施例2
実施例1と同じ扁平糸織物を製織し、この扁平糸織物に不飽和ポリエステル樹脂をハンドレイアップ(hand lay−up) で含浸させ、これを4枚積層して常温で硬化させた硬化板を作製した。
【0102】
得られた硬化板は、ハンドレイアップ成形であるにも拘らず、45%という炭素繊維の高い体積含有率を示し、かつ、完全に樹脂が含浸されてボイドのないものであった。これは、製織された扁平糸織物の繊維密度が0.91g/cm3と高いことから可能になったものである。
【0103】
このようにして得た硬化板を、実施例1の試験法により評価したところ、表2に示すように、実施例1のオートクレーブ成形法で得られた硬化板並みの高い強度を有する結果が得られた。
【0104】
【表2】
【0105】
比較例2
引張破断強度が360kg・f/mm2、引張弾性率が23,500kg・f/mm2、破断伸度が1.5%の炭素繊維糸(東レ(株)社製トレカT300 B−3K(繊度1,800デニール ))を使用し、たて糸およびよこ糸の密度が5.0本/cmの平織組織からなる炭素繊維糸織物を、従来の製織法により製織した。
【0106】
得られた炭素繊維糸織物は、目付が200g/m2、織物厚みが0.27mm、繊維密度が0.74g/cm3であった。
【0107】
この織物に、実施例2と同様に、不飽和ポリエステル樹脂をハンドレイアップで含浸させ、4枚積層して常温硬化させた硬化板を作製した。得られた硬化板は、炭素繊維の体積含有率が32.1%と通常の値で、樹脂含浸性も良好であった。
【0108】
この硬化板を実施例1の試験法により評価し、その結果を表2に炭素繊維の体積含有率および引張弾性率と共に併記した。
【0109】
比較例2の硬化板は、樹脂含浸性の点では問題がなく、実施例2の硬化板と比べ、用いた炭素繊維糸だけが異なっていた。しかし、表2に示したように、これら炭素繊維糸が硬化板の強度に寄与する引張強度利用率から判断しても、実施例2の硬化板に比べて引張破断強度が極端に小さかった。
【0110】
比較例2の硬化板は、用いた炭素繊維糸織物の繊維密度が0.74g/cm3であるのに対し、実施例2の硬化板に用いた扁平糸織物では、繊維密度が0.91g/cm3と高く、したがって硬化板における炭素繊維の体積含有率が高くなること、また、実施例2の扁平糸織物では、織糸のクリンプも小さいので高い強度特性が発現したものである。
【0111】
ここで、実施例1,2並びに比較例1,2における引張試験に基づき、横軸を引張歪み(%)、縦軸を引張破断強度(kg・f/mm2)として、図4に示す強度−歪み曲線に関する強度特性図を描いた。
【0112】
図4からも明らかなように、比較例2の硬化板では引張歪みが0.6%の付近から引張弾性強度の変化率の低下が見られた。これは、比較例2の硬化板を観察したとろ、樹脂にクラックが発生していたことから、用いた炭素繊維糸のクリンプが伸ばされた結果、含浸させた樹脂で炭素繊維糸を支えきれなくなったことに起因するものと推定される。
【0113】
したがって、この硬化板を構造材料として使用する場合には、引張破断強度を基準にすることは危険であり、より低い引張破断強度を基準にする必要がある。
【0114】
ここで、引張強度利用率とは、炭素繊維の強度から算出した理論強度に対する実測による引張強度の比をいう。
【0115】
実施例3
たて糸に、引張破断強度が500kg・f/mm2、引張弾性率が23,000kg・f/mm2、破断伸度が2.1%の炭素繊維糸(東レ(株)社製トレカT 700SC−12K(繊度7,200デニール))からなり、糸幅が6.5mm、糸の厚みが0.10mm、糸幅/糸厚み比が65の扁平形態で、サイジング剤を1%付着させて形態を保持させた扁平糸を、また、よこ糸に、ガラス繊維糸(日東紡(株)社製ECE225−1/2)を補助糸として、それぞれ使用し、たて糸密度が1.25本/cm、よこ糸密度が2.5本/cm、目付が111g/m2、織物厚みが0.11mm、繊維密度が1.01g/cm3の平織組織からなる一方向扁平糸織物を製織した。
【0116】
得られた扁平糸織物は、隣接するたて糸間の隙間がなく、薄くて繊維密度が均一な織物であった。
【0117】
この織物に、不飽和ポリエステル樹脂をハンドレイアップで含浸させ、4枚同方向に積層させて常温硬化し、硬化板を作製した。
【0118】
この硬化板を、実施例1の試験法に基づいて、炭素繊維糸の配向方向について引張破断強度を評価した。その結果を、炭素繊維の体積含有率および引張弾性率と共に表3に示す。
【0119】
得られた硬化板は、ハンドレイアップ成形であるにも拘らず、炭素繊維の含有率が高く、引張破断強度の点でも優れたものであった。
【0120】
【表3】
【0121】
比較例3
たて糸に、引張破断強度が500kg・f/mm2、引張弾性率が23,000kg・f/mm2、破断伸度が2.1%の実施例3の炭素繊維糸(東レ(株)社製トレカT700SC−12K(繊度 7,200デニール))を使用し、また、よこ糸に、実施例3のガラス繊維糸を補助糸として、それぞれ使用し、たて糸密度が1.25本/cm、よこ糸密度が2.5本/cm、目付が111g/m2、織物厚みが0.11mm、繊維密度が1.01g/cm3の平織組織からなる一方向扁平糸織物を、従来の製織法で製織した。
【0122】
得られた扁平糸織物は、たて糸間に隙間ができ、非常に織り目の粗い織物であった。
【0123】
この織物を、実施例3の方法によりハンドレイアップ成形して硬化板を作製し、実施例1の試験法に基づいて、引張破断強度を評価した。その結果を、表3に併記した。
【0124】
表3から明らかなように、比較例3の硬化板は、実施例3の硬化板と比べると炭素繊維の体積含有率が約34%と低く、引張破断強度も約105kg・f/mm2と小さかった。
【0125】
一方、実施例3の硬化板を観察したところ、比較例3の硬化板に比べると、樹脂が扁平糸織物中に均一に含浸され、殆どボイドが見られなかった。
【0126】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の扁平糸織物の製造方法と製造装置によれば、よこ糸を引取りローラの回転により一定速度で横取り解舒するよこ糸供給工程やよこ糸供給手段を含むので、扁平糸が捩れたり、その扁平状態が潰されることなく扁平糸織物を製織することができ、非常に薄い織物が安定して得られ、この織物でCFRPを製造したとき、捩れ部の厚みムラで表面に凹凸ができたり、捩れ部の空隙に樹脂過多な部分が生じたり、ボイドが発生する等の不都合や、捩れ部の応力集中による強度低下を回避することができる。
【0127】
また、本発明の製造方法に基づく製造装置から製織された本発明の扁平糸織物は、扁平糸を使用しているので、織糸間の空隙が殆どなく、繊維が非常に均一で高密度な織物となる。
【0128】
特に、薄地の炭素繊維織物は、従来高価な細い炭素繊維糸を高密度で製織していたので非常に高価な織物であったが、本発明の製造方法によれば安価な太い炭素繊維糸を用いて、しかも粗密度で製織するので生産性が高く、製造原価が安価となる。さらに、本発明の扁平糸織物は、CF扁平糸で粗く製織されたものであるから剪断変形させやすく、複雑な形状の成形型に均一に沿わせることができる。また、炭素繊維扁平糸織物は、扁平状態の糸が粗密度で織られているので織糸のクリンプが小さく、かつ、繊度の大きい太い糸条からなる扁平糸を使用しているので、空隙が小さいため、CFRPを作製した場合に炭素繊維の体積含有率が高くなり、非常に高い強度特性を発揮する等の優れた効果を奏する。
【0129】
さらに、本発明の扁平糸織物は、表面が滑らかなので、FRPを作製したときにFRPの表面が平坦となり塗装が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を適用して扁平糸織物を製織する製造装置の概略構成図である。
【図2】レピアの先端を拡大した拡大図である。
【図3】糸端把持ガイドを拡大して示した斜視図である。
【図4】本発明の扁平糸織物の製造方法により本発明の製造装置で製織された扁平糸織物を用いて作製した硬化板の強度−歪み曲線に関する強度特性図である。
【図5】レピアによってよこ糸を把持する他の態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ボビン(よこ糸用)
2 テンションローラ
3 引取りローラ
4 テンション装置(弾性懸垂機構)
4a ガイド
4b スプリング
5〜7 ガイドローラ
8 板バネテンション装置(張力付与機構)
9 押し板ガイド
10 糸端把持ガイド
11 レピア
20 クリール
20a,20b ボビン(たて糸用)
21 コーム
22 水平ガイド
23 綜絖
23a メール
24 筬
Twf よこ糸
Twr たて糸
Claims (4)
- 繊度が3,000〜20,000デニール、糸幅が4〜16mm、糸幅/糸厚み比が30以上、サイジング剤が0.5〜2.5重量%付着された炭素繊維扁平糸からなるよこ糸を巻回したよこ糸ボビンからよこ糸を引取りローラの回転により一定速度で横取り解舒し、水平ガイドローラおよび垂直ガイドローラを含む円筒状ガイドローラによってよこ糸をよこ糸供給位置において扁平状態を保持しながらよこ糸の高さ方向および水平方向の位置を決めるとともに、前記よこ糸ボビンと前記円筒状ガイドローラとの間で、たて糸に対する1回のよこ糸供給に必要な長さのよこ糸を保留しつつ緊張下によこ糸を供給するよこ糸供給工程を含むことを特徴とする扁平糸織物の製造方法。
- 前記よこ糸の保留をスプリングによって行う、請求項1に記載の扁平糸織物の製造方法。
- 織機の主軸と連動して回転し、繊度が3,000〜20,000デニール、糸幅が4〜16mm、糸幅/糸厚み比が30以上、サイジング剤が0.5〜2.5重量%付着された炭素繊維扁平糸からなるよこ糸を巻回したよこ糸ボビンからよこ糸を一定速度で横取り解舒する引取りローラと、前記ボビンと引取りローラ間に配置され、前記ボビンに作用するブレーキと連動するテンションローラと、引き出されたよこ糸をよこ糸供給位置において扁平状態を保持しながらよこ糸の高さ方向および水平方向の位置を決める水平ガイドローラおよび垂直ガイドローラを含む少なくとも2個の円筒状ガイドローラと、たて糸に対する1回のよこ糸供給に必要な長さのよこ糸を、前記引取りローラと前記円筒状ガイドローラとの間で保留するよこ糸の弾性懸垂機構と、前記円筒状ガイドローラから送り出されてくるよこ糸を緊張下に保つ板バネ張力付与機構とを含むよこ糸供給手段を備えたことを特徴とする扁平糸織物の製造装置。
- 請求項1または2に記載の扁平糸織物の製造方法により得られることを特徴とする扁平糸織物。
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