JP2538200B2 - ポリペプチド分泌発現ベクタ―及び形質転換微生物 - Google Patents

ポリペプチド分泌発現ベクタ―及び形質転換微生物

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    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/74Vectors or expression systems specially adapted for prokaryotic hosts other than E. coli, e.g. Lactobacillus, Micromonospora
    • C12N15/75Vectors or expression systems specially adapted for prokaryotic hosts other than E. coli, e.g. Lactobacillus, Micromonospora for Bacillus

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はβウロガストロン分泌発現ベクター及び該ベ
クターで形質転換された微生物に関する。
従来の技術 遺伝子工学的手法を用いて、インターフエロン、成長
ホルモン等を始めとする様々なポリペプチドを大腸菌、
枯草菌、酵母等の宿主細胞の利用により製造する方法は
既に確立されている。しかしながら確立された方法とい
えども未だ幾つかの未解決の問題点を有しており、天然
品と全く同一のポリペプチドを製造することは必ずしも
容易ではない。上記問題点の中で最も重要なもののひと
つとしては、ポリペプチドのN末端を、天然品と同一の
構造とするのが困難なことを挙げることができる。即
ち、之等のポリペプチドをコードする遺伝子を宿主細胞
内で直接発現させるとき、遺伝子からポリペプチドへの
翻訳は、開始コドンとして通常用いられるATGから始ま
るため、発現されるポリペプチドのN末端は、ホルミル
メチオニン残基となつてしまう。天然型ポリペプチドの
N末端がホルミルメチオニンである場合は少なく、他の
N末端を有するポリペプチドの製造にはこの方法は利用
できない。上記ホルミルメチオニン残基は、シアノゲン
ブロマイドを用いた化学反応によりポリペプチドから除
去することができるが、ポリペプチドがN末端の他にも
メチオニン残基を有する場合、上記方法ではポリペプチ
ド鎖自体が該個所で切断されてしまい、やはり目的のポ
リペプチドは製造できない。
また目的ポリペプチドをコードする遺伝子を、他のポ
リペプチドをコードする遺伝子と結合させて、融合ポリ
ペプチドとして発現させる方法も知られている。この方
法では、得られる融合ポリペプチドからの目的ポリペプ
チドの分離は、トリプシン等の酵素による処理やシアノ
ゲンブロマイド等を用いた化学的処理によつている。し
かしながらこの方法においても目的のポリペプチド鎖内
に使用する酵素又は化学薬品の標的となるアミノ酸が存
在すれば、その個所でペプチド鎖が切断され、結局目的
ポリペプチドは製造はできない。また、上記方法により
融合ポリペプチドからの目的ポリペプチドの分離が可能
な場合といえども、目的ポリペプチドの単離のために
は、通常菌体粗抽出液から融合ポリペプチドを分離する
工程及び融合ポリペプチドを切断した反応組成物から目
的ポリペプチドを分離する工程の2回の精製操作が必要
となり、その操作及び工程自体煩雑となり、しかも目的
物の収率の低下は避けられない。
以上のように、天然型と全く同一のポリペプチドを遺
伝子工学的手法で入手することは、従来非常に困難であ
り、この天然型と全く同一のポリペプチドを宿主細胞か
ら直接製造できる改良された方法の研究開発が、斯界で
要望されている現状にある。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、上記斯界で要望されている天然型と全く同
一のポリペプチドを宿主細胞から直接製造できる改良さ
れた方法の実施のための新しいベクター及び該ベクター
を保有する微生物を提供することをその目的としてい
る。
問題点を解決するための手段 本発明者らは、上記目的の達成手段として、シグナル
ペプチドをコードするDNA塩基配列と目的ポリペプチド
をコードするDNA塩基配列とを直接連結させて目的ポリ
ペプチドを分泌発現させるための、シグナルペプチドを
コードするDNA塩基配列を含むことを特徴とするポリペ
プチド分泌発現用ベクター、シグナルペプチドをコード
するDNA塩基配列と目的ポリペプチドをコードするDNA塩
基配列とが直接連結されてなる融合ポリペプチドをコー
ドするDNA塩基配列を含む上記ベクター、該ベクターで
形質転換された微生物及び該微生物を培養して分泌され
るポリペプチドを採取するポリペプチドの製造法という
一連の発明を特願昭59-271206号により、既に開示し
た。
而して、本発明者は、特に枯草菌を用いて目的ポリペ
プチドを分泌発現させるべく、更に研究を続け、本発明
を完成したものである。
即ち本発明は、特定の制限酵素認識部位を有する大腸
菌βラクタマーゼシグナルペプチドをコードする合成DN
A塩基配列と、βウロガストロンをコードするDNA塩基配
列と、枯草菌の複製開始領域であるDNA塩基配列とを含
む新規なβウロガストロン分泌発現ベクター(以下、本
明細書においては「ポリペプチド分泌発現ベクター」乃
至「成熟ポリペプチド分泌発現ベクター」ということが
ある)及び該ベクターで形質転換された微生物を提供す
るものである。
本明細書において、アミノ酸、核酸塩基、その他に関
して略号で表示する場合はIUPAC、IUBの規定或いは当該
分野における慣用記号に従うものとし、その例を次に挙
げる。
Ser;セリン Leu;ロイシン Arg;アルギニン Cys;システイン Gln;グルタミン Ile;イソロイシン Pro;プロリン Val;バリン His;ヒスチジン Met;メチオニン Ala;アラニン Phe;フエニルアラニン Gly;グリシン Asp;アスパラギン酸 Asn;アスパラギン A ;アデニン T ;チミン G ;グアニン C ;シトシン シグナルペピチドとは、細胞内で生産されたポリペプ
チドを細胞外に分泌する働きをするアミノ酸配列であ
る。一般に微生物に限らず全ての細胞の生産するポリペ
プチドには、細胞内に留まつてその働きをなすものと、
細胞外に分泌されるものとがある。この細胞外に分泌さ
れるポリペプチドでは、まず、そのN末端に十数個乃至
数十個のアミノ酸配列からなるシグナルペプチドが付加
された前駆体として細胞内に生産され、次いで該前駆体
はその有するシグナルペプチドの作用により該シグナル
ペプチドを介して細胞膜を通過すると同時にシグナルペ
プチダーゼの作用によりシグナルペプチドが切り離さ
れ、その結果一切の不要アミノ酸を持たない目的ポリペ
プチドのみが細胞外に分泌される(以下、このように細
胞外に分泌される目的ポリペプチドを「成熟ポリペプチ
ド」という)。例えば、大腸菌のβラクタマーゼは、菌
体内でβラクタマーゼ前駆体、即ちβラクタマーゼと23
個のアミノ酸からなるシグナルペプチドとの融合蛋白質
として生産された後、該シグナルペプチドの作用により
細胞膜を通過してペリプラズム、即ち細胞膜と外膜との
間の空間に分泌され、その際、シグナルペプチドは、シ
グナルペプチダーゼにより切断され、ペリプラズム内に
は成熟ポリペプチド、即ち活性型のβラクタマーゼが蓄
積されることが知られている〔J.G.Sutcliffe,Proc.Nat
l.Acad.Sci.,USA,75,3737-3741(1978)〕。
本発明者らは、上記シグナルペピチドの特性に着目
し、該シグナルペプチドを利用して、目的とする外来蛋
白質をシグナルペプチドとの融合ポリペプチドとして宿
主細胞内で生産させ、外来蛋白質を細胞外に成熟ポリペ
プチドとして分泌せしめ、かくして目的ポリペプチドを
容易に製造入手し得る前記特願昭59-271206号の発明に
おいて、宿主細胞として特に枯草菌を用いる場合につい
て鋭意研究した。その結果、実際に枯草菌細胞内に導入
することによつて、目的ポリペプチドを成熟ポリペプチ
ドとして細胞外に分泌させ得る新しい発現ベクター(プ
ラスミド)の構築に成功すると共に、このベクターの利
用による目的ポリペプチドの製造に成功した。
本発明のポリペプチド分泌発現ベクターは、後記する
特定の制限酵素認識部位を付与された大腸菌βラクタマ
ーゼシグナルペプチドをコードするDNA塩基配列と、β
ウロガストロンをコードするDNA塩基配列と枯草菌の複
製開始領域であるDNA塩基配列とを有しており、これを
枯草菌細胞に導入して形質転換させ、この形質転換体を
培養することによつて細胞外に目的ポリペプチド、即ち
βウロガストロンを成熟ポリペプチドとして分泌生産さ
せることができる。また、本発明の発現ベクターは、更
に例えば大腸菌の複製開始領域を有していても良く、こ
の場合は枯草菌のみならず大腸菌をも宿主細胞とするこ
とができ、これをこれらの宿主細胞に導入して形質転換
させることにより、該宿主細胞の培養によつて細胞外又
はペリプラズムに目的ポリペプチドを成熟ポリペプチド
として分泌生産させることができる。
尚、本発明において、枯草菌の複製開始領域とは、枯
草菌において機能する複製開始領域を意味するものであ
り、枯草菌に由来するプラスミドの該領域に限られず他
の微生物に由来するプラスミドの該領域及び化学合成さ
れた該領域も包含される。同様に大腸菌の複製開始領域
は、大腸菌において機能する複製開始領域を意味し、種
々の微生物に由来するプラスミドの該領域及び化学合成
された該領域も包含される。
本発明ベクターの製造においては、まず目的ポリペプ
チドをコードするDNA塩基配列を直接連結できるように
設計されたシグナルペプチドをコードするDNA塩基配列
を含むベクターを製造する。本明細書においては、これ
を分泌発現用ベクターという。次いでこの分泌発現用ベ
クターに目的ポリペプチドをコードするDNA塩基配列を
直接連結させ、更に枯草菌の複製開始領域であるDNA塩
基配列を導入することにより製造される。
以下、本発明ベクターの製造技術につき詳述する。
本発明ベクターの必須構成要件とするシグナルペプチ
ドをコードするDNA塩基配列としては、大腸菌βラクタ
マーゼシグナルペプチドの合成DNA塩基配列を利用す
る。該シグナルペプチドは、下記式〔1〕に示すアミノ
酸配列を有している。
Met-Ser-Ile-Gln-His-Phe-Arg-Val-Ala-Leu-Ile-Pro-Ph
e-Phe-Ala-Ala-Phe-Cys-Leu-Pro-Val-Phe-Ala 〔1〕 また、該シグナルペプチドをコードするDNA塩基配列
は本発明者らが独自に合成したものであり、下記式
〔2〕に示すものである。
ATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCCTT
TTGCCTTCCTGTCTTCGCG 〔2〕 分泌発現用ベクターに保有されるシグナルペプチドを
コードするDNA塩基配列は、上記のごとき具体的DNA塩基
配列を基本として、その3′側付近、即ちこれに目的ポ
リペプチドが連結される側付近、好ましくはその10塩基
以内に、又はこれに更に10塩基以内のDNA配列を付加し
てこの付加部分に、制限酵素認識配列を含ませるものと
する。これは上記シグナルペプチドをコードするDNA塩
基配列と、目的ポリペプチドをコードするDNA塩基配列
とを直接連結させるために必須のものである。しかして
この制限酵素認識配列を認識する酵素としては、公知の
制限酵素のいずれでもよいが、好ましくは5塩基以上の
塩基配列を認識するものがよく、この酵素に応じて上記
3′側付近のDNA塩基配列は、任意に変化させることが
できる。
例えば、上記シグナルペプチドをコードするDNA塩基
配列の3′側に、AACTCAGCTGの10塩基配列を連結させれ
ば、この配列中、CAGCTGの6塩基配列は、PvuIIにより
認識され、その中央で切断される。かくして得られるDN
A塩基配列は、シグナルペプチドをコードするDNA塩基配
列の3′側に、更にAACTCAGの7塩基配列が結合された
ものであり、この7塩基配列のうち、最初の3塩基配列
AACはAsnをコードしており、次の3塩基配列TCAはSerを
コードしており、最後のグアニン(G)は、Ala、Gly、
Val、Asp及びGlnのいずれかをコードしている。従つて
これを、シグナルペプチドをコードするDNA塩基配列と
して用いるときには、N末端アミノ線配列がAsn-Set-As
p−であるβウロガストロンをコードするDNA塩基配列か
らその5′側の7塩基配列(例えばAACTCAG)を除いたD
NA塩基配列を結合させることによつて所望の融合ポリペ
プチド(βウロガストロンとシグナルペプチドとの融合
ポリペプチド)をコードするDNA塩基配列を容易に形成
させることができる。
従つて、分泌発現用ベクターの構成要素とするシグナ
ルペプチドをコードするDNA塩基配列としては、前記に
具体的に例示したDNA塩基配列に更に10個のDNA塩基配列
を付加させたものを利用できる。その例は、上記した10
塩基配列を付加させた下記式〔3〕に示すDNA塩基配列
を有するものである。
ATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCCTT
TTGCCTTCCTGTCTTCGCGAACTCAGCTG 〔3〕 上記シグナルペプチドをコードするDNA塩基配列又は
これを含む塩基配列は、従来公知の各種の方法、例えば
これを含有する微生物、それから単離されたプラスミド
等、好ましくは例えばpBR322等から制限酵素等を利用し
て切断単離する方法、そのDNA塩基配列に従い化学合成
する方法、之等の方法の組合せ等により容易に製造する
ことができる。また上記シグナルペプチドをコードする
DNA塩基配列と、目的ポリペプチドをコードするDNA塩基
配列との連結乃至結合手段も、従来公知の各種方法、例
えばT4DNAリガーゼ等を用いる酵素反応等に従うことが
できる。
上記のごとくして得られるシグナルペプチドをコード
するDNA塩基配列を含む分泌発現用ベクターは、該DNA塩
基配列を、例えばプラスミド、ウイルスDNA、コスミド
〔例えばpJB8、Ish-Horowicz,D and Burke,J.F.,Nuclei
c Acids Res.,9,2989(1981)〕等の従来より外来遺伝
子のクローニングに用いられている各種のベクターに組
込むことにより得られる。
上記クローニングに用いられている各種ベクターへの
シグナルペプチドをコードするDNA塩基配列の導入操作
は、従来よりこの種外来遺伝子をベクターに組込む際に
用いられている操作に従い例えば各種制限酵素、各種リ
ガーゼ等を用いて行なうことができる。
次いで、上記のごとくして得られるシグナルペプチド
をコードするDNA塩基配列を含む分泌発現用ベクターに
目的ポリペプチドをコードするDNA塩基配列を直接連結
させ、更に枯草菌の複製開始領域であるDNA塩基配列を
導入する。
本発明のポリペプチド分泌発現ベクターにおいて、シ
グナルペプチドをコードするDNA塩基配列と直接連結さ
れて融合ポリペプチドをコードするDNA塩基配列として
保有されるポリペプチド及びそのDNA塩基配列として
は、βウロガストロン及びこれをコードするDNA塩基配
列を選択する。
上記βウロガストロン(ポリペプチド)のDNA塩基配
列と、シグナルペプチドのDNA塩基配列との連結は、例
えばシグナルペプチドのDNA塩基配列を保有する前記分
泌発現用ベクターに、上記ポリペプチドのDNA塩基配列
を、前述した方法に従い制限酵素を用いる酵素反応及び
例えばT4リガーゼを用いる酵素反応を利用して導入す
ることにより実施できる。また、予め上記ポリペプチド
とシグナルペプチドとの融合ポリペプチドのDNA塩基配
列を化学合成した後、このDNA塩基配列を、前記シグナ
ルペプチドのDNA塩基配列の導入と同様にして、適当な
クローニング用ベクターに導入することによつても行な
うことができる。
次に、かくして得られた融合ポリペプチドをコードす
るDNA塩基配列を保有するベクターに更に枯草菌の複製
開始領域であるDNA塩基配列を導入することにより本発
明のポリペプチド分泌発現ベクターを得ることができ
る。この導入操作は、例えば上記融合ポリペプチドをコ
ードするDNA塩基配列を有するベクターと枯草菌の複製
開始領域であるDNA塩基配列を有するベクターとを用
い、それぞれのベクターの必要部分を連結するこにより
行なうことができる。この操作は、常法例えば各種制限
酵素、各種リガーゼ等を用いて行なうことができる。
枯草菌の複製開始領域であるDNA塩基配列を有するベ
クターとしては、公知のものをいずれも使用でき、例え
ばプラスミドpUB110〔T.J.Gryczan et al.J.Bacterio
l.,134,318〜329(1978)〕、pSA2100(ibid)、pSA050
1(ibid)、pCM194(ibid)、pE194〔S.Horinouchi and
B.Weisblum,J.Bacteriol.,150,804(1982)〕、pC194
〔S.Horinouchi and B.Weisblum J.Bacteriol.,150,815
(1982)〕等を挙げることができる。これらのベクター
は、そのまま用いても良いが、より好ましくは更に例え
ば大腸菌の複製開始領域であるDNA塩基配列を導入して
得られるいわゆるシヤトルベクターとして用いるのが良
い。前記融合ポリペプチドをコードするDNA塩基配列を
シヤトルベクターに組み込むことにより遺伝子操作が容
易になるばかりでなく、発現の際に複数の種類の宿主細
胞を用い得るという利点も得られる。
上記シヤトルベクターの具体例としてはpKK01を例示
できる。pKK01は、枯草菌と大腸菌のそれぞれの複製開
始領域を有しておりいずれの菌においても複製が可能で
ある。該ベクター(プラスミド)pKK01を保持する枯草
菌RM125株は通商産業省工業技術院微生物工業技術研究
所に「RM125〔pKK01〕」なる表示で、微工研条寄第901
号(FERM BP-901)として寄託されている。
かくして本発明のポリペプチド分泌発現ベクターが得
られるが、これを実際に宿主細胞に導入して目的ポリペ
プチドを分泌発現させるためには、該ベクターが他にプ
ロモーター、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、
転写終結因子等の転写調節因子や翻訳調節因子等を含ん
でいることが好ましい。これらの各因子は、既に起源ベ
クターや上記シヤトルベクター等に含まれている場合が
あり、この場合には例えばpBR322由来のβラクタマーゼ
の調節因子等をそのまま用いることができる。また、こ
れに限定されることなく、従来公知の他の微生物又はウ
イルス由来の各種DNAもまた通常これらの調節因子を含
んでおり、従つてこれらを用いることもできる。その例
としては、例えば大腸菌ラクトースオペロン、トリプト
フアンオペロン、λフアージのPL等のプロモーター、β
ガラクトシダーゼのSD配列等のリボゾーム結合部位、λ
フアージのtL1等の転写終結因子等を例示できる。また
翻訳停止シグナルとしては、TAA、TAG及びTGAの3通の
塩基配列を利用できる。更に上記調節因子は、これらを
含むDNAより常法に従い取り出した後、必要なものを適
当なベクターに通常の方法に従い導入することもでき
る。
本発明の発現ベクターにおいては、リボゾーム結合部
位(即ちSD配列)として特に枯草菌で良く機能するSD配
列を用いることが好ましく、その様なSD配列としては、
下記第1表に示すものを例示できる(C.P.Moran et al.
Mol.Gen.Genet.,186:339-346(1982))。
これらのSD配列は、いずれも本発明において目的ポリ
ペプチドを枯草菌で発現させるために用いることができ
るが、更に好ましい一例として本発明者が設計した式 (5′)AAGGAGGTCGA(3′)〔4〕 の塩基配列からなるSD配列を挙げることができる。本発
明者は、このSD配列及び開始コドンを含む式 (5′)AATTCTTCAAGGAGGTCGAGTATG(3′)〔5〕 の塩基配列を設計した。これは式 に示されるように枯草菌リボゾーム16sRNAの3′末端部
分と極めてよく対合するSD配列を含み、好適な塩基配列
である。
上記式〔5〕の塩基配列は、化学合成法等により容易
に作成することができる。更にこの塩基配列は、
(5′)AAGGAGGT(3′)の配列を含むので、大腸菌用
SD配列としても好ましく用いることができる。
リボゾーム結合部位の導入は、枯草菌複製開始領域の
導入後に行なつても良いし、それに先立つて行なつても
良い。例えば、βラクタマーゼのシグナルペプチドのDN
A塩基配列、βウロガストロン(目的ポリペプチド)のD
NA塩基配列及びその翻訳停止シグナルが正確にこの順序
で配列されたDNA塩基配列を有している後記pUG201に、
式〔5〕の塩基配列を含む後記オリゴヌクレオチドBs−
1及びBs−2を組み込むことによつて、pUG201の該シグ
ナルペプチドのDNA塩基配列の前にリボゾーム結合部位
が導入されたベクター(プラスミド)pKK13が得られ
る。該ベクターpKK13を保持する大腸菌MC1060株は「MC1
060〔pKK13〕」なる表示で、微工研条寄第904号(FERM
BP-904)として寄託されている。
次いで、ベクターpKK13のEcoRI/PstI断片をシヤトル
ベクターpKK01に組み込むことにより、本発明の発現ベ
クターの一例であるベクター(プラスミド)pKK06が得
られる。ベクターpKK06は、式〔5〕で示されるリボゾ
ーム結合部位と開始コドン、βラクタマーゼのシグナル
ペプチドのDNA塩基配列、βウロガストロン(目的ポリ
ペプチド)のDNA塩基配列及びその翻訳停止シグナルが
正確にこの順序で配列されたDNA塩基配列を有し、更に
その後にpBR322に由来する転写終結因子を有している。
該ベクターpKK06を保持する枯草菌MT2株は「MT2〔pKK0
6〕」なる表示で、微工研条寄第902号(FERM BP-902)
として寄託されている。
また、本発明の発現ベクターにおいては、プロモータ
ーとして枯草菌に好適なものを用いることが好ましく、
その様なプロモーターとしては、枯草菌フアージSpo2の
Spo2プロモーター、枯草菌α−アミラーゼ遺伝子及びVE
G遺伝子のプロモーター、バチルス・アミロリケフアシ
エンス(Bacillus amyloliquefaciens)α−アミラーゼ
遺伝子のプロモーター、バチルス・リケニフオーミス
(B.lickeniformis)ペニシリナーゼ遺伝子のプロモー
ター、プラスミドpC194のCAT遺伝子のプロモーター、プ
ラスミドpE194のMLS耐性遺伝子のプロモーター等を例示
できる。しかし、これらに限定されるものではなく、枯
草菌において機能するプロモーターであれば、いかなる
ものも好適に用いることができる。これらのプロモータ
ーは、大腸菌用のプロモーターの標準配列(−35領域TT
GACA、−10領域TATAAT)ときわめて類似しており、大腸
菌中でも機能し得ると考えられる。
プロモーターとして例えばSpo2プロモーターを選択
し、これをベクターpKK06のリボゾーム結合部位の前に
導入することにより、本発明の発現ベクターの好ましい
一例であるベクター(プラスミド)pKK07が得られる。
ベクターpKK07は、ベクターpKK06のリボゾーム結合部位
の前に更にSpo2プロモーターを有するものである。該ベ
クターpKK07を保持する枯草菌MT2株は「MT2〔pKK07〕」
なる表示で、微工研条寄第903号(FERM BP-903)として
寄託されている。
シグナルペプチドと目的ポリペプチドとの融合ポリペ
プチドをコードするDNA塩基配列の前にプロモーター及
びリボゾーム結合部位を有し、且つ上記塩基配列を構成
する目的ポリペプチドのDNA塩基配列の直後に翻訳停止
シグナルを有し、更にその後に転写終結因子を有する本
発明の分泌発現ベクターは、適当な宿主細胞に導入する
ことにより、該細胞を形質転換してポリペプチド分泌発
現型とすることができる。
本発明のポリペプチド分泌発現ベクターの宿主細胞へ
の導入は、公知の各種方法に従つて行なうことができ
る。宿主細胞としては、通常枯草菌を好適に使用できる
が、これに限定されるものではない。例えば前記シヤト
ルベクターを用いて作成された本発明ベクターの宿主細
胞としては、枯草菌のみならず大腸菌をも好適に使用で
きる。之等の宿主細胞はいずれも菌体外分泌成分、外膜
構成成分等の、細胞の正常な機能維持に必要なポリペプ
チドの分泌のための機構としてシグナルペプチダーゼを
有しており、また各種微生物由来のシグナルペプチダー
ゼの基質特異性には殆んど差のないことが知られている
〔D.Perlma and H.C.Halvorson,J.Mol.Biol.,167,391
(1983)〕。
上記宿主細胞への導入方向の具体例としては、枯草菌
においては、例えば宿主細胞のプロトプラスト懸濁液に
ベクターを添加後、ポリエチレングリコールを処理する
方法〔S.Chang and S.N.Cohen,Molec.Gen.Genet.,168,1
11(1979)〕、大腸菌においては、例えば宿主細胞を低
音で塩化カルシウムを含む水溶液中で処理し、該溶液中
にベクターを添加する方法〔E.Lederberg,S.Cohen,J.Ba
cteriol.,119,1072(1974)〕を例示できる。
上記のようにして本発明ベクターを導入して形質転換
した細胞を培養するときには、細胞内で融合ポリペプチ
ドが生産され、続いて細胞外又はペリプラズムに成熟ポ
リペプチドが分泌蓄積される。即ち、まず、ベクター中
の融合ポリペプチドをコードする遺伝子から、ベクター
中の転写調節因子並びに宿主細胞中の諸因子の作用でmR
NAが生産される。次いで、mRNAから翻訳調節因子並びに
宿主細胞中の諸々因子の作用で融合ポリペプチドが生産
される。更にここで生産される融合ポリペプチドは、シ
グナルペプチドの作用により、細胞外又はペリプラズム
に分泌され、同時にシグナルペプチダーゼの作用によ
り、融合ポリペプチドからシグナルペプチドが切り離さ
れるのである。その結果、シグナルペプチドも、また他
の如何なる不要なアミノ酸配列をも含まない成熟ポリペ
プチドが細胞外又はペリプラズムに分泌、蓄積される。
かくして分泌、蓄積された成熟ポリペプチドは、これ
を常法に従い分離することができ、また精製することが
できる。この分離、精製操作としては例えば培養上澄又
は浸透圧シヨツク法により調整したペリプラズム画分か
ら、ゲル過、吸着クロマトグラフイー、イオン交換ク
ロマトグラフイー、高速液体クロマトグラフイー等を適
宜組合せた方法を採用することができる。特に本発明に
従い得られる目的ポリペプチドは、成熟ポリペプチドし
て分泌されるものであるため、その分離、精製が比較的
容易である利点がある。
実施例 以下、本発明を更に詳しく説明するため参考例及び実
施例を挙げる。
尚、各例において用いられている各方法及び操作は、
特に明記しない限り、以下の通り行なわれたものであ
る。
1.制限酵素によるDNAの切断操作 DNAの水溶液(又はTE緩衝液(10mMトリス塩酸(pH7.
5)、1mM EDTA)溶液)或いは粉末に、下記第2表に示
した各緩衝液の濃縮液及び水を混和し、次いで制限酵素
を加え、37℃の水浴中で3時間静置して反応させる。制
限酵素の標準的使用量は、DNA1μgに対して1ユニツト
であり、最終液量は10μlとなるようにする。
2.フエノール抽出法 酵素反応の終了後、酵素を失活させ反応を停止させる
ためにこの抽出法を行なつた。即ち、反応液に、その液
量の半量となるTE飽和フエノール(1mM EDTAを含む10mM
トリス塩酸(pH8.0)緩衝液をフエノールに飽和させた
もの)を加えて充分混和した後、同じく半量のクロロホ
ルムを加えて更に混和し、次いで遠心分離してDNAを含
む緩衝液層を取る。更に0.1倍量の3M酢酸ナトリウム緩
衝液(pH5.0)と2倍量の冷エタノールとを加えて混和
して、−20℃で1時間以上放置してDNAを沈澱として回
収することによりフエノールを完全に除去する。
3.DNAポリメラーゼI(クレノー断片)によるDNAのブラ
ントエンド化方法 40mMリン酸カリウム(pH7.4)、6mM塩化マグネシウ
ム、1mMβ−メルカプトエタノール、1mM ATP及び各1mM
のdATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含む水溶液中に、DNAを
溶かし、DNA1μgに対して1ユニツトとなる量のDNAポ
リメラーゼI(クレノー断片、宝酒造(株)製)を加
え、12℃で30分間反応させる。
4.T4DNAリガーゼによるDNA断片の結合(環状化)操作 66mMトリス塩酸(pH7.5)、6.6mM塩化マグネシウム、
10mMジチオスレイトール及び1mM ATPに0.01%の牛血清
アルブミンを添加した水溶液中で、DNA断片と、その1
μg当り3ユニツトとなる量のT4DNAリガーゼ(宝酒造
(株)製)とを、12℃で5時間以上反応させることによ
りDNAを結合(環状化)させる。
5.形質転換方法 形質転換には、大腸菌としてHB101株〔Boyer,H.W.and
D.Roulland-Dussoix,J.Mol.Biol.,41,459(1969)〕及
びMC1060株〔M.J.Casadaban and S.N.Cohen,J.Mol.Bio
l.,138,179(1980)〕を、枯草菌としてはRM125株〔T.U
ozumi et al.Molec.Gen.Genet.,152,65(1977)〕及びM
T−2株〔M.Fujii et al.J.Bacteriol.,154,831(198
3)〕をそれぞれ使用した。
(1) 大腸菌の形質転換 大腸菌HB101株又はMT−2株を、LB培地(1%バクト
トリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5%塩化ナ
トリウム)で、37℃下、610nmの吸光度が0.25になるま
で増殖させる。この培養液40mlを遠心分離(6000回転/
分×10分)して菌体を回収し、次いで氷冷する。これを
0.1M塩化マグネシウム20mlで洗浄し、続いて氷冷した0.
1M塩化カルシウム及び0.05M塩化マグネシウム溶液20ml
に懸濁させ、1時間氷冷する。遠心分離(6000回転/分
×10分)後、菌体を氷冷した0.1M塩化カルシウム及び0.
05M塩化マグネシウム溶液2mlに再懸濁させる。この懸濁
液0.2mlに、T4DNAリガーゼを用いて結合させたDNA断片
の反応組成液0.01mlを加え、1時間氷冷する。次いで4
2.5℃の水浴で90秒間加温し、LB培地2.8mlを加え、これ
を37℃の水浴中で1時間静置する。
次に、得られる形質転換株を以下の抗生物質耐性で選
択する。即ち、1.5%寒天を含むLB培地にアンピシリン5
0μg/ml、テトラサイクリン20μg/ml又はカナマイシン1
0μg/mlを添加して調整した平板培地に、上記で得た反
応組成液の溶液各0.3mlずつを拡げ、これを37℃で一晩
培養し、生育する大腸菌コロニーを分離する。
(2) 枯草菌の形質転換法 枯草菌RM125株又はMT−2株を、LB培地中で30℃、1
夜前培養する。50mlのLB培地に前培養1mlを接種し、30
℃、3時間振とう培養する。遠心分離(7000回転/分×
5分)により集菌し、これを5mlのSMMP溶液〔0.5Mシヨ
糖、20mMマレイン酸ナトリウム(pH6.5)、20mM塩化マ
グネシウム、0.35%ペンアツセイブロース(Sigma社
製)〕に懸濁する。これに10mgのリゾチームを加え、42
℃、1時間インキユベートする。99%以上の細胞がプロ
トプラスト化したことを顕微鏡下(×400)で確認した
後、遠心分離(3000回転/分×15分)により集菌する。
5mlのSMMP溶液で1回洗浄した後、5mlのSMMP溶液に懸濁
する。この懸濁液0.5mlと1〜10ngのDNAを含む水溶液0.
1mlを混合後、1.4mlのポリエチレングリコール溶液(40
%ポリエチレングリコール6000(和光純薬(株)製)、
0.5Mシヨ糖、20mMマレイン酸ナトリウム(pH6.5)、20m
M塩化マグネシウム)を加え、2分間インキユベートす
る。これに5mlのSMMPを加え遠心分離(3000回転/分×1
5分)して得たプロトプラストを1mlのSMMP溶液に懸濁
し、30℃、90分間静置する。懸濁液をSMMP溶液で10〜10
00倍希釈した後、0.2mlを第3表に示す組成のDM3倍地上
に拡げ、25℃で3〜4日間培養し、生育した枯草菌コロ
ニーを分離する。形質転換体の選択に用いるカナマイシ
ンは300ppmという高濃度で供試する。これは、DM3培地
に含まれる高濃度のコハク酸ナトリウムのため、カナマ
イシンの効力が現われにくいためである(S.Chang and
S.N.Choen、Mol.Gen.Genet.,168,111-115(1979))。 第 3 表 コハク酸ナトリウム 135.1g/l カザミノ酸 5.0 〃 バクトイーストエキス 5.0 〃 ブドウ糖 5.0 〃 リン酸一カリウム 1.5 〃 リン酸二カリウム 3.5 〃 塩化マグネシウム 4.1 〃 ウシ血清アルブミン 0.1 〃寒 天 8.0 〃 6.プラスミドの単離 プラスミドを保有する大腸菌株を、アンピシリン(50
μg/ml)、テトラサイクリン(15μg/ml)又はカナマイ
シン(10μg/ml)を添加した500mlのLB培地で37℃、一
夜振とう培養する。菌体を遠心分離(7000回転/分×5
分)で集め、リゾチーム用緩衝液〔(50mMブドウ糖、10
mM EDTA、25mMトリス塩酸(pH8.0)〕で1回洗浄した
後、同一緩衝液10mlに懸濁し、リゾチーム10mgを添加す
る。これを氷冷下に30分間放置した後、アルカリSDS溶
液(0.2N水酸化ナトリウム、1%ラウリル硫酸ナトリウ
ム)20mlを加え、静かに攪拌した後、氷冷下に5分間放
置する。次に3M酢酸ナトリウム溶液(pH4.8)を15ml加
え、静かに攪拌した後、氷冷下に60分間放置する。反応
液を遠心分離(9000回転/分×20分)し、得られた上清
に冷エタノール(−20℃)100mlを加え、−70℃に30分
間以上放置する。遠心分離(9000回転/分×30分)によ
つて得られた沈澱を、減圧下でエタノールを除いた後、
0.1M酢酸ナトリウム−50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1
0mlに溶解する。これに冷エタノール(−20℃)40mlを
加え、−70℃に30分間以上放置する。遠心分離(12000
回転/分×30分)によつて得られた沈澱から、減圧下で
エタノールを除いた後、沈澱を8mlのTE緩衝液に溶解
し、これに塩化セシウム9.24g及びエチジウムプロミド
溶液(5mg/ml)0.84mlを加える。塩化セシウムを完全に
溶解させた後、これを2本のクイツクシールチユーブ
(ベツクマン社製、1/2×2インチ)に充填し、VTi65ロ
ーター(ベツクマン社製)を用いて、15℃、50000回転
/分で12時間以上超遠心を行なう。かくして分離される
プラスミドを含むバンドをチユーブから抜取り、ついで
5M塩化ナトリウムを含むTE緩衝液で飽和したイソプロパ
ノールを用いてエチジウムプロミドを除去する。最後
に、バイオゲルA50mカラムクロマトグラフイーにより、
プラスミドをRNA、塩化セシウム等から分離・精製す
る。
なお、枯草菌からのプラスミドの単離は、リゾチーム
緩衝液としてSET緩衝液〔20%シヨ糖、50mM EDTA、50mM
トリス塩酸(pH7.6)〕を用い、リゾチーム濃度を2倍
とした以外は、大腸菌の場合と同様である。
7.オリゴヌクレオチドの合成 オリゴヌクレオチドの合成は、下記に示す固相合成法
(固相リン酸トリエステル法)により行なつた〔H.Ito
et al,Necleic Acids Research,10,1755-1769(198
2)〕。
即ち、まず1%架橋ポリスチレン樹脂S−X1(200〜4
00メツシユ、バイオラドラボラトリーズ社製)をアミノ
メチル化したものと、5′−O−ジメトキシトリチルヌ
クレオシドのモノコハク酸エステルとを反応させて、ヌ
クレオシド担持樹脂を得る。次に、バーチエム社製DNA
合成機を用いて以下の操作を行なう。
上記樹脂40mgを反応管に入れ、1M臭化亜鉛のジクロロ
メタン−イソプロパノール(85:15)溶液を用いて5′
位のジメトキシトリチル基を脱離させる。次に完全に保
護されたジヌクレオチド〔C.Broka et al,Nucleic Acid
s Research,8,5461-5471(1980)の方法により調製し
た〕のトリエチルアンモニウム塩50mgを加え、縮合剤
(メシチレンスルホニル−5−ニトロトリアゾール)を
用いて縮合させる。以上の操作を繰返して、順次鎖長を
のばして、保護されたオリゴヌクレオチドを担持した樹
脂を得る。尚、最後の縮合工程では、必要に応じてジヌ
クレオチドの代りに、前記文献に記載の方法により調製
されるモノヌクレオチドのトリエチルアンモニウム塩25
mgを使用する。
次に0.5Mピリジンカルドキシメートのピリジン−水
(1:1)溶液を用いて、保護されたオリゴヌクレオチド
を樹脂から脱離させる。これをセフアデツクスG−50カ
ラム(フアルマシア社製、2×100cm)で、更に高速液
体クロマトグラフイー(ポンプ;ウオーターズ社製6000
A型、検出器;440型デイテクター、カラム;マイクロボ
ンダーパツクC18、溶出溶媒;(5→40%)アセトニト
リル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液)で精製
する。次に80%酢酸により脱保護反応を行ない、再度高
速液体クロマトグラフイーにより単一ピークになるまで
精製する。この高速液体クロマトグラフイーの条件は、
溶出溶媒として(5→25%)アセトニトリル−0.1M酢酸
トリエチルアンモニウム水溶液を用いる以外は、上記と
同一とする。
8.DNA塩基配列の分析 DNA塩基配列の分析は、メシング(Messing)の方法
〔M13法、Methods Enzymol.,101,20(1983)〕に従い、
以下のように行なつた。即ち、まずDNA断片を制限酵素
により切り出し、1%アガロースゲル電気泳動により分
離する。このDNA断片をM13mp8RF(アマーシヤム社製)
をベクターとしてクローニングする。得られる組換えフ
アージDNAをマンデル(Mandel)とヒガ(Higa)の方法
〔J.Mol.Biol.,53,154(1970)〕により、大腸菌JM107
株へ形質導入する。この菌体懸濁液0.2mlに、25mg/mlの
イソプロピル−β−D−チオガラクトシド25μg及び20
mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β
−D−ガラクトシド40μgを加え、次いで加熱溶解させ
た後、50℃で保温したH−トツプアガー液(1%バクト
トリプシン、0.8%塩化ナトリウム及び0.5%寒天)3ml
を加え、1.5%寒天を加えて固化させた2×TY培地(1.6
%バクトトリプトン、1%酵母エキス及び0.5%塩化ナ
トリウム)の平板に重層し、37℃で一晩培養する。DNA
断片の挿入された組換えフアージは無色のプラークを生
じるのに対し、親株のM13mp8は青色のプラークを生じる
ので、目的の組換えフアージは容易に選別できる。
次に、単一の無色プラークをパスツールピペツトにて
取り出し、これとJM103株の培養液0.01mlとを2×TY培
地1mlに加え、約5時間、37℃で振盪培養して組換えフ
アージを増殖させる。培養後、遠心にて菌体を除き、上
清に20%ポリエチレングリコール6000の0.2mlを混合
し、室温で15分以上静置した後、遠心にて沈澱するフア
ージを集め、フエノール抽出によつて、フアージから一
本鎖DNAを抽出し、これを鋳型一本鎖DNAとして用いる。
鋳型一本鎖DNAとプライマー(宝酒造(株)製、M13の
15塩基プライマー)とそれぞれ0.5p molずつを混合し、
60℃で20分間熱処理後、徐冷する。次にこの混合液にα
32P−dCTP(アマシヤム社製、400Ci/m mol)2μlとD
NAポリメラーゼI(クレノー、宝酒造(株)製)2ユニ
ツトとを加え、充分に混合した後、その3.2μlずつ
を、下記第4表に示した4種dNTP-ddNTP混合液のそれぞ
れ2μlを含む反応管に加える。室温で20分間反応させ
た後、チエース反応液(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの各
1mM)の1μlをそれぞれに加え、更に20分間反応させ
る。ホルムアミド停止液(95%v/vホルムアミド、0.1%
キシレンシアノール及び0.1%ブロムフエノールブル
ー)を6μlずつ加え、95℃で3分間加熱した後、急冷
する。次にサンプル2μlずつを6%又は8%ポリアク
リルアミドゲルに重層し、電気泳動(1800V、30mA、2
〜3時間)を行なう。泳動後、ゲルを紙(ワツトマン
3MM)に移し、ゲル乾燥器にて乾燥し、オートラジオグ
ラムをとり、DNA塩基配列を解読する。
但し第4表中、ddAはジデオキシアデノシンを、ddCは
ジデオキシシチジンを、ddGはジデオキシグアノシン
を、またddTはジデオキシチミジンをそれぞれ示す。
9.アガロースゲル電気泳動 シユライフ(Schleif)とウエンシンク(Wensink)の
手引書〔“Practical Methods in Molecular Riology"
(1981),Springer-Verlag社、pp114-125〕に記載の方
法に従つて、アガロースゲル電気泳動及び泳動後のゲル
からのDNA断片の分離を行なう。泳動用電源としては、
アトー社製コンスターパワーSJ1065型を、泳動槽として
は12×15cmのプラスチツク製水槽(白金電極付)を、ア
ガロースとしてはアガロースI(同仁化学研究所製)
を、また泳動用緩衝液としては40mMトリス塩酸(5mM酢
酸ナトリウム及び1mM EDTA含有、pH7.9)をそれぞれ用
いる。
10.ポリアクリルアミドゲル電気泳動 上記手引書の第78-87頁及び第114-125頁に記載の方法
に従い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び泳動後の
ゲルからのDNA断片の分離を行なう。泳動用電源として
は、アトー社製コンスターパワーSJ1065型を、泳動槽と
してはアトー社製SJ1060SD型を用いる。アクリルアミド
溶液として、アクリルアミドとN,N′−メチレンビスア
クリルアミド(29:1)との水溶液を、重合促進剤として
N,N,N′,N′−テトラメチレンエチレンジアミンを、重
合触媒として過硫酸アンモンをそれぞれ用いる。また泳
動用緩衝液として90mMトリス塩酸(90mM硼酸、2.5mM ED
TA含有、pH8.3)を用いる。
参考例1 分泌発現用ベクターpGH54及びpGH55の構築 (A) 中間体プラスミドpGH53の構築 プラスミドpGH53を得る工程を第1図に示した。
大腸菌のβ−ラクタマーゼのシグナルペプチドの一
部をコードするDNA塩基配列を有するオリゴヌクレオチ
ドの合成のために、以下の塩基配列を有する4種のオリ
ゴヌクレオチドのそれぞれを、前記した固相リン酸トリ
エステル法により合成した。
〈1〉 (5′)CGCCGGCCTTTTGCCTTCCTGTC(3′) 〈2〉 TTCGCGAACTCAGCTGCA 〈3〉 GCTGAGTTCGCGAAGACAG 〈4〉 GAAGGCAAAAGGCCGGCGTAT 上記オリゴヌクレオチド〈2〉及び〈4〉の5′端を
それぞれT4ポリヌクレオチジルキナーゼ(BRL社製)を
用いてリン酸化した。即ち、各々10μgのオリゴヌクレ
オチドを50mMトリス塩酸水溶液(10mM塩化マグネシウ
ム、5mMジチオスレイトール、1mM ATPを含む、pH9.5)5
0μlに溶かし、これにT4ポリヌクレオチジルキナーゼ
5ユニツトを加え、37℃で30分間反応させ、フエノール
抽出により反応を停止させた。
クローニングベクターとして、プラスミドpBR322
〔Bolivar et al,Gene,2,95-113(1977)〕を利用し
た。
該プラスミドpBR322の10μgを、制限酵素PstI(宝酒
造(株)製)とPvuI(NEB社製)とを用いて高塩濃度緩
衝液中で切断し、1.0%アガロースゲル電気泳動を行な
い、約4.24KbのDNA断片を分離した。
上記で得たDNA断片を、上記で調製されたリン
酸化したオリゴヌクレオチド〈2〉及び〈4〉並びにリ
ン酸化していないオリゴヌクレオチド〈1〉及び〈3〉
のそれぞれ約1μgずつと合せて、T4DNAリガーゼで結
合反応させた。反応終了後、この反応組成液で大腸菌K
−12株由来のHB101株を形質転換させた。得られたテト
ラサイクリン耐性を示す形質転換株の中から1株を選
び、これからプラスミドを単離し、目的のpGH53を得
た。
得られたpGH53は、1.0%アガロースゲル電気泳動の結
果、4.3Kbの大きさを有しており、そのDNA塩基配列をM1
3法により分析した結果、pBR322のPstI及びPvuIの両制
限サイト間が欠失し、代りに下記式〔7〕に示すよう
に、オリゴヌクレオチド〈1〉、〈2〉、〈3〉及び
〈4〉が挿入されていることが確認された。
該pGH53は、通商産業省工業技術院微生物工業技術研
究所に「HB101〔pGH53〕」なる表示で微工研条寄第678
号(FERM BP-678)として寄託されている。
(B) 分泌発現用ベクターpGH54の構築 ベクターpGH54を得る工程を第2図に示した。
上記(A)で得たpGH53の10μgを制限酵素NaeT(N
EB社製)及びAvaI(宝酒造(株)製)を用いて中塩濃度
緩衝液中で切断し、次いで1.0%アガロースゲル電気泳
動を行なつて、約2.22KbのDNA断片《A》を分離した。
この断片は、合成オリゴヌクレオチド由来のDNA配列
の大部分とプラスミドの複製開始領域を含んでいる。
pBR322を制限酵素AvaI及びHind III(いずれも宝酒
造(株)製)で、中塩濃度緩衝液を用いて切断し、1.0
%アガロースゲル電気泳動を行なつて、約1.40KbのDNA
断片《B》を得た。
この断片には、テトラサイクリン耐性遺伝子のプロモ
ーターの一部とテトラサイクリン耐性の構造遺伝子の全
てが含まれている。
pBR322の20μgを制限酵素Fnu4HI(NEB社製)で低
塩濃度緩衝液を用いて切断し、次いでS1ヌクレアーゼに
よりDNA断片末端の突出塩器を分解除去した。これはフ
エノール抽出後のDNAを6mM酢酸ナトリウム、40mM塩化ナ
トリウム及び1mM硫酸亜鉛緩衝液(pH4.5)1mlに溶か
し、これに2000ユニツトのS1ヌクレアーゼ(BRL社製)
を加えて20℃で30分間反応させることにより行なつた。
次いで、フエノール抽出後の、DNAを制限酵素Hind III
で中塩濃度緩衝液を用いて切断し、6%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行ない、約0.28KbのDNA断片《C》
を得た。
この断片には、β−ラクタマーゼのプロモーター、リ
ボゾーム結合部位、シグナルペプチドをコードする遺伝
子の一部の他、テトラサイクリン耐性遺伝子のプロモー
ターの一部が含まれている。
上記で得た3つの断片《A》、《B》及び《C》
を、T4DNAリガーゼを用いて結合させた。反応後、この
反応組成液でHB101株を形質転換した。得られたテトラ
サイクリン耐性を示す形質転換株の中から1株を選びプ
ラスミドを単離した。かくしてpGH54を得た。
pGH54は、M13法による塩基配列分析の結果、βラクタ
マーゼのプロモーター及びリボゾーム結合部位に続いて
シグナルペプチドをコードするDNA塩基配列を有し、こ
の塩基配列の3′末端の上流側にNruI及び下流側にPvuI
Iのそれぞれの制限酵素認識配列を有していることが確
認された。
pGH54は、前記した通り約3.9Kbの大きさ及び第2図に
示す制限酵素開裂地図により特徴付けられ、またM13法
による塩基配列分析の結果、前記式(3)に示した塩基
配列によりコードされるβラクタマーゼシグナルペプチ
ドの遺伝子を有することが確認された。
このプラスミドpGH54を保有する大腸菌HB101株は、
「HB101〔pGH54〕」なる表示で、微工研条寄第679号(F
ERM BP-679)として寄託されている。
(C) 分泌発現用ベクターpGH55の構築 ベクターpGH55を得る工程を第3図に示した。
pBR322のAvaII及びPvuII制限サイト間の塩基配列を
欠失させたプラスミドであるpBRH02を次の操作により作
成した。即ちpBR322の5μgを、中塩濃度緩衝液中で、
制限酵素AvaI及びPvuII(いずれも宝酒造(株)製)で
切断し、フエノール抽出後、DNAポリメラーゼI(クレ
ノー断片、宝酒造(株)製)で切断断片をブランドエン
ド化した。次に1.0%アガロースゲル電気泳動で約3.72K
bのDNA断片を分離し、この断片をT4DNAリガーゼで環状
化させた。反応終了後、この反応組成液でHB101株を形
質転換し、得られるアンピシリン耐性及びテトラサイク
リン耐性を示す形質転換株の中から一株を選択してプラ
スミドを単離しpBRH02を得た。得られたpBRH02はpBR322
とは異なつて、AvaIでもPvuIIでも切断されなかつた。
上記で得たpBRH02の5μgを制限酵素PstI及びBa
mHI(いずれも宝酒造(株)製)を用いて中塩濃度緩衝
液中で切断し、次いで1.0%アガロースゲル電気泳動を
行なつて、約2,60KbのDNA断片《D》を分離した。
この断片は、テトラサイクリン耐性遺伝子の一部及び
プラスミドの複製開始領域を含んでいる。
pGH54の10μgを制限酵素PstI及びBamHIで中塩濃度
緩衝液を用いて切断し、次いで1.0%アガロースゲル電
気泳動を行ない、約0.66KbのDNA断片《E》を得た。
この断片には、β−ラクタマーゼのプロモーター、リ
ボゾーム結合部位、シグナルペプチドをコードするDNA
配列及びテトラサイクリン耐性遺伝子の一部が含まれて
いる。
上記で得た2つの断片《D》及び《E》を、T4DNA
リガーゼを用いて結合させた。反応後、この反応組成液
でHB101株を形質転換した。得られたテトラサイクリン
耐性を示す形質転換株の中から1株を選びプラスミドを
単離した。かくしてpGH55を得た。
pGH55は、上記第3図に示される制限酵素開裂地図に
より特徴付けられ、1.0%アガロースゲル電気泳動の結
果、約3.3Kbの大きさを有していた。また該pGH55は、M1
3法による塩基配列分析の結果、pGH54における第2のPv
uII制限サイトを含む約0.64KbのDNAを欠く以外は、該pG
H54と同様であり、その第1のPvuII制限サイトは、シグ
ナルペプチドをコードするDNA塩基配列の3′末端の近
傍に存在していることが確認された。
このプラスミドpGH55を保有する大腸菌HB101株は、
「HB101(pGH55)」なる表示で、微工研条寄第680号(F
ERM BP-680)として寄託されている。
参考例2 シグナルペプチド−βウロガストロン融合ポリペプチ
ドをコードするDNA塩基配列を有するベクターの構築 (A) βウロガストロンをコードするDNA塩基配列の
合成 この塩基配列は、グレゴリー(H.Gregory)により報
告されたアミノ酸配列〔Nature,257,325-327(1975)〕
を参考にして、またβウロガストロンをコードするDNA
塩基配列の前後に開始コドン、終止コドン及び制限酵素
認識部位を付加してなる下記第5表に示すDNA塩基配列
を構築することより行なつた。このDNA塩基配列は、本
発明者らにより既に特願昭59-137691号として特許出願
されている。
(B) βウロガストロンをコードするDNA塩基配列を
保有するプラスミドの構築 pBR322の10μgを、まず高塩濃度緩衝液中でEcoRI
(宝酒造(株)製)とBamHIとで切断し、次いで1.0%ア
ガロースゲル電気泳動を行ない、約3.99KbのDNA断片を
単離した。
上記で得たDNA断片と、上記(A)で得たβウロ
ガストロンをコードするDNA塩基配列とを、T4DNAリガ
ーゼで結合させた。反応後、反応組成物でHB101株を形
質転換し、得られたアンピシリン耐性を示す形質転換株
の中から一株を選びプラスミドを単離した。かくしてβ
ウロガストロンをコードするDNA塩基配列をpBR322のEco
RI及びBamHI制限サイト間に挿入されたプラスミドpUG3
を得た。
このプラスミドpUG3を保有するHB101株は、「HB101
〔pUG3〕」なる表示で微工研条寄第543号(FERM BP-54
3)として寄託されている。
(C) pUG201の構築 プラスミドpUG201を得る工程を第4図に示した。
上記(B)で得たpUG3を制限酵素HinfIで切断して得
られるDNA断片を、pGH55のPvuII制限サイトに挿入し
て、シグナルペプチド−βウロガストロン融合ポリペプ
チドをコードするDNA塩基配列を含む分泌発現ベクター
であるpUG201を、以下の方法により構築した。
pUG3の15μgを、高塩濃度緩衝液中でHinfI(宝酒
造(株)製)で切断し、フエノール抽出後、DNAポリメ
ラーゼI(クレノー断片)で切断断片をブラントエンド
化した。次いで6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を
行ない、約0.42KbのDNA断片《F》を単離した。
この断片には、βウロガストロンをコードするDNA塩
基配列(翻訳停止コドンを含む)のうち5′端の7塩基
を除く塩基配列が含まれていた。
pGH55は、βラクタマーゼのシグナルペプチドをコ
ードするDNA塩基配列の後に、βウロガストロンのN端
領域をコードする最初の7個のDNA塩基配列が直結し、
且つその直後で制限酵素PvuIIにより切断されるように
構成されたDNA塩基配列を有するものであり、該pGH55の
5μgを中塩濃度緩衝液中で、PvuIIで切断して、約3.2
6KbのDNA断片《G》を得た。
この断片は、pGH55の全ての遺伝情報を有している。
上記で得た断片《F》の約1μgと、上記で得
た断片《G》の約0.5gとをT4DNAリガーゼで結合させ
た。反応後、この反応組成液でHB101株を形質転換し、
得られるテトラサイクリン耐性の形質転換株の中から一
株を選び、プラスミドpUG201を単離した。
pUG201は、1.0%アガロースゲル電気泳動の結果、約
3.7Kbの大きさを有していた。これをBamHI又はHind III
で切断すると、それぞれ2種類のDNA断片が得られるこ
とから、該pUG201にはβウロガストロン遺伝子が含まれ
ていることが判り、また該断片の大きさを調べた結果よ
り、目的のプラスミドであることが判つた。更に、pUG2
01について、βラクタマーゼのプロモーター部分からβ
ウロガストロン遺伝子までを含むDNA断片の塩基配列
を、M13法による塩基配列分析により調べた。その結
果、該DNA塩基配列は下記第6表の通りであり、pUG201
がβラクタマーゼのプロモーター、リボゾーム結合部位
並びにβラクタマーゼのシグナルペプチドをコードする
塩基配列及びβウロガストロンをコードする塩基配列
(融合ポリペプチドをコードする塩基配列)が、正確に
この順序で配列されていることが確認された。また第6
表にはDNA塩基配列に対応するアミノ酸配列も併記す
る。
上記pUG201は、これを大腸菌HB101に保有させ、この
保有株を「HB101〔pGH201〕」なる表示で通商産業省工
業技術院微生物工業研究所に寄託されている。その寄託
番号は、微工研条寄第681号(FERM BP-681)である。
参考例3 pUG201を保有する大腸菌による成熟βウロガストロン
の分泌発現 (A) pUG201を保有するHB101株の培養 下記組成の修正E培地を用いた。
〈修正E培地(1当りの組成)〉 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g クエン酸・1水和物 2.0g 無水リン酸2カリウム 10.0g リン酸水素アンモニウム・ナトリウム・4水塩3.5g ブドウ糖 2.0g カザミノ酸 1.0g L−プロリン 0.23g L−ロイシン 39.5mg 塩酸チアミン 16.85mg テトラサイクリン・塩酸塩 20.0mg pUG201株の前培養液1mlを、修正E培地200mlを含むフ
ラスコに加え、37℃で24時間振盪培養した。
(B) 菌体からのペリプラズム画分の細胞内画分との
抽出 上記(A)で得た培養液から遠心分離(6000回転/分
×10分)で菌体を集め、培養液の0.5倍量の洗浄緩衝液
(10mMトリス塩酸及び30mM塩化ナトリウム、pH8.0)で
菌体を洗浄した後、浸透圧シヨツク法〔H.C.NeuとL.A.H
eppel,J.B.C.,240,3685-3692(1965)〕に従い、ペリプ
ラズム画分を抽出した。この抽出操作は、まず湿重量1g
の菌体を20%蔗糖を含む30mMトリス塩酸緩衝液(pH8.
0)80mlに懸濁させ、0.25M EDTA水溶液(pH8.0)の0.32
mlを加え、ロータリーシエーカーで24℃にて180回転/
分で10分間攪拌した後、遠心分離(9000回転/分×10
分)して菌体を集め、次いでこの菌体を氷冷した水80ml
に再懸濁させ、氷中に10分間静置して時々攪拌し、遠心
分離(9000回転/分×10分)により菌体と上澄とを分離
することにより行なつたものであり、得られた上澄がペ
リプラズム画分である。
次いで、上記ペリプラズム画分を抽出した後の菌体
を、前記と同一の洗浄緩衝液で洗浄後、PBS(150mM塩化
ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム、pH7.0)6mlに
懸濁させ、超音波破砕機(大岳製作所製5202型)を用い
て出力100Wにて30秒ずつ3回超音波破砕処理し、遠心分
離(18000回転/分×20分)して上澄を得た。これを細
胞内画分とした。
(C) ラジオイムノアツセイによるβウロガストロン
の測定 上記(B)で得たそれぞれの画分につき、以下の通り
βウロガストロンの存在をβウロガストロン特異ラジオ
イムノアツセイにより検討した。ラジオイムノアツセイ
の方法は次の通りである。即ち、精製ヒトβウロガスト
ロンを抗原として、家兎を免疫し抗血清を作成した。β
ウロガストロン300μgを蒸留水0.2mlに溶解後、50%ポ
リビニルピロリドン液1.5mlを加え室温で2時間攪拌し
た。コンプリート・フロインド・アジユバント2.0mlを
加え乳化し、家兎3匹の胸部に皮下注射した。2週間毎
に免疫を4回くり返した後、さらに50μgの抗原を静注
し、3日後に全採血を行ない、血清を分離した。
次にアツセイに用いる抗血清の希釈倍率を求めるタイ
トレーシヨンカーブ、アツセイ条件を最適化するためイ
ンキユベーシヨン時間、抗体結合標識抗原(バウンド)
と遊離標識抗原(フリー)の分離方法等の検討を加え、
下記測定条件を設定した。
即ち、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、140mM塩化
ナトリウム、25mM EDTA二ナトリウムを含む10mMリン酸
緩衝液(pH7.4)を希釈液として用い、該希釈液400μ
l、測定試料又は標準ヒトβウロガストロン100μl及
び抗ヒトβウロガストロン血清100μlを加えて4℃に
て24時間インキユベートした後、125I標識ヒトβウロ
ガストロン100μl(約5000cpm)を加えた。更に4℃に
て48時間インキユベートした後、第2抗体(抗家兎γ−
グロブリンヤギ血清)(1:20)100μl、正常家兎血清
(1:200)100μl及び5%ポリエチレングリコールを含
む10mM PBS液900μlを加えて4℃にて3時間インキユ
ベートした。次に3000rpmで30分間遠心分離し、上清を
除き沈澱物をカウントした。標準ヒトβウロガストロン
より得られた標準曲線より試料中のヒトβウロガストロ
ン免疫活性物の含量を求めた。
上記結果を下記第7表に示す。また第7表には、pUG2
01を保有するHB101株に代えて、同様にして作成されたp
GH55及びpUG3のそれぞれで形質転換されたHB101株を用
いて同様にした結果を併記する。
上記第7表より、シグナルペプチドのみをコードする
DNA塩基配列を含むベクターを保有する大腸菌(HB101
〔pGH55〕)及びβウロガストロンのみをコードするDNA
塩基配列を含むプラスミドを保有する大腸菌(HB101〔p
UG3〕)では、それらの培養抽出液中にβウロガストロ
ンの免疫活性物質は実質的に検出されないが、シグナル
ペプチドとβウロガストロンの融合ポリペプチドをコー
ドするDNA塩基配列を含み、その前にプロモーター及び
リボゾーム結合部位が連結されたベクターを保有する大
腸菌(HB101〔pUG201〕)では、その培養抽出液中に顕
著なβウロガストロンの免疫活性が検出されることが明
らかである。
また上記ベクターで形質転換した上記微生物の培養で
は、βウロガストロンの免疫活性物質の殆んどすべて
(99.8%)が、ペリプラズムに分布していることも確認
される。このことから、シグナルペプチドとβウロガス
トロンとの融合ポリペプチドのDNA塩基配列を利用すれ
ば、βウロガストロンは細胞膜を通過してペリプラズム
に分泌されることが判る。
(D) ポリペプチドの精製 上記ペリプラズム抽出液中のβウロガストロンの免疫
活性物質を、ブチルトヨパール(東洋曹達(株)製)を
用いた吸着クロマトグラフイー、CM−トヨパール(東洋
曹達株式会社製)を用いたイオン交換クロマトグラフイ
ー、PepRPCカラム(フアルマシア社製)を用いた高速液
体クロマトグラフイー操作により、それぞれ単一のポリ
ペプチドになるまで精製した。
その結果、精製されたポリペプチドは、ポリアクリル
アミドゲル電気泳動、SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動、アミノ酸分析、N末端分析のすべてにおいてヒ
ト尿より単離精製されたβウロガストロンと同一物質で
あることが確認された。
実施例1 成熟ポリペプチド分泌発現ベクターpKK06及びpKK07の
構築 (A) 枯草菌−大腸菌シヤトルベクターpKK01の構築 ベクターpKK01を得る工程を第5図に示した。
枯草菌−大腸菌シヤトルベクターを構築するため、プ
ラスミドpUB110およびpBR322を用いた。pUB110は、黄色
ブドウ球菌スタフイロコツカス オーレウス(Staphylo
coccus aureus)由来の、サイズ4.5Kb(分子量3.0メガ
ダルトン)のプラスミドで、枯草菌内で複製し、カナマ
イシン耐性遺伝子を発現する〔T.J.Gryczan et al.J.Ba
cteriol.,134,318-329(1978)〕。
pBR322の10μgをEcoRI及びPvuIIを用いて、それぞれ
高塩濃度緩衝液中、中塩濃度緩衝液中で切断し、1%ア
ガロース電気泳動により約2.30Kbの断片《K》を分離し
た。この断片には、pBR322に存在していた大腸菌の複製
開始領域及びペニシリン耐性遺伝子が含まれている。
pUB110の10μgをEcoRI及びPvuIIを用いて、それぞれ
高塩濃度緩衝液中、中塩濃度緩衝液中で切断し、1%ア
ガロース電気泳動により約3.45Kbの断片《1》を分離し
た。この断片には、pUB110に存在していた枯草菌の複製
開始領域及びカナマイシン耐性遺伝子が含まれている。
断片《K》及び《L》をT4DNAリガーゼで結合反応さ
せた。反応終了後、この反応組成液で大腸菌HB101株を
形質転換した。ペニシリン耐性及びカナマイシン耐性を
示す形質転換体の中から1株を選び、これよりプラスミ
ドを単離した。その結果大きさ約5.75Kbの目的のプラス
ミドpKK01が得られた。次に本プラスミドを用いて枯草
菌RM125株を形質回転し、カナマイシン耐性を示す形質
変換体を分離した。これらの形質転換体から得られたプ
ラスミドはpKK01そのものであり、更に枯草菌から分離
したpKK01を用いて大腸菌HB101株又は枯草菌RM125株を
形質転換した場合にも、同様に形質転換体からpKK01が
回収された。
(B) プラスミドpKK13の構築 プラスミドpKK13を得る工程を第6図に示した。
pUG201の10μgをEcoRI及びPstIを用いて、高塩濃度
緩衝液中で切断し、1%アガロース電気泳動により約2.
97Kbの断片《H》を分離した。
同じくpUG201の10μgをPstI及びMboIIを用いて、そ
れぞれ中塩濃度緩衝液中、低塩濃度緩衝液中で切断し、
8%アクリルアミド電気泳動により約0.44Kbの断片
《I》及び約0.07Kbの断片《J》を分離した。
MboIIの認識配列GAAGAの末尾のアデニンは、これに続
く塩基配列がTCとなるとき通常の大腸菌宿主中ではdam
メチレイスによりメチル化を受ける。メチル化により、
この配列はMboIIで切断されなくなる(M.G.Marinus and
N.R.Morris,Mutation Research,28,15〜26(197
5))。第6図にpUG201のMboII認識部位が示してある。
断片《I》中の2個のMboII認識部位はいずれもメチル
化のために切断されなくなつている。
枯草菌内で効率よく働くSD配列及びその2塩基下流に
開始コドンを含むオリゴヌクレオチドBs−1及びBs−2
を固相リン酸トリエステル法により合成した。Bs−1と
Bs−2は下記式〔8〕に示す通り互いに相補的であり、
SD配列AAGGAGGTCGAの上流はEcoRI末端をもつ。
断片《H》、《I》、《J》及びオリゴヌクレオチド
Bs−1、Bs−2(各1μg)を混合して、50μlの反応
液中にて、T4DNAリガーゼで連結させた。次いで、これ
を用いて大腸菌MC1060株を形質転換し、テトラサイクリ
ン耐性を示す形質転換体を得た。これらの形質転換体か
らプラスミドを抽出し、以下の点について調べた。即
ち、プラスミドの大きさ(約3.5Kb)、β−ウロガスト
ロン遺伝子中に含まれるMluI認識配列等である。その結
果、期待通りのものが見出されたので、このプラスミド
をpKK13と命名した。pKK13は、大きさ約3.5Kbであり、
テトラサイクリン耐性遺伝子とβラクタマーゼシグナル
ペプチド−βウロガストロン直結遺伝子を有し、更にこ
の直結遺伝子の5′末端、即ち開始コドンの前後のDNA
配列が合成ヌクレオチドBs−1、Bs−2によつて置きか
えられている。その結果、上記直結遺伝子の塩基配列は
変わることなく、その上流に枯草菌用SD配列が新たに導
入されたのである。
(C) 分泌発現ベクター ベクターpKK06を得る工程を第7図に示した。
pKK13の10μgをEcoRI及びPstIを用いて、高塩濃度緩
衝液中で切断し、1%アガロース電気泳動で約0.52Kbの
断片《M》を分離した。この断片には、枯草菌用SD配列
及び大腸菌βラクタマーゼシグナルペプチドに直結した
βウロガストロン遺伝子が含まれている。
pKK01の10μgをEcoRI及びPstIを用いて高塩濃度緩衝
液中で切断し、1%アガロース電気泳動により約5.0Kb
の断片《N》を分離した。この断片には、枯草菌及び大
腸菌の複製開始領域、及びカナマイシン耐性遺伝子が含
まれている。
断片《M》及び《N》をT4DNAリガーゼで結合し、こ
の反応組成液で大腸菌MC1060株を形質転換した。カナマ
イシン耐性を示す形質転換体からプラスミドを単離し、
大きさ約5.4Kbの期待通りのベクターpKK06を得た。
pKK06において、pKK13由来のβラクタマーゼシグナル
ペプチド−βウロガストロン遺伝子が、シヤトルベクタ
ーpKK01のEcoRI−PstI部位間に挿入されていることが、
電気泳動の結果により確認された。
(D) 分泌発現ベクターpKK07の構築 ベクターpKK07を得る工程を第8図に示した。
プラスミドpPL608は、Spo2フアージから導入したプロ
モーター(Spo2プロモーター)をもつ。本プロモーター
は、枯草菌中でクロラムフエニコールアセチルトランス
フエラーゼ遺伝子等を発現させるために用いられている
〔D.M.Williams et al.J.Bacteriol.,146,1162-1165(1
981)〕。
pPL608の50μgをEcoRIを用い、高塩濃度緩衝液中で
切断し、1%アガロース電気泳動によりSpo2プロモータ
ーを含む約0.3Kbの断片《O》を分離した。pKK06の10μ
gをEcoRIを用い、高塩濃度緩衝液中で切断し線状化し
た。
上記で得た断片《O》及び線状化したpKK06のT4DNAリ
ガーゼで結合した。反応終了後、反応組成液で台帳液MC
1060株を形質転換し、カナマイシン耐性を示す形質転換
体を得た。50株の形質転換体よりプラスミドを分離し、
大きさの確認を行なうと共に、EcoRI処理により、約0.3
KbのSpo2プロモーターを含む断片の検出を行なつた。そ
の結果、11株の形質転換体が、Spo2プロモーター断片を
含む大きさ約5.7Kbのプラスミドを保持していた。
上記大腸菌形質転換体の2菌株から得たプラスミドpK
K07及びpKK08を用い、枯草菌MT−2株を形質転換し、カ
ナマイシン耐性を示す形質転換体MT−2〔pKK07〕及びM
T−2〔pKK08〕を得た。これらからプラスミドを単離
し、枯草菌内でプラスミドが変化を受けていないことを
確認した。
実施例2 ベクターpKK07を保有する枯草菌による成熟βウロガ
ストロンの分泌発現 次にMT−2〔pKK07〕及びMT−2〔pKK08〕のヒトβウ
ロガストロンの分泌生産について検討した。両菌株を、
それぞれ10μg/mlのカナマイシンを含むLB培地中で30
℃、一夜前培養した。これら1mlをとり、50mlの同培地
に接種し、30℃で40時間振とう培養した。培養終了後、
培養液5mlをとり、遠心分離(7000回転/分×5分)に
より培養上澄と菌体に分離した。これから上澄1mlをと
り、培養上澄画分とした。菌体は、2.5mlのPBS緩衝液
(20mMリン酸−ナトリウム、20mMリン酸二ナトリウム、
150mM塩化ナトリウム、pH7.0)で洗浄後、2mlのPBS緩衝
液に懸濁した。この緩衝液を氷冷下、超音波破砕器で処
理(100W、30秒×3回)し、菌体を破砕した。この菌体
破砕液を遠心分離(15000回転/分×20分)後、上澄0.4
mlをとり、細胞内画分とした。このようにして得られた
培養上澄画分及び細胞内画分につき、含まれるβウロガ
ストロンをRIA法により測定した。なお、Spo2プロモー
ターが導入されていないpKK06についてもMT−2株を形
質転換し、得られた形質転換株MT−2〔pKK06〕を同様
に培養、抽出して、βウロガストロン量を測定した。結
果は第8表に示される通りである。
MT−2〔pKK07〕では、培養上澄画分及び細胞内画分
で検出されたβウロガストロンは、それぞれ821.5ng/m
l、3.6ng/mlであり、生産されたβウロガストロンの99
%以上が培地中に分泌されていた。一方、MT−2〔pKK0
8〕では、培養上澄画分に検出されたβウロガストロン
は2.9ng/mlときわめて低い値を示し、細胞内画分には検
出されなかつた。
また、Spo2プロモーターの導入されていないベクター
pKK06を保有するMT−2〔pKK06〕では、培養上澄画分及
び細胞内画分のいずれにおいても、βウロガストロンは
殆んど検出されなかつた。
これらの結果より、MT−2〔pKK07〕株においては、S
po2プロモーターが導入されたことにより大量のβウロ
ガストロンが分泌生産されるようになつたことが明らか
である。またMT−2〔pKK08〕株では、Spo2プロモータ
ーが逆方向に挿入されたため、生産量がMT−2〔pKK0
7〕に比して著しく低くなつたことが明らかになつた。
実施例3 ベクターpKK07を保有する大腸菌による成熟βウロガ
ストロンの分泌発現 ベクターpKK07で大腸菌HB101株を形質転換し、カナマ
イシン耐性を示す形質転換体を分離した。これらの中か
ら1菌株を選びプラスミドを単離し、pKk07であること
を確認した。
pKK07を保有する大腸菌HB101の前培養1mlを、L培地2
00mlを含むフラスコに加え、37℃で24時間振盪培養し
た。この培養液から遠心分離(6000回転/分×10分)で
培養上澄と菌体を得た。この菌体を用い、参考例3の
(B)と同様にしてペリプラズム画分及び細胞内画分を
得た。
得られたペリプラズム画分、細胞内画分のβウロガス
トロン量をRIA法により測定した。結果は第9表に示す
通りである。 第 9 表 画 分 βウロガストロン(ng/ml) ペリプラズム画分 189.6 細 胞 内 画 分 11.4 上記結果より、ベクターpKK07は、枯草菌のみならず
大腸菌においても、βウロガストロンを大量に分泌発現
することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
第1図は起源ベクターpBR322に合成オリゴヌクレオチド
〈1〉、〈2〉、〈3〉及び〈4〉をクローニングして
プラスミドpGH53を得る工程及びこれにより得られるpGH
53の特徴を示す図であり、図中□は合成オリゴヌクレオ
チド由来の塩基配列を示している。 第2図はpGH53とpBR322とから本発明ポリペプチド分泌
発現用ベクターpGH54を得る工程及び得られたベクターp
GH54の特性を示す図であり、図中■はシグナルペプチド
をコードする塩基配列を示す。 第3図はpBR322からpBRH02を得、該pBRH02とpGH54とか
ら本発明ポリペプチド分泌発現用ベクターpGH55を得る
工程及び得られるpGH55の特性を示す図である。 第4図はpGH55とpUG3とからシグナルペプチドと目的ポ
リペプチド(βウロガストロン)との融合ポリペプチド
をコードするDNA塩基配列を含む本発明のポリペプチド
分泌発現ベクターpUG201を得る工程及び得られるベクタ
ーpUG201の特性を示す図であり、図中白ヌキの矢印はβ
ウロガストロンの遺伝子を示す。 第5図は、プラスミドpUB110とプラスミドpBR322から枯
草菌−大腸菌シヤトルベクターpKK01を得る工程及び得
られたベクターpKK01の特徴を示す図であり、Apr、T
cr、Kmrはそれぞれアンピシリン耐性遺伝子、テトラサ
イクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子を示す。
またOriE、OriBは、それぞれ大腸菌、枯草菌の複製開始
領域を示す。 第6図は、プラスミドpUG201と合成オリゴヌクレオチド
Bs−1及びBs−2からプラスミドpKK13を得る工程及び
得られたプラスミドpKK13の特徴を示す図である。図
中、▼はメチル化されたMboII認識部位を、▽はメチル
化されていないMboII認識部位を夫々示し、 はBs−1及びBs−2の配列を示す。 第7図は、シヤトルベクターpKK01とプラスミドpKK13か
らプラスミドpKK06を得る工程及び得られたプラスミドp
KK06の特徴を示す図である。 第8図は、プラスミドpKK06とプラスミドpPL608から本
発明の分泌発現ベクターpKK07を得る工程及び得られた
ベクターpKK07の特徴を示す図であり、図中 はSpo2プロモーターを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 1/21 C12R 1:125) (C12P 21/02 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:125) (56)参考文献 特開 昭58−69897(JP,A) 特開 昭61−37099(JP,A) Gene(AMST)vol.22, 1983,p.229−236

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 ATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCCTT
    TTGCCTTCCTGTCTTCGCGAACTCAGCTG で示される大腸菌βラクタマーゼシグナルペプチドをコ
    ードする合成されたDNA塩基配列を含み且つその3′末
    端付近にNruI及びPvuII認識部位を付与されたDNA塩基配
    列と、βウロガストロンをコードするDNA塩基配列と、
    枯草菌の複製開始領域であるDNA塩基配列とを含むこと
    を特徴とするβウロガストロン分泌発現ベクター。
  2. 【請求項2】更に大腸菌の複製開始領域であるDNA塩基
    配列を含む特許請求の範囲第1項に記載のベクター。
  3. 【請求項3】大腸菌βラクタマーゼシグナルペプチドを
    コードする合成されたDNA塩基配列の前にリボゾーム結
    合部位を有する特許請求の範囲第1項に記載のベクタ
    ー。
  4. 【請求項4】pKK06である特許請求の範囲第3項に記載
    のベクター。
  5. 【請求項5】リボゾーム結合部位の前に更にプロモータ
    ーを有する特許請求の範囲第3項に記載のベクター。
  6. 【請求項6】pKK07である特許請求の範囲第5項に記載
    のベクター。
  7. 【請求項7】式 ATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCCTT
    TTGCCTTCCTGTCTTCGCGAACTCAGCTG で示される大腸菌βラクタマーゼシグナルペプチドをコ
    ードする合成されたDNA塩基配列を含み且つその3′末
    端付近にNruI及びPvuII認識部位を付与されたDNA塩基配
    列と、βウロガストロンをコードするDNA塩基配列と、
    枯草菌の複製開始領域であるDNA塩基配列とを含むβウ
    ロガストロン分泌発現ベクターで形質転換された細菌。
  8. 【請求項8】枯草菌である特許請求の範囲第7項に記載
    の細菌。
  9. 【請求項9】大腸菌である特許請求の範囲第7項に記載
    の細菌。
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