JP2537231B2 - プラスチツクレンズの成形方法 - Google Patents

プラスチツクレンズの成形方法

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JP2537231B2 JP62112165A JP11216587A JP2537231B2 JP 2537231 B2 JP2537231 B2 JP 2537231B2 JP 62112165 A JP62112165 A JP 62112165A JP 11216587 A JP11216587 A JP 11216587A JP 2537231 B2 JP2537231 B2 JP 2537231B2
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【発明の詳細な説明】 [発明の属する分野] 本発明はプラスチックの材料を溶融し、レンズを成形
する金型キャビティ内に射出して成形するプラスチック
レンズの成形方法に関し、特に本発明は溶融プラスチッ
クを金型に射出後成形レンズを歪なく冷却するプロセス
を含む成形方法に関する。
[従来技術の説明] 従来より、厚肉樹脂製品の成形に於ては、樹脂流動性
を上げるため、ヒーター等により金型を、樹脂のガラス
転移点以上に昇温して樹脂を射出し、その直後、サイク
ル短縮のため、冷却回路に冷媒を流し、強制的に成形品
を冷却して型外に取り出している。そして、多くの場
合、キャビティ近傍に埋め込んだ温度センサーで成形品
の表面温度を推定し、熱変形温度以下に温度センサーが
下がった後に、成形品を取り出し可能と判断して、冷却
時間を決定している。
[発明が解決しようとしている問題点] しかしながら、上記従来例では、成形品の形状、肉
厚、樹脂等が変わる度に、実際に成形、測定を行なうト
ライアンドエラーで成形品の精度を保つ金型冷却条件
や、成形サイクルを決定しており、作業効率が悪いとい
う問題があった。
また更に、成形品精度についても、金型内樹脂の温度
測定が困難である事から、実際の成形品温度履歴が、不
明確で、信頼性が低いという問題があった。
特にプラスチックレンズの成形方法において、金型加
熱、溶融プラスチックの射出、保圧、冷却工程を経て成
形プラスチックを取り出す場合に問題となるのは成形プ
ラスチックの金型から取り出した後のレンズ歪の発生や
レンズ表面粗さの精度が低下する等の問題点がある。こ
の問題は多くの場合射出−保圧による射出樹脂の圧縮成
形後の成形レンズの冷却条件に上記問題を生じる原因が
ある。
本発明は上記問題を発生することなく所望のレンズ精
度例えば、中級機カメラ(レンズシャッターカメラ)や
一眼レフカメラ用の撮影レンズに使用し得るプラスチッ
クレンズを製造するために特に射出−保圧工程の後の成
形されたレンズの冷却工程に工夫を凝らすことにより上
記問題を解決することができたものであり、特に、前記
金型に取り付けた冷却手段を作動させて前記キャビティ
内の成形プラスチックレンズを冷却する第1冷却工程を
有し、前記第1冷却工程は前記レンズの表面温度が前記
ガラス転移温度の近傍の温度まで冷却速度を高めて冷却
する。
更に前記冷却工程に引き続いて前記金型を冷却し前記
成形レンズ表面の温度プラスチック材料の熱変形温度に
達した時点において、前記成形プラスチックレンズの中
心部の温度がガラス転移点以下で、かつ、熱変形温度以
上の温度になるように冷却する第2の冷却工程を含むこ
とにより前述問題を解決したものである。
[実施例の説明] 以下に図を参照して本発明の実施例を詳述する。
第1図は本発明の成形方法による成形レンズの形状を
示し、レンズ形状は凸レンズ、外径寸法14φ、最大肉厚
寸法5.5mm レンズ曲率R1=10.33mm R2=262.0mm プラスチック樹脂材料はポリカーボネイトで(株)帝
人の販売による帝人パンライトAD−5503を用いた。
第2図は本発明成形方法に係る金型の構成を示し、符
号2Aは固定側抱き駒、4Aは固定側型板2Bは可動側抱き
駒、4Bは可動側型板を示し、各抱き駒2A・2Bの間に前記
第1図示のレンズ形状と同じ形状のキャビティ2Cを形成
し、該キャビティ2Cはスプルーを通して溶融プラスチッ
ク材料を射出する射出シリンダー6に接している。
8A・8B…は金型2A・2Bを温めるヒータであり、10A・1
0B…は金型2A・2Bを冷却する冷却水を流す冷却管であ
り、各冷却管に取り付けた不図示の開閉バルブによって
冷却水槽から冷却水を流通循環させて金型を冷やす。12
A・12B…は可動側及び固定側型板に配した温度調整管を
示し、該管内には約130℃の油を循環させる。
実施例1 第3図は本発明の第1の実施例に係るプロセス線図を
示し、外線図に基づいて説明する。
第3図のプロセス線図は横軸に各プロセスの手順を示
し縦軸に成形温度を示す。
まず第1の例においてはヒータ8A・8B…を作動させて
可動側及び固定側各型板2A・2Bを加熱し金型のキャビテ
ィ近傍の型温度を170℃に加熱し該温度170℃を保圧工程
の終りまで保持する。
金型温度が前記の170℃に達した後、前記射出シリン
ダー6から300℃に加熱し溶融状態にある前記ポリカー
ボネイト樹脂(PC樹脂)をスプルーを通して1m/sの射出
速度でキャビティ内に射出する。溶融PC樹脂を所定容量
射出後、キャビティに1000kg/cm2以上の保圧をかけ射出
保圧工程を終える。
射出保圧工程の次にキャビティ内に充填された溶融樹
脂を冷却−固化してレンズ成形するために金型を冷やす
ため前記冷却管10A…に冷却水を流して冷却工程に入
る。第3図のプロセス線図に示すようにキャビティ内の
成形レンズは肉厚寸法を有し、又、金型の温度170℃とP
C樹脂の射出温度300℃とはかなり大きな温度差を有して
いるため成形レンズの周辺(表面)温度と成形レンズの
肉厚中心部の温度とは冷却工程開始時点においては大き
な温度差を生じる。
第3図の線図において曲線P1はレンズ表面の温度曲線
を示し、曲線P2はレンズ肉厚中心部の温度曲線をそれぞ
れ示す。又曲線P3は金型の温度変化を示す。
キャビティ内の成形レンズの温度を下げ、型から成形
レンズを取り出した後にレンズ面の歪、表面粗さの変化
を生じないように金型の冷却管10A・10B…に冷却水を流
すのであるが本実施例では温度20℃の水を0.5/minの
流量に制御して冷却した。プラスチック成形加工の冷却
工程はプラスチックの成形溶融温度が300℃と高く、成
形品の熱による変形を生じないための温度(熱変形温
度)約130℃と温度差が大きい。それ故、成形品の温度
冷却速度に応じて成形工程の所要工程時間が長くなり成
形品のコストに影響を与える。冷却速度を高め行程時間
を短くすると成形品の表面と中心部の温度差を生じ前述
の歪み、表面粗さの精度が低下する。
次に第4図A〜第5図を参照して前記第3図の各温度
曲線P1.P2.P3.の温度解析方法の例を述べる。
本実施例の各時点における各個所の温度決定は有限要
素法の解析手法に依った。
第4図Aは本発明実施例の金型装置を示し、金型のキ
ャビティを中心とした周囲360゜の26分割の1つのブロ
ックAを軸対称モデルAとして対称モデルのブロックと
考える。
第4図BはモデルブロックAの拡大斜視図を示し、該
ブロックAには成形レンズの一部分となるレンズ部分ブ
ロックBと金型ブロックCから成り、レンズブロックB
は第4図Cに示すように更にy軸方向に2辺、x軸方向
に4辺をとり各辺によって構成される1細分ブロックが
変形六面体の細分ブロックB1・B2・B3…に分割する。
金型ブロックCは軸方向に8辺、x軸方向に16辺、仰
角を3辺にそれぞれ分割して細分ブロックC1・C2・C3…
に分割し、第4図BのブロックA全体として564個の要
素ブロックに分ける。各細分ブロックは6面体と成り、
該6面体を形成する節点は1細分ブロックで8節点とな
り、ブロックA全体では900節点となる。金型におい
て、レンズ端部から20mmの位置に10×3mmの冷却用溝を
設け、更にレンズ端部より42mmの位置に10φの温調管用
開口部を加工する。
前記冷却用溝を流れる水温は20℃、温調温度は130℃
である。温度センサーはレンズ端部から6mmの位置に埋
設する。
温度解析は汎用の有限要素法プログラムであるNASTRA
N(ナストラン)の熱伝導解析を用いた。
本実施例で冷却水の流量を0.5/minに制御したとこ
ろ、成形レンズのレンズ表面温度とレンズ中心温度は第
3図に示すそれぞれの温度曲線P1・P2になった。
レンズ表面温度は射出終了時点(冷却開始時)では30
0℃であったが約17.5秒間で曲線P1に示すようにガラス
転移温度の160℃に低下した。この時のレンズ中心部の
温度は曲線P1に示す289℃,金型温度は155℃であった。
更に温度20℃の冷却水を前述と同量流しつづけた結果
冷却開始から45秒後に金型温度は128.4℃、レンズ表面
温度は130.4℃、レンズ中心部温度は191.5℃となり、更
にその後各温度測定点の温度曲線のP1・P2・P3に示すよ
うに低下して行き、冷却開始から90秒後にレンズ中心部
温度が熱変形温度の130℃に達した。レンズ表面温度は1
13.8℃、金型温度は113.1℃であった。この熱変形温度
はプラスチック成形加工技術において成形品を金型から
取り出した後に変形、歪、表面精度上の問題を生じない
理論上の成形品取り出し可能な温度とされている。上記
の温度曲線P1・P2・P3の各曲線に沿った冷却作用を行な
ったプラスチックレンズを計測した結果は R1面でニュートン縞本数7〜8本 R2面で 5〜6本 であった。
実施例の2 上記第1の実施例は冷却水を0.5/minの流量に制御
して冷却を行なった結果冷却開始からレンズ中心部の温
度が熱変形温度を下まわるまでの時間は第3図に示すよ
うに90秒であった。その結果、レンズ表面の温度が熱変
形温度近傍の130.4℃に達したときのレンズ中心部温度
は191.5℃であり、ガラス転移温度域内の160℃にまだ冷
却されておらず、レンズ表面が表面樹脂の変動を生じな
い状態であってもレンズ中心部は樹脂の移動が行なわれ
る状態になっておりこの両者の樹脂状態の相違により前
述の測定結果となって表われたものと思料できる。
そこで本発明者はレンズ表面の温度が熱変形温度の13
0℃近辺のときにレンズ中心部の温度を出来るだけレン
ズ表面温度に近づけること、例えば、10℃位の温度差以
内になるように冷却曲線を制御することを目標に実験検
討し次の第2の実施例を得た。
成形レンズ形状、及びプラスチック材料、金型構造、
射出条件は第1の実施例と同じである。
第5図は本例の冷却温度曲線を示し、P4はレンズ表面
の温度曲線、P5はレンズ中心部の温度曲線、P6は金型の
温度曲線をそれぞれ示す。
本実施例は冷却速度を前例より緩め冷却水の流量を0.
3/min、温度20℃に制御した。その結果冷却開始から2
5秒後に金型温度157.6℃、レンズ表面温度がガラス転移
点温度近くの160.9℃、レンズ中心部の温度が256.3℃に
達した。更に同じ水量を保って冷却を続け冷却開始から
110秒後にレンズ表面温度は熱変形温度近くの130.1℃に
達し、この時、問題のレンズ中心部温度は138.8℃、金
型温度は129.7℃であった。引き続き冷却を行なって各
測定を続け冷却開始から150秒後にレンズ中心部の温度
が130.6℃に達し、この時レンズ表面温度126.5℃、金型
温度126.2℃であった。
上記第2実施例による成形レンズの表面精度はニュー
トン縞本数でR1面4本、R2面2−3本となった。
尚該レンズ表面測定はZYGO干渉計で行なった。
本発明者は前記第1・第2の実施例の結果を踏まえ更
に冷却水の流量を減らし前記第5図のレンズ表面が熱変
形温度に達したときにレンズ中心部の温度との温度差を
僅少にするべく流量減少コントロールして成形してレン
ズ表面精度を測定したところニュートン縞本数は大きな
変化は無く、幾度かの条件設定の変更の結果、当該の樹
脂では成形レンズ表面が熱変形温度の130℃に達したと
きにレンズ中心部の温度とレンズ表面温度の温度差が10
℃以内の条件であればレンズ表面精度の低下が生じない
ことが分かった。
[発明の効果] 以上のように本発明によれば射出後の冷却工程は前記
レンズの表面温度を前記ガラス転移温度の近傍の温度ま
で冷却速度を高めて冷却する。
更に、前記第1次冷却工程に引き続いて前記金型を冷
却し、前記成形レンズ表面の温度がプラスチック材料の
熱変形温度に達した時点において、前記成形プラスチッ
クレンズの中心部の温度がガラス転移点以下で、かつ、
熱変形温度以上の温度になるように冷却することにより
冷却後のレンズ表面精度を損なわないレンズを得ること
ができた。
また、本発明においては前記第1次冷却工程の冷却
と、該1次冷却に引き続く2次冷却の工程を経ることに
より成形されたレンズの取り出しまでの時間を短縮する
ことができた。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明による成形レンズの形状を示す図。 第2図は本発明の実施例で用いた金型装置を示す図。 第3図は第1実施例による温度曲線図。 第4図A・第4図B・第4図Cは本発明で用いた温度解
析に採用した金型のモデルブロックを示す図。 第5図は第2実施例による温度曲線図。 P1・P4……成形レンズの表面温度を示す線図 P2・P5……成形レンズのレンズ中心温度を示す線図 P3・P6……金型のキャビティ近傍に埋設した温度センサ
ーが示す温度線図

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の工程を含むことを特徴とするプラスチ
    ックレンズの成形方法。 (a)前記プラスチックレンズを成形する金型をプラス
    チックのガラス転移温度以上の温度に加熱する工程と、 (b)前記金型のキャビティ内に樹脂の流動可能温度以
    上に加熱したプラスチック溶融樹脂を注入する射出工程
    と、 (c)前記金型に取り付けた冷却手段を作動させて前記
    キャビティ内の成形プラスチックレンズを冷却する第1
    冷却工程、 前記第1冷却工程は前記レンズの表面温度が前記ガラス
    転移温度の近傍の温度まで冷却速度を高めて冷却する、 (d)前記第1冷却工程に引き続いて前記金型を冷却し
    前記成形レンズ表面の温度がプラスチック材料の熱変形
    温度に達した時点において、前記成形プラスチックレン
    ズの中心部の温度がガラス転移点以下で、かつ、熱変形
    温度以上の温度になるように冷却する第2の冷却工程。
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