JP2533567Y2 - 建築用下地板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】建築物のモルタル塗装壁にタイル
壁等を施工するにあたり、その上に直かに吹き付け塗材
を塗着することのできる建築用下地板。

【０００２】

【従来技術およびその問題点】従来より、合板などの板
状基材上に防水層を配設し、更にその上にセメントなど
無機結合材と骨材よりなる混合物層を有する建築用下地
板は既に汎く知られている。

【０００３】更に形成される混合物層の絶対的防水許容
量を高めるために下地層を厚くし、尚且つ切断性、軽量
性を追及したものとして該混合物層を無機結合材と発泡
樹脂粒より構成したもの（特開昭５５−２００４９号）
が提案されている。

【０００４】しかしながら、上記建築用下地板は、
（１）製造工程において、有機質系発泡体の有する弾性
により複合物層自体の厚みが圧縮工程後硬化する前に復
元して下地板全体の厚み寸法の精度を欠き、また表面に
鮮明な凹凸模様を付与することも困難であった。（２）
外部からの水分や熱等により有機質系発泡体の安定性が
欠け、下地板の全体寸法精度が狂う。（３）上層部に位
置する有機質系発泡体は、紫外線、熱等により劣化しや
すく、耐久性ある外壁を構築するためには下地板表面に
は別途の保護膜を形成しなければならない。（４）上記
の場合有機質系発泡体との化学的反応を避けるため、保
護膜として有機溶剤系の塗料が発水剤等の使用はできな
い等、多くの問題を有していた。

【０００５】また、これらの問題を解決するために、有
機質系発泡体と無機質系結合材からなる下層とその上に
無機質系発泡体と有機質系系もしくは無機質系結合材か
らなる上層を形成して下地層を構成するという提案もな
されている。（実公平２−４７１２８号）

【０００６】ところが前記提案においても上層に無機質
系発泡体が混入されているため該上層は多孔質化し粗鬆
化してしまう。このため（１）層内の結合強度が低下し
表面にモルタル層が塗着されても、その界面においてモ
ルタル層に対し充分な支持力を発揮できず、モルタルを
容易に剥離してしまう。（２）表面に形成される凹凸形
状が容易に破損してしまう。（３）切断時下層の弾性反
発を受け破損しやすくなる。（４）釘打施工に際し表面
の崩れが起こる。また施工後の釘の保持力も弱いものと
なり、下地板のグラツキを生じ表面モルタル層クラック
の原因となる、等の問題点を未だ残していた。また、下
地板表面力控気に触れて貯蔵中硬化反応が進行してしま
い、モルタルを塗布するとき、モルタルとの接着が充分
でない問題点を残している。

【０００７】

【技術的手段】本考案は上記従来の建築用下地板の問題
点を解決するため次のような構成を創成したものであ
る。すなわち本考案の建築用下地板は、基板１の表面上
に合成樹脂あるいはラテックスまたは瀝性質物質からな
る防水被膜層２を形成し、該防水被膜層２上にセメント
と合成樹脂あるいはラテックスまたは瀝青質物質と骨材
からなり表面に凹凸形状を有する混合物層７が、セメン
トと弾性骨材の混合物からなる弾性セメント層５を介し
積層され、さらに混合物層７表面に容易に剥離可能な非
透水性被膜９を貼着したものである。

【０００８】本考案は上記構成を創成したことにより、
下地板を所要寸法に切断する時下地板に破損を起こすこ
となく、また、釘打施工時弾性セメント層５の緩衝性に
より下地層を破損することがない建築用下地板を得るこ
とができる。また下地層８の硬化反応が非透水性被膜９
により中断されるので、モルタルを塗布するとき、モル
タルと下地層８が良く接着することができる。

【０００９】

【実施例】以下本考案建築用下地板の実施例について説
明する。図１は本考案実施例による建築用下地板の非透
水性被膜９貼着する前の断面図を示すものである。

【００１０】基板１の表面には防水被膜層２が形成され
る。基板１としては、合板、繊維板、木削片板、セメン
ト板、石膏板、木毛セメント板、木片セメント板、ケイ
酸カルシウム板、パルプセメント板などの無機質あるい
は有機質または無機質有機質の混合材あるいは複合板か
らなる板状体が用いられる。

【００１１】つぎに基板１の表面に合成樹脂あるいはラ
テックスまたは瀝青質物質あるいはそれらのエマルジョ
ンをロールコーター、フローコーターなどの塗装装置に
て均一に塗布乾燥して防水被膜層２を形成する。

【００１２】防水被膜層２の合成樹脂としては酢酸ビニ
ル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂
などが、ラテックスとしてはアクリルニトリルブタジエ
ンゴム（ＮＢＲ）、ブタジエンアクリルゴム（ＭＢ
Ｒ）、スチレンブタジエンゴム（ＳＢＲ）などが、瀝青
質物質としてはタール、アスファルトなどが用いられ
る。

【００１３】防水被膜層２には必要に応じ、クレー、タ
ルク、炭酸カルシウムなどの増量材または分散剤などの
助剤を添加混合してもよい。防水被膜層２は基板表面が
ポーラスな板状体の場合、その表面を平滑面として表面
からの水分の透過を防止（防水性能の向上）し、透過水
分による吸湿膨張に伴う基板自体の反り、腐朽を防止す
る機能を果たす。

【００１４】また、防水被膜層２は基板１の材質によっ
ては水あるいはアルカリ可溶成分（あく）の溶出を防止
し、その上に塗布される混合物層３、軽量セメント層４
のあくによる硬化遅延また阻害の発生をなくする役目も
する。

【００１５】さらに防水被膜層２によって表面を平滑と
することで、表面がポーラスな場合、その表面凹部での
空隙（空気溜り）をなくし気泡の発生が防止され、その
上に塗布される混合物層と基板１との接着面積を実質的
に増大する効果が生ずる。

【００１６】次に該防水被膜層２上にセメント３と弾性
骨材４からなる弾性セメント層５が形成される。セメン
ト３としては、普通セメント、早強セメント、超早強セ
メント、中庸熱セメント、アルミナセメント、高炉セメ
ント、フライアッシュセメント、シリカセメント、急硬
セメントなどいずれでもよく特に限定されない。

【００１７】弾性骨材４としては、ポリエチレン、ポリ
スチレンなどの合成樹脂発泡ビーズ、合成樹脂発泡体や
発泡ゴム、合成ゴムの微細粒、ひる石、炭酸カルシウム
の発泡体等有機質系無機質系を問わず弾性を有する骨材
を用いることができる。

【００１８】これらセメントと弾性骨材が混合されるこ
とによって弾性セメント層５が形成される。弾性セメン
ト層５は反発弾性を有する層であるため該建築下地板内
外よりの衝撃を効果的に吸収することができ、モルタル
層の衝撃による割れを防ぐことができる。

【００１９】所要寸法に加工するための切断加工時にお
いては該弾性セメント層５は切断刃の回転に対し柔軟に
順うことができるため、切断刃を傷めることはない。

【００２０】釘打時においては打ち込まれる釘を、該弾
性セメント層５の有する弾性により周囲より圧迫し釘を
強固に固定支持することができる。

【００２１】次にセメントと合成樹脂あるいはラテック
スまたは瀝青質物質と骨材６からなる表面に凹凸形状を
有する混合物層７がロールコーターなど塗装装置にて表
面に凹凸模様を形成しながら積層される。

【００２２】セメントとしては弾性セメント層で用いた
ものと同様種々のセメントを用いることができる。合成
樹脂あるいはラテックスまたは瀝青質物質としては防水
被膜層２と同様に種々の種類のものを用いることができ
る。

【００２３】骨材６としては炭酸カルシウム、タルク、
クレー、フライアッシュ、焼却灰、スラグ、硅砂、等発
泡体以外の骨材を用いる。

【００２４】該混合物層７はセメントにより下層の弾性
セメント層５と表面に塗着されるモルタル層８の両者と
の馴染みがよく密着が良好である。これと相俟って、混
合物層７に混合される骨材は従来の如く発泡骨材ではな
く非発泡性の骨材を使用しているので、混合物層７のマ
クロ的な隠蔽性が高まりセメント、合成樹脂等のバイン
ダーにより層内の結合強度は非常に高いものとなり、表
面へのモルタル１０の塗着に対する支持力も大きくな
り、表面モルタル１０が容易が容易に剥落することはな
い。

【００２５】また、切断時においても下層の弾性セメン
ト層５の弾性反発を効果的に抑制し、下地層８全体の破
損を防止している。

【００２６】混合物層７中の合成樹脂あるいはラテック
スまたは瀝青質物質は混合物層７に適度に粘性を持たせ
ることと層内のマクロ的な隠蔽性を高めることができた
ことによって、表面からの釘の打ち込みによっても該釘
の打込み部及びその周辺部を破損させることなく円滑な
釘打ちが可能となる。これはまた下層の弾性セメント層
５の衝撃緩衝作用によるところでもある。

【００２７】打ち込まれた釘は上層の混合物層７による
剛的固定と、下層弾性セメント層５による圧迫固定によ
り安定した固定がなされることになり、該建築用下地板
を確実不動的に建築物躯体に固着することができる。こ
のため表面モルタル層１０においても、建築用下地板の
微動による表面クラックが生じることはない。

【００２８】こうして、モルタル密着性、層強度、切断
性、釘打施工性に優れた下地層を有する建築用下地板が
得られる。

【００２９】得られた建築用下地板の下地層は形成後直
に強制乾燥され該下地層中に含まれる水分が急速に飛散
除去される。この時下地層中のセメントの硬化反応は一
旦中断され、完全に完了していない状態となっている。
この状態において混合物層７上には非透水性被膜９が剥
離可能に積層される。このようにして下地層８は周囲雰
囲気の湿度や雨水等の水分から保護され、硬化反応の中
断状態を保つことができる。

【００３０】この非透水性被膜９を剥離可能に形成する
手段としては、下地層表面に再剥離型感圧接着剤を介し
ても非透水性フィルムを貼着し非透水性被膜としても、
また、下地層表面に非透水性はぎとり塗料を塗布乾燥さ
せることで非透水性被膜としてもよい。

【００３１】前者において再剥離型感圧接着剤とは、溶
剤、熱などのたすけを必要とせず、指圧程度のごく低い
圧力で他表面に接着され、またこれをはぎとる場合に
は、被着面に痕跡を残さず、容易にはぎとることができ
る接着剤を指し、具体的にはゴム系感圧接着剤、アクリ
ル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤、ポリビニル
エーテル系感圧接着剤等を例示することができる。この
時用いられる非透水性フィルムとしてはポリエチレンフ
ィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィ
ルムなどが揚げられる。この再剥離型感圧接着剤を介し
下地層表面に貼着された非透水性フィルムは、該建築用
下地板が建築現場に運ばれ、建築躯体に釘打施工された
後、モルタル塗着の行なわれる直前において下地層表面
から、接着剤ともども剥離されることが好ましい。

【００３２】後者において、はぎとり塗料とは、塗装後
適切な方法で乾燥させ、所期の目的を果たしたのち容易
に連続被膜状にはぎとることができるものをさし、加熱
溶融型のもの、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの
溶液型のもの、ゾル型のもの、ビニルブチラール樹脂、
酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂な
どのエマルジョンを用いた水分散型のもの等種々のもの
を用いることができる。

【００３３】下地層表面に塗装されたこれらはぎとり塗
料は、適宜手段によって乾燥され、下地層表面に非透水
被膜を形成することになる。そしてこの非透水性被膜
は、該建築用下地板が建築現場に運ばれ、建築躯体に釘
打施工され、モルタル塗着が行なわれる直前までこの下
地層表面に貼着しておき、モルタル塗着の直前におい
て、下地層表面より剥離されることが好ましい。

【００３４】そしてこのように硬化を完了していない下
地層を形成した建築用下地板は各建築現場に運ばれ該非
透水性被膜が剥離され、多量の水分を含有するモルタル
１０が塗布されることになる。するとモルタルに含まれ
ている水分は硬化の中断している下地層に供給され硬化
反応が再び開始されることになる。このため、セメント
混合物からなる下地層８とモルタルのセメントは互いに
接触した状態で各々が重合と水和生成物を形成しよりよ
い接着が得られる・

【００３５】また同時にこの非透水性被膜は建築下地用
板下地層中に有機質系発泡体が混合されたときにおこ
る。 ａ）外部からの水分や熱等による安定性の崩壊 ｂ）紫外線による劣化による耐久性の喪失といった問題
点を生じさせる外的要因から有機質系発泡体を保護する
ことができる。

【００３６】さらに、この非透水性被膜は建築用下地板
の下地層表面に形成されることで、該下地層表面をその
養生時、運搬時、施工時のあらゆる時における外的物理
的要因による破損、欠損より保護する効果も有する。こ
のため建築用下地板の下地層表面は所期のモルタルの安
定する塗着面を保つことができる。

【００３７】また該建築用下地板は下地層表面に形成さ
れた非透水性被膜上より釘打施工された場合には、釘打
込部分における釘と下地層との接触部分に生じる隙間を
完全にシールすることができ、従来のような釘打部分か
らの水分の浸透を防ぎ、釘の腐食を防止するとともに建
築躯体の耐朽性を高めることもできる。

【００３８】

【考案の効果】本考案建築用下地板は、基板１表面防水
被膜層２上にセメントと合成樹脂あるいはラテックスま
たは瀝青質物質と骨材からなる混合物層７が、セメント
３と弾性骨材４の混合物からなる弾性セメント層５を介
し積層し下地層を形成したので、次の効果を奏する。

【００３９】▲ａ▼切断時、非発泡性の骨材により層内
のマクロ的隠蔽度が高まり、層内強度が強まった混合物
層７が下層の弾性セメント層５の反発弾性を抑えるため
下地層に破損を来さず切断ができる。

【００４０】▲ｂ▼釘打施工時、表面よりの衝撃は下層
の弾性セメント層５により効果的に吸収され下地層の破
損を防ぐ。また、混合物層７による剛的固定、弾性セメ
ント層による圧迫固定により確実な釘支持が可能とな
り、下地板の確実不動な固着ができ、下地板の微動によ
る表面モルタルのクラックは防止される。また非透水性
被膜９を貼着しておくので貯蔵中下地層８の硬化反応は
中断される。そのため結果的にモルタルと下地層８との
接着力が高くなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案下地板の非透水性被膜９を貼着する前の
断面図、

【図２】本考案下地板の断面図、

【図３】モルタル施工時の断面図、

【符号の説明】

１ 基板 ２ 防水被膜層 ３ セメン卜 ４ 弾性骨材 ５ 弾性セメント層 ６ 骨材 ７ 混合物層 ８ 下地層 ９ 非透水性被膜 １０ モルタル層

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 基板１の表面上に防水被膜層２を形成
   し、該防水被膜層２上に無機結合材と骨材からなり、表
   面に凹凸形状を有する、混合物層７が無機結合材と弾性
   骨材の混合物からなる弾性セメント層５を介して積層さ
   れており、さらに混合物層７表面に容易に剥離可能な非
   透水性被膜９を貼着した建築用下地板。