JP2532356Y2 - 走行変速装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は小型のモアトラクター等
において駆動車輪を駆動する為に装備される走行変速装
置の構成に関する。

【０００２】

【従来技術】従来から同一出願人により、走行変速装置
に関する出願が成されているのである。特開昭６１−２
６１１２７号の如くである。この構成によると、ミッシ
ョンケースの上面の水平載置面に油圧モーターが設置さ
れ、下向き配置のモーター軸と平行の垂直ピニオン軸と
を該ケース内に収容して両軸間に減速無端帯を構成し、
垂直ピニオン軸の上方で水平に支持した車軸にベベルギ
アによって動力を伝達すべく構成している。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】油圧モーターは、伝動
効率を良くするため全体的に高回転の変速回転が出力さ
れるようになっており、それを車軸に至るまでの間に大
幅に減速することが要求されている。上記の走行変速装
置では、減速無端帯によって得られる減速比が所望に満
たない分を、デフリングギアの径を大きくして補うよう
にしている。従って垂直ピニオン軸の先端より車軸が大
きく離間し、よって、走行変速装置が上下方向並びに前
後方向で大型化してしまう欠点があった。本考案は、カ
ウンター軸の採用により、デフリングギアの径を大きく
せず走行変速装置における上下方向の寸法が大きくなる
のを抑えながらも、モーター軸の回転を車軸へ大幅に減
速伝動させるものである。また、該カウンター軸は車軸
と平行しているために２つのケース部材に対する組み込
みが車軸と同様、簡単に行えるようしたものである。ま
た、車軸を配置する接合面上にカウンター軸を配置し
た、従来の図７の例と比較して明らかなように、走行変
速装置を平面方向から見た時の、車軸とカウンター軸の
軸間距離を長さａだけ短縮させることができて、カウン
ター軸の採用に伴う走行変速装置の前後方向の寸法増加
を抑制して、全体的に走行変速装置のコンパクト化を図
るものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本考案の目的は以上の不
都合を解消するものであり、次に該目的を達成する為の
構成を説明する。請求項１においては、ＨＳＴ式変速装
置Ｈを一体に備えた走行変速装置であって、該ＨＳＴ式
変速装置Ｈのモーター軸４の回転を車軸６へ減速伝動す
るギア１６，２０を支承するカウンター軸７を前記車軸
６に対し平行させて設けると共に、該車軸６の軸芯が含
まれる水平な面を、ケースを構成するケース部材１，３
の接合面Ｐ−Ｐとし、該接合面Ｐ−Ｐにおいて２つのケ
ース部材１，３を接合分離 可能とし、前記接合面Ｐ−Ｐ
の位置からオフセットした位置に前記カウンター軸７を
平行に配置して、両ケース部材１，３同士の接合によ
り、ケース部材１から内部へ突出した半割り軸受部１
ｃ，１ｂと、ケース部材３から内部へ突出した半割り軸
受部３ｂ，３ａにより、カウンター軸７を挟持したもの
である。

【０００５】請求項２においては、前記半割り軸受部１
ｃ，１ｂをケース部材１の内部に構成し、半割り軸受部
３ｂ，３ａを、ケース部材３から前記接合面Ｐ−Ｐを越
えてケース部材１の中に延伸させるように形成したもの
である。

【０００６】

【作用】次に作用を説明する。請求項１によれば、カウ
ンター軸７の採用により、デフリングギアの径を大きく
せず走行変速装置における上下方向の寸法が大きくなる
のを抑えながらも、モーター軸４の回転を車軸へ大幅に
減速伝動させることができる。該カウンター軸７は車軸
６と平行しているために２つのケース部材１，３に対す
る組み込みが車軸６と同様、簡単に行えるようになる。
また、図７に示すように、車軸６を配置する接合面Ｐ−
Ｐ上にカウンター軸７’を配置した例と比較して明らか
なように、走行変速装置を平面方向から見た時の、車軸
６とカウンター軸７の軸間距離を長さａだけ短縮させる
ことができて、カウンター軸７の採用に伴う走行変速装
置の前後方向の寸法増加を抑制して、全体的に走行変速
装置のコンパクト化を図ることができる。

【０００７】請求項２によれば、水平カウンター軸７を
挟持するための構成が、ケース部材１，３の型成型時に
同時成形でき、加工が容易になって低コストにできるの
である。

【０００８】

【実施例】本考案の目的・構成は以上の如くであり、次
に添付の図面に示した実施例の構成を説明する。図１は
本考案の走行変速装置を付設したモアトラクターの側面
図、図２はケース部材３とＨＳＴ式変速装置Ｈを外した
状態の上面図、図３は同じく側面断面図、図４は同じく
後面断面図、図５は水平カウンター軸７の組立状態の斜
視図、図６は本実施例における車軸６と水平カウンター
軸７の位置関係を示す図面、図７は図６に対して車軸６
と水平カウンター軸７’の位置関係を比較する図面であ
る。

【０００９】図１において、前輪２３と後輪２４との間
の位置に、モア装置Ｒを配置している。また前輪２３と
後輪２４とで支持した機体フレーム上にエンジンＥを配
置し、該エンジンＥの垂直クランク軸にプーリー２５，
２７を固設している。プーリー２５よりＨＳＴ式変速装
置Ｈのポンプ軸上のプーリー２１へ、ベルトを巻回して
動力伝達し、またプーリー２７よりモア装置Ｒのプーリ
ー２６へベルトを巻回して動力伝達している。

【００１０】次に、図２，図３，図４より本考案の走行
変速装置の詳細な構成を説明する。ケース部材１はその
上部と下部にそれぞれケース部材３，下部蓋２を接合す
ることで３段に重合して全体のハウジングを構成してい
る。ケース部材１の上面にＨＳＴ式変速装置Ｈの油圧モ
ーターを載置する水平載置面１ｇが形成されると共にこ
れに隣接して開口部１ｈを形成し、該開口部１ｈを閉鎖
するケース部材３をケース部材１の上面に接合してい
る。前記ケース部材１，３の接合面には、デフギア装置
Ｄを配した車軸６が水平方向に沿わせて配置されてお
り、ケース部材１とケース部材３との間で回転自在に支
持されている。

【００１１】前記開口部１ｈとケース部材３との間に形
成される空間内には、前記車軸６と平行する水平カウン
ター軸７が配置され、後述する挟持手段によってケース
部材１とケース部材３との間で回転自在に支持されてい
る。またケース部材１と下部蓋２の間にモーター軸４と
カウンター軸１０と、垂直カウンター軸５を縦軸として
支持している。ＨＳＴ式変速装置Ｈは油圧ポンプと油圧
モーターより構成されており、油圧ポンプから上方に向
けてポンプ軸が突出されており、該ポンプ軸にプーリー
２１が固設されている。また該油圧ポンプの側面に斜板
角を調節する変速軸２２が突設されている。

【００１２】また、油圧モーターよりモーター軸４が、
水平載置面１ｇ内の開口部１ｉよりケース部材１内に向
けて突出されて、該モーター軸４にギア１１とブレーキ
ドラム１２が固設されている。該ブレーキドラム１２の
周囲にブレーキバンド１３が巻回されており、ブレーキ
レバー８を回動することにより、ブレーキバンド１３が
ブレーキドラム１２を緊締して走行ブレーキを効かせる
ものである。またギア１１がカウンター軸１０の上のギ
ア１４と噛合し、該ギア１４が垂直カウンター軸５の上
の平ギア１５と噛合し、よってモーター軸４と垂直カウ
ンター軸５との間に第１の減速伝動部を構成している。

【００１３】垂直カウンター軸５の平ギア１５の上にベ
ベルギア９が固設されており、該ベベルギア９が水平カ
ウンター軸７の上のベベルギア１６と、ケース部材１内
の隔壁１ａに隣接された開口１ｅを通して噛合してい
る。該垂直カウンター軸５の下部は下部蓋２に嵌入した
軸受で支持し、上部はケース部材１の隔壁１ａに開口し
た垂直軸受孔１ｄ内の軸受メタルにより支持されている
のである。

【００１４】そして、該隔壁１ａは、垂直カウンター軸
５を水平カウンター軸７の中途部に対して直交させて略
Ｔ字形を成すように配置するため、図５に示すようにケ
ース部材１の上下方向の略中央位置に形成されていて、
該隔壁１ａを一部切り欠くようにして前記開口１ｅが設
けられている。水平カウンター軸７の一方には平ギア２
０を固設し、他方には前記ベベルギア１６を固設してい
るのである。

【００１５】また、水平カウンター軸７は、図５に示す
如く隔壁１ａの上方に配置されるようケース部材１の内
部に形成された、略半円状の受け部を有した半割り軸受
部１ｃ，１ｂに載置されて、その上からケース部材３
の、略半円状の受け部を有した半割り軸受部３ｂ，３ａ
の部分を対向載置して、両者の間に軸受１８，１９を挟
持し、該軸受１８，１９により支持しているのである。
前記平ギア２０はデフギア装置Ｄのリングギア１７と噛
合し、よって水平カウンター軸７と車軸６との間に第二
の減速伝動部を構成しているのである。

【００１６】油圧モーターのモーター軸４の回転は、モ
ーター軸４とカウンター軸１０の間で減速され、次にカ
ウンター軸１０と垂直カウンター軸５の間で減速され、
垂直カウンター軸と水平カウンター軸７の間で減速され
ながら、回転方向を変更されて、水平カウンター軸７と
車軸６の間で再度減速されているのである。

【００１７】本考案の実施例では、特に、ケース部材１
の該隔壁１ａを、ＨＳＴ式変速装置Ｈの水平載置面１ｇ
よりは上方に上げて、下部蓋２との間に空間を構成し、
該部分に垂直カウンター軸５を垂直方向に配置して軸受
支持しベベルギア９と平ギア１５を配置したものであ
る。

【００１８】また、本考案の実施例では図６に示すよう
に車軸６は、ケース部材１と蓋体の間の接合面Ｐ−Ｐ上
に配置し、水平カウンター軸７を該接合面Ｐ−Ｐ上では
なく、それよりオフセットした位置に配置する為に、水
平カウンター軸７をケース部材１の幅内に嵌挿し、該状
態で軸受支持部を構成すべく、半割り軸受部１ｃ，１ｂ
をケース部材１の側の隔壁１ａの側方から突出し、また
ケース部材３の側から半割り軸受部３ａ，３ｂを、接合
面Ｐ−Ｐを越えてケース部材１の中に延伸させるよう突
出したものである。

【００１９】図７は図６に対する比較例であり、車軸６
を配置する水平な接合面Ｐ−Ｐ上に水平カウンター軸
７’も配置した例を示すものである。この配置において
平面方向から見た時の、車軸６と水平カウンター軸７’
との軸間距離に対して、前記した図６の配置の方が軸間
距離を長さａだけ短縮させることができて、走行変速装
置の前後方向でのコンパクト化に寄与することができる
のである。

【００２０】

【考案の効果】本発明は以上の如く構成したので、次の
ような効果を奏するのである。請求項１によれば、カウ
ンター軸７の採用により、デフリングギアの径を大きく
せず走行変速装置における上下方向の寸法が大きくなる
のを抑えながらも、モーター軸４の回転を車軸へ大幅に
減速伝動させることができる。また、該カウンター軸７
は車軸６と平行しているために２つのケース部材１，３
に対する組み込みが車軸６と同様、簡単に行えるように
なる。また、車軸６を配置する接合面Ｐ−Ｐ上にカウン
ター軸７’を配置した図７の例と比較して明らかなよう
に、走行変速装置を平面方向から見た時の、車軸６とカ
ウンター軸７の軸間距離を長さａだけ短縮させることが
できて、カウンター軸７の採用に伴う走行変速装置の前
後方向の寸法増加を抑制して、全体的に走行変速装置の
コンパクト化を図ることができる。

【００２１】請求項２によれば、水平カウンター軸７を
挟持するための構成が、ケース部材１，３の型成型時に
同時成形でき、加工が容易になって低コストにできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の走行変速装置を付設したモアトラクタ
ーの側面図。

【図２】ケース部材３とＨＳＴ式変速装置Ｈを外した状
態の上面図。

【図３】同じく側面断面図。

【図４】同じく後面断面図。

【図５】水平カウンター軸７の組立状態の斜視図。

【図６】本実施例における車軸６と水平カウンター軸７
の位置関係を示す図面。

【図７】図６に対して車軸６と水平カウンター軸７’の
位置関係を比較する図面。

【符号の説明】

１ ケース部材 １ｃ，１ｂ 半割軸受部 １ｇ 水平載置面 １ｈ 開口部 ３ ケース部材 ３ｂ，３ａ 半割り軸受部 ４ モーター軸 ５ 垂直カウンター軸 ６ 車軸 ７ 水平カウンター軸 ９，１６ ベベルギア ２０ 平ギア

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ＨＳＴ式変速装置Ｈを一体に備えた走行
   変速装置であって、該ＨＳＴ式変速装置Ｈのモーター軸
   ４の回転を車軸６へ減速伝動するギア１６，２０を支承
   するカウンター軸７を前記車軸６に対し平行させて設け
   ると共に、該車軸６の軸芯が含まれる水平な面を、ケー
   スを構成するケース部材１，３の接合面Ｐ−Ｐとし、該
   接合面Ｐ−Ｐにおいて２つのケース部材１，３を接合分
   離可能とし、前記接合面Ｐ−Ｐの位置からオフセットし
   た位置に前記カウンター軸７を平行に配置して、両ケー
   ス部材１，３同士の接合により、ケース部材１から内部
   へ突出した半割り軸受部１ｃ，１ｂと、ケース部材３か
   ら内部へ突出した半割り軸受部３ｂ，３ａにより、カウ
   ンター軸７を挟持したことを特徴とする走行変速装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載の半割り軸受部１ｃ，１ｂ
   をケース部材１の内部に構成し、半割り軸受部３ｂ，３
   ａを、ケース部材３から前記接合面Ｐ−Ｐを越えてケー
   ス部材１の中に延伸させるように形成したことを特徴と
   する走行変速装置。