JP2529843B2 - 9Cr−1Mo鋼のサブマ−ジア−ク溶接方法 - Google Patents

9Cr−1Mo鋼のサブマ−ジア−ク溶接方法

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JP2529843B2 JP62053716A JP5371687A JP2529843B2 JP 2529843 B2 JP2529843 B2 JP 2529843B2 JP 62053716 A JP62053716 A JP 62053716A JP 5371687 A JP5371687 A JP 5371687A JP 2529843 B2 JP2529843 B2 JP 2529843B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は火力発電、原子力発電のボイラー等に使用さ
れる9Cr−1Mo鋼の溶接に用いるサブマージアーク溶接法
の改良に関し、更に詳しくは特定成分のワイヤ、フラッ
クスを組み合わせる事により耐割れ性、靭性、高温強度
特性、ビード形成に優れた溶接金属を生成するサブマー
ジアーク溶接法に関するものである。
(従来の技術) 近年、火力発電所の大型化に伴い、ボイラーが高温、
高圧下で使用されるようになってきた。
従来、9Cr−Mo系鋼のサブマージアーク溶接法におい
ては、高温強度、耐酸化性、靭性の観点から鋼種に応じ
た共金系溶接材料が選択され、例えば9Cr−1Mo、9Cr−1
Mo−Nb−Vあるいは9Cr−2Mo−Nb−V系鋼ワイヤと溶融
形又は焼成形フラックスとを組み合わせて用いている。
例えば、特開昭59−82189号公報には特定量のC、S
i、Mn、Cr、Mo、Niを含むワイヤと組み合わせるフラッ
クスとしてCaO、SiO2、Al2O3、B2O3等からなるサブマー
ジアーク溶接用フラックスが、特開昭59−274113号公報
には特定量のC、Si、Mn、Cr、Mo、Ni、Nb、Vを含むワ
イヤとSiO2、CaF2、CaO、Al2O3、MgO等からなるサブマ
ージアーク溶接用フラックスとが、特開昭60−231591号
公報にはCr、Mo、N、Ni、REMの特定量を含有するワイ
ヤとCaCO3、CaF2、CaO、MgO、SiO2、Al2O3等からなるサ
ブマージアーク溶接用フラックスとを組み合わせて行な
うサブマージアーク溶接法が開示されている。又、特開
昭61−1497号公報には特定量のTi、REM、C、Cr、Mo、N
bを含有する溶接材料を用いて溶接金属中のO、N、S
i、Mnの量を特性したサブマージアーク溶接法が開示さ
れている。
ところが、以上のような溶接材料あるいは溶接法は高
温強度、耐酸化性、靭性等の基本特性あるいは耐割れ性
の観点から種々検討されたものであるが、SiおよびOに
起因して粒界に発生する微小な割れ防止の観点からは充
分に検討されたものではなく、満足できるものではな
い。即ち、9Cr−1Mo系鋼ワイヤを用いた溶接において
は、マルテンサイト+フェライトの混合組織又はマルテ
ンサイト単一組織の溶接金属が生成されるが、この場合
ワイヤ又はフラックス中に脱酸剤として添加されるSi、
あるいはスラグ剤のSiO2から還元されたSiが濃縮し、Mo
およびNiとの間に低融点共晶物を生成しやすく、溶接金
属中の酸素がMoO3、NiOあるいはSiO2等の酸化物として
析出し、割れの原因となる事がしばしばであり、このよ
うな割れを防止するにはSiO2およびSiの有害成分のワイ
ヤあるいはフラックスへの添加量を極力制限する。また
上記酸化物を形成するOも有害であり、割れ防止にはこ
れらの低減が極めて重要であるが、このような観点から
は従来の溶接材料はいずれも満足しうるものではない。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は9Cr−1Mo鋼ワイヤを用いたマルテンサイト+
フェライト混合組織あるいはマルテンサイト単一組織溶
接金属の粒界に発生しやすい割れを完全に防止するとと
もに、優れた高温強度および靭性を得る事の出来る9Cr
−1Mo鋼のサブマージアーク溶接方法の提供を目的とす
るものである。
(問題点を解決するための手段) 本発明の要旨とするところは、C:0.01〜0.15wt%、M
n:0.4〜2.5wt%、Cr:8.0〜11.0wt%、Mo:0.5〜1.2wt
%、Ni:0.05〜1.3wt%、V:0.03〜0.30wt%、Nb:0.02〜
0.12wt%、Al:0.005〜1.5wt%、N:0.004〜0.100wt%を
含有し、かつSi:0.05wt%以下、O:0.01wt%以下に限定
したワイヤと、CaF2:25〜70wt%、CaO、MgOの1種また
は2種:8〜30wt%、Al2O3、ZrO2の1種または2種:2〜3
5wt%、Al:0.5〜7wt%を含有し、かつSiO2:5wt%以下に
限定し、Siを実質的に含有しない溶接フラックスとを組
み合わせて行う事を特徴とする9Cr−1Mo鋼のサブマージ
アーク溶接方法である。
(作用) C、Mn、Cr、Mo、Ni、V、NbおよびNは9Cr−1Mo鋼用
ワイヤとして高温強度および靭性の基本特性を具備する
ために必須な成分であり、又Si、Al、Oについては本発
明の目的とする粒界割れ防止に非常に重要な要件となる
ものである。
まず、ワイヤに添加する成分について以下に順次説明
する。
C:0.01〜0.15wt% Cは強度保持の観点から必要であるが、耐割れ性の点
から上限を0.15wt%とした。即ち、9Cr−1Mo鋼の溶接金
属において、Cは焼入性が高く、溶接部が著しく硬化
し、低温割れ発生の原因となる。従って、溶接を完全に
行うためにはかなり高温の予熱を必要とし、溶接作業能
率を著しく低下させる。C量を0.01wt%未満にすると強
度の確保が困難になるので、下限を0.01wt%とした。
Mn:0.4〜2.5wt% Mnは脱酸のためのみでなく、強度保持上も必須の成分
である。0.4wt%未満では脱酸効果が期待できず、下限
を0.4wt%とした。又、上限を2.5wt%としたのは、これ
を超すと靭性が低下するからである。
Cr:8.0〜11.0wt% Crは9Cr−1Mo鋼の基本成分で耐酸化性を付与する元素
であるが、その他に本発明ではM23C6、M6Cの構成元素と
して微細に析出し、より高温強度特性を向上させるの
で、下限はM23C6の析出限である8.0wt%とし、11%を超
すと溶接金属にフェライト相が生じ、靭性、強度が低下
するので上限は11%とした。
Mo:0.5〜1.2wt% Moは固溶体強化により高温強度を顕著に高める元素で
あるが、0.5wt%未満ではその効果は期待できないの
で、下限を0.5wt%とした。1.2wt%を超えると粗大なフ
ェライト相が生じ、靭性を劣化させるので上限を1.2wt
%とした。
Ni:0.05〜1.3wt% Niは使用中の脆化軽減に有効な元素であり、高温高圧
下で長時間使用される溶接材料の用途に対しては必須な
元素である。0.05wt%未満ではその効果は得られず、1.
3wt%を超えると高温強度および耐割れ性を劣化させる
ので上限を1.3wt%とした。
V:0.03〜0.30wt% Vは高温強度を著しく高める元素であり、V4C3として
析出する他に、M23C6、M6Cの一部に入り、結晶粒の粗大
化抑制に効果を示すが、0.03wt%未満ではその効果が得
られない。0.30wt%を超えるとかえって強度を低下させ
るので上限を0.30wt%とした。
Nb:0.02〜0.12wt% NbはNbCの析出によって高温強度を高め、後続する微
細な析出物であるM23C6、M6C等の析出状態をコントロー
ルする作用があるため、高温長時間側のクリープ破断強
度向上に効果がある。しかし、0.02wt%未満ではその効
果がなく、0.12wt%を超すと析出物の凝集粗大化を招
き、強度を低下させるため、下限を0.02wt%、上限を0.
12wt%とした。
Al:0.005〜1.5wt% Alは優れた脱酸作用を示す元素であり、溶接金属中の
酸素を著しく低減し、粒界割れ防止に極めて有効であ
る。0.005wt%未満ではその効果は得られず、1.5wt%を
超えると熱間鍛造性が劣化し、ワイヤの製造が困難にな
るため、ワイヤ中のAl含有量は0.005〜0.15wt%である
事が必要である。
Si:0.05wt%以下 溶接金属中のSiを0.70wt%以下迄低減するためには、
ワイヤ中のSi含有量を0.05wt%以下にする事が必要であ
る。即ち、溶接金属中のSiはフラックス中のSiおよびSi
O2からも移行する。本発明においては後述の如く、フラ
ックス中にはSiを実質的に添加せず、又SiO2に関しては
フラックス全体に対し5wt%以下に制限する。このSiO2
により溶接金属中のSiは0.65wt%程度迄成り得るもので
あり、又ワイヤ中のSiは60〜90%は溶接金属中に移行す
る。従って、ワイヤ中のSi含有量は0.05wt%以下に制限
する事が必要である。
O:0.01wt%以下 ワイヤ中のO含有量が0.01wt%を超えると、靭性を低
下させる他に粒界割れを生じさせる。
以上が本発明で特に定めるワイヤ成分および含有量で
あるが、この他にP、S等は不可避不純物としての量が
含まれる。
本発明におけるワイヤは以上述べた如く、9Cr−1Mo系
鋼ワイヤに於いて、Alを適量添加し、SiおよびOの含有
量を限定することで溶接金属の粒界に発生する割れ防止
を行うものである。
ところで、本発明に用いるフラックスは上記ワイヤと
組合わせて粒界割れ防止を確実にし、かつすぐれた機械
的性質およびビード形状が得られるものであり、そのた
めにCaF2、CaO及び/又はMgO、Al2O3及び/又はZrO2、S
iO2、Alの含有量について特定する事が必要である。
以下に各成分の添加理由について詳述する。
CaF2:25〜70wt% CaF2はスラグの塩基度を上げ、溶接金属の酸素量を著
しく低減するもので、本発明の如く低酸素溶接金属を生
成し、粒界割れを防止するためのフラックス成分として
不可欠のものである。さらに、CaF2はフラックスの溶融
点を低下させ、良好なビード形状を得ることが判明し
た。CaF2のフラックス全体に対する添加量が25wt%未満
ではその効果がなく、又70wt%超では流動性が過大とな
り、ビード止端部が不安定でかえってビード外観が劣化
する。
CaO及び/又はMgO:8〜30wt% CaO及びMgOはいずれも強塩基性成分でCaF2と共に溶接
金属の酸素量の低減に有効である。さらに、CaO、MgOは
耐火性の大きい成分であり、融点の低いCaF2を多量に含
有するフラックスの溶融特性を調整し、ビード形状を整
えるのに有効である。このような効果はCaO及び/又はM
gOが8wt%未満では得られず、又30wt%を超えるとフラ
ックスの溶融点が上昇し、溶け難くなるためアンダーカ
ット等の欠陥が発生しやすくなる。
Al2O3及び/又はZrO2:2〜35wt% Al2O3およびZrO2も又溶融点が高く、溶融スラグの流
動性を調整し、ビード形状を整えるのに有効である。こ
のようなAl2O3およびZrO2の効果は多層盛溶接に用いる
ときに重要であり、フラックスの基本成分がCaF2−CaO
−MgO系のみではビードどうしの重ね部がスムーズでな
く凹凸が生じるが、Al2O3及び/又はZrO2の添加により
ビードどうしのなじみが良好となり、スラグイン、アン
ダーカット等の欠陥が生成されない。Al2O3及び/又はZ
rO2が2wt%未満ではこのような効果が得られず、35wt%
を超えるとスラグが溶接金属中に巻き込まれやすく、ア
ンダーカットが生じやすくなる。
SiO2:5wt%以下 SiO2はスラグの粘性を調整し、ビード外観を改善する
のに有効な成分であるが、一方SiO2はアーク雰囲気中で
還元され、溶接金属のSiおよび酸素を増大させ、粒界割
れを発生させる。従って、ワイヤからのSiの移行も考え
ると、本発明におけるフラックスにおいてはフラックス
全体に対し5wt%以下に限定する事が必要である。焼成
型フラックスにおいては造粒時に固着剤として水ガラス
を用いるが、この中に多量のSiO2が含有されており、通
常のフラックスにおいては3〜4wt%のSiO2が混入して
おり、更に粉末原料中に不可避不純物として通常のフラ
ックス中に1wt%程度のSiO2が含有されている。従っ
て、本発明のフラックスにおいて粉末原料としてSiO2
は実質的に用いない。
Si: 本発明は、粒界割れ防止の観点から溶接金属中のSiを
極力少なくするものであり、脱酸剤としてのSiは実質的
に用いない。脱酸剤の機能は殆どAlによって達成する。
Al:0.5〜7.0wt% Alは前述の如く粒界割れ防止の観点から必須な成分で
あり、ワイヤからと共にフラックスからも添加する事に
より、溶接金属中のAl含有量を安定化する。又、フラッ
クスからのAlの添加は、ブローホール、ポックマーク等
のガス欠陥を防止するのに重要であり、このような効果
はワイヤからの添加のみでは得られ難い。フラックスへ
のAlの添加量は組み合わせるワイヤのAl含有量との関係
で選択し得るが、フラックス全体に対し0.5〜7wt%が良
好で、0.5wt%未満では溶接金属中にガス欠陥が発生し
易く、又7wt%を超えるとスラグの剥離性が劣化し、ビ
ード欠陥も損なわれるので、下限を0.5wt%、上限を7wt
%とした。
以上、本発明におけるフラックスの必須成分について
説明したが、これら成分の添加原料は単独物質と共に上
記成分を含有する化合物、鉱石あるいは溶融形フラック
スで添加する事が出来る。即ち、用いる原料としては、
CaF2:蛍石、溶融形フラックス等、CaO:炭酸石灰、溶融
形フラックス等、MgO:マグネシアクリンカー、スピネ
ル、溶融形フラックス等、Al2O3:アルミナ、スピネル、
溶融形フラックス等、Al:金属Al、Fe−Al等である。
以下に本発明溶接方法の効果を実施例により説明す
る。
(実施例) まず、第1表に示す組成の鋼を真空溶解炉にて作製
し、鍛造、圧延および線引を行って4.0mmφのワイヤを
作製した。第1表に示したワイヤのうちW1〜W8は本発明
に用いたワイヤ、W9〜W15は比較例に用いたワイヤであ
る。
次に第2表に示す組成のサブマージアーク溶接用フラ
ックスを作製した。この場合、原料として通常の溶接フ
ラックス原料として用いられる鉱石粉合成物およびアル
ミナセメントを用いた。フラックスはいずれも固着剤と
して水ガラスを用いて造粒し、500℃×1hrの条件で焼成
した焼成型フラックスである。なお、第2表のフラック
スのうちF1〜F5は本発明法に用いたフラックス、F6〜F1
1は比較例に用いたものである。
以上のようなワイヤおよびフラックスを用い、第3表
に示す鋼板および第4表に示す溶接条件および第1図に
示す積層要領により、20種のサブマージアーク溶接を実
施した。溶接長は2mである。
第5表に実施した溶接におけるフラックスおよびワイ
ヤの組み合わせおよび溶接部の確性試験結果を示す。
溶接部の確性は、まずビード外観を観察した後、740
℃×2hrの後熱処理を行ない、X線透過試験(JIS Z
3104による)で割れの有無を調査した。その溶接金属よ
り高温引張試験片(JIS Z 0567、径:6mmφ)および
衝撃試験片(JIS Z 2202 4号)を採取し、各々の
試験を行なった。高温引張試験は500℃、衝撃試験は0
℃で行なった。
以上の溶接部の確性結果を第5表(右欄)に示す。
本発明例No.1〜No.7は優れた溶接部が得られたが、N
o.8〜No.20は第5表にその個々の理由について示した如
く、ワイヤ中のC、Cr、Mo、Ni、V、Nb、Al、N、Si含
有量の不適正、さらにフラックス中のCaF2、CaO+MgO、
SiO2、Al2O3+ZrO2およびAl添加量の不適正、フラック
スへのSiの添加によりビード形状不良、割れの発生、機
械的性質の劣化の問題が発生した。
(発明の効果) 以上述べた如く、本発明は9Cr−1Mo鋼のサブマージア
ーク溶接において割れが発生せず、かつ優れた高温強
度、衝撃値等の機械的性質の溶接部が得られると共に、
ビード形状およびX線性能も充分満足し得る溶接法であ
る。各種発電ボイラ、圧力容器等に使用される9Cr−1Mo
鋼を潜弧溶接する場合に、本発明により溶接継手の信頼
性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例において用いた開先形状および積層要領
を示す断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−231591(JP,A) 特開 昭61−23596(JP,A) 特開 昭61−232089(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.01〜0.15wt%、 Mn :0.4〜2.5wt%、 Cr :8.0〜11.0wt%、 Mo :0.5〜1.2wt%、 Ni :0.05〜1.3wt%、 V :0.03〜0.30wt%、 Nb :0.02〜0.12wt%、 Al :0.005〜1.5wt%、 N :0.004〜0.100wt% を含有し、かつ Si :0.05wt%以下、 O :0.01wt%以下 に限定したワイヤと、 CaF2:25〜70wt%、 CaO、MgOの1種または2種 :8〜30wt%、 Al2O3、ZrO2の1種または2種 :2〜35wt%、 Al :0.5〜7wt% を含有し、かつ SiO2:5wt%以下 に限定し、Siを実質的に含有しない溶接フラックスとを
    組み合わせて行う事を特徴とする9Cr−1Mo鋼のサブマー
    ジアーク溶接方法。
JP62053716A 1987-03-09 1987-03-09 9Cr−1Mo鋼のサブマ−ジア−ク溶接方法 Expired - Lifetime JP2529843B2 (ja)

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