JP2526061Y2 - リニアガイド装置の防塵装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は工作機械，産業機械などに用いられるリニ
アガイド装置の防塵装置に係り、特にその防塵シールで
あるサイドシールの取付け構造の改良に関する。

〔従来の技術〕

一般にリニアガイド装置は、第５図に示すように、軸
方向に長く延びる案内レール１と、その上に移動可能に
跨架した横断面形状がほぼコ字状のスライダ２とを備え
ている。案内レール１の両側面1bには軸方向にボール転
動溝３が形成されている。スライダ２のスライダ本体2A
には、その両袖部４の内側面に、第６図に示すように前
記ボール転動溝３に対向するボール転動溝５がそれぞれ
形成されている。そして、これらの向き合った両ボール
転動溝3,5の間には多数のボール６が転動自在に装填さ
れ、そのボール６の転動を介して、スライダ２が案内レ
ール１上を軸方向に移動するようになっている。この移
動につれて、案内レール１とスライダ２との間に介在す
るボール６は転動してスライダ２のスライダ本体2Aの端
部に移動する。スライダ２は軸方向に継続して移動させ
ていくためには、これらのボールを循環させる必要があ
る。そこで、スライダ本体2Aの袖部４内に更に軸方向に
貫通するボール戻り通路としての貫通孔７を形成すると
ともに、スライダ本体2Aの前後両端に横断面ほぼコ字状
のエンドキャップ2Bを位置決めして取りつけ、これに上
記ボール戻り通路７とボール転動溝3,5とを連通させる
Ｕ字形の湾曲路８を形成することによりエンドレスのボ
ール循環路が形成されている。

ところで、上記の案内レール１と、その上に跨架され
て移動するスライダ２との間に介在する隙間にゴミ，ほ
こり，切粉等の異物が入り込みボール転動溝面等に付着
すると、ボール６の円滑な転動が妨げられる。そこで、
スライダ２の前後両端の隙間からの異物の侵入を防ぐサ
イドシール10が、エンドキャップ2Bの外端面2cに小ねじ
ｎで取付けられるのが通例である。

その従来のサイドシール10は、第７図に示すように、
エンドキャップ2Bとほぼ同様のコ字状正面形状を有して
おり、鋼板にニトリルゴムをモールド成形することによ
り開口11の内縁にゴムシール部12が形成されている。ま
た、ゴムシール部12の外周には、エンドキャップ2Bに設
けてあるねじ挿通孔13に合わせて、取付け用の小ねじｎ
の挿通孔14が設けられると共に、エンドキャップ2Bに設
けてあるグリスニップル取付けねじ孔15に合わせて、グ
リスニップル取付け孔16が配設されている。また、両サ
イドには、裏面側に直角に折曲されたガイド板17が形成
されている。このガイド板17を、エンドキャップ2Bの側
面に設けられている段部18に当てて位置決めする。な
お、第５図中のｇはグリースニップルである。また、第
６図中のRGはリターンガイドであり、Ｈはスライダ２を
案内レール１から外したときのボール転動溝５内のボー
ル６の脱落を防止するためのワイヤ式の保持器である。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、このような従来のリニアガイド装置の
アンダーシールの防塵装置にあっては、取付け小ねじｎ
を共用してエンドキャップ2Bとサイドシール10とを一緒
にスライダ本体2Aに固定する構造のため、次のような問
題点が生じていた。

工場においてサイドシール10をスライダ２に取り付
ける作業が「二度手間」になり、作業能率が極めて低
い。

すなわち、製品リニアガイド装置を集荷する前に、サ
イドシール10を付けない状態で、スライダ２の案内レー
ル走行摩擦抵抗などの品質保証項目測定の検査を行う必
要がある。そのため、第８図，第９図に示すように、先
ずスライダ本体2Aにエンドキャップ2Bのみを小ねじｎで
固定する。こうして組立てられたスライダ２を案内レー
ルに組み付け、所定の検査を実施する。その後、小ねじ
ｎを全て一旦とり外す。その際、エンドキャップ2Bがス
ライダ本体2Aから分離しないように手などでしっかり固
定していなければならない。次に、手で固定したままの
エンドキャップ2Bにサイドシール10を重ね、再び小ねじ
ｎを締め付けてスライダ本体2Aにエンドキャップ2Bとサ
イドシール10を同時に固定するという、極めて面倒な工
程を要する。

サイドシール10が小ねじｎの挿通孔14,グリスニッ
プル取付け孔16,ガイド板17を有しているためゴム成型
金型や心金のプレス型が複雑で高価になる。

サイドシール10がエンドキャップ2Bと共にスライダ
本体2Aに不動に固定されるため、スライダ２が負荷荷重
により弾性変位すると、サイドシール10のシール面圧が
変動して過大になったりする。

サイドシール10を固定したスライダ２を案内レール
に組み付けたとき、サイドシール10と案内レール面との
接触状態が悪い場合は、小ねじｎを緩めてサイドシール
10の位置調整を行い、再び小ねじｎを締め直す工程を必
要とする。

そこで本考案は、上記従来の問題点に着目してなされ
たものであり、取付けねじを必要としない嵌め込み式で
あって取付け簡単、しかもシールの構造が単純で製造容
易であり、且つ案内レール面との接触状態が自動的に良
好に維持できる防塵装置を提供して、上記従来の問題点
を解決することを目的としている。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の目的を達成する本考案は、両側面に軸方向のボ
ール転動溝を有して長く延びる案内レールと、該案内レ
ール上に移動可能に跨架されたスライダとよりなり、該
スライダは前記案内レールのボール転動溝に対向するボ
ール転動溝を内側面に、及びこれに平行するボール戻り
通路としての貫通孔を肉厚内に有するスライダ本体と、
前記ボール戻り通路とボール転動溝とを連通させる湾曲
路を有してスライダ本体の端部に接合されたエンドキャ
ップと、前記ボール転動溝内に転動可能に挿入された多
数のボールとを備えてなるリニアガイド装置の防塵装置
であって、前記エンドキャップに取付けて前記スライダ
と前記案内レールとの間のすきまの前後の開口を封じる
コ字形のサイドシールを、前記エンドキャップの開口端
部に形成した凹溝に差し込んで装着するようにしたもの
である。

〔作用〕

サイドシールは、エンドキャップの開口端部に形成し
た凹溝に、エンドキャップ下方から差し込んでワンタッ
チで装着される。従来のように、エンドキャップ取付け
用のねじを外す必要はないから、検査及び組立作業の能
率が向上する。また、サイドシールとその取付け用凹溝
との間の嵌合を緩くすれば、シールリップが案内レール
の転動体転動溝に自然になじみ易くなり、溝のシールが
円滑にできる。一方、上記嵌合を固くすれば、サイドシ
ールはエンドキャップに固持され、シールリップと案内
レール面との間に僅かのすき間を保たせたいわゆるラビ
リンスシールとなる。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面を参照して説明する。な
お、従来と同一または相当部分には同一の符号を付して
ある。第１図は本考案の一実施例で、エンドキャップ2B
とサイドシール20とを下面側からみた分解斜視図であ
る。サイドシール20は、コ字状の鋼板製心金を合成ゴム
製の外被で包んで溶着して形成されている。コ字形の内
縁の両サイドには、案内レール１のボール転動溝３の形
状に合わせた形状を有する側面溝シール部21が突設され
ている。また、コ字形の内縁の上辺には、案内レール１
の上面1aに形成されている凹面1cの形状に合わせた形状
を有する上面溝シール部22が突設されている。これらの
シール部21,22は先端にシールリップＬを有している。
このサイドシール20の断面形状は、第２図，第３図に示
すようにほぼ台形で、内周縁が肉厚で外周縁が肉薄とさ
れている。

一方、エンドキャップ2Bは、合成樹脂の射出成型品、
又はアルミニウムのダイカスト成型品である。その肉厚
Ｔは、サイドシール20の厚みの分だけ従来品より厚くな
っている。そして、コ字形のエンドキャップ2Bの、外端
面2c側の開口内縁沿いに、サイドシール20の形状に合わ
せて、コ字状凹溝25が形成されている。

サイドシール20の装着は、第４図に示すように、スラ
イダ２を案内レール１に組み込んだままで行うことがで
きる。なお、第４図はスライダ２を組付けた案内レール
１の下方からの矢視図であり、図中の27はアンダーシー
ルである。このアンダーシール27は、スライダ本体2Aの
下端面にリベット28で固定されている。

すなわち、スライダ本体2Aにエンドキャップ2Bが取り
付けてあるスライダ２を、案内レール１の端部まで滑ら
せて、エンドキャップ2Bをレール端から外に突出させ
る。このとき、ボール６は保持器Ｈにより保持されてお
り、脱落することはない。次で、図のようにサイドシー
ル20を、エンドキャップ2Bのコ字状凹溝25に、下方から
差し込めばよい。

こうしてサイドシール20をエンドキャップ2Bにワンタ
ッチで装着した状態で、スライダ２を案内レール１に戻
せば、サイドシール20の上辺はエンドキャップ2Bと案内
レール１の上面1aとの間に挟まれる。これにより、サイ
ドシール20の脱落が防止される。

サイドシール20と、取付け用コ字状凹溝25との間の嵌
合を緩くなるように、予め設定しておけば、シールリッ
プＬがボール転動溝３をはじめとする案内レール１の被
シール面に自然になじみ易くなり、多少の寸法誤差があ
っても吸収して、シールが円滑にできる。その場合は、
サイドシール20の内縁側が端面にあるシールリップＬ
が、案内レール１の上面1a及び側面1bに軽く摺接して、
スライダ２の走行の伴いレール面を払拭する。

一方、サイドシール20と、取付け用コ字状凹溝25との
間の嵌合を固目にした場合は、サイドシール20はエンド
キャップ2Bに保持されて固定される。そのため、予めサ
イドシール20の内縁のサイズを大きめに形成しておけ
ば、シールリップＬと案内レール１の被シール表面との
間に僅かのすき間を保たせたいわゆるラビリンスシール
のタイプにすることもできる。この場合は、極めて微細
な塵埃は払拭の対象とせず、ボール６の転動に影響を及
ぼす程度の大きな異物の侵入のみ阻止する。サイドシー
ル20の摩耗は殆ど生じないから、サイドシール20の寿命
を延長させることができる利点と、シールの摺動抵抗が
低減される利点がある。

なお、上記実施例では、ボール転動溝５が片側２列有
するリニアガイドに適用した場合について説明したが、
その他のリニアガイドにも適用できることは勿論であ
る。

また、上記実施例では、エンドキャップ2Bに形成した
サイドシール装着用の凹溝25をコ字形としたが、エンド
キャップ開口の両側だけに凹溝を設けて上側は平らにし
たものでもよい。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案によれば、リニアガイド
装置におけるサイドシールを、エンドキャップの開口端
部に形成した凹溝に差し込んで装着するようにした。そ
のため、以下のような効果が得られる。

製品リニアガイド装置の品質保証項目測定の検査を
行う場合などでも、いちいちエンドキャップの小ねじを
付けたり外したりする必要はなく、作業能率が従来より
格段に向上する。

サイドシールは形状が単純であり、製造費用が低減
される。

サイドシールの嵌めあいを緩くすれば、スライダが
負荷荷重により弾性変位しても、サイドシールのシール
面圧が変動して過大になったりすることがない。

スライダを案内レールに組み付けたとき、サイドシ
ールが案内レール面に自然になじみ、シールリップが良
好に被シール面に接触するから、従来のように、小ねじ
を緩めてサイドシールの位置調整を行い、再び小ねじを
締め直すなどの面倒な工程を必要としない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示すスライダ２の下面側か
らみた分解斜視図、第２図は第１図のII−II線断面図、
第３図は第１図のIII-III線断面図、リニアガイドの斜
視図、第４図は第１図のサイドシールの取付け工程を説
明する斜視図、第５図は従来のリニアガイド装置の斜視
図、第６図は第５図のVI-VI線断面図、第７図，第８
図，第９図は、それぞれ従来のサイドシールの取付け作
業の手順を説明する斜視図である。 図中、１は案内レール、２はスライダ、2Aはスライダ本
体、2Bはエンドキャップ、３は（案内レールの）ボール
転動溝、５は（スライダの）ボール転動溝、６はボー
ル、10,20はサイドシール、21は側面溝シール部、22は
上面溝シール、25はコ字状凹溝である。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】両側面に軸方向のボール転動溝を有して長
   く延びる案内レールと、該案内レール上に移動可能に跨
   架されたスライダとよりなり、該スライダは前記案内レ
   ールのボール転動溝に対向するボール転動溝を内側面
   に、及びこれに平行するボール戻り通路としての貫通孔
   を肉厚内に有するスライダ本体と、前記ボール戻り通路
   とボール転動溝とを連通させる湾曲路を有してスライダ
   本体の端部に接合されたエンドキャップと、前記ボール
   転動溝内に転動可能に挿入された多数のボールとを備え
   てなるリニアガイド装置の防塵装置であって、 前記エンドキャップに取付けて前記スライダと前記案内
   レールとの間のすきまの前後の開口を封じるコ字形のサ
   イドシールを、前記エンドキャップの開口端部に形成し
   た凹溝に差し込んで装着するようにしたことを特徴とす
   るリニアガイド装置の防塵装置。