JP2524158B2 - 燃料噴射ポンプのガバナ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関に使用さ
れる燃料噴射ポンプのガバナ装置に関するものである。

（従来技術及びその問題点） 過給機付ディーゼルエンジンでは、急加速時には最大
出力位置に燃料噴射量を制御しており、低中速度域で排
気ターボ過給機のブースト圧が十分に上昇していない状
態においても、最大出力時に相当する噴射量に設定され
ているため、空気量に対して燃料過多になり、未燃焼成
分が黒煙（スス）の発生を招く。

この黒煙発生を防止するブーストコンペンセータが知
られているが、過給機のブースト圧に応じて燃料噴射量
を抑制するガバナおよびブースト圧をガバナへ導く配管
類が必要になり、構造が複雑である。

従来の過給機付ディーゼルエンジンでは、低中速度域
から加速する際の過度時において、黒煙の発生を抑制す
るためにガバナ装置で燃料噴射ポンプの噴射量を抑制す
る逆アングライヒ機構をテンションレバーに組込み、か
つ微調整可能にした技術は知られていない。

（発明の目的） 本発明は、回転速度に応じて燃料噴射量を制御する機
構をガバナ装置のテンションレバーに設け、かつエンジ
ンの個々の特性に合わせて微調整可能な機構を備えた燃
料噴射ポンプのガバナ装置を提供することを目的として
いる。

（発明の構成） （１） 技術的手段 本発明は、燃料噴射ポンプの燃料調量用のラックを、
ガバナウエイトに働く遠心力に応じて位置調整する燃料
噴射ポンプのガバナ装置において、ガバナウエイトに関
連して摺動するスラスタと前記ラックとの間にテンショ
ンレバー軸を設け、一端がガバナスプリングに繋がるテ
ンションレバーをテンションレバー軸に回動自在に設
け、前記スラスタより遠ざかるように伸びたテンション
レバーの他端部に、逆アングライヒレバー軸を設け、一
端部で前記ラックに繋がり、かつ他端部が前記スラスタ
に対向するように伸びたガバナレバーを設け、このガバ
ナレバーの一端部に向かって伸びる逆アングライヒレバ
ーの先端部の、前記テンションレバー軸よりガバナレバ
ーの一端部に近付いた位置に、ガバナレバーを軸支する
ガバナレバー軸を設け、テンションレバーにはガバナレ
バー軸を貫通させるガバナレバー軸の外径よりも一回り
大きな孔が設けてあり、ガバナレバー軸は前記孔内で揺
動可能となっており、ガバナレバーと逆アングライヒレ
バーとの間に、両レバー間の所定の隙間範囲内で作動す
る始動時増量用の始動スプリングを設け、逆アングライ
ヒレバーとテンションレバーとの間に、逆アングライヒ
ばねを、隙間を有するように縮設し、調整自在に設け
て、逆アングライヒ機構をすべてテンションレバーに組
み込んだことを特徴とする燃料噴射ポンプのガバナ装置
である。

（２） 作用 逆アングライヒレバーで燃料噴射量が過剰になること
を防止し、逆アングライヒばねに設けられた隙間又はテ
ンションレバーに設けられた隙間で、燃料抑制特性を調
整する。

（実施例） （１） 第１実施例 本発明を採用したガバナ装置を示す第１図で、10はガ
バナケースであり、このガバナケース10は燃料噴射ポン
プ12に隣接して設けられている。燃料噴射ポンプ12のラ
ック14は燃料噴射ポンプ12からガバナケース10側へ伸び
ており、ラック14を矢印Ａ方向に摺動させると燃料噴射
ポンプ12の燃料噴射量が増えるようになっている。

燃料噴射ポンプ12の下部にはポンプカム軸16が設けら
れており、ポンプカム軸16はガバナケース10内に伸びて
いる。ポンプカム軸16の先端部にはガバナウエイト18が
設けられており、ガバナウエイト18でスラスタ20（ガバ
ナスリーブ）を矢印Ｂ方向へ摺動させるようになってい
る。

スラスタ20に対向するようにガバナフォース受け22が
配置されており、ガバナフォース受け22はガバナレバー
24の下端部に固定されている。ガバナレバー24は縦方向
に伸びており、ガバナレバー24の中間部にはテンション
レバー軸26を通す孔28が開口している。また、ガバナレ
バー24は第２図に示すように、下半分が略コ字状に形成
されており、テンションレバー軸26の上方にガバナレバ
ー24に嵌合するガバナレバー軸29が架設されている。

ガバナレバー24の内方には逆アングライヒレバー30、
テンションレバー32が収容されており、逆アングライヒ
レバー30はガバナレバー軸29に嵌合し、テンションレバ
ー32にはガバナレバー軸29を通す孔34が形成されてい
る。また、逆アングライヒレバー30には前記テンション
レバー軸26を通す孔36が形成されており、テンションレ
バー32はブッシュ38を介してテンションレバー軸26に軸
支されている。ガバナレバー24と重なるように縦方向に
伸びる逆アングライヒレバー30、テンションレバー32の
下端部には逆アングライヒレバー軸40が貫通しており、
逆アングライヒレバー30とテンションレバー32は逆アン
グライヒレバー軸40を中心として回動自在である。

第１図に示すように、テンションレバー32は略倒立Ｌ
字状に形成されており、テンションレバー32の上端部は
軸42に連結している。軸42にはガバナスプリング44を介
してアーム46が連結している。48はストップレバーであ
る。

なお、ガバナレバー24とラックは連結部材25（第２
図、第３図）で連結しており、ガバナレバー24でラック
14を操作し、燃料噴射量の増減を制御するようになって
いる。

第１図中で、逆アングライヒレバー30の下端部には略
有底円筒状のスプリング受け50が設けられており、スプ
リング受け50とガバナフォース受け22の突起52との間に
は１の隙間の長さ範囲で働く始動スプリング54が介装
されている。更に、スプリング受け50に対向して調整機
構57が設けられており、調整機構57の本体55はテンショ
ンレバー32にセットナット56で位置調整自在に固定され
ている。本体55には逆アングライヒばね58と調整ボルト
60が内蔵されており、調整ボルト60と本体55との間には
l2の隙間が隔てられている。逆アングライヒばね58のば
ね定数は始動スプリング54より強く設定されている。な
お、ガバナレバー軸29と孔34との間にもＬの隙間が設け
られている。

前記ガバナケース10にはガバナレバー24に当接し、始
動時の燃料を制限する燃料制限ボルト62と、テンション
レバー32に圧接する燃料調整ボルト64とが調整自在に螺
合している。

次に作用を説明する。第１図の構造を簡略化した第３
図に示すエンジン始動時において、ガバナレバー24のガ
バナフォース受け22にはガバナウエイト18のガバナフォ
ースＳが殆んど働いていないので、ラック14に繋がるガ
バナレバー24は最大噴射位置にある。また、燃料調整ボ
ルト64はテンションレバー32を位置決めして最大燃料噴
射量を制限する。

この状態では、ラック目盛Ｒ−エンジン回転数Ｎのグ
ラフである第3a図に示すように、特性Ｘの区間ａ−ｂの
範囲にわたって燃料噴射量を制御する。

エンジンが始動して第3a図の点ｂ以上の回転数に達す
ると、第４図に示すように、ガバナフォースＳが増大し
て始動スプリング54を圧縮し、始動スプリング54のばね
力に抗して前記１（第１図）が零になるまでガバナレ
バー24が孔34を中心として右回り（燃料減少方向）に回
動し、ラック14を右方へ押す。やがて、ガバナフォース
受け22とスプリング受け50が圧接すると、第4a図の点ｃ
に達し、特性Ｘは従来の特性Xp（第3a図）と比較して燃
料減少方向に制御され、黒煙の発生を抑制する。

調整ボルト60と本体55（第１図）の間のl2分だけ逆ア
ングライヒばね58が圧縮されるまで、区間ｃ−ｄの範囲
にわたって、特性Ｘはラック目盛Ｒが一定の状態を維持
する。

点ｄで逆アングライヒばね58が圧縮され始めると、ガ
バナレバー24と逆アングライヒレバー30が逆アングライ
ヒばね58を介して一体になり、逆アングライヒレバー軸
40を中心として左回り（燃料増加方向）に回動する。こ
の状態では、第５図に示すようにガバナレバー24がラッ
ク14を燃料増加方向へ引張り、第5a図の区間ｄ−ｅの範
囲にわたって特性Ｘが上昇する。

点ｅで始動スプリング54および逆アングライヒばね58
のばね力と、ガバナスプリング44のばね力が釣り合う
と、ガバナレバー軸29と孔34との間のＬ（第１図）に対
応して区間ｅ−ｆにわたってＬが圧縮され終わるまで、
第5a図の特性Ｘは略ラック目盛りＲが一定になる。

点ｆでＬが圧縮され終わると、ガバナレバー24とテン
ションレバー32は一体になり、ガバナレバー軸29を中心
として右回り（燃料減少方向）へ回動し、特性Ｘは点ｆ
以降で減少する。

以上のように第１実施例のガバナ装置は、従来から知
られているブーストコンペンセーターと同様の特性Ｘを
機械式の構成で発揮し、例えば急加速時等に燃料過剰に
なる第3a図の特性Xpより燃料噴射量を減らして、黒煙の
発生を防止する。

第１図の調整ボルト60はセットナット56で位置調整自
在に本体55に設けられているので、l2はエンジンの要求
特性に応じて任意に調整自在である。

また、隙間１、l2、Ｌ、各ばねのばね定数を任意に
調整することでエンジン毎に異なる特性に調整し得る。

（２） 第２実施例 第６図で過給機付ディーゼルエンジンに限らず、全て
のオールスピードガバナを有するディーゼルエンジンに
適用し得るガバナ装置を説明する。

第６図中で、始動スプリング54の内方にはアイドルス
プリング70が配置されている。このアイドルスプリング
70は第７図に示すように、ガバナフォース受け22の突起
72に圧入されており、アイドルスプリング70とスプリン
グ受け50の底面74との間には隙間l3が隔てられている。

また、第６図で逆アングライヒレバー軸40とテンショ
ンレバー32との間には調整ブロック76（第7a図）が介装
されており、調整ブロック76とテンションレバー32の下
端部78をボルト80で固定してある。調整ブロック76と下
端部78の間にはシム82が介装されており、シム82で軸方
向の製造バラツキを調整し、ラック14に対するガバナウ
エイト18の作動域を微調整するようになっている。

以上の構成では、第８図に示すように、隙間l3が圧縮
され終わる区間ｃ′−ｄ′でアイドルスプリング70のば
ね力が働き、特性X1は特性Ｘ（第3a図）と比較して緩や
かに燃料噴射量が制御され、ディーゼルエンジンの運転
特性がよくなる。

（発明の効果） 以上説明したように本発明によるガバナ装置では、ガ
バナウエイト18に関連して摺動するスラスタ20と前記ラ
ック14との間にテンションレバー軸26を設け、一端がガ
バナスプリング44に繋がるテンションレバー32をテンシ
ョンレバー軸29に回動自在に設け、前記スラスタ20より
遠ざかるように伸びたテンションレバー32の他端部に、
逆アングライヒレバー軸40を設け、一端部で前記ラック
14に繋がり、かつ他端部が前記スラスタ20に対向するよ
うに伸びたガバナレバー24を設け、このガバナレバー24
の一端部に向かって伸びる逆アングライヒレバー30の先
端部の、前記テンションレバー軸26よりガバナレバー24
の一端部に近付いた位置に、ガバナレバー24を軸支する
ガバナレバー軸29を設け、テンションレバーにはガバナ
レバー軸を貫通させるガバナレバー軸の外径よりも一回
り大きな孔が設けてあり、ガバナレバー軸は前記孔内で
揺動可能となっており、ガバナレバー24と逆アングライ
ヒレバー30との間に、両レバー24、30間の所定の隙間
１の範囲内で作動する始動時増量用の始動スプリング54
を設け、逆アングライヒレバー30とテンションレバー32
との間に、逆アングライヒばね58を、隙間l2、Ｌを有す
るように調整自在に縮設したので、従来から知られてい
るブーストコンペンセーターと同様の特性Ｘを機械式の
構成で発揮し、逆アングライヒ機構を全てテンションレ
バー32に組み込んでいるため、ガバナフォースＳは常に
ガバナレバー軸29、逆アングライヒレバー軸40を中心と
して回動作用し、またガバナレバー軸29が孔34内でＬの
幅で揺動し、特に低速域で安定した調速性能を得ること
ができ、例えば急加速時等に燃料過剰になる第3a図の特
性Xpより燃料噴射量を減らすことができ、黒煙の発生を
防止できる。

【図面の簡単な説明】 第１図は第１実施例のガバナ装置を示す縦断正面図、第
２図は同じく縦断側面図、第３図は始動時の構造略図、
第3a図は始動時のラック目盛−エンジン回転数のグラ
フ、第４図は燃料制限時の構造略図、第4a図は燃料制限
時のラック目盛−エンジン回転数のグラフ、第５図は燃
料増加時の構造略図、第5a図は燃料増加時のラック目盛
−エンジン回転数のグラフ、第６図は第２実施例を示す
縦断正面図、第７図は第６図の要部拡大図、第7a図は調
整ブロックの斜視図、第８図は第２実施例のラック目盛
−エンジン回転数のグラフ、第９図は別の実施例を示す
縦断正面図である。10……ガバナケース、12……燃料噴
射ポンプ、14……ラック、24……ガバナレバー、26……
テンションレバー軸、30……逆アングライヒレバー、32
……テンションレバー、40……逆アングライヒレバー
軸、44……ガバナスプリング、54……始動スプリング、
57……調整機構、58……逆アングライヒばね、70……ア
イドルスプリング

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料噴射ポンプの燃料調量用のラックを、
   ガバナウエイトに働く遠心力に応じて位置調整する燃料
   噴射ポンプのガバナ装置において、ガバナウエイトに関
   連して摺動するスラスタと前記ラックとの間にテンショ
   ンレバー軸を設け、一端がガバナスプリングに繋がるテ
   ンションレバーをテンションレバー軸に回動自在に設
   け、前記スラスタより遠ざかるように伸びたテンション
   レバーの他端部に、逆アングライヒレバー軸を設け、一
   端部で前記ラックに繋がり、かつ他端部が前記スラスタ
   に対向するように伸びたガバナレバーを設け、このガバ
   ナレバーの一端部に向かって伸びる逆アングライヒレバ
   ーの先端部の、前記テンションレバー軸よりガバナレバ
   ーの一端部に近付いた位置に、ガバナレバーを軸支する
   ガバナレバー軸を設け、テンションレバーにはガバナレ
   バー軸を貫通させるガバナレバー軸の外径よりも一回り
   大きな孔が設けてあり、ガバナレバー軸は前記孔内で揺
   動可能となっており、ガバナレバーと逆アングライヒレ
   バーとの間に、両レバー間の所定の隙間範囲内で作動す
   る始動時増量用の始動スプリングを設け、逆アングライ
   ヒレバーとテンションレバーとの間に、逆アングライヒ
   ばねを、隙間を有するように縮設し、調整自在に設け
   て、逆アングライヒ機構をすべてテンションレバーに組
   み込んだことを特徴とする燃料噴射ポンプのガバナ装
   置。
2. 【請求項２】始動スプリングより弱いアイドルスプリン
   グを始動スプリングと並列に設けている特許請求の範囲
   第１項記載の燃料噴射ポンプのガバナ装置。