JP2518492B2 - 無機質焼結体製造用バインダ― - Google Patents

無機質焼結体製造用バインダ―

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JP2518492B2
JP2518492B2 JP4214239A JP21423992A JP2518492B2 JP 2518492 B2 JP2518492 B2 JP 2518492B2 JP 4214239 A JP4214239 A JP 4214239A JP 21423992 A JP21423992 A JP 21423992A JP 2518492 B2 JP2518492 B2 JP 2518492B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無機質焼結体製造用のバ
インダーに関し、殊に優れた成形性を有すると共に優れ
た保形性のグリーン成形体を与え、且つ焼結条件下、殊
に非酸化性雰囲気の焼成・焼結条件下においても容易に
分解・飛散し、焼結体内に未分解の炭化物として残存す
ることのないバインダーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種焼結成形体を製造する方法として現
在最も広く実施されているのは、アルミナ、シリカ、ジ
ルコニア、ムライト、炭化珪素、窒化珪素等の無機質粉
末を、有機高分子バインダーと共に混合してグリーン成
形体とし、これを焼成してバインダーを分解・飛散さ
せ、次いでセラミックス粉末を焼結させる方法である。
【0003】この場合、焼成・焼結は通常空気中等の酸
化性ガス雰囲気で行なわれるので、有機質のバインダー
は熱分解すると共に飛散し、未分解・未飛散の炭化物が
焼結体内部に残ることは殆んどなく、またバインダーが
分解・飛散してから無機質微粉末が焼結するので、空孔
欠陥の殆んどない緻密な焼結体を得ることができる。
【0004】ところが無機質粉末の種類あるいはその焼
結体の用途によっては、焼成・焼結を非酸化性雰囲気下
で行わなければならない場合がある。たとえば無機質粉
末が窒化物、炭化物、金属等を含むものである場合は、
酸化性雰囲気下で焼成・焼結するとこれらが酸化され非
酸化物焼結体としての特性が失われるので、非酸化性雰
囲気下で焼成・焼結しなければならない。またセラミッ
クスやセラミックスグリーン成形体等の成形体表面に非
酸化物素材からなる皮膜を形成し、この非酸化物素材皮
膜を非酸化状態に維持したままでセラミックスグリーン
成形体を焼成・焼結させたい様な場合も、同様に非酸化
性雰囲気下で焼成・焼結を行なうことが必要となる。と
ころが有機高分子バインダーを用いて成形した通常のグ
リーン成形体を非酸化性雰囲気下で加熱すると、有機高
分子バインダーの一部が分解・飛散しないで焼結体内に
炭化物として残存し易く、そのため焼結工程で成形体に
クラックが生じたり、反りや膨れ等が起こり、更には焼
結体中に多量の炭化物が残って緻密度が低下し、焼結体
が脆弱になったり電気絶縁性が低下し、あるいは灰色〜
黒色に着色するといった様々な問題を引き起こす。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は酸化性
雰囲気下で焼成・焼結を行なった場合はもとより、非酸
化性雰囲気下で焼成・焼結した場合でも、容易に分解・
飛散して焼結体中に炭化物として残存することがなく、
しかもグリーン成形工程ではバインダーとしての機能を
有効に果たし、優れた成形性、保形性および取扱い性を
発揮し得る様な無機質焼結体製造用バインダーを提供し
ようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成すること
のできた本発明に係るバインダーの構成は、メタクリル
酸エステルにおけるアルコール相当部分の炭素主鎖の1
位の炭素原子を除く位置に置換基を有し、該置換基がア
ルキル基である場合には前記アルコール相当部分の全炭
素数が5以上である様な1種以上のメタクリル酸エステ
ル単位の含有量が60重量%以上であるメタクリル酸エ
ステル系(共)重合体からなるところに要旨を有するも
のである。
【0007】尚上記において、置換基がアルキル基、水
酸基、アルコキシ基またはエポキシ基であるものは、非
酸化性雰囲気下での脱バインダー工程でより容易に分解
・飛散する。またメタクリル酸エステルにおけるアルコ
ール相当部分の炭素数が5以上であるメタクリル酸エス
テル単位を50重量%以上含むメタクリル酸エステル系
(共)重合体を選択すれば、非酸化性雰囲気下の分解・
飛散性と共に成形性、保形性および取扱い性などの一段
と優れたバインダーを得ることができる。
【0008】該メタクリル酸エステル系(共)重合体
は、後述する様なグリーン成形体製造時における無機質
粉末の分散性や成形性を確保する意味から0.1 〜20の
酸価および/または0.1〜60の範囲の水酸基価を有
するものが好ましく、該メタクリル酸エステル系(共)
重合体の数平均分子量が1万〜10万の範囲のものを使
用すれば、グリーン成形性と保形性および焼結時におけ
る分解・飛散性を一層優れたものにすることができる。
【0009】
【作用】上記の様に本発明は、メタクリル酸エステルに
おけるアルコール相当部分の構造を特定すると共に当該
メタアクリル酸エステル単位の配合比率を特定したもの
であり、これらの設定基準は、無機質粉末を含むグリー
ン成形用バインダーとしての本来の要求特性である成形
性、保形性及び取扱性を確保しつつ、非酸化性雰囲気下
の脱バインダー時においても容易に分解・飛散し得る様
な特性を確保するために定めたものである。以下、各構
成要件について設定理由を詳述する。
【0010】まず、メタクリル酸エステルにおけるアル
コール相当部分の炭素主鎖の1位の炭素原子を除く位置
に置換基を有するメタクリル酸エステルを主たるモノマ
ー単位として選択した理由は、これらをモノマー単位と
して含む(共)重合体が、メチルメタクリレートやエチ
ルメタクリレートあるいはtert−ブチルメタクリレ
ート等の如くアルコール相当部分の1位の炭素原子に置
換基を有するメタクリル酸エステルよりも優れた解重合
性を示し、非酸化性雰囲気化下で加熱したときでも容易
に解重合を起こして飛散・飛散し、焼結体中に炭化物と
して残存しにくいからである。
【0011】この理由は明確ではないが、アルコール相
当部分の炭素主鎖の1位の炭素原子に置換基があると、
エステル部分で分解切断された場合に生成するラジカル
の安定性からエステル部分での分解切断が起こり易くな
り、解重合と共にエステル部の分解切断によって生成す
るCOO・同士が結合、架橋を起こし易くなり、熱分解
性が悪くなるものと推定される。
【0012】これに対しアルコール相当部分の1位の炭
素を除く炭素の位置に置換基があるものでは、解重合に
よりポリメタクリル酸エステル主鎖に生成するラジカル
は、エステル部の置換基の位置が近くにあるため立体的
にラジカルを保護することになり、ラジカル同士の結
合、架橋を阻害する結果、ポリメタクリル酸エステル主
鎖の解重合が促進されて熱分解性がよくなるものと推定
され、特に、アルコール相当部分の2位の炭素の位置に
置換基があるとその効果が顕著に発揮されるものと予想
される。なお、ここでアルコール相当部分の1位の炭素
とはメタクリル酸相当部分の酸素に結合している炭素で
ある。
【0013】本発明においてメタクリル酸エステルにお
けるアルコール相当部分の主鎖の1位の炭素を除く炭素
の位置に置換基を有するメタクリル酸エステル単位と
は、メタクリル酸とC2〜C20の側鎖あるいは置換基
を有するアルコールとのエステルである。
【0014】置換基としてアルキル基を有するものとし
ては、炭素主鎖が5以上であるアルキル基が挙げられ、
例えば2−メチルブチルメタクリレート、2−エチルブ
チルメタクリレート、3−メチルブチルメタクリレー
ト、2−メチルペンチルメタクリレート、3−メチルペ
ンチルメタクリレート、4−メチルペンチルメタクリレ
ート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2,4,6
−トリメチルヘプチルメタクリレート、イソオクチルメ
タクリレート、イソデシルメタクリレート、2−ヘプチ
ルウンデシルメタクリレート、イソラウリルメタクリレ
ート、イソステアリルメタクリレートなどが例示され
る。これらの中でも特に好ましいのは、置換基の位置が
2位の炭素上のものである。
【0015】置換基として水酸基を有するものは、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリ
レート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒ
ドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル
メタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メチルブチルメ
タクリレート、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブチ
ルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタク
リレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメ
タクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどが
例示される。
【0016】また、置換基としてアルコキシ基を有する
ものとしては、2−メトキシエチルメタクリレート、2
−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチル
メタクリレート、3−メトキシプロピルメタクリレー
ト、3−メトキシブチルメタクリレート、メトキシジエ
チレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレン
グリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールモ
ノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタ
クリレート、2−フェノキシエチルメタクリレートなど
が挙げられる。
【0017】置換基としてエポキシ基を有するものとし
ては、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフ
リルメタクリレート(2,5−エポキシペンチルメタク
リレート)、2,3−エポキシブチルメタクリレートな
どがある。上記以外の置換基を有するものとしては、ベ
ンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレ
ート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げ
ることができる。
【0018】そして本発明の目的を達成するには、上記
メタクリル酸エステルよりなる群から選択される少なく
とも1種が全モノマー単位のうち60重量%以上、より
好ましくは80重量%以上を占めるメタクリル酸エステ
ル系(共)重合体を使用しなければならず、これらの要
件を欠く場合は、非酸化性雰囲気の加熱条件下で炭化物
が残存し易くなり、本発明の目的が果たせなくなる。従
って本発明においては、モノマー単位のすべて、もしく
は大部分が上記のメタクリレート単位であるものが好ま
しく、それらは単独重合体でも良く、あるいは2種以上
のモノマーを用いた共重合体であってもかまわない。し
かし上記モノマー単位の中でもアルコール相当部分の全
炭素数が5以上であるメタクリル酸エステル単位を主体
とするものはとりわけ優れた解重合性を示すので、こう
した要件を満たすメタクリル酸エステル単位のしめる比
率を50重量%以上、より好ましくは60重量%以上に
することが好ましい。
【0019】本発明においては、上記メタクリル酸エス
テルにおけるアルコール相当部分の炭素主鎖の1位の炭
素原子を除く位置に置換基を有する1種以上のメタクリ
ル酸エステル単位の含有率を満足する限り、他のメタク
リレートと共重合可能な1種以上のビニルモノマーを多
くとも全モノマー単位の40重量%まで共重合させるこ
とが可能である。
【0020】そのような共重合モノマーとしてはメチル
(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、
プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)ア
クリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec
−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メ
タ)アクリレート、1,2−ジメチルブチル(メタ)ア
クリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレ
ート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシ
エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレー
ト、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレー
ト、ラウリル(メタ)アクリレート、イソラウリルアク
リレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステ
アリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリ
レート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒ
ドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチル
アクリレート、グリセロールモノアクリレート、トリメ
チロールプロパンモノアクリレート、ポリエチレングリ
コールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモ
ノアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレー
ト、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオク
チル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)ア
クリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;アク
リル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シト
ラコン酸、モノイソプロピルマレエート等のマレイン酸
半エステル等の共重合性不飽和カルボン酸;スチレン、
α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、α−エチル
スチレン、β−エチルスチレン、ビニルスチレン等のス
チレン系モノマー等が例示され、これらも必要より2種
以上併用することができる。
【0021】これらのうちスチレン系モノマーは解重合
性に優れ、メタクリル酸エステル系(共)重合体の分解
温度を下げる効果があるので、40重量%まで添加する
ことが可能である。スチレン系モノマーの中でも特に好
ましいのはα−メチルスチレンである。
【0022】また、アクリル酸エステル系モノマーは、
ガラス転移温度を、調整してグリーンの成形性や取扱性
を高める作用があり、たとえばプロピルアクリレート、
ブチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート等を
少量併用することも可能であるが、アクリル酸エステル
系共重合体はメタクリル酸エステル系共重合体に比べて
解重合性が劣るので、その添加量は10重量%以下、好
ましくは5重量%以下にすべきである。
【0023】さらには(メタ)アクリロニトリル、アク
リルアミド、アルキルアクリルアミド、酢酸ビニル、塩
化ビニル等も共重合可能であるが、これらのモノマーを
多量共重合させると、得られる共重合体の熱分解性が悪
くなるので、モノマー単位として併用するにしても少量
に止める必要がある。
【0024】置換基として水酸基を有するモノマーや共
重合性不飽和カルボン酸はメタクリル酸エステル系
(共)重合体に適度の水酸基価または酸価を与えて無機
質粉末の分散性及び分散安定性を高める作用があり、グ
リーン成形性、強度や取扱性の向上を目的として使用す
ることが好ましい。(共)重合体の好ましい水酸基価や
酸価は無機質粉末の種類、極性、酸性度、塩基性度、酸
量等に応じて異なるが水酸基価が0.1〜60および/
または酸価が0.1〜20の範囲に調整するのが好まし
い。酸価は水酸基価より効果が著しく、酸価が高くなり
過ぎるとメタクリル酸エステル系(共)重合体の焼成時
における分解・飛散性が悪くなる傾向があるので、より
好ましくは酸価を0.1〜10の範囲に調整するのが良
い。また、水酸基価が60を超えるとグリーン成形性、
強度や取扱性が逆に低下することがある。
【0025】本発明に係るメタクリル酸エステル系
(共)重合体を得るための重合方法は特に制限されない
が、最も一般的な方法はパーオキサイド、ハイドロパー
オキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル
重合開始剤の存在下に懸濁重合、溶液重合、乳化重合等
の通常の重合法を採用し、通常10〜150℃で数分間
乃至数時間反応させる方法である。この場合、必要によ
っては重合反応中にさらに連鎖移動剤を添加することも
できる。得られた共重合体は下記方法で測定される分子
量が1000〜100万である共重合体の含有量が90
%以上をしめると共に、上記分子量範囲における15万
以下の分子量の共重合体と、15万を越える分子量の共
重合体との含有比率が重量比で1/1〜9/1であるこ
とが好ましい。また、数平均分子量は1万〜10万の範
囲のものを使用するのが好ましい。
【0026】(分子量測定法) 測定装置:WATERS社製のゲルパーミュエーションクロマ
トグラフィー「M-410」 検出器 :示差屈折計 使用カラム:WATERS社製のウルトラスタイラジェル(7.
8 mmφ×300 mmL )×4本 標準物質:ポリスチレン 測定条件:流量 1cc/min(THF) 温度 40℃
【0027】これらは特定分子量範囲のものの含有率を
特定すると共に、当該分子量範囲内で分子量15万のも
のを基準として低分子量側共重合体と高分子量共重合体
との含有比率を特定しており、これらの設定基準は、無
機質粉末を含むグリーン成形用バインダーとしての本来
の要求特性である成形性及び保形性を確保しつつ、非酸
化性雰囲気下の脱バインダーにおいても容易に分解・飛
散し得るような特性を確保するための好ましい要件とな
る。
【0028】上記分子量範囲外の低分子量共重合体およ
び高分子量共重合体の占める比率が10%を超えると、
低分子量共重合体が多すぎる場合はバインダーとしての
性能が不十分となって満足なグリーン成形性、保形性及
び取扱性が得られ難くなり、一方高分子量共重合体が多
過ぎる場合は脱バインダー時における分解・飛散性が悪
くなり、焼結体中に残存する炭化物の量が無視できなく
なるほど多くなる。
【0029】また上記分子量範囲内の重合体の含有量が
上記要件を持たすものであっても、分子量15万のもの
を基準にして低分子量側共重合体の含有比率が上記範囲
を超える場合は、グリーンの成形体、保形性および取扱
性が悪くなり、一方、高分子量側共重合体の含有比率が
上記範囲を超える場合は、焼結体中の炭化物としての残
存量が多くなる傾向がでてくる。
【0030】上記メタクリル酸エステル(共)重合体よ
りなるバインダーと組み合わされて使用される無機質粉
末の種類は一切制限されず、アルミナ、チタニア、シリ
カ、ジルコニア等の酸化物、ジルコン、ムライト、コー
ジェライト、サイアロン、チタン酸バリウム、チタンジ
ルコン酸鉛等の複合酸化物、ホウ珪酸ガラスや結晶化ガ
ラス等のガラス性無機質粉末の如く焼成・焼結を酸化性
雰囲気下で行ってもさしつかえのない様な少なくとも1
種以上の酸化物系無機質粉末のバインダーとして使用す
ることももちろん可能であるが、本発明バインダーの特
徴が最も効果的に発揮されるのは酸化性雰囲気下で焼成
・焼結を行うと酸化変質を起こす様な無機質粉末、たと
えば窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ほう素等の窒化
物;炭化珪素、炭化タングステン、炭化ほう素等の炭化
物;あるいは鉄、ステンレス、ニクロム、チタンアルミ
等の金属や合金などの1種以上の非酸化物系粉末であ
る。非酸化性雰囲気での焼成・焼結は条件によって大き
く異なるが通常は酸素濃度を1%以下にするのが好まし
く、より好ましくは1000ppm 以下、さらに好ましく
は100ppm 以下である。なお無機質粉末の種類によっ
ては、焼成・焼結雰囲気に微量の酸素が存在していても
実質的な悪影響を受けないものもあるので、この様な無
機質粉末と組合わせて使用する場合は、焼成・焼結雰囲
気中に酸素、水素、水分等が少量含まれていても差し支
えない。
【0031】本発明のバインダーを用いた無機質焼結成
形体の製法も格別特殊なものではなく、常法に従って行
えばよいが、一般的な方法として例示するならば、まず
前述のような無機質粉末を本発明のバインダーおよび適
当な分散媒(好ましいのはアセトン、メチルエチルケト
ン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノール、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶媒
の単独もしくは混合物)と共に均一混練する。バインダ
ーの使用量は適当に決めればよいが、成形性やグリーン
の保形性および取扱性、あるいは脱バインダー時におけ
る分解・飛散性等を考慮して、一般には無機質粉末10
0重量部に対して1〜40重量部の範囲、好ましくは3
〜30重量部の範囲である。このとき、必要によっては
分散剤(グリセリン、ソルビタン等の多価アルコールエ
ステル、ポリカルボン酸類、あるいはアミン系分散剤
等)、グリーン成形体に可撓性を与えるための可塑剤
(ポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、フタル
酸ジオクチルなどのフタル酸エステル等)、あるいは焼
結助剤(ガラス粉、クレイ、タルク、マグネシア、カル
シア、イットリア、セリア等)を適量配合することも可
能である。
【0032】次いで必要により脱泡してから任意の形状
に成形してグリーン成形体を得る。成形法にも一切制限
がなく、プレス成形、押出し成形、射出成形、ドクター
ブレードによるシート成形等、従来から知られた任意の
方法を採用できるが、本発明のバインダーはシート成形
に特に優れた効果を発揮する。次いでこのグリーン成形
体、あるいは必要に応じて2次加工したグリーン成形体
を加熱処理し、分散媒の揮発除去、バインダーの分解・
飛散および脱バインダー体の焼成・焼結を行うが、加熱
処理温度を一気に焼成・焼結温度まで高めると成形体に
クラックが入ったり空孔欠陥ができ易くなるので、好ま
しくは段階的もしくは連続的に徐々に昇温し、バインダ
ーの分解・飛散を比較的低温域で完了させてから焼結を
行うようにすることが望ましい。
【0033】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、バ
インダーとしての諸機能を保持しつつ、非酸化性雰囲気
下で加熱した場合でも炭化することなく容易に分解・飛
散する特性を有しているので、特に酸化を受け易い無機
質粉末よりなる焼結成形体を得る場合でも、焼結体中に
炭化物として残存して外観を悪くしたり、焼結密度の低
下を引き起こす恐れがない。また、用いる無機質粉末の
種類によっては焼結成形体に絶縁性、導電性、磁気特性
等さまざまの特性を与える必要があり、これらの要求特
性が炭化物の残留によって著しく阻害される場合がある
が、本発明のバインダーを使用するとこの様な問題も回
避できる。さらに本発明のバインダーは酸化性雰囲気の
焼成・焼結条件下でも勿論容易に分解・飛散するので、
脱バインダー工程と焼結工程を酸化性雰囲気下で行う無
機質粉末のバインダーとしても支障なく使用できる。
【0034】
【実施例】以下、本発明を実施例を上げて具体的に説明
するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受
けるものではなく、前・後記の趣旨に沿って適当に変更
して実施することはすべて本発明の技術的範囲に含まれ
る。
【0035】実施例1〜12、比較例1〜8 撹拌機、温度計、窒素導入管、モノマー滴下ロートおよ
び重合開始剤滴下ロートを備えたセパラブルフラスコ
に、溶剤としてトルエン60重量部と2−プロパノール
20重量部を入れ、窒素導入管から窒素を吹き込んでフ
ラスコ内を窒素置換する。一方モノマー滴下ロートには
表1に示すモノマー100重量部を仕込んでおき、重合
開始剤滴下ロートにはトルエン30重量部にアゾビスイ
ソブチロニトリル1.8重量部を溶かした溶液を仕込ん
でおく。次いでフラスコを昇温し、攪拌しながらモノマ
ーと重合開始剤を2時間かけて滴下し、さらに2時間撹
拌を続けた後、内温を80℃まで高めてさらに2時間加
熱攪拌してから冷却降温しメタクリル酸エステル系
(共)重合体を得た。
【0036】得られた各共重合体の分子量分布を前述の
方法で測定し、分子量1000〜100万のものの含有
率、分子量(1000〜15万)/(15万〜100
万)の重量比率、数平均分子量を求めた結果を表1に記
すと共に、酸価を併記した。また各共重合体を白金るつ
ぼに所定量入れて窒素気流中で600℃まで昇温し、同
温度で1時間保持したときの残留炭素量を測定し、その
有無を表1に併記した。
【0037】また得られた各共重合体の熱分解性を熱天
秤によって測定し(測定条件:0.1リットル/分の窒
素気流中、昇温速度4℃/分で600℃まで昇温)、そ
れぞれの熱分解曲線を求めた。その結果の代表例として
実施例1および比較例1の熱分解曲線を図1に示す。
【0038】なお表1における記号の意味は次の通りで
ある。 MAA :メタクリル酸 MMA :メチルメタクリレート EMA :エチルメタクリレート iBMA :イソブチルメタクリレート tBMA :tert−ブチルメタクリレート 2MPMA :2−メチルペンチルメタクリレート 2EHMA :2−エチルヘキシルメタクリレート TMHpMA:2,4,6−トリメチルヘプチルメタクリレー
ト LMA :ラウリルメタクリレート HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2BOEMA:2−ブトキシエチルメタクリレート THFMA :テトラヒドロフルフリルメタクリレート αMSt :α−メチルスチレン
【0039】
【表1】
【0040】試験例1 平均粒子径2μmの酸化アルミニウム粉末45重量%と
平均粒子径5μmのホウ珪酸ガラス粉末55重量%との
混合粉末100重量部と、実施例1で得たメタクリル酸
エステル系共重合体をバインダーとして12重量部、可
塑剤としてジオクチルフタレート1重量部、分散媒とし
てトルエン/メチルエチルケトン(1/1)混合溶媒4
0重量部を混合してスラリーとした後、ドクターブレー
ド法によって厚さ0.23mmのアルミナ/ガラスグリー
ンシートを得た。
【0041】このグリーンシートを窒素気流中で550
℃まで徐々に昇温し、同温度で2時間保持して脱バイン
ダーした後、900℃で1時間保持して焼成・焼結し
た。得られた焼結シートの残留炭素量は150ppm と極
くわずかであり、曲げ強度は1700kgf/cm2 で優れた
ものであった。また、このグリーンシートを空気中で5
00℃まで昇温し、同温度で1時間保持して脱バインダ
ーした後、900℃で1時間保持して焼成・焼結した。
得られた焼結シートの残留炭素量は10ppm 以下、曲げ
強度は1700kgf/cm2 であった。
【0042】試験例2 試験例1で使用した酸化アルミニウム粉末とホウ珪酸ガ
ラス粉末との混合粉末100重量部と、実施例8で得た
メタクリル酸エステル系共重合体をバインダーとして1
5重量部、可塑剤としてジオクチルフタレート4重量
部、分散媒としてトルエン/酢酸エチル(3/2)混合
溶媒50重量部を混合してスラリーとした後、ドクター
ブレード法によって厚さ0.23mmのアルミナ/ガラス
グリーンシートを得た。
【0043】このグリーンシートを窒素気流中で550
℃まで徐々に昇温し、同温度で2時間保持して脱バイン
ダーした後、900℃で1時間保持して焼成・焼結し
た。得られた焼結シートの残留炭素量は120ppm と極
わずかであり、曲げ強度は1800kgf/cm2 で優れたも
のであった。また、このグリーンシートを空気中で60
0℃まで昇温し、同温度で1時間保持して脱バインダー
した後、900℃で1時間保持して焼成・焼結した。得
られた焼結シートの残留炭素量は20ppm 以下、曲げ強
度は1800kgf/cm2 であった。
【0044】試験例3 平均粒子径9μmの窒化アルミニウム粉末97重量%と
焼結助剤として酸化イットリウム粉末3重量%との混合
粉末100重量部に、実施例11で得たメタクリル酸エ
ステル系共重合体をバインダーとして3重量部、溶剤と
してメチルエチルケトン40重量部を混合してスラリー
とした。得られたスラリーを乾燥し、乾燥粉を直径10
mm、高さ10mmの円筒形にプレス成形してブロック状グ
リーン成形体を作製した。
【0045】このグリーン成形体を窒素雰囲気中で60
0℃で2時間加熱して脱バインダーした後、さらに18
00℃に昇温して6時間保持することにより焼成・焼結
してアルミニウム焼結成形体を得た。この成形体の相対
密度は99.1%、体積抵抗は9×1014Ω・cmであ
り、残留炭素量は100ppm と極わずかであり、熱伝導
率は170W/m・k で優れたものであった。
【0046】比較試験例1 比較例1で得たメタクリル酸エステル系共重合体をバイ
ンダーとして12重量部、可塑剤としてジオクチルフタ
レート4重量部を使用した以外は前記試験例1と同様に
して、アルミナ/ガラスグリーンシートの成形および窒
素気流中での脱バインダーと焼成・焼結を行って焼結シ
ートを得た。このシートの残留炭素量は2000ppm で
あり、曲げ強度は1000kgf/cm2 以下で非常に弱かっ
た。
【0047】比較試験例2 比較例6で得たアクリル酸エステル系共重合体をバイン
ダーとして15重量部使用した以外は上記試験例2と同
様にして、アルミナ/ガラスグリーンシートの成形およ
び窒素気流中での脱バインダーと焼成・焼結を行って焼
結シートを得た。このシートの残留炭素量は1200pp
m で、このシートは灰色を呈しており、曲げ強度は11
00kgf/cm2 であった。
【0048】比較試験例3 比較例2で得たメタクリレート系共重合体をバインダー
として5重量部使用した以外は上記試験例3と同様にし
て窒化アルミニウム焼結成形体を得た。この成形体の相
対密度は97.6%、体積抵抗は6×1012Ω・cmであ
った。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1で得たバインダーの熱
分解曲線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青山 孝浩 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒 吹田製造所内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタクリル酸エステルにおけるアルコー
    ル相当部分の炭素主鎖の1位の炭素原子を除く位置に置
    換基を有し、該置換基がアルキル基である場合には前記
    アルコール相当部分の全炭素数が5以上である様な1種
    以上のメタクリル酸エステル単位の含有量が60重量%
    以上であるメタクリル酸エステル系(共)重合体からな
    ることを特徴とする無機質焼結体製造用バインダー。
  2. 【請求項2】 置換基がアルキル基、水酸基、アルコシ
    キ基またはエポキシ基である請求項1記載の無機質焼結
    体製造用バインダー。
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