JP2513291Y2 - エンジンのタイミングベルト室構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、クランク軸方向一方側
の端部にオイルポンプを設けたエンジンであって、特
に、オイルポンプをクランク軸直結駆動とするととも
に、そのポンプ室を形成するオイルポンプカバーにベル
トカバーの周縁に沿う帯状のベルトカバーシール部を設
けることによってタイミングベルト室を形成するように
したエンジンのタイミングベルト室構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に車両用等のエンジンのクランク軸
方向一端側には、クランクプーリと、カムプーリと、こ
れらを駆動連結するタイミングベルトと、アイドラーお
よびテンショナー等からなる弁駆動用ベルト伝動機構が
設けられ、このベルト伝動機構を覆うようにベルトカバ
ーが取り付けられる。そして、このようなベルト伝動機
構とともに、同じクランク軸方向一端側にクランク軸直
結駆動のオイルポンプを設けるエンジンにおいては、オ
イルポンプ室を形成するオイルポンプカバーに上記ベル
トカバーの周縁に沿う帯状のベルトカバーシール部を設
け、オイルポンプカバーとベルトカバーとの間を上記ベ
ルト伝動機構を収納するタイミングベルト室の一部とす
ることが提案されている。

【０００３】また、このようにクランク軸方向一端側に
動弁用のベルト伝動機構を設けたエンジンにおいては、
駆動時にタイミングベルトがプーリに噛み合う時やプー
リから離れる時にベルト振動音が発生し、また、そのベ
ルト振動音に対しベルトカバーが共鳴振動を起こすこと
から、例えば実開昭６２−６７９４３号公報に記載のも
のでは、ベルトカバーの内面にリブを突設することによ
って、ベルトカバーの剛性を高めて共鳴振動の抑制を図
るとともに、伝播エネルギを減衰させるようにしてベル
ト振動音そのものの低減を図っている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】エンジンのクランク軸
方向一端側で、ベルトカバーにより、あるいは一部オイ
ルポンプカバーによって形成されるタイミングベルト室
の容積は、デッドボリュームが大きいこともあってかな
りの大きさとなるのが普通であって、このように容積の
大きいタイミングベルト室内で空洞共鳴が起こるため、
単にベルトカバーの剛性を高めるだけではベルト振動に
起因する騒音を十分に低減することができなかった。ま
た、上記のように動弁用ベルト伝動機構と同様にクラン
ク軸方向の一端側にクランク軸駆動のオイルポンプを設
ける場合には、上記のようにオイルポンプカバーによっ
てタイミングベルト室の一部を形成するようにできる
が、オイルポンプカバー自体はタイミングベルトと干渉
しないようにする必要があり、そのため、エンジン全長
の増大を抑えつつオイルポンプカバーの剛性、特にボル
トアップされるシリンダブロックシール部の剛性を確保
するというのは難しい。

【０００５】タイミングベルト室の容積が小さいと、共
鳴同調点が高周波数側にずれて音圧レベルのピーク値が
下がることが知られており、そのため、デッドボリュー
ムをできるだけ少なくしようとする試みも従来からなさ
れているが、デッドボリュームの低減とオイルポンプカ
バーの剛性アップを同時に実現できるようなものは提供
されていない。

【０００６】本考案は上記問題点に鑑みてなされたもの
であって、タイミングベルト室内のデッドボリュームの
低減によってベルト振動に起因する騒音を低減すること
ができるとともに、オイルポンプカバーを補強しシール
剛性を高めることのできるエンジンのタイミングベルト
室構造を得ることを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案に係るエンジンの
タイミングベルト室構造は、クランク軸方向一方側の端
部にクランク軸駆動のオイルポンプのポンプ室を形成す
るオイルポンプカバーが配設されるとともに、オイルポ
ンプカバーのクランク軸方向一方側にベルトカバーが配
設され、オイルポンプカバーの同クランク軸方向一方側
の面に前記ベルトカバーの周縁に沿う所定高さの帯状の
ベルトカバーシール部が設けられて、オイルポンプカバ
ーによりベルトカバーとの間にタイミングベルト室の一
部が形成されたエンジンのタイミングベルト室構造であ
って、オイルポンプカバーに、オイルポンプカバーのベ
ルトカバーシール部に両端が接続されタイミングベルト
室の内方へ延びてベルトカバーとの間にタイミングベル
ト室内閉空間を区画する帯状の補強壁を形成したことを
特徴とする。

【０００８】オイルポンプカバーに設ける帯状の補強壁
は、一端がオイルポンプカバーのベルトカバーシール部
の所定位置に接続され、タイミングベルト室の内方に延
びて、タイミングベルトに対し略平行な壁部分を形成
し、オイルポンプカバーのポンプ室部，シリンダブロッ
クシール部および吐出口部を経由して、ベルトカバーシ
ール部の他の位置に他端が接続されるよう形成するのが
好ましい。

【０００９】また、オイルポンプカバーには、さらに、
タイミングベルト間にあって、オイルポンプカバーのシ
リンダブロックシール部とポンプ室部とを箱状に連結し
てベルトカバーとの間にもう一つのタイミングベルト室
内閉空間を区画する補強壁を設けるのがよい。

【００１０】

【作用】クランク軸方向一方側の端部においてベルトカ
バーとの間にタイミングベルト室の一部を形成するオイ
ルポンプカバーに、該オイルポンプカバーのベルトカバ
ーシール部に両端が接続されタイミングベルト室の内方
へ延びて、例えばタイミングベルトに対し略平行な壁部
分を形成するとともにオイルポンプカバーのポンプ室
部，シリンダブロックシール部および吐出口部を経由し
てベルトカバーとの間にタイミングベルト室内閉空間を
区画する帯状の補強壁が形成されたことにより、オイル
ポンプカバーが補強されてシール剛性が向上するととも
に、タイミングベルト室内の実質的な容積が低減され、
それによってベルト振動の空洞共鳴による騒音が低減さ
れる。

【００１１】また、タイミングベルト間で、オイルポン
プカバーのシリンダブロックシール部とポンプ室部とを
箱状に連結する補強壁によってベルトカバーとの間にも
う一つ閉空間が区画されることにより、オイルポンプカ
バーの補強効果が一層高まるとともに、タイミングベル
ト室の容積がさらに小さくなって、空洞共鳴低減の効果
も高まる。

【００１２】

【実施例】以下、実施例を図面に基づいて説明する。

【００１３】図１は本考案の一実施例に係るエンジンの
オイルポンプカバー部分の正面図、図２は図１のＡ−Ａ
断面図である。

【００１４】この実施例において、オイルポンプカバー
１はエンジンのクランク軸方向一方側（フロント側）の
端部に配置され、該オイルポンプカバー１の周縁に形成
されたシリンダブロックシール部２においてボルトアッ
プによりシリンダブロック（図示せず）に取り付けられ
る。図１で３は上記ボルトアップのためのボルト穴を示
す。

【００１５】上記オイルポンプカバー１の中央部分は、
フロント側に膨らんだポンプ室部４とされ、その内側に
形成されるオイルポンプ室にはエンジンのクランク軸５
に固定されて回転するロータ（図示せず）が収容され
る。そして、正面から見てポンプ室部４の左側上部に吐
出口部６が形成されている。また、オイルポンプカバー
１のフロント側の面には、ベルトカバーロア７の下部周
縁に沿ってリブ状のベルトカバーシール部８が設けられ
ている。ベルトカバーロア７は、周縁が上記オイルポン
プカバー１のベルトカバーシール部８に密着し、それに
よってタイミングベルト室９の下縁が規定される。

【００１６】エンジンのクランク軸５は、オイルポンプ
カバー１を貫通し、そのフロント側の端部には動弁用の
クランクプーリ１０が固定されて、このクランクプーリ
１０と図示しない吸気側および排気側の二つのカムプー
リとの間にタイミングベルト１１が巻掛けられ、さら
に、タイミングベルト１１に対し張力および巻掛け角度
を規定するベルトテンショナー１２とアイドラー（図示
せず）が左右に配置される。タイミングベルト１１はベ
ルトテンショナー１２とクランクプーリ１０との間で左
右が略平行となる。

【００１７】オイルポンプカバー１には、一端がポンプ
室部４の吐出口部６側に隣接する位置においてベルトカ
バーシール部８につながり、タイミングベルト１１に対
し略平行な壁部分を形成しながらポンプ室部４の側方を
上方に延びてシリンダブロックシール部２に達し、シリ
ンダブロックシール部２に沿って側方に延び、他端が吐
出口部６の位置でベルトカバーシール部８につながるよ
う、ベルトカバーシール部８に対し面一のリブ１３が設
けられている。このリブ１３により、ベルトカバーロア
７との間に四辺形の閉空間１４が形成される。また、オ
イルポンプカバー１には、一端がポンプ室部４の反吐出
口部６に隣接する位置においてベルトカバーシール部８
につながり、タイミングベルト１１に対し略平行に上方
へ延びてシリンダブロックシール部２に達し、シリンダ
ブロックシール部２に沿って側方に延び、他端がベルト
カバーシール部８の上端につながるよう、やはりベルト
カバーシール部８と面一のリブ１５が設けられている。
そして、このリブ１５によってベルトカバーロア７との
間にやはり閉空間１６が形成される。また、さらにオイ
ルポンプカバー１の上記タイミングベルト１１間の位置
には、シリンダブロックシール部２とポンプ室部４とを
箱状に連結するように、やはりベルトカバーシール部８
と同じ高さでリブ１７が設けられ、このリブ１７によっ
てベルトカバーロア７との間にやはり閉空間１８が形成
される。

【００１８】オイルポンプカバー１は上記のようにリブ
１３，１５，１７が設けられることによって補強され、
それにより、シリンダブロックシール部２の剛性が高ま
る。また、これらのリブ１３，１５，１７によって閉空
間１４，１６，１８が形成されることにより、タイミン
グベルト室９のデッドボリュームが低減され、実質的な
タイミングベルト室９の容積が低減される。そして、こ
のようにタイミングベルト室９の容積が低減されること
によって、ベルト振動の空洞共鳴による騒音が低減され
る。

【００１９】図３は、上記実施例のタイミングベルト室
構造を採用した場合の、ノーロード，エンジン回転数１
３００ｒｐｍ，エンジン前方１ｍの音圧レベル特性を示
す実験データである。また、図４は、上記のようなリブ
１３，１５，１７を設けない場合（従来装置）の同じ条
件（ノーロード，エンジン回転数１３００ｒｐｍ，エン
ジン前方１ｍ）での音圧レベル特性を示す実験データで
ある。この実施例の場合、タイミングベルト室９の容積
が実質的に低減されて空洞共鳴の同調点が高周波数側に
移行することにより、従来装置に比べ音圧レベルのピー
ク値が著しく低減される。

【００２０】なお、上記実施例では、オイルポンプカバ
ーにおけるポンプ室部の左右にタイミングベルト内閉空
間を区画するリブをそれぞれ設け、かつ、ベルト間にも
箱状にリブを設けたものを説明したが、ベルト間の箱状
のリブについては適宜省略してもよく、また、左右のリ
ブについても、タイミングベルトが離れる側で、かつ、
反吐出口部側に位置することになる方のリブは省略して
もよい。また、各リブの構造は上記実施例のものに限定
されることなく適宜変更が可能である。

【００２１】

【考案の効果】本考案は以上のように構成されているの
で、タイミングベルト室内のデッドボリュームの低減に
よってベルト振動に起因する騒音を低減することがで
き、併せて、オイルポンプカバーを補強しシリンダブロ
ックシール部の剛性を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係るエンジンのオイルポン
プカバー部分の正面図

【図２】図１のＡ−Ａ断面図

【図３】上記実施例の装置の音圧レベル特性を示すグラ
フ

【図４】従来装置の音圧レベル特性を示すグラフ

【符号の説明】

１ オイルポンプカバー ２ シリンダブロックシール部 ４ ポンプ室部 ５ クランク軸 ６ 吐出口部 ７ ベルトカバーロア ８ ベルトカバーシール部 ９ タイミングベルト室 １１ タイミングベルト １３，１５，１７ リブ １４，１６，１８ 閉空間

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 クランク軸方向一方側の端部にクランク
   軸駆動のオイルポンプのポンプ室を形成するオイルポン
   プカバーが配設されるとともに、該オイルポンプカバー
   の前記クランク軸方向一方側にベルトカバーが配設さ
   れ、前記オイルポンプカバーの前記クランク軸方向一方
   側の面に前記ベルトカバーの周縁に沿う所定高さの帯状
   のベルトカバーシール部が設けられて、該オイルポンプ
   カバーにより前記ベルトカバーとの間にタイミングベル
   ト室の一部が形成されたエンジンにおいて、前記オイル
   ポンプカバーに、該オイルポンプカバーの前記ベルトカ
   バーシール部に両端が接続され前記タイミングベルト室
   の内方へ延びて前記ベルトカバーとの間にタイミングベ
   ルト室内閉空間を区画する帯状の補強壁を形成したこと
   を特徴とするエンジンのタイミングベルト室構造。
2. 【請求項２】 オイルポンプカバーの前記帯状の補強壁
   は、一端が該オイルポンプカバーのベルトカバーシール
   部の所定位置に接続され、タイミングベルト室の内方に
   延びてタイミングベルトに対し略平行な壁部分を形成す
   るとともに、該オイルポンプカバーのポンプ室部，シリ
   ンダブロックシール部および吐出口部を経由して他端が
   前記ベルトカバーシール部の他の位置に接続される請求
   項１記載のエンジンのタイミングベルト室構造。
3. 【請求項３】 オイルポンプカバーには、さらに、タイ
   ミングベルト間で該オイルポンプカバーのシリンダブロ
   ックシール部とポンプ室部とを箱状に連結してベルトカ
   バーとの間にもう一つのタイミングベルト室内閉空間を
   区画する補強壁が設けられた請求項１または２記載のエ
   ンジンのタイミングベルト室構造。