JP2511245B2 - ビスシリルアルカン類とその製造方法 - Google Patents

ビスシリルアルカン類とその製造方法

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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチックのような
有機物と充填剤に使用される無機物の間を結合させる物
質として有用な、種々の有機基で置換されたビスシリル
アルカン類とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】有機ケイ素含有カップリング剤は、プラ
スチックの複合材料の製造に広く使われる重要な物質
で、物理的性質が互いに異なる無機物の充填剤と有機物
であるプラスチックを良く融和させ、結合力を増進させ
る。プラスチックに所望の物性を付与し、経済性を最大
限に高めることができる。カップリング剤の一般的な分
子構造は、(RO)3Si−A−Yのように表される。こ
こでアルコキシシランの−Si(OR)3の部分は、加水
分解すれば−Si(OH)3になる。このシラノールは不
安定で、自己同士結合するか、無機物である充填剤の表
面にある金属酸化物の金属水酸基と反応して、化学的に
結合することで充填剤の補強性を高める。Yはプラスチ
ックや樹脂と反応することのできる有機官能基を表し、
Aは有機官能基とケイ素との間を連結する有機基であっ
て、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。
【0003】カップリング剤中で、最も普遍的なものは
γ−クロロプロピルトリメトキシシランである。この結
合剤の製造方法は、次の反応式に示すように、トリクロ
ロシランに不飽和結合を有する化合物をヒドロシリル化
反応で付加させ、種々の有機基を導入する。ケイ素に結
合したクロロ原子は加水分解されて腐触性の強い塩化水
素を発生するので、アルコールと反応させてアルコキシ
基に置換させる。
【0004】
【化4】
【0005】このヒドロシリル化反応には、触媒を必要
とし、触媒には金属白金か、塩化白金酸のような貴金属
化合物が使われるが、最も普遍的で多く使用される触媒
は塩化白金酸で、イソプロパノールに溶かし使用され
る。それ以外にも、トリクロロシランに付加させる不飽
和化合物の性質に従い、白金化合物を触媒に使うよりは
他の触媒が有利である場合もある。ヒドロシリル化反応
に使用される触媒は、白金やパラジウムのような貴金属
の外にも、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、銅、鉛等
の化合物も使用できる。金属や無機物でなく有機化合物
でも触媒に使用できるものが知られている。触媒に使用
できる有機化合物の例をあげると、トリエチルアミン、
トリフェニルホスフィン、ジメチルホルムアミド等は触
媒活性のあることが知られている。(E.Y. Lukevites a
nd M.G. Voronkov, "Organic Inscrtion Reactions of
Group IV Elements", Consultants Bureau, New York 1
966)。
【0006】カップリング剤として最も普遍的なγ−ク
ロロプロピルトリアルコキシシランの製造法としては、
先ずトリクロロシランとアリルクロリドを反応させてγ
−クロロプロピルトリクロロシランを得て、次にアルコ
ールと反応させてγ−クロロプロピルトリアルコキシシ
ランを得る。トリクロロシランにアリルクロリドを付加
させる反応は、塩化白金酸触媒の存在下で、100℃で
4〜10時間の反応時間を必要とし、50〜300psi
の圧力を加えるのがよいと報告されている。この反応で
は、副反応にアリルクロリドの塩素とケイ素の水素が交
換し、テトラクロロシランとプロピレンが副産物として
生成し、プロピレンは更にトリクロロシランと反応して
プロピルトリクロロシランが生成する(F.P. Mackay,
O.W. Steward and P.G. Campbell, J. Am. Chem. Soc.,
79, 2764 (1957); J.L. Speier,J.A. Webstre and S.
W. Barnes, J. Am. Chem. Soc., 79, 974 (1957))。
【0007】γ−クロロプロピルトリクロロシランをア
ルコールと反応させると塩化水素を発生し、アルコキシ
化合物となる。この反応で使用するアルコールの量は、
γ−クロロプロピルトリクロロシラン1モルに対して最
少限3モル以上を使用するのがよい。不活性有機溶媒を
使用すれば、反応が速く塩化水素が生成する量が少ない
ので、塩化水素とアルコールとが反応して水を生成する
副反応が減少する。この反応で使用することのできるア
ルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等
の脂肪族アルコールは勿論、フェノールのような芳香族
アルコールも使用することができる。
【0008】一般的に、不飽和結合を有する炭化水素
は、トリクロロシランと容易に反応する。不飽和結合が
分子の末端にある化合物は中間にある化合物よりも反応
性が高く、環状の化合物よりも直鎖形の化合物の方が反
応性がよい。スチレンのような芳香族環を有する化合物
も容易に反応する。しかし、アクリロニトリルのように
シアノ基を有する場合には、貴金属の触媒は活性が弱
く、有機アミン、ニッケル又は鉄化合物を触媒に使用す
る方がよいことが知られている(W. Noll, "Chemistry
and Technology of Silicones", Academic Press, New
York, 1968)。
【0009】上記のように、トリクロロシランをアリル
クロリドのような不飽和結合を有する有機物と先ず付加
反応させた後に、アルコールと反応させてアルコキシシ
ランに転換させる代りに、先ずトリクロロシランとアル
コールを反応させてトリアルコキシシランを得て、次に
不飽和化合物に付加反応させることもできる。このよう
な反応順序を使用することが不可避の場合があるが、ヒ
ドロシリル化反応で導入する有機基が酸により反応を起
こす場合である。例を挙げれば、エポキシ基を有するグ
リシジルエーテルかアリルメタクリレートのようにエス
テル基を有する場合である。エポキシ基かエステル基
は、酸により加水分解するかアルコールと反応するため
に、アルコキシに転換させる反応を先にし、次にヒドロ
シリル化反応させなければならない。プルドマンと彼の
共同研究者らは、米国特許第3,258,477号でア
クリレートで置換されたカップリング剤を製造するため
に、ビニルアクリレートかアリルメタクリレートとトリ
アルコキシシランをヒドロシリル化反応させて、良い収
率で生成物を得たと報告している。この反応で使用する
触媒は、塩化白金酸が良いと報告された。更に彼らは、
グリシドキシプロピル基で置換されたカップリング剤を
合成するには、アリルグリシジルエーテルにトリアルコ
キシシランを付加させて合成したと報告している(E.P.
Ptueddemann and G Fanger, J. Am. Chem. Soc., 81,
2632 (1959) 。
【0010】本発明者らは、クロロメチル基を有する種
々のシランを、塩化水素又は反応温度で分解して塩化水
素を発生することのできるt−ブチルクロリドのような
有機塩化物と混合し、金属ケイ素と反応させればケイ素
−水素結合を有するビスシリルアルカンが得られること
を知った(韓国特許出願第24243号(1991.1
2.24)。同じ方法で、クロロメチル基を有するシラ
ンを使用する代りに、メチレンクロリドかα,α−ジク
ロロトルエン、α,ω−ジクロロアルカン等を使用すれ
ば、各々ケイ素−水素結合を有するクロロビスシリルメ
タンかクロロビスシリルフェニルメタン、クロロビスシ
リルアルカンが得られることを知った(韓国特許出願第
935号(1992.1.23)。
【0011】
【化5】
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、上で言及
したように合成する一般式(I)の化合物を出発物質と
し、加水分解の可能なクロロ原子又はアルコキシ基を有
する2個のシリル基を持つカップリング剤を製造するこ
とができることを見出した。このような2個のシリル基
を持つ化合物を出発物質として、生成したカップリング
剤は、既存のカップリング剤よりも加水分解が可能なク
ロロ原子又はアルコキシ基をより多く有しているため
に、無機物との結合性が増加することになり、従ってよ
り改善されたカップリング剤としての性質を有すること
が予想される。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、一般式
(I)のビスシリルアルカンと一般式(II)の2重結合
を有する化合物又はシクロヘキセンを塩化白金酸、シリ
カに担持した白金、トリブチルアミン、その他Pd、R
h、Ni等の化合物を触媒に使用してヒドロシリル化反
応で付加させ、得られる一般式(III)のビスシリルアル
カンを得ることができた。
【0014】
【化6】
【0015】(式中、nは1−4の正数を表し、R1
水素原子又はフェニル基を表し、Xは塩素原子又はC1
−C4 のアルコキシ基を表す)。
【0016】CH2 =CH−R3 (II)
【0017】(式中、
【化7】 を表す)。
【0018】
【化8】
【0019】(式中、n、R1 及びXは、一般式(I)
で定義したものと同一であり、R2は−CH2 CH23
(R3 は前記と同じ)又はシクロヘキシル基を表す)
【0020】さらに必要に応じて、上記ヒドロシリル化
反応の生成物にアルコールを反応させてケイ素原子に結
合している塩素原子をアルコキシ基に変換する。
【0021】本発明で2個のケイ素を有するカップリン
グ剤を製造するために、ビスシリルアルカンを不飽和結
合を有する種々の有機化合物に付加させるためのヒドロ
シリル化反応は、通常実験室で使用するガラス器具を使
用するか商業化した反応槽を使用してもよい。反応装置
は、不活性気体中で原料を徐々に注入することのできる
装置がなくてはならず、撹拌器と熱を加えるか冷却する
ことのできる装置がなくてはならない。トリクロロシラ
ンを使用してカップリング剤を製造する場合とは異な
り、ビスシリルアルカンの沸点は低くないので、反応槽
に圧力を加える必要はないが、アリルクロリドの場合と
同じく、気体である副産物が生ずる場合は圧力を加える
必要がある。しかし、この反応工程は装置や反応圧力に
より異なるものではない。この反応には、溶媒を使用す
ることもあるが、大部分は溶媒を使用しなくても可能で
ある。
【0022】典型的な合成工程は、不活性気体中でクロ
ロビスシリルアルカン(I)と触媒を反応槽に入れ、不
飽和結合を有する化合物(II)を徐々に注入する。或る
場合には、クロロビスシリルアルカン(I)と有機化合
物(II)の注入順序を変更してもよい。或る反応では相
当な発熱反応であるから、クロロビスシリルアルカンの
注入速度を調節することで、外部から加熱しないで還流
させることができる。クロロビスシリルアルカン(I)
の注入が終った後にも、反応を完結させるために、一定
時間撹拌を継続する。反応が終了したら溶液を分別蒸溜
し、生成物を取り出す。
【0023】
【実施例】次の実施例は、本発明をより詳細にするため
のもので本発明がこれにより制限されるものではない。
【0024】実施例1.500ml容の2口フラスコに凝
縮器と機械的撹拌器を装置し、凝縮器の末端には乾燥し
た窒素が通過するようにして、全装置が窒素大気下に維
持されるようにした。1,1,1,3,3−ペンタクロ
ロ−1,3−ジシラプロパン100g(0.40mole)と
アリルクロリド37.0g(0.48mole)をフラスコに
入れ、1%塩化白金酸触媒溶液を156μl 注入した。
反応器を45〜50℃程度に維持しながら撹拌器で激し
く撹拌し、3時間反応させた。このとき気体クロマトグ
ラフィーで出発物質の消耗を確認することができ、反応
物の分別蒸溜を通じて付加反応生成物である1,1,
1,3,3,6−ヘキサクロロ−1,3−ジシラヘキサ
ン77.5g(収得率59.6%)を得た。収得した生成
物は、60MHz 水素核磁気共鳴分析の結果、δ 1,59ppm
(s, 2H, Si-CH2-Si), 1.42ppm(t, 2H, Si-CH2-C), 2.10
ppm(m, 2H, C-CH2-C), 3.60ppm(t, 2H, C-CH2-Cl) にピ
ークを確認した。
【0025】このような方法で、種々の不飽和化合物を
塩化白金酸触媒の存在下でヒドロシリル化反応させた結
果を第1表に示す。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2.実施例1の方法で、種々の不飽
和化合物を塩化白金酸以外の種々の触媒を使用してヒド
ロシリル化反応させた結果を第2表に示す。
【0028】
【表2】
【0029】実施例3.実施例1の方法で、種々の不飽
和シラン化合物を塩化白金酸触媒の存在下でヒドロシリ
ル化反応させた結果を第3表に示す。
【0030】
【表3】
【0031】実施例4.実施例1の方法で、1,1,
1,3,3−ペンタクロロ−2−フェニル−1,3−ジ
シラプロパンを使用して、種々の不飽和化合物を塩化白
金酸触媒の存在下でヒドロシリル化反応させた結果を第
4表に示す。
【0032】
【表4】
【0033】実施例5.実施例4の方法で、種々の不飽
和化合物を塩化白金酸以外の種々の触媒を使用してヒド
ロシリル化反応させた結果を第5表に示す。
【0034】
【表5】
【0035】実施例6.実施例4の方法で、種々の不飽
和シラン化合物を塩化白金酸の触媒の存在下でヒドロシ
リル化反応させた結果を第6表に示す。
【0036】
【表6】
【0037】実施例7.実施例1の方法で、1,1,
1,4,4−ペンタクロロ−1,4−ジシラブタンを使
用し、種々の不飽和化合物を塩化白金酸等の種々の触媒
を使用してヒドロシリル化反応させた結果を第7表に示
す。
【0038】
【表7】
【0039】実施例8.実施例1の方法で、1,1,
1,5,5−ペンタクロロ−1,5−ジシラペンタンを
使用し、種々の不飽和化合物を塩化白金酸等の種々の触
媒を使用してヒドロシリル化反応させた結果を第8表に
示す。
【0040】
【表8】
【0041】実施例9.実施例1の方法で、1,1,
1,6,6−ペンタクロロ−1,6−ジシラヘキサンを
使用し、種々の不飽和化合物を塩化白金酸等の種々の触
媒を使用してヒドロシリル化反応させた結果を第9表に
示す。
【0042】
【表9】
【0043】実施例10.1L 容の3口フラスコに、凝
縮器、撹拌器及び滴下ろう斗を装置し、凝縮器の末端部
には乾燥した窒素が通過するようにし、全装置が窒素大
気下に維持できるようにした。実施例1でヒドロシリル
化反応により生成した1,1,1,3,3,6−ヘキサ
クロロ−1,3−ジシラヘキサン50g(0.15mole)
を乾燥したエチルエーテルに溶かした溶液をフラスコに
入れ、撹拌器で激しく撹拌しながら、滴下ろう斗を使用
してメチルアルコール48g(1.5mole)を徐々に滴下
した。反応物から生成物1,1,1,3,3−ペンタメ
トキシ−6−クロロ−1,3−ジシラヘキサンを収得率
85.2%で得た。得られた生成物は60MHz 水素核磁
気共鳴分析の結果δ: 1.59ppm(s, 2H, Si-CH2-Si), 1.4
2ppm(t, 2H, Si-CH2-C), 2.10ppm(m, 2H, C-CH2-C), 3.
60ppm(t, 2H, C-CH2-Cl), 3.50ppm(s, 15H, Si-OCH3)を
確認した。
【0044】このような方法で、実施例1から9迄のヒ
ドロシリル化反応で得た生成物を、メチルアルコールと
反応させて得た結果を第10表−1〜5に表す。
【0045】
【表10】
【0046】
【表11】
【0047】
【表12】
【0048】
【表13】
【0049】
【表14】
【0050】
【表15】
【0051】
【表16】
【0052】実施例11.実施例10の方法で、実施例
1〜9のヒドロシリル化反応で得られた生成物中、一部
をエチルアルコールと反応させて得た結果を第11表−
1〜3に示す。
【0053】
【表17】
【0054】
【表18】
【0055】
【表19】
【0056】実施例12.実施例10の方法で、実施例
1〜9のヒドロシリル化反応で得られた生成物中、一部
をプロピルアルコールと反応させて得た結果を第12表
に示す。
【0057】
【表20】
【0058】実施例13.実施例10の方法で、実施例
1〜9のヒドロシリル化反応で得られた生成物中、一部
をブチルアルコールと反応させて得た結果を第13表に
示す。
【0059】
【表21】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 27/13 B01J 27/13 X 31/02 102 31/02 102X 31/04 31/04 X C07F 7/18 C07F 7/18 W // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 延 昇 浩 大韓民国京畿道▲み▼金市坪内洞103− 2 三昌アパート101−506 (56)参考文献 特開 昭56−133297(JP,A) 米国特許3773819(US,A) 米国特許3646091(US,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(III)のビスシリルアルカン類。 【化1】 式中、R1 は水素原子又はフェニル基を表し、 R2 は−CH2 CH23 又はシクロヘキシル基を表
    し、 【化2】 を表し、 nは1の正数を表し、 Xは塩素原子又はC1 〜C4 のアルコキシ基を表す。
  2. 【請求項2】 一般式(I)のビスシリルアルカンと一
    般式(II)の2重結合を有する化合物又はシクロヘキセ
    ンを、塩化白金酸、シリカに担持した白金、アルミナに
    担持した白金、炭素に担持した白金、白金ブラック、ロ
    ジウムブラック、パラジウムブラック、ルテニウムブラ
    ック、ニッケル、トリブチルアミン及び3−クロロパオ
    キシ安息香酸から選ばれる少なくとも1つの触媒の存在
    下で反応させ、さらに必要に応じて上記ヒドロシリル化
    反応の生成物にアルコールを反応させてケイ素原子に結
    合している塩素原子を、アルコキシ基に変換することを
    特徴とする請求項1の一般式(III)のビスシリルアルカ
    ン類の製造方法。 【化3】 (式中、n、R1 、R2 、R3 及びXは前記と同じ)
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