JP2509200B2 - (S)−α−メチルアリ−ル酢酸の製造方法 - Google Patents

(S)−α−メチルアリ−ル酢酸の製造方法

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JP2509200B2 JP61305166A JP30516686A JP2509200B2 JP 2509200 B2 JP2509200 B2 JP 2509200B2 JP 61305166 A JP61305166 A JP 61305166A JP 30516686 A JP30516686 A JP 30516686A JP 2509200 B2 JP2509200 B2 JP 2509200B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はキラルα−メチルアリール酢酸の製造方法に
関する。更に詳しくは、微生物由来の細胞外リパーゼ
(EC 3.1.1.3)を用いて鏡像特異性加水分解によってラ
セミ混合物のような(R)−及び(S)−α−メチルア
リール酢酸エステル混合物から(S)−α−メチルアリ
ール酢酸を製造する方法に関する。
(技術背景) 数々のα−メチルアリール酢酸(2−アリールプロピ
オン酸)は抗炎症薬として知られており、なかでも最も
良く知られているのはイブプロフェン、フルールビプロ
フェン、ケトンプロフェン及びスプロフェン(全て置換
されたα−メチルベンゼン酢酸である)、並びにナプロ
キセン(置換されたα−メチルナフタレン酢酸)であ
る。良く知られているように、α−メチルアリール酢酸
分子はα−炭素原子でキラルであり、そのために2つの
立体異性体、R−及びS−型(該各型は「シークェンス
・ルール」の適用によって名付けられた、ジャーナル・
オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organ
ic Chemistry)、第35巻、第2863〜7頁、1970年)が存
在する。該α−メチルアリール酢酸のS−鏡像異性体は
通常R−鏡像異性体よりも大きな抗炎症活性を有する
[「非ステロイド抗炎症薬(ノン・ステロイダル・アン
チインフラマトリー・ドラッグス)」、ジェイ・ジー・
ロンバーディノ(編集者)、ジョーン・ウィリー・アン
ド・サンズ、ニューヨーク、1985年、第303頁]。例え
ば、6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸の
S−鏡像異性体はR−鏡像異性体よりも28倍大きい抗炎
症活性を有する[アイ・ティ・ハリソン等、ジャーナル
・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Med
icinal Chemistry)、第13巻、第203頁、1970年]。そ
こで、S−鏡像異性体だけを抗炎症薬ナプロキセンとし
て用いる(USAN及び薬品名のUSP辞書、1986年、第222
頁)。
6−メトキシ−α−メチル−2−ナフラレン酢酸を化
学合成すると[アイ・ティ・ハリソン等、ジャーナル・
オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medic
inal Chemistry)、第13巻、第203頁、1970年]、R−
及びS−鏡像異性体のラセミ混合物となる。分割方法が
ラセミ混合物から分離した鏡像異性体を得るために用い
られる。しかしながら、該分割方法はわずらわしく、か
つ、高価であった。通常、化学的分割方法は、シンコニ
ジン[ペー・ビルス等、西独特許(公開)第2,319,245
号(1973年)、米国特許第3,787,580号、第3,651,106
号、第3,906,038号]又はデヒドロアビエチルアミンア
セテート[英国特許第1,426,186号(1976年)]のよう
な高価なアミンの使用又は回収が困難であるグルカミン
[イー・フェルダー等、英国特許出願第2025968A号(19
80年)]のような水溶性アミンの使用によってジアステ
レオマー塩の選択的な化学量論的結晶化を必要とする。
ナプロキセンは高価で入手し難い(1)−10−カンフル
スルフォン酸を用いた前駆体の化学的分割によっても製
造される[ツチハシ、テトラヘドロン・レターズ(Tetr
ahedron Letters)、第5427頁、1982年)]。一方、無
傷の微生物は(±)−6−メトキシ−α−メチル−2−
ナフタレン酢酸メチルエステルの部分分割に用いられる
[エス・イリウチジマ及びエイ・ケイユ、アグリカルチ
ュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agri.Biol.Ch
em.)、第45巻、第1389頁、1981年]。あいにく、細胞
内酵素濃度が低く、乾燥した細胞の量(400mg)が
(±)−エステル基質の量(160mg)を上回るので転化
速度は非常に遅い(基質の16.3%が転化する)。したが
って、該方法は得ようとする目的を達成することができ
ない。
[発明の記載] 広くは、本発明は微生物起源の細胞外リパーゼ(EC
3.1.1.3)を用いて鏡像特異性加水分解によってラセミ
混合物のような(R)−及び(S)−α−メチルアリー
ル酢酸エステル混合物から成る基質から(S)−α−メ
チルアリール酢酸を製造する方法から成る。
[詳細な記載] 鏡像特異性加水分解の基質であるα−メチルアリール
酢酸エステルは下記一般式で示される。
ここで、 Arは場合により置換されていてもよいアリール基であ
り、 XはO又はSであり、そして、 Rは場合により置換されていてもよいアルキル基であ
る。
Arは好ましくは単環式、多環式又は縮合多環式芳香族
もしくはヘテロ芳香族基であって、芳香族系に12個以下
の炭素原子を有し、好ましくは6〜12の炭素原子を有
し、フェニル、ビフェニル、ナフチル、チエニル及びピ
ロリルのようなものである。芳香族基は場合によっては
1個又はそれ以上のニトロ、ハロ、ヒドロキシ、C1-4
ルキル、C3-6シクロアルキル、ベンジル、C1-4アルコキ
シ、C1-4アルキルチオ、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロア
ルコキシ、フェノキシ、テノイル及びベンゾイル基で置
換されている。
本発明の目的に達しているArとしてのアリール基を例
示すれば、フェニル、4−ベンゾイルフェニル、4−イ
ソブチルフェニル、4−(2−テノイル)−フェニル、
3−フルオロビフェニル、6−メトキシ−2−ナフチ
ル、5−ハロ−6−メトキシ−2−ナフチル、6−ヒド
ロキシ−2−ナフチル及び5−ハロ−6−ヒドロキシ−
2−ナフチルである。
Xは好ましくはOである。
Rは好ましくは場合によってはフェニルもしくは1つ
又はそれ以上の電子求引性基で置換されている1〜12個
の炭素原子を有する直鎖状、分子鎖状又は環状のアルキ
ル基であり、該電子求引性基は例えば、ハロ、ニトロ、
シアノ、ヒドロキシ、 C1-4アルコキシ、C1-4アルキルチオ又は−C(O)R1
であり、ここでR1はC1-4アルキル基、C3-6シクロアルキ
ル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、C3-6シクロアルコキ
シ、フェノキシ、ベンジルオキシ、NR2R3[ここでR2
びR3は独立してH、C1-4アルキル又はC3-6シクロアルキ
ルもしくは窒素原子とともに5または6員環を形成し、
該環は場合によってはO、NH又はN−(C1-4アルキ
ル)]又はOMを含むことができ、ここでMはアルカリ金
属である。
電子求引性基が存在する場合、それは基の安定性と相
容性がある限り、好ましくはR基のα−又はβ−位にあ
る。R基が電子求引性基を含有しているエステルは活性
化エステルと称され、該エステルはR基が電子求引性基
で置換されていないエステルよりも早く加水分解する。
Rとしてのアルキル基を例示すればメチル、エチル、
ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ベンジル、2
−クロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−フル
オロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ブロモ
エチル、シアノメチル、2−ニトロプロピル、カルボエ
トキシメチル、メトキシメチル、2−ヒドロキシ−1,2
−ジメトキシカルボニルエチル、2−ヒドロキシ−1,2
−ジカルボキシエチル、2−ヒドロキシ−1,2−ジエト
キシカルボニルエチル等である。
本発明の製造方法は(R)−及び(S)−α−メチル
アリール酢酸エステル混合物から成る基質を細胞外微生
物リパーゼ(EC 3.1.1.3)の加水分解酵素力に委ね、
(S)−α−メチルアリール酢酸を回収することから成
る。
得られた(S)−α−メチルアリール酢酸がナプロキ
センのような薬剤の、例えば(S)−5−ハロ−6−メ
トキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸、(S)−6
−ヒドロキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸又は
(S)−5−ハロ−6−ヒドロキシ−α−メチル−2−
ナフタレン酢酸の前駆体である場合、該前駆体は欧州特
許出願第95901号明細書(1983年)に記載の方法によっ
てナプロキセンに転化される。
分割される(R)−及び(S)−α−メチルアリール
酢酸のエステルは常用の方法によって製造される(例え
ば、アイ・ティー・ハリソン及びエス・ハリソン、「コ
ンペンディウム・オブ・オーガニック・シンセティック
・メソッズ(有機合成方法概論)」、第8章、ウィリ
ー、ニュヨーク、1971年、第271頁、参照)。実際は、
α−メチルアリール酢酸及びそのエステルの公知(非鏡
像特異性)合成法は、典型的にはラセミ又はほぼラセミ
に近いR−及びS−異性体の混合物を生成するので、本
発明の鏡像特異性加水分解のための基質が容易に得られ
る。
細胞外微生物リパーゼが鏡像特異性加水分解に触媒作
用を及ぼす機能を果たすことがわかった。特に該細胞外
微生物リパーゼはカンジダ属(Candida)、クモノスカ
ビ属(Rhizopus)、ケカビ属(Mucor)、アスペルギル
ス属(Aspergillius)、ペニシリウム属(Penicilliu
m)、プセウドモナス属(Pseudomonas)、クロモバクテ
リウム属(Chromobacterium)及びゲオトリクム属(Geo
trichium)の各属の微生物から派生される。特に好まし
くはカンジダ・シリンドラセア(Candida cylindrace
a)である[エヌ・トミヅカ等、アグリカルチュラル・
バイオロジカル・ケミストリー(Agri.Bio.Chem.)、第
30巻、第576頁、1966年]。
細胞外微生物リパーゼはよく知られており、多くは市
販されている[例えば、「リパーゼス(Lipases)」の
エム・イワイ及びワイ・ツジサカ、第434頁、及びエム
・スグウラ、第505頁、編集者ベー・ボルクストレム及
びエイチ・エル・ブロックマン、エルセビア、ニューヨ
ーク、1984年]。例えば、これらは脂肪のエステル交換
反応で工業的に用いられており、油性汚染物質の除去の
ための洗濯洗剤に混合されている。これらを無傷の微生
物自体と区別する該リパーゼの1つの顕著な特徴は、該
リパーゼは基質及び生成物の高濃度に対して耐性がある
ということである。例えば、基質及び生成物による顕著
な阻害は見られない。それゆえに、該酵素加水分解反応
は非常に高度の鏡像特異性で高濃度(0.1〜5M)で実施
できる。更に、記載された反応条件下で非常に安定であ
るので、反応媒体から回収され(例えば、膜フィルター
での濾過又は類似方法によって)、再利用される。
該リパーゼを製造する微生物は常法にしたがって液体
栄養士で成長させ得る。微生物を減菌液体培地に植え付
け、20℃〜40℃で1〜3日間交互振とう機上で成長させ
得る。
好適なリパーゼ濃度は技術的に通常使用されている範
囲であり、主としてリパーゼのコストと比較して望まし
い転化率に基づく実験によって決定される。約100,000
分子量を有するカンジダシリンドラセア(Candida cyli
ndracea)リパーゼに関して、好適な濃度は約10-5M〜1
0-3Mであり、代表的には約10-4M又は純リパーゼ10mg/
mlである。
基質から成る(R)−及び(S)−α−メチルアリー
ル酢酸エステル混合物を濃度0.1〜5M、代表的には1〜2
Mの固体又は液体状態でリパーゼから成る液体媒体に添
加し、鏡像特異性加水分解を生じさせる。液体媒体は
水、微生物の同じ培養ブロース又はその抽出物又は濃縮
物もしくは微生物細胞の懸濁液である。一方、リパーゼ
が溶媒で変性しないならば基質を四塩化炭素、シクロヘ
キサン、二硫化炭素又はヘキサンのような好適な有機溶
媒に溶解する。更に、基質をポリビニルアルコール又は
プロピレングリコールのような乳化剤を用いて乳化す
る。もちろん、基質とリパーゼとの接触の時間、温度及
び圧力の条件は、当業者に自明であるように、相互に依
存する。通常、常圧で温度は約10℃〜約40℃の範囲であ
り、好ましくは最大転化率に対応する範囲(例えば、25
〜40℃)が上限である。媒体のpHは約3〜約8、代表的
には約4〜約7の範囲であり、好ましくは、酸又は塩基
の添加によって、もしくはリン緩衝液のような緩衝溶液
の使用によって比較的一定に維持される。反応時間は代
表的には数時間〜数週間、すなわち4時間〜3週間であ
り、さらに代表的には約2時間〜7日間である。該反応
時間は反応の温度及び圧力の変化、基質及びリパーゼの
濃度並びに基質及びリパーゼ自体の性質によって充分に
変え得、そして、このような条件の最も効果的な活用は
当業界に知られた技術によって実施することができる。
鏡像異性体加水分解反応に次いで、S型に富んだα−
メチルアリール酢酸及びR型に富んだ未反応エステルを
酢酸エチル、塩化メチレン、エチルエーテル及びトルエ
ン等のような水と混合できない有機溶媒を用いて反応混
合物から抽出する。ついで、S型に富んだ酸及びR型に
富んだエステルは抽出又はクロマトグラフィによって分
離され得る。
別法として、S型に富んだα−メチルアリール酢酸を
水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液のような
アルカリ水溶液を用いた抽出によって単離することがで
きる。
S酸及びRエステルの分離は、反応混合物を遠心分離
又は濾過し、Rエステルである固体を単離することによ
っても実施され得る。上澄み液又は濾液を酸性化し、S
酸を得る。
前述の本発明の製造方法は種々の方法に変形及び改良
することができるのは当業界で周知のことである。
例えば、リパーゼは慣用技術[「固定化酵素」、医学
博士トリーバン、ウィリー、ニューヨーク、1980年、参
照]によって固定されることができ(例えば、水溶性又
は水不溶性ポリマー、ケイソウ土のような無機物質等の
上に)、費用軽減のために何回も再利用し、Rエステル
は再生され、ラセミ化され[例えば、ジェイ・ケニヨン
及びディ・ピー・ヤング、ジャーナル・オブ・ケミカル
・ソサイアティ(Journal of Chemcal Society)、第21
6頁、1940年、参照]そして再利用され、また基質は微
結晶粉末としてリパーゼにさらし、より良い分散性を得
る。さらに、エステル基を開裂しないでエステル基のみ
を反応液中で連続的にラセミ化するように、基質及びラ
セミ化剤を好適な溶媒に溶解することができる。このよ
うな場合、該製造方法は不せい合成に等しい。界面活性
剤(例えば、胆汁酸、リン脂質)のようなリパーゼの活
性剤及び安定剤又は乳化剤は、低濃度で[例えば、エヌ
・トミザキ等、アグリカルチュラル・バイオロジカル・
ケミストリー(Agri.Biol.Chem.)、第30巻、第576頁、
1966年、参照]、混合物に添加することができ、又活性
化エステル基質は[ボダンスキー等、「ペプチド合
成」、第2版、ウィリー、ニューヨーク、1976年、第99
頁〜第108頁]、転化率を増加するために用い得る。さ
らにリパーゼの突然変異誘発又は化学的変異を支配する
活性部位は触媒能、及び/又は安定性を改良したリパー
ゼを製造するために用いらるVmax/Km[「エンツィマテ
ィック・リアクション・メカニズムス(酵素反応機
構)」、シー・ウオルシュ、フリーマン、ニューヨー
ク、1979年、第35頁] 以下の実施例は本発明を示すものであり、特許請求の
範囲を限定するものではない。
(実施例) 実施例1 カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)
リパーゼ(100mg、シグマ(Sigma)、L1754、タイプ V
II、500ユニット/mg、固体)を0.2Mリン酸緩衝液(pH8.
0)1mlに懸濁した懸濁液に微細粉末状の(±)−6−メ
トキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸メチルエステ
ル244mgを添加して1Mラセミエステル基質懸濁液とし、
及びポリビニルアルコール(分子量14,000)100mgを加
えた。反応混合物を24℃で6日間磁気撹拌器で撹拌し
た。次いで、内容物をHClで酸性化し、酢酸エチルで3
回徹底的に抽出した。有機抽出物を合わせて硫酸ナトリ
ウムで乾燥し、次いで濃縮乾固した。残渣を5%NaHCO3
水溶液に懸濁し、ヘキサンで抽出し、未反応の(R)−
6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸メチル
エステル(128mg、[α]D23=−41.35°(c=5.34、C
HCl3)を得た。水溶液層をHClでpH2.0まで酸性化し、次
いでジクロロメタンで抽出することによって、(S)−
6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸 ([α]D23=+65.0°、c=1.64、CHCl3)58mgを得
た。
(上記[α]Dは[α]Dを示す。以下同様) 実施例2〜7 下記表に示した(±)−6−メトキシ−α−メチル−
2−ナフタレン酢酸の異なるエステルを基質として用い
たことを除いて実施例1の方法を繰り返した。各場合に
おいて、表に示された光学活性の(S)−6−メトキシ
−α−メチル−2−ナフタレン酢酸を収率良く得た。
実施例8 セライトに固定したカンジダ・シリンドラセア(Cand
ida cylindracea)リパーゼ(ワイ・キムラ等、ヨーロ
ピアン・ジャーナル・アプリケイション・マイクロバイ
オロジカル・バイオテクノロジー、第17巻、第107頁、1
983年に記載されたような)をリパーゼとして用いた以
外は実施例1の方法を繰り返し、(S)−6−メトキシ
−α−メチル−2−ナフタレン酢酸([α]D23=+60.
18°、c=1.1、CHCl3)を収率良く得た。
実施例9 アクリルビーズに固定したカンジダ・シリンドラセア
(Candida cylindracea)リパーゼ(シグマ)[ケイ・
ローメン等、テトラヘドロン・レター(Tetrahedron Le
tter)、第407頁、1985年]をリパーゼとして用いた以
外は実施例1の方法を繰り返し、(S)−6−メトキシ
−α−メチル−2−ナフタレン酢酸([α]D23=+63.
8°、c=1.2、CHCl3)を収率良く得た。
実施例10 0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)1mlに、カンジダ・シリン
ドラセア(Candida cylindracea)リパーゼ(1100ユニ
ット/mg)[ティ・トミヅカ等、アグリカルチュラル・
バイオロジカル・ケミストリー(Agr.Biol.Cmem.)、第
30巻、第576頁、1966年]の精製品10mg及び微粉末状の
(±)−6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢
酸メチルエステル244mgを添加し、1M懸濁液を得た。得
られた懸濁液を22℃で5日間磁気撹拌器でゆっくりと撹
拌した。次いで、反応混合物を1000×gで5分間遠心分
離した。沈澱物をただちに0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)
で洗浄し、再び遠心分離し、未反応の水不溶性の(R)
−6−メチキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸メチ
ルエステル(94mg、[α]D23=−72.39°、c=6.98、
CHCl3)を得た。上澄み液及び洗浄液を共に3NのHClでpH
2.5まで酸性化し、遠心分離によって沈澱物を得、
(S)−6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢
酸([α]D23=+68.87°、c=5.22、CHCl3)96mgを
得た。
実施例11 0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)1mlに、粗カンジダ・シリ
ンドラセア(Candida cylindracea)リパーゼ(シグ
マ、L1754、タイプVII、500ユニット/mg、固体)50mg及
び微粉末状の(±)−6−メトキシ−α−メチル−2−
ナフタレン酢酸2−クロロエチルエステル292mgを添加
して1M懸濁液とし、1×10-3Mメルカプトエタノール及
びポリビニルアルコール10mgを加えた。得られた懸濁液
を22℃で42時間磁気撹拌器でゆっくりと撹拌した。次い
で、反応混合物を1000×gで5分間遠心分離し、沈澱物
を0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)で洗浄し、再び遠心分離
し、未反応の水不溶性の(R)−6−メトキシ−α−メ
チル−2−ナフタレン酢酸2−クロロエチルエステル
(140mg、[α]D23=−20.5°、c=4.96、CHCl3)を
得た。上澄み液及び洗浄液を共に3NのHClでpH2.0まで酸
性化し、沈澱物を濾過によって得、(S)−6−メトキ
シ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸([α]D23=+6
4.2°、c=3.49、CHCl3)92mgを得た。
実施例12 0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)1mlに、カンジダ・シリン
ドラセア(Candida cylindracea)リパーゼ(メイト・
サンギョ(Meito Sangyo)リパーゼOF-360、360,000u/
g)10mg及び微粉末状の(±)−6−メトキシ−α−メ
チル−2−ナフタレン酢酸2−クロロエチルエステル29
2mgを添加して1M懸濁液とし、1×10-3Mメルカプトエ
タノール及びポリビニルアルコール10mgを加えた。得ら
れた懸濁液を22℃で48時間磁気撹拌器でゆっくりと撹拌
した。次いで、反応混合物を濾過し、沈澱物を0.2Mリン
酸緩衝液(pH8.0)で洗浄した。固体は未反応の(R)
−6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸2−
クロロエチルエステル(120mg、[α]D25=−16.51
°、c=7.73、CHCl3)から成っていた。濾液及び洗浄
液を共に3NのHClでpH2.0まで酸性化し、濾過によって沈
澱物を得、(S)−6−メトキシ−α−メチル−2−ナ
フタレン酢酸([α]D25=+61.18°、c=3.3、CHC
l3)66mgを得た。
実施例13〜20 (±)−6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン
酢酸の異なるエステルを基質として用いた以外は実施例
12の方法を繰り返し、(S)−6−メトキシ−α−メチ
ル−2−ナフタレン酢酸を得た。
実施例21 0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)4mlに、粗カンジダ・シリ
ンドラセア(Candida cylindracea)リパーゼ(シグ
マ、L1754、タイプVII、500ユニット/mg、固体)100mg
及び(±)−α−メチル−4−(2−チエニルカルボニ
ル)ベンゼン酢酸メチルエステル(スプロフェンメチル
エステル)200mgを添加した。得られた懸濁液を22℃で4
8時間磁気撹拌器でゆっくりと撹拌した。反応混合物を1
NのHClでpH1.0まで酸性化し、酢酸エチルで3回徹底的
に抽出した。有機抽出物を合わせて硫酸ナトリウムで乾
燥し、次いで、濃縮乾固した。残渣をシリカゲル(MN K
ieselgel 60)カラム(0.8×15cm)でクロマトグラフィ
処理した。酢酸エチル−ヘキサン(1:5)から成る溶媒
系でカラムを溶離し、未反応の(R)−α−メチル−4
−(2−チエニルカルボニル)ベンゼン酢酸メチルエス
テル([α]D25=−54.7°、c=3.9、CHCl3、ee>0.9
0)及び(S)−α−メチル−4−(2−チエニルカル
ボニル)ベンゼン酢酸([α]D25=+43.5°、c=2.
1、CHCl3、ee>0.95)を得た。鏡像異性体過剰量(ee)
として示される光学的純度は、キラルランタニドシフト
試薬、Eu(hfc)3の存在下、メチルエステルのプロトン磁
性共鳴分光器によって測定した。
実施例22 (±)−α−メチル−4−(2−メチルプロピル)ベン
ゼン酢酸メチルエステル(イブプロフェンメチルエステ
ル)200mgを基質として用いた以外は実施例21の方法を
繰り返した。未反応の(R)−α−メチル−4−(2−
メチルプロピル)ベンゼン酢酸メチルエステル([α]
D25=−45.1°、c=5.3、CHCl3、ee=0.70)及び
(S)ほα歩メチル−4−(2−メチルプロピル)ベン
ゼン酢酸([α]D25=+50.44°、c=2.7、CHCl3、ee
=0.95)を回収した。
実施例23 (±)−α−メチルベンゼン酢酸メチルエステル200mg
を基質として用いた以外は実施例25の方法を繰り返し
た。未反応の(R)−α−メチルベンゼン酢酸メチルエ
ステル([α]D25=−67.8°、c=2.2、CHCl3、ee=
0.80)及び(S)−α−メチルベンゼン酢酸([α]D
25=+27.4°、c=2.0、CHCl3、ee=0.45)を回収し
た。
実施例24 (±)−2−フルオロ−α−メチル−[1,1′−ビフェ
ニル]−4−酢酸メチルエステル(フルルビプロフェン
メチルエステル)200mgを基質として用い、カンジタシ
リンドラセア(Candida cylindracea)リパーゼ(メイ
ト・サンギョ、リパーゼ OF-360、360,000u/g)100mg
をリパーゼとして用いた以外は実施例21の方法を繰り返
した。未反応の(R)−2−フルオロ−α−メチル−
[1,1′−ビフェニル]−4−酢酸メチルエステル
([α]D25=−21.5°、c=4.8、CHCl3、ee=0.41)
及び(S)−2−フルオロ−αメチル−[1,1′−ビフ
ェニル]−4−酢酸([α]D25=+29.7°、c=2.3、
CHCl3、ee=0.65)を回収した。
実施例25 (±)−3−ベンゾイル−α−メチルベンゼン酢酸メチ
ルエステル(ケトプロフェンメチルエステル)200mgを
基質として用い、カンジタシリンドラセア(Candida cy
lindracea)リパーゼ(メイト・サンギョ、リパーゼ O
F-360、360,000u/g)をリパーゼとして用いた以外は実
施例21の方法を繰り返した。未反応の(R)−3−ベン
ゾイル−α−メチルベンゼン酢酸メチルエステル
([α]D25=−43.8°、c=1.6、CHCl3、ee=0.60)
及び(S)−3−ベンゾイル−α−メチルベンゼン酢酸
([α]D25=+34.3°、c=3.5、CHCl3、ee=0.60)
を回収した。

Claims (27)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】α−メチル−4−(2−メチルプロピル)
    ベンゼン酢酸、2−フルオロ−α−メチル−(1,1′−
    ビフェニル)−4−酢酸、3−ベンゾイル−α−メチル
    ベンゼン酢酸およびα−メチル−4−(2−チエニルカ
    ルボニル)ベンセン酢酸のメチルおよび2−クロロエチ
    ルエステルならびに6−メトキシ−α−メチル−2−ナ
    フタレン酢酸のメチル、2−クロロエチル、エチル、n
    −ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ドデシ
    ル、ベンジル、2,2,2−トリクロロエチル、シアノメチ
    ル、2−ニトロプロピル、2−ブロモエチル、カルボエ
    トキシメチル、メトキシメチル、2−フルオロエチルお
    よび2,2,2−トリフルオロエチルエステルから選択され
    たα−メチル−アリール酢酸エステルの(R)−および
    (S)−異性体混合物を基質として、これにカンジダ・
    シリンドラセア由来の細胞外リパーゼを作用させてその
    (S)−異性体を選択的に加水分解せしめ、このように
    加水分解された(S)−異性体を分離することを特徴と
    する、α−メチル−アリール酢酸の(S)−異性体の収
    得方法。
  2. 【請求項2】α−メチル−アリール酢酸エステルの
    (R)−および(S)−異性体混合物がラセミ混合物で
    ある特許請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】リパーゼが固定化されている特許請求の範
    囲第1項記載の方法。
  4. 【請求項4】基質が(±)−α−メチル−4−(2−メ
    チルプロピル)ベンゼン酢酸メチルエステルである特許
    請求の範囲第1項記載の方法。
  5. 【請求項5】基質が(±)−α−メチル−4−(2−メ
    チルプロピル)ベンゼン酢酸2−クロロエチルエステル
    である特許請求の範囲第1項記載の方法。
  6. 【請求項6】基質が(±)−2−フルオロ−α−メチル
    −(1,1′−ビフェニル)−4−酢酸メチルエステルで
    ある特許請求の範囲第1項記載の方法。
  7. 【請求項7】基質が(±)−2−フルオロ−α−メチル
    −(1,1′−ビフェニル)−4−酢酸2−クロロエチル
    エステルである特許請求の範囲第1項記載の方法。
  8. 【請求項8】基質が(±)−3−ベンゾイル−α−メチ
    ルベンゼン酢酸メチルエステルである特許請求の範囲第
    1項記載の方法。
  9. 【請求項9】基質が(±)−3−ベンゾイル−α−メチ
    ルベンゼン酢酸2−クロロエチルエステルである特許請
    求の範囲第1項記載の方法。
  10. 【請求項10】基質が(±)−α−メチル−4−(2−
    チエニルカルボニル)ベンゼン酢酸メチルエステルであ
    る特許請求の範囲第1項記載の方法。
  11. 【請求項11】基質が(±)−α−メチル−4−(2−
    チエニルカルボニル)ベンゼン酢酸2−クロロエチルエ
    ステルである特許請求の範囲第1項記載の方法。
  12. 【請求項12】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸メチルエステルである特許請求
    の範囲第1項記載の方法。
  13. 【請求項13】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2−クロロエチルエステルであ
    る特許請求の範囲第1項記載の方法。
  14. 【請求項14】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸エチルエステルである特許請求
    の範囲第1項記載の方法。
  15. 【請求項15】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸n−ブチルエステルである特許
    請求の範囲第1項記載の方法。
  16. 【請求項16】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸n−ヘキシルエステルである特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  17. 【請求項17】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸n−オクチルエステルである特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  18. 【請求項18】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸n−ドデシルエステルである特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  19. 【請求項19】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸ベンジルエステルである特許請
    求の範囲第1項記載の方法。
  20. 【請求項20】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2,2,2−トリクロロエチルエス
    テルである特許請求の範囲第1項記載の方法。
  21. 【請求項21】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸シアノメチルエステルである特
    許請求の範囲第1項記載の方法。
  22. 【請求項22】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2−ニトロプロピルエステルで
    ある特許請求の範囲第1項記載の方法。
  23. 【請求項23】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2−ブロモエチルエステルであ
    る特許請求の範囲第1項記載の方法。
  24. 【請求項24】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸カルボエトキシメチルエステル
    である特許請求の範囲第1項記載の方法。
  25. 【請求項25】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸メトキシメチルエステルである
    特許請求の範囲第1項記載の方法。
  26. 【請求項26】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2−フルオロエチルエステルで
    ある特許請求の範囲第1項記載の方法。
  27. 【請求項27】基質が(±)−6−メトキシ−α−メチ
    ル−2−ナフタレン酢酸2,2,2−トリフルオロエチルエ
    ステルである特許請求の範囲第1項記載の方法。
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