JP2507207B2 - 建築用基礎梁の結合構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建築用地盤の所定箇所
に設置される独立基礎間に架設され、建築物の基礎を形
成する建築用基礎梁相互の結合構造の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】建築物を安定した状態で構築するために
は、まず地盤に基礎を安定かつ的確に構築する必要があ
る。この基礎の構築においては、いわゆる独立基礎形式
や布基礎形式などが知られている。

【０００３】そして、独立基礎の形式では、建築物の構
築領域の所定ポイント、例えば角部や角部と角部との中
間点などの位置に底盤などを設置して独立基礎を構築
し、その独立基礎上に基礎梁をかけ渡して設置すること
が行われている。すなわち、独立基礎形式では、布基礎
のように基礎部全体をある程度の深さまで掘削する必要
がなく、独立基礎の部分を所定深さまで掘りその他の部
分は浅い掘削で足りる。従って、地面の凍結が生じ、地
盤の掘削が困難な作業となる寒冷地などで多く用いられ
ている。

【０００４】図４には上記のような基礎梁の例が示され
ている。

【０００５】図において、基礎梁１０は所定の厚さｗを
有する直方体形状にとされており、コンクリートによっ
て構成されている。そして、地盤に設置される側、すな
わち底部１０ａには徐々に幅を狭くした台形状の切欠部
１２が設けられている。また、その両端部は他の基礎梁
との間での結合を行うため、肉厚を厚くし、その端面に
凹部１６を形成して結合部としている。

【０００６】このような基礎梁１０を用いて建築物の基
礎を構築する場合、各ポイントに独立基礎を設置した
後、その独立基礎上にこの基礎梁１０の底部側両端部で
ある脚部１４を設置してかけ渡すようにしている。この
両端部は他の基礎梁の端部と相互に結合固定されるもの
である。このような基礎梁１０の結合は、相互に直交す
る方向に行う場合や一直線上に結合する場合などの種々
の形式がある。

【０００７】図５（Ａ）及び（Ｂ）は、従来の基礎梁１
０の結合状態を示す説明図であり、同図（Ａ）は一直線
上に設置された基礎梁１０−１及び１０−２、更にそれ
らに直交するように基礎梁１０−３が結合される形式が
示されており、同図（Ｂ）は２つの基礎梁１０−４及び
１０−５が直交するように結合される例がそれぞれ示さ
れている。

【０００８】図示のように各基礎梁１０には内部に強度
増加のための鉄筋１８が埋設されている。そして、同図
（Ａ）の場合には、それぞれの基礎梁１０の凹部１６を
互いに対向するように設置し、これらの凹部１６によっ
て形成された空間に連結部の補強のための鉄筋２０を設
置し、さらにこの空間にコンクリートを打設して結合固
定を行うようにしている。

【０００９】同図（Ｂ）では、一方の基礎梁１０−４に
凹部の形成されていない基礎梁を用い、他方の基礎梁１
０−５の凹部をこの基礎梁１０−４の側面に対向させる
ように直角に設置し、その凹部１６の部分の空間に基礎
梁１０−４側から突出した鉄筋を伸長させ、その部分に
コンクリートを打設することによって両者を結合固定す
るようにしている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の基礎梁１０
の結合構造では、まず基礎梁１０の組立時において、こ
れらの凹部１６の部分にコンクリートを打設し、かつコ
ンクリートが固化するまでの間各基礎梁を安定した設置
状態としておくために仮固定用の治具が必要となる。す
なわち、打設されたコンクリートが固化するまで各基礎
梁１０は相互に非結合状態であるので、衝撃により転倒
したり位置ずれしたりするおそれがある。従って、基礎
梁１０の他に比較的大掛かりな仮固定用治具が必要とな
っていた。

【００１１】また、上記従来の基礎梁１０の結合構造で
は、各基礎梁に凹部１６を設ける必要があり、従って各
基礎梁の両端部はこの凹部１６を充分広い空間とするた
めその部分の肉厚を大きくした形状とされている。従っ
て、この基礎梁１０の建築現場への搬送時において大き
なスペースが必要となり、またその凹部１６の形成され
た部分が欠け安いなどという問題も生じていた。

【００１２】さらに、基礎梁１０の凹部１６の形成され
た端部形状はその設置箇所によって種々変更する必要が
あり、基礎梁１０の種類が多くなっていた。

【００１３】また端部に凹部１６があり断面がコ字状と
なることから基礎梁１０のコンクリート打設による成
形、特にコンクリート型枠を水平状態にした横打設を行
なうことは困難で、コンクリート型枠の形成が困難であ
った。

【００１４】この発明は、上記問題点を解決することを
課題としてなされたものであり、その目的は基礎梁相互
の結合の際に仮固定用の治具を設置する必要がなく、か
つ基礎梁の構成をより簡略化し運送スペースの縮小化や
製造の容易化を図ることのできる建築用基礎梁の結合構
造を提供することにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る建築用基礎梁の結合構造は、建築物構
築領域の所定箇所に設置した独立基礎間に架設される基
礎梁を水平方向に相互に結合するための建築用基礎梁の
結合構造において、前記基礎梁の各結合部分の建築物内
方側側面を所定範囲切り欠いて形成した切欠部と、前記
切欠部が水平方向に連続するように並設された基礎梁の
前記建築物内方側から前記連続する切欠部両側の非切欠
部に両端がまたがって当接設置され、該当接状態で前記
基礎梁の切欠部全体をコンクリート打設用空間とする接
合部材と、該接合部材の前記当接部分にて接合部材と前
記基礎梁との仮固定を行う固定部材と、を含むことを特
徴とする。

【００１６】

【作用】上記構成の建築用基礎梁の結合構造によれば、
相互に結合される基礎梁の結合部分は建築物内方側の側
面が所定範囲に渡り切り欠かれた切欠部とされている。
従って、従来の凹部の形成された基礎梁の端部構造より
もより簡略化されたシンプルな構造となっている。すな
わち、切欠部を形成するのみであるので、凹部形成のた
め他の部分よりも肉厚を大きくする必要がなく運搬時の
省スペース化や製造の容易化が容易に図ることが可能で
ある。

【００１７】そして、基礎梁相互が結合のために設置さ
れた状態では、切欠部が水平方向に連続設置されること
となるが、その２つの切欠部を接合部材にて覆うことが
できる。すなわち、接合部材の両端は並んだ切欠部の外
側の非切欠部の部分にそれぞれ当接される。これによっ
て、切欠部の部分にはこの接合部材との間に空間が形成
され、この部分がコンクリート打設用空間となる。

【００１８】そして、この接合部材は上記固定部材によ
って基礎梁側へ仮固定される。この状態で上記コンクリ
ート打設用空間にコンクリートを打設し、それが固化す
ることによって基礎梁の結合作業が終了する。この状態
では、接合部材は両基礎梁と一体化し、基礎の一部とな
る。すなわち、基礎梁の一部となって結合を行うもので
あり、従来のように基礎構成部の他にコンクリートが固
化するまでの間基礎梁を安定して支持しておくための治
具を設ける必要がない。

【００１９】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例につい
て詳細に説明する。

【００２０】図１は本発明の最も典型的な結合構造を示
しており、２つの基礎梁１０−１と１０−２を一直線上
に結合する場合の例を示した部分平面図である。

【００２１】図示のように、各基礎梁１０−１、１０−
２の結合側の端部には、設置状態における建築物内方側
の側面を所定範囲切り欠いた切欠部２２が形成されてい
る。従って、その切欠部２２の設けられた基礎梁１０の
厚さは、他の部分より薄い構造となっている。同図
（Ｂ）は、このような基礎梁の端部の構成を示した斜視
図であり、図示のように切欠部２２は基礎梁の建築物内
方側側面の所定幅で上下全体にわたって形成されてい
る。

【００２２】そして２つの基礎梁１０−１、１０−２
は、一直線上に並設されており、切欠部２２の部分が２
個連続した状態となっている。次に、接合部材２４は、
上記２個連続する切欠部２２全体を覆うように基礎梁１
０−１、１０−２に建築物内方側から当接されて取り付
けられている。同図（Ｃ）は、この接合部材２４の全体
構成を示す斜視図であり、図示のように２個連続する切
欠部２２の両側の基礎梁側面の非切欠部（切り欠かれて
いない通常の肉厚部）の部分にその両端を当接し得るよ
うな横幅をもった構成とされている。そしてその両端部
には基礎梁１０側への取付を行うための締結部材貫通用
穴２６が形成されている。 従って、この接合部材２４
を基礎梁１０に取り付けた状態では、同図（Ａ）に示し
たように２個連続する切欠部２２全体を覆い切欠部２２
の部分に空間が形成される。すなわち、この空間１００
がコンクリート打設用の空間となるものである。

【００２３】次に、この接合部材２４の基礎梁１０側へ
の仮固定は、固定部材の一構成要素であるボルト２８に
よって行われる。すなわち、このボルト２８を締結部材
挿通用穴２６に建築物内方側から挿通させ、これを基礎
梁１０側に螺入させるものである。

【００２４】ここで、基礎梁１０側はコンクリートで形
成されているため、そのボルト２８の螺入動作はそのま
までは容易に行うことができない。従って、固定部材の
他の構成要素として樹脂部３０が基礎梁１０の建築物内
方側側面に形成されている。この樹脂部３０は、接合部
材２４が当接される基礎梁１０の内側面の所定箇所、即
ち、接合部材２４の締結部材挿通用穴２６に対応する位
置に形成されており、その位置の基礎梁１０の表面部の
所定範囲に合成樹脂を埋設することによって形成してい
る。この樹脂部３０の大きさは、ボルト２８を十分に螺
入させることができ、その螺入状態を保持しておくこと
ができる範囲及び深さに形成されるものである。これに
よって、仮固定作業の容易化が図られている。

【００２５】上記のように構成された実施例によれば、
基礎梁１０−１と１０−２を直列に設置し、その状態で
２つの切欠部２２を覆うように接合部材２４を当接設置
し、これをボルト２８によって固定することで２つの基
礎梁２２は仮固定された状態となる。そして、この状態
で空間１００の部分にコンクリートを打設することによ
り２つの基礎梁１０−１と１０−２の的確な結合が行わ
れる。この状態では、接合部２４は２つの基礎梁１０−
１と１０−２の結合部分にまたがって固定されそれらと
一体化した状態となる。従って、本実施例によれば基礎
梁以外の他の仮固定用治具などを設ける必要がなく作業
部品の点数を減少させることができる。

【００２６】更に、上記のような構成とすることにより
各基礎梁１０の構成はその結合部分に従来のような肉厚
部並びに凹部１６（図４参照）を形成する必要がなく切
欠部２２を形成した極めてシンプルな形状とすることが
可能となる。これによって、基礎梁１０を積み重ねて搬
送するような場合にその搬送スペースをより小さくする
ことができる。また、そのようなシンプルな構造とする
ことによりその形成時にコンクリート型枠を水平状態に
して成形するコンクリート横打設などの製造方法をとる
ことができ、製造の容易化も達成される。

【００２７】なお、上記実施例では基礎梁１０の内部に
は鉄筋２０が埋設されており、さらに接合部材２４の内
部にも鉄筋２１が埋設されている。そして、基礎梁１０
側の鉄筋２０はその基礎梁の厚さ方向のほぼ中央寄り位
置に埋設されており、一方接合部材２４の鉄筋２１はそ
の接合部材２４の基礎梁側側面のほぼ表面近くに埋設さ
れている。

【００２８】このような鉄筋２１の埋設により、打設さ
れたコンクリートが固化した状態では鉄筋２０及び２１
はその結合部分の全体の厚さｗから見て適格な配分位置
に配置された状態が得られている。このような鉄筋２
０、２１の適正位置への配置によって基礎梁１０の結合
部分の的確な強度が得られている。従って、建築現場に
おいてコンクリート打設部分（１００）に鉄筋を配設す
る必要がない。

【００２９】次に図２は建築物の角部などに設置される
基礎梁、すなわち２つの基礎梁１０−３と１０−４とが
ほぼ直角に結合される例を示している。

【００３０】一方の基礎梁１０−４の構成は、図１
（Ａ）の基礎梁１０−２と同様の構成とされている。そ
して、他方の基礎梁１０−３は、その結合部の建築物内
方側に切欠部２２が的確に連続するようにその先端部１
０−３ａの部分に非切欠部を残して構成している。これ
によって、その直交する基礎梁１０の角部の内側に連続
する切欠部２２が形成されている。

【００３１】そして、この実施例ではこのほぼ直角に屈
曲した切欠部２２を覆うため接合部材２４は平面形状を
Ｌ字状として形成されている。なお、締結部材挿通用穴
２６、ボルト２８及び樹脂部３０の構成については図１
の実施例と同様である。更に、鉄筋２１の埋設位置も同
様に接合部材２４の基礎梁への当接側側面のほぼ表面寄
り位置に配置されている。

【００３２】さらに、図３は建築物の部屋部の仕切部分
に相当する２つの基礎梁１０−１と１０−２を直列に結
合した部分にさらに直交するように第３の基礎梁１０−
５が結合される例を示している。

【００３３】この実施例で特徴的なことは、接合部材２
４を第３の基礎梁１０−５の一部として形成したことで
ある。すなわち、基礎梁１０−５の結合側端部に切欠部
２２を覆うことのできるような接合部材としての接合部
２５を形成したことである。すなわち第３の基礎梁１０
−５に接合部２５が一体化されて形成されている。そし
て、締結部材挿通用穴２６、ボルト２８、樹脂部３０さ
らに接合部２５の鉄筋２１の配置位置については図１に
示した例と同様の構成とされている。

【００３４】このように、図２及び図３に示したような
実施例によれば、基礎梁１０が直交して結合される部分
についても基礎梁１０以外の仮固定用の治具などを用い
ることなく簡単かつ的確な結合状態を得ることが可能と
なっている。

【００３５】なお、本発明は上記各実施例に限定される
ものではなく発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能で
ある。例えば、切欠部２２の形成範囲やその深さについ
は基礎梁の種類に対応させて種々設定することが可能で
ある。接合部材２４（接合部２５）を固定するために形
成される締結部材挿通用穴２６の数も上記のような両端
にそれぞれ１個形成するものに限られずそれぞれ２個以
上形成することも可能である。

【００３６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の建築用基
礎梁の結合構造によれば、独立基礎上に架設される基礎
梁相互間の結合を基礎構成物以外の仮固定用の治具を用
いることなく簡単な作業によって結合することができ
る。さらに、接合部材を用い、これと基礎梁との間にコ
ンクリートを打設するようにしたので、基礎梁自体の結
合部の構成をより簡略化したものとすることができ、基
礎梁の運搬用スペースの縮小化並びに製造の容易化も達
成されている。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）は基礎梁を直列に結合する場合の実施例
に係る結合構造の部分平面図、（Ｂ）は実施例に用いた
基礎梁の端部の構成を示す部分斜視図、（Ｃ）は接合部
材の構成を示す斜視図である。

【図２】基礎梁をほぼ直交するように結合する場合の実
施例に係る結合構造の部分平面図である。

【図３】基礎梁をＴ字状に結合する場合の実施例の結合
構造の部分平面図である。

【図４】従来の基礎梁の構成例を示す斜視図である。

【図５】（Ａ）及び（Ｂ）は従来の基礎梁の結合構造を
示す部分平面図をそれぞれ示している。

【符号の説明】

１０ 基礎梁 ２０，２１ 鉄筋 ２４ 接合部材 ２６ 締結部材挿通用穴 ２８ ボルト ３０ 樹脂部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建築物構築領域の所定箇所に設置した独
   立基礎間に架設される基礎梁を水平方向に相互に結合す
   るための建築用基礎梁の結合構造において、 前記基礎梁の各結合部分の建築物内方側側面を所定範囲
   切り欠いて形成した切欠部と、 前記切欠部が水平方向に連続するように並設された基礎
   梁の前記建築物内方側から前記連続する切欠部両側の非
   切欠部に両端がまたがって当接設置され、該当接状態で
   前記基礎梁の切欠部全体をコンクリート打設用空間とす
   る接合部材と、 該接合部材の前記当接部分にて接合部材と前記基礎梁と
   の仮固定を行う固定部材と、 を含むことを特徴とする建築用基礎梁の結合構造。