JP2502825B2 - 瓦葺き屋根構造 - Google Patents

瓦葺き屋根構造

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JP2502825B2
JP2502825B2 JP3051605A JP5160591A JP2502825B2 JP 2502825 B2 JP2502825 B2 JP 2502825B2 JP 3051605 A JP3051605 A JP 3051605A JP 5160591 A JP5160591 A JP 5160591A JP 2502825 B2 JP2502825 B2 JP 2502825B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は瓦葺き屋根構造に関し、
耐風圧性能と雨仕舞性と施工の安定性を大幅に向上した
ものである。
【0002】
【従来の技術】瓦葺きは、各種の伝統的工法により広く
普及しているが、その大部分は、葺き土の粘着力により
瓦を固定する「土葺き工法」や、下側の瓦の上端側裏面
に係止突部を設け、この係止突部を、屋根下地面に屋根
面の傾斜方向に直交して固定した瓦桟に引掛ける「引掛
葺き工法」、あるいは、瓦の後端部を釘や緊結線で下地
に緊結する「緊結工法」により施工されている。
【0003】しかし上記工法による屋根構造には以下の
ような問題点がある。「土葺き工法」によるものでは、
構造重量が大きくなり、経年変化によるズレや、雨漏
り、凍害が生じ易いため、利用されず減少傾向にある。
「引掛葺き工法」および「緊結工法」との組み合わせ工
法によるものでは、瓦の後端側を瓦桟ないし下地に固定
するため、瓦前端部分の保持手段が無いか、無いに等し
く(片持ち支持)、自重を越える風圧が作用した場合に
は、瓦の飛散やズレを招き易い。そして、瓦の飛散やズ
レは、漏水事故を招く。さらに、瓦の飛散は、事故の建
物以外に被害を与え、場合によっては人身事故にもなり
かねない。また、瓦は、あくまで重ね継ぎによって葺か
れるため、緩勾配においては強風雨で漏水し易く、金属
葺きに比べて最低勾配を急勾配にしなければならないた
め、意匠上の制約が生じる。
【0004】また実開平2-134118号公報に提案されてい
る屋根構造のもの(図24)もあるが、瓦60の下端部60a
裏面に下側の瓦60の上端縁と係合する係止突部61を設け
た構成のものであり、単に瓦桟を不要とした考案であっ
て、瓦前端側の浮き上がりを防止することは出来ず、前
記「引掛葺き工法」と同様の問題がある。しかも、瓦
は、その組成および製造方法から、一般用としての製品
精度には限界がある。すなわち、下側の瓦に突き合わせ
て上側の瓦を葺く構造であるため、極めて小規模の建築
物の屋根以外では、寸法誤差が累積して適正な瓦同士の
重ねがとれず、屋根として機能しない。
【0005】一方、このような引掛葺き工法のような問
題を解決するものとして、特開昭63-265056 号公報およ
び実開昭58-190516 号公報に提案されている屋根構造の
ものがある。前者の屋根構造は、防水性屋根下地材上に
直交してタイル係止部材を配置して、このタイル係止部
材の両脇部に突設された係止爪部にタイル下部を係合し
て、下側タイルの上縁部に上側タイルの下縁部が重合す
るように構成してある。ところで、タイルは下部に複数
の係止部を形成して、タイル係止部材両脇部の係止爪部
とそれぞれ係合することにより、タイルの上下両端部を
固定するように構成してあるために、その係合のための
製品精度がシビアになって、製品精度により施工性が左
右されるという構造上の問題がある。また、下側のタイ
ルに突き合わせて上側のタイルを葺く構造であるため、
製品精度の面から、極めて小規模の建築物の屋根以外で
は、寸法誤差が累積して適正なタイル同士の重ねがとれ
なくなり、屋根として機能しない場合がある。すなわ
ち、タイルの係合についてはタイル下部の複数の係止部
とタイル係止部材両脇部の係止爪部とで行い、このタイ
ルの受け止めについては防水下地材で行って、タイルの
固定を、タイル係止部材と防水下地材で分割処理してい
ることにより、施工性に関してタイルの製品精度による
影響を受け易いものである。
【0006】後者の屋根構造は、瓦上部の小孔に釘を打
ちつけて瓦を下地に固定し、この下側の瓦上端部の係合
部に上側の瓦下部のL形状突起を係合して、下側タイル
の上縁部に上側タイルの下縁部が重合するように構成し
てある。ところが、下側の瓦に突き合わせて上側の瓦を
葺く構造であるため、瓦の組成および製造方法から一般
用としての製品精度には限界があって、極めて小規模の
建築物の屋根以外では、寸法誤差が累積して適正な瓦同
士の重ねがとれず、屋根として機能しないという構造上
の問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、瓦の製品精
度にかかわりなく、耐風圧性能、雨仕舞、施工安定性、
汎用性の全てについて大幅に向上した瓦葺き屋根構造を
提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本発明が前記の目的を
達成するために講じた手段は、下側の瓦の上端部表面に
上側の瓦の下端部裏面を重合して屋根を葺き上げる瓦葺
き屋根構造であって、屋根下地面に排水板を敷設して排
水板上に空間部を形成し、排水板の軒棟方向に沿う縦リ
ブ上面または排水板上面に固定した垂木上面に、上下の
瓦の重合部裏面側に位置して且つ屋根面の傾斜方向に直
交して瓦の有効幅に略等しい間隔で瓦保持部材を固定
し、この瓦保持部材における上端側の係合片部に上側の
瓦下端部裏面の係合突部を係合すると共に、同瓦保持部
材の下端側の瓦受け部に下側の瓦上端部を載乗し且つ同
瓦上端部を前記瓦受け部と上側の瓦下端部裏面との間に
挟持したことを特徴とする。
【0009】また、本発明における係止突部と瓦保持部
材との係合関係は、屋根面に沿いスライドさせて係合す
る態様、あるいは屋根面と正対する方向から係合する態
様のいずれにしても良く、前者のものでは、例えば下向
き鉤形状の係合先端部が下端部側に向くように配設し
て、瓦を軒先側にスライドさせて瓦保持部材に係合する
態様にしたり、その下向き鉤形状の係合先端部が上端部
側に向くように配設して、瓦を棟側にスライドさせて瓦
保持部材に係合する態様にしたりしても良い。また、後
者のものでは、例えば屋根面と正対する方向から係合し
て弾性的に保持される態様に形成すれば、瓦を軒先側あ
るいは棟側のいずれからでも葺ける。
【0010】また、本発明における瓦保持部材の案内要
素は一体あるいは別体いずれでも良く、例えば、一体の
ものでは縦リブ上面または垂木の上面に打ち出し、切り
起こしする等して形成し、別体のものでは適宜の固定要
素を用いて縦リブ上面または垂木の上面に固定する。さ
らに、案内要素は瓦保持部材を位置決めする機能に加え
て、瓦保持部材を縦リブ上面または垂木の上面に対して
固定する機能を兼ね備えた態様にしても良い。また、瓦
は、平瓦タイプ、その他の公知の様々な態様が挙げら
れ、また、排水溝の有無を問わない。
【0011】また、本発明における瓦の係止突部は一体
または別体のものを問わず、例えば別体のものでは、金
属製の場合、瓦の下端部裏面にネジ、ナット等の適宜の
固定要素を用いて一体的に設ければ良いし、さらに、そ
の固定要素を利用して瓦の表面側に適宜形状の雪止め部
材を同時に組み付けたりしても良く、通常は一般用とと
もに用意されている雪止め用のものが必須でなくなる。
【0012】また、屋根下地面は、鉄骨構造にあって
は、C形鋼等の母屋の上に木毛セメント板、木片セメン
ト板等を敷設し、この板上にアスファルトルーフィング
等を張設しているもの、また、母屋上にハット形状の金
属製垂木を固定して、隣り合う垂木間に木毛セメント板
等を敷設しているもの等であり、木造にあっては、母屋
ないし垂木上に野地板またはベニヤ板を敷設して、その
板上にアスファルトルーフィング等を張設しているもの
がある。他の下地としては、軽量気泡コンクリートパネ
ル、コンクリート製の躯体等もあり、特に限定されな
い。
【0013】
【作用】瓦保持部材における上端側の係合片部に上側の
瓦下端部裏面の係合突部を係合すると共に、同瓦保持部
材の下端側の瓦受け部に下側の瓦上端部を載乗し且つ同
瓦上端部を前記瓦受け部と上側の瓦下端部裏面との間に
挟持してあるため、桁行き方向の瓦保持部材で上下の瓦
の上下両端部が受支および係合され、上下の瓦の上下両
端部が重合状に挟持される。そして、この瓦の裏面側に
は排水板上の空間部によって排水空間が形成され、この
排水空間を通じて、上下の瓦の重合部分から屋内側に侵
入した雨は軒先側に導き出される。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照し本発明の各実施例につい
て詳細に説明する。図1乃至図4には本発明の瓦葺き屋
根構造の第1実施例を例示している。屋根下地面20はC
形鋼などの横母屋の上に敷設された木片セメント板21で
あり、その表面にはアスファルトルーフィング22を張設
している。この屋根下地面20には排水板44を屋根の棟側
から軒先までの全面にわたって敷設している。
【0015】排水板44は鉄、アルミニウムのような金属
の極く薄い板や厚手の箔、合成樹脂の薄板のような耐水
性材料で構成されている。また、排水板44は軒棟方向と
直交する左右方向に複数に分割され、分割した排水板44
は左右に隣り合う端部の突条部45,46 を上下に重ね合わ
せて連続させ、且つ上下に重合状の突条部45,46 による
縦リブ47を形成してある。縦リブ47内には保持部材48を
入れ、突条部45の上端を押えつけて屋根下地面20に保持
している。そして、排水板44は縦リブ47間の平面部44a
上に空間部49を形成し、各縦リブ47にわたり瓦保持部材
23を木ネジ28でネジ止めして横架してある。
【0016】縦リブ47上面部には突起状の案内要素50を
瓦1の有効幅Lに略等しい間隔状に設けてあり、この案
内要素50は瓦保持部材23の取付け面部24に開けられてい
る通孔51に嵌挿していて、縦リブ47に対する瓦保持部材
23の取付け位置を瓦1の有効幅L間隔に固定している。
案内要素50は縦リブ47の上面部の一部を棟側に切り起こ
して形成してある。
【0017】瓦保持部材23はプレス成形あるいは押出し
成型された鉄、アルミニウム、合成樹脂などからなる長
尺状のもので、取付け面部24の上端側には上向き鉤形状
の係合片部25をその係合先端部25a を棟側に向けて立設
し、また、取付け面部24の下端側には立上がり部26を経
て瓦受け部27を瓦1の葺き角度状に延設している。
【0018】そして、軒棟方向に平行状の瓦保持部材23
間には瓦1を、左右に隣り合う瓦1の右端部1cと左端部
1dを重ね合わして接続しながら、上端部1aを棟側の瓦保
持部材23における瓦受け部27に載せ且つ下端部1bの係止
突部3を軒先側の瓦保持部材23における係合片部25に係
合して、同下端部1b裏面で下側の瓦1の上端部1aを被う
と共に、瓦受け部27との間で挟持して、瓦1を軒先側か
ら棟側に葺いている。
【0019】瓦1は公知の平瓦タイプで、上端部1a表面
には左右に伸びる上下平行状の突条部2を突設し、下端
部1b裏面には前記突条部2を被う裏面部分の上側寄りに
下向き鉤形状の係止突部3をその係止先端部3aを下端部
側に向けて垂設している。そして、瓦1の右端部1c裏面
と左端部1d表面には相互に適合する段部4,5を形成し
て、左右に隣り合う端部4,5を表裏重合した際に、表
面側および裏面側に段差ができずに接続されるようにし
てある。また、左端部1dにおける段部5の表面側に沿い
排水溝6を形成して、上下に重合状の段部4,5に浸入
する雨を下側の瓦1の排水溝6そして最終的に軒先側に
導き出させるようにしている。
【0020】また、係止突部3と係合片部25との係合深
さは、取付け面部24上における相対向状の瓦1の上縁面
1eと係合片部25の立上がり部25b または案内要素50との
間の遊び空間よりも浅い比率関係に形成しており、任意
の瓦1を棟側に上端部1aが係合片部25の立上がり部25b
または案内要素50に突き当たるまで強制的に動かした場
合に、係止突部3が係合片部25から外れて当該瓦1を取
り出せるようにしてある。
【0021】これにより、瓦保持部材23単独で上側と下
側の瓦1における上下両端部1a,1bを上下重合状に固定
することができ、組成および製造方法の面から限界があ
る瓦1の製品精度にかかわりなく、施工性を確保できる
と共に屋根規模の施工制限がない。そして、瓦1はその
上下両端部1a,1b を屋根下地面20側に固定されて、吹き
上げ風圧にも浮き上がるようなことがなく、堅牢な瓦葺
き屋根である。さらに、破損などによる瓦1の交換は、
当該瓦1を棟側に強制的に押し上げて取り出し、その跡
に交換用の瓦1を入れて軒先側に引き下げれば、係止突
部3が係合片部25に係合することにより難なく行なえ
る。また、瓦1は瓦保持部材23で軒先側への動きを牽制
されているため、滑り落ちるようなことは一切ない。し
かも、上下に重合状の瓦1の重合部間から裏面側に侵入
した雨水を排水板44に沿って軒先側に導いて排水でき
る。
【0022】図5には本発明の瓦葺き屋根構造の第2実
施例を例示しており、その構成は前記第1実施例のもの
と基本的に同じであるため、共通する構成の説明を省略
し、相違する構成について次に説明する。
【0023】排水板44には垂木52を軒棟方向に敷いて固
定している。垂木52は上面部に案内要素50を形成してお
り、この上面部における瓦保持部材23の取付位置を案内
要素50で位置決めして、垂木52に瓦保持部材23を瓦1の
有効幅L間隔に固定している。瓦1は公知のS瓦タイプ
のものである。
【0024】これにより、前記第1実施例のもと同様の
作用、効果を有する。
【0025】図6および図7には本発明の瓦葺き屋根構
造の第3実施例を例示しており、その構成は基本的に前
記第1実施例のものと同じであるため、共通する構成に
ついての説明を省略し、相違する構成について以下に説
明する。
【0026】瓦保持部材23は瓦受け部27を断面半円状に
形成してある。そして、この瓦受け部27に載乗して挟持
される瓦1は公知のS瓦タイプである。
【0027】これにより、前記第1実施例のものと同様
の作用、効果を有する。
【0028】図8および図9には本発明の瓦葺き屋根構
造の第4実施例を例示しており、その構成は基本的に前
記第1実施例のものと同じであるため、共通する構成に
ついての説明を省略し、相違する構成について以下に説
明する。
【0029】瓦保持部材23は瓦受け部27を上側に折返し
て形成してある。そして、この瓦受け部27に載乗して挟
持される瓦1は公知の平瓦タイプで、下端部1bに孔7を
表裏に貫通状に開け、この孔7にネジ8を通して、孔7
の裏面側に突出したネジ8部分に係止突部3をナット9
で取付け固定している。また、孔7における屋根面側の
座ぐり孔部7aにはシーリング10をして、座ぐり孔部7aに
沈頭状のネジ頭部を被うと共に屋根面側の開口を塞ぎ、
雨が侵入しないようにしている。係止突部3はプレス成
型あるいは射出成型された鉄、アルミニウム、合成樹脂
製のもので、下向き鉤形状の係止先端部3aを下端部側に
向けて形成している。
【0030】これにより、前記第1実施例のものと同様
の効果があり、さらに、瓦本体を射出成型できて、その
成型工程を大幅に省略できる。
【0031】図10および図11には本発明の瓦葺き屋根構
造の第5実施例を例示しており、その構成は基本的に前
記第1実施例のものと同じであるため、共通する構成に
ついての説明を省略し、相違する構成について以下に説
明する。
【0032】瓦保持部材23は取付け面部24の上端側に係
合片部25を、下端側に保持部35を相対向状に立設し、係
合片部25上端には係合先端部25a を取付け面部24側に向
けて斜め下向き状に折返し、保持部35上端には外側に折
返した垂下部36下端から瓦受け部27さらに脚部37を延設
している。
【0033】そして、瓦保持部材23は、屋根面と正対す
る方向に開口している係合片部25と保持部35との間の保
持空間部38に、同方向から嵌合された瓦1の係止突部3
を受け入れ、この係止突部3を係合片部25と保持部35と
で弾性的に挾持すると共に、係止突部3が抜け出ないよ
うに、係止先端部3aをこれの上側に位置する係合先端部
25a で止めて、保持空間部38内に係止突部3を係合状態
に保持している。また、保持空間38の幅は受入れる係止
突部3の幅の大小によって決定され、係止突部3の幅相
当に形成される。瓦1は下端部1b裏面に係止突部3を上
向き鉤形状にその係止先端部3aを上端部側に向けて垂設
している。
【0034】これにより、前記第1実施例のものと同様
の効果があり、さらに、瓦1の施工法については、瓦1
を屋根面と正対する方向から、その係止突部3を瓦保持
部材23に嵌合して係合することができるため、瓦1の施
工手順を、図12のように軒先側から棟側に、あるいは図
13に示すように棟側から軒先側に、いずれからでも葺く
ことができる。
【0035】また、瓦1は係止突部3が保持空間部38内
に弾性的に保持されているため、軒先側に滑り落ちるよ
うなことがない。また、瓦1の交換は、当該瓦1を軒先
側に人為的に動かすと、保持部35が係止突部3に押され
て軒先側に揺動し、係止突部3の係止先端部3aは係合先
端部25a との係合位置から軒先側に動いて外れ、同状態
で瓦1を屋根面から離す方向に人為的に持ち上げて取り
出せるため、新たな瓦と交換することができる。
【0036】図14には本発明の瓦葺き屋根構造の第6実
施例を例示しており、構成は基本的に前記した第5実施
例のものと同じであるため、共通する構成の説明を省略
し、相違する構成について次に説明する。
【0037】瓦保持部材23は取付け面部24から立ち上が
っている係合片部25上端に係合先端部25a を棟側に斜め
下向き状に折返して形成してある。そして、瓦保持部材
23は、屋根面と正対する方向に立ち上がっている係合片
部25に瓦1の係合溝13を嵌合して、係止突部3の係止先
端部3aをこれの上側に位置する係合先端部25a で抜け止
めして係合状態に保持している。瓦受け部27に載乗して
挟持される瓦1は下端部1b裏面に、下向き鉤形状の係止
突部3をその係止先端部3aを下端部側に向けて垂設する
と共に下端側に突部14を係合溝13を隔てて係止突部3と
相対向状に垂設している。
【0038】これにより、前記第5実施例のものと同様
の作用、効果を有する。
【0039】図15および図16には本発明の瓦葺き屋根構
造の第7実施例を例示しており、構成は基本的に前記し
た第5実施例のものと同じであるため、共通する構成の
説明を省略し、相違する構成について次に説明する。
【0040】瓦保持部材23における保持部35には前記瓦
1の上端部1aにおける嵌合溝15と適合する嵌合突部39を
突設し、保持部35の一部を切り倒して形成した瓦受け部
27には前記瓦1の嵌合突部16と適合する嵌合溝40を凹設
している。そして、瓦保持部材23は、屋根面と正対する
方向に開口している保持空間部38内に係止突部3を、そ
の係止先端部3aに上側から係合した係合先端部25a で抜
け止めして係合状態に保持し、この係合状態が、瓦1の
上端部1aと保持部35および瓦受け部27とにおける嵌合突
部16,39 と嵌合溝15,40 とによる係合関係をもって継続
されるようにしてある。瓦1は上端部1aの上縁面1eに嵌
合溝15を設けると共に裏面に嵌合突部16を設けている。
【0041】これにより、前記第5実施例のものと同様
の作用、効果を有する。
【0042】図17および図18には本発明の瓦の第8実施
例および同瓦を使用して葺いた屋根構造を例示してお
り、構成は基本的に前記した第5実施例のものと同じで
あるため、共通する構成の説明を省略し、相違する構成
について次に説明する。
【0043】瓦保持部材23は係合片部25における軒先側
に斜め下向き状の係合先端部25a を軒側に折返して形成
している。また、保持空間部38は相対向状の係合片部25
と保持部35とこれらの下端間の底部41とで形成してお
り、保持部35は取付け面部24から立上がり部42を経て延
設してある。そして、瓦保持部材23は、屋根面と正対す
る方向に開口している保持空間部38内に係止突部3を、
その係止先端部3aに上側から係合した係合先端部25a で
抜け止めして係合状態に保持している。瓦受け部27に載
乗して挟持される瓦1は下端部1b裏面に係止突部3を垂
設し、この係止突部3における係止先端部3aを上端部側
に斜め上向き状に折返すと共にさらにその先端を下端部
側に折返している。
【0044】これにより、前記第5実施例のものと同様
の効果がある。
【0045】図19には本発明の瓦葺き屋根構造の第9実
施例を例示しており、構成は基本的に前記した第5実施
例のものと同じであるため、共通する構成の説明を省略
し、相違する構成について次に説明する。
【0046】瓦保持部材23は取付け面部24から棟側に延
びた底面部43に係合片部25を相対向状に立設すると共に
双方の係合先端部25a を向い合わせて形成している。そ
して、瓦保持部材23は、屋根面と正対する方向に開口し
ている保持空間部38内に係止突部3を受け入れ、この係
止先端部3aを両係合片部25で弾性的に挾持すると共に、
両係止先端部3aをこれの上側にそれぞれ位置する両係合
先端部25a で抜け止めして、保持空間部38内に係止突部
3を係合状態に保持している。瓦受け部27に載乗して挟
持される瓦1は係止突部3を下向き二又状に形成し、そ
の鉤形状の係止先端部3aを背合せ状に設けている。
【0047】これにより、前記第5実施例のものと同様
の効果がある。
【0048】また、本発明の屋根構造における案内要素
50の別の態様として、例えば、案内要素50に瓦保持部材
23の軒先側を当接させて位置決めする態様[図20(a)
(b)]にしても良く、案内要素50の構成は、縦リブ47あ
るいは垂木52の上面部の一部を上側に打ち出して形成し
たもの[図21(a)]、あるいは上面部の一部を幅方向に切
り起こして形成したもの[図21(b)]などにしても良い。
【0049】それにより、瓦保持部材23に通孔51をあけ
る成型工程が省略され、さらに、案内要素50に対して通
孔51を位置合わせする手間も省略されて施工性が向上す
る。
【0050】また、案内要素50は瓦保持部材23を取付位
置に固定する働きを兼ね備えた態様にしても良い。例え
ば、図22(a) に示すように、縦リブ47あるいは垂木52の
上面部の一部を切り起こして一対の突起状に形成し、こ
の案内要素50を基準にして瓦保持部材23を位置合わせ
し、瓦保持部材23の通孔51から突き出た案内要素50先端
部を捩るか或は図22(b) に示すように折り曲げて、瓦保
持部材23を所定の取付位置に固定するようにしても良
い。
【0051】それにより、木ネジ28で瓦保持部材23を固
定する手間が省略されて、施工性を著しく向上できる。
【0052】図23の(A)(B)には本発明の屋根構造
における瓦の他の実施例を例示しており、その構成は基
本的に前記した実施例におけるものと同じであるため、
共通する構成についての説明を省略し、相違する構成に
ついて以下に説明する。
【0053】(A)の瓦1は公知の日本瓦タイプのもの
である。(B)の瓦1は公知の平瓦タイプのもので、瓦
本体および係止突部3をそれぞれプレス成型した後、瓦
本体の下端部裏面に係止突部3を付着し、焼成して一体
に成型している。
【0054】また、斯る実施例のもので、係止突部3に
おける係止先端部3aが上端側に向いた態様(想像線で示
す)とするも良く、この場合では瓦1は棟側から軒先側
に葺かれ、また、瓦1の滑り落ち防止については、上側
の瓦1の係止突部3を下側の瓦1の上端部1aで下側から
支える等して処置する。
【0055】
【発明の効果】A.請求項1によれば、瓦保持部材にお
ける上端側の係合片部に上側の瓦下端部裏面の係合突部
を係合すると共に、同瓦保持部材の下端側の瓦受け部に
下側の瓦上端部を載乗し且つ同瓦上端部を前記瓦受け部
と上側の瓦下端部裏面との間に挟持していることによ
り、瓦保持部材単独で上側と下側の瓦における上下両端
部を上下重合状に固定することができ、組成および製造
方法の面から限界がある瓦の製品精度にかかわりなく、
施工性を確保できると共に屋根規模の施工制限がない。
【0056】B.同項によれば、瓦の上下両端部がとも
に保持されて、台風などの強力な吹上げ風圧を受けても
飛散やズレたり浮上がるようなことがなく、堅牢な屋根
面に葺くことができる。しかも、上側の瓦の係止突部を
瓦保持部材に係合させるだけで葺けることにより、施工
性が高い。
【0057】C.同項によれば、瓦裏側に空間部を経て
排水板が在って、屋根面の屋内側に排水構造を介在させ
ているので、二次防水機能すなわち雨仕舞機能を大幅に
向上させることができて、強固で、しかも、緩勾配のも
のにも対応でき、屋根の意匠上の制約がない。
【0058】D.請求項2によれば、瓦をその有効幅に
保持する瓦保持部材を案内要素によって適正間隔に位置
決めできるので、施工性が向上すると共に前記各請求項
の効果を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の瓦葺き屋根構造の第1実施例を示
す斜視図。
【図2】 要部の部分拡大縦断面図。
【図3】 案内要素部分を示す拡大斜視図。
【図4】 同実施例における瓦の斜視図。
【図5】 本発明の瓦葺き屋根構造の第2実施例を示
す斜視図。
【図6】 本発明の瓦葺き屋根構造の第3実施例を示
す縦断面図。
【図7】 同実施例における瓦の斜視図。
【図8】 本発明の瓦葺き屋根構造の第4実施例を示
す縦断面図。
【図9】 同実施例における瓦の斜視図。
【図10】 本発明の瓦葺き屋根構造の第5実施例を
示す縦断面図。
【図11】 同実施例における瓦の斜視図。
【図12】 同実施例における瓦の施工手順(軒先側
から棟側)を示す概略図。
【図13】 同実施例における瓦の他の施工手順(棟
側から軒先側)を示す概略図。
【図14】 本発明の瓦葺き屋根構造の第6実施例を
示す部分縦断面図。
【図15】 本発明の瓦葺き屋根構造の第7実施例を
示す部分縦断面図。
【図16】 同実施例における瓦保持部材の部分斜視
図。
【図17】 本発明の瓦葺き屋根構造の第8実施例を
示す縦断面図。
【図18】 同実施例における瓦の斜視図。
【図19】 本発明の瓦葺き屋根構造の第9実施例を
示す部分縦断面図。
【図20】 (a) および(b) は案内要素による瓦保持
部材の位置決め状態の他の態様を示す縦断面図。
【図21】 (a) および(b) は同案内要素の各斜視
図。
【図22】 (a) は案内要素のその他の態様を示す斜
視図。(b) は同案内要素により瓦保持部材を位置決めお
よび固定した態様を示す縦断面図。
【図23】 (A) および(B) はその他の瓦を例示した
斜視図。
【図24】 従来の瓦葺き屋根構造を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 瓦 1a 瓦の上端部 1b 瓦の下端部 1c 瓦の右端部 1d 瓦の左端部 3 瓦の係止突
部 3a 係止先端部 4,5 瓦の段部 6 瓦の排水溝 7 瓦の孔 13 瓦の係合溝 14 瓦の突部 15 瓦の嵌合溝 16 瓦の嵌合突
部 8 ネジ 9 ナット 10 シーリング 20 屋根下地面 23 瓦保持部材 24 瓦保持部材
の取付け面部 25 瓦保持部材の係合片部 25a 係合片部の
先端部 26 瓦保持部材の立上がり部 27 瓦保持部材
の瓦受け部 35 瓦保持部材の保持部 37 瓦保持部材
の脚部 38 瓦保持部材の保持空間部 39 保持部の嵌
合突部 40 瓦受け部の嵌合溝 41 保持空間部
の底部 51 瓦保持部材の通孔 28 木ネジ 44 排水板 45,46 排水板の
突条部 47 排水板の縦リブ 49 排水板の空
間部 50 案内要素 52 垂木
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−265056(JP,A) 実開 昭58−190516(JP,U) 実開 平1−129415(JP,U) 特公 昭64−7178(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下側の瓦の上端部表面に上側の瓦の下端
    部裏面を重合して屋根を葺き上げる瓦葺き屋根構造であ
    って、屋根下地面に排水板を敷設して排水板上に空間部
    を形成し、排水板の軒棟方向に沿う縦リブ上面または排
    水板上面に固定した垂木上面に、上下の瓦の重合部裏面
    側に位置して且つ屋根面の傾斜方向に直交して瓦の有効
    幅に略等しい間隔で瓦保持部材を固定し、この瓦保持部
    材における上端側の係合片部に上側の瓦下端部裏面の係
    合突部を係合すると共に、同瓦保持部材の下端側の瓦受
    け部に下側の瓦上端部を載乗し且つ同瓦上端部を前記瓦
    受け部と上側の瓦下端部裏面との間に挟持したことを特
    徴とする瓦葺き屋根構造。
  2. 【請求項2】 排水板の縦リブ上面または垂木の上面に
    案内要素を瓦の有効幅に略等しい間隔状に設け、この案
    内要素で瓦保持部材を位置決めしてなることを特徴とす
    る請求項1記載の瓦葺き屋根構造。
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