JP2024115162A - リン含有(メタ)アクリロイル化合物、その製造方法、これを含む難燃性樹脂組成物および電子回路基板用積層板 - Google Patents

リン含有(メタ)アクリロイル化合物、その製造方法、これを含む難燃性樹脂組成物および電子回路基板用積層板 Download PDF

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【課題】反応型リン系難燃剤として有用であり、硬化物における耐熱性と誘電特性に優れるリン含有化合物、これを含む硬性樹脂組成物、およびその硬化物を提供する。【解決手段】一般式(1)で表されるリン含有(メタ)アクリロイル化合物。TIFF2024115162000031.tif39139式中、Arは置換基を有しても良い芳香環、R1は式(2)等で表される置換基である。TIFF2024115162000032.tif31170【選択図】なし

Description

本発明は反応型リン化合物、特にリン含有(メタ)アクリロイル化合物に関し、プラスチック材料の反応型難燃剤として有用である。
プラスチック材料は、優れた機械的特性、成形加工性から、建材や電気電子機器まで幅広い用途に使用されている。しかしながら、大抵のプラスチック材料は、燃えやすいため、使用される用途、例えば電気・電子製品やOA機器、通信機器等では、発熱発火、火災に対する安全性のため難燃化が必須となっている。
プラスチック材料の難燃化技術としては、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、リン系難燃剤等の添加型難燃剤の添加が樹脂種、用途に限らず一般的となっている。しかしながら、これらの中で臭素系を主とするハロゲン系難燃剤は、発がん性の高いダイオキシンの発生源となる可能性が指摘されており、昨今の環境負荷物質低減の動きに対応して使用を制限する方向に進んでいる。また、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等無機系難燃剤は、吸熱による難燃化効果があるものの、十分な難燃化を達成するためには大量に添加する必要があり、プラスチック成形品の各種特性を低下させる原因となっている。
そのため、有害物質を発生させず、比較的少量の添加で難燃化が可能なリン系難燃剤が多く使用されているが、それでもブリードアウト等による加工性の低下や、ガラス転移温度の低下等、特性への影響は避けられない。
これら添加型難燃剤の問題を解決するために、難燃成分であるリン原子を含み、且つ反応性基を持つ反応型難燃剤が開発され、広く使用されてきた。電子・電機分野で多用されるエポキシ樹脂組成物に適用可能な反応型難燃剤としては、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂用の硬化剤として、ビスフェノールAとホルムアルデヒドを反応させ、ヒドロキシメチルビスフェノールAを得た後に9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下、「DOPO」と略記する。)を反応させる事で得られるフェノール樹脂が開示され、特許文献2には、DOPOとキノン類を反応させた後にエポキシ樹脂と反応する事で得られるリン含有エポキシ樹脂が開示されている。これらの樹脂では、難燃剤のブリードアウト等加工性の問題は解決され、耐熱性等熱特性の悪化は見られない。この様に、添加型難燃剤に比較し、反応性の難燃剤を使用することで、一般的に添加型難燃剤の欠点を補うことが可能となることから、多くの難燃性エポキシ樹脂等が開発されている。
一方で近年、難燃性が必須となる電子・電気材料分野では、スマートフォンに代表される電子機器の急激な進化により、難燃剤を含む樹脂成分に対する要求は高度なものへと変化している。特に情報・通信分野では情報処理量の増大に伴い信号の高周波化が進行、伝送損失低減のために、この分野に使用される樹脂成分には低誘電率、低誘電正接が強く求められている。そこで、回路基板に代表される電子・電気材料分野では、エポキシ樹脂に変わって、より低誘電率・低誘電正接化が可能なラジカル重合性の樹脂が広く使用されるようになっている。そのため、反応性基がエポキシ基やエポキシ樹脂と反応性を有する難燃剤だけでなく、ラジカル重合性の樹脂と反応が可能な低誘電率・低誘電正接なハロゲンフリー難燃剤が求められている。
ラジカル重合性の官能基を持つハロゲンフリー難燃剤としては、特許文献3および特許文献4にDOPO骨格を含むビニルベンジルエーテル化合物が開示されている。また特許文献5および特許文献6には、リン酸エステル構造を含むビニルベンジル化合物または(メタ)アクリロイル化合物が開示されている。しかしながら、現在要求されている低誘電率・低誘電正接の点で十分な特性とは言えず、ハロゲンフリー難燃性、耐熱性等の熱特性および誘電特性を満足するラジカル重合性基を含む難燃剤は未だ無い。
特開2013-166938号公報 特開平11-279258号公報 特開2004-331537号公報 特開2004-277322号公報 特開2022-16423号公報 特開2022-16422号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、反応型リン系難燃剤として有用であり、硬化物における耐熱性と誘電特性に優れるリン含有化合物、これを含む硬性樹脂組成物、およびその硬化物を提供することにある。
本発明者は前記課題を鋭意検討した結果、特定の構造を持ったリン含有(メタ)アクリロイル化合物が、耐熱性、誘電特性に優れることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は一般式(1)で表されることを特徴とするリン含有(メタ)アクリロイル化合物である。
Figure 2024115162000001
一般式(1)において、mは1~20の数、n1はそれぞれ独立して1~4の数であり、Arは置換基を有しても良い炭素原子数6~30の芳香環である。R1はそれぞれ独立して一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であるが、化合物中に一般式(2)で表される置換基と一般式(3)で表される置換基をそれぞれ少なくとも1つ含む。Xは、連結基を表し、それぞれ独立して、酸素、硫黄、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン、炭素原子数8~32のアラルキレンである。
Figure 2024115162000002
一般式(2)において、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素原子数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、n2、n3はそれぞれ独立に0~5の数である。
Figure 2024115162000003
ここで、R4は、水素またはメチル基である。
本発明は、下記一般式(4)で表されることを特徴とする上記のリン含有(メタ)アクリロイル化合物である。
Figure 2024115162000004
一般式(4)において、R1、n1、mは一般式(1)と同義である。Yは置換基を有していても良い炭素原子数6~30の芳香環基である。kは0または1である。Arは下記一般式(5)、(6)、(7)または(8)で表される芳香族化合物に由来する芳香族基を表す。
Figure 2024115162000005
上記一般式(5)、(6)、(7)および(8)において、R5はそれぞれ独立に炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、n4は0~4の整数である。R1、n1は一般式(1)と同義である。
本発明は、リン含有率が1.5~12.0重量%である上記のリン含有(メタ)アクリロイル化合物である。
本発明は、一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と、(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物の一種以上とを反応させることを特徴とする上記のリン含有(メタ)アクリロイル化合物の製造方法である。
Figure 2024115162000006
一般式(9)において、m、n1、Ar、Xは、一般式(1)と同義である。R6は水素または上記一般式(2)で表される置換基である。
本発明は、上記のリン含有(メタ)アクリロイル化合物に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の一種以上を配合してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
本発明は、上記の難燃性樹脂組成物を使用して得られる電子回路基板用積層板である。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、従来にない、低い誘電率・誘電正接を示し、耐熱性の低下が少なく、電子機器の情報処理量増大に伴う高周波化における伝送損失を低減する反応型リン系難燃剤として非常に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の説明においては、アクリル樹脂や、アクリル化合物、アクリレート化合物等の呼称に関し、通例に従って、例えば「アクリロイル」と「メタクリロイル」の両者を総称して「(メタ)アクリロイル」と云い、「アクリル」と「メタクリル」の両者を総称して「(メタ)アクリル」と云い、「アクリレート」と「メタクリレート」の両者を総称して「(メタ)アクリレート」と云うことがある。
リン含有(メタ)アクリロイル化合物又はリン含有フェノール化合物は、単一化合物だけでなく、混合物(樹脂)を包含する。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 2024115162000007
上記一般式(1)において、mは繰返し数であり、1~20の数を示す。リン含有(メタ)アクリロイル化合物(樹脂)は、通常、繰返し数の異なる複数の化合物の混合物であり、mの平均値(数平均)が0.1~15の範囲であり、好ましくは0.5~10、より好ましくは1.0~5の範囲である。
Arは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数3~30の芳香族環基である。芳香族環基としては、特に制限されないが、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等の単環芳香族化合物から水素原子が1つまたは2つ除かれたもの;ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等の縮環芳香族化合物から水素原子が1つまたは2つ除かれたもの等が挙げられる。また、これらの芳香族化合物を複数組み合わせたものであってもよく、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等の環集合芳香族化合物から水素原子が1つまたは2つ除かれたもの等が挙げられる。
具体的には、Arが、下記一般式(5)、(6)、(7)または(8)で表される芳香族ヒドロキシ化合物から選択される一種以上に由来する基であることが好ましい。
Figure 2024115162000008
上記一般式(5)、(6)、(7)および(8)において、R4は芳香環上の置換基を表し、それぞれ独立に炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基である。n4は0~4の整数である。
炭素原子数1~10のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
これらの置換基を単独でも、2種以上を組み合わせても良い。
一般式(1)、(5)、(6)、(7)および(8)において、R1は下記一般式(2)または(3)で表される置換基を表し、n1は1~4の整数である。
Figure 2024115162000009
一般式(2)において、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素原子数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル等が挙げられる。これらの中でも、製造面での反応性および入手のし易さの観点からメチル基が特に好ましい。
n2、n3はそれぞれ独立に0~5の整数で、好ましくは0~2の整数である。n2、n3が1以上である場合、n2、n3の芳香環での置換位置に制限は無いが、リン酸エステルの加水分解を防ぐことから酸素に対してオルト位であることが好ましい。
Figure 2024115162000010
ここで、R4は、水素またはメチル基を表す。
一般式(1)、(5)、(6)、(7)および(8)中、n1は、各ベンゼン環に結合している一般式(2)または一般式(3)で表される(メタ)アクリロイル基の置換数を表す。ここで、n1は、1以上5以下の整数である。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、上記一般式(2)および一般式(3)で表される構造を同時に有する。本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、一般式(2)の構造を含むことで難燃性を発現する事が可能となり、一般式(3)で表される(メタ)アクリロイル基を含むことで硬化物中に難燃成分が特にビニル樹脂系において固定化され、ブリードアウトすることがなく、耐熱性の低下も抑制することが可能となる。
なお、本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物(混合物)は、効果を阻害しない限り、反応原料、例えば、後述する一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物を含んでもよい。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、その構造中に、一般式(2)および一般式(3)で表される置換基の両方を持つことが好ましいが、mで表される繰り返し単位により分子量分布を持つ場合には、すべてのR1が一般式(2)である構造や、すべてのR1が一般式(3)で表される置換基である構造を含んでも良い。ただし、難燃性と耐熱性をバランス良く発現するためには、mを平均としたときに下記のリン含有率を満たす必要がある。すなわち本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物のリン含有率は1.5~12.0重量%であり、好ましくは2.0~11重量%であり、更に好ましくは3.0~10重量%である。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物において、リン含有率から一般式(2)で表される置換基の存在率(一般式(2)と一般式(3)の合計モル数に対する一般式(2)のモル数の割合)を計算することもでき、一般式(2)で表されるリン含有置換基の存在率は、0モル%でなければ問題無いが、低いと難燃性が不足する傾向にあり、高いと耐熱性が不足するため、好ましくは10~90モル%であり、より好ましくは25~80モル%、さらに好ましくは30~60モル%である。換言すれば、一般式(3)で表される(メタ)アクリロイル置換基の存在率は、好ましくは10~90モル%であり、より好ましくは20~75モル%、さらに好ましくは40~70モル%である。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物(樹脂)は、平均分子量(Mw)が好ましくは300~2000、より好ましくは500~1500の範囲である。
一般式(1)において、Xは連結基を表し、上記化学式(1)の記載からも明らかなように、前記Arの芳香族環を構成する芳香族環の水素原子のうちの1つが「X」と結合することとなる。Xはそれぞれ独立して、酸素、硫黄、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン、炭素原子数8~20のアラルキレンである。
前記アルキレンとしては、特に制限されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルメチレン、1,1-ジメチルメチレン、1-メチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、プロピレン、ブチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン等が挙げられる。
前記シクロアルキレンとしては、特に制限されないが、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロペンチレン、シクロへプチレン、および下記化学式(9)~(12)で表されるシクロアルキレン等が挙げられる。
Figure 2024115162000011
前記アラルキレンとしては、特に制限されないが、下記化学式(13)~(19)で表されるアラルキレン等が挙げられる。
Figure 2024115162000012
前記シクロアルキレン、前記アラルキレンは置換基を有していてもよい。この際、置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基の他、アリール基であってもよい。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、下記一般式(4)で表される構造が更に好ましい。
Figure 2024115162000013
一般式(4)において、R1、Ar、n1、mは一般式(1)と同義である。
kは0または1である。kが0のとき、Arの連結基はメチレン基となる。Yは炭素原子数6~30の芳香族環を表し、kが1のとき、Arの連結基は上記式(13)、(16)、(18)で表される構造となる。
次に、本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物の製造方法について説明する。本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と、(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物とを反応させることで得られる。
Figure 2024115162000014
一般式(9)において、m、n1、Ar、Xは、一般式(1)と同義であり、R6は水素または上記一般式(2)で表される置換基である。m、n1、Ar、Xおよび一般式(2)は上記の詳細な説明に準ずる。式(9)中、-OR6の芳香環上での置換位置は、特に限定されない。
一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物は、リン含有率が、好ましくは1.0~20重量%、より好ましくは3.0~10重量%、さらに好ましくは5.0~8.0重量%である。水酸基当量が、好ましくは100~1000、より好ましくは150~500、さらに好ましくは200~350である。リン含有フェノール化合物(樹脂)は、平均分子量(Mw)が好ましくは200~1900、より好ましくは400~1400の範囲である。
一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物は、フェノール性水酸基を一つ以上有する芳香族リン酸エステルであり、その製造方法は一般的な芳香族リン酸エステルの製造方法に準じる。即ち、反応形態の一例としては、オキシハロゲン化リン(ハロゲン化ホスホリル)とフェノール類を原料とするエステル化反応であり、脱ハロゲン化水素反応により、対応するリン酸エステルを得ることが出来る。
このエステル化反応は可逆反応であり、効率的に生成物を得るため、触媒を用いたり、脱離した塩化水素を反応系内から除去するなどの操作が行われる。
脱離した塩化水素は気体であり、気体化する際に体積が増すため、反応性の良い原料では容易に反応系外へと放出されるが、反応性が低い原料の場合、ハロゲン化水素の脱離量が少なく、系内に留まり易いことで逆反応も生じるため、反応が進まないことがある。このような場合、生じたハロゲン化化水素を捕捉して逆反応を起こさないようにすることが有効で、ハロゲン化水素捕捉剤としてアミン類が使用されることがある。
一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物は、原料として、一般式(9)に対応する下記一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物と、上記一般式(2)に対応する下記一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物の原料であるフェノール類およびオキシハロゲン化リンを反応させることが求められる。
Figure 2024115162000015
一般式(20)において、Ar、X、m、n1は一般式(1)と同義である。
Figure 2024115162000016
一般式(21)で表される化合物において、R2、R3、n2、n3は一般式(2)と同義である。Zはハロゲン原子を表す。
ただし、一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物の必須原料である、水酸基を複数有する一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物を、オキシハロゲン化リンと反応させると、複数の水酸基とオキシハロゲン化リンが反応する副反応が生じるため、反応の順序や原料の仕込み比、反応条件などを適宜調整し、目的化合物を効率的に得るようにする必要がある。
そこで、一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物、一般式(9)で表されるハロゲン化リン化合物の原料であるフェノール類およびオキシハロゲン化リンの3種の原料を一度に反応させるのではなく、オキシハロゲン化リン例えばオキシ塩化リン(POCl3)とフェノール類を先に反応させて、下記一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物を得、その後、得られた一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物を、一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物と反応させることで、目的とする化合物を効率的に得ることが出来る。この場合、前段反応において、オキシハロゲン化リン1モルに対して、フェノール類2モルの割合になるように配合する。好ましくはフェノール類1.8~2.2モル、より好ましくは1.9~2.1モルの範囲内である。
一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂の場合、原料フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1-ナフトール、2-ナフトール等が挙げられ、原料アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。
一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物の原料であるフェノール類としては、好ましくは炭素数1~6のアルキル基置換又は未置換の1価のフェノール類であり、具体的にはフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチルフェノール類、イソプロピルフェノール類、ターシャリーブチルフェノール類、フェニルフェノール類、2,6-キシレノール、2,6-ジエチルフェノール等が挙げられる。
これらのフェノール類は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
一般式(9)で表されるハロゲン化リン化合物の原料であるオキシハロゲン化リンとしては、例えば、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンが挙げられる。
本発明のリン含有フェノール化合物は、一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物の水酸基と一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物を反応させて得ることができることから、多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対する一般式(21)のモル比を調整する事で、水酸基当量およびリン含有率を制御する事が可能である。なお、この反応で得られた一般式(9)で表される化合物の水酸基当量を測定し、原料である一般式(20)の水酸基当量と比較することで、一般式(9)における一般式(2)の存在割合を計算することが可能で、この数値は上記した一般式(1)における一般式(2)の存在割合と等しくなる。
反応のモル比は、一般式(20)で表される多価ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して、一般式(21)で表されるハロゲン化リン化合物が、好ましくは0.1~0.9モルであり、より好ましくは0.2~0.8モル、さらに好ましくは0.3~0.7モルである。0.1モル以下ではリン含有率が下がり難燃性が不足するため好ましくない。0.9モル以上では反応性基である水酸基が減少し、耐熱性が不足し、また粘度が高くなってしまうため好ましくない。
このエステル化反応は可逆反応であり、効率的に生成物を得るため、触媒を用いたり、脱離した塩化水素を反応系内から除去するなどの操作が行われる。
脱離した塩化水素は気体であり、気体化する際に体積が増すため、反応性の良い原料では容易に反応系外へと放出されるが、反応性が低い原料の場合、ハロゲン化水素の脱離量が少なく、系内に留まり易いことで逆反応も生じるため、反応が進まないことがある。このような場合、生じたハロゲン化化水素を捕捉して逆反応を起こさないようにすることが有効で、ハロゲン化水素捕捉剤としてアミン類が使用されることがある。
式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物の反応は、特に制約は無く、フェノール化合物の通常の(メタ)アクリロイル化反応と同様に実施できる。
例えば、(メタ)アクリル酸を使用する場合は、式(3)で表されるリン含有フェノール化合物を、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の強酸触媒の存在下、水酸基に対して1~10倍の( メタ)アクリル酸と縮合反応することで製造することができる。この反応は、副生する縮合水を系外に除去しながら進める必要があることから、反応溶媒にはトルエン等の水と共沸する炭化水素系の溶剤を使用し、反応液を70~140 ℃ 程度に加熱することで行う。
また、式(9)で表されるリン含有フェノール化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物との反応で本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物を得ることができる。使用することができるハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、フッ化アクリロイル、塩化アクリロイル、臭化アクリロイル、ヨウ化アクリロイル等のハロゲン化アクリロイル、フッ化メタクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化メタクリロイル、ヨウ化メタクリロイル等のハロゲン化メタクリロイルが挙げられる。
本発明の実施においては、ハロゲン化(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリル酸無水物として、1種または2種以上の混合物を使用してもよい。本発明においては、なかでも、入手が容易な点から、塩化(メタ)アクリルまたは/および(メタ)アクリル酸無水物を使用することが好ましい。
ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは/および(メタ)アクリル酸無水物の使用量としては、原料として用いるリン含有フェノール化合物の水酸基1モルに対して、0.8~5モル、好ましくは0.95~4モルである。(メタ)アクリル酸ハライドまたは/および(メタ)アクリル酸無水物の使用量が上記範囲を下回ると、得られるリン含有(メタ)アクリロイル化合物の耐熱性が低下し、また水酸基の残存量が増えるため誘電特性が悪化するため好ましくなく、使用量が上記範囲を上まわると釜効率が下がりコストが高くなるため好ましくない。
ハロゲン化(メタ)アクリロイルを使用する場合においては、使用する(メタ)アクリル酸ハライドに対応したハロゲン化水素が副生物として生成することから、塩基性化合物を併用して、発生したハロゲン化水素をトラップしつつ反応を行うことが好ましい。塩基性化合物としては特に限定されず、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエチルアミン、N-エチル-ジメチルアミン、N-エチル-ジアミルアミン等の脂肪族アミン;N,N-ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の芳香族アミン;N,N-ジメチル-シクロヘキシルアミン、N,N-ジエチル-シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、N-メチルピリジン、N-メチルピロリジン等の複素環アミン;テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のジアミン等を挙げることができる。特に、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン、ピリジンが、入手の容易さから好ましい。
塩基性化合物の使用量としては、原料として用いるリン含有フェノール化合物の水酸基1モルに対して、例えば0.8~7モル、好ましくは0.95~5モル程度である。第3級アミンの使用量が上記範囲を下回ると、ハロゲン化水素を完全にトラップすることができず、反応装置の腐食が起こってしまい、上記範囲を上回ると、コスト高となる傾向がある。
(メタ)アクリル酸無水物で反応を行う際には、触媒を使用しなくても良いが、反応が進み難い場合には、エステル触媒、酸触媒、塩基触媒、ルイス酸触媒を用いることができる。ここで、エステル触媒としては、酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の、低級カルボン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が例示できる。また、酸触媒としては、硫酸、ホウ酸等の無機酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等が例示できる。また、塩基触媒としては、有機塩基であれば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素脂肪族化合物;、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、等の含窒素芳香族複素環化合物等が例示できる。また、ルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等が例示できる。
触媒の使用量としては、使用する(メタ)アクリル酸無水物に対して、10%以下が好ましく、5%以下が更に好ましい。触媒を使用する場合に上記範囲を上回ると、触媒の除去に時間がかかり、また製品中に触媒が残存しやすく、特性の悪化を招く。
式(9)で表されるリン含有フェノール化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは/および(メタ)アクリル酸無水物の反応においては、反応溶媒として有機溶媒を使用し、溶液中での反応を行うことが好ましい。使用することができる溶媒としては、フェノール化合物および(メタ)アクリル酸ハライドまたは/および(メタ)アクリル酸無水物との反応性を有さないものであれば特に限定されず、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、水等の溶剤が挙げられ、必要によりこれらを組み合わせて使用することができる。
式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドまたは/および(メタ)アクリル酸無水物の反応においては、反応温度は-50~150℃であることが好ましく、高温で反応させると重合反応が生じる可能性が高くなるので、-25~100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜設定されるが、1~48時間の範囲に設定することが好ましい。
式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物の反応は、重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤を添加することにより、反応に供する(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物や、目的生成物である(メタ)アクリル酸エステルが重合してオリゴマーを副生することを防止することができる。 重合禁止剤には公知のものを制限なく用いることができ、ヒドロキノン、ヒドロキシモノメチルエーテル、t - ブチルカテコール、t - ブチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール、フェノチアジン等の有機化合物の他、塩化銅、硫化銅等の銅化合物等が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
この反応の終了後、得られた反応液(反応混合物)を必要により、反応溶媒の留去、溶媒置換等を実施し、水等による洗浄や、活性炭処理、シリカゲルクロマトグラフィー等の手段を利用して精製し、目的物である本発明の(メタ)アクリロイル化合物を取り出すことができる。
次に、本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物を必須成分とし、硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を配合してなる難燃性樹脂組成物について説明する。
本発明の難燃性樹脂組成物において、配合割合は特に限定されるものではないが、例えば、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、リン含有(メタ)アクリロイル化合物を10~300重量部配合するとよい。好ましくは20~200重量部、より好ましくは50~150重量部である。
硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、硬化型マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリシアナート樹脂、フェノール樹脂、分子中に1個以上の重合性不飽和炭化水素基を有する1種以上のビニル化合物類等を挙げることができ、好ましくは、エポキシ樹脂、分子中に1個以上の重合性不飽和炭化水素基を有する1種以上のビニル化合物類である。
硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。かかるエポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなエポキシ樹脂を用いることによって、本発明の硬化性樹脂組成物の有する、優れた誘電特性と流動性への影響を最小限に留め、硬化物の耐熱性と密着性を充分に高められると考えられる。
また、エポキシ樹脂を含む場合には、エポキシ樹脂の他に硬化剤を使用しても良い。硬化剤としては、特に制限されるものではなく、例えばフェノール系硬化剤、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
更に、エポキシ樹脂を配合する場合には、必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。例えば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等である。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2~5重量部の範囲である。
硬化性樹脂として、分子中に1個以上の重合性不飽和炭化水素基を有する1種以上のビニル化合物類(以下、ビニル化合物類ともいう。)である場合、その種類は特に限定されない。すなわち、ビニル化合物類は、本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物と反応させることによって、架橋を形成させて、硬化させることができるものであればよい。重合性不飽和炭化水素基が炭素-炭素不飽和二重結合であるものがより好ましく、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。
硬化性樹脂としてのビニル化合物類の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の平均個数(ビニル基(置換ビニル基を含む)の数。末端二重結合数ともいう。)は、ビニル化合物類のMwによって異なるが、例えば、1~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この末端二重結合数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端二重結合数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下したり、硬化性樹脂組成物の流動性が低下したりする等の不具合が発生するおそれがある。
上記ビニル化合物類としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、末端が(メタ)アクリロイル基やスチリル基で変性された変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物、ポリブタジエン等のように分子中にビニル基を2個以上有するビニル化合物(多官能ビニル化合物)、及びスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等が挙げられる。この中でも、炭素-炭素二重結合を分子中に2個以上有するものが好ましく、具体的には、TAIC、多官能(メタ)アクリレート化合物、変性PPE樹脂、多官能ビニル化合物、及びジビニルベンゼン化合物等が挙げられる。これらを用いると、硬化反応により架橋がより好適に形成されると考えられ、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより高めることができる。また、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物を併用してもよい。炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物としては、分子中にビニル基を1個有する化合物(モノビニル化合物)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、PPS樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等や、既知の熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン‐イソプレン共重合体、水添スチレン-ブタジエン共重合体、水添スチレン-イソプレン共重合体等)や、あるいはゴム類(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン)を挙げることができる。好ましくは、未変性または変性ポリフェニレンエーテル樹脂、水添スチレン-ブタジエン共重合体を挙げることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物には、光または/および熱でラジカルを生じるラジカル重合開始剤(重合触媒ないし架橋剤)を配合しても良い。光重合開始剤としては、例えばべンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、べンゾインプロピルエーテル、べンゾインイソブチルエーテル等のべンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、べンジルジメチルケタールなどのケタール類;べンゾフエノン、4-べンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノべンゾフェノンなどのべンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルべンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
熱ラジカル開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンも、ラジカル重合開始剤として使用できる。しかし、これらの例に限定されるものではなく、ラジカル開始剤2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤の配合量は、リン含有リン含有(メタ)アクリロイル化合物100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部である。
本発明の難燃性樹脂組成物には、充填剤を配合することができる。充填剤としては、硬化性樹脂組成物の硬化物の、耐熱性や難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、公知の充填剤を使用することができるが、特に限定されない。また、充填剤を含有させることによって、耐熱性、寸法安定性や難燃性等をさらに高めることができる。具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いた場合、難燃助剤として作用し、リン含有率が少なくても難燃性を確保することが出来る。この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填剤は、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、又はアミノシランタイプ等のシランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、ラジカル重合開始剤との反応性との観点から、ビニルシランタイプ、メタクリロキシシランタイプ、アクリロキシシランタイプ、及びスチリルシランタイプのシランカップリング剤が好ましい。これにより、金属箔との接着強度や樹脂同士の層間接着強度が高まる。また、充填剤に予め表面処理する方法でなく、上記シランカップリング剤をインテグラルブレンド法で添加して用いてもよい。
充填剤の含有量は、充填剤を除く固形分(モノマー等の有機成分と難燃剤を含み、溶剤を除く。)の合計100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、30~150質量部であることが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物には、上記以外の添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤等の分散剤等が挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、かかる用途の硬化物を得る方法としては、硬化性樹脂組成物を注型、或いはトランスファ-成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80~230℃で0.5~10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、プリプレグとして使用することもできる。プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的、あるいは回路基板を形成する回路基板材料とする目的でワニス状に調製して、樹脂ワニスとすることができる。この樹脂ワニスは、回路基板用に適し、回路基板材料用ワニスとして使用できる。なお、ここでいう回路基板材料の用途は、具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
上記の樹脂ワニスに用いられる有機溶媒としては、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤類等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して使用することも可能である。誘電特性の観点から、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が好ましい。
樹脂ワニスを作成する際に、使用する有機溶剤の量は、本発明の硬化性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは5~900重量部、より好ましくは10~700重量部、特に好ましくは20~500重量部である。
プリプレグを作成するのに用いられる基材としては、公知の材料が用いられるが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。これら基材には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤など一般のものが使用できる。
プリプレグを得る方法としては、上記樹脂ワニスを基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。含浸後に、100~180℃で1~30分加熱乾燥することでプリプレグを得ることができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80重量%とすることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、積層板としても使用することもできる。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、硬化性樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧力があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成形性を満足する条件で加圧することが好ましい。例えば温度を180~250℃、圧力を49.0~490.3N/cm2(5~50kgf/cm2)、加熱加圧時間を40~240分間にそれぞれ設定することができる。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作製することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片側又は両側の回路形成面に、樹脂シート、樹脂付き金属箔、又はプリプレグにて絶縁層を形成すると共に、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。
また、本発明の硬化性組成物をビルドアップフィルムに使用することもできる。本発明の樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する方法は、例えば、上記樹脂ワニスを、支持フィルム上に塗布、乾燥させてフィルム状の絶縁層を形成する方法が挙げられる。このようにして形成させたフィルム状の絶縁層は、多層プリント配線板用のビルドアップフィルムとして使用できる。
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例中の部はいずれも重量部である。
なお、実施例中の各硬化物サンプルの物性測定は、以下に示す方法により行った。
(1)ポリマーの分子量及び分子量分布:リン含有フェノール化合物(ポリマー)の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC-8120GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
(2)水酸基当量:100mLの共栓付フラスコに約6mg/eqの試料を精秤し、無水酢酸/ピリジン=3/1(容量比)で混合した試薬を3mL加え、冷却管を付け、ホットプレートで5分間加熱還流させ、5分間の放冷の後、1mLの水を加える。その液を、0.5mol/LのKOH/MeOH溶液で電位差滴定する事で算出した。
(3)リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予めリン酸二水素カリウムを用いて作成した検量線により、求めたリン原子含有率を%で表した。
(4)ガラス転移温度:株式会社日立ハイテクサイエンス製、示差走査熱量測定を用いて10℃/分の昇温速度で、ベースラインシフトから求めた。
(5)比誘電率及び誘電正接:IPC-TM-650 2.5.5.9規格に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めた。
(6)難燃性:UL94に準じ、試験片5本を用いて垂直法により評価した。評価はV-0、V-1、V-2で記した。
(7)誘電特性:Agilent製のインピーダンスマテリアルアナライザー(E4991A)を用い、25℃、湿度60%環境下で容量法により、1GHzでの比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を測定した。
合成例・実施例において下記の化合物を原料として用いた。
・SP-2060N(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製フェノールノボラック樹脂:水酸基当量107g/eq)
・DC-5(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製クレゾールノボラック樹脂:水酸基当量121g/eq)
・SN-485(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製ナフトールアラルキル樹脂:水酸基当量212g/eq)
・オキシ塩化リン(東京化成工業株式会社製)
・レゾルシノール(東京化成工業株式会社製)
・2,6-ジメチルフェノール(東京化成工業株式会社製)
(合成例1)ジ2,6-キシリルホスホロクロリデート(DXPC)の合成
撹拌機、温度計および塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた2Lの4つ口フラスコに、オキシ塩化リン(下記構造式)767g(5mol)、
Figure 2024115162000017
2,6-ジメチルフェノール(下記構造式)1200g(9.8mol)、
Figure 2024115162000018
溶剤としてのキシレン140g、触媒として塩化マグネシウム6.2g(0.065mol)を充填した。得られた混合溶液を撹拌しながら約3時間かけて温度160℃まで徐々に加熱昇温して反応させ、発生する塩化水素ガスを水スクラバーで回収した。その後、同温度でフラスコ内の圧力を徐々に20kPaまで減圧し、キシレンや未反応のオキシ塩化リンおよび2,6-ジメチルフェノール、副生する塩化水素を除去し、ジ2,6-キシリルホスホロクロリデート(DXPC:下記構造式)を主成分とする反応生成物1700gを得た。また、反応混合物の塩素含有率は10.9質量%であった。
Figure 2024115162000019
(合成例2)リン含有フェノール化合物Aの合成
撹拌機、温度計、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた500mLの4つ口フラスコに、メシチレン260g、フェノールノボラック樹脂(下記構造式)58.0g(0.5mol)、
Figure 2024115162000020
合成例1で合成したDXPC81.8g(0.25mol)、触媒として無水塩化マグネシウム1.2g(0.01mol)および無水塩化アルミニウム2.0g(0.015mol)を充填した。得られた混合溶液を撹拌しながら154℃まで2時間をかけ加熱昇温し発生する塩化水素を捕集した。更に2.5時間反応を継続させた後、減圧下メシチレン約200g回収し常圧に戻した。反応混合物を60℃に冷却し酢酸エチル200gを加え、酸洗い、中和後水洗いを2回行い溶媒除去しリン含有フェノール化合物A113.5gを得た。得られた物質の重量平均分子量は(Mw)は750、リン含有率は5.5重量%、水酸基当量は360g/eqであった。なお、水酸基当量から計算される、水酸基のリンを含む官能基への変性率は38.9モル%であった。
(合成例3)リン含有フェノール化合物Bの合成
撹拌機、温度計、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた500mLの4つ口フラスコに、メシチレン260g、クレゾールノボラック樹脂(下記構造式)62.7g(0.5mol)、
Figure 2024115162000021
合成例1で合成したDXPC81.8g(0.25mol)、触媒として無水塩化マグネシウム1.2g(0.01mol)および無水塩化アルミニウム2.0g(0.015mol)を充填した。以降、実施例1と同様の操作を行い、リン含有フェノール化合物B119.4gを得た。得られた物質の重量平均分子量(Mw)は1032、リン含有率は5.0重量%、水酸基当量は385g/eqであった。なお、水酸基当量から計算される、水酸基のリンを含む官能基への変性率は39.1モル%であった。
(合成例4)リン含有フェノール(化合物C)の合成
撹拌機、温度計、塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた500mLの4つ口フラスコに、メシチレン260g、ナフトールアラルキル樹脂(下記構造式)90.0g(0.4mol)、
Figure 2024115162000022
合成例1で合成したDXPC64.8g(0.2mol)、触媒として無水塩化マグネシウム0.95g(0.01mol)および無水塩化アルミニウム2.0g(0.015mol)を充填した。以降、実施例1と同様の操作を行い、リン含有フェノール化合物C125.6gを得た。得られた物質の重量平均分子量(Mw)は1160、リン含有率は3.6重量%、水酸基当量は514g/eqであった。なお、水酸基当量から計算される、水酸基のリンを含む官能基への変性率は37.6モル%であった。
(実施例1)リン含有(メタ)アクリロイル化合物Aの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えたガラス製セパラブルフラスコに、リン含有フェノール化合物A100.0g、テトラヒドロフラン150.0g、トリエチルアミン28.3g、4-ジメチルアミノピリジン2.1gを仕込み、室温で溶解した。窒素雰囲気化で、メタクリル酸無水物(下記構造式)52.3g
Figure 2024115162000023
を1時間かけて滴下し、更に50℃で6時間反応を継続した。
続いて、反応液を濃縮し、トルエン277.7gに溶解後、塩酸、炭酸ナトリウム水溶液、水の順で洗浄した。水による洗浄後、脱水して、ろ過、更に溶媒を濃縮することで、リン含有メタクリロイル化合物Aのトルエン溶液214.2gを得た。化合物Aの分子量(Mw)は750、リン含有率は4.7%、(メタ)アクリロイル置換基の存在率は61.9モル%であった。この場合、(メタ)アクリロイル置換基の存在率は、水酸基がすべて(メタ)アクリロイル化されたものと推定した値である(以下の実施例においても同様)。
(実施例2)リン含有(メタ)アクリロイル化合物Bの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えたガラス製セパラブルフラスコに、リン含有フェノール化合物B100.0g、テトラヒドロフラン100.0g、トリエチルアミン26.4g、4-ジメチルアミノピリジン2.0gを仕込み、室温で溶解した。窒素雰囲気化で、メタクリル酸無水物49.3gを1時間かけて滴下し、更に50℃で6時間反応を継続した。
続いて、反応液を濃縮し、トルエン275.8gに溶解後、実施例1と同様に洗浄、濃縮を行い、固形分濃度50%のリン含有メタクリロイル化合物Bのトルエン溶液211.9gを得た。化合物Bの分子量(Mw)は1130、リン含有率は4.5%、(メタ)アクリロイル置換基の存在率は60.9モル%であった。
(実施例3)リン含有(メタ)アクリロイル化合物Cの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えたガラス製セパラブルフラスコに、リン含有フェノール化合物C100.0g、テトラヒドロフラン150.0g、トリエチルアミン19.7g、4-ジメチルアミノピリジン1.5gを仕込み、室温で溶解した。窒素雰囲気化で、メタクリル酸無水物36.8gを1時間かけて滴下し、更に50℃で6時間反応を継続した。
続いて、反応液を濃縮し、トルエン264.2gに溶解後、実施例1と同様に洗浄、濃縮を行い、固形分濃度50%のリン含有メタクリロイル化合物Cのトルエン溶液203.9gを得た。化合物Cの分子量(Mw)は1260、リン含有率は3.2%、(メタ)アクリロイル置換基の存在率は62.4モル%であった。
(比較合成例)リン含有メタクリロイル化合物Dの合成
特開2022-16422号公報に記載の方法に従って合成した。具体的には、撹拌機、温度計および塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、オキシ塩化リン1500g、2,6-ジメチルフェノール611g、触媒としての塩化マグネシウム1.2g充填した。
得られた混合溶液を撹拌しながら約3時間かけて温度110℃まで徐々に加熱昇温して反応させ、発生する塩化水素(塩酸ガス)を水スクラバーで回収した。その後、120℃でフラスコ内の圧力を徐々に12kPaまで減圧し、未反応のオキシ塩化リンおよびフェノール、副生する塩化水素を除去し、モノ2,6-ジメチルフェニルホスホロジクロリデート1200gを得た。
撹拌機、温度計、滴下ロートおよびコンデンサーを備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、2,3,5-トリメチルハイドロキノン320g、塩化水素捕捉剤としてピリジン135g、溶剤としてトルエン200gを充填した。また、滴下ロートに上記モノ2,6-ジメチルフェニルホスホロジクロリデート203gを充填した。
4つ口フラスコ中の混合溶液を撹拌しながら温度20℃まで加熱し、同温度(20℃)で維持しながら、滴下ロート中のモノ2,6-ジメチルフェニルホスホロジクロリデートを2時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃まで加熱し、5時間撹拌し反応生成物を得た。得られた反応生成物を希塩酸および水で洗浄後、温度150℃まで加熱し、2kPaまで減圧して水、トルエン、低沸分を留去し、常温まで冷却することで黒褐色固体のリン含有フェノール化合物D330gを得た。
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下ロートを備えたガラス製セパラブルフラスコに、リン含有フェノール化合物D200g、テトラヒドロフラン133.2g、トリエチルアミン19.5g、を仕込み、溶解後に5℃以下に氷浴で冷却した。窒素雰囲気化で塩化メタクリロイル78.0gを1時間かけて滴下し、更に2時間反応を継続した。
続いて、反応液を濃縮し、トルエン601.6gに溶解後、塩酸、炭酸ナトリウム水溶液、水の順で洗浄した。水による洗浄後、脱水して、ろ過、更に溶媒を濃縮することで、リン含有メタクリロイル化合物Dのトルエン溶液227.6gを得た。得られた化合物Dの分子量(Mw)は560、リン含有率は5.2%であった。
実施例4~9、比較例1~5
<硬化性樹脂組成物の調整及び硬化物の作成>
各種成分を表1の割合で配合することでワニスを作成し、ペットフィルム上に塗布、130℃オーブンで5分乾燥させ樹脂組成物のフィルムを作成した。次に、このフィルムを粉砕することで、樹脂組成物の粉末を得た。更に、この粉末をステンレス製の鏡面板にスペーサーと伴に挟み、真空オーブンを用いて210℃90分間で成形することで硬化物のサンプルを得た。
<難燃試験片の作成>
各種成分を表1の割合で配合することでワニスを作成し、この樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製;7628タイプ;品番 H258)に含浸させた後、130℃で5分間加熱することにより乾燥し、プリプレグを得た。
得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、1.6mm厚の積層板を得た。銅箔をエッチングし、カットすることで、難燃性試験片を得た。
OPE-2St:三菱ガス化学製株式会社製 末端スチリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂
PX-200:大八化学工業株式会社製 芳香族縮合リン酸エステル、リン含有率9.0%
パーブチルP:日油社製1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン
その結果を表1に示した。
Figure 2024115162000024
本発明のリン含有(メタ)アクリロイル化合物は、電気・電子製品やOA機器、通信機器、建材等に使用されるプラスチック材料、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の難燃化に有用であり、特に電子機器の情報処理量増大に伴う高周波化における伝送損失低減の難燃材料として有用である。

Claims (6)

  1. 一般式(1)で表されることを特徴とするリン含有(メタ)アクリロイル化合物。
    Figure 2024115162000025
    一般式(1)において、mは1~20の数、n1はそれぞれ独立して1~4の数であり、Arは置換基を有しても良い炭素原子数6~30の芳香環である。R1はそれぞれ独立して一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であるが、化合物中に一般式(2)で表される置換基と一般式(3)で表される置換基をそれぞれ少なくとも1つ含む。Xは、連結基を表し、それぞれ独立して、酸素、硫黄、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン、炭素原子数8~32のアラルキレンである。
    Figure 2024115162000026
    一般式(2)において、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素原子数1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、n2、n3はそれぞれ独立に0~5の数である。
    Figure 2024115162000027
    ここで、R4は、水素またはメチル基である。
  2. 下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載のリン含有(メタ)アクリロイル化合物。
    Figure 2024115162000028
    一般式(4)において、R1、n1、mは一般式(1)と同義である。Yは置換基を有していても良い炭素原子数6~30の芳香環基である。kは0または1である。Arは下記一般式(5)、(6)、(7)または(8)で表される芳香族化合物に由来する芳香族基を表す。
    Figure 2024115162000029
    上記一般式(5)、(6)、(7)および(8)において、R5はそれぞれ独立に炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、n4は0~4の整数である。R1、n1は一般式(1)と同義である。
  3. リン含有率が1.5~12.0重量%である請求項1に記載のリン含有(メタ)アクリロイル化合物。
  4. 一般式(9)で表されるリン含有フェノール化合物と、(メタ)アクリル酸、ハロゲン化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸無水物の一種以上とを反応させることを特徴とする請求項1に記載のリン含有(メタ)アクリロイル化合物の製造方法。
    Figure 2024115162000030
    一般式(9)において、m、n1、Ar、Xは、一般式(1)と同義である。R6は水素または上記一般式(2)で表される置換基である。
  5. 請求項1に記載のリン含有(メタ)アクリロイル化合物に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の一種以上を配合してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  6. 請求項5に記載の難燃性樹脂組成物を使用して得られる電子回路基板用積層板。
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