JP2024099162A - 可食性インクジェットインクの印刷方法、錠剤の製造方法、吐出装置及び駆動波形生成装置 - Google Patents

可食性インクジェットインクの印刷方法、錠剤の製造方法、吐出装置及び駆動波形生成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、可食性インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる可食性インクジェットインクの印刷方法等を提供する。【解決手段】本実施形態に係るインクジェットインクの印刷方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させる装置を用いて、インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、インクジェットインクを吐出させる装置は、インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、駆動波形は、インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。【選択図】 図2

Description

本発明は、可食性インクジェットインクの印刷方法、錠剤の製造方法、吐出装置及び駆動波形生成装置に関する。
インクジェット印刷用インク(以下、単に「インクジェットインク」とも称する。)には、可食性を有するものがある。そして、可食性を有するインクジェットインクに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載したものがある。
可食性を有するインクジェットインクには、例えば、インクの乾燥性を高めるための乾燥性溶剤としてアルコール溶媒を含んだものがある。また、可食性を有するインクジェットインクには、例えば、黒色顔料として植物炭末色素等や食用染料としてタール系色素等を含んだものがある。
特開2006-169301号公報
可食性色素を含んだインクジェットインク(以下、単に「インクジェットインク」とも称する。)には、印刷後のインクを乾燥させるという性能、所謂乾燥性が求められることがある。この性能を向上させるための方法としては、例えば、インクジェットインクに乾燥性の高いアルコール溶媒を乾燥性溶剤として添加し、そのアルコール溶媒の添加量を増加させる方法がある。しかしながら、この方法では、ノズル液面の乾燥が促進され、初期吐出性や間欠再開性(以下、印刷安定性とも称する)が悪化することがある。特に、アルコール溶媒の含有量(濃度)がインク全体の30質量%以上であるインクジェットインクでは、上述した初期吐出性や間欠再開性の悪化が顕著になる傾向がある。ここで、「初期吐出性」とは、印刷開始直後にインクの非吐出に起因する非印刷部分の発生なくインクを吐出できる性能をいう。また、「間欠再開性」とは、規定時間フラッシングなくインクをインクジェットヘッド内に放置した後、上記インクジェットヘッドを用いて印刷した際に、初期吐出から非印刷部分の増加なくインクを吐出できる性能をいう。なお、前述の間欠再開性は、印刷再開性、あるいは印刷間欠再開性と呼ばれることもある。
これに対し、アルコール溶媒の添加量を低下させたインクジェットインクを用いて印刷を行うと、前述の間欠再開性は向上するものの、例えば、インクの乾燥性が低下する傾向がある。このため、アルコール溶媒の添加量を低下させたインクジェットインクを用いて、例えば、フィルムコーティング錠(FC錠)や糖衣錠といった乾燥性の低い錠剤上に文字等を印刷すると、インクが有する低い乾燥性に起因して、印刷機部材や他錠剤にそのインクが転写してしまうおそれがある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、可食性インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる可食性インクジェットインクの印刷方法及びその印刷方法を用いて印刷した印刷画像を備えた錠剤、可食性インクジェットインクの印刷方法に用いるインク吐出装置及びそのインク吐出装置に用いる駆動波形生成装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る可食性インクジェットインクの印刷方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形である。
また、本発明の一態様に係る錠剤の製造方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形である。
また、本発明の一態様に係る吐出装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置であって、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形である。
また、本発明の一態様に係る駆動波形生成装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する装置であって、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形である。
また、本発明の一態様に係る可食性インクジェットインクの印刷方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、前記電位V2は、前記電位V1より低い電位である。
また、本発明の一態様に係る錠剤の製造方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、前記電位V2は、前記電位V1より低い電位である。
また、本発明の一態様に係る吐出装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置であって、前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、前記電位V2は、前記電位V1より低い電位である。
また、本発明の一態様に係る駆動波形生成装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する装置であって、前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、前記電位V2は、前記電位V1より低い電位である。
本発明の一態様に係る可食性インクジェットインクの印刷方法、その印刷方法に用いる吐出装置及びその吐出装置に用いる駆動波形生成装置であれば、可食性インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる。
また、本発明の一態様に係る錠剤の製造方法であれば、可食性インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる。
本実施形態に係るプリントヘッドの機械的構造を模式的に示す概略断面図である。 本実施形態に係る駆動信号を模式的に示す概略図である。 本実施形態に係る第1波形を単独で圧電振動子に印加した場合のメニスカスの挙動を模式的に示す概略図である。 本実施形態に係る第2波形を単独で圧電振動子に印加した場合のメニスカスの挙動を模式的に示す概略図である。 本実施形態に係る医療用錠剤の第1の構成例を示す平面図と断面図である。 本実施形態に係る医療用錠剤の第2の構成例を示す平面図と断面図である。 本実施例に係る駆動波形を模式的に示す概略図である。
本発明の実施形態に係る可食性インクジェットインクは、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法で文字や画像等を印刷する際に使用する可食性インクジェットインクに関するものである。以下、本発明の実施形態に係る可食性インクジェットインク及びそのインクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤の構成について、詳細に説明する。また、本発明の実施形態に係る可食性インクジェットインクの印刷方法、その印刷方法に用いる吐出装置及びその吐出装置に用いる駆動波形生成装置について、詳細に説明する。
〔インクジェットインクの構成〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、水と、アルコール溶媒と、可食性色素とを少なくとも含んでいる。
本実施形態に係るアルコール溶媒は、乾燥性の高いアルコール溶媒であればその種類は問わないが、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)の少なくとも1種を含んでいれば好ましい。
また、アルコール溶媒の含有量(濃度)は、インクジェットインク全体に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であれば好ましく、30質量%以上50質量%以下の範囲内であればより好ましく、30質量%以上45質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。なお、従来技術に係るインクジェットインクでは、インクの過度な乾燥を防止する観点から、アルコール溶媒の含有量をインクジェットインク全体に対して30質量%未満にしたものが多い。そのため、本実施形態に係るインクジェットインクは、従来技術に係るインクジェットインクに比べてアルコール溶媒の含有量が高いインクといえる。
また、本実施形態に係るインクジェットインクは、インクの温度が25℃における粘度が5.0mPa・s以下であれば好ましく、4.5mPa・s以下であればより好ましく、4.0mPa・s以下であればさらに好ましい。なお、本実施形態に係るインクジェットインクは、インクの温度が25℃における粘度の下限値は特に制限されるものではないが、2.3mPa・s以上であれば、インクの取り扱いが容易となる。
また、本実施形態に係るインクジェットインクは、インクの温度が25℃における表面張力が23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であれば好ましく、24mN/m以上34mN/m以下の範囲内であればより好ましい。
以下、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる各成分の詳細について説明する。
(可食性色素)
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる可食性色素としては、例えば、可食性顔料や可食性染料がある。本実施形態に係る可食性顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、薬用炭や、備長炭、あるいは竹炭等の植物炭末色素、経口摂取可能なカーボン、または工業用の石油由来のカーボンブラックである。これらカーボンの中でも、特に経口摂取可能なものが好ましい。経口摂取可能なカーボンを用いる場合、本実施形態に係るインクジェットインクを錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに用いることができる。
また、本実施形態に係る可食性染料は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の合成食用色素や天然食用色素である。
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、食用緑色3号、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、ノルビキシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビン等が挙げられる。
また、天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、例えば、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、例えば、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、例えば、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、例えば、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、例えば、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素等が挙げられる。
可食性色素の含有量(濃度)は、例えば、インクジェットインク全体に対して0.5質量%以上6質量%以下の範囲内であれば好ましく、1質量%以上5質量%以下の範囲内であればより好ましい。このような構成であれば、印刷画像に良好な視認性を付与するとともに、高い印刷安定性を付与することができる。
これに対し、可食性色素の含有量が0.5質量%未満であると、印刷色全体が薄くなり印刷画像の視認性が低下する傾向がある。また、含有量が6質量%を超えると、可食性色素の溶解安定性の悪化によりインクジェットインク中の可食性色素が固体として析出したり、沈殿したりすることで、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、間欠再開性が低下する傾向がある。
(溶媒)
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述の可食性色素を溶解または分散させるための溶媒を含んでいる。そして、その溶媒は、水と、乾燥溶媒(乾燥性溶剤)としてのアルコール溶媒とを含んでいる。以下、この水と乾燥溶媒とについて説明する。
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる水は、例えば、精製水である。本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる水の割合は、例えば、インクジェットインク全体の30質量%以上が好ましい。
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる乾燥溶媒はアルコール溶媒であり、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)の少なくとも1種を含んだアルコール溶媒である。このアルコール溶媒の濃度は、インクジェットインク全体に対して60質量%以下である。なお、アルコール溶媒の濃度がインクジェットインク全体に対して60質量%を超えると、インクの乾燥性が過度になり、印刷安定性が低下する傾向がある。また、アルコール溶媒の濃度の下限値は、インクジェットインク全体に対して30質量%以上である。上記数値範囲内であれば、インクジェットインクに優れた乾燥性を付与することができる。
(分散剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述の可食性色素や溶媒以外に、分散剤を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な分散剤は、前述の可食性色素(特にカーボン等の可食性顔料)の分散性を高めることができ、且つ可食性を有するものであればよく、例えばHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が11以上20以下の範囲内であるショ糖脂肪酸エステルである。ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、前述の可食性色素に対して60質量%以上180質量%以下の範囲内が好ましい。なお、分散剤であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が前述の可食性色素に対して60質量%未満であると、可食性色素の分散安定性が低下する傾向がある。また、分散剤であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が前述の可食性色素に対して180質量%を超えると、乾燥性が低下する傾向がある。
また、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれるショ糖脂肪酸エステルは、そのHLB値が11以上20以下の範囲内であれば好ましい。このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷安定性の低下を低減することができる。なお、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が11未満であると、印刷安定性が低下する傾向がある。また、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値の上限値は、20である。
(湿潤剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述の可食性色素や溶媒、分散剤以外に、湿潤剤を含有してもよく、その含有量は、インクジェットインク全体に対して0.001質量%以上10質量%以下の範囲内であってもよい。このような構成であれば、インクジェットインクに使用する上で十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷安定性の低下をより低減することができる。なお、湿潤剤の含有量がインクジェットインク全体に対して0.001質量%未満であると、印刷安定性が低下する傾向がある。また、湿潤剤の含有量がインクジェットインク全体に対して10質量%を超えると、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することが困難となる傾向がある。
また、本実施形態に係るインクジェットインクは、湿潤剤の含有量がインクジェットインク全体に対して3質量%以下であればより好ましい。このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷安定性の低下をさらに低減することができる。
本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な湿潤剤は、湿潤剤として一般にインクジェットインクに添加されるものであれば特に制限されることはなく使用可能である。なお、本実施形態に係る湿潤剤は、高沸点のものであればより効果的である。ここで、「高沸点」とは、例えば、140℃以上を意味する。
本実施形態に係る湿潤剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1、4-ジオール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、2-メチル-2、4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、数平均分子量2000以下のポリエチレングリコール、1、3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-エチル-2-ピロリドン等が挙げられる。これら湿潤剤の中でも特に好ましくは、プロピレングリコール及びグリセリンの少なくとも一方を含む湿潤剤である。このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷安定性の低下をさらに低減することができる。
また、本実施形態に係る湿潤剤は、例えば、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(バインダー)
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述の可食性色素や溶媒、分散剤、湿潤剤以外に、バインダー(固着剤)を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能なバインダーは、バインダーとして一般にインクジェットインクに添加されるものであれば特に制限されることはなく、例えば、多糖類を含むものである。また、本実施形態に係るバインダーに含まれる多糖類は、その重量平均分子量が1,000以上10,000以下の範囲内にあるものであればより好ましい。このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷安定性の低下をさらに低減することができる。なお、バインダーである多糖類の重量平均分子量が1,000未満であると、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することが困難となる傾向がある。また、バインダーである多糖類の重量平均分子量が10,000を超えると、印刷安定性が低下する傾向がある。
また、本実施形態に係る多糖類の含有量は、インクジェットインク全体の質量の0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。バインダーの含有量が上記範囲内であると、インクの粘度は、インクジェット印刷を好適に行える程度の粘度となる。
本実施形態に係る多糖類としては、例えば、マルトデキストリン、エリスリトール、PVP(ポリビニルピロリドン)、デキストラン、ポリデキストロース、トレハロース、あるいはトウモロコシ及び小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、及びタマリンド種子等の多糖類が挙げられる。
また、本実施形態に係るバインダーとして、例えば、20℃の水100mlに対する溶解度が39g以下である二糖類を含有してもよい。具体的には、乳糖(ラクトース)、セロビオース、還元イソマルツロースである。20℃の水100mlに対する乳糖の溶解度は16g、セロビオースの溶解度は14g、還元イソマルツロースの溶解度は、38gである。前述の二糖類を上述したインクジェットインクに添加することで、可食性色素(特に可食性染料)を含む被印刷物(例えば錠剤)の表面に固着させることができる。これにより、前述の二糖類を含有するインクジェットインクであれば、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上させることができる。また、本実施形態においてバインダーとして用いられる上記二糖類(乳糖、セロビオース、還元イソマルツロース)は、インクジェットインクの光照射による分解(光分解)を抑制する機能も有する。このため、光変褪色の発生自体を抑制することもできる。
本実施形態に係るインクジェットインクにおける上記二糖類の配合割合、すなわち上記二糖類(乳糖、セロビオース、還元イソマルツロース)の合計含有量は、インクジェットインク全体の1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような構成であれば、上記二糖類によるインクジェットインクの固着効果がより確実に発揮され、インクジェットインクの耐光性を向上させることができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに高い印刷安定性を付与することができる。
これに対し、上記二糖類の配合割合がインクジェットインク全体の1質量%未満であると、インクジェットインクの固着効果が低減し得る。また、上記二糖類の配合割合がインクジェットインク全体の20質量%を超えると、インク粘度の上昇や、上記二糖類の溶解安定性の悪化によりインクジェットインク中の固着剤が固体として析出したり、沈殿したりすることで、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、印刷安定性が低下し得る。
なお、一般に糖類はアルコール類に溶解しづらい性質を有する。このため、本実施形態において、溶媒にプロピレングリコール及びエタノールを含めることで、バインダーとして用いられる上記二糖類の溶媒に対する溶解度が低下する。したがって、本実施形態においてバインダーとしての上記二糖類とともに上記アルコール類(プロピレングリコール、エタノール)を含む溶媒をインクジェットインクに添加した場合には、インクジェットインクの固着効果が確実に発揮され、インクジェットインクに含まれる可食性色素(特に可食性染料)を被印刷物(例えば錠剤)の表面により高濃度で残存させることができる。これにより、インクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。
また、プロピレングリコールは、上述のように湿潤剤として機能し、インクジェットノズルでのインクの乾燥を防止して、インクジェットインクに十分な印刷安定性を付与することができる。また、エタノールは揮発性が高いことから、インクジェットインクの耐転写性(乾燥性)を向上することができる。
(レベリング剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述の可食性色素(特に可食性染料)や溶媒、或いは内添樹脂以外に、レベリング剤を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能なレベリング剤は、可食性を有し、且つ水溶性の界面活性剤であればよい。上記レベリング剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例:太陽化学社製ジステアリン酸デカグリセリンQ-182S、同社製モノラウリン酸デカグリセリンQ-12S)、ソルビタン脂肪酸エステル(例:日光ケミカルズ社NIKKOLSL-10)、ショ糖脂肪酸エステル(例:第一工業製薬社製 DKエステルF-110)、ポリソルベート(花王社製 エマゾールS-120シリーズ)等が挙げられる。
〔印刷方法〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷手段について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置としては、例えば、微小発熱素子を瞬間的に高温(200~300℃)にすることで発生する水蒸気圧力でインクジェットインクを吐出するサーマルインクジェット方式を採用した装置や、アクチュエータを静電気振動させることでインクジェットインクを吐出する静電タイプの装置、超音波のキャビテーション現象を利用する超音波方式を採用した装置等が挙げられる。また、本実施形態に係るインクジェットインクが荷電性能を備えていれば、連続噴射式(コンティニュアス方式)を採用した装置を利用することも可能である。
以下、本実施形態に係るインクジェットインクを吐出して、被印刷物(例えば錠剤)の表面に印字するために使用するインクジェット装置の一例について説明する。
本実施形態に係るインクジェットインクを吐出させる装置であるインクジェット装置は、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド(インク吐出ヘッド)と、そのプリントヘッドの圧力発生素子(圧電振動子)に与える駆動波形(駆動信号)を生成する駆動波形生成装置(駆動信号発生回路)と、を少なくとも備えている。
(プリントヘッドの機械的構成)
図1は、プリントヘッド10の機械的構造の一例を示している。基板ユニット21は、ノズル穴22Aが形成されたノズルプレート22とアイランド部23Aが形成された振動板23とによって流路形成板24を挟持することにより、構成されている。流路形成板24には、インク室25、インク供給口26及び圧力発生室27が形成されている。
基台28には収容室29が形成されており、収容室29内には圧電振動子17が取り付けられている。圧電振動子17は、その先端が振動板23のアイランド部23Aに当接するように、固定基板30を介して固定されている。ここで、圧電振動子17には、例えば縦振動横効果のPZTが用いられ、充電されると収縮し、放電すると伸長するようになっている。圧電振動子17への充放電はリード線31を介して行われる。
なお、圧電振動子17は、縦振動横効果のPZTに限らず、たわみ振動型のPZTでもよい。この場合は、充電すると伸長し、放電すると縮小する。また、入力される駆動波形に応じて伸縮する振動子としては、圧電振動子17に限らず、例えば、磁歪素子等の他の振動子を用いてもよい。
本実施形態では、圧電振動子17にマイナス電位の波形を印加すると、圧電振動子17が収縮して圧力発生室27が膨張し、圧力発生室27内の圧力が低下してインク室25から圧力発生室27内にインクが流入するようになっている。また、本実施形態では、圧電振動子17にプラス電位の波形を印加すると、圧電振動子17が伸長して圧力発生室27が縮小し、圧力発生室27内の圧力が上昇して圧力発生室27内のインクがノズル穴22Aを介して外部に吐出されるようになっている。
(駆動波形の詳細)
次に、本実施形態に係る駆動信号を構成する各波形(駆動波形)について、図2を参照しつつ説明する。
図2には、本実施形態に係る駆動信号を構成する各波形が示されている。この駆動信号は、例えば、公知技術である駆動信号発生回路を用いて発生させることができる。
本実施形態に係る駆動信号は、図2中に示すように、第1波形と第2波形とを少なくとも備えている。ここで、第1波形は、メニスカスを揺動させるためのものであって、インク滴を吐出するためのものではない。一方、第2波形は、インク滴を吐出するためのものである。
このように、本実施形態に係る駆動信号は、メニスカスを揺動させるための揺動波形である第1波形と、インクを吐出するための吐出波形である第2波形とを少なくとも備えている。
以下、第1波形及び第2波形の各波形要素について、詳しく説明する。
第1波形は、図2中に示すように、その電圧値が基準電位V0からスタートし(P11)、基準電位V0から所定の電圧勾配θ12で最低電位V1まで下降し(P12)、最低電位V1を所定時間だけ維持する(P13)。次に、第1波形の電圧値は、最低電位V1から所定の電圧勾配θ14をもって再び基準電位V0まで上昇する(P14)。
ここで、電圧勾配θ12よりも電圧勾配θ14の方が大きくなるように設定されている。
第2波形の電圧値は、第1波形と同様に基準電位V0からスタートし(P21)、所定の電圧勾配θ22で最低電位V2まで下降する(P22)。この第2波形の最低電位V2は、第1波形の最低電位V1よりも小さい(低い)。そして、第2波形の電圧値は、最低電位V2を所定時間だけ維持した後(P23)、所定の電圧勾配θ24をもって最高電位V3まで上昇する(P24)。
ここで、電圧勾配θ22よりも電圧勾配θ24の方が大きくなるように設定されている。
そして、第2波形の電圧値は、最高電位V3を所定時間だけ保持した後(P25)、再び基準電位V0まで下降する(P26)。
ここで、第2波形では、電圧勾配θ24の方が電圧勾配θ26よりも大きくなるように設定されている。
(駆動信号の変形例)
以下、本実施形態に係る駆動信号の変形例について説明する。
本実施形態では、第1波形と第2波形とを少なくとも備えた駆動信号について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態において、駆動信号は、第2波形を備えていればよく、例えば、第1波形を備えていなくてもよい。つまり、本実施形態では、インクを吐出する第2波形を備えていれば、インクを吐出しない揺動波形(第1波形)を備えていなくてもよい。
また、本実施形態では、電圧勾配θ12よりも電圧勾配θ14の方が大きくなるように設定した場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電圧勾配θ12よりも電圧勾配θ14の方が小さくなるように設定されていてもよいし、電圧勾配θ12と電圧勾配θ14とが同じになるように設定されていてもよい。
また、本実施形態では、電圧勾配θ22よりも電圧勾配θ24の方が大きくなるように設定した場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電圧勾配θ22よりも電圧勾配θ24の方が小さくなるように設定されていてもよいし、電圧勾配θ22と電圧勾配θ24とが同じになるように設定されていてもよい。
また、本実施形態では、電圧勾配θ24よりも電圧勾配θ26の方が大きくなるように設定した場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電圧勾配θ24よりも電圧勾配θ26の方が小さくなるように設定されていてもよいし、電圧勾配θ24と電圧勾配θ26とが同じになるように設定されていてもよい。
印刷周期は1kHz以上であればよく、7kHz以上であればより好ましい。なお、印刷周期の上限値は特に制限されるものではないが、汎用性の高いプリントヘッドであれば50kHz以下が通常である。
また、本実施形態では、第1波形の最低電位V1と基準電位V0との電位差は、第2波形の最低電圧V2と基準電位V0との電位差の10%以上60%以下の範囲内であることが好ましく、15%以上55%以下の範囲内であればより好ましく、20%以上50%以下の範囲内であればさらに好ましい。
また、本実施形態では、第2波形の最高電圧V3と基準電位V0との電位差は、第2波形の最低電圧V2と基準電位V0との電位差の5%以上50%以下の範囲内であることが好ましく、10%以上45%以下の範囲内であればより好ましく、15%以上40%以下の範囲内であればさらに好ましい。
(インク滴の吐出状態)
次に、駆動信号の各波形単独によるノズル穴22A付近のインク滴の吐出状態の概略について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
まず、図3は、第1波形によるインク滴の吐出状態を示す説明図である。
基準電位V0にあるP11の状態では、メニスカス40はノズル穴22Aの吐出面から若干引き込まれた位置にある。次に、基準電位V0から最低電位V1に下降するP12の状態では、圧電振動子17が収縮して圧力発生室27が膨張し、メニスカス40がノズル穴22A内に引き込まれる。このとき、圧力発生室27は、圧電振動子17の収縮速度に応じた速度で膨張する。P13の状態では、一旦引き込まれたメニスカス40が引き込まれる直前の位置に復帰しない程度の時間だけ、最低電位V1を保持する。最低電位V1から基準電位V0に上昇するP14の状態では、圧電振動子17が伸長して圧力発生室27が収縮し、一旦引き込まれたメニスカス40が引き込まれる直前の位置に復帰する。このとき、圧力発生室27は、圧電振動子17の伸長速度に応じた速度で収縮する。なお、メニスカス40が引き込まれる直前の位置に復帰しようとする際、慣性によりメニスカス40は引き込まれる直前の位置には留まらず、P21の状態では、メニスカス40はノズル穴22Aの吐出面から若干突出した位置にある。
こうして、第1波形によりメニスカス40が揺動する。
図4には、第1波形に連続して、第2波形を圧電振動子17に印加した場合のインクの変動状態が示されている。基準電位V0にあるP21の状態では、メニスカス40はノズル穴22Aの吐出面から若干突出した位置にある。次に、基準電位V0から最低電位V2まで急速に降圧させると、圧電振動子17が収縮して圧力発生室27が膨張するため、メニスカス40はノズル穴22A内に引き込まれる。P23の状態では、メニスカス40が元の位置に復帰しない程度の短時間だけ最低電位V2を保持する。
P24の状態では、メニスカス40をノズル穴22Aの奥に引き込んだ状態で、圧電振動子17に印加する電圧を最低電位V2から最高電位V3まで急速に昇圧させる。これにより、圧電振動子17が伸長して圧力発生室27が収縮し、メニスカス40がノズル穴22Aの吐出面から突出しはじめる。このとき、圧力発生室27は、圧電振動子17の伸長速度に応じた速度で収縮する。最高電位V2を維持するP25の状態でも、慣性によりメニスカス40の突出が続く。そして、P26の状態では、メニスカス40が突出した状態で圧電振動子17に印加する電圧を再び中間電位V0まで降圧する。これにより、圧電振動子17が収縮して圧力発生室27が膨張し、ノズル穴22Aから外部に突出したインクが引きちぎれて、インク滴が吐出される。なお、P26に示す状態より先では、インク滴が、例えば、被印刷物(例えば錠剤)の表面に向けて飛翔する。
こうして吐出されたインク滴の平均速度は、特に制限されるものではないが、例えば、ノズル穴22Aの吐出面から1mm離れた地点において3m/s以上であれば好ましい。また、インク滴の平均速度の上限値は、特に制限されるものではないが、例えば、ノズル穴22Aの吐出面から1mm離れた地点において10m/s以下であれば好ましい。
以上のように、本実施形態では、駆動信号発生回路で生成する、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動波形(駆動信号)が、インクジェットインクの吐出時に基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、基準電位V0へ戻る波形であればよく、その生成手段は問わない。
また、本実施形態では、駆動信号発生回路で生成する、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動波形(駆動信号)が、インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、第1波形は、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻り、第2波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形であって、電位V2は、電位V1より低い電位であればさらによく、その生成手段は問わない。
〔錠剤〕
本実施形態では、本実施形態に係るインクジェットインクを、前述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画する。なお、前述の印刷方法を用いて印字、印画した印刷画像の光学濃度(OD値)は、例えば0.3以上であれば好ましく、0.35以上であればより好ましく、0.4以上であればさらに好ましい。
以下、実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像(印刷部)を備える錠剤の構成について説明する。
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠等のほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠等を含むものである。
図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る医療用錠剤の第1の構成例を示す平面図と、この平面図をX1-X’1で切断した断面図である。図5(a)及び(b)に示す医療用錠剤は素錠であり、基剤1の表面に画像9が印刷されている。この画像9は、例えば文字、記号又はバーコードなど任意の画像であり、前述したインクジェットインクを使用して、前述したインクジェット印刷法により印刷されたものである。
図6(a)及び(b)は、本実施形態に係る医療用錠剤の第2の構成例を示す平面図と、この平面図をX2-X’2で切断した断面図である。図6(a)及び(b)に示す医療用錠剤はフィルムコーティング錠であり、基剤1を覆うフィルム5の表面に画像9が印刷されている。図6(a)及び(b)に示す画像9も、図5(a)及び(b)に示した画像9と同様、前述したインクジェットインクを使用して、前述したインクジェット印刷法により印刷されたものである。
医療用錠剤中に含有される活性成分は特に限定されない。例えば、種々の疾患の予防・治療に有効な物質(例えば、睡眠誘発作用、トランキライザー活性、抗菌活性、降圧作用、抗アンギナ活性、鎮痛作用、抗炎症活性、精神安定作用、糖尿病治療活性、利尿作用、抗コリン活性、抗胃酸過多作用、抗てんかん作用、ACE阻害活性、β-レセプターアンタゴニストまたはアゴニスト活性、麻酔作用、食欲抑制作用、抗不整脈作用、抗うつ作用、抗血液凝固活性、抗下痢症作用、抗ヒスタミン活性、抗マラリア作用、抗腫瘍活性、免疫抑制活性、抗パーキンソン病作用、抗精神病作用、抗血小板活性、抗高脂血症作用等を有する物質等)、洗浄作用を有する物質、香料、消臭作用を有する物質等を含むが、それらに限定されない。
本実施形態に係る錠剤は、必要に応じて、活性成分とともにその用途上許容される担体を配合することができる。例えば、医療用錠剤であれば、医薬上許容される担体を配合することができる。医薬上許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤等が適宜適量配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
本実施形態では、錠剤として医療用錠剤を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態に係るインクジェットインクの印刷対象は特に制限されず、例えば、飼料、肥料、洗浄剤、ラムネ菓子等の食品といった各種錠剤の表面に印刷してもよい。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷対象のサイズについても特に制限されず、種々のサイズの錠剤について適用可能である。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、前述の錠剤表面への直接印刷以外に、食品への直接印刷、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに用いてもよい。
また、本実施形態における医療用錠剤は特に制限はないが、特に、表面にフィルムコート層を被覆したフィルムコーティング錠において効果が高い傾向がある。これは印刷が行われた錠剤表面において、素錠に比べフィルムコーティング錠では空隙が少ないことによりインクが錠剤表面に残りやすいためである。このため、本実施形態に係るインクジェットインクであれば、従来技術に係るインクジェットインクと比較して、速乾性の効果が発揮されやすい。
また、本実施形態に係る印刷方法であれば、従来技術に係る印刷方法と比較して、速乾性の高いインクであっても初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる。
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るインクジェットインクで印刷画像を印刷する方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置を用いて、インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、インクジェット装置は、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、インクジェットインクの吐出時における駆動信号の波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる。
(2)また、本実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置を用いて、インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、インクジェット装置は、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、インクジェットインクの吐出時における駆動信号の波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減した錠剤を提供することができる。
(3)また、本実施形態に係るインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置であって、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、インクジェットインクの吐出時における駆動信号の波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができるインクジェット装置を提供することができる。
(4)また、本実施形態に係る駆動信号を生成する駆動信号発生回路は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるプリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路であって、インクジェットインクの吐出時における駆動信号の波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる駆動信号発生回路を提供することができる。
(5)また、本実施形態に係るインクジェットインクで印刷画像を印刷する方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置を用いて、インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、インクジェット装置は、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、駆動信号の波形は、インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、第1波形は、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻り、第2波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形であって、電位V2は、電位V1より低い電位である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる。
(6)また、本実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置を用いて、インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、インクジェット装置は、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、駆動信号の波形は、インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、第1波形は、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻り、第2波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、前記電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形であって、電位V2は、電位V1より低い電位である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減した錠剤を提供することができる。
(7)また、本実施形態に係るインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるインクジェット装置であって、インクジェットインクを吐出するプリントヘッド10と、プリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路と、を備えて、駆動信号の波形は、インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、第1波形は、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻り、第2波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形であって、電位V2は、電位V1より低い電位である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができるインクジェット装置を提供することができる。
(8)また、本実施形態に係る駆動信号を生成する駆動信号発生回路は、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させるプリントヘッド10の圧電振動子17に与える駆動信号を生成する駆動信号発生回路であって、駆動信号の波形は、インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、第1波形は、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻り、第2波形は、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形であって、電位V2は、電位V1より低い電位である。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができる駆動信号発生回路を提供することができる。
(9)また、本実施形態に係るアルコールは、エタノール、NPA、及びIPAの少なくとも1種を含んでもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下をさらに低減することができる。
(10)また、本実施形態に係るインクジェットインクの25℃での粘度は、5.0mPa・s以下であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下をさらに低減することができる。
(11)また、本実施形態に係るインクジェットインクの25℃での表面張力は、23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下をさらに低減することができる。
(12)また、本実施形態に係る印刷画像の光学濃度(OD値)は、0.3以上であってもよい。
このような構成であれば、十分な視認性を備えた印刷画像を得ることができる。
(13)また、本実施形態に係るインクジェットインクを吐出するときの吐出周波数は、1kHZ以上であってもよい。
このような構成であれば、印刷効率を向上させることができる。
(14)また、本実施形態に係るインクジェットインクを吐出したときの、インクジェットインクの吐出用ノズルの先端部から吐出距離1mmの地点における平均液滴速度は、3m/s以上であってもよい。
このような構成であれば、優れた視認性を備えた印刷画像を得ることができる。
(15)また、本実施形態に係る第1波形のピーク電位である電位V1と基準電位V0との電位差は、第2波形のピーク電位である電位V2と基準電位V0との電位差の10~60%の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下をさらに低減することができる。
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
(インクジェットインクの製造)
以下、インクジェットインクの調製手順を説明する。
インクジェットインクは、可食性色素、有機溶媒(乾燥促進剤)、水、湿潤剤、その他必要に応じた添加剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、湿潤剤と可食性色素とを添加した後にその他の添加剤を添加した。最後に、この混合液をペイントシェーカー等の分散機に入れ、規定時間微細化して分散させた。こうして、本実施例に係るインクジェットインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
可食性色素には、可食性染料として、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号、食用青色2号を用い、可食性顔料として、カーボンを用いた。
有機溶媒には、乾燥溶媒(乾燥促進剤)として、エタノール、1-プロパノール(NPA)、2-プロパノール(IPA)を用いた。
インクに構成する水には、精製水(イオン交換水)を用いた。
湿潤剤には、プロピレングリコール、グリセリンを用いた。
添加剤(バインダー)には、還元イソマルツロース、乳糖、ショ糖脂肪酸エステル、トレハロース、セロビオースを用いた。
上記成分を37種類の異なる処方のインクとして調製した。その組成を表1~4に示す。
なお、前述の各インクを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクを得た。
Figure 2024099162000002
Figure 2024099162000003
Figure 2024099162000004
Figure 2024099162000005
前述の調製方法により、37種類のインクジェットインク(サンプル1~37)を作製した。表1~4に、37種類のインクジェットインク(サンプル1~37)の各成分を示す。
なお、サンプル1~35が実施例1~35に該当し、サンプル36~37が比較例1~2に該当する。
(圧電振動子に印加する駆動波形の種類)
以下、圧電振動子に印加する駆動波形(印刷方法)の種類を説明する。
・波形A:比較例(従来技術に係る波形:基本波形)
波形Aは、インクジェットインクの吐出時における駆動波形であって、図7(a)に示すように、基準電位V0から電位V2へ下がった後、再び基準電位V0へ戻る波形である。
・波形B:実施例(本実施例に係る波形)
波形Bは、インクジェットインクの吐出時における駆動波形であって、図7(b)に示すように、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る波形である。
・波形C:実施例(本実施例に係る波形)
波形Cは、インクジェットインクの吐出時における駆動波形であって、図7(c)に示すように、基準電位V0から電位V1へ下がった後、再び基準電位V0へ戻る第1波形と、基準電位V0から電位V2へ下がった後、基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び基準電位V0へ戻る第2波形である。ここで、電位V2は、電位V1より低い電位である。
(評価項目及び評価基準)
本実施例で調製した各インクジェットインクについて、図7で示した各駆動波形(印刷方法)で印刷した場合における初期吐出性及び間欠再開性の各評価を行った。表1~4に各評価の結果を示す。なお、本実施例における評価方法は、以下の通りである。
(1)初期吐出性の評価
インクジェットヘッドには、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用いた。上記インクジェットヘッドを用いて、ノズルメンテナンス実施直後に、各駆動波形にてテストパターンを印刷した。そして、テストパターンの印刷状況から、不吐出領域発生に伴う印字画像の可読性を確認した。評価基準は以下の通りである。
◎:不吐出なし
○:可読性あり
×:可読性なし
なお、初期吐出性の評価が「◎」、「○」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
波形Aで印刷した場合には、サンプル1、6、8、10、12、17の初期吐出性は「〇」であり、サンプル2~5、7、9、11、13~16、18~37の初期吐出性は「×」であった。
また、波形Bで印刷した場合には、サンプル1~35の初期吐出性は「○」であり、サンプル36、37の初期吐出性は「×」であった。
また、波形Cで印刷した場合には、サンプル1~4、6~10、12~15、17、19~24、26~29、32、34の初期吐出性は「◎」であり、サンプル5、11、16、18、25、30、31、33、35の初期吐出性は「○」であり、サンプル36、37の初期吐出性は「×」であった。
(2)間欠再開性の評価
インクジェットヘッドには、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用いた。30分間フラッシングなく上記インクを上記インクジェットヘッド内にて放置した後、上記インクジェットヘッドを用いて、各駆動波形にてテストパターンを印刷した。そして、テストパターンの印刷状況から、不吐出領域発生に伴う印字画像の可読性を確認した。評価基準は以下の通りである。
◎:不吐出なし
○:可読性あり
×:可読性なし
なお、間欠再開性の評価が「◎」、「○」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
波形Aで印刷した場合には、サンプル1~37の間欠再開性は「×」であった。
また、波形Bで印刷した場合には、サンプル1~35の間欠再開性は「○」であり、サンプル36、37の間欠再開性は「×」であった。
また、波形Cで印刷した場合には、サンプル1~3、6~8、10、12、14、17、23、26~28、32、34の間欠再開性は「◎」であり、サンプル4、5、9、11、13、15、16、18~22、24、25、29~31、33、35の間欠再開性は「○」であり、サンプル36、37の間欠再開性は「×」であった。
上記結果から、アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含むインクジェットインクを吐出させる装置の圧電振動子に印加する駆動波形を、基準電位V0から電位V2へ下げた後、基準電位V0より高い電位V3へ上げ、再び基準電位V0へ戻す波形にすれば、インクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、初期吐出性や間欠再開性の低下を低減することができることがわかる。
1 基剤
5 フィルム
9 画像
10 プリントヘッド
17 圧電振動子
21 基板ユニット
22 ノズルプレート
22A ノズル穴
23 振動板
23A アイランド部
24 流路形成板
25 インク室
26 インク供給口
27 圧力発生室
28 基台
29 収容室
30 固定基板
31 リード線
40 メニスカス

Claims (36)

  1. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記インクジェットインクの吐出時における前記駆動波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であることを特徴とする可食性インクジェットインクの印刷方法。
  2. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記インクジェットインクの吐出時における前記駆動波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であることを特徴とする錠剤の製造方法。
  3. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記インクジェットインクの吐出時における前記駆動波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であることを特徴とする可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  4. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する装置であって、
    前記インクジェットインクの吐出時における前記駆動波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であることを特徴とする駆動波形生成装置。
  5. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷画像を印刷する方法であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、
    前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、
    前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、
    前記電位V2は、前記電位V1より低い電位であることを特徴とする可食性インクジェットインクの印刷方法。
  6. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置を用いて、前記可食性インクジェットインクで印刷した印刷画像を備えた錠剤を製造する方法であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出させる装置は、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、
    前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、
    前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、
    前記電位V2は、前記電位V1より低い電位であることを特徴とする錠剤の製造方法。
  7. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる装置であって、
    前記可食性インクジェットインクを吐出するインク吐出ヘッドと、
    前記インク吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する駆動波形生成装置と、を備えて、
    前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、
    前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、
    前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、
    前記電位V2は、前記電位V1より低い電位であることを特徴とする可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  8. アルコールを30%以上60%以下の範囲内で含む可食性インクジェットインクを吐出させる液体吐出ヘッドの圧力発生素子に与える駆動波形を生成する装置であって、
    前記駆動波形は、前記インクジェットインクの非吐出時に駆動する第1波形と、前記インクジェットインクの吐出時に駆動する第2波形とを時系列で連続して含み、
    前記第1波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V1へ下がった後、再び前記基準電位V0へ戻り、
    前記第2波形は、基準電位V0から前記基準電位V0より低い電位V2へ下がった後、前記基準電位V0より高い電位V3へ上がり、再び前記基準電位V0へ戻る波形であって、
    前記電位V2は、前記電位V1より低い電位であることを特徴とする駆動波形生成装置。
  9. 前記アルコールは、エタノール、NPA、及びIPAの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  10. 前記アルコールは、エタノール、NPA、及びIPAの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  11. 前記アルコールは、エタノール、NPA、及びIPAの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  12. 前記アルコールは、エタノール、NPA、及びIPAの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  13. 前記インクの25℃での粘度は、5.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  14. 前記インクの25℃での粘度は、5.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  15. 前記インクの25℃での粘度は、5.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  16. 前記インクの25℃での粘度は、5.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  17. 前記インクの25℃での表面張力は、23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  18. 前記インクの25℃での表面張力は、23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  19. 前記インクの25℃での表面張力は、23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  20. 前記インクの25℃での表面張力は、23mN/m以上34mN/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  21. 前記印刷画像の光学濃度(OD値)は、0.3以上であることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  22. 前記印刷画像の光学濃度(OD値)は、0.3以上であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  23. 前記印刷画像の光学濃度(OD値)は、0.3以上であることを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  24. 前記印刷画像の光学濃度(OD値)は、0.3以上であることを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  25. 前記インクを吐出するときの吐出周波数は、1kHZ以上であることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  26. 前記インクを吐出するときの吐出周波数は、1kHZ以上であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  27. 前記インクを吐出するときの吐出周波数は、1kHZ以上であることを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  28. 前記インクを吐出するときの吐出周波数は、1kHZ以上であることを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  29. 前記インクを吐出したときの、前記インクの吐出用ノズルの先端部から吐出距離1mmの地点における平均液滴速度は、3m/s以上であることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  30. 前記インクを吐出したときの、前記インクの吐出用ノズルの先端部から吐出距離1mmの地点における平均液滴速度は、3m/s以上であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  31. 前記インクを吐出したときの、前記インクの吐出用ノズルの先端部から吐出距離1mmの地点における平均液滴速度は、3m/s以上であることを特徴とする請求項3または請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  32. 前記インクを吐出したときの、前記インクの吐出用ノズルの先端部から吐出距離1mmの地点における平均液滴速度は、3m/s以上であることを特徴とする請求項4または請求項8に記載の駆動波形生成装置。
  33. 前記第1波形のピーク電位である前記電位V1と前記基準電位V0との電位差は、前記第2波形のピーク電位である前記電位V2と前記基準電位V0との電位差の10~60%の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の可食性インクジェットインクの印刷方法。
  34. 前記第1波形のピーク電位である前記電位V1と前記基準電位V0との電位差は、前記第2波形のピーク電位である前記電位V2と前記基準電位V0との電位差の10~60%の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の錠剤の製造方法。
  35. 前記第1波形のピーク電位である前記電位V1と前記基準電位V0との電位差は、前記第2波形のピーク電位である前記電位V2と前記基準電位V0との電位差の10~60%の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の可食性インクジェットインクを吐出させる吐出装置。
  36. 前記第1波形のピーク電位である前記電位V1と前記基準電位V0との電位差は、前記第2波形のピーク電位である前記電位V2と前記基準電位V0との電位差の10~60%の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の駆動波形生成装置。
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