JP2024093596A - 結晶性ベーマイトスラリーおよびその製造方法 - Google Patents

結晶性ベーマイトスラリーおよびその製造方法 Download PDF

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武聡 長谷川
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【課題】密に充填可能な結晶性ベーマイト粉末を調製することができ、かつ高濃度であっても粘度が低く取り扱い易い結晶性ベーマイトスラリーを提供すること。
【解決手段】結晶性ベーマイトのスラリーであって、レーザー回折・散乱法により測定される前記結晶性ベーマイトの粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域および粒子径が1.0μm以上の領域のそれぞれに極大値が観測される結晶性ベーマイトスラリー。
【選択図】なし

Description

本発明は、結晶性ベーマイトスラリーおよびその製造方法に関する。
結晶性ベーマイトは、例えば、難燃剤、吸着剤、研磨剤、触媒担体として、あるいはγアルミナおよびαアルミナ用の原料として用いられている。
特許文献1には、d50が7μm以下の結晶性ベーマイトの製造方法およびこの方法により製造される結晶性ベーマイトが開示され、この結晶性ベーマイトが難燃性プラスチック混合物の形成に有効であることなどが記載されている。
特許文献2には、低アスペクト比ないし球状のベーマイト生成物粒子およびその製造方法が開示され、このベーマイト生成物粒子が難燃性能等に優れていることが記載されている。
特表2018-503583号公報 特表2011-515307号公報
しかしながら、従来、結晶性ベーマイト粉末の充填性の向上および高濃度のスラリーの粘度低減の観点から、十分な研究はなされていなかった。
そこで本発明は、密に充填可能な結晶性ベーマイト粉末を調製することができ、かつ高濃度であっても粘度が低く取り扱い易い結晶性ベーマイトスラリー、およびその製造方法等を提供することを目的としている。
本発明は、たとえば以下の[1]~[7]に関する。
[1]
結晶性ベーマイトのスラリーであって、
レーザー回折・散乱法により測定される前記結晶性ベーマイトの粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域および粒子径が1.0μm以上の領域のそれぞれに極大値が観測される結晶性ベーマイトスラリー。
[2]
前記結晶性ベーマイトは、
X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径が10~30μmであり、
窒素吸着法による比表面積が70~140m2/gであり、
SEM(走査型電子顕微鏡)画像から決定されるアスペクト比が5以上である、
前記[1]の結晶性ベーマイトスラリー。
[3]
水中に前記結晶性ベーマイトが分散している前記[1]または[2]の結晶性ベーマイトスラリー。
[4]
前記粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域に含まれる粒子の体積基準の割合が5~65%であり、粒子径が1.0μm以上の領域に含まれる粒子の体積基準の割合が35~95%であり、体積基準のd50(メジアン径)が1~15μmである、前記[1]~[3]のいずれかの結晶性ベーマイトスラリー。
[5]
前記結晶性ベーマイトのアルミナ(Al23)換算の濃度が5~30質量%である前記[1]~[4]のいずれかの結晶性ベーマイトスラリー。
[6]
前記結晶性ベーマイトの濃度を15質量%に調整した際の粘度(25℃)が500~6000cPである前記[1]~[5]のいずれかの結晶性ベーマイトスラリー。
[7]
前記[1]の結晶性ベーマイトスラリーの製造方法であって、
レーザー回折・散乱法により測定される体積基準のd50(メジアン径)が1~10μmのギブサイトと、X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径が2~6nmの擬ベーマイトと、水とを混合して混合液(1)を調製する工程であって、前記混合液(1)のpHが7.0以下とならないように実施される第一の工程と、
前記混合液(1)に無機塩基性化合物を加えて、pHが9.0~12.5の混合液(2)を調製する第二の工程と、
前記混合液(2)を水熱処理する第三の工程と、
を含む結晶性ベーマイトのスラリーの製造方法。
本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーは、密に充填可能な結晶性ベーマイト粉末を調製することができ、かつ高濃度であっても粘度が低く取り扱い易い。また、本発明の製造方法によれば、このような結晶性ベーマイトスラリーを製造することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[結晶性ベーマイトスラリー]
本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーは、
結晶性ベーマイトのスラリーであって、
レーザー回折・散乱法により測定される前記結晶性ベーマイトの粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域および粒子径が1.0μm以上の領域のそれぞれに極大値が観測されることを特徴としている。
本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーに含まれる結晶性ベーマイトは、このような粒度分布を有することから、すなわち粒子径の小さい粒子と粒子径の大きい粒子とを含むことから、乾燥時にカードハウス構造を形成しにくく、密に充填することができる、と考えられる。また、本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーは、粒子径の大きい粒子を含むことから高濃度であっても粘度が低く取り扱いが容易である、と考えられる。
《粒度分布の測定方法》
前記粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:5.0L/分、超音波照射:1分間、反復回数:15回、屈折率:1.66の条件またはこれと同等の条件で測定される。
粒子径が1.0μm未満の領域の極大値は、好ましくは粒子径が0.1μm以上1.0μm未満、より好ましくは0.2~0.9μmの領域に存在する。
粒子径が1.0μm以上の領域の極大値は、好ましくは粒子径が1.0~20μm、より好ましくは2.0~15μmの領域に存在する。
各極大値の位置は、例えば後述する製造方法において、水熱処理時のアルミニウムと無機塩基性化合物との比率を変化させること、ギブサイト原料とベーマイト原料との混合比率を変化させること、ギブサイト原料のd50の値を変化させること、または擬ベーマイト原料の結晶子径を変化させることにより調整できる。
また、前記粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域に含まれる粒子の割合は、体積基準で、好ましくは5~65%、より好ましくは10~60%であり、粒子径が1.0μm以上の領域に含まれる粒子の割合は、体積基準で、好ましくは35~95%、より好ましくは40~90%である。
前記粒度分布において、体積基準のd50(メジアン径)は、好ましくは1~15μm、より好ましくは2~13μmである。
各割合およびd50は、例えば後述する製造方法において水熱処理時のアルミニウムと無機塩基性化合物との比率を変化させること、ギブサイト原料とベーマイト原料との混合比率を変化させること、ギブサイト原料のd50の値を変化させること、または擬ベーマイト原料の結晶子径を変化させることにより調整できる。
(結晶子径)
前記結晶性ベーマイトの、X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径は、好ましくは10~30μm、より好ましくは15~25μmである。
結晶子径が上記範囲にある結晶性ベーマイトは、例えば後述する製造方法において、水熱処理に要する時間が短く済むため、経済面で優れる。
結晶子径は、以下の方法またはこれと同等の方法により求められる。
《結晶子径の算出方法》
まず、本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーから、例えばスラリーを乾燥させることにより、結晶性ベーマイトを採取する。
次に、採取された結晶性ベーマイトを、乳鉢を用いて粉砕し、X線回折装置(例えば、(株)リガク製、RINT-1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける、ベーマイトの(020)面のピークの半値全幅を測定し、下記Scherrerの式により算出される値を、結晶子径として採用する。
D=Kλ/βcosθ
D:結晶子径(nm)
K:Scherrer定数(本発明ではK=0.94とする)
λ:X線波長(0.15418nm、CuKα)
β:半値全幅(rad)
θ:反射角
結晶子径は、例えば後述する製造方法において水熱処理の時間を変化させること、水熱処理時のアルミニウムと無機塩基性化合物との比率を変化させること、またはギブサイト原料とベーマイト原料との混合比率を変化させることにより調整できる。
(比表面積)
前記結晶性ベーマイトの窒素吸着法(下記の方法またはこれと同等の方法)により測定される比表面積は、好ましくは70~140m2/g、より好ましくは80~130m2/gである。比表面積が上記の範囲にあると、スラリー中のベーマイトの結晶性を保持しやすい。
《窒素吸着法による比表面積の測定方法》
まず、本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーから、例えばスラリーを乾燥させることにより、結晶性ベーマイトを採取する。
次に、採取された測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、300℃で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、1gの測定試料を採取し、全自動表面積測定装置を用いて、BET法により試料の比表面積(m2/g)を測定する。
比表面積は、例えば後述する製造方法において水熱処理の時間を変化させること、水熱処理時のアルミニウムと無機塩基性化合物との比率を変化させること、またはギブサイト原料とベーマイト原料との混合比率を変化させることにより調整できる。
(結晶形状)
前記結晶性ベーマイトの、下記条件下での走査電子顕微鏡(SEM)により求められるアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは6.5以上であり、その上限値はたとえば20であってもよい。
《SEM観察によるアスペクト比の算出方法》
まず、本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーから、例えばスラリーを130℃で12時間乾燥させた後に乳鉢ですり潰すことにより、結晶性ベーマイトの粉末を採取する。走査型電子顕微鏡により、前記結晶性ベーマイト粉末を観察し結晶のSEM像を得る。画像から、板状粒子の平板面が観察できる20粒子を無作為に選び、最長径を測定する。また画像から、板状粒子の厚さが観察できる20粒子を無作為に選び、最短径(粒子厚さ)を測定する。20粒子の単純平均最長径を20粒子の単純平均最短径で除した値をアスペクト比とする。粒子の最長径および最短径の測定には画像解析ソフトを使用してもよい。
アスペクト比は、例えば後述する製造方法において水熱処理の時間を変化させること、水熱処理時のアルミニウムと無機塩基性化合物との比率を変化させること、またはギブサイト原料とベーマイト原料との混合比率を変化させることにより調整できる。
また、前記結晶性ベーマイトの形状は、好ましくは板状である。
<結晶性ベーマイトスラリー>
前記結晶性ベーマイトスラリーの分散媒としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノールなどが挙げられ、これらの中でも水が好ましい。
前記結晶性ベーマイトスラリーにおける結晶性ベーマイトスラリーのアルミナ(Al23)換算の濃度は、たとえば5.0~30質量%、好ましくは8.0~25質量%である。
上述のように、本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーは、高濃度であっても粘度が低く、たとえば前記結晶性ベーマイトの濃度を15質量%に調整した際の粘度(25℃)が好ましくは500~6,000cPである。前記濃度の調整は、結晶性ベーマイトスラリーに含まれる分散媒、典型的には水の量を増減させることにより行われる。
前記結晶性ベーマイトスラリーは、その用途などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤、例えば無機酸(硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニウムなど)、有機酸(ギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸など)、増粘剤(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アラビアゴム、ケイソウ土、ベントナイト、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸エステル、ローカストビーンガムなど)、を含んでいてもよく、添加剤を含んでいなくてもよい。
[結晶性ベーマイトスラリーの製造方法]
本発明に係る結晶性ベーマイトのスラリーの製造方法は、
レーザー回折・散乱法により測定される体積基準のd50(メジアン径)が1~10μmであるギブサイト(本発明において「ギブサイト原料」ともいう。)と、X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径が2~6nmである擬ベーマイト(本発明において「ベーマイト原料」ともいう。)と、水とを混合して混合液(1)を調製する工程であって、前記混合液(1)のpHが7.0以下とならないように実施される第一工程と、
前記混合液(1)に無機塩基性化合物を加えて、pHが9.0~12.5である混合液(2)を調製する第二工程と、
前記混合液(2)を水熱処理する第三工程と、
を含むことを特徴としている。
この製造方法により、上述した本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーを製造することができる。
(第一工程)
第一工程は、ギブサイトと、擬ベーマイトと、水とを混合して混合液(1)を調製する工程である。
前記ギブサイトの体積基準のd50(メジアン径)は1~10μmであり、好ましくは2~9μmである。
前記ギブサイトの例としては、市販品であれば、「C-303」(住友化学(株)製)などが挙げられる。
前記擬ベーマイトの結晶子径は、通常2~6nmである。擬ベーマイトの例としては、市販品であれば、「Catapal-A」(Sasol製)などが挙げられる。
前記擬ベーマイトは、公知の方法でスラリーの形態に調製し、擬ベーマイトスラリーとして、ギブサイトと水との混合に供してもよい。このような擬ベーマイトスラリーの製造方法としては、例えば60℃の温水を攪拌しながらアルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液を添加して擬ベーマイトを析出させる方法が挙げられる。
前記擬ベーマイトは、好ましくは解膠させることなく、ギブサイトおよび水と混合される。解膠を行わないことで、工程を短縮できるため、工業的な経済性及び生産性に優れる。
前記水としてはイオン交換水が好ましい。この水は、擬ベーマイトが水を含むスラリーとして供される場合には、混合しなくてもよい。
混合液(1)は、通常、スラリーである。
ギブサイトと、擬ベーマイトと、水とを混合して混合液(1)を調製する際の温度は、通常5~90℃、好ましくは15~80℃である。
これらの成分は、混合液(1)のpHが7.0以下にならないように混合され、次の工程に使用する。こうすることで、解膠する必要がなく工程を短縮できるため、工業的な経済性及び生産性に優れる。
ギブサイトと、擬ベーマイトとの混合比、すなわちギブサイトの質量:擬ベーマイトの質量は、Al23換算で、通常10~90:90~10、好ましくは25~75:75~25である(ただし、両者の合計を100とする。)。
(第二工程)
第二工程は、前記混合液(1)に無機塩基性化合物を加えて、pHが9.0~12.5である混合液(2)を調製する工程である。
前記無機塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
混合液(2)は、通常、スラリーである。
前記無機塩基性化合物の種類および量は、得られる混合液(2)のpHが通常9.0~12.5、好ましくは10.5~12.4となるように調整される。pHが前記下限値よりも小さいと、水熱処理中にギブサイトや擬ベーマイトの溶解再析出が進行せず、所望のベーマイトだけでなくギブサイトをも含むスラリーが得られるため好ましくない。
(第三工程)
第三工程は、第二の工程で得られた前記混合液(2)を水熱処理して本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーを得る工程である。
加熱温度は、通常150~200℃、好ましくは160~190℃である。
加熱時間は、通常1~24時間、好ましくは1.5~18時間である。
加熱は、自然発生圧力下で行ってもよい。
水熱処理には、通常、オートクレーブが使用される。前記オートクレーブは、好ましくは攪拌翼を備えている。攪拌翼を用いて前記混合物(2)を攪拌しながら加熱を行うと、水熱処理をより均一に行うことができる。
(第四工程)
本発明に係る結晶性ベーマイトのスラリーの製造方法は、任意に、第三工程で得られたスラリーを洗浄する第四工程を有していてもよい。
第四工程では、第三工程で得られたスラリーを脱水し、得られた固形分を水(好ましくは、イオン交換水)で洗浄し、得られた洗浄ケーキを液媒体(好ましくは、イオン交換水等の水)中に懸濁させて、洗浄された結晶性ベーマイトのスラリーを調製する。
洗浄に使用する水の温度は、好ましくは40~90℃に設定される。
第四工程を実施すると、不純物を除去することができ、また洗浄ケーキを水等に再び懸濁させることで、スラリーを所望の濃度に調整することができる。
[結晶性ベーマイト粉末およびその製造方法]
本発明に係る結晶性ベーマイト粉末は、レーザー回折・散乱法により測定される前記結晶性ベーマイトの粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域および粒子径が1.0μm以上の領域のそれぞれに極大値を有することを特徴としている。
また、本発明に係る結晶性ベーマイト粉末の諸特性、すなわち粒度分布における特徴、結晶子径、比表面積、結晶形状等は、上述した結晶性ベーマイトスラリーの段落で説明したとおりである。
また、本発明に係る結晶性ベーマイト粉末の製造方法は、上述した本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーを乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴としている。
前記乾燥工程は、例えば前記結晶性ベーマイトスラリーを90~200℃に加熱して実施してもよい。
前記乾燥工程は、好ましくは前記結晶性ベーマイトスラリーを、酸性化合物の添加によりそのpHを5以下に調整してから、噴霧乾燥する工程である。前記乾燥工程をこのように実施すると、得られた結晶性ベーマイト粉末を水中に再懸濁させた際の分散性が良好である。前記酸性化合物の例としては、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸等が挙げられる。
[用途]
本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーによれば、密に充填可能な結晶性ベーマイト粉末を調製することができる。
このため、前記結晶性ベーマイトスラリーを乾燥させてケーキ状の乾燥物固体を調製する際に、結晶性ベーマイトの緻密な乾燥物を調製することができる。
また、前記結晶性ベーマイトスラリーは、たとえば重質油の流動接触分解触媒の原料として用いることができる。この流動接触分解触媒は、前記結晶性ベーマイトスラリーに含まれる前記結晶性ベーマイトを、Al23の質量に換算して通常1~20質量%含んでいる。前記結晶性ベーマイトスラリーを触媒、例えば流動接触分解触媒の原料として用いると、見かけ比重が低下し難い触媒、例えば流動接触分解触媒を製造することができる。
また、前記重質油の流動接触分解触媒の製造方法の例としては、重質油の流動接触分解触媒の原料から重質油の流動接触分解触媒を製造する工程を含み、前記原料が、前記流動接触分解触媒の、Al23の質量に換算して通常1~20質量%に相当する量の前記結晶性ベーマイトを含む製造方法が挙げられる。
本発明に係る結晶性ベーマイトスラリーから得られる結晶性ベーマイトは、その他にも、例えば、難燃剤、吸着剤、研磨剤、触媒材料、塗料のフィラー、フィルター、セラミックス原料、などとして利用することができる。
以下に実施例を示し具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
実施例等では、以下の方法で各種測定を行った。
<スラリーの測定>
(粒度分布)
試料の粒度分布の測定を、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)にて行った。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:5.0L/分、超音波照射:1分間、反復回数:15回、屈折率:1.66として、測定を実施した。
(粘度)
実施例および比較例の工程Cを実施する過程で得られる洗浄ケーキを、純水で希釈して攪拌してAl23濃度が15質量%であるスラリーを得た。B型粘度計(東機産業(株)製 TVB-10)により、TH6ロータ、回転速度60rpm、測定時間60秒、試料温度60℃で、試料の粘度を測定した。
<粉末の測定>
(測定試料の調製)
実施例および比較例の工程Cを実施する過程で得られる洗浄ケーキを、130℃で12時間かけて乾燥させ、次いで乳鉢で粉砕し、測定試料を得た。
(結晶子径、結晶形態および結晶形状)
この測定試料について、X線回折装置(理学電機製、RINT-1400)によりX線回折分析を行い、結晶構造を同定した。
さらに、ベーマイトの(020)面のピークから、上述の方法により結晶子径を算出した。
(結晶形状)
上述した方法で走査電子顕微鏡(SEM)により測定試料を観察し、結晶の形状を確認し、アスペクト比を求めた。なお、走査型電子顕微鏡として(株)日立ハイテクノロジーズの走査電子顕微鏡S-5500を使用し、画像解析ソフトとして三谷商事(株)製画像解析ソフトウェアWinroof2018 STANDARDを使用した。
(比表面積)
測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、600℃で2時間焼成後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、1gの測定試料を採取し、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、粒子の比表面積(m2/g)をBET法により測定した。
(CBD(Compact Bulk Density))
約100~150gの試料をステンレス製バットに採取し、130℃で12時間かけて乾燥させた。乾燥後の試料から100gを量り取り、容量250mlのメスシリンダーに移し、タイラー型篩振盪器にメスシリンダーを取り付けた。タイラー型篩振盪器で15分かけて試料をタッピング充填し、メスシリンダーを取り外し、試料表面を平らにして充填容積を読み取り、CBDを算出した。
[実施例1]
(工程A ベーマイト原料の調製)
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al23濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.09kgを入れ、イオン交換水で希釈して40.00kgとした。次いで、この溶液に濃度26質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液230.8gを加え、攪拌しながら60℃に加温し、濃度5質量%のアルミン酸ナトリウム・グルコン酸ナトリウム混合溶液を得た。
前記混合溶液とは別に、濃度がAl23換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液14.29kgをイオン交換水25.71kgで希釈し、次いで60℃に加温して、硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
次に、前記濃度5質量%のアルミン酸ナトリウム・グルコン酸ナトリウム混合溶液を攪拌しながら、これに前記硫酸アルミニウム水溶液を10分間かけて添加して、Al23として濃度が3.8質量%のアルミナ水和物スラリーを調製した。このとき、スラリーのpHは7.2であった。得られたアルミナ水和物スラリーを、攪拌しながら60℃で60分間熟成した。ついで、熟成したアルミナ水和物スラリーを平板ろ過装置で減圧脱水した後、60℃のイオン交換水100Lで洗浄した。洗浄して得られたケーキに、Al23濃度換算で15質量%となるようイオン交換水を加えて懸濁し、スラリー(1)を得た。
このスラリー(1)から分析用試料を少量抜き取り分析したところ、スラリー中の粒子は擬ベーマイト粒子であり、その結晶子径は3.2nmであった。
(工程B 水熱処理による結晶性ベーマイトの調製)
工程Aで得られた擬ベーマイトスラリー(1)2.0kgに、ギブサイトパウダー(住友化学(株)製、C-303、Al23換算濃度=66.6質量%、体積基準のd50(メジアン径)=5.6μm)450gと、イオン交換水1.5kgとを加え、Al23濃度換算で15質量%のスラリーを調製した。攪拌しながら、48%水酸化ナトリウム溶液を49g加えて、pHが11.7の均一なスラリー(2)を得た。容量5Lのオートクレーブ反応器に前記スラリー(2)を入れ、攪拌下170℃へ加熱し、自然発生圧力で10時間保持し、スラリー(3)を得た。
(工程C 結晶性ベーマイトの洗浄)
工程Bで得られたスラリー(3)4.0kgを、平板ろ過装置で減圧脱水した後、60℃のイオン交換水20Lを通水し洗浄した。洗浄ケーキをイオン交換水で、Al23濃度換算で1質量%になるよう希釈してよく懸濁して、水酸化アルミニウムスラリーを得た。水酸化アルミニウムスラリー等について上述の方法で測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例2]
工程Bにおいて、工程Aで得られたスラリー(1)の量を1.2kgに、ギブサイトパウダーの量を631gに、イオン交換水の量を2120gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例3]
工程Bにおいて、工程Aで得られたスラリー(1)の量を2.8kgに、ギブサイトパウダーの量を270gに、イオン交換水の量を881gに、それぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[実施例4]
工程Bにおいて、工程Aで得られたスラリー(1)を擬ベーマイトパウダー(Sasol社製、商品名:Catapal-A、Al23換算濃度=78質量%、結晶子径=2.8nm)385gに、イオン交換水の量を3.1kgにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[比較例1]
工程Bにおいて、工程Aで得られたスラリー(1)を使用せず、ギブサイトパウダーの量を900gに、イオン交換水の量を3.05kgそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[比較例2]
工程Bにおいて、工程Aで得られたスラリー(1)の量を4.0kgに変更し、ギブサイトパウダーを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
[比較例3]
工程Bにおいて、48%水酸化ナトリウム溶液の量を1gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、水酸化アルミニウムスラリーを製造し、測定した。
製造条件および測定結果を表1に示す。
Figure 2024093596000001

Claims (7)

  1. 結晶性ベーマイトのスラリーであって、
    レーザー回折・散乱法により測定される前記結晶性ベーマイトの粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域および粒子径が1.0μm以上の領域のそれぞれに極大値が観測される結晶性ベーマイトスラリー。
  2. 前記結晶性ベーマイトは、
    X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径が10~30μmであり、
    窒素吸着法による比表面積が70~140m2/gであり、
    SEM画像から決定されるアスペクト比が5以上である、
    請求項1に記載の結晶性ベーマイトスラリー。
  3. 水中に前記結晶性ベーマイトが分散している請求項1又は2に記載の結晶性ベーマイトスラリー。
  4. 前記粒度分布において、粒子径が1.0μm未満の領域に含まれる粒子の体積基準の割合が5~65%であり、粒子径が1.0μm以上の領域に含まれる粒子の体積基準の割合が35~95%であり、体積基準のd50(メジアン径)が1~15μmである、請求項1又は2に記載の結晶性ベーマイトスラリー。
  5. 前記結晶性ベーマイトのアルミナ換算の濃度が5~30質量%である請求項1又は2に記載の結晶性ベーマイトスラリー。
  6. 前記結晶性ベーマイトの濃度を15質量%に調整した際の粘度(25℃)が500~6000cPである請求項1又は2に記載の結晶性ベーマイトスラリー。
  7. 請求項1に記載の結晶性ベーマイトスラリーの製造方法であって、
    レーザー回折・散乱法により測定される体積基準のd50(メジアン径)が1~10μmのギブサイトと、X線回析測定における(020)面のピークから算出される結晶子径が2~6nmの擬ベーマイトと、水とを混合して混合液(1)を調製する工程であって、前記混合液(1)のpHが7.0以下とならないように実施される第一の工程と、
    前記混合液(1)に無機塩基性化合物を加えて、pHが9.0~12.5の混合液(2)を調製する第二の工程と、
    前記混合液(2)を水熱処理する第三の工程と、
    を含む結晶性ベーマイトのスラリーの製造方法。
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