JP2024060591A - ガラスクロス、プリプレグ、およびプリント配線板 - Google Patents

ガラスクロス、プリプレグ、およびプリント配線板 Download PDF

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正朗 遠藤
弘司 鶴田
一志 三品
智之 横江
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Abstract

【課題】本発明は、応力-歪特性の異方性が低減された低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。【解決手段】フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、経糸を構成するフィラメントの本数と、緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、経糸の糸幅の下限値が、下式(1):40×α+102・・・式(1){式中、αはフィラメントの平均直径(μm)を表す}で求められる値以上であり、経糸の糸幅と緯糸の糸幅の比(経糸幅/緯糸幅)を、フィラメントの平均直径で除して求められる、経緯糸幅比係数が、0.125以上0.142以下であるガラスクロスが提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、ガラスクロス、プリプレグ、およびプリント配線板に関する。
近年の移動通信システムの高度化、AI、IoTの発達に伴い、例えば、ハイエンドサーバー又はハイエンドルータ/スイッチ、スーパーコンピュータ、基地局等の通信機器又は計測器に用いられるプリント配線板には、データ通信及び/又は信号処理の大容量高速化とともに、高い信頼性が求められる。そのため、プリント配線板を構成するガラスクロスにおいても、プリント配線板製造工程中の寸法変化もしくは反り・捻じれの発生の低減、又は加熱寸法変化の異方性の低減が、より一層強く求められている。
プリント配線板製造工程中の寸法変化もしくは反り・捻じれ、又は加熱寸法変化の異方性を改善する方法とし、例えば、特許文献1~9等のガラスクロスが提案されている。
特許文献1には、プリント配線板の成型時の基板反りを改善するガラスクロスとして、応力-歪曲線における荷重50N/inchを掛けた際の経糸方向の伸び量のガラスクロス幅方向差異が10%以下であるガラスクロスが開示されている。
特許文献2には、低張力(1mm当たり49N/m以下)で扁平加工することで、経糸及び緯糸の断面形状及びウネリ状態が同等となり、XY方向の異方性が改善された、厚さ10~50μmのガラスクロスが開示されている。
特許文献3には、張力が作用しない条件で開繊することで、経糸と緯糸がバランス良く開繊された、シワ又は目曲がりのないガラスクロスが得られることが開示されている。
特許文献4には、経糸のフィラメント径より緯糸のフィラメント径が大きく、その緯/経比を1.01以上1.27未満とすることで、寸法変化の異方性が少なく、反り・捻じれの少ないガラスクロスが得られることが開示されている。
特許文献5には、織密度を経緯同等(経/緯比が0.9~1.1)とすることで、寸法安定性に優れたガラスクロスとなることが開示されている。
特許文献6には、ガラス糸同士の間隔、織り密度と織り縮み率との関係、嵩密度を特定範囲に調整することで、寸法変化のバラツキが小さく、タテ方向ヨコ方向の異方性が小さいガラスクロスが得られることが開示されている。
特許文献7および特許文献8には、経糸、緯糸ともに、糸幅が大きく、糸間隙が小さいガラスクロスが、寸法変化のバラツキを小さくすることが開示されている。
特許文献9には、経糸、緯糸ともに糸幅のバラツキが小さく、且つ、経糸、緯糸ともに、糸束が扁平で互いに交差する糸のうねり角を小さくすることで、寸法変化が小さいガラス糸、および寸法変化が小さいガラスクロスとなることが開示されている。
特開2017-132651号公報 国際公開第2004/027136号 特開2002-38367号公報 国際公開第2011/024870号 特開平11-10711号公報 特開平11-10712号公報 特開平5-28065号公報 特開平10-37038号公報 特開2006-52473号公報
特許文献1に記載されるガラスクロスは、反りが改善されると記載されているが、ガラスクロスの応力-歪曲線の異方性まで改善できるものではない。ガラスクロスは、経糸と緯糸とで構成されるため、経糸に一定荷重が掛かった際の伸び量を幅方向で同等にするだけでは、異方性を改善することはできない。したがって、特許文献1に記載のガラスクロスの反りに関しても未だ改善の余地がある。
特許文献2に記載の異方性改善方法は、フィラメント数が少なく、薄いガラスクロスには異方性低減に有効であるが、フィラメント数が200本を超える、厚さ40μm以上のガラスクロスでは、応力―歪曲線の異方性に改善の余地が残る。
特許文献3に記載のガラスクロスの製造方法は、ガラスクロスの上限に支持体を挟んだ状態で搬送しながら開繊加工を行うことが記載されており、目曲がりの抑制に有効と記載されているが、応力―歪曲線の異方性は改善されない問題があった。
特許文献4に記載のガラスクロスは、応力―歪(SS)特性の異方性は改善されるが、経糸と緯糸に異なる番手のガラス糸を用いているため、樹脂含量の面内バラツキ、または穴精度のバラツキが大きい等の問題があり、実用性に欠ける問題がある。
特許文献5に記載のガラスクロスは、経糸と緯糸の織密度を同等としても、SS特性の異方性を改善できない問題があった。
特許文献6および特許文献7に記載のガラスクロスは、経糸と緯糸の織密度の差が大きく、穴加工性、又は加熱寸法変化のXY異方性が大きいという問題があった。また、両文献には、織密度の差が大きいと応力―歪曲線の異方性は改善されない問題もあった。
特許文献8に記載のガラスクロスは、寸法変化のバラツキが抑えられとの記載があるが、応力-歪曲線の異方性、および寸法変化のバラツキの点で、十分なものではなかった。また、緯糸占有度が小さく、ガラスクロス面内のガラス分布均一性に劣るため、スキューの問題があり、高速移動通信用途には適さない。
特許文献9に記載のガラスクロスは、経糸、緯糸がお互いに交差するうねり角を小さくすることで、寸法変化は低減するが、経糸方向と緯糸方向の異方性を改善できるものではなかった。
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、応力-歪特性の異方性が低減された低誘電ガラスクロス、並びに、当該低誘電ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、経糸幅、経糸幅と緯糸幅の比をフィラメント径に応じて所定の範囲とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)
フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸および緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1):
40×α+102・・・式(1)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
で求められる値以上であり、かつ
経糸の糸幅と緯糸の糸幅の比(経糸幅/緯糸幅)を、前記フィラメントの平均直径で除して求められる、経緯糸幅比係数が、0.125以上0.142以下である、ガラスクロス。
(2)
前記経糸の糸幅で前記ガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2):
0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
で求められる値以下である、項目1に記載のガラスクロス。
(3)
フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸および緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1):
40×α+102・・・式(1)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
で求められる値以上であり、かつ
前記経糸の糸幅で前記ガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2):
0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
{α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
で求められる値以下である、ガラスクロス。
(4)
前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度の差が5以下である、項目1~3の何れか一項に記載のガラスクロス。
(5)
前記経糸の糸幅と前記緯糸の糸幅の和が720μm以上である、項目1~4の何れか1項に記載のガラスクロス。
(6)
下式(3):
Y=F/(25000/G)×100・・・式(3)
{式中、Fは、緯糸幅(μm)であり、そしてGは、緯糸の織密度(本/25mm)である}
で求められる、MD方向における緯糸の存在する部分の割合を示す緯糸占有率Yが、88%以上104%以下である、項目1~5の何れか1項に記載のガラスクロス。
(7)
幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)が、1.0以上1.9以下である、項目1~6の何れか1項に記載のガラスクロス。
(8)
幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bが、ともに、0.3%以上0.95%以下である、項目1~7の何れか1項に記載のガラスクロス。
(9)
弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、項目1~8の何れか1項に記載のガラスクロス。
(10)
弾性係数が50GPa以上64GPa以下のガラス糸で構成された、項目1~9の何れか1項に記載のガラスクロス。
(11)
経糸および緯糸が、フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ
幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)が、1.0以上1.9以下である、ガラスクロス。
(12)
経糸および緯糸が、平均フィラメント本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm超過100μm以下のガラスクロスであって、
前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ
幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bが、ともに、0.3%以上0.95%以下である、ガラスクロス。
(13)
下式(3):
Y=F/(25000/G)×100・・・式(3)
{式中、Fは、緯糸幅(μm)であり、そしてGは、緯糸の織密度(本/25mm)である}
で求められる、MD方向における緯糸の存在する部分の割合を示す緯糸占有率Yが、88%以上104%以下である、項目11または12に記載のガラスクロス。
(14)
弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、項目11~13の何れか1項に記載のガラスクロス。
(15)
弾性係数が50GPa以上64GPa以下のガラス糸で構成された、項目11~14の何れか1項に記載のガラスクロス。
本発明によれば、応力―歪特性の等方性に優れる、ガラスクロス、並びに、当該ガラスクロスを用いたプリプレグ及びプリント配線板を提供することができる。
1017タイプの低誘電ガラスクロス(従来)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 1027タイプの低誘電ガラスクロス(従来)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 1037タイプの低誘電ガラスクロス(従来)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 1067タイプの低誘電ガラスクロス(従来)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 1078タイプの低誘電ガラスクロス(従来、比較例3)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 3313タイプの低誘電ガラスクロス(従来、比較例6)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 2116タイプの低誘電ガラスクロス(従来、比較例8)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 1078タイプの低誘電ガラスクロス(本願発明、実施例4)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 3313タイプの低誘電ガラスクロス(本願発明、実施例6)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。 2116タイプの低誘電ガラスクロス(本願発明、実施例8)の伸び特性の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、本実施形態の構成についてより詳細に説明する。
第一の実施形態のガラスクロスは、経糸および緯糸が、フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、経糸を構成するフィラメントの本数と、緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1)で求められる値以上であり、
40×α+102・・・式(1)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
かつ経糸の糸幅と緯糸の糸幅の比(経糸幅/緯糸幅)を、フィラメントの平均直径で除して求められる、経緯糸幅比係数が、0.125以上0.142以下である。
本実施形態のガラスクロスは、経糸および緯糸の糸幅を指標として特定範囲内にすることで、経糸と緯糸のうねり構造が特定範囲となり、その結果として、応力-歪特性の異方性を低減することが可能である。さらに、本実施形態のガラスクロスは、経糸と緯糸のうねり構造を特定範囲に形成させることで、嵩高さが解消し、厚みが小さく、平滑性に優れるガラスクロスが得られることも特徴である。
プリント配線板の寸法変化又は反り若しくは捻じれの発生の低減、および加熱寸法変化の異方性を小さくするには、補強材であるガラスクロスの引張り応力に対する耐性を強くし、同時にそのタテ・ヨコ異方性を小さくする方法が有効である。ガラスクロスは織物構造をしていることから、X-Y面の一方向の張力に対して伸びる特性を有しているが、その伸び量は、構成するガラス糸の剛性に由来する補強効果に加え、ガラス糸のうねり状態に依存するところが大きい。したがって、ガラスクロスを構成するガラス糸のうねりのバランスを調整し、X-Y面の伸び特性を適切化することが、プリント配線板の寸法安定性を改善する方法の1つであると言える。
本実施形態のガラスクロスは、厚さ40μm以上100μm以下である。厚さが40μm以上であることにより、ハイエンドサーバー又はハイエンドルータ/スイッチ、スーパーコンピュータ、基地局等の通信機器又は計測器に用いられる、サイズの大きなプリント配線板、又は高多層のプリント配線板に必要な強度が得られる。また、厚さが100μm以下であることで、高多層プリント配線板の層数を増大させることが可能となり、高多層プリント配線板の厚さを維持したまま、伝送線路の高密度化が可能となる。ガラスクロスの厚さは、好ましくは40μm超過、より好ましくは41μm以上、更に好ましくは42μm以上であり、他方では、好ましくは98μm以下、より好ましくは96μm以下である。ガラスクロスの厚さは後述する実施例記載の方法で測定することができる。
本実施形態のガラスクロスは、経糸および緯糸に、フィラメント数が120本以上500本以下であるガラス糸を用いて製織された、ガラスクロスである。本明細書では、フィラメント数は、平均フィラメント本数でよい。平均フィラメント数の好ましい範囲は140本以上400本以下、より好ましい範囲は160本以上300本以下、更に好ましい範囲は180本以上250本以下である。
また、前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、好ましくは2本以下、より好ましくは1本以下、さらに好ましくは0本である。
フィラメント数が120本以上500本以下であり、経糸と緯糸のフィラメント数の差が3本以下であり、且つ、本実施形態の他の要件を満たすことにより、表面平滑性、ガラス分布の面内均一性、穴加工性等を損なうことなく、X-Y面に荷重が掛かった際の伸び挙動を、経糸方向と緯糸方向とで近づけることが可能である。
フィラメント数が120本以上のガラス糸を経糸および緯糸とすることで、サイズの大きなプリント配線板、又は高多層のプリント配線板に必要な強度が得られる。また、従来の平均フィラメント数値が120本以上のガラス糸で構成されたガラスクロスは、応力-歪特性の異方性が大きくなる問題を有するが、本発明により、応力-歪特性の異方性が改善されるため、プリント配線板製造工程中の寸法変化もしくは反り・捻じれの発生抑制、かつ/又は、加熱寸法変化の異方性が低減され、プリント配線の信頼性を高めることができる。
経糸及び緯糸を構成するガラス糸のモノフィラメントの平均直径は、好ましくは、4μm以上9μm以下である。モノフィラメントの平均直径のより好ましい範囲は4.3μm以上8μm以下、さらに好ましい範囲は、4.5μm以上7.6μm以下である。モノフィラメントの直径が上記範囲であり、且つ、モノフィラメントの平均数が上述の範囲であることにより、厚さが40μm~100μmのガラスクロスとすることができ、また、サイズの大きなプリント配線板、又は高多層のプリント配線板に必要な強度が得られるため、好ましい。
フィラメントの平均直径は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
本実施形態のガラスクロスは、経糸の糸幅が、下式(1)で求められる値以上である。
40×α+102(μm)・・・式(1)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
経糸の糸幅の好ましい範囲は、下式(1B)で求められる値以上であり、より好ましい範囲は、下式(1C)で求められる値以上であり、さらに好ましい範囲は、下式(1D)で求められる値以上である。
40×α+103(μm)・・・式(1B)
40×α+104(μm)・・・式(1C)
40×α+105(μm)・・・式(1D)
{式中、αは、上記式(1)に定義されたとおりである}
経糸の糸幅が、上記式1で求められる下限値以上であると、経糸のz方向の厚さが小さくなるため、緯糸のうねりが低減する。また、緯糸のうねりが低減するのに伴い、経糸と緯糸の交錯点で、緯糸が経糸を交互に上下方向に押し広げる力が作用するため、経糸のうねりは増加する。このため、経糸と緯糸のうねりが近づき、経糸と緯糸の伸び特性が近づき、応力-歪曲線の異方性が低減される。
また、本実施形態のガラスクロスは、経糸の糸幅が、下式(4)で求められる値以下である。
30×α+250(μm)・・・式(4)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
経糸の糸幅の好ましい範囲は、下式(4B)で求められる値以下であり、より好ましい範囲は、下式(4C)で求められる値以下であり、さらに好ましい範囲は、下式(4D)で求められる値以下である。
30×α+240(μm)・・・式(4B)
30×α+230(μm)・・・式(4C)
30×α+220(μm)・・・式(4D)
{式中、αは、上記式(4)に定義されたとおりである}
経糸幅が上記上限を超えると、XY方向に広がった経糸を回避するように緯糸が大きくうねる必要があるため、緯糸のうねりが大きく、応力―歪曲線の異方性は大きくなる。経糸幅が上記上限以下であるとき、緯糸のうねりが小さくなり、応力―歪曲線の異方性が低減される。
ガラスクロスの製造は、糊水洗工程や開繊工程など、経糸の糸束を構成するフィラメント配置が変動して糸束形状が変化する工程が複数存在するが、例えば、最初に水中に浸漬した状態で加工を施す工程を配し、該工程で経糸を均一に大きく拡幅させておき、これより後の工程では加工力を極力小さくし、且つ、経糸に作用する張力を小さく調整して経糸の収縮を抑えることなどにより、前記経糸の糸幅の下限値が、式(1)で求められる値以上に制御することができる。
また、経糸幅の下限値の制御には、撚り品質が均一で、バラツキ起因による撚り間隔が狭い部位が少ないガラス糸を経糸に用いることも有効である。
ここで、ガラスクロスにおける経糸および緯糸の糸幅は、100mm×100mmの大きさのガラスクロスサンプルを表面から顕微鏡で観察し、全ての糸幅を求め、その合計をそれらの糸の総本数で除算した平均値である。このとき、ガラス糸の糸幅がサンプル内で変動する場合は、最も幅が大きい箇所の幅をその糸の糸幅とする。
本実施形態のガラスクロスは、経糸の糸幅と緯糸の糸幅の比(経糸幅/緯糸幅)をフィラメントの平均直径で除して求められる、経緯糸幅比係数が0.125以上0.142以下である。経緯糸幅比係数の好ましい範囲は、0.129以上0.142以下であり、より好ましい範囲は0.132以上0.141以下であり、さらに好ましい範囲は0.133以上0.140以下である。
経糸幅が本発明の範囲であり、且つ、経緯糸幅比係数が上記の下限値以上であれば、緯糸のz方向の厚みが小さいために、緯糸のうねりが小さく、それに伴い経糸のうねりが大きくなるため、応力-歪曲線の異方性が低減される。
経糸幅が本発明の範囲であり、且つ、経緯糸幅比係数が上記の上限値以下であれば、緯糸の剛性が高く保たれるため、緯糸のうねりが小さくなるときに経糸との交錯点で経糸を上限に押し広げる力が作用し、経糸のうねりが大きくなる。応力-歪曲線の異方性が低減される。
経糸幅が本発明の範囲であり、且つ、経緯糸幅比係数が上記の範囲内であると、経糸にうねりが付与され、緯糸のうねりは低減されるため、応力-歪曲線の異方性が低減される。
ガラスクロスの製造は、糊水洗工程や開繊工程など、経糸の糸束を構成するフィラメント配置が変動して糸束形状が変化する工程が複数存在するが、例えば、最初に水中に浸漬した状態で加工を施す工程を配し、該工程で経糸を均一に大きく拡幅させておき、これより後の工程では加工力を極力小さくし、且つ、経糸に作用する張力を小さく調整して経糸の収縮を抑えることなどにより上述の通り経糸幅を拡幅させ、同時に、経糸の拡幅を進めることによる緯糸拡幅の抑制作用、開繊工程の加工力を小さくすることによる緯糸拡幅の抑制作用により過度の緯糸幅の拡大を抑えることで、経緯糸幅比係数を上記の範囲に制御することができる。
また、経緯糸幅比係数の制御には、撚り品質が均一で、バラツキ起因による撚り間隔が狭い部位が少ないガラス糸を経糸に用いること、及び/又はバラツキ起因による撚り間隔が広い部位が少ないガラス糸を緯糸に用いることも有効である。
本実施形態のガラスクロスは、経糸の糸幅と緯糸の糸幅の和が、720μm以上であることが好ましい。経糸幅と緯糸幅の和のより好ましい範囲は730μm以上であり、さらに好ましい範囲は740μm以上であり、よりさらに好ましい範囲は750μm以上である。経糸幅と糸幅の和が720μm以上であることによって、経糸と緯糸との交錯点において、経糸と緯糸のz方向の厚みの重なり合いによる厚さが小さく保たれ、経糸のうねりおよび緯糸のうねりが大きくなるのを抑制し、経糸と緯糸の伸び量が小さくなるため好ましい。
本実施形態のガラスクロスは、長手方向(MD)の緯糸の存在割合が、好ましくは88%以上104%以下である。長手方向の緯糸の存在割合のより好ましい範囲は、90%以上103%以下であり、さらに好ましい範囲は91%以上102%であり、さらにより好ましい範囲は92%以上102%以下である。
長手方向の緯糸の存在割合は、緯糸占有率ともいい、下式(3)から求められ、緯糸の糸幅を、緯糸の間隔で除した値Yである。
Y=F/(25000/G)×100・・・(3)
(式中、Fは緯糸の糸幅(μm)であり、そしてGは緯糸の織密度(本/25mm)である。)
緯糸占有率が88.0%以上であると、ガラスクロスの面内均一性、および表面平滑性に優れるため、ガラスクロスと樹脂とから構成される絶縁体層において、ガラスおよび樹脂の存在比率がより均一となる。従って、該絶縁体層上に形成された複数の伝送線路の信号伝播速度が同等となる傾向にあるため、信号の到達時間にずれが小さく、安定な信号処理に可能となるため、移動通信システム、AI、IoT用途のガラスクロスとして好ましい。
例えば、緯糸の織密度の調整や、開繊工程における緯糸幅の調整により、長手方向の緯糸の存在割合を上記の範囲に制御することができる。
ガラスクロスの経糸の織密度は、40本/25mm以上70本/25mm以下であることが好ましい。経糸の織密度のより好ましい範囲は45本/25mm以上65本/25以下、さらに好ましい範囲は47本以上63本以下、さらにより好ましい範囲は48本/25mm以上62本/25mm以下である。
また、経糸の織密度と緯糸の織密度の差は、5以下であることが好ましい。織密度と緯糸の織密度の差のより好ましい範囲は4.5以下であり、更に好ましい範囲は4.0以下であり、より更に好ましい範囲は3.5以下であり、特に好ましい範囲は3.0以下である。
経糸の織密度が上記範囲内であることにより、フィラメント本数が本発明の範囲内のガラス糸を用いたガラスクロスは、プリント配線板の補強強度に優れ、且つ、40μ以上100μmの厚さとなるため好ましい。
経糸の織密度と緯糸の織密度の差が上記範囲内であることにより、経糸の糸幅と、緯糸の糸幅が、本発明の範囲とすることで、応力-歪特性の異方性が改善される。
本発明のガラスクロスは、経糸の糸幅でガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2)で求められる値以下であることが好ましい。
0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
クリンプ形状指数が式(2)で求められる値より小さいか、その値以下であると、経糸と緯糸のうねりが近づいていることになり、経糸と緯糸の伸び特性が近づき、応力-歪曲線の異方性が低減される。すなわち、経糸は伸びが大きくなり、緯糸は伸びが小さくなる。
経糸幅厚さクリンプ形状指数を、式(2)で求められる値以下にするには、経糸幅を本発明の範囲に制御する方法が有効である。経糸幅が広がることで、経糸のz方向の厚さが小さくなり、それに伴い経糸に沿う緯糸のうねりが低減される。緯糸のうねりが低減することで、経糸と緯糸の交錯点で、緯糸が経糸を交互に上下方向に押し広げる力が強くなるため、経糸のうねりは増加する。これらの結果、経糸と緯糸のうねりの凸凹がうまく組み合わさり、厚さが低減するため、経糸幅厚さクリンプ形状指数が式(2)で求められる値以下になり易い。
また、糊水洗工程や開繊工程など、経糸の糸束を構成するフィラメント配置が変動して糸束形状が変化する工程において、ガラスクロスに作用する張力または加工力が幅方向で均一になるように各工程および各工程間の条件を制御し、経糸幅のバラツキが小さくなるように調整することで、経糸幅厚さクリンプ係数を上記の範囲に制御することができる。
ガラスクロス又は糸束を水中に浸漬した状態で加工を施す工程における加工力を大きくすると、経糸幅の拡幅が進むとともに、経糸幅のバラツキが小さく抑えられるので好ましい。水中に浸漬した状態での加工より後の加工の加工力を大きくしないことも、経糸幅のバラツキ拡大が抑えられる点で好ましい。
本発明のガラスクロスの第二の実施態様としては、フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸および緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、経糸を構成するフィラメントの本数と、緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1)で求められる値以上であり、
40×α+102・・・式(1)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}、かつ
前記経糸の糸幅でガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2)で求められる値以下であるガラスクロスが提供される。
0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
{式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
第一および第二の実施形態のガラスクロスは、緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率との差が小さいのが特徴であり、幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)を、1.0以上1.9以下に抑えることができる。緯糸方向の伸び率Aと糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)の好ましい範囲は、1.0%以上1.8%以下、より好ましい範囲は1.0%以上1.7%以下である。
幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)は、経糸幅および緯糸幅を本発明の範囲に調整することにより上記範囲に制御することができる。
ここで、伸び率とは以下のようにして求めた値である。
ガラスクロスに経糸方向又は緯糸方向に張力を掛けた際の伸び量を、JIS R3420のガラス試験一般試験法、7.4引張り強さの項に記載された方法を準用して測定する。該JIS規定の方法では、幅約30mm、長さ約250mmの試験片を織物の経糸方向と緯糸方向から採り、該試験片の両端部の糸をほぐし、幅約25mmとし、約150mmのつかみ間隔を確保して、つかみ部に取り付け、引張り速度約200mm/minで引っ張り、破断時の荷重を求める。本発明においては、測定精度を向上させるために、引っ張り速度を約5mm/minとした以外は上記JIS規定の方法と同一の条件で引っ張り試験を行い、ガラスクロスの幅25mm当り荷重が50
N作用した際の変位量を求め、下記式:
伸び率={(荷重時の間隔-無荷重時の間隔)/無荷重時の間隔}×100
を用いて求めた値を「伸び率」と定義する
経糸方向の伸び率Bに対する緯糸方向の伸び率Aの(A/B)比が上述の範囲にあると、プリント配線板の加工工程中の反り捻じれの発生、加工工程中の寸法変化の異方性、および加熱寸法変化の異方性が改善される傾向にあり、信頼性の高いプリント配線板が得られるため好ましい。
また、本発明のガラスクロスは緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率とが共に小さいことも特徴であり、幅25mm当たり50Nの荷重を各糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと経糸方向の伸び率Bは、ともに、0.3%以上0.95%以下に抑えることができ、好ましくは0.4%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。また、伸び率A及びBは、ともに、好ましくは0.94%以下であり、より好ましくは0.93%以下である。
幅25mm当たり50Nの荷重を各糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと経糸方向の伸び率Bは、経糸幅、緯糸幅、およびクリンプ構造係数を本発明の範囲に調整することにより上記範囲に制御することができる。
緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率が共に上記の上限値以下であると、ガラスクロスの補強効果が大きく、プリント配線板の反り・捻じれの発生、寸法変化、および熱膨張率を小さく抑えることができるので好ましい。また、緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率が共に上記の上限値以下であると、ガラスクロスの幅方向における応力-歪特性のバラツキが小さく抑えられ、かつガラスクロス製造工程中や、ガラスクロスを用いたプリプレグの製造工程中に、ガラスクロスの目曲がりの発生、又は斜めシワ、巻きシワ、弛みなどの欠点の発生が抑えられるため好ましい。
緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率が共に上記の下限値以上であると、プリント配線板加工時の樹脂の硬化収縮又は軟化等の応力を緩和し、反りや捻じれが抑制されるので好ましい。また、緯糸方向の伸び率と経糸方向の伸び率が共に上記の下限値以上であると、ガラスクロス加工時、又はガラスクロスを用いたプリプレグ加工時においても、外部応力を緩和されるため、シワや巻きシワの発生が抑えられるため好ましい。
本発明の第三の実施態様としては、経糸および緯糸が、フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、経糸を構成するフィラメントの本数と、緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)が、1.0以上1.9以下であるガラスクロスが提供される。
本発明の第四の実施態様としては、経糸および緯糸が、平均フィラメント本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm超過100μm以下のガラスクロスであって、経糸を構成するフィラメントの本数と、緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bが、ともに、0.3%以上0.95%以下であるガラスクロスが提供される。
第三および第四の実施形態に係るガラスクロスは、所望により、第一および第二の実施形態に係るガラスクロスと構成において共通してよい。第一~第四の実施形態のガラスクロスを構成するガラス糸の弾性係数は、好ましくは50GPa以上70GPa以下であり、より好ましくは50GPa以上64GPa以下、さらに好ましくは52GPa以上64GPa、よりさらに好ましくは54GPa以上60GPa以下である。
弾性係数が50GPa以上70GPa以下の範囲であるガラス糸は、弾性係数74GPaのEガラスのガラス糸に比較して、荷重を掛けた際の伸び率が大きくなる傾向にあり、応力-歪特性の異方性もEガラスと比較して大きくなる傾向にある。そのため、本発明により、応力-歪特性の異方性を低減させる効果が大きく好ましい。また、弾性係数が50GPa以上70GPa以下の範囲であるガラス糸は、外部からの応力の影響を受け易いため、経糸幅および緯糸幅を本実施形態の構成範囲に制御し易い点でも好ましい。
ガラス糸の弾性係数は後述する実施例に記載の方法で測定する。
(ガラスクロスのその他の構成)
ガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造が挙げられる。この中でも、平織り構造がより好ましい。
ガラスクロスの布重量(目付け)は、好ましくは8~250g/mであり、より好ましくは20~150g/mであり、さらに好ましくは30~110g/mであり、特に好ましくは36~100g/mである。
(表面処理)
ガラスクロスは、表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。表面処理剤としては、特に制限されないが、例えば、シランカップリング剤が挙げられ、必要に応じて水、有機溶剤、酸、染料、顔料、界面活性剤等を合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、式(I)で示される化合物が挙げられる。
X(R)3-nSiY ・・・(I)
(式中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つ以上有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。)
式(I)中、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも3つ以上を有する有機官能基であることが好ましく、Xは、アミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも4つ以上を有する有機官能基であることがより好ましい。
式(I)中、Yについて、上記のアルコキシ基としては、いずれの形態も使用できるが、ガラスクロスへの安定処理化の観点から、炭素数5以下のアルコキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、具体的には、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
〔ガラスクロスの製造方法〕
本実施形態のガラスクロスの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ガラス糸を製織してガラスクロスを得る製織工程と、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程とを有する方法が挙げられる。また、必要に応じて、ガラスクロスの製造方法は、ガラスクロスのガラス糸に付着したサイズ剤を除く脱糊工程、シランカップリング剤による表面処理工程を有していてもよい。
製織方法は、所定の織構造となるように緯糸と経糸を織るものであれば特に制限されない。また、開繊方法としては、特に制限されないが、例えば、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。さらに、脱糊方法としては、特に制限されないが、例えば、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水等でサイズ剤を洗浄除去する方法、サイズ剤を加熱除去する方法が挙げられる。また、表面処理方法としては、シランカップリング剤を含む表面処理剤をガラスクロスと接触させ、乾燥等する方法が挙げられる。なお、ガラスクロスへの表面処理剤の接触は、表面処理剤中にガラスクロスを浸漬させる方法や、ロールコーター、ダイコーター、又はグラビアコーター等を用いてガラスクロスに表面処理剤を塗布する方法等が挙げられる。表面処理剤の乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、熱風乾燥や、電磁波を用いる乾燥方法が挙げられる。
製織時の織密度、製織時の経糸に作用する張力、製織時の緯糸打ち込み圧力、開繊工程における開繊力および経糸に作用する張力、脱糊工程のおける脱糊力および経糸に作用する張力を調整することにより、経糸の糸幅と緯糸の糸幅を調整することができる。
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、上記ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂組成物とを有する。
本実施形態のプリプレグは、常法に従って製造することができる。例えば、本実施形態のガラスクロスに、エポキシ樹脂のようなマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥炉にて有機溶剤を揮発させ、熱硬化性樹脂をBステージ状態(半硬化状態)にまで硬化させることにより製造することができる。
マトリックス樹脂組成物としては、上述のエポキシ樹脂の他に、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂(BT樹脂)、官能基化ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、全芳香族ポリエステルの液晶ポリマー(LCP)、ポリブタジエン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;及び、それらの混合樹脂等が挙げられる。誘電特性、耐熱性、耐溶剤性、及びプレス成形性を向上させる観点から、マトリックス樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂で変性した樹脂を用いてもよい。
また、マトリックス樹脂組成物は、樹脂中にシリカ及び水酸化アルミニウム等の無機充填剤;臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤;その他シランカップリング剤;熱安定剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;顔料;着色剤;滑沢剤等を含んでいてもよい。
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、上記プリプレグを備える。本実施形態のプリプレグを備えるプリント配線板は、最終製品の歩留まりの高く、供給安定性を提供することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<ガラスクロスの物性>
ガラス糸およびガラスクロスの物性、具体的には、ガラスクロスの厚さ、経糸及び緯糸の打ち込み密度(織密度)は、JIS R3420に準拠して測定した。ガラスクロスの経糸の糸幅、緯糸の糸幅は、前述の方法に従って測定した。ガラスクロスの経糸方向の伸び率、及び緯糸方向の伸び率は、JIS3420を準用した前述の方法に従って測定した。
〔ガラス糸のフィラメントの平均直径〕
JIS R3420のA法に準拠して測定した。
先ず、625℃の電気炉で20分間加熱処理して、ガラス糸からサイズ剤を取り除いた。次いで、ガラス糸を25mm以内の長さに切断し、スライドガラスの上に置いたあと、ガラス糸をフィラメントの状態に解した。マイクロスコープで観察し、フィラメントの輪郭線間をフィラメントの直径として測定した。無作為に25個のフィラメントの直径を測定し、その平均値をフィラメントの平均直径として求めた。
〔弾性係数〕
弾性係数は、経糸および緯糸に用いるガラス糸を溶融及び冷却して得られるガラスバルクを試験片として用い、パルスエコーオーバーラップ法により測定した。
<比較例1>
経糸、緯糸ともに、平均フィラメント直径5.1μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸(AGY社製、LCD510、弾性係数61GPa)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度53本/25mm、緯糸打ち込み密度53本/25mm、のガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機に、バイブロウォッシャーによる糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1285mmのガラスクロスを得た。
なお、比較例1の経糸に用いたガラス糸は、撚り数の平均値が0.89~1.05、撚り数の標準偏差0.05~0.33であった。
<実施例1>
経糸に、撚り数の標準偏差が0.135以下のガラス糸(撚り数の平均値0.93~1.02)を選定して用い、糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で1.5倍、パンチング比を比較例1対比で1.04倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例1対比で0.6倍、スプレー圧:比較例1対比で0.5倍)以外は、比較例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
ガラスクロスを空気中で搬送させると、ガラスクロスに作用する自重の影響で、幅方向で経糸に作用する張力に差異が生じる。この状態で経糸のフィラメント配置を変動させる加工を施すと、幅方向で経糸の加工状態に違いが生じる。本実施例では、ガラスクロスを水に浸漬させて加工するバイブロウォッシャーの加工力を強くし、且つ、ガラスクロスを空気中で搬送させながら加工する開繊加工力を弱くすることで、経糸のフィラメント配置を変動させる加工が幅方向で均一となるように制御した。
<実施例2>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で1.7倍、パンチング比を比較例1対比で1.06倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例1対比で0.55倍、スプレー圧:比較例1対比で0.4倍)以外は、実施例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<実施例3>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で2.0倍、パンチング比を比較例1対比で1.09倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例1対比で0.5倍、スプレー圧:比較例1対比で0.3倍)以外は、実施例2と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<実施例4>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で2.5倍、パンチング比を比較例1対比で1.14倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例1対比で0.4倍、スプレー圧:比較例1対比で0.2倍)以外は、実施例2と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例2>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を弱くした(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で0.5倍、パンチング比を比較例1対比で0.96倍)以外は、比較例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例3>
経糸に、撚り数の標準偏差が0.135以下のガラス糸(撚り数の平均値0.93~1.02)を選定して用いた以外は、比較例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例4>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例1対比で2.5倍、パンチング比を比較例1対比で1.14倍)以外は、比較例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例5>
シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例1対比で0.4倍、スプレー圧:比較例1対比で0.2倍)以外は、比較例1と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<実施例5>
経糸、緯糸ともに、平均フィラメント直径5.1μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸(AGY社製、LCD520、弾性係数56GPa)を使用し、且つ、経糸に、撚り数の標準偏差が0.135以下のガラス糸(撚り数の平均値0.93~1.02)を選定して用いた以外は、実施例4と同様にして、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例6>
経糸、緯糸ともに、平均フィラメント直径6.2μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸(AGY社製、LCDE340、弾性係数61GPa)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度59本/25mm、緯糸打ち込み密度61.5本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1285mmのガラスクロスを得た。
なお、比較例6の経糸に用いガラス糸は、撚り数の平均値が0.90~1.05、撚り数の標準偏差0.05~0.29であった。
<実施例6>
経糸に、撚り数の標準偏差が0.135以下のガラス糸(撚り数の平均値0.92~1.02)を選定して用い、糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例6対比で2.0倍、パンチング比を比較例1対比で1.04倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例6対比で0.8倍、スプレー圧:比較例6対比で0.6倍)以外は、比較例6と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<実施例7>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例6対比で2.5倍、パンチング比を比較例6対比で1.08倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例6対比で0.6倍、スプレー圧:比較例6対比で0.2倍)以外は、実施例6と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例7>
シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例6対比で0.6倍、スプレー圧:比較例6対比で0.2倍)以外は、比較例6と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例8>
経糸、緯糸ともに、平均フィラメント直径7.1μm、フィラメント数200本からなる低誘電ガラス糸(AGY社製、LCE255、弾性係数61GPa)を使用し、エアジェットルームを用い、経糸打込み密度60本/25mm、緯糸打ち込み密度57本/25mmのガラスクロス(生機)を製織した。
得られた生機を糊水洗および高圧水スプレーによる開繊処理を施した。次いで、400℃で24時間加熱処理し脱糊した後、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いた処理液にガラスクロスを浸漬し、絞液後、120℃で1分乾燥した。さらに高圧水スプレーによる開繊加工を実施し、幅1285mmのガラスクロスを得た。
なお、比較例8の経糸に用いガラス糸は、撚り数の平均値が0.90~1.07、撚り数の標準偏差0.06~0.30であった。
<実施例8>
経糸に、撚り数の標準偏差が0.135以下のガラス糸(撚り数の平均値0.92~1.03)を選定して用い、糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例8対比で2.0倍、パンチング比を比較例8対比で1.04倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例8対比で0.7倍、スプレー圧:比較例8対比で0.6倍)以外は、比較例8と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<実施例9>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を強くし(菊型ローラーの回転数を比較例8対比で2.5倍、パンチング比を比較例8対比で1.08倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例8対比で0.5倍、スプレー圧:比較例8対比で0.2倍)以外は、実施例8と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例9>
シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を低くした(ライン張力:比較例8対比で0.5倍、スプレー圧:比較例8対比で0.2倍)以外は、比較例8と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
<比較例10>
糊水洗工程におけるバイブロウォッシャーによる加工力を弱くし(菊型ローラーの回転数を比較例8対比で0.5倍、パンチング比を比較例1対比で0.96倍)、シランカップリング剤処理後の開繊工程におけるライン張力およびスプレー圧を高くした(ライン張力:比較例8対比で1.5倍、スプレー圧:比較例8対比で1.2倍)以外は比較例8と同様にガラスクロスの製造を行い、幅1285mmのガラスクロスを得た。
実施例および比較例のガラス糸構成、ガラスクロスの糸幅構成、ガラスクロス構造、およびガラスクロスの応力-歪特性を表1~4に示す。従来の低誘電ガラスクロス、比較例3,6,8の低誘電ガラスクロス、および実施例4,6,8の低誘電ガラスクロスの伸び特性の測定結果を図1~10に示す。図中、破線が経糸、実線が緯糸の伸び率を表す。
実施例1~7のガラスクロスは、何れも応力-歪曲線において、経糸方向の伸び率および緯糸方向の伸び率ともに小さく、且つ、経糸方向の伸び率と緯糸方向の伸び率の比が小さく、異方性が小さいものであった。
比較例1~10のガラスクロスは、応力-歪曲線において、経糸方向の伸び率または緯糸方向の伸び率のどちらかが大きく、また、経糸方向の伸び率と緯糸方向の伸び率の比が大きく、異方性が大きいものであった。
図1~7に、1017タイプ(厚さ15μm、ガラス糸のフィラメント径4.0μm、ガラス糸のフィラメント本数50本、経糸織密度94.5本/25mm、緯糸織密度95.5本/25mm)、1027タイプ(厚さ21μm、ガラス糸のフィラメント径4.0μm、ガラス糸のフィラメント本数100本、経糸織密度74.0本/25mm、緯糸織密度74.0本/25mm)、1037タイプ(厚さ25μm、ガラス糸のフィラメント径4.5μm、ガラス糸のフィラメント本数100本、経糸織密度69.0本/25mm、緯糸織密度72.0本/25mm)、1067タイプ(厚さ31μm、ガラス糸のフィラメント径5.1μm、ガラス糸のフィラメント本数100本、経糸織密度69.0本/25mm、緯糸織密度69.0本/25mm)、1078タイプ(厚さ47μm、ガラス糸のフィラメント径5.1μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度52.5本/25mm、緯糸織密度52.5本/25mm)、3313タイプ(厚さ74μm、ガラス糸のフィラメント径6.2μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度59.0本/25mm、緯糸織密度61.0本/25mm)、2116タイプ(厚さ89μm、ガラス糸のフィラメント径7.1μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度60.0本/25mm、緯糸織密度57.0本/25mm)の低誘電ガラスクロスの伸び特性の測定結果を示す。なお、これらのガラスクロスは、経糸と緯糸が同じガラス糸で構成されているが、(1)経糸と緯糸に剛性の同じガラス糸を用いて、寸法安定性や熱膨張率などの補強効果を経糸方向と緯糸方向で同じにする、(2)表面平滑性を上げる、(3)プリント配線板用の基板とした時の絶縁樹脂とガラスの分布を均一にする、(4)ドリル加工やレザー加工による穴精度を確保する、等の目的によるものである。ガラスクロスを構成するガラス糸のフィラメント径が大きくなるほど、また、フィラメント数が大きくなるほど、経糸と緯糸に同じガラス糸を用いないと、上記の特性が大きく損なわれるため、高速通信用のガラスクロスには、経糸と緯糸が同じガラスクロスが用いられるのが一般的である。
図1~7から分かるように、従来の低誘電ガラスクロスは、同じ引張り荷重を掛けた際に緯糸方向が経糸方向より大きく伸びる特徴を有しており、その差異は、荷重50N時の緯糸方向の伸び量と経糸方向の伸び量の比(小数点以下2桁の四捨五入)として、1017、1027、1037、1067、1078、3313、2116タイプで、それぞれ、1.1、1.2、1.2、1.3、2.0、2.0、2.3と大きいものであった。
これは、従来のガラスクロスが、経糸と緯糸に同じガラス糸を用いているにもかかわらず、緯糸が経糸よりもうねり状態が大きいことに由来するものである。このようなうねり状態の差は、経糸は製織時に張力で保持されているためにうねりが生じ難く、一方、経糸が張力で保持されてうねり難い分、緯糸が大きくうねりを生じるために起こるものである。また、扁平加工、開繊加工で経糸の糸幅が拡幅される際、経糸は張力で保持されているためにうねり構造は温存され、緯糸は経糸が拡幅された分、経糸に沿って大きく弧を描くように交錯するためにうねりが大きくなることにより、より一層、伸び特性の経糸と緯糸の差は大きくなる。また、扁平加工、開繊加工で一度拡幅された状態に、重ねて扁平加工や開繊加工を施す際に、経糸は張力で引っ張られているため糸幅の収縮を伴いながらうねりが解消され、緯糸は経糸に沿ってさらに大きなうねりを形成されるため、さらにより一層、伸び特性の経糸と緯糸の差が大きくなる。
さらに、緯糸のうねり構造は、ガラス糸のフィラメント数が多く、ガラス糸束の断面積が大きくなるほど、顕著に大きくなる特徴がある。図1~図7の例で分かるように、緯糸方向の伸び量と経糸方向の伸び量の比(小数点以下2桁の四捨五入)は、フィラメント数50本の1017が1.1、フィラメント数100本の1027、1037、1067が1.2、1.2、1.3に対し、フィラメント200本の1078、3313、2116では2.0、2.0、2.3とフィラメント数が200本で急激に大きくなっている。フィラメント数200本のガラス糸では、経糸のz方向の厚みも大きくなり、緯糸自体も太いため、緯糸が大きくうねる必要が生じるためである。
すなわち、従来技術のガラスクロス、特にフィラメント数200本のガラス糸で構成される厚さ40μm以上のガラスクロスは、緯糸方向が、同じ引張り応力で2倍近く伸び易い特性を有している。このため、プリント配線板加工時の寸法変化に対する補強効果は緯糸方向が弱くなる傾向にあり、加工工程中の反り捻じれや寸法変化の異方性、加熱寸法変化の異方性が生じ易いという問題があった。
また、図4を参照すると、特開2017-132651号公報(特許文献1)の実施例に記載されている、1067スタイルの低誘電ガラスクロスは、幅方向の伸び量の差異が10%以下であっても、SS特性は異方性が大きく、そして幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率と、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向にかけた際に生じる経糸方向の伸び率との比(ヨコ/タテ比)は1.31であったことが分かる。
上述の従来のガラスクロスに対し、本発明のガラスクロスは、応力-歪曲線の異方性が小さくなるのが特徴である。経糸方向の伸び率に対する緯糸方向の伸び率の好ましい(ヨコ/タテ)比は、好ましくは1.0以上1.9以下である。経糸方向の伸び率に対する緯糸方向の伸び率の(ヨコ/タテ)比のより好ましい範囲は1.0以上1.8以下であり、さらに好ましい範囲は1.0以上1.7以下である。
図8~10に、実施例4(1078タイプ、厚さ44μm、ガラス糸のフィラメント径5.1μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度53本/25mm、緯糸織密度53本/25mm)、実施例6(3313タイプ、厚さ67μm、ガラス糸のフィラメント径6.2μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度59.0本/25mm、緯糸織密度61.5本/25mm)、実施例8(2116タイプ、厚さ83μm、ガラス糸のフィラメント径7.1μm、ガラス糸のフィラメント本数200本、経糸織密度60.0本/25mm、緯糸織密度57.0本/25mm)の伸び特性測定結果を示す。タテ糸方向の伸び率に対するヨコ糸方向の伸び率の(ヨコ/タテ)比(小数点以下2桁の四捨五入)は、それぞれ、1.4と1.6、1.4であり、従来ガラスクロスと比較して、応力-歪曲線の異方性が大きく改善されている。また、経糸と緯糸のうねり構造のバランスが良く、ガラス糸がZ軸方向に対して密に織り込まれているため、従来の同じ糸使いのガラスクロスに対し、数ミクロンのオーダーで薄くできることも特徴である。

Claims (15)

  1. フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸および緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
    前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
    前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1):
    40×α+102・・・式(1)
    {式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
    で求められる値以上であり、かつ
    経糸の糸幅と緯糸の糸幅の比(経糸幅/緯糸幅)を、前記フィラメントの平均直径で除して求められる、経緯糸幅比係数が、0.125以上0.142以下である、ガラスクロス。
  2. 前記経糸の糸幅で前記ガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2):
    0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
    {式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
    で求められる値以下である、請求項1に記載のガラスクロス。
  3. フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸を経糸および緯糸として製織して成る、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
    前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、
    前記経糸の糸幅の下限値が、下式(1):
    40×α+102・・・式(1)
    {式中、α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
    で求められる値以上であり、かつ
    前記経糸の糸幅で前記ガラスクロスの厚さを除して求められる、経糸幅厚さクリンプ形状指数が、下式(2):
    0.2305×ln(α)-0.227・・・式(2)
    {α:経糸のフィラメントの平均直径(μm)}
    で求められる値以下である、ガラスクロス。
  4. 前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度の差が5以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のガラスクロス。
  5. 前記経糸の糸幅と前記緯糸の糸幅の和が720μm以上である、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  6. 下式(3):
    Y=F/(25000/G)×100・・・式(3)
    {式中、Fは、緯糸幅(μm)であり、そしてGは、緯糸の織密度(本/25mm)である}
    で求められる、MD方向における緯糸の存在する部分の割合を示す緯糸占有率Yが、88%以上104%以下である、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  7. 幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)が、1.0以上1.9以下である、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  8. 幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bが、ともに、0.3%以上0.95%以下である、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  9. 弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  10. 弾性係数が50GPa以上64GPa以下のガラス糸で構成された、請求項1又は3に記載のガラスクロス。
  11. 経糸および緯糸が、フィラメントの本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm以上100μm以下のガラスクロスであって、
    前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ
    幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bとの比(A/B比)が、1.0以上1.9以下である、ガラスクロス。
  12. 経糸および緯糸が、平均フィラメント本数が120本以上500本以下のガラス糸で構成された、厚さ40μm超過100μm以下のガラスクロスであって、
    前記経糸を構成するフィラメントの本数と、前記緯糸を構成するフィラメントの本数の差が3本以下であり、かつ
    幅25mm当たり50Nの荷重を緯糸方向に掛けた際に生じる緯糸方向の伸び率Aと、幅25mm当たり50Nの荷重を経糸方向に掛けた際に生じる経糸方向の伸び率Bが、ともに、0.3%以上0.95%以下である、ガラスクロス。
  13. 下式(3):
    Y=F/(25000/G)×100・・・式(3)
    {式中、Fは、緯糸幅(μm)であり、そしてGは、緯糸の織密度(本/25mm)である}
    で求められる、MD方向における緯糸の存在する部分の割合を示す緯糸占有率Yが、88%以上104%以下である、請求項11または12に記載のガラスクロス。
  14. 弾性係数が50GPa以上70GPa以下のガラス糸で構成された、請求項11又は12に記載のガラスクロス。
  15. 弾性係数が50GPa以上64GPa以下のガラス糸で構成された、請求項11又は12に記載のガラスクロス。
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