JP2024042695A - 樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】比透磁率が高く、磁性損失が低い硬化物を得ることができる、溶融粘度が低い樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体、及び(B)熱硬化性樹脂、を含む樹脂組成物であって、(A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.1質量%以上6質量%以下である、樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、並びに、当該樹脂組成物を用いた硬化物、磁性ペースト、樹脂シート、回路基板及びインダクタ基板に関する。
インダクタ部品のコア材料として、磁性粉体を含む樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を用いることがある。磁性粉体としては、FeNi合金粉を用いることがあった(特許文献1)。
特開2018-178254号公報
従来は、半導体装置の基板には、独立したインダクタ部品を実装することが一般的であった。しかし、近年、基板の導体パターンによりコイルを形成し、インダクタ素子を基板の内部に設ける手法が行われることがある。このような用途に用いるインダクタ素子の性能のさらなる向上のため、コア材料の磁気特性をより改善させることが求められている。また、半導体装置の基板にホールがある場合、該ホール内に磁性粉体を含む樹脂組成物を充填させることがある。この場合、樹脂組成物の溶融粘度が低いことが求められている。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、比透磁率が高く、磁性損失が低い硬化物を得ることができる、溶融粘度が低い樹脂組成物;前記の樹脂組成物の硬化物;前記の樹脂組成物を含む磁性ペースト及び樹脂シート;並びに、前記の樹脂組成物の硬化物を含む回路基板及びインダクタ基板;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、特定の量のSi及びCrを含む(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体と(B)熱硬化性樹脂とを組み合わせて含む樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
[1] (A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体、及び
(B)熱硬化性樹脂、を含む樹脂組成物であって、
(A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.1質量%以上6質量%以下である、樹脂組成物。
[2] さらに、(C)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の磁性粉体を更に含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (C)成分が、フェライト系の磁性粉体を含む、「2」に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分が、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体を含む、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (C)成分が、(A)成分よりも小さい平均粒径を有する、[2]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (B)成分が、(B-1)エポキシ樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (B)成分が、(B-2)硬化剤を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] さらに、(E)分散剤を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] さらに、(F)硬化促進剤を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] (A)成分に含まれるSiの含有量が、(A)成分100質量%に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] (A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.5質量%以上6質量%以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] (A)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] (A)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、30体積%以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] (A)成分及び(C)成分の合計量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、70質量%以上である、[2]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] (A)成分及び(C)成分の合計量が、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、50体積%以上である、[2]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] ホール充填用である、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[17] [1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[18] [1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、磁性ペースト。
[19] 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備え、
樹脂組成物層が、[1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
[20] ホールを有する基板と、前記ホールに充填された[1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を備える回路基板。
[21] [1]~[16]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える、回路基板。
[22] [20]又は[21]に記載の回路基板を備える、インダクタ基板。
本発明によれば、比透磁率が高く、磁性損失が低い硬化物を得ることができる、溶融粘度が低い樹脂組成物;並びに、前記の樹脂組成物の硬化物;前記の樹脂組成物を含む磁性ペースト及び樹脂シート;並びに、前記の樹脂組成物の硬化物を含む回路基板及びインダクタ基板;を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において用意されるコア基板を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、スルーホールを形成されたコア基板を模式的に示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、スルーホール内にめっき層を形成されたコア基板を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、コア基板のスルーホール内に樹脂組成物を充填した様子を模式的に示す断面図である。 図5は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(2)を説明するための模式的な断面図である。 図6は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(3)を説明するための模式的な断面図である。 図7は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。 図8は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。 図9は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(i)を説明するための模式的な断面図である。 図10は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(i)を説明するための模式的な断面図である。 図11は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(ii)を説明するための模式的な断面図である。 図12は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(iv)を説明するための模式的な断面図である。 図13は、インダクタ基板が有する回路基板をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。 図14は、図13に示すII-II一点鎖線で示した位置で切断した回路基板の切断端面を示す模式的な図である。 図15は、インダクタ基板が含む回路基板の第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
以下の説明において、樹脂組成物の「樹脂成分」とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、磁性粉体等の無機粒子を除いた成分を表す。
以下の説明において「透磁率」は、別に断らない限り「比透磁率」を表す。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体、及び(B)熱硬化性樹脂、を含む樹脂組成物であって、(A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.1質量%以上6質量%以下である。斯かる樹脂組成物によれば、溶融粘度が低く、当該樹脂組成物の硬化物の比透磁率を高くでき、磁性損失を低くすることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物によってこのように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。一般に、FeNi合金は、Fe及びNiで形成された結晶構造を有するので、高い結晶性を有する。よって、FeNi合金は、高い比透磁率を有する一方、磁性損失が高い傾向があった。これに対し、FeNi合金にSi及びCrを導入すると、Fe及びNiの結晶構造が歪められる。したがって、Si及びCrの導入量が大きくなるほど、Fe及びNiの結晶構造の歪みは大きくなるので、比透磁率及び磁性損失は大きく低下するであろうと予測された。ところが、本発明者が検討したところ、Siを導入すると、磁性損失の低下量を大きくできることが判明した。また、従来はFeNi合金にCrを導入すると、比透磁率に悪影響を及ぼすと考えられてきたが、本発明者が検討したところ、Crの量が0.1質量%以上6質量%以下という特定の範囲にある場合、溶融粘度を低くできることが判明した。したがって、前記特定の範囲の量のSi及びCrを含む(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体は、Fe及びNiの結晶構造による高い比透磁率を発揮しながら、及びSiによる磁性損失の効果的な低減という特異的な作用を発揮できるとともに、溶融粘度を低くできる。よって、上述した樹脂組成物の硬化物は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体が有する前記の特異的な作用によって、磁性粉体を含む従来の樹脂組成物に比べて比透磁率及び磁性損失を維持しながら溶融粘度を低くできる。
ただし、本発明の技術的範囲は、前記の仕組みによって制限されるものではない。また、前記の仕組みの説明では、FeNi合金にSi及びCrを導入する場合を例に挙げたが、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の製造方法に制限はなく、よって、FeNi合金にSi及びCrを導入する以外の方法で製造されたものも(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に包含される。
<(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体>
樹脂組成物は、(A)成分として、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体を含む。よって、(A)Fe-Ni-Si系合金磁性粉体は、Fe、Ni、Si及びCrを組み合わせて含む。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるCrの含有量は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体100質量%に対して、0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。上限は6質量%以下であり、好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。Crの量が前記の範囲にある場合に、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率を高くすることと磁性損失を低くすることとをバランスよく達成できる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるSiの含有量は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。Siの量が前記の範囲にある場合に、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率を高くすることと磁性損失を低くすることとをバランスよく達成できる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるSiの量とFeの量との質量比(Si/Fe)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.17以下、より好ましくは0.16以下、特に好ましくは0.14以下である。Siの量とFeの量との比(Si/Fe)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるSiの量とNiの量との質量比(Si/Ni)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.21以下、より好ましくは0.20以下、特に好ましくは0.18以下である。Siの量とNiの量との比(Si/Ni)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるCrの量とFeの量との質量比(Cr/Fe)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.17以下、より好ましくは0.16以下、特に好ましくは0.14以下である。Crの量とFeの量との比(Cr/Fe)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるCrの量とNiの量との質量比(Cr/Ni)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.21以下、より好ましくは0.20以下、特に好ましくは0.18以下である。Crの量とNiの量との比(Cr/Ni)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるFeの量は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体100質量%に対して、好ましくは33.00質量%以上、より好ましくは38.00質量%以上、更に好ましくは43.00質量%以上、特に好ましくは48.00質量%以上であり、好ましくは65.00質量%以下、より好ましくは60.00質量%以下、更に好ましくは55.00質量%以下、特に好ましくは52.00質量%以下である。Feの量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるNiの量は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体100質量%に対して、好ましくは33.00質量%以上、より好ましくは38.00質量%以上、更に好ましくは40.00質量%以上、特に好ましくは42.00質量%以上であり、好ましくは65.00質量%以下、より好ましくは60.00質量%以下、更に好ましくは54.00質量%以下、特に好ましくは49.00質量%以下である。Niの量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるFe及びNiの合計量は、(A)Fe-Ni-Si系合金磁性粉体100質量%に対して、好ましくは85質量%以上、より好ましくは87質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、特に好ましくは98質量%以下である。Fe及びNiの合計量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるFeの量とNiの量との質量比(Fe/Ni)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは1.0以上であり、好ましくは1.21以下、より好ましくは1.20以下、特に好ましくは1.19以下である。Feの量とNiの量との比(Fe/Ni)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体は、Fe、Ni及びSi以外の任意の元素を含んでいてもよい。任意の元素としては、例えば、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の製造方法に応じて不可避的に混入しうる不純物に由来する元素が挙げられる。任意の元素の具体例としては、P、S、Mn、Mo、Cu及びCoが挙げられる。ただし、本発明の効果を顕著に発揮する観点では、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体は、Fe、Ni、Si及びCr以外の任意の元素を含まないことが好ましい。よって、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体は、Fe、Ni、Si、及びCrのみを含むことが好ましい。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に含まれるFe、Ni、Si、及びCrの量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えば、アジレント・テクノロジー社製「ICP-OES 720ES」)により測定できる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)が前記下限値以上である場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体を取り扱う上での安全性の点で、好ましい。さらに、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)が前記下限値以上である場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体と(B)熱硬化性樹脂を含む樹脂成分とを高い均一性で混合できるので、凝集による(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の偏在化を効果的に抑制できる。よって、硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)の上限は、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、特に好ましくは7μm以下である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)が前記上限値以下である場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の粒子は小さいものであることができる。したがって、巨大粒子による大きな渦電流損失の発生を抑制できるから、磁性損失を効果的に抑制することができる。この作用は、特に(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の量が大きい場合に有効である。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径(D50)は、別に断らない限り、体積基準のメジアン径を表す。この平均粒径(D50)は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒径分布を体積基準で作成し、そのメジアン径を平均粒径(D50)とすることで測定することができる。測定サンプルは、粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の比表面積は、好ましくは0.05m/g以上、より好ましくは0.1m/g以上、さらに好ましくは0.5m/g以上であり、好ましくは20m/g以下、より好ましくは10m/g以下、さらに好ましくは5m/g以下である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の比表面積が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。具体的には、比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM Model 1210」)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定できる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の粒子は、球状であることが好ましい。本発明者の検討によれば、Siを含む(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の粒子は、通常、Si及びCrを含まないFeNi合金粉の粒子に比べて、表面に凹凸の少ない形状を有することができ、よって球に近い形状を有することができる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の粒子の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)は、好ましくは2以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体のアスペクト比が前記の範囲にある場合、磁性損失を抑制したり、樹脂組成物の溶融粘度を低くしたりできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の製造方法に制限はない。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体は、例えば、アトマイズ法を用いて製造できる。このアトマイズ法では、通常、溶解した鉄、ニッケル、Si及びCrを含む浴湯を落下させながら、高圧の水又はガスを吹き付けて急冷凝固させることを含む方法により、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体を得る。前記のアトマイズ法の中でも、落下する浴湯に水を吹き付ける水アトマイズ法が好ましい。このようなアトマイズ法としては、例えば、特開2018-178254号公報に記載の方法を採用しうる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の含有量(体積%)は、樹脂組成物に含まれる不揮発成分100体積%に対して、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、特に好ましくは50体積%以上であり、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、特に好ましくは70体積%以下である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。また、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の量が前記範囲の上限値以下である場合、通常は、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くして容易にペースト状にできる。
樹脂組成物に含まれる各成分の体積基準の量(体積%)は、樹脂組成物に含まれる成分の質量から計算によって求められる。具体的には、質量を比重で割り算して各成分の体積を求め、そうして求めた各成分の体積から計算により体積基準の量(体積%)を求めることができる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の含有量(質量%)は、樹脂組成物に含まれる不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。また、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の量が前記範囲の上限値以下である場合、通常は、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くして容易にペースト状にできる。
樹脂組成物に含まれる磁性粉体の合計量は、通常、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体及び後述する(C)任意の磁性粉体の合計量で表される。この樹脂組成物に含まれる磁性粉体の合計量(体積%)は、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは50体積%以上、より好ましくは60体積%以上、更に好ましくは65体積%以上、特に好ましくは70体積%以上であり、好ましくは90体積%以下、より好ましくは86体積%以下、特に好ましくは82体積%以下である。磁性粉体の合計量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。また、磁性粉体の合計量が前記範囲の上限値以下である場合、通常は、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くして容易にペースト状にできる。
樹脂組成物に含まれる磁性粉体の合計量は、通常、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体及び後述する(C)任意の磁性粉体の合計量で表される。この樹脂組成物に含まれる磁性粉体の合計量(質量%)は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。磁性粉体の合計量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。また、磁性粉体の合計量が前記範囲の上限値以下である場合、通常は、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くして容易にペースト状にできる。
<(B)熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、(B)成分として(B)熱硬化性樹脂を含む。(B)熱硬化性樹脂は、通常、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体等の磁性粉体を結着することができる。また、(B)熱硬化性樹脂は、通常、熱によって反応して結合を生じ、硬化することができる。よって、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体及び(B)熱硬化性樹脂を組み合わせて含む樹脂組成物を硬化することにより硬化物を得ることができる。この硬化物は、比透磁率及び磁性損失に優れるから、優れた磁性層を形成することができる。
(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂などが挙げられる。(B)熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)熱硬化性樹脂は、(B-1)エポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B-1)エポキシ樹脂は、分子中に1個以上のエポキシ基を有する樹脂を表す。(B)熱硬化性樹脂が(B-1)エポキシ樹脂を含む場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の分散性を高めたり、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にしたりできる。
(B-1)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;イソシアヌラート型エポキシ樹脂;アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン構造含有エポキシ樹脂;等が挙げられる。(B-1)エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B-1)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B-1)エポキシ樹脂の総量100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
(B-1)エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましい。2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合、1種類以上のエポキシ樹脂が芳香族構造を有することが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。
(B-1)エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(B-1)エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂のみでもよく、固体状エポキシ樹脂のみでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との組み合わせであってもよい。中でも、(B-1)エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂を含むことが好ましく、液状エポキシ樹脂のみを含むことが特に好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン構造含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製「YX7400」;DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX-1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX-1658」、「ZX-1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);等が挙げられる。液状エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。固体状エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との質量比(液状エポキシ樹脂/個体状エポキシ樹脂)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。
(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
樹脂組成物に含まれる(B-1)エポキシ樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(B-1)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(B-1)エポキシ樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。(B-1)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(B)熱硬化性樹脂が(B-1)エポキシ樹脂を含む場合、(B)熱硬化性樹脂は、(B-1)エポキシ樹脂と反応して結合しうる樹脂を含んでいてもよい。(B-1)エポキシ樹脂と反応して結合しうる樹脂を、以下「(B-2)硬化剤」ということがある。(B-2)硬化剤としては、例えば、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、アミン系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、チオール系樹脂などが挙げられる。(B-2)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、フェノール系樹脂が好ましい。
フェノール系樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する樹脂を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
フェノール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上の活性エステル基を有する化合物を用いうる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB-9416-70BK」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
アミン系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する樹脂を用いうる。アミン系樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
カルボジイミド系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する樹脂を用いうる。カルボジイミド系樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
酸無水物系樹脂としては、1分子中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂を用いることができ、1分子中に2個以上の酸無水物基を有する樹脂が好ましい。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」、「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」;昭和高分子社製の「HFB2006M」等が挙げられる。
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
チオール系樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(B-2)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの(B-2)硬化剤の質量を表す。
(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B-2)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。(B-2)硬化剤の活性基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ基数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。さらに、(B-2)硬化剤の活性基数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を活性基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
樹脂組成物に含まれる(B-2)硬化剤の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(B-2)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(B-2)硬化剤の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。(B-2)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(B)熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、通常、上述した(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量の範囲と同じでありうる。
樹脂組成物に含まれる(B)熱硬化性樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(B)熱硬化性樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体及び(B)熱硬化性樹脂の合計量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下、又は85質量%以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の溶融粘度を低くできるとともに、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
<(C)任意の磁性粉体(Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の磁性粉体)>
樹脂組成物は、上述した(A)~(B)成分に組み合わせて、任意の成分として(C)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の磁性粉体を更に含んでいてもよい。この(C)成分としての「(C)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の磁性粉体」を、適宜「(C)任意の磁性粉体」ということがある。
(C)任意の磁性粉体としては、1より大きい比透磁率を有する材料の粒子を用いうる。(C)任意の磁性粉体の材料は、通常は無機材料であり、軟磁性材料であってもよく、硬磁性材料であってもよい。また、(C)任意の磁性粉体の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、(C)任意の磁性粉体は、軟磁性粉体であってもよく、硬磁性粉体であってもよく、軟磁性粉体及び硬磁性粉体の組み合わせであってもよい。また、(C)任意の磁性粉体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(C)任意の磁性粉体は、軟磁性粉体を含むことが好ましく、軟磁性粉体のみを含むことがより好ましい。
(C)任意の磁性粉体としては、例えば、磁性金属酸化物粉体、磁性金属粉体が挙げられる。
磁性金属酸化物粉体としては、例えば、フェライト系の磁性粉体;並びに、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄粉などの酸化鉄粉体;などが挙げられる。中でも、フェライト系の磁性粉体が好ましい。よって、(C)任意の磁性粉体は、フェライト系の磁性粉体を含むことが好ましい。一例においては、(C)任意の磁性粉体として、フェライト系の磁性粉体のみを用いてもよい。フェライト系の磁性粉体は、通常、酸化鉄を主成分とする複合酸化物からなり、化学的に安定している。よって、フェライト系の磁性粉体によれば、耐食性が高く、発火の危険性が低く、減磁し難い等の利点が得られる。
フェライト系の磁性粉体としては、例えば、Fe-Mn系フェライト粉体、Fe-Mn-Zn系フェライト粉体、Fe-Mn-Mg系フェライト粉体、Fe-Mn-Mg-Sr系フェライト粉体、Fe-Mg-Zn系フェライト粉体、Fe-Mg-Sr系フェライト粉体、Fe-Zn-Mn系フェライト粉体、Fe-Cu-Zn系フェライト粉体、Fe-Ni-Zn系フェライト粉体、Fe-Ni-Zn-Cu系フェライト粉体、Fe-Ba-Zn系フェライト粉体、Fe-Ba-Mg系フェライト粉体、Fe-Ba-Ni系フェライト粉体、Fe-Ba-Co系フェライト粉体、Fe-Ba-Ni-Co系フェライト粉体、Fe-Y系フェライト粉体等が挙げられる。
フェライト系の磁性粉体の中でも、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体が好ましい。よって、(C)任意の磁性粉体は、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体を含むことが好ましい。一例においては、(C)任意の磁性粉体として、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体のみを用いてもよい。このように好ましいフェライト系の磁性粉体としては、例えば、Fe-Mn系フェライト粉体、Fe-Mn-Zn系フェライト粉体、Fe-Mn-Mg系フェライト粉体、Fe-Mn-Mg-Sr系フェライト粉体、Fe-Mg-Zn系フェライト粉体、Fe-Zn-Mn系フェライト粉体、Fe-Cu-Zn系フェライト粉体、Fe-Ni-Zn系フェライト粉体、Fe-Ni-Zn-Cu系フェライト粉体、Fe-Ba-Zn系フェライト粉体、Fe-Ba-Ni系フェライト粉体、Fe-Ba-Ni-Co系フェライト粉体が挙げられる。その中でも、Zn及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体が更に好ましく、Zn及びMnを含むフェライト系の磁性粉体が特に好ましい。よって、フェライト系の磁性粉体としては、Fe-Mn-Zn系フェライト粉体、Fe-Mn系フェライト粉体が好ましく、Fe-Mn-Zn系フェライト粉体が特に好ましい。Fe-Zn-Mn系フェライト粉体は、Fe、Zn及びMnを含むフェライト粉体を表し、Fe-Mn系フェライト粉体は、Fe、及びMnを含むフェライト粉体を表す。
磁性金属粉体としては、例えば、純鉄粉体;Fe-Mn-Zn系合金粉体、Fe-Si系合金粉体、Fe-Mn系合金粉体、Fe-Si-Al系合金粉体、Fe-Cr系合金粉体、Fe-Cr-Si系合金粉体、Fe-Ni-Cr系合金粉体、Fe-Cr-Al系合金粉体、Fe-Ni系合金粉体、Fe-Ni-B系合金粉体、Fe-Ni-Mo系合金粉体、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉体、Fe-Co系合金粉体、Fe-Ni-Co系合金粉体、Co基アモルファス合金粉体等の、結晶質又は非晶質の合金磁性粉体;などが挙げられる。中でも、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の合金磁性粉体が好ましい。よって、(C)任意の磁性粉体は、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の合金磁性粉体を含むことが好ましい。一例においては、(C)任意の磁性粉体として、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の合金磁性粉体のみを用いてもよい。更には、合金磁性粉体の中でも、鉄合金系粉体がより好ましい。
特に好ましい磁性金属粉体としては、Feと、Si及びCrからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素とを含む鉄合金系磁性粉体が好ましく、Fe-Cr-Si系合金粉体が特に好ましい。Fe-Cr-Si系合金粉体はFe、Cr及びSiを含む合金粉体を表す。
(C)任意の磁性粉体としては、市販の磁性粉体を用いてもよい。市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「MZ03S」、「M03S」、「M05S」、「M001」「MZ05S」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「CVD鉄粉0.7μm」、「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」;DOWAエレクトロニクス社製「MA-RCO-5」;等が挙げられる。(C)任意の磁性粉体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)任意の磁性粉体は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。(C)任意の磁性粉体が(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体よりも小さい平均粒径を有する場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の粒子同士の間隙に(C)任意の磁性粉体が入り込めるので、磁性粉体の高充填が可能となり、よって、比透磁率等の磁気特性を良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径に対する(C)任意の磁性粉体の平均粒径の比((C)任意の磁性粉体の平均粒径/(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径)は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、前記の比((C)任意の磁性粉体の平均粒径/(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、特に好ましくは0.05以上であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.3以下である。比((C)任意の磁性粉体の平均粒径/(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(C)任意の磁性粉体の平均粒径の具体的な範囲は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(C)任意の磁性粉体の平均粒径が前記下限値以上である場合、樹脂組成物の粘度を低くできる。また、上限値以下である場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(C)任意の磁性粉体の平均粒径は、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の平均粒径と同じ方法により測定できる。
(C)任意の磁性粉体の比表面積は、好ましくは(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体の比表面積より大きい。(C)任意の磁性粉体の比表面積の具体的な範囲は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは1.0m/g以上、特に好ましくは2m/g以上であり、好ましくは40m/g以下、より好ましくは30m/g以下、特に好ましくは20m/g以下である。
(C)任意の磁性粉体の粒子は、球状又は楕円体状の粒子であることが好ましい。(C)任意の磁性粉体の粒子の長軸の長さを短軸の長さで割り算した比(アスペクト比)は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下であり、通常1.0以上である。一般に、磁性粉体の粒子の形状が、球状ではない扁平な形状であると、比透磁率を向上させやすい。他方、磁性粉体の粒子の形状が、球状に近いと、磁性損失を低くしやすい。
(C)任意の磁性粉体の真比重は、例えば、4g/cm~10g/cmでありうる。
樹脂組成物に含まれる(C)任意の磁性粉体の量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、0体積%でもよく、0体積%より大きくてもよく、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、特に好ましくは10体積%以上であり、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下である。(C)任意の磁性粉体の量(体積%)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(C)任意の磁性粉体の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。(C)任意の磁性粉体の量(質量%)が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体と(C)任意の磁性粉体とを組み合わせて用いる場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に対する(C)任意の磁性粉体の体積比((C)成分/(A)成分)は特定の範囲にあることが好ましい。前記の体積比((C)成分/(A)成分)は、具体的には、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。体積比((C)成分/(A)成分)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体と(C)任意の磁性粉体とを組み合わせて用いる場合、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体に対する(C)任意の磁性粉体の質量比((C)成分/(A)成分)は特定の範囲にあることが好ましい。前記の質量比((C)成分/(A)成分)は、具体的には、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。質量比((C)成分/(A)成分)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
<(D)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、上述した(A)~(C)成分に組み合わせて、任意の成分として(D)熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)熱可塑性樹脂には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)熱可塑性樹脂によれば、樹脂組成物の硬化物の機械特性を効果的に改善できる。
(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(D)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
(D)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上である。上限は、特段の制限はなく、例えば、100万以下、50万以下、10万以下などでありうる。
樹脂組成物に含まれる(D)熱可塑性樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。(D)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(D)熱可塑性樹脂の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(D)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
<(E)分散剤>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分に組み合わせて、任意の成分として(E)分散剤を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)分散剤には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。(E)分散剤によれば、(A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体及び(C)任意の磁性粉体等の磁性粉体の分散性を高めることができる。
(E)分散剤の種類に制限はない。例えば、(E)分散剤としては、磁性粉体に対して吸着能を有する官能基を含有し、且つ、磁性粉体に吸着した場合に(E)分散剤同士の反発(例えば、静電反発、立体反発、等)により磁性粉体を分散させるものを用いうる。このような(E)分散剤としては、例えば、酸性分散剤、塩基性分散剤などが挙げられる。
酸性分散剤は、通常、カルボキシル基、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホノ基(-PO(OH))、ホスホノオキシ基(-OPO(OH))、ヒドロキシホスホリル基(-PO(OH)-)、スルファニル基(-SH)等の酸性官能基を含有する。酸性官能基は、通常、解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよい。好ましい酸性分散剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖、ポリエーテル鎖等の高分子鎖を含有する酸性高分子分散剤が挙げられる。酸性分散剤の好ましい例としては、日油社製の「C-2093I」、「SC-1015F(主鎖にイオン性基、グラフト鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマー)」;楠本化成社製の「ED152」、「ED153」、「ED154」、「ED118」、「ED174」、「ED251」、「DA-375」(ポリエーテル型リン酸エステル系分散剤);東邦化学工業社製「フォスファノール」シリーズの「RS-410」、「RS-610」、「RS-710」(pHは1.9)(リン酸エステル系分散剤);日油社製「マリアリム」シリーズの「AKM-0531」、「AFB-1521」、「SC-0505K」、「SC-0708A」;が挙げられる。
塩基性分散剤は、通常、第一級、第二級及び第三級アミノ基;アンモニウム基;イミノ基;並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基;等の塩基性官能基を含有する。塩基性官能基は、有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。好ましい塩基性分散剤としては、例えば、ポリエステル鎖等の高分子鎖を含有する塩基性高分子分散剤が挙げられる。塩基性分散剤の好ましい例としては、味の素ファインテクノ社製の「PB-881」(ポリエステル鎖を含有するポリアミン系分散剤)などが挙げられる。
(E)分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物に含まれる(E)分散剤の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。(E)分散剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
樹脂組成物に含まれる(E)分散剤の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20量%以下である。(E)分散剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の比透磁率及び磁性損失を効果的に良好にできる。
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分に組み合わせて、任意の成分として(F)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)硬化促進剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)硬化促進剤は、(B)熱硬化性樹脂の反応の触媒としての機能を有するので、樹脂組成物の硬化を促進することができる。
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤等が挙げられる。(F)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(F)硬化促進剤としては、リン系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤が好ましく、リン系硬化促進剤がより好ましい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、ホスホニウム塩及びホスフィンが挙げられる。ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩等が挙げられる。
ホスフィンとしては、例えば、トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物等が挙げられる。
リン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、北興化学工業社製の「TBP-DA」等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」;四国化成工業社製の「キュアゾール2MZ」、「2E4MZ」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「Cl1Z-A」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2MZA-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「1B2PZ」、「1B2PZ-10M」、等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「PN-50」、「PN-23」、「MY-25」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
樹脂組成物に含まれる(F)硬化促進剤の量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
樹脂組成物に含まれる(F)硬化促進剤の量(質量%)は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
(B)成分、(E)成分、及び(F)成分の合計含有量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましく2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
<(G)任意の添加剤>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分に組み合わせて、任意の成分として、(G)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。この(G)成分としての(G)任意の添加剤には、上述した(A)~(F)成分に該当するものは含めない。
(G)任意の添加剤としては、例えば、マレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、ポリブタジエン系ラジカル重合性化合物等のラジカル重合性化合物;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;シリカ粒子等の無機充填材;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(G)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<(H)溶剤>
樹脂組成物は、上述した(A)~(G)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に、揮発性成分として(H)溶剤を含んでいてもよい。
(H)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。(H)溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(H)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(H)溶剤の量は、樹脂組成物の溶融粘度を適切な範囲に調整できるように設定することが好ましい。樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(H)溶剤の量は、例えば、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下でありうる。中でも、樹脂組成物は、(H)溶剤を含まないことが特に好ましい。(H)溶剤の量が少ない場合、(H)溶剤の揮発によるボイドの発生を抑制することができる。さらに、樹脂組成物の取扱い性及び作業性を改善することができる。
<樹脂組成物の特性>
上述した樹脂組成物は、熱によって硬化できる。よって、樹脂組成物を熱硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(H)溶剤等の揮発成分は、熱硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(G)成分といった不揮発成分は、熱硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
本実施形態に係る樹脂組成物によれば、溶融粘度が低く、比透磁率が高く、磁性損失が低い硬化物を得ることができる。通常、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、Si及びCrを含まないFe-Ni系合金磁性粉を含む従来の樹脂組成物の硬化物、及びCrを含まないFe-Ni-Si系合金磁性粉を含む従来の樹脂組成物と比べて、溶融粘度が低い。
よって、前記の樹脂組成物によれば、高い比透磁率を有する硬化物を得ることができる。例えば、樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物の比透磁率を測定周波数20MHz、室温23℃の条件で測定した場合、当該比透磁率は、好ましくは23以上、より好ましくは23.5以上、特に好ましくは24以上である。比透磁率の上限は、特段の制限は無く、例えば、35以下、又は30以下以下等としうる。硬化物の比透磁率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
また、前記の樹脂組成物によれば、低い磁性損失を有する硬化物を得ることができる。磁性損失は、損失係数tanδによって表すことができ、通常、損失係数tanδが小さいほど、磁性損失が小さいことを表す。例えば、樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物の損失係数tanδを測定周波数20MHz、室温23℃の条件で測定した場合、当該損失係数tanδは、好ましくは0.04以下、より好ましくは0.038以下、特に好ましくは0.035以下である。損失係数の下限は、特段の制限は無く、例えば、0.00001以上等とし得る。硬化物の損失係数tanδは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
前記の樹脂組成物は、溶融粘度が低いという特性を示す。よって、樹脂組成物を溶剤等で溶解させなくても、ホール内に樹脂組成物を充填させやすくすることが可能になる。溶融粘度は、好ましくは30000poise以下、より好ましくは25000poise以下、さらに好ましくは23000poise以下である。上限は特段の制限は無く、例えば、100poise以上等とし得る。溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
Fe及びNiを含む合金粉のような結晶性合金粉は、一般に、高い比透磁率を有することができる一方で、磁性損失が大きい傾向があった。また、溶融粘度が高くなる傾向にあった。よって、従来は、樹脂組成物の溶融粘度が低く、比透磁率が高く且つ磁性損失が小さい硬化物を得ることが困難であった。このような従来の事情に鑑みると、本発明の効果は、工業上、有益である。
樹脂組成物の性状に特段の制限は無い。よって、樹脂組成物は、固体状であってもよく、流動性を有するペースト状であってもよい。例えば、樹脂組成物は、溶剤を用いて、ペースト状の樹脂組成物としてもよいし、液状のエポキシ樹脂等の液状熱硬化性樹脂を使用することにより、溶剤を含まないペースト状の樹脂組成物としてもよい。樹脂組成物中の溶剤の含有量が少ない場合、及び、溶剤を含まない場合には、溶剤の揮発によるボイドの発生を抑制することができ、さらに取扱い性、作業性にも優れたものとすることができる。
上述した優れた特性を活用して、樹脂組成物は、インダクタ製造用の樹脂組成物として用いることが好ましい。例えば、上述した樹脂組成物は、回路基板が備える基板のホールに充填されるためのホール充填用の樹脂組成物として用いることが好ましい。また、例えば、上述した樹脂組成物は、回路基板に硬化物層を形成するために用いることも好ましい。これらの用途への適用を容易にするため、樹脂組成物は、ペースト状の形態で用いてもよく、該樹脂組成物の層を含む樹脂シートの形態で用いてもよい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。さらに、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
<磁性ペースト>
本発明の一実施形態に係る磁性ペーストは、上述した樹脂組成物を含む。磁性ペーストは、通常、樹脂組成物を含む流体状のペーストであるので、印刷法によるホールの充填に好ましく用いうる。この磁性ペーストは、上述した樹脂組成物のみを含んでいてもよく、樹脂組成物に組み合わせて任意の成分を含んでいてもよい。好ましくは、ペースト状の樹脂組成物それ自体を、磁性ペーストとして用いることができる。
磁性ペーストは、23℃においてペースト状であることが好ましい。この磁性ペーストの粘度は、23℃にいて、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは25Pa・s以上、更に好ましくは30Pa・s以上、特に好ましくは50Pa・s以上であり、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは180Pa・s以下、更に好ましくは160Pa・s以下である。粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、3°×R9.7ロータ)を用いて、測定サンプル量0.22ml、回転数5rpmの測定条件にて測定できる。
<樹脂シート>
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含む。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、例えば、5μm以上、10μm以上などでありうる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料のフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料のフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、シリコーン系離型剤又はアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを設けることにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。必要に応じて樹脂組成物に有機溶剤を混合してから支持体上に塗布してもよい。有機溶剤を用いる場合、必要に応じて塗布後に乾燥を行ってもよい。
乾燥は、例えば、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中に含まれる成分によっても異なるが、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
<回路基板及びその製造方法>
回路基板は、上述した樹脂組成物の硬化物を含む。回路基板の具体的な構造は、樹脂組成物の硬化物を含む限り、制限は無い。第一の例に係る回路基板は、ホールを有する基板と、前記ホールに充填された樹脂組成物の硬化物とを備える。また、第二の例に係る回路基板は、樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える。以下、これら第一の例及び第二の例に係る回路基板の製造方法を説明する。ただし、回路基板及びその製造方法は、以下に例示する第一の例及び第二の例に限定されない。
<第一の例に係る回路基板>
第一の例に係る回路基板は、ホールが形成された基板と、前記のホールに充填された樹脂組成物の硬化物と、を含む。この回路基板は、例えば、
(1)基板のホールに樹脂組成物を充填する工程、及び、
(2)樹脂組成物を熱硬化させ、硬化物を得る工程、
を含む製造方法によって、製造できる。また、第一の例に係る回路基板の製造方法は、更に、
(3)硬化物又は樹脂組成物の表面を研磨する工程
(4)硬化物に粗化処理を施す工程、及び、
(5)硬化物上に導体層を形成する工程、
を含んでいてもよい。通常、前記の工程(1)~(5)は、工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)及び工程(5)の順で行ってもよく、工程(3)の後に工程(2)を行ってもよい。第一の例に係る回路基板の製造方法では、ペースト状の樹脂組成物を用いて硬化物を形成することが好ましい。以下の説明では、基板を厚み方向に貫通するホールとしてのスルーホールを形成された基板を用いた例を示して、説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、通常、スルーホールが形成された基板を用意する工程を含む。基板は、市場から購入して用意してもよい。また、基板は、適切な材料を用いて製造して用意してもよい。以下、一例に係る基板の製造方法を説明する。
図1は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において用意されるコア基板10を模式的に示す断面図である。基板を用意する工程は、図1に示す例のように、コア基板10を用意する工程を含んでいてもよい。コア基板10は、通常、支持基板11を含む。支持基板11としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。また、該支持基板11上には、金属層が設けられていてもよい。金属層は、支持基板11の片面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。ここでは、支持基板11の両表面に金属層12及び13が設けられた例を示す。金属層12及び13としては、銅等の金属によって形成された層が挙げられる。金属層12及び13は、例えば、キャリア付銅箔等の銅箔であってもよく、後述する導体層の材料で形成された金属層であってもよい。
図2は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、スルーホール14を形成されたコア基板10を模式的に示す断面図である。基板を用意する工程は、図2に示す例のように、コア基板10にスルーホール14を形成する工程を含んでいてもよい。スルーホール14は、例えば、ドリル加工、レーザー照射、プラズマ照射等の方法により形成することができる。通常は、コア基板10に貫通穴を形成することにより、スルーホール14を形成することができる。具体例を挙げると、スルーホール14の形成は、市販されているドリル装置を用いて実施することができる。市販されているドリル装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「ND-1S211」等が挙げられる。
図3は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、スルーホール14内にめっき層20を形成されたコア基板10を模式的に示す断面図である。基板を用意する工程は、必要に応じてコア基板10に粗化処理を施した後、図3に示すようにめっき層20を形成する工程を含んでいてもよい。前記の粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。めっき層20は、めっき法により形成されうる。めっき法によりめっき層20が形成される手順は、後述する工程(5)における導体層の形成と同じでありうる。ここでは、スルーホール14内、金属層12の表面、及び、金属層13の表面にめっき層20を形成した例を示して説明する。
図4は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法において、コア基板10のスルーホール内に樹脂組成物30aを充填した様子を模式的に示す断面図である。工程(1)は、前記のようにスルーホール14を形成されたコア基板10を用意した後で、図4に示すように、コア基板10のスルーホール14に、樹脂組成物30aを充填することを含む。充填は、例えば印刷法で行いうる。印刷法としては、例えば、スキージを介してスルーホール14へ樹脂組成物30aを印刷する方法、カートリッジを介して樹脂組成物30aを印刷する方法、マスク印刷して樹脂組成物30aを印刷する方法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
<工程(2)>
図5は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(2)を説明するための模式的な断面図である。工程(2)は、スルーホール14内に樹脂組成物30aを充填した後で、樹脂組成物30aを硬化して、図5に示すように硬化物30を形成することを含む。
樹脂組成物30aの硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物30aの熱硬化条件は、樹脂組成物30aの硬化が進行する範囲で、適切に設定しうる。硬化温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは110分以下、さらに好ましくは100分以下である。
工程(2)で得られる硬化物30の硬化度は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。硬化度は、例えば示差走査熱量測定装置を用いて測定できる。
第一の例に係る回路基板の製造方法は、樹脂組成物30aをスルーホール14に充填した後、樹脂組成物30aを硬化させる前に、樹脂組成物30aを硬化温度よりも低い温度で加熱する工程(予備加熱工程)を含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物30aを硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物30aを、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
<工程(3)>
図6は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(3)を説明するための模式的な断面図である。工程(1)においてスルーホール14に樹脂組成物30aを充填したとき、余剰の樹脂組成物30aがスルーホール14の外に突出又は付着することがありうる。よって、樹脂組成物30aは、スルーホール14内だけでなく、スルーホール14の外にも設けられうる。そこで、工程(3)は、図6に示すように、コア基板10から突出又は付着している余剰の硬化物30を研磨することを含む。研磨により、余剰の硬化物30が除去されるので、硬化物30の表面を平坦化することができる。また、研磨によって平坦化された硬化物30の表面(研磨面)31は、通常、当該研磨面31の周囲の面21(例えば、コア基板10の表面、めっき層20の表面)と面一な平面を形成しうる。
硬化物30の研磨方法としては、コア基板10から突出又は付着している余剰の硬化物30を除去できる方法を採用しうる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨、セラミック研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては、例えば、石井表記社製「NT-700IM」等が挙げられる。
硬化物30の研磨面31(硬化後の面)の算術平均粗さ(Ra)としては、導体層との間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
第一の例に係る回路基板の製造方法は、工程(3)の後で、硬化物30の硬化度をさらに高めるために、硬化物30に熱処理を施す工程を含んでいてもよい。前記の熱処理における温度は、上記した硬化温度に準じうる。具体的な熱処理温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
また、工程(2)の前に工程(3)を行う場合、工程(3)の前に、樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。前記予備加熱処理における温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
<工程(4)>
工程(4)は、硬化物30に粗化処理(デスミア処理)を施すことを含む。粗化処理により、硬化物30の表面が粗化される。硬化物30の表面が研磨されている場合は、通常、その研磨面31に粗化処理(デスミア処理)を施すことを含む。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、例えば、多層プリント配線板の製造方法に際して使用される手順、条件を採用することができる。具体例を挙げると、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施することにより、硬化物30に粗化処理を施すことができる。
粗化工程に用いられうる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。膨潤液であるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。
膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に硬化物30を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。硬化物30に含まれる樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に硬化物30を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
酸化剤による粗化処理に用いられうる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤の溶液に硬化物30を10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%とすることが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和処理に用いられうる中和液としては、酸性の水溶液が好ましい。中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた硬化物30を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
硬化物30の表面の粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)としては、導体層との間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
<工程(5)>
図7は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。工程(5)は、図7に示すように、硬化物30の研磨面31上に導体層40を形成することを含む。ここでは、硬化物30の研磨面31だけでなく、その周囲の面21(例えば、コア基板10の表面、めっき層20の表面)にも導体層40を形成した例を示す。また、図7では、コア基板10の両側に導体層40を形成した例を示すが、導体層40は、コア基板10の片側のみに形成してもよい。
図8は、本発明の一実施形態の第一の例に係る回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。図8に示すように、工程(5)は、導体層40を形成した後、エッチング等の処理により、導体層40、金属層12、金属層13、及びめっき層20の一部を除去して、パターン導体層41を形成することを含んでいてもよい。
導体層40の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって硬化物30(及びめっき層20)の表面にめっきして、所望の配線パターンを有するパターン導体層41を形成しうる。導体層40の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
ここで、硬化物30の研磨面31上にパターン導体層41を形成する方法の例を、詳細に説明する。硬化物30の研磨面31に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成する。その後、必要に応じて、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有するパターン導体層41を形成できる。パターン導体層41の形成後、パターン導体層41の密着強度を向上させるために、必要に応じてアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、150~200℃で20~90分間加熱することにより行うことができる。
パターン導体層41の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
以上の方法により、樹脂組成物30aの硬化物30を含む回路基板1を製造することができる。
<第二の例に係る回路基板>
第二の例に係る回路基板は、樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を含む。硬化物層は、好ましくは、樹脂組成物の硬化物のみを含む。硬化物層は、樹脂シートを用いて形成することが好ましい。この回路基板は、例えば、
(i)内層基板上に硬化物層を形成する工程、
(ii)硬化物層に穴あけ加工を行う工程、
(iii)硬化物層の表面を粗化処理する工程、及び
(iv)硬化物層の面に導体層を形成する工程、
を含む製造方法によって、製造できる。
<工程(i)>
工程(i)は、内層基板上に硬化物層を形成することを含む。好ましくは、工程(i)は、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、硬化物層を形成することを含む。例えば、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して硬化物層を形成する。
図9は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(i)を説明するための模式的な断面図である。図9に示すように、支持体330と、この支持体330上に設けられた樹脂組成物層320aとを含む樹脂シート310を用意する。そして、樹脂組成物層320aが内層基板200と接合するように、樹脂シート310と内層基板200とを積層する。
内層基板200としては、絶縁性の基板を用いうる。内層基板200としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。内層基板200は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
本例に示す内層基板200は、第1主表面200a上に設けられた第1導体層420と、第2主表面200b上に設けられた外部端子240とを備える。第1導体層420は、複数の配線を含んでいてもよい。ただし、図9に示す例では、インダクタ素子のコイル状導電性構造体400(図12参照)を構成する配線のみが示されている。外部端子240は、図示されていない外部の装置等と電気的に接続するための端子でありうる。外部端子240は、第2主表面200bに設けられる導体層の一部として構成することができる。
第1導体層420、及び外部端子240を構成し得る導体材料としては、例えば、第一の例で説明した導体層の材料と同じものが挙げられる。
第1導体層420、及び外部端子240は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。また、第1導体層420、外部端子240の厚さは、後述する第2導体層440と同じでありうる。
第1導体層420及び外部端子240のライン(L)/スペース(S)比は特に制限されないが、表面の凹凸を減少させて平滑性に優れる硬化物層を得る観点から、通常900/900μm以下、好ましくは700/700μm以下、より好ましくは500/500μm以下、さらに好ましくは300/300μm以下、さらにより好ましくは200/200μm以下である。ライン/スペース比の下限は特に制限されないが、スペースへの樹脂組成物層の埋め込みを良好にする観点から、好ましくは1/1μm以上である。
内層基板200は第1主表面200aから第2主表面200bに至るように内層基板200を貫通する複数のスルーホール220を有していてもよい。スルーホール220にはスルーホール内配線220aが設けられている。スルーホール内配線220aは、第1導体層420と外部端子240とを電気的に接続している。
樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、例えば、支持体330側から、樹脂シート310を内層基板200に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シート310を内層基板200に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(ステンレス(SUS)鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シート310に直接的に接触させてプレスするのではなく、内層基板200の表面の凹凸に樹脂シート310が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材からなるシート等を介してプレスするのが好ましい。
加熱圧着する際の温度は、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは90℃~140℃、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲であり、加熱圧着する際の圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着する際の時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。樹脂シートと内層基板との接合は、圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施することが好ましい。
樹脂シート310の樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
樹脂シート310と内層基板200との接合の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体330側からプレスすることにより、積層された樹脂シート310の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
図10は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(i)を説明するための模式的な断面図である。樹脂シート310を内層基板200に積層した後、樹脂組成物層320aを硬化して硬化物層を形成する。本例では、図10に示すように、内層基板200に接合させた樹脂組成物層320aを熱硬化し第1硬化物層320を形成する。
樹脂組成物層320aの熱硬化条件は、樹脂組成物の硬化が進行する範囲で、適切に設定しうる。硬化温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは110分以下、さらに好ましくは100分以下である。
支持体330は、工程(i)の熱硬化後と工程(ii)との間に除去してもよく、工程(ii)の後に剥離してもよい。
硬化物層の粗化処理前の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
工程(i)は、樹脂シートの代わりに樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて内層基板200上に塗布し、熱硬化させることで硬化物層を形成してもよい。
<工程(ii)>
図11は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(ii)を説明するための模式的な断面図である。工程(ii)は、図11に示すように、第1硬化物層320に穴あけ加工をし、ビアホール360を形成することを含む。ビアホール360は、第1導体層420と、後述する第2導体層440とを電気的に接続するための経路を形成する。ビアホール360の形成は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
<工程(iii)>
工程(iii)において、ビアホールを形成した硬化物層の表面を粗化処理する。工程(iii)における粗化処理は、第一の例の工程(4)で説明したのと同じ方法で行いうる。
硬化物層の粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)としては、めっきとの間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
<工程(iv)>
図12は、本発明の一実施形態の第二の例に係る回路基板の製造方法において、工程(iv)を説明するための模式的な断面図である。図12に示すように、工程(iv)では、第1硬化物層320上に、第2導体層440を形成する。
第2導体層440を構成し得る導体材料としては、例えば、第一の例で説明した導体層の材料と同じものが挙げられる。
第2導体層440の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
第2導体層440は、めっきにより形成することができる。第2導体層440は、例えば、無電解めっき工程、マスクパターン形成工程、電解めっき工程、フラッシュエッチング工程を含むセミアディティブ法、フルアディティブ法等の湿式めっき法により形成されることが好ましい。湿式めっき法を用いて第2導体層440を形成することにより、所望の配線パターンを含む第2導体層440として形成することができる。なお、この工程により、ビアホール360内にビアホール内配線360aが併せて形成される。
第1導体層420及び第2導体層440は、例えば後述する図13~15に一例を示すように、渦巻状に設けられていてもよい。一例において、第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端はビアホール内配線360aにより第1導体層420の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端に電気的に接続されている。第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360aにより第1導体層420のランド420aに電気的に接続されている。よって第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360a、ランド420a、スルーホール内配線220aを経て外部端子240に電気的に接続される。
コイル状導電性構造体400は、第1導体層420の一部分である渦巻状の配線部、第2導体層440の一部分である渦巻状の配線部、第1導体層420の渦巻状の配線部と第2導体層440の渦巻状の配線部とを電気的に接続しているビアホール内配線360aにより構成されている。
工程(iv)後、さらに導体層上に硬化物層を形成する工程を行ってもよい。詳細は、図14に一例を示すように、第2導体層440及びビアホール内配線360aが形成された第1硬化物層320上に第2硬化物層340を形成する。第2硬化物層は既に説明した工程と同様の工程により形成してもよい。以上の方法により、樹脂組成物の硬化物で形成された第1硬化物層320及び第2硬化物層340を含む回路基板100を製造することができる。
<インダクタ基板>
インダクタ基板は、上述した回路基板を備える。このようなインダクタ基板は、上述した第一の例に係る回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、樹脂組成物の硬化物の周囲の少なくとも一部に導体によって形成されたインダクタパターンを有しうる。この場合、インダクタ基板は、例えば、金属層12、金属層13、めっき層20及びパターン導体層41の少なくとも一部で形成されたインダクタパターンと、このインダクタパターンに囲まれた硬化物30で形成された芯部とによって構成されるインダクタ素子を含みうる。このようなインダクタ基板は、例えば特開2016-197624号公報に記載のものを適用できる。
また、第二の例に係る回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、インダクタ基板は、硬化物層と、この硬化物層に少なくとも一部分が埋め込まれた導電性構造体とを有しうる。そして、このインダクタ基板は、導電性構造体と、硬化物層の厚さ方向に延在し、かつ導電性構造体に囲まれた硬化物層のうちの一部分とによって構成されるインダクタ素子を含みうる。
図13は、インダクタ基板が有する回路基板100をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。図14は、図13に示すII-II一点鎖線で示した位置で切断した回路基板100の切断端面を示す模式的な図である。図15は、インダクタ基板が含む回路基板100の第1導体層420の構成を説明するための模式的な平面図である。
回路基板100は、図13及び図14に一例として示されるように、複数の硬化物層(第1硬化物層320、第2硬化物層340)及び複数の導体層(第1導体層420、第2導体層440)を有する基板でありうる。よって、ここに示す例において、回路基板100は、ビルドアップ硬化物層及びビルドアップ導体層を有するビルドアップ配線板でありうる。また、回路基板100は、内層基板200を備えている。
図14に示すように、第1硬化物層320及び第2硬化物層340は一体的な硬化物層としてみることができる磁性部300を構成している。よってコイル状導電性構造体400は、磁性部300に少なくとも一部分が埋め込まれるように設けられている。すなわち、この例に示す回路基板100において、インダクタ素子はコイル状導電性構造体400と、磁性部300の厚さ方向に延在し、かつコイル状導電性構造体400に囲まれた磁性部300のうちの一部分である芯部によって構成されている。
図15に一例として示されるように、第1導体層420はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部と、スルーホール内配線220aと電気的に接続される矩形状のランド420aとを含んでいる。ここに示す例では、渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とランド420aを迂回する迂回部を含んでいる。また、第1導体層420の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり反時計回りに巻いている形状を有している。
同様に、第1硬化物層320上には第2導体層440が設けられている。第2導体層440はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部を含んでいる。図13又は図14では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とを含んでいる。図13又は図14では第2導体層44の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり時計回りに巻いている形状を有している。
上述したインダクタ基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
またかかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「%」及び「部」は、別途明示のない限り、「質量%」及び「質量部」を意味する。また、特に温度の指定が無い場合の温度条件は、室温(23℃)である。さらに、特に圧力の指定が無い場合の圧力条件は、常圧(1atm)である。
<実施例1:ワニス状樹脂組成物1の製造>
Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni46%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)を150.0質量部、磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)を30.0質量部、エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、エポキシ当量169g/eq.、真密度1.2g/cm)を3.7質量部、フェノール樹脂(DIC社製「LA-7054」、アミノトリアジン変性フェノールノボラック樹脂、不揮発成分60%のMEK溶液、水酸基当量125g/eq.、不揮発性分の真密度1.2g/cm)を4.2質量部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分30%のメチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1の溶液、特殊骨格フェノキシ樹脂、不揮発性分の真密度1.2g/cm)を1.1質量部、分散剤(味の素ファインテクノ社製「PB-881」、ポリエステル系分散剤、真密度1.2g/cm)を0.8質量部、及び硬化促進剤(四国化成工業社製「2E4MZ」、イミダゾール系硬化促進剤、真密度1.2g/cm)を0.1質量部、溶剤(メチルエチルケトン)6.7質量部で均一に分散して、ワニス状樹脂組成物1を調製した。
<実施例2:ワニス状樹脂組成物2の調製>
実施例1において、
1)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni46%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)の量を、150.0質量部から133.6質量部に変え、
2)磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)の量を、30.0質量部から40.0質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、ワニス状樹脂組成物2を調製した。
<実施例3:ワニス状樹脂組成物3の調製>
実施例1において、
1)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni46%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)の量を、150.0質量部から116.1質量部に変え、
2)磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)の量を、30.0質量部から51.4質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、ワニス状樹脂組成物3を調製した。
<実施例4:ワニス状樹脂組成物4の調製>
実施例1において、
1)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni46%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)の量を、150.0質量部から98.3質量部に変え、
2)磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)の量を、30.0質量部から61.7質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、ワニス状樹脂組成物4を調製した。
<実施例5:ワニス状樹脂組成物5の調製>
実施例2において、磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)40.0質量部を、磁性粉体(パウダーテック社製「M03S」、Mn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.0g/cm)40.0質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物5を調製した。
<実施例6:ワニス状樹脂組成物6の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-3Si-4Cr」、Fe47%、Ni46%、Si3%、Cr4%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物6を調製した。
<実施例7:ワニス状樹脂組成物7の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-0.2Si-3Cr」、Fe50.8%、Ni46%、Si0.2%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物7を調製した。
<実施例8:ワニス状樹脂組成物8の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-1Cr」、Fe52%、Ni46%、Si1.0%、Cr1.0%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物8を調製した。
<実施例9:ワニス状樹脂組成物9の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-6Cr」、Fe47%、Ni46%、Si1.0%、Cr6.0%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物9を調製した。
<比較例1:ワニス状樹脂組成物10の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-8Cr」、Fe45%、Ni46%、Si1.0%、Cr8.0%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物10を調製した。
<比較例2:ワニス状樹脂組成物11の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Si系合金磁性粉(エプソンアトミックス社製「50FE50%NI PF-5F」、Fe49%、Ni50%、Si0.4%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物11を調製した。
<比較例3:ワニス状樹脂組成物13の調製>
実施例2において、Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Ni-Mo系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-78Ni-5Mo」、Fe17%、Ni78%、Mo5%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.9g/cm)133.6質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物12を調製した。
<比較例4:ワニス状樹脂組成物14の調製>
実施例2において、
1)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉(三菱製鋼社製「AKT-PB-1Si-3Cr」、Fe50%、Ni4%、Si1%、Cr3%の合金、平均粒径(D50)5μm、真密度8.0g/cm)133.6質量部を、Fe-Si-Cr系合金磁性粉(エプソンアトミックス社製「AW2-08PF3F」、Fe-Si-Crの合金、平均粒径(D50)3.5μm、真密度7.0g/cm)100.0質量部に変え、
2)磁性粉体(パウダーテック社製「MZ03S」、Mn-Zn系フェライト粉、平均粒径(D50)0.5μm、真密度5.1g/cm)の量を、40.0質量部から51.4質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして、ワニス状樹脂組成物13を調製した。
<樹脂シートの製造>
アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を支持体として用意した。実施例及び比較例で作製したワニス状樹脂組成物(樹脂ワニス)を支持体上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、90℃にて5分間乾燥し樹脂シートを得た。
<シート状硬化体の製造>
樹脂シートを200mm角に切り取った。切り取った樹脂シート(200mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層がポリイミドフィルム(宇部興産社製「ユーピレックス25S」、25μm厚、240mm角)の平滑面の中央と接するように、ポリイミドフィルムの片面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。これにより、支持体/樹脂組成物層/ポリイミドフィルムの層構成を有する複層フィルムを得た。
支持体を剥離した後で、190℃で90分間加熱することにより樹脂組成物層を熱硬化した。その後、ポリイミドフィルムを剥離して、樹脂組成物のシート状硬化体を得た。
<比透磁率、損失係数の測定>
得られたシート状硬化体を切断して、外径19.2mm、内径8.2mmのドーナツ状の評価サンプルを得た。この評価サンプルの比透磁率(μ’)及び損失係数(tanδ)を、Keysight社製磁性材料テストフィクスチャ「16454A」及びKeysight社製インピーダンスアナライザー「E4991B」を用いて、測定周波数20MHz、室温23℃にて測定した。損失係数tanδは、以下の式「tanδ=μ’’/μ’」により算出した。
比透磁率の評価基準は、下記の通りである。
「〇」:比透磁率が23以上。
「×」:比透磁率が23未満。
損失係数の評価基準は、下記の通りである。
「〇」:損失係数が0.05以下。
「×」:損失係数が0.05超過。
<溶融粘度の評価>
樹脂シートの支持体を剥離した後、樹脂組成物層を金型で圧縮することにより、測定用ペレット(直径18mm、3.5g~3.7g)を作製した。その後、この測定用ペレットについて、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を用いて、最低溶融粘度の測定を行った。具体的には、測定用ペレット1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃までの温度範囲で昇温して動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を算出した。測定条件は、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degとした。溶融粘度の評価基準は、下記の通りである。
「〇」:溶融粘度が30000poise以下。
「×」:溶融粘度が30000poiseを超える。
Figure 2024042695000001
*(A)成分及び(C)成分の合計量(質量%)は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する含有量を表し、(A)成分及び(C)成分の合計量(体積%)は、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対する含有量を表す。
実施例1~9において、(C)成分~(G)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
1 回路基板
10 コア基板
11 支持基板
12 金属層
13 金属層
14 スルーホール
20 めっき層
21 研磨面の周囲の面
30 硬化物
30a 樹脂組成物
31 研磨された硬化物の面(研磨面)
40 導体層
41 パターン導体層
100 回路基板
200 内層基板
200a 第1主表面
200b 第2主表面
220 スルーホール
220a スルーホール内配線
240 外部端子
310 樹脂シート
320 第1硬化物層
320a 樹脂組成物層
330 支持体
360 ビアホール
360a ビアホール内配線
400 コイル状導電性構造体
420 第1導体層
420a ランド
440 第2導体層

Claims (22)

  1. (A)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体、及び
    (B)熱硬化性樹脂、を含む樹脂組成物であって、
    (A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.1質量%以上6質量%以下である、樹脂組成物。
  2. さらに、(C)Fe-Ni-Si-Cr系合金磁性粉体以外の磁性粉体を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. (C)成分が、フェライト系の磁性粉体を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. (C)成分が、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライト系の磁性粉体を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
  5. (C)成分が、(A)成分よりも小さい平均粒径を有する、請求項2に記載の樹脂組成物。
  6. (B)成分が、(B-1)エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. (B)成分が、(B-2)硬化剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  8. さらに、(E)分散剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  9. さらに、(F)硬化促進剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  10. (A)成分に含まれるSiの含有量が、(A)成分100質量%に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  11. (A)成分に含まれるCrの含有量が、(A)成分100質量%に対して0.5質量%以上6質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  12. (A)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  13. (A)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、30体積%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  14. (A)成分及び(C)成分の合計量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、70質量%以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  15. (A)成分及び(C)成分の合計量が、樹脂組成物中の不揮発成分100体積%に対して、50体積%以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  16. ホール充填用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  17. 請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
  18. 請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、磁性ペースト。
  19. 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備え、
    樹脂組成物層が、請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
  20. ホールを有する基板と、前記ホールに充填された請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を備える回路基板。
  21. 請求項1~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える、回路基板。
  22. 請求項20に記載の回路基板を備える、インダクタ基板。
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