以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
本発明の基板の製造方法について説明する前に、磁性層を形成し得る樹脂組成物について説明する。
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、(a)磁性粉体及び(b)バインダー樹脂を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(c)分散剤、(d)硬化促進剤、及び(e)その他の添加剤を含み得る。
<(a)磁性粉体>
樹脂組成物は、(a)磁性粉体を含有する。(a)磁性粉体としては、例えば、純鉄粉末;Mg−Zn系フェライト、Fe−Mn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Mg−Mn−Sr系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ba−Zn系フェライト、Ba−Mg系フェライト、Ba−Ni系フェライト、Ba−Co系フェライト、Ba−Ni−Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;Fe−Si系合金粉末、Fe−Si−Al系合金粉末、Fe−Cr系合金粉末、Fe−Cr−Si系合金粉末、Fe−Ni−Cr系合金粉末、Fe−Cr−Al系合金粉末、Fe−Ni系合金粉末、Fe−Ni−Mo系合金粉末、Fe−Ni−Mo−Cu系合金粉末、Fe−Co系合金粉末、あるいはFe−Ni−Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類、が挙げられる。
中でも、(a)磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
(a)磁性粉体としては、市販の磁性粉体を用いることができる。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」;山陽特殊製鋼社製「PST−S」;エプソンアトミックス社製「AW2−08」、「AW2−08PF20F」、「AW2−08PF10F」、「AW2−08PF3F」、「Fe−3.5Si−4.5CrPF20F」、「Fe−50NiPF20F」、「Fe−80Ni−4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD−M」、「LD−MH」、「KNI−106」、「KNI−106GSM」、「KNI−106GS」、「KNI−109」、「KNI−109GSM」、「KNI−109GS」;戸田工業社製「KNS−415」、「BSF−547」、「BSF−029」、「BSN−125」、「BSN−125」、「BSN−714」、「BSN−828」、「S−1281」、「S−1641」、「S−1651」、「S−1470」、「S−1511」、「S−2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK−S」、「JEMK−H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
(a)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすい。しかし、特に球状の磁性粉体を用いる方が、通常、磁気損失を低くでき、また好ましい粘度を有するペーストを得る観点から好ましい。
(a)磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。また、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。
(a)磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
(a)磁性粉体の比表面積は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.05m2/g以上、より好ましくは0.1m2/g以上、さらに好ましくは0.3m2/g以上である。また、好ましくは10m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下、さらに好ましくは5m2/g以下である。(a)磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。
(a)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下である。
(a)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
<(b)バインダー樹脂>
樹脂組成物は、(b)バインダー樹脂を含有する。(b)バインダー樹脂は、(a)磁性粉体を樹脂組成物中に分散・結合させ、磁性層を形成し得る樹脂であれば特に限定されない。
(b)バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等の熱硬化性樹脂;フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。(b)バインダー樹脂としては、配線板の絶縁層を形成する際に使用される熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、中でもエポキシ樹脂が好ましい。(b)バインダー樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させられる成分をまとめて「硬化剤」ということがある。
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、例えば、グリシロール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(b)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよいが、比透磁率を高くするために磁性粉体を多く含有させる場合等に、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるのを防ぎ、ペースト状にし易くする観点から、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「ED−523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP−3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP−4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「EX−201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)、「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1〜1:4、より好ましくは1:0.3〜1:3.5、さらに好ましくは1:0.6〜1:3である。
(b)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.〜5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.〜3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.〜2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.〜1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
(b)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416−70BK」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ−OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ−OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA−BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P−d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F−a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V−03(カルボジイミド基当量:216)、V−05(カルボジイミド基当量:262)、V−07(カルボジイミド基当量:200);V−09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C−200S」、「KAYABOND C−100」、「カヤハードA−A」、「カヤハードA−B」、「カヤハードA−S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
(b)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01〜1:5の範囲が好ましく、1:0.5〜1:3がより好ましく、1:1〜1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上である。また、好ましくは100万以下、より好ましくは75万以下、さらに好ましくは50万以下である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製「LC−9A/RID−6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K−800P/K−804L/K−804L」を、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、熱膨張率及び弾性率をより低下させる観点から、官能基含有アクリル樹脂が好ましく、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂がより好ましい。
官能基含有アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000〜1000000であり、より好ましくは30000〜900000である。
官能基含有アクリル樹脂の官能基当量は、好ましくは1000〜50000であり、より好ましくは2500〜30000である。
ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂としては、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス社製「SG−80H」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:350000g/mol、エポキシ価0.07eq/kg、ガラス転移温度11℃))、ナガセケムテックス社製「SG−P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、ガラス転移温度12℃))が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の電化ブチラール「4000−2」、「5000−A」、「6000−C」、「6000−EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、「KS−1」などのKSシリーズ、「BL−1」などのBLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のビニル基を有するオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂としては、重量平均分子量が3万以上100万以下の、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
(b)バインダー樹脂の含有量は、(a)磁性粉体を樹脂組成物中に分散・結合させ、磁性層を形成し得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
<(c)分散剤>
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(c)分散剤を含んでいてもよい。(c)分散剤を用いることにより、(a)成分の分散性を向上させることができる。
(c)分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸エステル系分散剤;ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性分散剤;オルガノシロキサン系分散剤、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性分散剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性分散剤が好ましい。分散剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
リン酸エステル系分散剤は、市販品を用いることができる。市販品として、例えば東邦化学工業社製「フォスファノール」シリーズの「RS−410」、「RS−610」、「RS−710」等が挙げられる。
オルガノシロキサン系分散剤としては、市販品として、ビックケミー社製「BYK347」、「BYK348」等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン系分散剤としては、市販品として、日油社製「マリアリム」シリーズの「AKM−0531」、「AFB−1521」、「SC−0505K」、「SC−1015F」及び「SC−0708A」、並びに「HKM−50A」等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系分散剤とは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等をまとめた総称である。
アセチレングリコールとしては、市販品として、Air Products and Chemicals Inc.製「サーフィノール」シリーズの「82」、「104」、「440」、「465」及び「485」、並びに「オレフィンY」等が挙げられる。
(c)分散剤の含有量は、本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
<(d)硬化促進剤>
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(d)硬化促進剤を含んでいてもよい。(d)硬化促進剤を用いることにより、バインダー樹脂の硬化を効果的に進行させて、硬化物の機械的強度を高めることができる。(d)硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、樹脂組成物の粘度を低下させる観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「PN−50」、「PN−23」、「MY−25」等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「2MZA−PW」、「2PHZ−PW」、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
(d)硬化促進剤としては、アミン系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イミダゾール系硬化促進剤であることがより好ましい。
(d)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物の粘度を下げる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
<(e)その他の添加剤>
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、(e)その他の添加剤を含んでいてもよい。斯かるその他の添加剤としては、例えば、ホウ酸トリエチル等の硬化遅延剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物は、例えば、配合成分を、3本ロール、回転ミキサー、高速回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。樹脂組成物は、製造後等に脱泡を行ってよい。例えば、静置による脱泡、遠心分離による脱泡、真空脱泡、撹拌脱泡、及びこれらの組合せ等による脱泡が挙げられる。
基板の磁性層を形成するにあたって、樹脂組成物は、ペースト状の樹脂組成物(磁性ペースト)の形態で用いてもよく、該樹脂組成物の層を含む磁性シートの形態で用いてもよい。
[磁性ペースト]
樹脂組成物は、液状のバインダー樹脂等を使用することにより、有機溶剤を含まなくともペースト状の磁性ペーストとすることができる。磁性ペーストが有機溶媒を含む場合、その含有量は、磁性ペーストの全質量に対して、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。下限は、特に制限はないが0.001質量%以上、又は含有しないことである。磁性ペースト中の有機溶剤の含有量が少ない、または有機溶剤を含まないことにより、有機溶剤の揮発によるボイドの発生を抑制することができ、さらに取扱い性、作業性にも優れたものとすることができる。
磁性ペーストの粘度は、25℃で好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは25Pa・s以上、さらに好ましくは30Pa・s以上、50Pa・s以上であり、通常200Pa・s未満、好ましくは180Pa・s以下、より好ましくは160Pa・s以下である。粘度は、磁性ペーストの温度を25±2℃に保ち、E型粘度計を用いて測定することができる。
[磁性シート]
磁性シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む。
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、100μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
磁性シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。なお、樹脂組成物がペースト状の場合、ダイコーター等を用いて支持体上に直接樹脂組成物を塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
磁性シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。磁性シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。磁性シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
[基板の製造方法]
本発明の基板の製造方法は、磁性粉体を含む磁性層上に湿式めっきにより導体層が形成される基板の製造方法であって、
(A)磁性層表面を酸溶液で処理する酸処理工程、及び
(B)酸溶液で表面を処理した磁性層上に導体層を形成する工程を含む。
湿式めっきにより導体層を形成するには、例えば、磁性層表面を、界面活性剤で処理するコンディショニング工程、界面活性剤が不要な部位から界面活性剤を除去するマイクロエッチング工程、磁性層表面に触媒を付与する触媒化工程、触媒を活性化する触媒活性化工程、及び磁性層上に導体層を形成する工程を順に行うことが考えられる。
磁性粉体は、シリカ等の無機充填材とは異なり、酸に溶解しやすいという性質をもつ。このため、マイクロエッチング工程にて用いる液が酸性である場合、その液に溶解した磁性粉体が、触媒化工程でのアルカリ条件下で析出物及び沈殿物(以下、「析出物及び沈殿物」をまとめて不溶物等ということがある。)が発生してしまう。また、触媒活性化工程では、通常、触媒を活性化させるために、通常は酸性の還元剤溶液を用いるので磁性粉体が溶出した後、磁性粉体中の鉄等の金属が還元剤によって還元され、還元浴内に大量の不溶物等が発生してしまう。磁性粉体の含有量が多いほど、より大量の不溶物等が発生し、還元浴及び基板等を汚染してしまう。
これに対し、本発明では、(A)磁性層表面を酸溶液で処理する酸処理工程を含む。磁性層表面に存在する磁性粉体を酸溶液で溶解させることで、不溶物等の原因となり得る磁性層表面の磁性粉体の量を減少させることができ、その結果、触媒化工程及び触媒活性化工程において発生する不溶物等の発生を抑制することが可能となる。さらには、通常、(A)工程を経ても、得られた導体層と磁性層との間の界面で剥離や膨れはなく、ピール強度も(A)工程を行わない場合と同等である。また、(A)工程を経た製造方法により得られた基板は、通常、周波数が10〜200MHzの範囲で比透磁率の向上、及び損失係数の低減が可能である。上述したメカニズムは、前記のように例示した工程を含む基板の製造方法以外にも適用することができる。
以下、基板の製造方法の第1実施形態及び第2実施形態について説明する。但し、本発明に係る基板の製造方法は、以下に例示する第1及び第2実施形態に限定されない。
<第1実施形態>
第1実施形態の基板の製造方法は、(A)工程を行う前に磁性層を有する基板を用意する工程を行うことが好ましい。
基板の製造方法の第1実施形態における磁性層を有する基板を用意する工程は、
(1)スルーホールに樹脂組成物を充填し、樹脂組成物を硬化させ、磁性層を形成する工程を含むことが好ましく、
(1)工程後(A)工程前に、
(2)磁性層の表面を研磨する工程をさらに含むことがより好ましい。
−(1)工程−
(1)工程を行うにあたって、樹脂組成物を準備する工程を含んでいてもよい。樹脂組成物は、上記において説明したとおりである。第1実施形態では、磁性ペーストを用いて磁性層を形成することが好ましい。
また、(1)工程を行うにあたって、図1に一例を示すように、支持基板11、並びに該支持基板11の両表面に設けられた銅箔等の金属からなる第1金属層12、及び第2金属層13を備えるコア基板10を準備する工程を含んでいてもよい。支持基板11の材料の例としては、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。
また、図2に一例を示すように、コア基板10にスルーホール14を形成する工程を含んでいてもよい。スルーホール14は、例えば、ドリル、レーザー照射、プラズマ照射等により形成することができる。具体的には、ドリル等を用いてコア基板10に貫通穴を形成することにより、スルーホール14を形成することができる。
スルーホール14の形成は、市販されているドリル装置を用いて実施することができる。市販されているドリル装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「ND−1S211」等が挙げられる。
コア基板10にスルーホール14を形成した後、図3に一例を示すように、コア基板10の粗化処理を行い、スルーホール14内、第1金属層12の表面上、及び第2金属層13の表面上にめっき層20を形成する工程を含んでいてもよい。
前記の粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
めっき層20は、めっき法により形成され、めっき法によりめっき層20が形成される手順は、後述する(B)工程における導体層の形成と同様である。
スルーホール14内にめっき層20を形成されたコア基板10を用意した後で、図4に一例を示すように、樹脂組成物30aをスルーホール14へ充填する。充填方法としては、例えば、スキージを介してスルーホール14へ樹脂組成物30aを充填する方法、カートリッジを介して樹脂組成物30aを充填する方法、マスク印刷して樹脂組成物30aを充填する方法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。樹脂組成物30aは磁性ペーストであることが好ましい。
スルーホール14内に樹脂組成物30aを充填後、樹脂組成物30aを熱硬化して、図5に一例を示すように、スルーホール14内に磁性層30を形成する。樹脂組成物30aの熱硬化条件は、樹脂組成物30aの組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。樹脂組成物30aの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
(1)工程における磁性層30の硬化度としては、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。硬化度は、例えば示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
樹脂組成物30aを熱硬化させる前に、樹脂組成物30aに対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物30aを熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物30aを、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)、予備加熱してもよい。
−(2)工程−
(2)工程では、図6に一例を示すように、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することにより除去し、平坦化する。研磨方法としては、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することができる方法を用いることができる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては石井表記社製「NT−700IM」等が挙げられる。
磁性層の研磨面の算術平均粗さ(Ra)としては、導体層とのめっき密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
(2)工程後(A)工程前に、磁性層の硬化度をさらに高める等の目的で、必要により熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程における温度は上記した硬化温度に準じて行えばよく、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
−(A)磁性層表面を酸溶液で処理する酸処理工程−
(A)工程は、磁性層表面を酸溶液で処理する工程である。具体的には、磁性層表面を酸溶液と接触させる。この処理により、磁性層の表面にある磁性粉体を除去することができる。よって、不溶物等の発生を抑制することが可能となる。
酸溶液としては、磁性粉体を溶解させることができるものを用いることができる。このような酸溶液としては、無機酸を用いることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が挙げられる。中でも、磁性粉体を効果的に溶解させる観点から、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、塩酸がより好ましい。
酸溶液の濃度としては、酸の種類により異なるが、不溶物等の発生を抑制する観点から、規定度で、好ましくは3N以上、より好ましくは5N以上、さらに好ましくは6N以上、7N以上、8N以上、10N以上であり、好ましくは40N以下、より好ましくは36N以下、さらに好ましくは30N以下、20N以下、15N以下である。
酸溶液の温度としては、不溶物等の発生を抑制する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
(A)工程は、磁性層を酸溶液に浸漬させることにより行う。浸漬時間としては、不溶物等の発生を抑制する観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、さらに好ましくは30分以下である。
磁性層表面に存在する磁性粉体が酸溶液で溶解すると、磁性層表面の色に変化が起こる。詳細には、(A)工程前の磁性層表面は磁性粉体の色であるが、酸溶液により磁性層表面に存在する磁性粉体が溶解することで磁性粉体の周囲に存在するバインダー樹脂の色が見えるようになる。磁性層表面の色の変化が起き、磁性粉体の色が見えなくなったときに、(A)工程を終了させてもよい。
(A)工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
(A)工程終了後、湿式めっきにより(B)酸溶液で表面を処理した磁性層上に導体層を形成する工程を行うが、(A)工程終了後(B)工程前に、
(3)磁性層表面を、界面活性剤を含む溶液で処理するコンディショニング工程を含むことが好ましく、
(3)工程後(B)工程前に、
(4)磁性層表面に触媒を付与する触媒化工程、及び
(5)触媒を活性化する触媒活性化工程をこの順でさらに含むことがより好ましい。
また、(3)工程後(4)工程前に、
(3−1)界面活性剤が不要な部位から界面活性剤を除去するマイクロエッチング工程を含んでいてもよい。
(3)〜(5)工程を(A)工程終了後に行うことで、特に(4)工程及び(5)工程において発生する不溶物等の発生を抑制することが可能となる。
−(3)工程−
(3)工程では、通常、界面活性剤を含む溶液と磁性層表面とを接触させることで、磁性層表面の洗浄とともに、(4)工程における触媒の吸着を容易にできるように表面電荷を調整する。
(3)工程で使用する界面活性剤を含む溶液としては、磁性層表面の洗浄とともに、(4)工程における触媒の吸着を容易にできるように表面電荷を調整することができる界面活性剤を含む溶液を用いることができる。このような溶液としては、界面活性剤を含むアルカリ溶液、界面活性剤を含む酸溶液等が挙げられるが、不溶物等を抑制する観点から界面活性剤を含むアルカリ溶液が好ましい。
界面活性剤を含むアルカリ溶液のpHとしては、好ましくは7を超え、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。上限は特に制限はないが、好ましくは14以下、13以下等とし得る。界面活性剤を含む酸溶液のpHとしては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。上限は特に制限はないが、好ましくは7未満、6以下等とし得る。
界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えばアトテックジャパン社製の「セキュリガンド902」、上村工業社製「PED−104」等が挙げられる。
(3)工程の処理時間としては、触媒の吸着を容易にする観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上であり、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは10分以下である。
界面活性剤を含む溶液の温度としては、触媒の吸着を容易にする観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
(3)工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
−(3−1)工程−
(3−1)工程では、通常、マイクロエッチング液と磁性層表面とを接触させることで、界面活性剤が不要な部位から界面活性剤を除去する。界面活性剤が不要な部位としては、例えば銅箔基板等が挙げられる。
マイクロエッチング液としては、塩酸、硫酸、過酸化水素水、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム塩及びこれらの組み合わせからなる液等が挙げられる。
マイクロエッチング液の濃度としては、界面活性剤を不要な部位のみから除去する観点から、規定度で、通常は2N以下、好ましくは1.5N以下、より好ましくは1N以下であり、界面活性剤の除去を容易にする観点から、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.2N以上、さらに好ましくは0.5N以上である。
マイクロエッチング液の温度としては、界面活性剤の除去を容易にする観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
(3−1)工程の処理時間としては、界面活性剤の除去を容易にする観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは30秒以上であり、好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下、さらに好ましくは40秒以下である。
(3−1)工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
−(4)工程−
(4)工程では、磁性層表面に触媒を付与することで、磁性層と導体層との間の密着性を向上させることができる。通常、(4)工程では、触媒を含有する溶液に磁性層を浸漬し、磁性層表面に触媒を吸着させる。
触媒としては、例えば、パラジウム塩、パラジウム錯化合物、スズ・パラジウムの錯塩、スズ・パラジウムコロイド、等が挙げられる。
触媒を含有する溶液は、通常、アルカリ性の溶液を用いる。これにより、不溶物等の発生を顕著に抑制することができる。このアルカリ性の溶液のpHとしては、好ましくは7を超え、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。上限は特に制限はないが、好ましくは14以下、13以下等とし得る。
また、触媒を含有する溶液の濃度としては、磁性層全体に触媒を吸着させる観点から、規定度で、好ましくは1mmol/L以上、より好ましくは5mmol/L以上、さらに好ましくは10mmol/L以上であり、好ましくは500mmol/L以下、より好ましくは300mmol/L以下、さらに好ましくは100mmol/L以下である。
触媒を含有する溶液は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「アクチベーター・ネオガンド834」、日本カニゼン社製の「ブラウンシューマー」等が挙げられる。
(4)工程の処理時間としては、磁性層全体に触媒を吸着させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上であり、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは10分以下である。
触媒を含有する溶液の温度としては、磁性層全体に触媒を吸着させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
(4)工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
−(5)工程−
(5)工程では、触媒を活性化することで、磁性層と導体層との間の密着性を向上させることができる。通常、(5)工程では、触媒が付与された磁性層を還元剤溶液に浸漬し触媒の核を生成させ、磁性層表面に付与された触媒を活性化させる。
(5)工程で用いられる還元剤としては、例えば、次亜リン酸塩、ジメチルアミンボランと有機酸のカリウム塩の混合液等が挙げられる。
還元剤溶液は、通常、酸性の溶液を用いる。これにより、不溶物等の発生を顕著に抑制することができる。この酸性溶液のpHとしては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。上限は特に制限はないが、好ましくは7未満、6以下等とし得る。
また、還元剤溶液中の還元剤濃度としては、磁性層表面に付与された触媒を活性化させる観点から、規定度で、好ましくは0.3N以上、より好ましくは0.4N以上、さらに好ましくは0.5N以上であり、好ましくは3N以下、より好ましくは2N以下、さらに好ましくは1N以下である。
還元剤溶液は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「リデューサーアクセラレーター810mod.」、「リデューサーネオガントWA」、日本カニゼン社製「K−PVD」等が挙げられる。
(5)工程の処理時間としては、触媒を活性化させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上であり、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは10分以下である。
還元剤溶液の温度としては、触媒を活性化させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
(5)工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
−(B)工程−
(B)工程では、図7に一例を示すように、(A)工程にて酸溶液で表面を処理した磁性層30上に、湿式めっきにより導体層40を形成する。さらに、導体層40を形成後、図8に一例を示すように、エッチング等の処理により導体層40、第1金属層12、第2金属層13、及びめっき層20の一部を除去してパターン導体層41を形成してもよい。
導体層の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
(B)工程の好適な実施形態では、無電解めっき処理を行い、導体層を形成することが好ましく、無電解めっき処理を行った後、さらに電解めっき処理を行い、導体層を形成することがより好ましい。よって、(B)工程は、セミアディティブ法、フルアディティブ法等によって磁性層の表面にめっきし導体層を形成することが好ましい。(B)工程は、導体層の製造のしやすさの観点から、セミアディティブ法により導体層を形成することが好ましい。
セミアディティブ法の詳細は、まず、磁性層の表面に、無電解めっき処理によりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっき処理により導体層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
無電解めっき処理は、無電解めっき液に磁性層を浸漬させて行う。無電解めっき処理としては、例えば、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解ニッケル−タングステンめっき、無電解スズめっき、無電解金めっき等が挙げられ、無電解銅めっきが好ましい。
無電解めっき処理に用いる無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、タングステン、錫、金、パラジウム、PdCl2等の金属イオンを含有する液が挙げられる。また、無電解めっき液は、還元剤などのその他の添加剤を含んでいてもよい。無電解めっき液は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、上村工業社製の「スルカップPEA」や、日本カニゼン社製の「S−KPD」等が挙げられる。
無電解めっき処理の処理時間としては、触媒を活性化させる観点から、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下、さらに好ましくは40分以下である。
無電解めっき処理の処理温度としては、導体層形成の効率化の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
無電解めっき処理によりめっきシード層を形成した後、めっきシード層上に、ドライフィルムを積層する。その後、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部が露出するようにフォトマスクを用いて所定の条件で露光、現像を行い、マスクパターンを形成する。露光及び現像条件は、すでに公知の条件にて行うことできる。
ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができる。このようなドライフィルムとしては、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
マスクパターンは、電解銅めっき処理におけるめっきマスクとして使用する。電解めっき処理後、マスクパターンは除去される。
電解めっき処理は、めっき浴に無電解めっき処理後の磁性層を浸漬させて行う。その際、めっき浴に電流を流して行う。電解めっき処理としては、電解銅めっき、電解ニッケルめっき、電解スズめっき、電解金めっき等が挙げられ、電解銅めっきが好ましい。
電解めっき処理に用いるめっき浴としては、硫酸銅、ピロリン酸銅、シアン化銅等を含む浴が挙げられる。
電解めっき処理の処理時間としては、触媒を活性化させる観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは40分以上、さらに好ましくは50分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは80分以下、さらに好ましくは70分以下である。
電解めっき処理の処理温度としては、導体層形成の効率化の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
電解めっき処理の電流密度としては、導体層形成の効率化の観点から、好ましくは1.0A/dm2以上、より好ましくは1.5A/dm2以上、さらに好ましくは2.0A/dm2以上であり、好ましくは4.0A/dm2以下、より好ましくは3.5A/dm2以下、さらに好ましくは3.0A/dm2以下である。
導体層形成後、導体層のピール強度を向上させる等の目的で、必要によりアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、基板を150〜200℃で20〜90分間加熱することにより行うことができる。
パターン導体層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
<第2実施形態>
以下、基板の製造方法の第2実施形態について説明する。第1実施形態と説明が重複する箇所は適宜説明を省略する。
第2実施形態の基板の製造方法は、(A)工程を行う前に磁性層を有する基板を用意する工程を行うことが好ましい。第2実施形態では、磁性シートを用いて磁性層を形成することが好ましい。
基板の製造方法の第2実施形態における磁性層を有する基板を用意する工程は、
(α)磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する工程、及び
(β)磁性層に穴あけ加工を行う工程を含むことが好ましく、
(γ)磁性層の表面を粗化面とする粗化工程をさらに含んでもよい。
−(α)工程−
(α)工程を行うにあたって、磁性シートを準備する工程を含んでいてもよい。磁性シートは、上記において説明したとおりである。
(α)工程において、図9に一例を示すように、支持体330と、該支持体330上に設けられた樹脂組成物層320aとを含む磁性シート310を、樹脂組成物層320aが内層基板200と接合するように、内層基板200に磁性シート310を積層させる。
内層基板200は、絶縁性の基板である。内層基板200の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。内層基板200は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
図9に一例を示すように、内層基板200は、第1主表面200a上に設けられる第1導体層420と、第2主表面200b上に設けられる外部端子240とを有している。第1導体層420は、複数の配線を含んでいる。図示例ではインダクタ素子のコイル状導電性構造体400を構成する配線のみが示されている。外部端子240は図示されていない外部の装置等と電気的に接続するための端子である。外部端子240は、第2主表面200bに設けられる導体層の一部として構成することができる。
第1導体層420、外部端子240、その他の導体層を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「−(B)工程−」欄において説明した導体層の材料と同様である。
第1導体層420、外部端子240、その他の導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。また、第1導体層420、外部端子240、その他の導体層の厚さは、第1実施形態におけるパターン導体層と同様である。
第1導体層420及び外部端子240のライン(L)/スペース(S)比は特に制限されないが、表面の凹凸を減少させて平滑性に優れる磁性層を得る観点から、通常、900/900μm以下、好ましくは700/700μm以下、より好ましくは500/500μm以下、さらに好ましくは300/300μm以下、さらにより好ましくは200/200μm以下である。ライン/スペース比の下限は特に制限されないが、スペースへの樹脂組成物層の埋め込みを良好にする観点から、好ましくは1/1μm以上である。
内層基板200は第1主表面200aから第2主表面200bに至るように内層基板200を貫通する複数のスルーホール220を有している。スルーホール220にはスルーホール内配線220aが設けられている。スルーホール内配線220aは、第1導体層420と外部端子240とを電気的に接続している。
樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、例えば、支持体330側から、磁性シート310を内層基板200に加熱圧着することにより行うことができる。磁性シート310を内層基板200に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(ステンレス(SUS)鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を磁性シート310に直接的に接触させてプレスするのではなく、内層基板200の表面の凹凸に磁性シート310が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材からなるシート等を介してプレスするのが好ましい。
加熱圧着する際の温度は、好ましくは80℃〜160℃、より好ましくは90℃〜140℃、さらに好ましくは100℃〜120℃の範囲であり、加熱圧着する際の圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着する際の時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。磁性シートと内層基板との接合は、圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施することが好ましい。
磁性シート310の樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
磁性シート310と内層基板200との接合の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された磁性シート31の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
磁性シートを内層基板に積層した後、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。図10に一例を示すように、内層基板200に接合させた樹脂組成物層320aを熱硬化し第1磁性層320を形成する。熱硬化の条件は第1実施形態の「−(1)工程−」欄において説明した熱硬化の条件と同様である。
支持体330は、(α)工程の熱硬化後と(β)工程との間に除去してもよく、(β)工程の後に剥離してもよい。
また、(α)工程は、磁性シートを内層基板上に積層する代わりに、ペースト状の樹脂組成物を内層基板上に直接塗布又は印刷することにより行ってもよい。
−(β)工程−
(β)工程において、図11に一例を示すように、第1磁性層320に穴あけ加工をし、ビアホール360を形成する。ビアホール360は、第1導体層420と、後述する第2導体層440とを電気的に接続するための経路となる。ビアホール360の形成は「−(1)工程−」欄において説明したスルーホールの形成と同様の方法により行うことができる。
−(γ)工程−
(β)工程後(γ)磁性層の表面を粗化面とする粗化工程を行ってもよい。(γ)工程における粗化方法としては、第1実施形態の「−(2)工程−」欄において説明したものと同様の研磨により行うことができる。
(γ)工程後の磁性層の粗化面の算術平均粗さ(Ra)としては、導体層とのめっき密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
−(A)工程−
(A)工程は、第1磁性層表面を酸溶液で処理する工程である。磁性層表面を酸溶液で処理することにより、不溶物等の発生を抑制することが可能となる。(A)工程は第1実施形態において説明したとおりである。
(A)工程終了後、湿式めっきにより(B)酸溶液で表面を処理した磁性層上に導体層を形成する工程を行うが、(A)工程終了後(B)工程前に、
(3)磁性層表面を、界面活性剤を含む溶液で処理するコンディショニング工程を含むことが好ましく、
(3)工程後(B)工程前に、
(4)磁性層表面に触媒を付与する触媒化工程、及び
(5)触媒を活性化する触媒活性化工程をこの順でさらに含むことがより好ましい。
また、(3)工程後(4)工程前に、
(3−1)界面活性剤が不要な部位から界面活性剤を除去するマイクロエッチング工程を含んでいてもよい。(3)〜(5)工程は第1実施形態において説明したとおりである。
−(B)工程−
(B)工程では、図12に一例を示すように、(A)工程にて酸溶液で表面を処理した第1磁性層320上に、第2導体層440を形成する。第2導体層440の形成方法は、第1実施形態において説明したとおりである。なお、この工程により、ビアホール360内にビアホール内配線360aが併せて形成される。第2導体層440を形成することで導体層400が形成する。第2導体層440は、複数の配線を含んでいる。
第2導体層440を構成し得る導体材料は、第1導体層420と同様である。第2導体層440は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。第2導体層440が複層構造である場合、磁性層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケルクロム合金の合金層であることが好ましい。また、第2導体層440の厚さは、第1導体層420の厚さと同様である。
第1導体層420及び第2導体層440は、例えば後述する図13〜15に一例を示すように、渦巻状に設けられていてもよい。一例において、第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端はビアホール内配線360aにより第1導体層420の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端に電気的に接続されている。第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360aにより第1導体層42のランド420aに電気的に接続されている。よって第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360a、ランド420a、スルーホール内配線220aを経て外部端子240に電気的に接続される。
コイル状導電性構造体400は、第1導体層420の一部分である渦巻状の配線部、第2導体層440の一部分である渦巻状の配線部、第1導体層420の渦巻状の配線部と第2導体層440の渦巻状の配線部とを電気的に接続しているビアホール内配線360aにより構成されている。
(B)工程後、さらに導体層上に磁性層を形成する工程を行ってもよい。詳細は、図14に一例を示すように、第2導体層440及びビアホール内配線360aが形成された第1磁性層320上に第2磁性層を形成する。第2磁性層は既に説明した工程と同様の工程により形成すればよい。
<基板の物性等>
本発明の基板の製造方法は、(A)工程を含むため、無電解めっきプロセスにおける不溶物等の量を抑制できるという特性を示す。不溶物等の沈殿量としては、好ましくは300mg/L未満、より好ましくは250mg/L以下、さらに好ましくは210mg/L以下である。下限は特に限定されないが、0.001mg/L以上等とし得る。不溶物量等の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
(A)工程を経て製造された基板において、通常、めっきにより形成された導体層と磁性層との間のピール強度は、(A)工程がなされずに製造された基板の磁性層と導体層との間のピール強度と同等であるという特性を示す。即ち、(A)工程による酸処理を行ってもピール強度が劣ることはない。ピール強度としては、好ましくは0.05kgf/cm以上、より好ましくは0.1kgf/cm以上、さらに好ましくは0.2kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下等とし得る。ピール強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の基板の製造方法にて製造される基板としては、回路基板、パターン導体層により形成されたインダクタ素子を有するインダクタ基板であることが好ましい。
[インダクタ基板]
インダクタ基板は、本発明の基板の製造方法により得られた基板を含む。このようなインダクタ基板は、基板の製造方法の第1実施形態により得られた基板を含む場合、前記の樹脂組成物の硬化物の周囲の少なくとも一部に導体によって形成されたインダクタ素子を有する。このようなインダクタ基板は、例えば特開2016−197624号公報に記載のものを適用できる。
また、基板の製造方法の第2実施形態により得られた基板を含む場合、インダクタ基板は、樹脂組成物(樹脂組成物層)の硬化物である磁性層と、この磁性層に少なくとも一部分が埋め込まれた導電性構造体とを有しており、この導電性構造体と、磁性層の厚さ方向に延在し、かつ導電性構造体に囲まれた磁性層のうちの一部分によって構成されるインダクタ素子を含んでいる。ここで図13は、インダクタ素子を内蔵するインダクタ基板をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。図14は、II−II一点鎖線で示した位置で切断したインダクタ基板の切断端面を示す模式的な図である。図15は、インダクタ基板のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
インダクタ基板100は、図13及び図14に一例として示されるように、複数の磁性層(第1磁性層320、第2磁性層340)及び複数の導体層(第1導体層420、第2導体層440)を有する、即ちビルドアップ磁性層及びビルドアップ導体層を有するビルドアップ配線板である。また、インダクタ基板100は、内層基板200を備えている。
図14より、第1磁性層320及び第2磁性層340は一体的な磁性層としてみることができる磁性部300を構成している。よってコイル状導電性構造体400は、磁性部300に少なくとも一部分が埋め込まれるように設けられている。すなわち、本実施形態のインダクタ基板100において、インダクタ素子はコイル状導電性構造体400と、磁性部300の厚さ方向に延在し、かつコイル状導電性構造体400に囲まれた磁性部300のうちの一部分である芯部によって構成されている。
図15に一例として示されるように、第1導体層420はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部と、スルーホール内配線220aと電気的に接続される矩形状のランド420aとを含んでいる。図示例では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とランド420aを迂回する迂回部を含んでいる。図示例では第1導体層420の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり反時計回りに巻いている形状を有している。
同様に、第1磁性層320上には第2導体層440が設けられている。第2導体層440はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部を含んでいる。図13又は図14では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とを含んでいる。図13又は図14では第2導体層44の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり時計回りに巻いている形状を有している。
このようなインダクタ基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
また、かかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<実施例1>
エポキシ樹脂(「ZX−1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)15質量部、反応性希釈剤(「ZX−1658」、環状脂肪族ジグリジルエ−テル、日鉄ケミカル&マテリアル社製)5質量部、分散剤(「RS−710」、高分子アニオン系分散剤、東邦化学社製)1質量部、硬化促進剤(「2MZA−PW」、イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製)1質量部、磁性粉体(「M05S」、Fe−Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)150質量部を混合し、ペースト状の樹脂組成物を調製した。
印刷基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層版(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、松下電工社製R1515A)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製CZ8100)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行ったものを用意した。用意した印刷基板上に、作製した樹脂組成物をドクターブレードにて均一に塗布し、およそ120μm厚のペースト層を形成した。ペースト層を130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分加熱することにより熱硬化し、磁性層を形成した。形成した磁性層の表面のバフ研磨を実施した後、高圧水洗(0.1MPa、15秒)により洗浄し、180℃で30分加熱することにより熱処理を行った。作製した基板を5cm角に切断し、12Nの塩酸に25℃で10分間浸漬した。この基板を評価基板とした。
<実施例2>
実施例1において、磁性粉体(「M05S」、Fe−Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)150質量部を、磁性粉体(「AW2−08PF3F」、Fe−Cr−Si系合金(アモルファス)、平均粒径3μm、エプソンアトミックス社製)210質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価基板を調製した。
<比較例1>
実施例1において、12Nの塩酸に25℃で10分間浸漬させる塩酸処理を行わなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価基板を作製した。
<比較例2>
実施例2において、12Nの塩酸に25℃で10分間浸漬させる塩酸処理を行わなかった。以上の事項以外は実施例2と同様にして評価基板を作製した。
<参考例1>
実施例1において、磁性粉体(「M05S」、Fe−Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)150質量部を、シリカ(「SC2050」、アドマテックス社製)60質量部に変え、12Nの塩酸に25℃で10分間浸漬させる塩酸処理を行わなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価基板を作製した。
<無電解めっきプロセスにおける不溶物量の評価>
実施例1〜2、比較例1〜2及び参考例1で作製した評価基板(5cm角)を、還元用溶液(「リデューサーアクセラレーター810mod.」、アトテックジャパン社製、60ml、「リデューサーネオガントWA」、アトテックジャパン社製、3ml)を入れた浴に40℃で24時間浸漬した。浴中に析出した沈殿物をろ紙(桐山製作所社製、No.5B 60φ)を用いて不溶物としてろ別し、5時間真空乾燥させた後に精密天秤を用いて不溶物量の測定を行い、以下の基準で評価した。
○:不溶物量が300mg未満
×:不溶物量が300mg以上
<銅メッキピール強度の評価>
実施例1〜2、比較例1〜2及び参考例1で作製した評価基板を、PdCl2を含む溶液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)と水酸化ナトリウムの混合液に40℃で5分間浸漬し、次に還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」と「リデューサーアクセレレーター810mod.」の混合液)に30℃で5分間浸漬させた後、無電解銅めっき液(上村工業社製「スルカップPEA」)とホルムアルデヒドの混合液に35℃で30分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解めっき液(アトテックジャパン社製「アディティブクプラシドHL」と硫酸銅五水和物、硫酸の混合液)に22℃にて60分間浸漬させ、磁性層上に30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この基板をピール強度評価基板とした。
このピール強度評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
実施例1、2より、本発明である(A)工程を行うことで得られた基板は不溶物の量を大きく抑えられることがわかった。一方、(A)工程を行っていない比較例1、2は、多量の不溶物が析出された。また、参考例1における不溶物量と比較し、実施例1、2の結果が大きく外れていないことから、磁性粉体由来の不溶物の析出が大きく抑えられたことがわかった。
また、(A)工程を行っても、銅メッキピール強度の結果に大きな差はなく、物性の低下が起こっていないことも確認された。
<回路基板の製造>
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、松下電工社製R1515A)を用意した。
上記内層基板に実施例1で調製したペースト状の樹脂組成物を印刷し、ペースト層を形成した。ペースト層を形成した後、130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分間加熱した。その後、ペースト層の表面をバフ研磨した。さらに180℃で30分間加熱することによりペースト層を熱硬化し、磁性層を得た。
磁性層を、高圧水洗(0.1MPa、15秒)により洗浄し、180℃で30分加熱することにより熱処理を行い、その後12Nの塩酸に25℃で10分間浸漬した。
次に、コンディショニング工程として、磁性層を、アトテックジャパン社製のクリーナー・セキュリガンド902に60℃で5分間浸漬し、水洗処理後、ソフトエッチング液(Na2S2O8:100g/L,H2SO4(75%aq.)14.2ml/L)に30℃で1分間浸漬した後、水洗処理を行った。
次いで触媒付与工程として、磁性層を、PdCl2含有のアクチベーター・ネオガンド834(アトテックジャパン社製)に35℃で5分間浸漬し、水洗を行った。
触媒活性化工程として、磁性層を、アトテックジャパン社製の還元液(リデューサー・ネオガンドWA:5ml/L、リデューサー・アクセレーター810mod:100ml/L)に30℃で5分間浸漬した。
導体層を形成する工程として、PdCl2を含む溶液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)と水酸化ナトリウムの混合液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解めっき液(アトテックジャパン社製「アディティブクプラシドHL」と硫酸銅五水和物、硫酸の混合液)に22℃にて60分間浸漬させ、磁性層上に30μmの厚さの導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて30分間行った後さらに180℃にて60分間行った。次にエッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成し、回路基板を得た。
この回路基板は、磁性層の表面と導体層との間の界面で剥離や膨れは無く、めっき密着性は良好であった。