JP2024028710A - フコシル基転移酵素及びフコシル化オリゴ糖の生産におけるその使用 - Google Patents

フコシル基転移酵素及びフコシル化オリゴ糖の生産におけるその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】フコース残基をドナー基質からラクトテトラオースに転移させることができる新規のフコシル基転移酵素、前記フコシル基転移酵素を利用してフコシル化オリゴ糖を生産するための方法、及び栄養組成物を製造するためのこのようにして生産されたフコシル化オリゴ糖の使用法を提供する。【解決手段】ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)を生産するための方法は、a)異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作された少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を提供するステップ、b)少なくとも1つの炭素源の存在下で及び少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下で少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養するステップ;並びにc)フコシル化オリゴ糖を回収するステップを含む。【選択図】なし

Description

本発明は新規のフコシル基転移酵素及びフコシル化オリゴ糖の生産におけるその使用に関する。
おおよそ200の構造的に異なるヒトミルクオリゴ糖(HMO)が、これまで同定されている。前記HMOは二糖類ラクトースを基にしており、N-アセチルグルコサミン、フコース、シアル酸及びガラクトースを基にする追加の単糖残基を保有している。ヒトミルク中のHMOの濃度及び組成は個体間で変動し、授乳期の間は初乳中の最大20g/Lから成熟乳中の5~10g/Lまで変動する。
いわゆる「分泌表現型」に属する女性のミルクは、高含量のα-1,2-フコシル化HMOを含有する。女性たちは、いわゆる「フコシル基転移酵素2」をコードするFUT2遺伝子を発現する。そのミルク中で最も大量にあるHMOは、2’-フルコシル-ラクトース(2’-FL;Fuc(α1-2)Gal(β1-4)Glc)及びラクト-N-フコペンタオース-l(LNFP-I;Fuc(α1-2)Gal(β1-3)GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)である。
ヒトミルクオリゴ糖は、乳児の腸を通過中は消化されない。乳児腸でのその残留性のせいで、ヒトミルクオリゴ糖は子供に有益な効果を示す。より具体的には、HMOは、共生微生物であるビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)及びラクトバシラス属(Lactobacillus)の炭素源として役割を果たしているので、プレバイオティックであることが明らかにされている。したがって、HMOは乳児の腸においてこれらの微生物の増殖を支えている。
ヒトミルクオリゴ糖はまた、腸の粘膜表面上のグリカン構造体への病原体の付着を防ぐことにより、前記病原体による乳児の腸への定着を直接減少させる。HMOは、上皮表面グリカンに対するその構造的類似性ゆえにデコイとして機能し、病原体の侵入を阻害し、それによって感染のリスクを低減させる。
アルファ-1,2-フコシル化HMOは、最も一般的な細菌性下痢の原因物質である、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の感染に対して防御することが明らかにされている。α-1,2-フコシル化HMOは、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)の熱安定毒素により引き起こされる下痢に対する防御にも関連している。その上、下痢媒介カリシウイルスの感染のリスクは、母乳中の高含量のα-1,2-フコシル化HMOにより低減される。HMOは、特にフコシル化HMOラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V;Gal(β1-3)GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)[Fucα1-3]Glc)は、院内下痢の最も一般的な原因である、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)由来の毒素Aの炭水化物結合部位に結合する。このように、HMOは、C.ディフィシル由来の毒素Aと細胞受容体の相互作用を妨げると思われる。さらに、上皮細胞へのシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)の付着は、2’-FL及び3-フルコシルラクトース(3-FL;Gal(β1-4)[Fucα1-3]Glc)により著しく阻害された。急性胃腸炎の主因であるノロウイルス(ノーウォーク様ウイルス、NLV)の組織血液型抗原への結合は、α-1,2-フコシル化HMOにより、並びにα-1,3-フコシル化HMOにより妨げられる。これは、宿主受容体グリカンへのノロウイルスカプシド結合を阻害するこれらのHMOの潜在能力を示している。
HMOの、特にフコシル化HMOの既知の利点のおかげで、その合成のための経済的に価値ある工程が望まれる。代謝的に操作された細菌を利用するHMOを生産するための生物工学的工程が、記載されてきた。遺伝的に操作された細菌によりフコシル化オリゴ糖を生産するための、いくつかのフコシル基転移酵素が、記載されている。
2’-フルコシルラクトース(2’-FL)の産生では、イー・コリ(E.coli)O126由来のα-1,2-フコシル基転移酵素WbgL及びヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)由来のFucT2(欧州特許第2479263号B1)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)O22由来のα-1,2-フコシル基転移酵素WblA、H.ビリス(H.bilis)ATCC437879由来のFutD、H.シネディ(H.cinaede)CCUG18818由来のFutE、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vulgatus)ATCC8482由来のFutN、バクテロイデス・オバータス(Bacteroides ovatus)ATCC8483由来のFutO、イー・コリO55:H7由来のWbgN、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)NCTC9343由来のBft1及びBft3(国際公開第2014/018596号A2)、並びにルイスY及びルイスB糖類の合成のためのH.ピロリ由来のα-1,2-フコシル基転移酵素FucT2(米国特許第6,670,160号B2)が記載されていた。
3-フルコシルラクトースの産生では、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)由来のα-1,3-フコシル基転移酵素Amuc、並びにバクテロイデス・フラジリス由来のFucT6及びFucT7(欧州特許第2439264号A1)、H.ピロリ由来のα-1,3-フコシル基転移酵素FutA(米国特許出願公開第2014/0120611号A1)が記載されている。さらに、国際公開第2016/040531号A1は、3-フルコシルラクトース及びラクトジフコテトラオースの合成のためのB.ノルディイ(B.nordii)CL02T12C05由来のα-1,3-フコシル基転移酵素CafC並びにLNnFP-IIIの生産のためのH.ヘパティカス(H.hepaticus)ATCC51449由来のCafDを開示している。
しかし、フコシル基転移酵素を含む糖転移酵素が、動態、基質特異性、ドナー基質及びアクセプター分子に対する親和性、安定性並びに可溶性の点で大幅に変動することがあることは当技術分野では公知である。さらに、所望のフコシル化反応を媒介するためのフコシル基転移酵素の選択は、所望のフコシル化オリゴ糖の最終収量に著しい影響を及ぼす。例えば、国際公開第2014/018596号A1は、WbgLを産生するイー・コリが2’-FLを合成し、ラクトジフコテトラオース(LDFT)も合成することができ、イー・コリ由来のWbsJ又はV.コレラ(V.cholerae)由来のWblAを産生するイー・コリは、2’-FL合成を促進することはできたが、LDFTを合成しなかったことを教示している。
さらに、フコシル化四糖、フコシル化五糖、フコシル化六糖又は更にはフコシル化七糖のようなさらに複雑なフコシル化オリゴ糖の生産は、小規模でしか知られていない。
これらの欠点に鑑みて、もっと迅速な動態、ヌクレオチド糖ドナーに対するより大きな親和性及び/又はアクセプター分子に対する異なる特異性を有するさらなるフコシル基転移酵素の必要性が存在する。複雑なフコシル化ヒトミルクオリゴ糖の商業的生産において用いることが可能なフコシル基転移酵素の、すなわち、三、四、五又は六糖でもフコシル化することができ及び/又は所望のフコシル化オリゴ糖の商業的に価値のある量を入手するのに十分な活性を有するフコシル基転移酵素の特定の必要性が存在する。
この問題を解決しようと試みて、発明者らは、いまだ未知のフコシル基転移酵素を表す登録を求めてタンパク質データベース及びヌクレオチド配列データベースを検索した。データベース検索から検索したヒットにより提供される推定フコシル基転移酵素は、対応するポリペプチドのフコシル基転移酵素活性に関して分析した。このアプローチに基づいて、ラクトテトラオースをフコシル化されるアクセプター分子として利用する、いまだ未知のフコシル基転移酵素を同定した。
欧州特許第2479263号明細書 国際公開第2014/018596号 米国特許第6,670,160号明細書 欧州特許第2439264号明細書 米国特許出願公開第2014/0120611号明細書 国際公開第2016/040531号 国際公開第2014/018596号
細菌細胞が起源である新規のフコシル基転移酵素が、提供される。前記フコシル基転移酵素は、このフコシル基転移酵素活性のためにラクトテトラオースをアクセプター分子として利用する。前記新規フコシル基転移酵素を使用すれば、LNT及び/又はLNnTを基にしてフコシル化オリゴ糖を合成することが可能である。
第1の態様によれば、フコシル化オリゴ糖を生産するための方法であって、遺伝的に操作された細胞が前記フコシル化オリゴ糖を生産するために使用される方法が、提供される。前記遺伝的に操作される細胞は、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができる異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されており、前記アクセプター分子は、ラクトテトラオースである。
第2の態様によれば、フコシル化オリゴ糖を生産するための方法において使用するための遺伝的に操作された細胞が、提供される。前記遺伝的に操作される細胞は、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができる異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されており、前記アクセプター分子は、ラクトテトラオースである。
第3の態様によれば、細胞中で増やされる場合の異種フコシル基転移酵素を発現するための組換え核酸分子であって、前記フコシル基転移酵素はフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができ、前記アクセプター分子はラクトテトラオースである、組換え核酸分子が、提供される。
第4の態様によれば、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができるフコシル基転移酵素であって、前記アクセプター分子はラクトテトラオースである、フコシル基転移酵素が、提供される。
第5の態様によれば、フコシル化オリゴ糖を生産するための、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができるフコシル基転移酵素の使用であって、前記アクセプター分子はラクトテトラオースである、フコシル基転移酵素の使用が、提供される。
第6の態様によれば、インビトロ生体触媒によりフコシル化オリゴ糖を生産するための方法であって、フコシル基転移酵素が使用され、前記フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができる方法が、提供される。
第7の態様によれば、第1の態様に従った方法により又は第6の態様に従った方法により生産されるフコシル化オリゴ糖が、提供される。
第8の態様によれば、栄養組成物を製造するための第7の態様に従ったフコシル化オリゴ糖の使用が、提供される。
第9の態様によれば、第7の態様に従った少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖を含有する栄養組成物が、提供される。
イー・コリにおいて推定フコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列の異種発現のために使用された発現ベクターpINT-malE-fucT-zeoのプラスミド地図を示す概略図である。 フコシル化1型(コア構造:Gal(β1,3)GlcNAc)及び2型(コア構造:Gal(β1,4)GlcNAc)産物のLC/MS分析のクロマトグラムを示す図である。LNT及びLNnTのフコシル化誘導体のクロマトグラムを示す図である。 フコシル化1型(コア構造:Gal(β1,3)GlcNAc)及び2型(コア構造:Gal(β1,4)GlcNAc)産物のLC/MS分析のクロマトグラムを示す図である。B.フラジリス由来の異種発現されたフコシル基転移酵素、すなわち、糖の標準のクロマトグラムと比べたFucT109(上パネル)を含有する細胞抽出物を使用してインビトロ反応において合成されたLNFP-IIIとLNnFP-Vの混合物のクロマトグラムを示す図である。 イー・コリにおけるラクト-N-テトラオース及びラクト-N-ネオテトラオースを基にするフルコシル化オリゴ糖の生産のための代謝経路の概略図である。 pINT-malE-fucT109-zeoを含有するラクト-N-フコペンタオース生産イー・コリ株の培養上澄みのTLC分析を描いている図である。 異なるfucT遺伝子の染色体組込み後のイー・コリ(株#993)による細胞外LNFP-Iの生産を実証する棒グラフを示す図である。 炭素源としてグルコースを使用して1L-発酵におけるイー・コリ(株#1772)によるLNFP-Iの生産を実証する棒グラフを示す図である。 イー・コリ株#1886において発現される加水分解酵素によるLNT-2及びラクトースの分解を例証するグラフを示す図である。 β-1,3-ガラクトシダーゼBga42Aによる時間依存性LNT分解を例証する薄層クロマトグラフィーの画像を示す図である。
第1の態様によれば、フコシル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
a)異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作された少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞であって、前記異種フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースである、遺伝的に操作された細胞を提供するステップ;
b)少なくとも1つの炭素源の存在下で及び少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下で少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養するステップ;並びに
c)任意選択的に、フコシル化オリゴ糖を回収するステップ
を含む前記方法が提供される。
第1の態様に従った方法では、遺伝的に操作された細胞が提供される。本明細書で使用される用語「遺伝的に操作された」とは、分子生物学的方法を使用して細胞の遺伝子構成を改変することである。細胞の遺伝子構成の改変は、ヌクレオチド、トリプレット、遺伝子、オープンリーディングフレーム、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター並びに遺伝子発現を媒介する及び/又は制御する他のヌクレオチド配列を挿入する、欠失する、置換する及び/又は修飾して、種境界内の及び/又はこれを超える遺伝子の移動を含んでいてもよい。細胞の遺伝子構成の改変は、特定の所望の特性を有する遺伝的に改変された生物を生み出すことを目標とする。遺伝的に操作された細胞は、細胞の天然の(遺伝的に操作されていない)形態には存在しない1つ以上の遺伝子を含有することが可能である。細胞の遺伝情報のヌクレオチド配列を挿入する、欠失する又は変更するために、外来性の核酸分子を導入する及び/又は外来性の核酸分子(組換え、異種)を細胞の遺伝情報に挿入するための技法は当業者には公知である。遺伝的に改変された細胞は、細胞の天然の形態に存在する1つ以上の遺伝子を含有することが可能であり、前記遺伝子は人工的な手段により改変され細胞内に再導入される。用語「遺伝的に操作された」は、細胞にとって内在性の核酸分子を含有し、細胞から核酸分子を取り除かずに改変されている細胞も包含する。そのような改変は、遺伝子置換、部位特異的突然変異、及び関連する技法により得られる改変を含む。
遺伝的に操作された細胞は原核細胞又は真核細胞である。適切な細胞は、酵母細胞、細菌、古細菌、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳動物細胞(ヒト細胞及び細胞株のような)を含む動物細胞を含む。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、原核細胞は細菌細胞であり、好ましくは、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、スポロラクトバチルス属種(Sporolactobacillus spp.)、ミクロモノスポラ属種(Micromonospora spp.)、ミクロコッカス属種(Micrococcus spp.)、ロドコッカス属種(Rhodococcus spp.)及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選択される属から選択される。適切な細菌種は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・コアングランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモフィルス(Bacillus thermophilus)、バチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・サーモフィルス(Enterococcus thermophiles)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)(パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans))、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・イエンセン(Lactobacillus jensenii)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、パンテア・シトレア(Pantoea citrea)、ペクトバクテリウム・カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Proprionibacterium freudenreichii)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)及びザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、真核細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞である。酵母細胞は、好ましくは、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミコプシス属種(Saccharomycopsis sp.)、ピキア属種(Pichia sp.)、特に、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ属種(Hansenula sp.)、クルイベロマイセス属種(Kluyveromyces sp.)、ヤロウイア属種(Yarrowia sp.)、ロドトルラ属種(Rhodotorula sp.)及びシゾサッカロミセス属種(Schizosaccharomyces sp.)からなる群から選択される。
遺伝的に操作された細胞は、異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されている。本明細書で使用される用語「異種」とは、細胞又は生物にとって外来性であるヌクレオチド配列、核酸分子又はポリペプチド、すなわち、前記細胞又は生物では天然には存在しないヌクレオチド配列、核酸分子又はポリペプチドのことである。「異種配列」又は「異種核酸」又は「異種ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、特定の宿主細胞にとって外来性である供給源に(例えば、異なる種に)起源を持つ、又は同じ供給源由来の場合には、その最初の形態から改変されている配列又は核酸又はポリペプチドである。したがって、プロモーターに作動可能に連結されている異種核酸は、プロモーターが由来した供給源とは異なる供給源由来であるか、又は同じ供給源由来の場合には、その最初の形態から改変されている。異種配列は、例えば、トランスフェクション、形質転換、コンジュゲーション又は形質導入により、宿主微生物宿主細胞のゲノム中へ安定的に導入され、このようにして、遺伝的に改変された宿主細胞を表し得る。配列が導入されることになる宿主細胞に依存する技法を用いてもよい。種々の技法が当業者には公知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)に開示されている。したがって、「異種ポリペプチド」は、細胞中に天然には存在しないポリペプチドであり、「異種フコシル基転移酵素」は、細胞中に天然には存在しないフコシル基転移酵素である。
本明細書で使用される用語「フコシル基転移酵素」とは、フコース残基のドナー基質からアクセプター分子への転移を触媒することができるポリペプチドのことである。フコース残基のアクセプター分子への転移のためのドナー基質は典型的には、グアノシン-ジホスフェートL-フコース(GDP-L-フコース)である。フコース残基に適したアクセプター分子は、オリゴ糖、糖ペプチド、糖タンパク質及び糖脂質を含む。典型的には、フコース残基は、例えば、オリゴ糖又は糖タンパク質若しくは糖脂質の糖部分のN-アセチルグルコサミン残基、N-アセチルガラクトサミン残基、ガラクトース残基、フコース残基、シアル酸残基又はグルコース残基に転移される。本明細書で使用される用語「フコシル基転移酵素」は、前記新規のフコシル基転移酵素の機能的変異体、前記フコシル基転移酵素の機能的断片及び前記機能的変異体の機能的断片も包含すると理解されている。用語「機能的」は、前記変異体及び断片もフコース残基のドナー基質からアクセプター分子への転移を触媒することができること、すなわち、前記変異体及び断片がフコシル基転移酵素活性を有することが可能であることを示している。
本明細書で使用される用語「機能的断片」とは、天然に存在するフコシル基転移酵素と比べた場合、短縮型ポリペプチドのことであり、この断片は、前記断片の起源となる天然に存在するポリペプチドと同じフコシル基転移酵素活性を有することができる。
本明細書で使用される用語「機能的変異体」とは、前記誘導体の起源となる天然に存在するポリペプチドと同じフコシル基転移酵素活性を有することができるが、天然に存在するポリペプチドと比べた場合、変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドのことである。
異種フコシル基転移酵素は、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子へ転移させることができる。異種フコシル基転移酵素に関して用語「できる」とは、異種フコシル基転移酵素がフコシル基転移酵素活性を有するためには適切な反応条件が必要とされるという前提のある、異種フコシル基転移酵素のその酵素活性のことである。適切な反応条件がなければ、異種フコシル基転移酵素はその酵素活性を持たないが、その酵素活性は保持しており、適切な反応条件が回復されるとその酵素活性を有する。適切な反応条件は、適切なドナー基質の存在、適切なアクセプター分子の存在、例えば、一価又は二価イオン、適切な範囲のpH値、適切な温度、等のような不可欠な補助因子の存在を含む。異種フコシル基転移酵素の酵素反応を引き起こすありとあらゆる要因の最適値が満たされる必要はないが、反応条件は、異種フコシル基転移酵素がこの酵素活性を遂行するようなものでなければならない。したがって、用語「できる」は、異種フコシル基転移酵素の酵素活性が不可逆的に損なわれるいかなる条件も排除し、異種フコシル基転移酵素のいかなるそのような条件への曝露も排除する。その代わり、「できる」は、フコシル基転移酵素が酵素的に活性である、すなわち、適切な(すべての必要条件はフコシル基転移酵素がその酵素活性を遂行するのに必要である)反応条件が提供される場合には、このフコシル基転移酵素活性を有することを意味する。
フコシル基転移酵素は、フコースとアクセプター分子の糖部分の間にα-1,2-、α-1,3-、α-1,4-又はα-1,6-グリコシド結合を形成することが可能である。したがって、用語「アルファ-1,2-フコシル基転移酵素」とは、フコースのドナー基質からアクセプター分子への転移を触媒して、フコース残基とアクセプター分子の糖残基のアルファ-1,2-結合を形成する糖転移酵素のことである。用語「アルファ-1,3-フコシル基転移酵素」とは、フコースのドナー基質からアクセプター分子への転移を、フコース残基とアクセプター分子の糖残基のアルファ-1,3-結合で触媒する糖転移酵素のことである。用語「アルファ-1,4-フコシル基転移酵素」とは、フコースのドナー基質からアクセプター分子への転移を、フコース残基とアクセプター分子の糖残基のアルファ-1,4-結合で触媒する糖転移酵素のことであり、用語「アルファ-1,6-フコシル基転移酵素」とは、フコースのドナー基質からアクセプター分子への転移を、フコース残基とアクセプター分子の糖残基のアルファ-1,6-結合で触媒する糖転移酵素のことである。
フコース残基をドナー基質からアクセプター分子へ転移させることに関する用語「ドナー基質」とは、フコース残基を含む分子であって、特定のアクセプター分子に転移されることになるフコースの供給源として異種フコシル基転移酵素により利用される前記分子のことである。典型的には、ドナー基質はGDP-フコースである。
本明細書で使用される用語「アクセプター分子」とは、異種フコシル基転移酵素の酵素活性によりドナー基質からフコース残基を受け取る分子のことである。本明細書で使用される場合、用語「アクセプター分子」とは、さらに具体的には、糖部分からなる又は糖部分を含む分子のことである。別段述べてなければ、本明細書で使用される用語「アクセプター分子」とはラクトテトラオースのことである。
異種フコシル基転移酵素は、フコース残基をアクセプター分子としてのラクトテトラオースに転移させることができる。本明細書で使用される用語「ラクトテトラオース」とは、四糖、すなわち、4つの単糖残基からなるオリゴ糖のことであり、四糖はその還元末端にラクトースモチーフ(Gal(β1,4)Glc)を含む。
実施形態では、ラクトテトラオースは、ラクト-N-テトラオース(LNT;Gal(β1,3)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)Glc)及びラクト-N-ネオテトラオース(LNnT;Gal(β1,3)GlcNAc(β1,4)Gal(β1,4)Glc)からなる群から選択される。異種フコシル基転移酵素の酵素活性によりフコシル化オリゴ糖、さらに具体的には、フコシル化ラクトテトラオース、すなわち、ラクトフコペンタオースが生じる。前記ラクトフコペンタオースは、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-ネオフコペンタオースI(LNnFP-I)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-ネオフコペンタオースIII(LNnFP-III)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)及びラクト-N-ネオフコペンタオースV(LNnFP-V)からなる群から好ましくは選択される五糖である。
種々の細菌種のゲノムにおいて同定され、フコース残基をドナー基質からラクトテトラオースへ転移させるためのフコシル基転移酵素活性を有することができるポリペプチドは、表1に示されている。
Figure 2024028710000001
したがって、追加の及び/又は代わりの実施形態では、異種フコシル基転移酵素は、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択される。したがって、異種フコシル基転移酵素は、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、並びに配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体の群から選択される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、異種フコシル基転移酵素は、
i)配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
ii)好ましくは、配列の全長にわたって、配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列の1つに少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
iii)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
iv)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
v)iii)及びiv)に従ったポリペプチドのいずれか1つの機能的断片をコードするヌクレオチド配列;又は
vi)そこでは核酸分子は、厳密な条件下でi)、ii)、iii)、iv)若しくはv)に従った核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする
を含む核酸分子によりコードされる。
表現「配列番号1~15」とは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群のことである。
「厳密な条件下でハイブリダイズする」とは、例えば、全体で約1時間、65℃、4×SSCでハイブリダイズし、引き続き65℃、0.1×SSCで複数回洗浄することである。より厳密でないハイブリダイゼーション条件は、例えば、37℃、4×SSCでハイブリダイズし、引き続き室温、1×SSCで複数回洗浄することである。「厳密なハイブリダイゼーション条件」は、68℃、0.25Mのリン酸ナトリウム、pH7.2、7%(w/v)のSDS、1mMのEDTA及び1%(w/v)のBSAで16時間ハイブリダイズし、引き続き68℃、2×SSC及び0.1%(w/v)のSDSでの2回洗浄を意味することも可能である。
異種フコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列は、直鎖状核酸分子上に又は環状核酸分子上に存在していてもよい。さらに及び/又は代わりに、異種フコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列は、染色体外核酸分子上に存在していても、又は細胞の染色体核酸分子に若しくはこの少なくとも1つに組み込まれていてもよく、前記染色体核酸分子は直鎖状又は環状(細菌染色体)核酸分子でもよい。
少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞は少なくとも1つの炭素源の存在下で培養される。
本明細書で使用される場合、用語「培養する」は、発酵ブロス中及び所望のフコシル化オリゴ糖の生産に許容的でありかつ適した条件下で細胞を生育させることを意味する。いくつかの適切な発酵ブロス及び細胞培養のための条件は、当業者の技術的専門的背景に関連して本発明の開示を読めば当業者には容易に利用可能である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つの炭素源は、グリセロール、サクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、モラセス、ラクトース、キシロース、セルロース、ピルビン酸塩、コハク酸塩、合成ガス一酸化炭素並びに所望のフコシル化オリゴ糖を生産するように遺伝的に操作された細胞が代謝することが可能な他の任意の炭素及びエネルギー源からなる群から選択される。この文脈では、他のいかなる発酵基質(好ましくは低コストの発酵基質)も炭素源として用いることが可能であることは理解されるべきであり、当業者であれば、所望の単糖を大規模に生産する微生物を生育するために本発明内で適した炭素源を用いることが容易にできる。フコシル化オリゴ糖の生産の好ましい実施形態では、特に遺伝的に操作された細胞がラクトースそれ自体を合成することができない場合には、ラクトースが発酵ブロスに供給される。フコシル化オリゴ糖の生産の追加の及び/又は代わりの実施形態では、特に遺伝的に操作された細胞がフコースそれ自体を合成することができない場合には、フコースが発酵ブロスに供給される。発酵ブロスにフコースを補充すれば、フコースサルベージ経路又はフコースサルベージシステムを使用してGDP-フコースの細胞内合成が増強される可能性がある。
少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞は、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基を異種フコシル基転移酵素のドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下で培養される。フコシル化オリゴ糖を生産するためには、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞が、少なくとも1つの細胞が代謝的に活性であるのに十分な量の栄養分を提供する発酵ブロスにおいて、異種フコシル基転移酵素が発現されるように、かつ、細胞が異種フコシル基転移酵素が酵素的に活性であるのに十分な量のドナー基質及びアクセプター分子を提供するように、培養される。少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞が、その異種フコシル基転移酵素の活性によってフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適している条件では、発酵ブロスは、とりわけ、適切な温度、適切なpH値、発酵ブロスに溶解している適切な量の酸素、並びに適切なモル浸透圧濃度を有する。適切な値は変動する場合があり、培養される細胞型に依存している。適切な値は当業者であれば容易に決定することが可能である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基を異種フコシル基転移酵素のドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下での少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞の培養は、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養しつつ発酵ブロスに外因性のラクトースを供給するステップを含む。これにより、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞は、ラクトテトラオースの内因性合成のために前記外因性に供給されたラクトースを取り入れることが可能になる。次に、前記内因性に合成されたラクトテトラオースは異種フコシル基転移酵素に対するアクセプター基質として役立つことが可能になる。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基を異種フコシル基転移酵素のドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下での少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞の培養は、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞によるラクトースの内因性合成を含む。実施形態では、ラクトースの内因性合成は、遺伝的に操作された細胞のラクトースを合成する天然の能力のせいで起きてもよい。さらに及び/又は代わりに、ラクトースの内因性合成は、遺伝的に操作された細胞において異種β-1,4-ガラクトシル基転移酵素を過剰発現することにより生じる。したがって、遺伝的に操作された細胞は、遺伝的に操作されていない前駆細胞と比べた場合、前記異種β-1,4-ガラクトシル基転移酵素遺伝子を過剰発現するようにも遺伝的に操作されている。前記異種β-1,4-ガラクトシル基転移酵素遺伝子は、ガラクトース及びグルコースからのラクトースの形成を触媒するβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素をコードする。適切なβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素の例は、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)由来のPm1141(受託番号AEC04686)及びアグロゲイティバクター・アフロフィルス(Aggregatibacter aphrophilus)NJ8700由来のLex1(受託番号AK965832)からなる群から選択される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基を異種フコシル基転移酵素のドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下での少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞の培養は、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養しつつ発酵ブロスにラクト-N-トリオース-2(LNT-2)を供給するステップを含み、前記少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞は、(i)β-1,3-ガラクトシル基転移酵素又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素、並びに(ii)糖転移酵素としてα-1,2-及び/又はα-1,3-フコシル基転移酵素を含む。LNT-2は、かなり効率的に生産することが可能な三糖である。発酵ブロスにLNT-2を補充すれば、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞は、前記外因性に供給されるLNT-2をLNT又はLNnTの内因性合成のための前駆体として取り入れることが可能になり、このLNT又はLNnTは、今度は異種フコシル基転移酵素のためのアクセプター分子として役立てる。
フコシル化オリゴ糖を生産するための方法の追加の及び/又は代わりの実施形態によれば、少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養するステップを含む方法は、連続発酵工程又は回分発酵工程、好ましくは、流加回分発酵工程である。
したがって、培養が連続発酵工程、すなわち、遺伝的に操作された細胞の培養ステップ中、少なくとも1つの炭素源が発酵ブロスに絶えず添加され、発酵ブロスが発酵工程から連続して回収される工程である実施形態によれば、培養ステップ中炭素源を絶えず添加することにより、オリゴ糖の一定の効果的な生産が達成される。
培養が回分発酵工程である実施形態によれば、発酵の開始時に特定の栄養組成物並びに成長を最適化する特定の温度、圧力、通気及び他の環境条件を用いる閉鎖培養系が使用される。細胞の培養中、栄養分は発酵工程に添加されず、廃棄物も発酵工程から取り除かれない。
流加回分発酵工程は、培養中1つ以上の栄養分(基質)がバイオリアクターに与えられ(供給され)、産物は行程の最後までバイオリアクター中に残る又は細胞及び産物を含む発酵ブロスの少なくとも一部分が発酵工程中にバイオリアクターから取り除かれる操作技法であると理解されている。発酵ブロスの部分は、発酵工程中バイオリアクターから複数回及び/又は異なる間隔で取り除くことが可能である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、フコシル化オリゴ糖を生産するための方法は、生産細胞の培養物からの所望のフコシル化オリゴ糖の回収を含む。本明細書で使用される場合、用語「回収する」は、本発明に従って宿主微生物により生産されるオリゴ糖を宿主微生物培養物から単離するか、収穫するか、精製するか、収集するか又は他の方法で分離することを意味する。本明細書で使用される用語「精製する」とは、少なくとも相当量の不純物及び望ましくない化合物の除去のことである。前記不純物及び望ましくない化合物(望ましくない副産物)は、細胞、イオン及び塩、所望のラクトフコペンタオース以外の糖、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、特にラクトテトラオース及び所望のラクトフコペンタオース以外の五糖を含む。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、フコシル化オリゴ糖の回収及び/又は精製は、(i)フコシル化オリゴ糖を前記フコシル化オリゴ糖の溶液から結晶化すること、及び(ii)フコシル化オリゴ糖を噴霧乾燥することからなる群から選択されるステップを含む。これらのステップは、フコシル化オリゴ糖を結晶化形又は非晶形で提供する。
所望のフコシル化オリゴ糖の回収又は精製の追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つのグリコシダーゼが適用され、少なくとも1つのグリコシダーゼは、邪魔をする及び/又は望ましくない不純物又は副産物、未使用の出発基質並びに所望のオリゴ糖の生産中に生成される中間産物を分解するのに使用される。少なくとも1つのグリコシダーゼを使用することによって、例えば、所望のフコシル化オリゴ糖以外の他の(オリゴ)糖は、所望のフコシル化オリゴ糖の合成中に少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞において又はこれによって生成され、他の糖は所望のオリゴ糖の精製ステップを妨害するが、代謝可能であることが実現される。
少なくとも1つのグリコシダーゼは、発酵工程の終了時に発酵ブロスに外部から添加すること、又は1つの遺伝的に操作された細胞により内因性に合成することも可能である。
例えば、前記1つ以上のグリコシダーゼをコードする遺伝的に操作された細胞の内因性遺伝子が欠失しているため、又は前記1つ以上のグリコシダーゼをコードする内因性遺伝子の発現が損なわれているために、遺伝的に操作された細胞が1つ以上のグリコシダーゼを合成しない場合には、少なくとも1つのグリコシダーゼを発酵ブロスに添加するのが有利である。
少なくとも1つのグリコシダーゼが発酵ブロスに添加される実施形態では、少なくとも1つのグリコシダーゼはフコシル化オリゴ糖を生産するために遺伝的に操作された細胞以外の少なくとも1つの他の細胞により産生され、前記少なくとも1つの他の細胞は少なくとも1つのグリコシダーゼをコードする遺伝子を発現するために発酵ブロスにさらに添加される。
この実施形態では、少なくとも1つの他の細胞により発現されている少なくとも1つのグリコシダーゼは、前記1つの他の細胞の天然に存在するグリコシダーゼ又は異種グリコシダーゼであり、前記他の細胞は異種グリコシダーゼを発現するように安定的に形質変換されている、及び他の細胞における異種グリコシダーゼの発現は誘導性である。好ましくは、異種グリコシダーゼは、少なくとも1つの他の細胞のゲノム中に安定的に組み込まれているヌクレオチド配列によりコードされている。
この実施形態は、連続発酵工程ではフコシル化オリゴ糖の生産に特に適しており、例えば、2つの別々の発酵容器又はコンテナが提供され、1つの容器はオリゴ糖合成反応に使用され、第2の容器は本質的に、異種グリコシダーゼを発現する細胞を培養するのに用いられる。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つの他の細胞により発現されている少なくとも1つのグリコシダーゼは細胞内グリコシダーゼである。したがって、少なくとも1つの細胞により発現されている少なくとも1つのグリコシダーゼが前記少なくとも1つの細胞内に存在する。したがって、前記少なくとも1つの他の細胞は、内在化された化合物が少なくとも1つの細胞内グリコシダーゼにより分解されるように、望ましくない不純物、副産物、未使用の出発基質及び/又は所望のオリゴ糖の生産中に生み出される中間産物を摂取する。
代わりの実施形態では、少なくとも1つの他の細胞により発現されている少なくとも1つのグリコシダーゼは、少なくとも1つの他の細胞から発酵ブロス中に分泌される。次に、望ましくない不純物、副産物、未使用の出発基質及び/又は所望のオリゴ糖の生産中に生み出される中間産物は発酵ブロス中で分解される。この実施形態は、少なくとも1つの他の細胞が望ましくない不純物、副産物、未使用の出発基質及び/又は所望のオリゴ糖の生産中に生み出される中間産物を内在化できなくてもよい点で有利である。
好ましい実施形態では、グリコシダーゼはラクトースを分解する。ラクトースを分解するのに適したグリコシダーゼは、イー・コリのβ1,4-ガラクトシダーゼLacZである。中間産物であるLNT-2を加水分解するのに適したグリコシダーゼは、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥムJCM1254由来のβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼBbhlである。中間産物LNTを加水分解するのに適したグリコシダーゼは、ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(infantis)由来のβ-1,3-ガラクトシダーゼBga42Aである。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、少なくとも1つのグリコシダーゼも産生する遺伝的に操作された細胞又は少なくとも1つのグリコシダーゼを産生する少なくとも1つの他の細胞は、外部誘導されると、例えば、温度誘導発現を介して又は基質誘導発現を介して少なくとも1つのグリコシダーゼを発現する。これは、少なくとも1つのグリコシダーゼの発現が、所望のフコシル化オリゴ糖の合成中下方調節されており、例えば、発酵工程の終了時に温度又はIPTGのような誘導因子の添加により誘導されてもよいことを意味する。グリコシダーゼの発現は、十分な及び/又は本質的に最大量のオリゴ糖が遺伝的に操作された細胞の培養中に生産された後に誘導される。引き続いて、発現されているグリコシダーゼは、望ましくない糖中間体、基質、等を分解し、培地から、所望のオリゴ糖の精製を邪魔する又は複雑にすると考えられる糖中間体又は基質を本質的に非含有にする。いくつかの適切な誘導性発現ツールは先行技術において公知であり(例えば、Sambrookら、1989年、上記参照)、当業者であれば、所望のオリゴ糖にそれぞれ適したツールを用いることができる。
遺伝子に関して本文脈内での「調節された」は、一般には、その転写が制御された様式で調節されている遺伝子、例えば下方又は上方調節されることが可能である遺伝子として理解されており、すなわち、例えば下方調節も上方調節もされていない他の調節されていない遺伝子とは、調節された遺伝子によりコードされるタンパク質の合成された量が、異なっている。
追加の実施形態では、望ましくない糖中間体、基質、等の分解から生じる単糖は、遺伝的に操作された細胞が代謝することが可能である。
第2の態様によれば、フコシル化オリゴ糖を生産するための又はこれを生産するための方法において使用するための遺伝的に操作された細胞が提供される。前記遺伝的に操作された細胞は、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子へ転移させることができる異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されており、前記アクセプター分子はラクトテトラオースである。
宿主細胞に関連して本明細書で使用される用語「遺伝的に操作された」は、宿主細胞が異種若しくは組換え核酸分子を複製し、及び/又は異種ヌクレオチド配列(すなわち、「前記細胞にとって外来性の」ヌクレオチド配列)によりコードされるペプチド若しくはタンパク質を発現することを示す。遺伝的に操作された細胞は、天然(非組換え)型の細胞内には見出されない遺伝子を含有することが可能である。遺伝的に操作された細胞は、天然型の細胞に見出される遺伝子で、人工的手段により改変され細胞内に再導入されている遺伝子も含有することが可能である。この用語は、細胞にとって内因性であって、細胞から核酸を取り除かずに改変されている核酸分子を含有する細胞も包含しており、そのような改変は、遺伝子置換、部位特異的突然変異及び関連する技法により得られる改変を含む。したがって、「組換えポリペプチド」は遺伝的に操作された細胞により産生されているポリペプチドである。
したがって、「遺伝的に操作された細胞」は形質転換されている細胞又はトランスフェクトされている細胞として理解されている。
このように、本発明において使用されるヌクレオチド配列は、例えば、宿主微生物細胞中に安定的に形質転換される/トランスフェクトされる又は他の方法で導入されることになるベクターに含まれていてもよい。
選択された宿主細胞を形質転換するか又はトランスフェクトするのに使用するための、遺伝物質の単離、合成、精製及び増幅を含む、「組換えDNA」を作製するための方法は、当業者には公知である。したがって、細胞を、選択された外因性(すなわち、外来性又は「異種」)ヌクレオチド配列を含む「ハイブリッド」ウイルス又は環状プラスミドDNAで形質転換するのは、一般常識である。当技術分野で公知のこれらの手順は、環状ウイルス又はプラスミドDNAを酵素的に切断して直鎖状DNA鎖を形成することにより、形質転換ベクターを作製することを含む。通常、所望のタンパク質産物をコードする配列を含む選択された外来DNA鎖は、同じ/類似する酵素の使用を通じて直鎖状形態に調製される。直鎖状ウイルス又はプラスミドDNAは、修復工程を引き起こしウイルス又は環状DNAプラスミド中に「スプライシングされた」選択された外因性DNAセグメントを含む「ハイブリッド」ベクターを形成することができるライゲーティング酵素の存在下で外来性DNAと一緒にインキュベートされる。
遺伝的に操作された細胞は、原核細胞又は真核細胞である。適切な細胞は、酵母、細菌、古細菌、真菌、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳動物細胞(ヒト細胞及び細胞株のような)を含む動物細胞を含む。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、原核細胞は細菌細胞、好ましくは、バチルス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属、スポロラクトバチルス属種、ミクロモノスポラ属種、ミクロコッカス属種、ロドコッカス属種及びシュードモナス属からなる群から選択される属から選択される。適切な細菌種は、バチルス・スブチリス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・コアングランス、バチルス・サーモフィルス、バチルス・ラテロスポルス、バチルス・メガテリウム、バチルス・ミコイデス、バチルス・プミルス、バチルス・レンタス、バチルス・セレウス、バチルス・サーキュランス、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、シトロバクター・フロインディ、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・アセトブチリカム、コリネバクテリウム・グルタミクム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・サーモフィルス、エシェリキア・コリ、エルウィニア・ヘルビコラ(パントエア・アグロメランス)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・イエンセン、ラクトコッカス・ラクティス、パンテア・シトレア、ペクトバクテリウム・カロトボラム、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・エルジノーサ、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びザントモナス・カンペストリスである。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、真核細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞である。酵母細胞は、好ましくは、サッカロミセス属種、特に、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロミコプシス属種、ピキア属種、特に、ピキア・パストリス、ハンゼヌラ属種、クルイベロマイセス属種、ヤロウイア属種、ロドトルラ属種及びシゾサッカロミセス属種からなる群から選択される。
遺伝的に操作された細胞は、フコース残基をドナー基質からラクトテトラオースであるアクセプター分子へ転移させることができる異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されている。追加の及び/又は代わりの実施形態では、異種フコシル基転移酵素は、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、異種フコシル基転移酵素は、
i)配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
ii)好ましくは、配列の全長にわたって、配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列の1つに少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
iii)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
iv)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
v)iii)及びiv)に従ったポリペプチドのいずれか1つの機能的断片をコードするヌクレオチド配列;又は
vi)そこでは核酸分子は、厳密な条件下でi)、ii)、iii)、iv)若しくはv)に従った核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする、
を含む核酸分子によりコードされる。
異種フコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列は、遺伝的に操作された細胞内で直鎖状又は環状染色体外核酸分子上に存在している、又は細胞の染色体核酸分子中に組み込まれていてもよく、前記染色体核酸分子は直鎖状又は環状(細菌染色体)核酸分子でもよい。
遺伝的に操作された細胞はGDP-フコースを合成することができるが、GDP-フコースは、異種フコシル基転移酵素によりラクトテトラオースに転移されるフコース残基のドナー基質としての役割を果たすので、フコース残基をドナー基質からラクトテトラオースへ転移させて所望のフコシル化オリゴ糖を生産するためのフコシル基転移酵素活性を有することができる異種ポリペプチドにより触媒される反応に不可欠である。したがって、実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、遺伝的に操作される前の細胞と比べた場合、増加した細胞内GDP-フコース生産力も含むように遺伝的に操作されている。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、フコシル化オリゴ糖を生産するためのGDP-フコースの細胞内プールを提供することが達成され、遺伝的に操作された細胞は、二機能性フコースキナーゼ/L-フコース-1-ホスフェート-グアニル酸転移酵素(Fkp)をコードする遺伝子、好ましくは、L-フコースをGDP-フコースに変換することができるバクテロイデス・フラジリス由来の二機能性フコースキナーゼ/L-フコース-1-ホスフェート-グアニル酸転移酵素(Fkp)をコードする遺伝子(受託番号AY849806)が前記細胞により発現される又は過剰発現されるようにも遺伝的に操作されている。好ましくは、L-フコースは、所望のフコシル化オリゴ糖を生産するための細胞の発酵中に遺伝的に操作された細胞に与えられる。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、所望のフコシル化オリゴ糖の合成のためのGDP-フコースは、「新規の経路」を使用する細胞自体のGDP-フコース代謝から採取可能である。「新規の経路」を介して細胞内GDP-フコースプールを増やすために、遺伝的に操作された細胞は、遺伝的に操作される前の細胞と比べた場合、ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-ホスフェートグアノシル転移酵素、GDP-マンノース-4,6-脱水酵素、及びGDP-L-フコース合成酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つを発現する又は過剰発現するようにも遺伝的に操作されている。好ましい実施形態では、細胞は前記遺伝子の4つすべてを過剰発現するように遺伝的に改変されている。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、その細胞膜を横断する外因性L-フコースの増加した移入を有するようにも遺伝的に操作されている。好ましくは、遺伝的に操作された細胞は、遺伝的に操作される前の前駆細胞と比べた場合、イー・コリMG1655由来の主要ファシリテーター輸送体FucPをコードするヌクレオチド配列(受託番号AIZ90162)、イー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的変異体をコードするヌクレオチド配列、イー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的断片をコードするヌクレオチド配列、及びイー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的断片の機能的変異体をコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1つのヌクレオチド配列を発現するか又は過剰発現するようにも、遺伝的に操作されている。主要ファシリテーター輸送体FucPの発現又は過剰発現は、遺伝的に操作された細胞での機能的変異体及び/又はこの機能的断片であり、その細胞膜を横断する外来性L-フコースの細胞取り込みを増やす。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、細胞の細胞内GDP-フコースプールの枯渇を防ぐようにも遺伝的に操作されている。実施形態では、コラン酸合成の第1ステップを触媒するWcaJをコードする遺伝子の発現が損なわれているか又は不活性化されている点で、好ましくは、WcaJ遺伝子が細胞の遺伝情報から少なくとも部分的に欠失している点で、又はWcaJ遺伝子のヌクレオチド配列がWcaJをコードする遺伝子の転写が不可能になるように変更されている点で、細胞は遺伝的に操作されている。追加の及び/又は代わりのアプローチでは、例えば、停止コドンがオープンリーディングフレーム中に導入されていて、WcaJの短縮型変異体をもたらし、これは非機能的断片が発現されることを表している点で、又はWcaJ遺伝子のヌクレオチド配列が、前記変更されたWcaJ遺伝子によりコードされるポリペプチドが1つ以上のアミノ酸残基で野生型WcaJとは異なっていて、得られたポリペプチドは酵素的に不活性になるように変更されている点で、WcaJをコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、酵素的に不活性なポリペプチドが変更されたWcaJ遺伝子によりコードされるように変更されている。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、それぞれL-フコースイソメラーゼ及びL-フクロースキナーゼをコードする遺伝子fucl及び/又はfucKが欠失していて、fucl及び/又はfucKのヌクレオチド配列が対応するポリペプチドの酵素活性を不可逆的に不活性化するように変更されている点で、又はfucl及び/又はfucKの発現が損なわれている点でも、遺伝的に操作された細胞は遺伝的に操作されている。Fucl及び/又はFucKの細胞内合成を消失させると、対応する細胞においてフコース代謝が消失し、それによって、GDP-フコースを作製するのに利用可能であるフコースの量が増える。
追加の実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、細胞が(i)生産される所望のフコシル化オリゴ糖の1つ以上の前駆体を細胞内で分解する1つ以上のポリペプチドを発現しないか、又は(ii)その天然に存在する類似物と比べた場合、生産される所望のフコシル化オリゴ糖の1つ以上の前駆体を細胞内で分解するような酵素の活性を損なう変更されたアミノ酸配列及び/若しくは長さを有する1つ以上のポリペプチドを発現するようにも、遺伝的に操作されている。
所望のフコシル化オリゴ糖に関連して本明細書で使用される用語「前駆体」とは、生産される所望のフコシル化オリゴ糖の生合成経路における中間体である化合物のことである。これらの中間体は、内因性化合物、すなわち、細菌宿主細胞におけるこの合成が宿主の遺伝的改変により増強される場合でも宿主細胞において生成されそして天然に存在していてもよい、化合物を含む。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、酵素的に活性なβ-ガラクトシダーゼを含まないようにも、遺伝的に操作されている。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、機能的LacZを欠くように、又はその発現が厳重に調節されており、フコシル化オリゴ糖を生産するための発酵工程中は発現されない機能的LacZ遺伝子を含むようにも、遺伝的に改変されている。
さらに及び/又は代わりに、遺伝的に操作された細胞は、細胞が、ラクトース、例えば、LNT-2、LNT若しくはLNnT、又はLNT及びLNnTのより大きな誘導体以外の所望のフコシル化オリゴ糖の別の前駆体を加水分解する酵素活性を有するポリペプチドを、含まずかつ発現もしないようにも、遺伝的に操作されている。この目的のため、遺伝的に操作された細胞は、細胞のゲノムが所望のフコシル化オリゴ糖の前記別の前駆体を加水分解することができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有しないように、又はそのようなタンパク質をコードする遺伝子の発現が、フコシル化オリゴ糖を生産するための発酵工程中は発現されないように調節されているようにも、遺伝的に操作されている。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドをコードする、少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。この実施形態の遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを、発現することができる。好ましくは、遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができる前記ポリペプチドを発現する。さらに好ましくは、前記遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを含む。好ましくは、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドをコードする、前記少なくとも1つのヌクレオチド配列は、異種核酸配列、すなわち、該遺伝的に操作された細胞の遺伝的に操作されていない祖先細胞において、天然には存在しないヌクレオチド配列である。
β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを発現することにより、前記ポリペプチドがこのβ-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を有しており、それによってLNT-2を細胞内で作製する場合には、宿主細胞はN-アセチルグルコサミンをアクセプター基質のラクトースにライゲートすることができる。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、N-アセチルグルコサミンをラクトースに転移するためのβ-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素活性を示すことができるポリペプチドは、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)MC58由来のLgtA(受託番号NP_274923)及びパスツレラ・マルトシダ亜種マルトシダ(multocida)str.HN06由来のβ-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素(受託番号PMCN06_0022)からなる群から選択することが可能なβ-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドをコードする、少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。この実施形態の遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを発現することができる。好ましくは、遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができる前記ポリペプチドを発現する。さらに好ましくは、前記遺伝的に操作された細胞は、β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを含む。好ましくは、β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドをコードする前記少なくとも1つのヌクレオチド配列は、異種核酸配列、すなわち、遺伝的に操作された細胞の遺伝的に操作されていない祖先細胞において天然には存在しないヌクレオチド配列である。β-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドを発現することにより、遺伝的に操作された細胞は、LNT-2をガラクトシル化する又はそれぞれLNT若しくはLNnTを細胞内で生み出すことができる。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、LNT-2をガラクトシル化してLNTを生産するためのβ-1,3-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドは、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)由来のβ-1,3-ガラクトシル基転移酵素WbdO(受託番号AY730594)、及びイー・コリO55:H7由来のwbgO(受託番号BAG11838)、ルチエラ・ニトロフェラム(Lutiella nitroferrum)由来のfurA(FuraDRAFT_0419)からなる群から選択される遺伝子によりコードされるβ-1,3-ガラクトシル基転移酵素、及び前記β-1,3-ガラクトシル基転移酵素の機能的断片からなる群から選択されるβ-1,3-ガラクトシル基転移酵素である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、LNT-2をガラクトシル化してLNnTを生成するためのβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素活性を示すことができるポリペプチドは、ナイセリア・メニンギティディス由来のLgtB(受託番号AAF42257)、アグリゲイティバクター・アフロフィルスNJ8700由来のLex1(受託番号YP_003008647)、キンゲラ・デニトリフィカンス(Kingella denitrificans)ATCC33394由来のGalT(受託番号HMPREF9098_2407)、パスツレラ・マルトシダM1404由来のGatD(受託番号GQ444331)、バクテロイデス・フラジリスNCTC9343由来のGalT(受託番号BF9343_0585)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)由来のlsgD(受託番号AAA24981)、ヘリコバクター・ピロリ由来のGalT(受託番号AB035971)、及び前記β-1,4-ガラクトシル基転移酵素の機能的断片からなる群から選択されるβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素である。
UDP-ガラクトース及びUDP-N-アセチルグルコサミンは、遺伝的に操作された細胞におけるLNT若しくはLNnT、又はこれらのもっと大きな誘導体の細胞内合成に必要である。
遺伝的に操作された細胞における細胞内UDP-ガラクトースは、細胞がガラクトースを含有する発酵ブロスにおいて培養される点において、ガラクトースを遺伝的に操作された細胞に与えることにより提供することが可能である。ガラクトースは細胞により取り入れられ、ガラクトース-1-ホスフェートにリン酸化され、次にUDP-ガラクトースに変換される。これらの反応に必要とされる酵素活性を保有するポリペプチドをコードする遺伝子は周知である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、UDP-ガラクトースの細胞内供給は、細胞自体の代謝からも得ることが可能であり、細胞自体の代謝は、例えば、細胞がUDP-ガラクトース-4’-エピメラーゼを過剰発現するか、又はグルコース-1-ホスフェート-1-ウリジニル転移酵素と組み合わせてUDP-ガラクトース-4’-エピメラーゼを過剰発現するように、細胞の遺伝的改変により改善することが可能である。
遺伝的に操作された細胞における細胞内UDP-N-アセチルグルコサミンは、細胞自体のUDP-N-アセチルグルコサミン代謝からも得ることが可能である。遺伝的に操作された細胞において細胞内UDP-N-アセチルグルコサミンプールを増やすため、細胞は、L-グルタミン:D-フクトース-6-ホスフェートアミノ基転移酵素、ホスホグルコサミンムターゼ、ホスホグルコムターゼ、及びN-アセチルグルコサミン-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン-1-ホスフェートアセチル基転移酵素をコードする遺伝子の1つ以上が過剰発現されるように遺伝的に改変することが可能である。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、細胞は、遺伝的に操作された細胞内でのN-アセチルグルコサミン異化反応が不活性化されているように遺伝的に改変される。細胞のN-アセチルグルコサミン異化反応を不活性化すると、N-アセチルグルコサミンの細胞内合成に利用可能であるUDP-N-アセチルグルコサミンの細胞内レベルが改善される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、複雑なフコシル化HMOの合成において使用するための遺伝的に改変された細胞は、この細胞膜を横断してラクトースを取り込み、所望のフコシル化オリゴ糖の生産のための出発物質としてラクトースを蓄積することができる。したがって、細胞は、ラクトース透過酵素をコードするこの内因性遺伝子を発現することが可能である。追加の及び/又は代わりの実施形態では、細胞は、特に細胞が天然にはラクトース透過酵素をコードする遺伝子を含まず発現しない場合には、異種ラクトース透過酵素遺伝子を含有し発現するように遺伝的に改変される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、所望のフコシル化オリゴ糖を生産するためのラクトースは、細胞によるラクトースの細胞内合成により提供される。好ましくは、これは、細胞がβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素をコードする内因性遺伝子又は組換え遺伝子を発現し、前記β-1,4-ガラクトシル基転移酵素はUDP-ガラクトースのガラクトース部分をグルコース分子に転移することができる点で、達成される。このβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素は、パスツレラ・マルトシダ由来のPm1141(受託番号AEC04686)又はアグリゲイティバクター・アフロフィルスNJ8700由来のLex1(受託番号YP_003008647)から選択することが可能である。
したがって、追加の及び/又は代わりの実施形態では、遺伝的に操作された細胞は、
(i)β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素、
(ii)β-1,3-ガラクトシル基転移酵素又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素;並びに
(iii)α-1,2-及び/又はα-1,3-フコシル基転移酵素
を含む。
別の実施形態では、遺伝的に操作された細胞が、LNT-2がアクセプター分子の前駆体として発酵ブロスに添加される点で、フコシル化オリゴ糖を生産するために培養される場合、遺伝的に操作された細胞は、
(i)β-1,3-ガラクトシル基転移酵素又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素;並びに
(ii)糖転移酵素としてα-1,2-及び/又はα-1,3-フコシル基転移酵素
を含む。
第3の態様によれば、遺伝的に操作された細胞において異種フコシル基転移酵素を発現するための、組換え核酸分子が提供される。用語「核酸分子」とは、一本鎖又は二本鎖デオキシリボヌクレオチド巨大分子又はリボヌクレオチド巨大分子のことであり、1つ以上の既知の類似物又は天然に若しくは合成的に生成されるヌクレオチドを含む鎖デオキシリボヌクレオチド巨大分子又はリボヌクレオチド巨大分子を含む。
組換え核酸分子は、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択されるフコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列を含む。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、フコシル基転移酵素をコードするヌクレオチド配列は、
i)配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
ii)好ましくは、配列の全長にわたって、配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列の1つに少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
iii)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
iv)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
v)iii)及びiv)に従ったポリペプチドのいずれか1つの機能的断片をコードするヌクレオチド配列;
又は
vi)厳密な条件下でi)、ii)、iii)、iv)又はv)に従った核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする核酸分子
からなる群から選択される。
本発明の範囲内では、核酸/ポリヌクレオチド及びポリペプチド多型変異体、対立遺伝子、突然変異体及び種間相同物もこれらの用語に含まれ、ポリペプチド多型変異体は配列番号16~30のアミノ酸配列の1つに似ているポリペプチドに対して、好ましくは、少なくとも約25、50、100、200、500、又はこれよりも多いアミノ酸の領域にわたって、約60%よりも大きなアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%又はこれよりも大きなアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
本明細書で使用される用語としての「変異体」は、それぞれ参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるポリヌクレオチド又はポリペプチドであるが、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドの本質的(酵素的)特性を保持している。ポリヌクレオチドの典型的変異体は、別の参照ポリヌクレオチドとはヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更する場合もあれば変更しない場合もある。下で考察されるように、ヌクレオチド変化は、参照配列によりコードされるポリペプチドに、アミノ酸置換、付加、欠失、融合及び短縮型をもたらす場合がある。ポリペプチドの典型的な変異体は、別の参照ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般的には、違いは限定されているので、参照ポリペプチドと変異体の配列は全体で密接に類似しており、多くの領域では同一である。変異体と参照ポリペプチドは、いかなる組合せでも1つ以上の置換、付加、欠失によりアミノ酸配列が異なる場合がある。置換された又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによりコードされているアミノ酸残基でもよく又はそうでなくてもよい。ポリヌクレオチド又はポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異型のように天然に存在していてもよく、又は天然に存在することが知られていない変異体でもよい。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの天然には存在しない変異体は、変異誘発技法により、直接合成により、及び当業者に公知である他の組換え法により作ってもよい。
組換え核酸分子では、フコシル基転移酵素、この機能的変異体、フコシル基転移酵素の機能的断片又は機能的断片の機能的変異体をコードするヌクレオチド配列は、組換え核酸分子が細胞中に存在しているという条件で、フコシル基転移酵素、この変異体又は断片の発現を媒介する及び/又は制御する少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
本明細書で使用される用語「作動可能に連結される」とは、核酸発現制御配列(プロモーター、オペレーター、エンハンサー、レギュレーター、転写因子結合部位のアレー、転写ターミネーター、リボソーム結合部位のような)と第2のヌクレオチド配列の間の機能的連鎖のことであり、発現制御配列は第2のヌクレオチド配列に従って核酸の転写及び/又は翻訳に影響を及ぼす。したがって、用語「プロモーター」は通常、DNAポリマーにおいて遺伝子「に先行する」DNA配列を指し、mRNAへの転写の開始部位を提供する。「レギュレーター」DNA配列も、通常、所与のDNAポリマーにおいて遺伝子の「上流」である(すなわち、に先行している)が、転写開始の頻度(又は速度)を決定するタンパク質に結合する。合わせて「プロモーター/レギュレーター」又は「制御」DNA配列と呼ばれるが、機能的DNAポリマーにおいて選択された遺伝子(又は一連の遺伝子)に先行するこれらの配列は協同して遺伝子の転写(及び最終的発現)が起こるかどうかを決定する。DNAポリマーにおいて遺伝子「に続き」、mRNAへの転写の終結のためのシグナルを提供するDNA配列は、転写「ターミネーター」配列と呼ばれる。
多種多様な発現系を使用すれば、本発明のポリペプチドを産生することが可能である。そのような系は、とりわけ、染色体由来、エピソーム由来及びウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、ウイルス由来のベクター、並びにプラスミドに由来するベクターのようなこれらの組合せとコスミド及びファージミドのようなバクテリオファージ遺伝子エレメント由来のベクターを含む。発現系構築物は、発現を調節する並びに生み出す制御領域を含有していてもよい。一般に、宿主においてポリヌクレオチドを維持する、増幅するか又は発現しそしてポリペプチドを合成するのに適したいかなる系又はベクターをも、これに関して発現に使用し得る。適切なDNA配列は、例えば、Sambrookら、上記に述べられている技法のような種々の周知で常用の技法のいずれかにより発現系に挿入され得る。したがって、遺伝的に操作された細胞において異種フコシル基転移酵素を発現するための核酸分子は、プラスミド、ファージミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)及び酵母人工染色体(YAC)からなる群から選択される。
第4の態様によれば、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースであるフコシル基転移酵素が提供される。
フコシル基転移酵素は細菌起源である。フコシル基転移酵素を使用すれば、フコシル化オリゴ糖、好ましくは、ラクトース、LNT及び/若しくはLNnTに基づく複合フコシル化HMO、又は他のオリゴ糖を合成することが可能である。フコシル化オリゴ糖はラクトフコペンタオースである。
フコシル基転移酵素は、フコース残基をドナー基質、好ましくはGDP-フコースからアクセプター分子に転移させることができる。好ましい実施形態では、アクセプター分子はラクトテトラオース、好ましくはLNT及び/又はLNnTである。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、フコシル基転移酵素は、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択される。
配列番号16~30のいずれか1つにより表されるフコシル基転移酵素は、フコース残基をドナー基質からアクセプター基質としてのラクトテトラオースに転移させることができるフコシル基転移酵素であるとは記載されていない。配列番号16~27のいずれか1つにより表される新規のフコシル基転移酵素は、これまで、フコシル基転移酵素それ自体であるとさえ記載されておらず、すなわち、そのアクセプター分子とは無関係に、記載されていなかった。
前に本明細書に記載されたフコシル基転移酵素は、例えば、前に本明細書に記載されたホールセル発酵工程により、又はインビトロ生体触媒によって複合フコシル化オリゴ糖を生産するために、使用することが可能である。したがって、第5の態様によれば、フコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができ、前記アクセプター分子がフコシル化オリゴ糖を生産するためラクトテトラオースである、フコシル基転移酵素のうちの少なくとも1つの使用が提供される。
追加の及び/又は代わりの実施形態では、前に本明細書に記載されたフコシル基転移酵素は、インビトロ生体触媒により複合フコシル化HMOを合成するのに使用される。
インビトロ生体触媒工程において新規のフコシル基転移酵素のうちの少なくとも1つを使用することは、フコース残基、好ましくは、GDP-フコースを含有する適切なドナー基質、及び適切なアクセプター分子を、溶媒中の新規のフコシル基転移酵素のうちの少なくとも1つに、フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させ、それによってフコシル化オリゴ糖を合成するのに適した条件下で添加することを含む。好ましくは、適切なアクセプター分子はラクトテトラオース、さらに好ましくはLNT又はLNnTである。アクセプター分子としてラクトテトラオースを使用すれば、インビトロ生体触媒反応におけるフコシル基転移酵素の反応産物は、ラクトフコペンタオースである。前記ラクトフコペンタオースは、好ましくは、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV及びラクト-N-ネオフコペンタオースVからなる群から選択される1つの五糖である。
第6の態様によれば、インビトロ生体触媒により、フコシル化オリゴ糖、好ましくは、フコシル化ヒトミルクオリゴ糖、さらに好ましくは、複合ヒトミルクオリゴ糖、最も好ましくは、ラクトフコペンタオースを生産するための方法であって、フコシル基転移酵素が使用され、前記フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができる、方法が提供される。
インビトロ生体触媒の実施形態では、方法は、
a)反応混合物中でフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができるフコシル基転移酵素を提供するステップ;
b)フコシル化オリゴ糖を合成するために、前記フコシル基転移酵素をフコース残基を含むドナー基質及びアクセプター分子に接触させ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースである、ステップ
を含む。
この実施形態は、反応混合物中にフコシル基転移酵素を提供することを含む。本明細書で使用される用語「フコシル基転移酵素」は、前記フコシル基転移酵素の機能的変異体、機能的断片及びフコシル基転移酵素の断片の機能的変異体も含み、「機能的」とは、前記変異体及び断片が前に本明細書に記載されたフコシル基転移酵素活性を有することができることを示している。
この実施形態に従った方法は、ドナー基質、好ましくはGDP-フコースからアクセプター分子のアクセプター部分に転移されるフコース残基を有するのに適した条件下で混合物を反応させることをさらに含み、前記アクセプター分子は好ましくはラクトテトラオースである。
追加の実施形態では、インビトロ生体触媒の方法は、反応混合物からフコシル化したアクセプター分子を引き続き精製する及び/又は単離することをさらに含む。
第7の態様によれば、前に本明細書に記載されたホールセル発酵アプローチ又はインビトロ生体触媒により生産されるフコシル化オリゴ糖が提供される。
実施形態では、フコシル化オリゴ糖はヒトミルクオリゴ糖である。選択されるヒトミルクオリゴ糖は、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、2’,3-ジフコシルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、3-フコシル-6’-シアリルラクトース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースII、フコシル-ラクト-N-シアリルペンタオースb、フコシル-ラクト-N-シアリルペンタオースc、ラクト-N-ネオジフコヘキサオースI、ジシアリル-ラクト-N-フコペンタオースV及びフコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースIVである。選択されるヒトミルクオリゴ糖の構造は表2に表示されている。
前に本明細書に記載されたフコシル基転移酵素を利用することにより生産可能なフコシル化オリゴ糖は、好ましくは、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースVからなる群から選択される、五糖からなる群から選択される。
前の段落で名付けられたラクトフコペンタオースは前に本明細書に記載されたフコシル基転移酵素の酵素活性の直接反応産物を構成するけれども、前記ラクトフコペンタオースはさらに処理されてもよい。例えば、前記ラクトフコペンタオースは、得られたヘキサオース、例えば、表2のエクサオース及びヘプタオースが、本明細書で開示されるフコシル基転移酵素を利用することにより生産可能なフコシル化オリゴ糖と見なすことも可能であるように、アクセプター分子としてさらなる糖転移酵素に提供することが可能である。さらに、フコシル基転移酵素は、表2で同定されている糖のような三糖及び/又は四糖を生産する際に用いることも可能であることを想定することが可能である。
Figure 2024028710000002
第8の態様によれば、栄養組成物を製造するための前に本明細書に記載されたホールセル発酵アプローチ又はインビトロ生体触媒により生産されるフコシル化オリゴ糖の使用が、提供される。前記栄養組成物は、前に本明細書に開示された方法により生産された少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖を含有する。
したがって、第9の態様によれば、前に本明細書に開示された方法により生産された少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖を含有する栄養組成物が提供される。少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖はラクトフコペンタオースである。栄養組成物中の少なくとも1つのラクトフコペンタオースは、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV及びラクト-N-ネオフコペンタオースVからなる群から選択される。
追加の実施形態では、栄養組成物は、薬用製剤、乳児用製剤及び栄養補助食品からなる群から選択される。
栄養組成物は、液状でも粉末、顆粒、フレーク及びペレットを含むがこれらに限定されない固体状で存在していてもよい。
本発明は、特定の実施形態に関連して及び図を参照して記載されることになるが、本発明はそれに限定されることはなく、しかし特許請求の範囲のみに限定される。さらに、記述における及び特許請求の範囲における用語第1の、第2の、等は類似する要素を区別するために使用され、必ずしも順序を時間的に、空間的に、順位で又は他の何らかの様式で記載するためではない。そのように使用される用語は適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載される又は例証される以外の順序で機能することができると理解されるべきである。
用語「含む(comprising)」が、特許請求の範囲で使用される場合、その後に列挙される手段に制限されると解釈するべきではなく、この用語は他の要素もステップも排除しないことに留意するべきである。したがって、この用語は、言及される明言された特長、整数、ステップ又は構成要素の存在を明示していると解釈するべきであるが、1つ以上の他の特長、整数、ステップ若しくは構成要素、又はこれらの群の存在又は追加を排除しない。したがって、表現「手段A及びBを含むデバイス」の範囲は、構成要素A及びBのみからなるデバイスに限定するべきではない。この表現は、本発明に関して、デバイスの唯一妥当な構成要素はA及びBであることを意味する。
本明細書全体を通じての「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特長、構造又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所に語句「一実施形態では」又は「実施形態では」が出現するのは必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではないが、その場合もある。さらに、本開示から当業者には明らかになるように、特定の特長、構造又は特徴は、1つ以上の実施形態において、いかなる適切な様式で組み合わせてもよい。
同様に、本発明の例示的実施形態の記述においては、本発明の種々の特長は、開示を合理化し、種々の創意に富んだ態様の1つ以上を理解するのを助ける目的で、この単一の実施形態、図、又はこれらの記述にグループ分けされる場合があることは認識すべきである。しかし、この開示の方法は、請求されている発明が、それぞれの請求に明確に列挙されているよりも多くの特長を要求するという意図を反映していると解釈するべきではない。むしろ、以下の請求が反映するように、創意に富んだ態様は、単一の先に開示された実施形態のすべての特長よりも少ない特長にある。したがって、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲はこれによって、この発明を実施するための形態に組み込まれ、それぞれの請求は本発明の別個の実施形態として独立している。
さらに、当業者であれば理解すると考えられるように、本明細書に記載される一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる特長を含む場合と含まない場合があるが、異なる実施形態の特長の組合せは本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することが意図されている。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求された実施形態のいずれでもいかなる組合せでも使用することが可能である。
さらに、実施形態の一部は、コンピュータシステムの処理装置により又はこの機能を遂行する他の手段により実行することが可能な方法又は方法の要素の組合せとして、本明細書では記載される。したがって、そのような方法又は方法の要素を遂行するために必要な説明書のある処理装置は、方法又は方法の要素を遂行するため手段を形成する。さらに、器具実施形態の本明細書に記載される要素は、本発明を遂行する目的で要素により実施される機能を遂行するための手段の例である。
本明細書で提供される記述及び図では、数多くの特定の詳細が示されている。しかし、本発明の実施形態はこれらの特定の詳細なしで実行してもよいことは理解される。他の例では、周知の方法、構造及び技法は、この記述の理解を不明瞭にしないために詳細に明らかにされてはいない。
本発明は、今や本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明により記載される。本発明の他の実施形態は、本発明の真の精神又は技術上の教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って設定することが可能であることは明らかであり、本発明は添付の特許請求の範囲の条項によってのみ限定される。
[実施例1] ラクト-N-テトラオース及びラクト-N-ネオテトラオースをフコシル化するフコシル基転移酵素の同定
ジェンバンク(GenBank)データベースを、種々の細菌種のゲノムにコードされている推定フコシル基転移酵素について再検討した。以前はフコシル基転移酵素と注釈を付けられていなかった125の推定フコシル基転移酵素をこのアプローチにより明らかにした。
推定フコシル基転移酵素(fucT)をコードする遺伝子は、イー・コリにおける発現のためにコドン最適化されており、GenScript Cooperation(Piscataway、USA)から購入した。フコシル基転移酵素遺伝子は、配列及びライゲーション非依存性クローニング(SLIC)により、ベクターpINT-malE-zeoにおいてmalE遺伝子の下流にサブクローニングされ、この遺伝子はマルトース結合タンパク質(MBP)をコードし、MBP融合タンパク質の合成を可能にする(図1)が、fucT-遺伝子の増幅ではプライマー2700及び2702並びにpINT-malE-zeoの増幅ではプライマー2701及び2703(使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは表3に収載されている)を使用する。
fucT-遺伝子はイー・コリER2508(New England Biolabs、Ipswich、USA)において発現された。アルファ-1,2-フコシル基転移酵素をコードする遺伝子イー・コリO126由来のwbgL及びヘリコバクター・ピロリ由来のfucT2Hpもイー・コリでの発現のためにコドン最適化されており、これらもGenScript Cooperationから購入し、T7プロモーターの転写制御下のベクターpACYC(Novagen、Merck、Darmstadt、Germany)のNcol及びBamHI部位にクローニングした。WbgL及びfucT2Hpは、それぞれオリゴヌクレオチド141と142、及び143と144を用いて増幅させた。ベクター並びにPCR増幅産物は、制限エンドヌクレアーゼNcol及びBamHIを用いて消化し、ライゲートした。イー・コリ形質転換体はクロラムフェニコール上で選択した。WbgL及びfucT2Hpは、イー・コリBL21(DE3)△lacZで発現された(本研究で使用した細菌株は表4に収載されている)。
Figure 2024028710000003
Figure 2024028710000004
Figure 2024028710000005
pINT-malE-fucT-zeoプラスミドを含有するイー・コリER2508は、malE-fucT遺伝子の発現が200μg/mlのアンヒドロテトラサイクリンを添加することにより誘導される前に、アンピシリン100μg/ml及びゼオシン40μg/mlを含有する2YTブロス(Sambrookら、1989年、上記)で0.3のOD600nmまで生育させた。pACYC-wbgL又はpACYC-fucT2Hpを内部に持つイー・コリBL21(DE3)△lacZは、34μg/mlのクロラムフェニコールを含有する2YTブロスで生育した。0.3のOD600nmに到達すると、発現を0.3mMのIPTGで誘導した。30℃で16時間のインキュベーション後、細胞は遠心分離により収穫した。
細胞は、ガラスビーツを使用して機械的に破壊した。等タンパク質濃度を含有する発現クローンの無細胞抽出物は100μlのフコシル基転移酵素活性アッセイにおいて37℃で22時間インキュベートした。アッセイは、5mMのGDP-L-フコース、5mMのLNT又はLNnT及び20mMのトリス/HCl中1mMのATP、pH7.4を200mMのNaClと一緒に含有した。
フコシル化LNT又はLNnTの形成は、シリカゲルTCLプレート(Silica Gel60F254(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)を使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)により判定した。ブタノール:アセトン:酢酸:HO(35/35/7/23(v/v/v/v))の混合物を移動相として使用した。分離された物質の検出では、TCLをチモール試薬(95mlのエタノールに溶解した0.5gのチモール、5mlの硫酸を添加)に浸漬し、加熱した。
産物生成及び同定はさらに、マススペクトロメトリーにより決定された。質量分析は、LC Triple-Quadrupole MS detection system(Shimadzu LC-MS 8050)(Shimadzu Corporation、Kyoto、Japan)を使用してMRM(多重反応モニタリング)により実施した。前駆イオンは四重極1において選択され分析され、フラグメンテーションはCIDガスとしてアルゴンを使用して衝突セルで行われ、フラグメントイオンの選択は四重極3において実施される。中間体及び最終産物代謝物についての選択されたトラジション及び衝突エネルギー(CE)は表5に収載されている。それぞれ培養上澄み、無粒子生体触媒反応又は粗抽出の希釈、HO(LC/MSグレード)での1:50又は1:100、後のラクトース、LNT-II、LNT及びLNFP変異体のクロマトグラフ分離は、XBridge Amide HPLCカラム(3.5μm、2.1×50mm(Waters、USA)上で実施された。LC/MS分析に適用する前に、試料は、濾過(0.22μmポアサイズ)及びイオン交換マトリックス(Strata ABW、Phenomenex)上固相抽出によるクリアリングにより調製した。HPLC装置は、8℃で実行するShimadzu Nexera X2 SIL-30ACMPオートサンプラー、Shimadzu LC-20ADポンプ、及び35℃で実行したShimadzu CTO-20ACカラムオーブン(Shimadzu Corporation、Kyoto、Japan)で構成されていた。移動相はアセトニトリル:HOと0.1%(v/v)水酸化アンモニウムで構成されていた。1μlの試料を機器に注入し、次にランは流速300μl/分で5.00分間実施した。代謝物はすべてMRMによりESI負イオン化モードで分析した。マススペクトロメトリーは単位導出で操作した。衝突エネルギーQ1及びQ3Pre Biasは分析物ごとに個々に最適化した。定量化法は市販の標準(Carbosynth、Compton、UK及びElicityl、Crolles、France)を使用して確立した。
中間体ラクト-N-テトラオース(LNT)のフコシル化に基づくLNFP変異体はクロマトグラフィー分離(LNFP-1-2.4分;及びLNFP-V-2.5分)により同定することが可能である。わずかに異なる保持時間は、LNTのフコシル化のタイプ(LNFP-Iではガラクトース上のアルファ-1,2-フコシル化;LNFP-IIではN-アセチル-グルコサミン上のアルファ-1,4-フコシル化及びLNFP-Vではグルコース上のアルファ-1,3-フコシル化)の違いにより引き起こされる。さらに、LNFP変異体は、フコシル化の位置と関係する特定のフラグメンテーションパターンに起因するその移行パターン(表5参照)により同定することが可能である。
中間体ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)のフコシル化の位置(LNnFP-Iではガラクトース上のアルファ-1,2-フコシル化並びにLNnFPIIIではN-アセチルグルコサミン上の及びLNnFP-Vではグルコース上のアルファ-1,3-フコシル化)の違いに基づくLNnFP変異体は、クロマトグラフィー分離により同定することが可能である(図2a)。さらに、LNnFP変異体は、フコシル化の位置と関係する特定のフラグメンテーションパターンに起因するその移行パターン(表5参照)により同定することが可能である。
LNnFP-III及びLNnFP-Vは、0.1分の保持時間のわずかな違いしかない。α-1,3-フコシル基転移酵素FucT109を使用するインビトロ酵素反応の分析により、LNnFP-IIIとLNnFP-Vの混合物が明らかにされた(図2b参照)。
表6は、フコペンタオース生産について試験されたフコシル基転移酵素及びそれぞれLNT、及びLNnTをグリカン基質として使用した場合の生体触媒反応からの検出された産物をまとめている。
Figure 2024028710000006
[実施例2] イー・コリラクト-N-トリオースII生産株の開発
エシェリキア・コリBL21(DE3)を使用してラクト-N-トリオースII(LNT-2)生産株を構築した。代謝操作は、それぞれ特定の遺伝子の変異誘発及び欠失、並びに異種遺伝子のゲノム組込みを含んでいた。遺伝子lacZ及びaraAは、ミスマッチオリゴヌクレオチドを使用する変異誘発により不活性化された。
ゲノム欠失はDatsenko及びWannerの方法に従って実施した。N-アセチルグルコサミンの細胞内分解を防ぐため、N-アセチルグルコサミン-6-ホスフェート脱アセチル化酵素(nagA)及びグルコサミン-6-ホスフェート脱アミノ化酵素(nagB)をコードする遺伝子を、イー・コリ株BL21(DE3)株のゲノムから欠失させた。遺伝子wzxC-wcaJも欠失させた。wcaJは、コラン酸合成の第1ステップを触媒するUDP-グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース-1-リン酸転移酵素をコードする。さらに、それぞれL-フコースイソメラーゼ及びL-フクロースキナーゼをコードする遺伝子fucl及びfucKを取り除いた。
異種遺伝子のゲノム組込みは遺伝子転位により実施した。EZ-Tn5(商標)トランスポサーゼ(Epicentre、USA)を使用して直鎖状DNA断片を組み込むか、又はマリナートランスポサーゼHimar1の活動亢進C9-突然変異体を遺伝子転位に用いた。EZ-Tn5トランスポソームを作製するため、目的の遺伝子をFRT-部位隣接抗生物質耐性マーカーと一緒にプライマー1119又は1120で増幅させ、得られたPCR産物は両方の部位に、EZ-Tn5トランスポサーゼについての19bpモザイクエンド認識部位を保持していた。Himar1を使用する組込みでは、目的のトランスポサーゼ発現構築物(オペロン)をFRT-部位隣接抗生物質耐性マーカーと一緒にpEcomarベクターに同様にクローニングした。pEcomarベクターは、アラビノース誘導性プロモーターParaBの制御下でマリナートランスポサーゼHimar1の活動亢進C9-突然変異体をコードしている。発現断片<Ptet-lacY-FRT-aadA-FRT>(配列番号31)は、EZ-Tn5トランスポサーゼを使用することにより組み込んだ。イー・コリK12TG1由来のラクトースインポーターLacYの遺伝子(受託番号ABN72583)を首尾よく組み込んだ後、耐性遺伝子は、プラスミド上にコードされているFLP組換え酵素によりストレプトマイシン耐性クローンから取り除いた。その改変により得られた株は株#534であった。ナイセリア・メニンギティディスMC58由来のN-アセチルグルコサミン糖転移酵素遺伝子lgtA(受託番号NP_274923)は、イー・コリでの発現のためにコドン最適化され、遺伝子合成により合成的に調製された。遺伝子合成により同様に得られたイー・コリK12亜系MG1655由来のガラクトース-1-ホスフェートウリジリル転移酵素をコードする遺伝子galT(受託番号NP_415279)と一緒に、lgtAをプラスミドpEcomar-lgtA-galTを使用する遺伝子転位により挿入した(配列番号32)。UDP-N-アセチルグルコサミンの新規合成を増強するため、L-グルタミン:D-フクトース-6-ホスフェートアミノ基転移酵素(glmS)、イー・コリK12亜系MG1655由来のホスホグルコサミンムターゼ(glmM)及びイー・コリK12亜系MG1655由来のN-アセチルグルコサミン-1-ホスフェートウリジル転移酵素/グルコサミン-1-ホスフェートアセチル基転移酵素(glmU)をコードする遺伝子(それぞれ受託番号NP_418185、NP_417643、NP_418186)は、コドン最適化され、遺伝子合成により得られた。オペロンglmUMは構成的テトラサイクリンプロモーターPtetの制御下でクローニングされ、glmSは構成的PT5プロモーターの下でクローニングされた。マリナー様エレメントHimar1トランスポサーゼにより特異的に認識される逆位末端配列が隣接している、トランスポゾンカセット<Ptet-glmUM-PT5-glmS-FRT-dhfr-FRT>(配列番号33)は、pEcomar-glmUM-glmSから挿入され、ラクト-N-トリオース2生産株(#724)を明らかにした。株イー・コリBL21(DE3)は、イー・コリ産生株の開発のための最初の宿主株として使用した。
[実施例3] フコシル化LNTを生産するためにインビボでフコシル基転移酵素をスクリーニングするためのイー・コリ株の操作
サルモネラ・サラメ(Salmonella salamae)由来の1,3-ガラクトシル基転移酵素遺伝子wbdO(受託番号AAV34525)は、イー・コリでの発現のためにコドン最適化され、GenScriptの協力により合成的に調製された。galE遺伝子はイー・コリK12のゲノムDNAから増幅した。両方の遺伝子は、プラスミドpEcomar-wbdO-galEを使用する遺伝子転位によって、<Ptet-wbdOco-PT5-galE-FRT-cat-FRT>(配列番号34)トランスポゾンとして株#724に挿入された。得られた株は#753である。GDP-フコースの供給を増強するため、L-フコースをGDP-フコースに変換するバクテロイデス・フラジリス由来の二機能性フコセキナーゼ/L-フコース-1-ホスフェートグアニル酸転移酵素(fkp)(受託番号AY849806)は、イー・コリBL21(DE3)株で過剰発現された。fkp遺伝子(最初にバクテロイデス・フラジリス(ATCC 25285D)のゲノムDNAから増幅される)は、先行するプロモーターPtetと一緒に、オーバーラップ伸長PCR(SOE-PCR)によるスプライシング並びにプライマー1119及び1120を使用してlox部位隣接ゲンタマイシン耐性遺伝子に融合され、得られたEZ-Tn5<Ptet-fkp-lox-aacC1-lox>(配列番号35)トランスポゾンは、EZ-Tn5(商標)トランスポサーゼにより媒介されてイー・コリBL21(DE3)株に組み込まれ、株#993を得た。代わりに、ホスホマンノムターゼをコードするGDP-L-フコース遺伝子(manB)の新規合成では、イー・コリK12 DH5α由来のマンノース-1-ホスフェートグアノシル転移酵素(manC)、GDP-マンノース-4,6-脱水酵素(gmd)及びGDP-L-フコース合成酵素(wcaG)は、イー・コリBL21(DE3)株において過剰発現され、オペロンmanCBは構成的プロモーターPtetの制御下に置かれ、オペロンgmd、wcaGはやはり構成的PT5プロモーターから転写される。細菌宿主にゲンタマイシン耐性を与える遺伝子aacC1を含む、トランスポゾンカセット<Ptet-manCB-PT5-gmd、wcaG-FRT-aacC1-FRT>(配列番号36)は、マリナー様エレメントHimar1トランスポサーゼにより特異的に認識される逆位末端配列が隣接していた。このカセットは、pEcomar C9-manCB-gmd、wcaG-aacC1から株#753のゲノムに挿入され、株#1445を生じた。
[実施例4] フコシル化LNnTを生産するためにインビボでフコシル基転移酵素をスクリーニングするためのイー・コリ株の操作
ナイセリア・メニンジティディス由来のβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素遺伝子lgtB(受託番号AAF42257)はイー・コリでの発現のために最適化され、GenScriptの協力により合成的に調製された。FRT部位隣接テトラサイクリン耐性遺伝子と一緒に、β-1,4-ガラクトシル基転移酵素遺伝子lgtBは、プラスミドpEcomar-lgtBを使用する遺伝子転位により株#724中に<PT5-lgtB-FRT-tetA-FRT>(配列番号37)トランスポゾンとして挿入された。galE遺伝子はイー・コリK12のゲノムDNAから増幅され、SOE-PCRによりプロモーターPtet及びクロラムフェニコール耐性遺伝子と融合された。EZ-Tn5トランスポサーゼについての19bpモザイクエンド認識部位を生み出すプライマー(プライマー2194及び2235)を使用して、EZ-トランスポゾン<Ptet-galE-FRT-cat-FRT>を構築してイー・コリBL21(DE3)株中に組み込み株#1046を得た。代わりに、アグロゲイティバクター・アフロフィルス由来のβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素遺伝子lex1(受託番号YP_003008647)は、合成的に合成されイー・コリ用にコドン最適化されており、株#724に組み込まれた。lex1遺伝子は、マルトース結合タンパク質(MBP)をコードするmalE遺伝子に融合されて、Lex1へのMBPのN末端融合物を得た。malE-lex1融合物は、pEcomar-malE-lex1-galE-catを使用する遺伝子転位により、Ptetプロモーターの転写制御下でgalEと同時に組み込まれた(配列番号38)。EZ断片EZ-Tn5<Ptet-fkp-FRT-aacC1-FRT>(実施例3参照)を使用して、バクテロイデス・フラジリス由来のフコースキナーゼ/L-フコース-1-リン酸グアニル酸転移酵素をコードする遺伝子(fkp)を株#1046に染色体性に組み込み、株#1076を生じた。
[実施例5] LNT、及びLNnTをフコシル化するフコシル基転移酵素のインビボスクリーニング
フコペンタオースの合成用の株の培養のために使用した無機塩(MS)培地は、7g/LのNHPO、7g/LのKHPO、2g/LのKOH、0.3g/Lのクエン酸、2g/LのMgSO×7HO、及び0.015g/LのCaCl×6HOを含有し、1mL/Lの微量元素溶液(54.4g/Lのクエン酸アンモニウム鉄、9.8g/LのMnCl×4HO、1.6g/LのCoCl×6HO、1g/LのCuCl×2HO、1.9g/LのHBO、9g/LのZnSO×7HO、1.1g/LのNaMoO×2HO、1.5g/LのNaSeO、1.5g/LのNiSO×6HO)が補充されている。
FucT基質としてそれぞれLNTでは株#993又は#1445、及びLNnTでは#1076を使用して、プラスミドpINT-malE-fucT-zeoを使用してフコシル化五糖をインビボで生産した。プラスミド含有株は、炭素源として2%のグルコース、遺伝子発現の誘導因子として200ng/mlのアンヒドロテトラサイクリン並びに抗生物質アンピシリン100μg/ml及びゼオシン20μg/mlを有する20mlの無機塩(MS)培地で生育した。細菌は、バッフル付き振盪フラスコにおいて0.3のOD600nmまで30℃で培養し、その後株#993及び#1076の派生物では3mMのラクトース及び2mMのL-フコース、並びに株#1445の派生物では3mMのラクトースを添加した。
24時間~72時間の培養後、細胞を遠心分離により収穫し、生理食塩水(0.9%(w/v)NaCl)で1回洗浄し、150μl~200μl(ペレットサイズに応じて)の生理食塩水に再懸濁し、ガラスビーツを使用して機械的に破壊した。細胞片をペレット化することにより澄んだ上澄みを得た。フコシル化LNTの形成は、TCLにより細胞内代謝物を分析することにより検出し、その結果は表6にまとめられている。培養上澄み中に分泌されているバクテロイデス・フラジリスNTCT9343由来のFucT109によりLNFP-Vの形成を分析するため、無傷の細胞を遠心分離し、その上澄みをTLC分析に適用した(図4)。図4は、pINT-malE-fucT109-zeoを含有する、ラクト-N-フコペンタオース生産イー・コリ株の培養上澄みのTLC分析を描いている。LNFP-Vは、精製された標準糖と移行速度を比較することにより、malE-fucT109融合遺伝子を発現する株の上澄み中で検出される。参照糖:レーン1:ラクトース、レーン2:LNT-2、レーン3:LNT+LNFP-V、レーン4:LNT;レーン5:株#993由来の上澄み試料、レーン6:株#993pINT-malE-fucT109-zeo由来の上澄み試料、レーン7:株#1445由来の上澄み試料、レーン8:#1445pINT-malE-fucT109-zeo由来の上澄み試料。
[実施例6] 発酵工程におけるLNFP-Iの合成
イー・コリBL21(DE3)派生物でのfucT遺伝子の組込み
株#993を宿主として使用して、フコシル基転移酵素fucT41(グラムエラ・フォルセティ(Gramella forsetii)KT0803、受託番号WP_011708479)、FucT48(フランシセラ・フィロミラギア属種フィロミラギアATCC 25015、受託番号EET21243.1)、FucT49(シュードガルベンキアニア・フェロオキシダンス(Pseudogulbenkiania ferrooxidans)、受託番号EEG10438.1)、FucT54(シデロキシダンス・リソトロフィカスES-11、受託番号ADE13114.1)、FucT61(シュードアルテロモナス・ハロプランクティスANT/505、受託番号EGI74693.1)、FucT66(ロゼオバリウス・ヌビンヒベンスISM、受託番号EAP78457.1)及びFucT69(タラソスピラ・プロフンディマリス(Thalassospira profundimaris)WP0211、受託番号EKF09232.1)をコードする遺伝子は染色体性に組み込まれた。malE-fucT融合遺伝子は、先行するプロモーターOtet及びゼオシン耐性遺伝子と一緒に、鋳型としてpINT-malE-fucT-zeoプラスミドを使用してプライマー1119及び1120で増幅され、トランスポゾンカセットEZ-Tn5<Ptet-malE-fucT-zeo>は、EZ-Tn5(商標)トランスポサーゼを使用してイー・コリBL21(DE3)株に挿入された。
malE-fucT組込みを内部に持つ株は、2%のグルコース、及び20μg/mlのゼオシンを含有する200μlのMS培地中の96ウェルプレートにおいて30℃で振盪しながら生育した。24時間の培養後、50μlの培養物を、2%のグルコース、20μg/mlのゼオシン、3mMのラクトース及び2mMのL-フコースを有する、400μlの新鮮なMS培地に移した。48時間培養後、培養物の上澄みをLC/MSにより分析した。異なるFucT遺伝子の結果は図5に示しており、エラーバーは、同じ株の5つの別々の培養物の標準偏差を示している。fucT61発現株(#1197)は、その他の組込み体と比べて最も高いLNFP-I力価を達成した(図5)。
LNFP-Iの生産のためのフコース移入の操作
株1197による増強されたLNFP-I生産は、イー・コリMG1655の主要な促進物質輸送体FucP(受託番号AIZ90162)の組込みにより達成された。FucPは先行するPtetプロモーター及びストレプトマイシン耐性遺伝子と共に、プライマー1119及び1120(<Ptet-fucP-FRT-aad1-FRT>、配列番号39)を用いて増幅され、EZ-Tn5(商標)トランスポサーゼを使用する遺伝子転位により染色体性に組み込まれた。fucT6及びfucPを有する株は株#1772と名付けられた。
3mMのラクトース及び2mMのL-フコースの存在下炭素源として2%のグルコースを有するMS培地中の96ウェルプレートにおいて株#1197及び#1772を生育して、株#1772の上澄みで検出されたLNFP-I濃度は株#1197の上澄みで見出された濃度の2倍であった。
発酵によるLNFP-Iの生産
株#1772の予備的発酵は、1LのMS培地を含有する3Lの発酵槽において30℃で行った。2%のグルコース及び2.5g/LのNH4Clを播種に先立って培地に添加し、発酵は抗生物質を添加せずに実行した。pHは、10%のアンモニアで滴定することにより絶えず7.0に保持した。発酵槽に振盪フラスコから培養物を0.1のOD600nmまで播種した。約10のOD600nmで、1mMのラクトース及び1mMのL-フコースを添加し、この2つの基質は成長及び生産率に従って繰り返し1~2mMの用量で与えた。2%のグルコースバッチが枯渇すると、グルコースは50%のグルコースストックから持続的に与えられた。87時間の培養後、培養物は185のOD600nmに達した。LNFP-Iの濃度4.3g/LはLC/MS分析により培養上澄みで決定した。ラクトース、LNT-2及びLNTは上澄み中の糖副産物として見出した(図6)。図6のグラフは、炭素源としてグルコースを使用する1Lの発酵においてイー・コリ(株#1772)によるLNFP-Iの生産を実証している。産物濃度は87時間の発酵後培養物上澄みで測定した。LNFP-I(4.3g/L)に加えて、ラクトース(13.11g/L)、LNT-2(4.6g/L)及びLNT(1.1g/L)を上澄みにおいて検出した。
Figure 2024028710000007
Figure 2024028710000008
副産物の分解
所望の産物LNFP-Iの副産物ラクトース、LNT-2及びLNTからの分離を促進するため、これらの糖は酵素的に分解することが可能であり、得られた分解産物イー・コリ株により代謝される。
β-1,4-ガラクトシダーゼ、例えば、イー・コリのLacZはラクトースをD-グルコース及びdD-ガラクトースに効率的に分解する。この2つの単糖は、機能的gal-オペロンを発現しているイー・コリ株により代謝される。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM1254由来のβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼBbhlはLNT-2をN-アセチルグルコサミン及びラクトースに高度に特異的に効率的に加水分解する。
ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス由来のβ-1,3-ガラクトシダーゼBga42Aは、LNTをガラクトース及びLNT-2に特異的に加水分解する。
副産物の分解のためのイー・コリ株の操作
発酵生産後上澄みから糖副産物なしでLNFP-Iを回収するために、イー・コリBL21(DE3)#534を使用して分解株を構築した。
機能的galETKMオペロンは、その天然のプロモーターと一緒に、オリゴヌクレオチド6473及び6474を使用してイー・コリK12のゲノムDNAから増幅し、EZ-Tn5トランスポサーゼについての5’19bpモザイクエンド認識部位のある断片を作製した。断片<galETKM>(配列番号40)はEZ-Tn5トランスポサーゼにより媒介されてイー・コリ株のゲノム中に組み込まれた。正確な組込みを有するクローンは、1%のガラクトースを含有するMacConcey寒天(Difco、Sparks、USA)上で選択し、正確な組込みを有するクローンは37℃で36時間のインキュベーション後赤いコロニーとして出現した。
ビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM1254由来のβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼBbhlをコードする遺伝子は合成的に合成し、イー・コリでの発現のためにコドン最適化した。Ptetプロモーターの転写制御下にあるBbhl及び宿主にゼオシン耐性を与える遺伝子(<Ptet-bbhl-zeo>(配列番号41))は、Himar1トランスポサーゼにより媒介されてプラスミドpEcomar-bbhl-zeoから組み込まれた。
完全β-1,4-ガラクトシダーゼ活性を保証するため、イー・コリBL21(DE3)由来のlacZ(受託番号AM946981)を、構成的プロモーターPtetの転写制御下でクローニングした。ゲンタマイシン耐性遺伝子aacC1と一緒に、断片<Ptet-lacZ-FRT-aacC1-FRT>(配列番号42)をプライマー1119及び1120を用いて増幅し、EZ-Tn5トランスポサーゼにより組み込んで、株#1369を得た。
ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス由来のβ-1,3-ガラクトシダーゼBga42Aは、イー・コリについてコドン最適化し、合成的に合成した。Ptetプロモーターの転写制御下にあるBga42A及び宿主にクロラムフェニコール耐性を与えるcat遺伝子(<Ptet-bga42A-cat>(配列番号43))は、EZ-Tn5トランスポサーゼを使用して組み込まれた。3つの加水分解酵素遺伝子をすべて発現する株を株#1886と命名した。
ラクトース及びLNT-2の分解は、株#1772のLNFP-I生産培養物に株#1886の培養物を添加することにより効率的に達成された。LacZ及びBbhlによるLNT-2及びラクトースの分解を実証するため、炭素源としてグルコースを有するMS培地で生育された株#1886の培養物を、LNFP-Iの生産のためにラクトース及びL-フコースの存在下でグルコースを有するMS培地で生育された株#1772の培養物に1対40の体積比で添加した。
図7は、イー・コリ株#1886で発現されている加水分解酵素によるラクトース及びLNT-2の分解を示している。イー・コリ株#1886の成長している培養物を、LNFP-Iを主産物として、LNT及びLNT-2を副産物として生産したイー・コリ株#1772の培養物に添加した。LNT-2及びラクトースはインキュベーション10時間以内に培養物上澄み中でほぼ完全に枯渇した。代謝物は、ラクトースは円形:LNT-2は四角形:LNFP-Iは三角形:LNTはバツ印を付ける。10時間以内に、LNT-2及びラクトースはほぼ完全な枯渇まで分解され、LNFP-I及びLNTは#1886細胞により分解されなかった。株#1886は活性なgalETKMオペロンを含有しているので、ラクトース加水分解から生じる単糖グルコース及びガラクトースは完全に代謝される。
加水分解酵素Bga42Aは細胞外では活性ではない。しかし、炭素源としてグルコースを有するMS培地上で生育された株#1886の細胞が機械的に破壊されると、LNTに対するBga42Aの加水分解活性は実証され、薄層クロマトグラフィーの画像を表示している図8に示される。イー・コリ株#1886由来の細胞可溶化液を含有する試料(レーン1:酵素なし、レーン2~6:100μgタンパク質)及び20mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH7中5mMのLNTは、30℃で及び95℃で5分間加熱することにより不活性化する前に、120分までの時間(レーン1:120分、レーン2:0分、レーン3:15分、レーン4:30分、レーン5:60分、レーン6:120分)をかけてインキュベートした。
図8では、株#1886の無細胞抽出物中のLNT並びに得られた分解産物LNT-2及びラクトースの加水分解が示されている。

Claims (16)

  1. フコシル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
    a)異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作された少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を提供するステップであって、前記異種フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースである、ステップ;
    b)少なくとも1つの炭素源の存在下で及び少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させるのに適した条件下で少なくとも1つの遺伝的に操作された細胞を培養するステップ;並びに
    c)任意選択的に、フコシル化オリゴ糖を回収するステップ
    を含む方法。
  2. アクセプター分子がLNT及びLNnTからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 異種フコシル基転移酵素が、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 異種フコシル基転移酵素が、
    i)配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
    ii)好ましくは配列の全長にわたって、配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列の1つに少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
    iii)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
    iv)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
    v)iii)及びiv)に従ったポリペプチドのいずれか1つの機能的断片をコードするヌクレオチド配列;又は
    vi)そこでは核酸分子が、厳密な条件下でi)、ii)、iii)、iv)若しくはv)に従った核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする
    を含む核酸分子によりコードされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 請求項1に記載の方法においてフコシル化オリゴ糖を生産するために/使用するために遺伝的に操作された細胞であって、前記細胞が異種フコシル基転移酵素を発現するように遺伝的に操作されており、前記異種フコシル基転移酵素がフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移することができ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースである、遺伝的に操作された細胞。
  6. 異種フコシル基転移酵素が、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチド、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的変異体、配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片、及び配列番号16~30のいずれか1つにより表されるポリペプチドの機能的断片の機能的変異体からなる群から選択される、請求項5に記載の遺伝的に操作された細胞。
  7. 異種フコシル基転移酵素が、
    i)配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列;
    ii)好ましくは配列の全長にわたって、配列番号1~15のいずれか1つにより表されるヌクレオチド配列の1つに少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
    iii)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
    iv)配列番号16~30のいずれか1つにより表されるアミノ酸配列のいずれか1つに少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
    v)iii)及びiv)に従ったポリペプチドのいずれか1つの機能的断片をコードするヌクレオチド配列;又は
    vi)そこでは核酸分子が、厳密な条件下でi)、ii)、iii)、iv)若しくはv)に従った核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする
    を含む核酸分子によりコードされる、請求項6又は7に記載の遺伝的に操作された細胞。
  8. 細胞が、好ましくは、細胞がi)L-フコースからのGDP-フコースの形成を触媒する二機能性フコースキナーゼ/L-フコース-1-ホスフェート-グアニル酸転移酵素をコードする遺伝子を発現する、又はii)ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-ホスフェートグアノシル転移酵素、GDP-マンノース-4,6-脱水酵素、及びGDP-L-フコース合成酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つを過剰発現するように遺伝的に操作されている点で、遺伝的に操作される前の細胞と比べた場合、増加した細胞内GDP-フコース生成力を含むように遺伝的に操作されている、請求項6又は7に記載の遺伝的に操作された細胞。
  9. 細胞が、好ましくは、細胞が、遺伝的に操作される前の前駆細胞と比べた場合、イー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPをコードするヌクレオチド配列、イー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的変異体をコードするヌクレオチド配列、イー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的断片をコードするヌクレオチド配列、及びイー・コリ由来の主要ファシリテーター輸送体FucPの機能的断片の機能的変異体をコードするヌクレオチド配列からなる群から選択される1つのヌクレオチド配列を発現する又は過剰発現するようにも遺伝的に操作されている点で、この細胞の細胞膜を横断する外因性L-フコースの増加した移入を有するように遺伝的に操作されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された細胞。
  10. 細胞が、好ましくは、コラン酸合成の第1ステップを触媒するWcaJをコードする細胞の遺伝子の発現が損なわれている若しくは不活性化されている点で、又は、WcaJをコードする遺伝子のヌクレオチド配列が、酵素的に不活性なポリペプチドが変更されたWcaJ遺伝子によりコードされるように変更されている点で、細胞の細胞内GDP-フコースプールの枯渇を防ぐようにも遺伝的に操作されている、請求項6~9のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された細胞。
  11. 細胞が、それぞれL-フコースイソメラーゼ及びL-フクロースキナーゼをコードする遺伝子fucl及び/若しくはfucKが欠失していて、fucl及び/若しくはfucKのヌクレオチド配列が対応するポリペプチドの酵素活性を不可逆的に不活性化するように変更されている点で、又はfucl及び/若しくはfucKの発現が損なわれている点でも、遺伝的に操作されている、請求項6~10のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された細胞。
  12. 細胞が、遺伝的に操作される前の細胞と比べた場合、CMP-N-アセチルノイラミン酸、UDP-N-アセチルグルコサミン及びUDP-ガラクトースの1つ以上を合成する増加した能力を有するようにも遺伝的に操作されており、好ましくは、前記増加したUDP-N-アセチルグルコサミン、UDP-ガラクトース、さらに好ましくは、CMP-N-アセチルノイラミン酸生産力が、a:L-グルタミンについての以下の活性:D-フルクトース-6-ホスフェートアミノ基転移酵素、N-アセチルグルコサミン-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ/グルコサミン-1-ホスフェートアセチル基転移酵素、ホスホグルコサミンムターゼ、UDP-ガラクトース-4’-エピマー変換酵素、ホスホグルコムターゼ、グルコース-1-ホスフェートウリジリルトランスフェラーゼ、グルコサミン-6-ホスフェートアセチル基転移酵素、N-アセチルグルコサミン-2-エピマー変換酵素、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピマー変換酵素、ホスホエノールピルビン酸合成酵素、シアル酸合成酵素、シアル酸透過酵素、CMP-シアル酸合成酵素を含むタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の過剰発現を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された細胞。
  13. 細胞が、
    (i)任意選択的に、β-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素、
    (ii)β-1,3-ガラクトシル基転移酵素又はβ-1,4-ガラクトシル基転移酵素;並びに
    (iii)糖転移酵素としてα-1,2-及び/又はα-1,3-フコシル基転移酵素
    を含む、請求項6~12のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された細胞。
  14. フコシル化オリゴ糖を生産するための方法であって、
    a)反応混合物中でフコース残基をドナー基質からアクセプター分子に転移させることができるフコシル基転移酵素を提供し、前記アクセプター分子がラクトテトラオースであるステップ;並びに
    b)前記フコシル基転移酵素をフコース残基を含むドナー基質及びアクセプター分子に接触させ、前記アクセプター分子がラクトテトラオースであるステップ
    を含む方法。
  15. 栄養組成物、好ましくは、乳児用調合物を製造するために、請求項1~4又は14のいずれか一項に記載の方法により生産されるフコシル化オリゴ糖の使用。
  16. 少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖を含む栄養組成物であって、前記少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖が請求項1~4又は14のいずれか一項に記載の方法により生産されている栄養組成物。
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