JP2024004997A - 防湿化粧紙及び防湿化粧板 - Google Patents

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Abstract

Figure 2024004997000001
【課題】安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙及び防湿化粧板を提供する。
【解決手段】防湿化粧紙1は、化粧紙11の裏面に防湿層12を積層してなる防湿化粧紙であって、紙基材である原紙層3と、原紙層3の一方の面に設けられたインキ層2と、原紙層3のインキ層2と反対側の面に設けられた防湿層12と、を備え、防湿層12は、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層と、原紙層3と複合皮膜層5との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層4と、を有する。
【選択図】図1

Description

本開示は、防湿化粧紙と、それを用いた防湿化粧板に関し、例えば家具や建具(室内扉、キッチン扉、収納扉、襖など)に用いられる防湿化粧紙及びそれを用いた防湿化粧板に関する。
従来、家具や建具に用いる化粧板として、木質系基材の表面に、隠蔽性を与えるためのベタ印刷層や意匠性を向上させるための絵柄摸様層を印刷した化粧シートを貼り合わせたものが一般的に知られている。このような化粧板に用いる木質系基材は、湿度差や温度差といった室内雰囲気に起因して内部の含水率分布に偏りが生じる場合があり、家具や建具の使用中に化粧板が徐々に変形する(反り、寸法変化が起きる)ことがあった。
こうした木質基材を用いた化粧板の変形を抑制する方法として、透湿度が低い防湿シートを化粧板の部材に用いることで木質基材の含水率変を抑制し、化粧板の変形を防止する方法がある。防湿シートとしては、基材に合成樹脂層を含有するシートを貼り合わせたものが知られている(例えば、特許文献1)。
特許第3206408号
防湿シートが化粧板の変形防止効果を十分に発揮するためには、密着強度が安定していることが重要である。ここで、密着強度とは防湿シートにおける基材と基材上の層(基材に積層された層)との密着強度を示す。この密着強度を安定させる方法としては、基材表面にアンカーコートを施すことが知られている。しかしながら、アンカーコートの塗工工程は他の工程とは連続しないオフライン(非連続)の工程となるため防湿シートの生産工程が複雑化するという問題がある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙及び防湿化粧板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る防湿化粧紙は、化粧紙の裏面に防湿層を積層してなる防湿化粧紙であって、紙基材と、前記紙基材の一方の面に設けられた印刷柄層と、前記紙基材の前記印刷柄層と反対側の面に設けられた防湿層と、を備え、前記防湿層は、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層を有する水蒸気バリア層と、前記紙基材と前記複合皮膜層との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層と、を有する。
上記課題を解決するために、本開示の他の一態様に係る防湿化粧板は、前記防湿化粧紙と、前記防湿化粧紙の前記防湿層側に設けられた化粧板用基板と、を備える。
本開示の態様によれば、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙及び防湿化粧板を提供することができる。
本開示の一実施形態に係る防湿化粧板の一構成例を示す断面図である。
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
(防湿化粧板の構成)
以下、図1を参照して、防湿化粧板8の構成について説明する。
防湿化粧板8は、図1に示すように、防湿化粧紙1と、化粧板用基板7とを備える。なお、防湿化粧紙1の具体的な構成については、後述する。
<化粧板用基板>
化粧板用基板7としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等の木質系板基材を使用することができる。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材を使用してもよい。化粧板用基板7の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。
防湿化粧板8において、化粧板用基板7の一方の面(図1では、上側の面)に、防湿化粧紙1が積層されている。すなわち、防湿化粧板8は、化粧板用基板7と、化粧板用基板7の一方の面に積層された防湿化粧紙1とを備える。より具体的には、本実施形態に係る防湿化粧板8は、防湿化粧紙1と、防湿化粧紙1の後述する防湿層12側に設けられた化粧板用基板7と、を備える。
(化粧シートの構成)
本実施形態に係る防湿化粧紙1の構成について説明する。
図1中に示すように、本実施形態による防湿化粧紙1は、インキ層2と、原紙層3と、平滑層4と、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15とを、この順で備える。
より具体的には、防湿化粧紙1は、原紙層(紙基材の一例)3の一方の面(表面3a)にインキ層(印刷柄層の一例)2が設けられている。防湿化粧紙1において、原紙層3とインキ層2との積層体が化粧紙11を形成している。また、防湿化粧紙1には、原紙層3のインキ層2と反対側の面(表面3b)に、平滑層4と、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15とがこの順に設けられている。防湿化粧紙1において、平滑層4と、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15との積層体が防湿層12を形成している。詳しくは後述するが、水蒸気バリア層15は、複合皮膜層5と複合皮膜層5の基材となるバリア基材層5cとを有している。また原紙層3の表面3bは、化粧紙11の裏面に相当する。
つまり、本実施形態に係る防湿化粧紙1は、化粧紙11の裏面(原紙層3の表面3b)に防湿層12を積層してなる防湿化粧紙であって、原紙層3の一方の面(表面3a)に設けられたインキ層2と、原紙層3のインキ層2と反対側の面(表面3b)に設けられた防湿層12と、を備える。
<原紙層>
原紙層3は、防湿化粧紙1の基材(紙基材)となるものである。原紙層3として用いる紙材料としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。これらの紙材料のうち、合成樹脂を混抄させて、紙間強度を強化した薄葉紙(いわゆる紙間強化紙)を原紙層3として用いることが好ましい。
また、紙にラテックスや合成樹脂を含浸したもの(樹脂含浸紙)も原紙層3として好ましく使用される。
原紙層3に用いる紙材料の坪量は特に限定されないが、20g/m未満の場合は柔軟性が高くなりすぎて加工時に皺の発生が起こりやすく、また100g/mを超える場合は紙層からの剥がれが発生しやすい。このため、坪量は20g/m以上100g/m以下の範囲内が好ましく、20g/m以上50g/mの範囲内がさらに好ましい。
このように、原紙層3は、坪量が20g/m以上100g/m以下の範囲内の薄葉紙を用いることが好ましい。また、原紙層3としては、坪量が20g/m以上100g/m以下の範囲内の上記樹脂含浸紙も好ましく用いることができる。
<インキ層>
インキ層2は、原紙層3の一方の面側に設けられている。本例では、図1に示すように原紙層3の表面3aに印刷されている。インキ層2は、防湿化粧紙1に隠蔽性と意匠性とを付与する層である。
インキ層2は、大別すると、原紙層3上に形成された下地着色層21と、下地着色層21上に形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加する絵柄模様層22とから構成されている。
下地着色層21は、原紙層3の表面(本例では、表面3a)に印刷され、防湿化粧紙1に所望の色彩による意匠性を付与するとともに、防湿化粧紙1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するための層である。下地着色層21は、例えば、インクのベタ塗り等により形成される着色ベタ層である。
下地着色層21は、原紙層3の全面を皮覆するようにして設けられる。また、下地着色層21は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。
下地着色層21の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液型ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
下地着色層21の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。下地着色層21の厚さは、例えば2μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。下地着色層21の厚さを上述の範囲内とすることにより、例えば白色や淡色に着色する場合であっても原紙層3の色や汚れに対して十分な隠蔽性を発現でき、また、下地着色層21を構成するインキ層間の密着強度の低下を防止して、十分な耐久性を得ることができる。
絵柄模様層22は、下地着色層21上に形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。絵柄としては、例えば、木目、木目導管、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、防湿化粧紙1を用いる箇所に適した絵柄を選ぶことができる。
絵柄模様層22の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば下地着色層21と同様の材料を用いることができる。
絵柄模様層22の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。絵柄模様層22の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。ここで、「絵柄模様層22の厚さ」とは、インキが印刷された部分の厚さをいう。絵柄模様層22は、図1中に示すように下地着色層21の全面に設けられていてもよい。また絵柄模様層22は、下地着色層21の全面に設けられていなくても良く、絵柄模様層22から下地着色層21が露出していても良い。絵柄模様層22は、下地着色層21上において部分的に設けられており、下地着色層21上には絵柄模様層22が設けられていない領域があってもよい。絵柄模様層22の厚さを上述の範囲内とすることにより、絵柄を鮮明に表現したり、絵柄に階調をつける事で意匠性を高めたりすることができ、また、複数色を重ねて印刷した際に上層の色と下層の色とが重なることで限られた色で表現可能な色彩幅を増やすことができる。
また、例えば絵柄模様層22が絵柄として木目導管柄を付加する層である場合、下地着色層21の表面に、導管模様を除く3色の木目柄層と、該木目柄層に同調した1色の導管柄層とを順次印刷して絵柄模様層22を形成してもよい。また、この場合、絵柄模様層22は、木目柄層と導管柄層とで凹凸模様を形成する構成であってもよい。
なお、本例では、インキ層2が下地着色層21および絵柄模様層22で形成される構成としたが、本開示におけるインキ層2の構成はこれに限られない。インキ層2は、下地着色層21および絵柄模様層22のうちいずれか一方のみで形成されていてもよい。
以上、本実施形態に係る防湿化粧紙1において化粧紙11を構成する原紙層3およびインキ層2について説明した。
次に、本実施形態に係る防湿化粧紙1において防湿層12を形成する平滑層4、複合皮膜層5、および複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15について説明する。
<平滑層>
平滑層4は、複合皮膜層5を形成する紙基材である原紙層3の裏面(本例では、表面3b)に対して平滑性を付与する為の樹脂層である。
図1に示すように、本実施形態に係る防湿化粧紙1において平滑層4は、紙基材である原紙層3と複合皮膜層5との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有している。
本実施形態において平滑層4を構成する樹脂材料は、直鎖状低密度ポリエチレン単体で構成されることが好ましい。
なお本開示はこれに限られず、平滑層4を構成する樹脂材料は、主剤である直鎖低密度ポリエチレンに他の樹脂材料を混合した構成であってもよい。ここで主剤とは、平滑層4を構成する樹脂材料の60質量%以上を占める樹脂材料を示すものとする。主剤である直鎖状低密度ポリエチレンに混合する樹脂材料としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂等を挙げることができる。
また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、平滑層4の厚みは10μm以上40μm以下の範囲内であることが好ましく、18μm以上30μm以下の範囲内であることがより好ましい。平滑層4の厚みが10μm未満の場合、原紙層3における防湿層12との接触面(表面3b)に対し、十分な平滑性が付与されない場合がある。また、平滑層4の厚みが40μmを超えると、防湿層12と原紙層3との密着性が低減する場合がある。このため、平滑層4の厚みを上記範囲内とすることで、原紙層3の裏面(表面3b)の平滑性を良好とすることができる。
<複合皮膜層>
複合皮膜層5は、紙基材である原紙層3に設けられる防湿層12において水蒸気バリア性を有する層である。図1に示すように、水蒸気バリア性を有する複合皮膜層5は、平滑層4を介して原紙層3の裏面(表面3b)に設けられている。
本実施形態に係る防湿化粧紙1において複合皮膜層5は、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有している。詳しくは後述するが複合皮膜層5は、バリア基材層5c上に形成される薄膜であり、複合皮膜層5とバリア基材層5cとの積層体が水蒸気バリア層15を構成している。
〔金属酸化物〕
金属酸化物を構成する金属原子としては、原子価が2価以上の金属原子を挙げることができ、具体的には、例えば、マグネシウム、カルシウム等の周期表第2族の金属;亜鉛等の周期表第12族の金属;アルミニウム等の周期表第13族の金属;ケイ素等の周期表第14族の金属;チタン、ジルコニウム等の遷移金属などを挙げることができる。なおケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。金属酸化物を構成する金属原子は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。これらの中でも、金属酸化物を製造するための取り扱いの容易さや得られる複合構造体のバリア性がより優れることから、金属酸化物を構成する金属原子は、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。
金属酸化物は、例えば加水分解可能な特性基が金属原子に結合した化合物を原料として用いて、これを加水分解縮合させることで、化合物の加水分解縮合物として合成される。加水分解縮合させる方法としては、液相合成法、具体的にはゾルゲル法を採用することができる。
合成された金属酸化物は、微細な粒子の形態となる。金属酸化物の各粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状などの形状を挙げることができ、繊維状または針状の形状であることがバリア性および耐熱水性により優れる複合皮膜となることから好ましい。また、単一の形状の粒子のみでもよいし、2種以上の異なる形状を有する粒子でもよい。
金属酸化物の粒子の大きさも特に限定されず、ナノメートルサイズからサブミクロンサイズのものを例示することができるが、バリア性と透明性により優れる複合皮膜層となることから、平均粒径(D50)として1nm以上100nm以下の範囲内にあることが好ましい。
[リン化合物]
リン化合物は、金属酸化物と反応可能な部位を1以上有するものである。反応可能な部位としては、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が含まれる。これらのハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こし、結合することができる。
リン化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。ポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。上記の誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化二リン等)などが挙げられる。また、ホスホン酸の誘導体の例には、ホスホン酸(H-P(=O)(OH))のリン原子に直接結合した水素原子が種々の官能基を有していてもよいアルキル基に置換されている化合物(例えば、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等)や、その塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物および脱水物も含まれる。さらに、リン酸化でんぷんなど、リン原子を有する有機高分子も、前記リン化合物として使用することができる。これらのリン化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物の中でも、コーティング液の安定性と得られる複合皮膜層のバリア性がより優れることから、リン酸を単独で使用するか、またはリン酸とそれ以外のリン化合物とを併用することが好ましい。
〔反応生成物〕
反応生成物は、金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合された特定の構造を有する。このような反応生成物や構造は金属酸化物とリン化合物とを混合し反応させることにより形成することができる。リン化合物との混合に供される(混合される直前の)金属酸化物は、金属酸化物そのものであっても良いし、金属酸化物を含む組成物の形態であってもよい。
具体的には、金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)と、リン化合物の金属酸化物と反応可能な部位(例えばリン原子に直接結合したハロゲン原子や酸素原子)とが、縮合反応(加水分解縮合反応)を起こす。金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)は、通常、金属酸化物を構成する金属原子に結合している。
反応生成物は、例えば、金属酸化物とリン化合物を含むコーティング液を基材の表面に塗布し、形成した塗膜を熱処理することにより、金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン化合物を介して結合される反応を進行させることで得られる。
熱処理の温度の下限は、110℃以上であり、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。熱処理温度が低いと、充分な反応度を得るのにかかる時間が長くなり、生産性が低下する原因となる。熱処理の温度の好ましい上限は、基材の種類などによって異なるが、220℃以下であり、190℃以下であることが好ましい。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、またはアルゴン雰囲気下などで実施することができる。熱処理の時間は、0.1秒~1時間の範囲にあることが好ましく、1秒~15分の範囲にあることがより好ましく、5~300秒の範囲にあることがさらに好ましい。
反応生成物の層には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷん等の多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)およびそれらの塩、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体のけん化物などが含まれてもよい。
〔複合皮膜層の構成〕
複合皮膜層は少なくとも金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物からなる層で、800cm-1以上1400cm-1以下の範囲における赤外線吸収スペクトルの、赤外線吸収が最大となる波数が1080cm-1以上1130cm-1以下の範囲にあることが好ましい。吸収ピークが、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800cm-1以上1400cm-1以下の領域において最大吸収波数の吸収ピークとして現れる場合には、得られる複合構造体においてさらに優れたバリア性と耐熱水性が発現される。当該特定の波数を満たす金属酸化物を構成する金属原子としては、例えば、アルミニウムなどが挙げられる。
複合皮膜層5の厚さの上限は、4.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以下であることが特に好ましい。薄くすることによって、印刷、ラミネート等の加工時における複合皮膜層5の寸法変化を低く抑えることができ、更にバリア基材層5c上に複合皮膜層5を形成した水蒸気バリア層15(バリアフィルム)の柔軟性が増し、その力学的特性を基材自体の力学的特性に近づけることができる。一方、複合皮膜層5の厚さの下限は、0.1μm以上(例えば0.2μm以上)であることが好ましい。なお、1層当たりの厚さは、本実施形態に係る防湿化粧紙1におけるバリアフィルムのバリア性がより良好になる観点から、0.05μm以上(例えば0.15μm以上)であることが好ましい。
つまり、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、複合皮膜層5の厚みは、0.05μm以上4.0μm以下の範囲内であることが好ましく、0.05μm以上2.0μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.05μm以上1.0μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.05μm以上0.9μm以下の範囲内であることが特に好ましい。
また、複合皮膜層5の平滑層4側の表面(表面5a)には、平滑層4との密着強度を向上するための表面改質処理を実施することが好ましい。当該表面改質処理としては、例えば、表面濡れ性を改質する処理が挙げられる。表面改質処理を施すことで、複合皮膜層5において平滑層4との接触面(表面5a)は、表面濡れ性が改質された表面濡れ性改質部(表面濡れ性改質領域)として形成される。これにより、複合皮膜層5と平滑層4との密着強度を向上することができる。
表面濡れ性改質部を有する複合皮膜層5は、表面処理によって表面5aをナノレベルで粗面として、表面濡れ性を改質して形成される。改質処理(表面処理)としては、リアクティブイオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)処理やコロナ処理などの物理的な表面処理が挙げられる。特に、リアクティブイオンエッチング処理は、コロナ処理と比較して経時的な接着強度の維持性が高いことが確認されている。 したがって、複合皮膜層5は、平滑層4との接触面(本例では、表面5a)にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されていることが好ましい。つまり、複合皮膜層5の表面5aが表面濡れ性改質部として形成される(複合皮膜層5が表面濡れ性改質部を有する)ことが好ましい。これにより、複合皮膜層5と平滑層4との密着強度、ひいては平滑層4を介した複合皮膜層5と原紙層3との密着強度を長期間にわたって維持することができる。つまり、原紙層3と原紙層3に積層された防湿層12との密着強度を長期間にわたって維持することができる。
以上、本実施形態に係る防湿化粧紙1において防湿層12を構成する平滑層4および複合皮膜層5について説明した。
このように、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、防湿層12は、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層5と、原紙層3と複合皮膜層5との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層4と、を有する。
原紙層3と複合皮膜層5との間に直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層4が設けられることにより、原紙層3と防湿層12との接触面(本例では、表面3b)に良好な平滑性が付与され、平滑層4を介して原紙層3と複合皮膜層5との密着強度を良好に安定させることができる。つまり、本実施形態に係る防湿化粧紙1は、防湿シートの一種である防湿化粧紙において、基材層(原紙層3)と基材層上の層(基材層に積層された層)である防湿層12とにおける安定した密着強度を保持することができる。
<水蒸気バリア層>
図1に示すように、より具体的には水蒸気バリア層15は、水蒸気バリア性を有する複合皮膜層5と複合皮膜層5の基材となるバリア基材層5cとの積層体(バリアフィルム)である。水蒸気バリア層15におけるバリア基材層5cとしては、例えば熱可塑性樹脂を材料とする樹脂フィルムを用いることができる。バリア基材層5cを構成する樹脂フィルムの材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどを好適に使用することができる。
水蒸気バリア層15において、バリア基材層5cの厚みは9μm以上15μm以下の範囲内が好ましい。
従来の防湿シートでは、基材層と基材層上の防湿層との密着強度を安定させるために、水蒸気バリア層と基材層との間にアンカーコート層を設けていた。つまり、アンカーコート層と水蒸気バリア層とによる防湿層を設けていた。しかしながら、アンカーコート層の塗工工程は、防湿シートの製造工程における他の工程とは連続しないオフライン(非連続)の工程となり、防湿シートの生産工程が複雑化するという問題があった。
これに対し、本実施形態に係る防湿化粧紙1では、基材層(原紙層3)と水蒸気バリア層15との間にアンカーコート層を設ける代わりに、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層4を設けている。これにより、原紙層3に複合皮膜層5(より具体的には、水蒸気バリア層15)を含む防湿層12を設ける際に、オフラインの工程によりアンカーコート層の塗工工程を実施する必要がない。したがって、防湿化粧紙1は生産工程の簡易化を実現することができる。
このように、本実施形態に係る防湿化粧紙1は、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙を提供することができる。また、本実施形態に係る防湿化粧紙1は、上述の防湿層12を備えることで優れた防湿性能を有し、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを抑制する効果を発揮することができる。
<プライマー層>
また図1に示すように、本実施形態に係る防湿化粧紙1は、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15の平滑層4とは反対側の面(本例では、表面15b)に、プライマー層6を設けてもよい。言い換えれば、防湿化粧紙1は、防湿層12の原紙層3と反対側の面(表面15b)に、プライマー層6をさらに備えてもよい。
つまり、防湿化粧紙1は、図1に示すように、大別すると、化粧紙11に防湿層12を積層し、さらにプライマー層6を設けた構成とすることができる。したがって、防湿化粧紙1は、紙基材である原紙層3の一方の表面(表面3a)側にインキ層2を積層し、インキ層2と反対側の他方の表面(表面3b)側に、平滑層4、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15およびプライマー層6を積層した構成とすることができる。
なお、防湿化粧紙1において、プライマー層6は必須の構成ではなく、例えば化粧板用基板7側にプライマー層に相当する層が設けられる場合には、プライマー層6を省略することができる。
プライマー層6は、接着用プライマー層であって、各種の被貼着基材(本例では、化粧板用基板7)の表面に防湿化粧紙1を積層貼着する際に、防湿化粧紙1と被貼着基材との密着性・耐食性を向上させるための層である。
プライマー層6は、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種のラミネート用接着剤との接着性を十分に確保する目的で設けられるものである。
プライマー層6に用いる接着剤の材質としては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の各種のプライマー剤が知られている。これらのプライマー剤の中から、被貼着基材への貼着時に用いられるラミネート用接着剤の種類に合せたものを選んで、プライマー層6として使用することができる。
例えば、ラミネート用接着剤として変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を使用する場合には、プライマー層6にウレタン系接着用プライマー剤を用いることで被貼着基材との接着性を良好とすることができる。なお、プライマー層6に用いる接着用プライマー剤には、例えばシリカ等の無機質微粉末を添加してもよい。これにより、プライマー層6の表面が粗面化され、防湿化粧紙1の巻取り保存時のブロッキングが防止でき、さらに投錨効果によってラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。また、プライマー層6の形成時には、上述のプライマー剤を単独、又は混合して用いて接着組成物を形成し、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて当該接着組成物を、複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15の表面15b上に形成することができる。
(製造方法)
防湿化粧紙1は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程から第3の構成を有するものである。
(1)第1の工程
第1の工程は、原紙層3(例えば、薄葉紙)の一方の面(本例では、表面3a)側に、インキ層2を印刷して化粧紙11を形成する工程である。第1の工程では、例えば原紙層3の表面3a上に、着色ベタ層である下地着色層21と絵柄を付加する絵柄模様層22とを順次印刷する。これにより、化粧紙11が作製される。
(2)第2の工程
第1の工程で作製した化粧紙11において原紙層3の裏面、すなわちインキ層2とは反対側の面(表面3b)に防湿層12を形成する工程である。第2の工程では、例えば金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層5をバリア基材層5c上に塗膜して水蒸気バリア層15を形成し、化粧紙11における原紙層3と水蒸気バリア層15との間に、溶融した直鎖状低密度ポリエチレンによる樹脂組成物を押し出し機から押し出すサンドイッチラミネートを行う。これにより、原紙層3と水蒸気バリア層15における複合皮膜層5との間に直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層4が形成され、平滑層4を介して原紙層3に複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15が設けられる。すなわち、化粧紙11に防湿層12が設けられる。これにより、安定した密着強度を保持可能な防湿化粧紙1を得ることができる。
また、第2の工程では原紙層3に防湿層12を設ける際に、従来の防湿シートのように複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15と原紙層3との間にアンカーコート層を設けず、代わりに平滑層4を設ける。これにより、オフラインでのアンカーコート層の塗工工程が不要となり、防湿化粧紙の生産工程の簡易化を実現することができる。つまり、本実施形態において上述の第1工程と第2工程とを含む防湿化粧紙1の製造方法によれば、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙を得ることができる。
また、上記ラミネートによって平滑層4を形成する前に、複合皮膜層5の表面5aに上述の表面改質処理を行って表面濡れ性を改質してもよい。これにより複合皮膜層5において平滑層4との接触面(表面3b,表面5a)での平滑層4との密着性を向上することができる。結果として、平滑層4とを介して接着される原紙層3と複合皮膜層5(より具体的には、水蒸気バリア層15)との密着性を向上することができる。これにより、より安定した密着強度を保持することが可能な防湿化粧紙1を得ることができる。
またさらに、上記ラミネートによって原紙層3に防湿層12を形成する前に、原紙層3において防湿層12との接着面(表面3b)に、コロナ処理、プラズマ処理、薬品処理等の表面処理を施してもよい。これにより、原紙層3において平滑層4との接触面(表面3a)での平滑層4との密着性を向上することができる。結果として、平滑層4とを介して接着される原紙層3と複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15との密着性をさらに向上することができる。これにより、さらに安定した密着強度を保持することが可能な防湿化粧紙1を得ることができる。
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る防湿化粧紙1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る防湿化粧紙1は、化粧紙11の裏面である原紙層3の表面3bに防湿層12を積層してなる防湿化粧紙であって、紙基材である原紙層3と、原紙層3の一方の面(表面3a)に設けられたインキ層2と、原紙層3のインキ層2と反対側の面(表面3b)に設けられた防湿層12と、を備え、防湿層12は、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層5を有する水蒸気バリア層15と、原紙層3と複合皮膜層5との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層4と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧紙を提供することができる。
(2)また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、平滑層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、原紙層3と防湿層12との密着強度をより向上することができる。
(3)また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、複合皮膜層の厚みが、0.05μm以上4.0μm以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、ラミネート等の加工時における複合皮膜層5の寸法変化を低く抑えることができ、更に水蒸気バリア層15(バリアフィルム)の柔軟性が増し、その力学的特性を基材自体の力学的特性に近づけることができる。また防湿化粧紙1においてバリアフィルムである水蒸気バリア層15のバリア性(水蒸気バリア性)をより良好にすることができる。
(4)また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、複合皮膜層5は、平滑層4との接触面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されていてもよい。
この構成によれば、原紙層3と原紙層3に積層された防湿層12との密着強度を長期間にわたって維持することができる。
(5)また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、紙基材である原紙層3は、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙であってもよい。
この構成によれば、原紙層3に適度な柔軟性を付与して加工時における皺の発生を低減することができ、さらに紙層からの剥がれを抑制することができる。
(6)また、本実施形態に係る防湿化粧紙1において、防湿層12の原紙層3と反対側の面である水蒸気バリア層15の表面15bに、プライマー層6をさらに備えてもよい。
この構成によれば、防湿化粧紙1と被貼着基材との密着性・耐食性を向上させることができる。
(7)また、本実施形態に係る防湿化粧板8は、防湿化粧紙1と、防湿化粧紙1の防湿層12側に設けられた化粧板用基板7と、を備える。
この構成によれば、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化とを両立可能な防湿化粧板を提供することができる。
<実施例>
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する。
なお本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
坪量29g/mの薄葉紙を原紙層とし、原紙層の一方の表面に、硝化綿系グラビア印刷インキを使用して、下地着色と隠蔽性付与を兼ねた1色の着色ベタ層である下地着色層と、導管模様を除く3色の木目柄層と該木目柄層に同調した1色の導管柄層とを有する絵柄模様層とを順次印刷し、インキ層を設けた。これにより、原紙層上にインキ層を設けた印刷紙である化粧紙を作成した。
〔複合皮膜層の形成〕
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、アルミニウムイソプロポキシド88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。次いで、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた。こうして得られた分散液を、固形分濃度がアルミナ換算で10質量%になるように濃縮することによって分散液を得た。
また、85質量%のリン酸水溶液2.35質量部に対して、蒸留水47.26質量部、メタノール19.00質量部およびトリフルオロ酢酸1.39質量部を加え、均一になるように攪拌することによって、溶液を得た。続いて、溶液を攪拌した状態で、分散液30.00質量部を滴下し、滴下完了後からさらに30分間攪拌を続けることによってコーティング液を得た。
次に、ポリエチレンテレフタレートで形成したバリア基材層に乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにバーコータによってコーティング液をコートし、100℃で5分間乾燥することによって複合皮膜層の前駆体層を形成した。これを、乾燥機を用いて180℃で1分間の熱処理を施すことによって、バリア基材層上に複合皮膜層が形成された水蒸気バリア層(バリアフィルム)を形成した。水蒸気バリア層の厚みは12μmとした。
〔平滑層の形成〕
水蒸気バリア層と上記印刷紙(化粧紙)の原紙層との間に、Tダイ押し出し機により溶融した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を押し出して、サンドイッチラミネートすることで、原紙層と複合皮膜層との間に平滑層4を形成した。これにより、原紙層のインキ層と反対の面側に平滑層および複合皮膜層を有する防湿層を形成した。平滑層の厚みは、20μmとした。
平滑層の形成前において、複合皮膜層における平滑層との接着面には、リアクティブイオンエッチング(RIE)処理を施し、接着面と反対側の面にウレタン系接着用プライマー剤によるプライマーコートを施した。また原紙層における平滑層との接着面には、インラインでコロナ処理を実施した。その上で、サンドイッチラミネートを実施して平滑層4を設けた。
このようにして、印刷紙(原紙層およびインキ層)と防湿層(平滑層および、複合皮膜層を有する水蒸気バリア層)とを備える実施例1の防湿化粧紙を作製した。
<実施例2>
直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層の厚みを30μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の防湿化粧紙を作製した。
<実施例3>
直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層の厚みを18μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の防湿化粧紙を作製した。
<実施例4>
直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層の厚みを15μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例4の防湿化粧紙を作製した。
<実施例5>
直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層の厚みを10μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5の防湿化粧紙を作製した。
<実施例6>
直鎖状低密度ポリエチレンによる平滑層の厚みを40μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例6の防湿化粧紙を作製した。
<実施例7>
複合皮膜層において、平滑層との接着面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を施さなかった。それ以外は実施例1と同様にして、実施例7の防湿化粧紙を作製した。
<比較例1>
平滑層に低密度ポリエチレン(LDPE)を使用し、直鎖状低密度ポリエチレンは使用しなかった。さらにサンドイッチラミネート前に、複合皮膜層にアンカーコートを施し、RIE処理を施さなかった。つまり、比較例1はアンカーコート層を備える従来の防湿化粧紙の構成を示す参考例である。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1の防湿化粧紙を得た。
<比較例2>
複合皮膜層にアンカーコートを施さなかった。それ以外は、比較例1と同様にして、比較例2の防湿化粧紙を得た。
(評価)
上記の方法により得られた実施例1~7及び比較例1、2の化粧シートについて、密着強度評価および透湿度評価を行った。
〔密着強度評価〕
ピーリング試験機により、実施例1~7、比較例1,2の防湿化粧紙の平滑層と複合被膜層との間の密着強度を、JIS K 6854-2、180度剥離に準拠して測定した。
密着強度が12N以上を「○」、10N以上、12N未満を「△」、10N未満を「×」とした。
〔透湿度評価〕
JIS Z 0208に準拠した透湿度試験により実施例1~7、比較例1,2の防湿化粧紙の透湿度を測定した。5g/m・24hr以下を「○」、5g/m・24hrを超過する場合を「×」とした。
(評価結果)
以下の表1に、各実施例及び比較例の化粧シートの構成と合わせて、記密着強度および透湿度の評価結果を示す。
Figure 2024004997000002
表1中に表されるように、実施例1~7の密着強度評価の結果は、すべて合格(「△」以上)であった。したがって、金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層を有する水蒸気バリア層と、紙基材と複合皮膜層との間に設けられて直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層と、を有する防湿層を備えた防湿化粧紙によれば、アンカーコートを施すことなく、安定した密着強度を保持できることが分かった。つまり、安定した密着強度の保持と生産工程の簡易化(アンカーコートの省略)とを両立可能な防湿化粧紙を提供可能であることが分かった。
また、実施例1~3から、平滑層の厚みが18μm以上30μm以下の範囲内である場合に密着強度がより向上することが分かった。また、実施例7では、平滑層の厚みが同等である実施例1に比べて密着強度が低減することから、リアクティブイオンエッチング処理(RIE処理)を施すことにより、RIE処理を施していない場合に比べて密着強度がより向上することが分かった。
具体的には、表1に示すように、実施例1-3の防湿化粧紙は、アンカーコート層を設けることなく、従来の防湿化粧紙(平滑層がLDPEであり、アンカーコート層を備える構成)を示す比較例1と同等の密着強度を備えることが分かった。また、実施例3-7の防湿化粧紙は、アンカーコート層を設けることなく、防湿化粧紙としての使用に十分な密着強度を備えることが分かった。
また、実施例1-7のいずれも、透湿度の評価結果は合格(〇)であり、優れた防湿性能を有し、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを抑制する効果を発揮することが分かった。
一方、比較例2の防湿化粧紙は、実施例1~7のように平滑層に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられておらず、さらに比較例1のようにアンカーコート層も備えていない。このため、密着強度の評価が不合格(×)となった。
なお、本開示の防湿化粧紙および防湿化粧板は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
化粧紙の裏面に防湿層を積層してなる防湿化粧紙であって、
紙基材と、前記紙基材の一方の面に設けられた印刷柄層と、前記紙基材の前記印刷柄層と反対側の面に設けられた防湿層と、を備え、
前記防湿層は、
金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層を有する水蒸気バリア層と、
前記紙基材と前記複合皮膜層との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層と、を有する
ことを特徴とする防湿化粧紙。
(2)
前記平滑層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)に記載の防湿化粧紙。
(3)
前記複合皮膜層の厚みが、0.05μm以上4.0μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の防湿化粧紙。
(4)
前記複合皮膜層は、前記平滑層との接触面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されている
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(5)
前記紙基材は、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙である
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(6)
前記防湿層の前記紙基材と反対側の面に、プライマー層をさらに備える
ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(7)
上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙と、
前記防湿化粧紙の前記防湿層側に設けられた化粧板用基板と、
を備える
ことを特徴とする防湿化粧板。
本開示は、家具や建具(室内扉、キッチン扉、収納扉、襖など)の表面化粧材などに好適な技術である。
1 防湿化粧紙
2 インキ層
3 原紙層
3a、3b、5a、15b 表面
4 平滑層
5 複合皮膜層
5c バリア基材層
6 プライマー層
7 化粧板用基板
8 防湿化粧板
11 化粧紙
12 防湿層
15 水蒸気バリア層
21 下地着色層
22 絵柄模様層

Claims (7)

  1. 化粧紙の裏面に防湿層を積層してなる防湿化粧紙であって、
    紙基材と、前記紙基材の一方の面に設けられた印刷柄層と、前記紙基材の前記印刷柄層と反対側の面に設けられた防湿層と、を備え、
    前記防湿層は、
    金属酸化物とリン化合物との反応物を含有する複合皮膜層を有する水蒸気バリア層と、
    前記紙基材と前記複合皮膜層との間に設けられ、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する平滑層と、を有する
    ことを特徴とする防湿化粧紙。
  2. 前記平滑層の厚みが、10μm以上40μm以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1に記載の防湿化粧紙。
  3. 前記複合皮膜層の厚みが、0.05μm以上4.0μm以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項2に記載の防湿化粧紙。
  4. 前記複合皮膜層は、前記平滑層との接触面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理が施されている
    ことを特徴とする請求項3に記載の防湿化粧紙。
  5. 前記紙基材は、坪量が20g/m以上100g/m以下の薄葉紙である
    ことを特徴とする請求項4に記載の防湿化粧紙。
  6. 前記防湿層の前記紙基材と反対側の面に、プライマー層をさらに備える
    ことを特徴とする請求項5に記載の防湿化粧紙。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の防湿化粧紙と、
    前記防湿化粧紙の前記防湿層側に設けられた化粧板用基板と、
    を備える
    ことを特徴とする防湿化粧板。
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