JP2024001705A - 糸,布および糸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗菌効果の高い糸,布および糸の製造方法を提供する。【解決手段】本開示の糸は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメント10の表面にマイクロボイドMVを有して成る。【選択図】図6

Description

本開示は、糸,布および糸の製造方法に関する。
外部からのエネルギーにより表面電位を発生する繊維を備えた糸は、従来から提案されている(特許文献1~3を参照)。特許文献1~3に記載の糸によれば、所定条件で規定された表面電位を発生させることよって、抗菌効果を発揮することが可能である。
国際公開第2017/212836号 特開2018-90950号公報 特開2019-131948号公報
特許文献1~3には、試験菌(細菌)接種から18時間後の生菌数を観測する実証試験の開示がある。これについて、実用性の観点によれば、より短時間で抗菌効果を発揮する糸が望まれている。また、特許文献1~3に記載の糸は、所定条件で規定された表面電位(V)が発生するものの、更なる抗菌効果を高める改良の余地がある。
そこで、本開示は、抗菌効果の高い糸,布および糸の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の糸は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントの表面にマイクロボイドを有して成る。
本開示の布は、上記糸を備えている。
本開示の糸の製造方法は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントにマイクロボイドを形成する工程を備えている。
本開示によれば、電位発生フィラメントの表面にマイクロボイドが設けられているため、マイクロボイドに強い電界(V/m)を生じさせることができる。従って、強い電界によって抗菌効果を効果的に発揮させることができる。なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、また、付加的な効果があってもよい。
図1(A)は、糸(S糸)の構成を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のA-A線における断面図であり、図1(C)は、図1(A)のB-B線における断面図である。 図2(A)および図2(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電位方向と、電位発生フィラメントの変形との関係を示す図である。 図3(A)は、糸(Z糸)の構成を示す図であり、図3(B)は、図3(A)のA-A線における断面図であり、図3(C)は、図3(A)のB-B線における断面図である。 図4は、電位発生フィラメントの周りに誘電体を備える糸の断面を模式的に示す断面図である。 図5は、本開示の糸のSEM写真である。 図6は、マイクロボイドを備える電位発生フィラメントの模式断面図である。
以下、本開示の糸,布および糸の製造方法について説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。なお、本明細書で言及する各種の数値範囲は、特に明記しない限り、下限および/または上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1~10といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”をも含むものとして解釈され得る。また、各種数値に“約”または“程度”が付されている場合もあるが、この“約”および“程度”といった用語は、数パーセント、例えば±10パーセント、±5パーセント、±3パーセント、±2パーセント、および/または、±1パーセントの変動を含み得ることを意味する。
-本開示の糸の説明-
本開示の糸について説明する。糸は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントを有して成る。電位発生フィラメント10の数に特に制限はなく、例えば、1本のみ、2本以上、2~1000本、好ましくは10~800本、より好ましくは20~600本程度の電位発生フィラメントが本開示の糸に含まれてよい。
[電位発生フィラメントについて]
「電位発生フィラメント」とは、基本的には、上述のとおり、「外部からのエネルギー(例えば、張力および/または応力等)により電荷を発生して電位(具体的には、表面電位)および/または電界を形成することができる繊維(フィラメント)」を意味する(以下、「電位発生繊維」、「電位形成フィラメント」、「電位形成繊維」、「電荷発生繊維」または「電荷発生フィラメント」と称する場合もある)。電位発生フィラメントとして、例えば、特許第6428979号公報に記載の電荷発生繊維などを使用してよい。
「外部からのエネルギー」として、例えば、外部からの力(以下、「外力」と称する場合もある)、具体的には糸もしくは電位発生フィラメントに変形もしくは歪みを生じさせるような力および/または糸もしくは電位発生フィラメントの軸方向にかかる力、より具体的には、張力(例えば糸もしくは電位発生フィラメントの軸方向の引張力)および/または応力もしくは歪力(糸もしくは電位発生フィラメントにかかる引張応力もしくは引張歪み)および/または糸もしくは電位発生フィラメントの横断方向にかかる力などの外力が挙げられる。
電位発生フィラメントにおいて、外力の適用により発生する表面電位は、例えば0.1V以上、好ましくは1.0V以上であってよい(正負いずれの電位も発生させることができる)。表面電位が0.1V以上であると、本開示の糸および/または布において、菌の増殖を抑制することができる。ここで、表面電位の測定方法に特に制限はなく、例えば走査型プローブ顕微鏡などを用いて測定することができる。また、表面電位により、直接的な殺菌・殺ウイルス作用を有していてもよく、細菌や真菌などの菌やウイルスが有する電位とは反対の電位を発生させることで菌やウイルスを寄せ付けないことに起因する作用であってもよい。
電位発生フィラメントは、例えば、圧電効果(外力による分極現象)または圧電性(機械的ひずみを与えたときに電圧を発生する、あるいは逆に電圧を加えると機械的ひずみを発生する性質)を有する材料(以下、「圧電材料」又は「圧電体」と称する場合もある)を含んで成ることが好ましい。なかでも、圧電材料を含んで成る繊維(以下、「圧電繊維」と称する場合もある)を使用することが特に好ましい。圧電繊維は、圧電気により電位を形成することができるため、電源が不要であるし、感電のおそれもない。なお、圧電繊維に含まれる圧電材料の寿命は、例えば、薬剤等による抗菌効果よりも長く持続する。また、このような圧電繊維では、アレルギー反応を引き起こす可能性も低い。
「圧電材料」は、圧電効果または圧電性を有する材料であれば特に制限なく使用することができ、圧電セラミックスなどの無機材料であっても、ポリマーなどの有機材料であってもよい。
「圧電材料」(又は「圧電繊維」)は、「圧電性ポリマー」を含んで成ることが好ましい。「圧電性ポリマー」として、「焦電性を有する圧電性ポリマー」や、「焦電性を有していない圧電性ポリマー」などが挙げられる。
「焦電性を有する圧電性ポリマー」とは、概して、焦電性を有し、温度変化を与えるだけで、その表面に電荷(又は電位)を発生させることもできるポリマー材料から成る圧電材料を意味する。このような圧電性ポリマーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。特に、人体の熱エネルギーによって、その表面に電荷(又は電位)を発生させることができるものが好ましい。
「焦電性を有していない圧電性ポリマー」とは、概して、ポリマー材料から成り、上記の「焦電性を有する圧電性ポリマー」を除く圧電性ポリマーを意味する。このような圧電性ポリマーとして、例えば、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。ポリ乳酸としては、L体モノマーが重合したポリ-L-乳酸(PLLA)や、D体モノマーが重合したポリ-D-乳酸(PDLA)などが知られている。
電位発生フィラメントに含まれる圧電材料の一例として、「ポリ乳酸」が挙げられる。圧電材料として使用することができるポリ乳酸(PLA)は、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。ポリ乳酸は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を発現することができる。さらに熱処理を加えて結晶化度を高めると圧電定数が高くなる。このように結晶化度を高めることで表面電位の値を向上させることができる。
ポリ乳酸(PLA)の光学純度(エナンチオマー過剰量(e.e.))は、下記式にて算出することができる。
光学純度(%)={|L体量-D体量|/(L体量+D体量)}×100
例えば、D体およびL体のいずれにおいても、光学純度は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上100重量%以下、さらにより好ましくは99.0重量%以上100重量%以下、特に好ましくは99.0重量%以上99.8重量%以下である。ポリ乳酸(PLA)のL体量とD体量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いることができる。
ポリ乳酸の数平均分子量(Mn)は、例えば6.2×10であり、重量平均分子量(Mw)は、例えば1.5×10である。なお、分子量は、これらの値に限定されるものではない。
ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じ得るため、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の他の圧電性ポリマーまたは圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5~30pC/N程度であり、ポリマーの中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
電位発生フィラメントは、断面が円形状の繊維であることが好ましい。電位発生フィラメントは、例えば、圧電性ポリマーを押し出し成型して繊維化する手法、圧電性ポリマーを溶融紡糸して繊維化する手法(例えば、紡糸工程と延伸工程とを分けて行う紡糸・延伸法、紡糸工程と延伸工程とを連結した直延伸法、仮撚り工程も同時に行うことのできるPOY-DTY法、または高速化を図った超高速紡糸法などを含む)、圧電性ポリマーを乾式あるいは湿式紡糸(例えば、溶媒に原料となるポリマーを溶解してノズルから押し出して繊維化するような相分離法もしくは乾湿紡糸法、溶媒を含んだままゲル状に均一に繊維化するようなゲル紡糸法、または液晶溶液もしくは融体を用いて繊維化する液晶紡糸法などを含む)により繊維化する手法、または、圧電性ポリマーを静電紡糸により繊維化する手法等により製造され得る。なお、電位発生フィラメントの断面形状は、円形に限るものではない。例えば円形、楕円形、矩形、および/または、異形の断面を有していてよい。
電位発生フィラメントは、長繊維であっても、短繊維であってもよい。電位発生フィラメントは、例えば0.01mm以上の長さ(寸法)を有してよい。長さは、所望の用途に応じて、適宜、選択すればよい。
電位発生フィラメントの形状、特に断面形状に特に制限はないが、例えば円形、楕円形、矩形、および/または、異形の断面を有していてよい。円形の断面形状を有することが好ましい。
本開示の電位発生フィラメントは、表面にマイクロボイドMVを有して成る(図5参照)。本明細書でいう「マイクロボイド」とは、マイクロオーダーの凹部を意図している。別の観点でマイクロボイドを説明すると、マイクロボイドとは、後述する「製造方法」において、電位発生フィラメントに対するダメージ加工処理に起因する凹部を意図している。ダメージ加工処理についてより詳述すると、化学的処理(溶液処理)に基づく加工を意図している。
後述する「製造方法」において詳述するが、電位発生フィラメントに対するダメージ加工処理は、アルカリ減量加工処理であること好ましい。当該加工処理であれば、電位発生フィラメント表面に対して適切にマイクロボイドを形成することができる。したがって、電位発生フィラメント表面にはアルカリ減量加工処理に基づくアルカリ成分を有していてよい。
本開示の電位発生フィラメントによれば、表面にマイクロボイドMVを備えているため、マイクロボイドに強い電界(V/m)を生じさせることができる。詳述すると、図6において、マイクロボイドMVに生じる電界(V/m)は、表面電位(V)をボイド幅d(m)で除した値となる。ボイド幅dは、マイクロオーダー(10-6)の長さであり、表面電位は前述したとおり0.1V以上であるため、マイクロボイドMVには、10オーダー以上の比較的強い電界を生じさせることができる。そして、特定の理論に拘束されるわけではないが、マイクロボイドMV中に菌Kが入り込むことにより、マイクロボイドMV中の電界が菌Kに作用して殺菌効果をもたらすことができる。
マイクロボイドの大きさの態様としては、電位発生フィラメント径よりも小さいことが好ましい。ここで、電位発生フィラメントの径に特に制限はなく、電位発生フィラメントの長さに沿って、同一(一定)であっても、同一でなくてもよい。電位発生フィラメントは、例えば10μm~1mmの太さを有してよい。太さは、所望の用途に応じて、適宜、選択すればよい。このような態様であれば、電位発生フィラメントに適切にマイクロボイドを形成することができる。
マイクロボイドの大きさの上限は、3μmとしてよい。このような態様であれば、10μm程度の径の電位発生フィラメントにおいても、適切にマイクロボイドを形成することができる。
マイクロボイドの大きさの下限は、菌を収容できる程度の大きさとしてよい。ここで、菌の大きさは、光学顕微鏡を用いて視認できる程度の大きさであり、下限を0.5μmとしてよい。このような態様であれば、マイクロボイド内に適切に菌を入り込ませることができ、マイクロボイド中の電界が菌に作用して殺菌効果をもたらすことができる。
なお、本明細書でいう「マイクロボイドの大きさ」とは、電位発生フィラメントの径方向の大きさ(ボイド幅d)を意図している。つまり、「マイクロボイドの長さ」(言い換えると、径方向と直交する方向の長さ、軸心方向の長さ、または、図6における紙面垂直方向のボイドの長さ)は、上記数値範囲に限定されず、軸心方向に1mm程度伸びていてもよい。
マイクロボイドには、10 V/m以上10V/m以下の電界強度が生じていることが好ましい。このような態様であれば、マイクロボイド中の電界が菌に作用して殺菌効果をもたらすことができる。
[本開示の糸の第1実施形態(S糸)について]
本開示の糸は、マイクロボイドを有する複数の電位発生フィラメントを単に引きそろえただけの糸(引きそろえ糸または無撚糸)であってよく、撚りをかけた糸(撚り合わせ糸または撚糸)であってもよく、捲縮をかけた糸(捲縮加工糸または仮撚糸)であってもよく、紡いだ糸(紡績糸)であってもよい。また、電位発生フィラメントとして、芯糸に導電体を用いて、当該導電体に絶縁体を巻き(カバリング)、該導電体に電圧を加えて電荷を発生させる構成を有するものであってもよい。
本開示の糸の繊維強度は、1~10cN/dtexであることが好ましい。これにより、本開示の糸は、高い電位を発生するためにより大きな変形が生じたとしても、破断することなく耐えることができる。繊維強度は、1~7cN/dtexがより好ましく、1~5cN/dtexが最も好ましい。同様の趣旨により、本開示の糸の伸度は、10~50%であることが好ましい。
図1(A)に示す通り、糸1sは、複数の電位発生フィラメント10を撚り合わせることによって構成してもよい。図1(A)に示す態様では、糸1sは、電位発生フィラメント10を左旋回して撚られた左旋回糸(以下、「S糸」と称する)であるが、電位発生フィラメント10を右旋回して撚られた右旋回糸(以下、「Z糸」と称する)であってもよい(例えば、図3(A)の糸1zを参照のこと)。このように、糸は、撚り合わせ糸の場合、「S糸」、「Z糸」のいずれであってもよい。なお、図1においてマイクロボイドの図示は省略している。
糸において、電位発生フィラメント10の間隔は、約0μm~約10μm、一般的には5μm程度である。尚、電位発生フィラメント10の間隔が0μmである場合、電位発生フィラメント同士が互いに接触していることを意味する。
以下、糸を詳述するために、電位発生フィラメント10として圧電材料を含んで成り、かかる圧電材料が「ポリ乳酸」である態様を一例として挙げて、詳細に説明する。
図1(A)に示す通り、一軸延伸されたポリ乳酸を含んで成る電位発生フィラメント10は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸および第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14およびd25のテンソル成分を有する。
したがって、ポリ乳酸は、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に最も効率よく電荷(又は電位)を発生することができる。
図2(A)および図2(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電位方向と、電位発生フィラメント10および/または糸を含む繊維の変形との関係を示す図である。
図2(A)に示すように、電位発生フィラメント10は、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びると、紙面の裏側から表側に向く方向に電位を生じさせることができる。すなわち、電位発生フィラメント10は、紙面表側では、負の電荷を発生させることができる。電位発生フィラメント10は、図2(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も電荷(又は電位)を発生することができるが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電位を生じさせることができる。すなわち、電位発生フィラメント10は、紙面表側では、正の電荷を発生させることができる。
図1に示す糸1sは、このようなポリ乳酸を含んで成る電位発生フィラメント10を複数本で撚ってなる糸(マルチフィラメント糸)(S糸)において(撚り方に特に制限はない)、各電位発生フィラメント10の延伸方向900は、それぞれの電位発生フィラメント10の軸方向に一致している。したがって、電位発生フィラメント10の延伸方向900は、糸の軸方向に対して、左に傾いた状態となる。なお、その角度は、撚り回数に依存する。
このようなS糸である糸1sに「外力」として例えば張力(好ましくは軸方向の張力)または応力(好ましくは軸方向の引張応力)をかけた場合、糸1sの表面には負(-)の電荷(又は電位)が発生し、その内側には正(+)の電荷(又は電位)を発生させることができる。
糸1sは、この電荷により生じ得る電位差によって表面電位を形成することができる。この表面電位は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電位を形成することができる。また、糸1sに生じる表面電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む)を有する物体に近接した場合に、糸と該物体との間に電位を生じさせることもできる。
このように表面電位が生じている糸において、糸を構成する電位発生フィラメントには、上述したとおりマイクロボイドが形成されているため、マイクロボイド中の電界が菌に作用して殺菌効果をもたらすことができる。
なお、電位発生フィラメントの表面電位および/またはマイクロボイド中の電界によって直接的な殺菌・殺ウイルス作用を有することのみならず、菌の増殖を抑制する作用を有していてもよく、細菌や真菌などの菌やウイルスが有する電位とは反対の電位を発生させることで菌やウイルスを寄せ付けないことに起因する作用であってもよい。
[本開示の糸の第2実施形態(Z糸)について]
図3(A)に示す態様では、糸1zは、電位発生フィラメント10を右旋回して撚られた右旋回糸(以下、「S糸」と称する)としてよい。ここで、糸1zは、Z糸であるため、電位発生フィラメント(又は圧電繊維)10の延伸方向900は、糸1zの軸方向に対して、右に傾いた状態となってよい。なお、その角度は、糸の撚り回数に依存する。また、糸1sと糸1zとで生じる電荷(又は電位)の極性は互いに異なるものとなる。なお、図3においてマイクロボイドの図示は省略している。
このようなZ糸である糸1zに「外力」として例えば張力(好ましくは軸方向の張力)または応力(好ましくは軸方向の引張応力)をかけた場合、糸1zの表面には正(+)の電荷(又は電位)が発生し、その内側には負(-)の電荷(又は電位)を発生させることができる。
糸1zも、この電荷により生じ得る電位差によって表面電位を形成することができる。この表面電位は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電位を形成することができる。また、糸1zに生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む)を有する物体に近接した場合に、糸1zと該物体との間に電位を生じさせることもできる。
さらに、糸を構成する電位発生フィラメントには、上述したとおりマイクロボイドが形成されているため、マイクロボイド中の電界が菌に作用して殺菌効果をもたらすことができる。
なお、S糸である糸1sおよびZ糸である糸1zについては、特許第6428979号公報を読むとより深く理解することができる。また、特許第6428979号公報は、本明細書中に参照することで組み込まれる。
[本開示の糸の第3実施形態(誘電体が設けられた糸)について]
さらに、糸は、電位発生フィラメント10の周りに「誘電体」が設けられてよい。例えば、図4の断面図で模式的に示すとおり、電位発生フィラメント10の周りには誘電体100を設けることができる。なお、図4においてマイクロボイドの図示は省略している。
本開示において「誘電体」とは、「誘電性」(電位により電気的に正負に分極(又は誘電分極又は電気分極)する性質)を有する材料または物質を含んで成るものを意味し、その表面には電荷を溜めることができる。
誘電体100は、電位発生フィラメント10の長手軸方向および周方向に存在してよく、電位発生フィラメントを完全に被覆していても、部分的に被覆していてもよい。なお、誘電体100が電位発生フィラメント10を部分的に被覆する場合、被覆されていない部分は、電位発生フィラメント10自体がそのまま露出していてよい。
従って、誘電体100は、電位発生フィラメント10の長手軸方向において、全体的に設けられていても、部分的に設けられていてよい。また、誘電体100は、電位発生フィラメント10の周方向において、全体的に設けられていても、部分的に設けられていてもよい。
また、誘電体100は、その厚みが均一であっても、不均一であってもよい(例えば、図4を参照)。
誘電体100は、複数の電位発生フィラメント10の間に存在していてもよく、この場合、複数の電位発生フィラメント10の間に誘電体100が存在しない部分があってもよい。また、誘電体100の中に気泡や空洞が存在していてもよい。
誘電体100は、誘電性を有する材料または物質を含む限り特に制限はない。誘電体100として、主に繊維産業において表面処理剤(又は繊維処理剤)として使用できることが知られている誘電性の材料(例えば、油剤、帯電防止剤など)を用いてもよい。
糸において、誘電体100は、油剤を含んで成ることが好ましい。油剤として、電位発生フィラメント10の製造で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(製糸油剤)などを使用することができる(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)。また、製布(たとえば製編、製織など)の工程で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)、または、仕上工程で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる油剤(例えば、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の界面活性剤など)も使用することができる。ここでは代表例として、フィラメント製造工程、製布工程、仕上げ工程などを挙げたが、これらの工程に限定されるものではない。油剤として、特に電位発生フィラメント10の摩擦を低減するために用いられる油剤などを使用することが好ましい。
油剤として、例えば、竹本油脂株式会社製デリオン・シリーズ、松本油脂製薬株式会社製マーポゾール・シリーズ、マーポサイズ・シリーズ、または、丸菱油化工業株式会社製パラテックス・シリーズなどが挙げられる。
油剤は、電位発生フィラメント10に沿って、全体的に存在していても、少なくとも一部に存在していてもよい。また、電位発生フィラメント10を糸に加工した後、洗濯によって油剤の少なくとも一部または全部が電位発生フィラメント10から脱落していてもよい。
また、電位発生フィラメント10の摩擦を低減するために用いられる誘電体100は、洗濯時に使用される洗剤や柔軟剤などの界面活性剤であってもよい。
洗剤として、例えば、花王株式会社製アタック(登録商標)・シリーズ、ライオン株式会社製トップ(登録商標)・シリーズ、または、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製アリエール(登録商標)・シリーズなどが挙げられる。
柔軟剤として、例えば、花王株式会社製ハミング(登録商標)・シリーズ、ライオン株式会社製ソフラン(登録商標)・シリーズ、または、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製レノア(登録商標)・シリーズなどが挙げられる。
誘電体100は、導電性(電気を通す性質)を有していてよく、その場合、誘電体100は、帯電防止剤を含んで成ることが好ましい。帯電防止剤として、電位発生フィラメント10の製造で使用され得る表面処理剤(又は繊維処理剤)として用いられる帯電防止剤などを使用することができる。帯電防止剤として、特に電位発生フィラメント10のほぐれを低減するために用いられる帯電防止剤を使用することが好ましい。
帯電防止剤として、例えば、株式会社日新化学研究所製カプロン・シリーズ、日華化学株式会社製ナイスポール・シリーズ、または、デートロン・シリーズなどが挙げられる。
帯電防止剤は、電位発生フィラメント10に沿って、全体的に存在していても、少なくとも一部に存在していてもよい。また、電位発生フィラメント10を糸に加工した後、洗濯によって帯電防止剤の少なくとも一部または全部が電位発生フィラメント10から脱落していてもよい。
また、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などは、電位発生フィラメント10の周りに存在していなくてもよい。すなわち、電位発生フィラメント10または糸は、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などを含まない場合もある。その場合、電位発生フィラメント10の間に存在する空気(又は空気層)が誘電体として機能し得る。従って、この場合、誘電体は空気を含んで成る。
例えば、電位発生フィラメント10の周りに上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などが付着した糸を洗濯や溶剤浸漬によって処理することで上述の表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などを含まない糸を使用してもよい。その場合、無垢の電位発生フィラメント10が露出することになる。あるいは、本開示において、無垢の電位発生フィラメント10のみを含んで成る糸を使用してもよい。
また、本開示では、例えば洗濯や溶剤浸漬などの処理によって、上述の油剤や帯電防止剤などの表面処理剤(又は繊維処理剤)や、洗剤、柔軟剤などが部分的に除去されて無垢の電位発生フィラメント10が部分的に露出した糸を使用してもよい。
誘電体100の厚み(又は電位発生フィラメント10の間隔)は、約0μm~約10μm、好ましくは約0.5μm~約10μm、より好ましくは約2.0μm~約10μm、一般的には5μm程度である。
[その他の好ましい糸の実施形態について]
本開示の糸において、第1実施形態の糸と第2実施形態の糸とを仮撚合糸させてもよい。仮撚合糸させることによって、糸径を太くすることができる。また、仮撚合糸であれば、バルキー性のある捲縮加工糸が得られる。言い換えると、仮撚合糸であれば、ループ状毛羽の存在によって紡績糸風の膨らみや柔らかい風合いを与えるスパンライクヤーンが得られる。さらに、S糸およびZ糸を仮撚合糸する場合は、左旋回したS糸と右旋回したZ糸とのトルクが相殺されるため、その後の布の染色工程等において編物生地の斜行を抑えることもできる。なお、仮撚合糸は、S糸とZ糸による態様に限定されず、S糸同士を合糸する態様、Z糸同士を合糸する態様としてもよい。
本開示の糸において、電位発生フィラメントがポリ乳酸(PLA)から構成されることが好ましい。電位発生フィラメントがポリ乳酸などの圧電材料を含むことで表面電位をより適切に制御することができる。また、ポリ乳酸は疎水性であることから、さらりとした肌触りを提供することができ、これによって、編み物構造体に快適性を付与することもできる。また、ポリ乳酸は、生分解性プラスチックとして知られているため、最終的にCOと水に分解することができ、環境に対する負荷を低減することができる。
「ポリ乳酸」の結晶化度は、例えば20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらにより好ましくは、50%以上、特に好ましくは55%以上であることが好ましい。結晶化度は、例えば、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)、X線回折法(XRD:X-ray diffraction)、広角X線回折測定(WAXD:Wide Angle X-ray Diffraction)などの測定方法により決定することができる。このような範囲内であると、ポリ乳酸結晶に由来する圧電性が高くなり、ポリ乳酸の圧電性による分極をより効果的に生じさせることができる。なお、本開示において、WAXDを用いて測定された結晶化度の測定値と、DSCを用いて測定された結晶化度の測定値は、約1.5倍異なる知見(DSC測定値/WAXD測定値≒1.5)が得られている。
本開示の圧電材料は、ポリ乳酸系高分子以外にも、例えば、ポリペプチド系(例えば、ポリ(グルタル酸γ-ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ-メチル)等)、セルロース系(例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等)、ポリ酪酸系(例えば、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)等)、ポリプロピレンオキシド系などの光学活性を有する高分子およびその誘導体などを高分子圧電体として使用してもよい。
本開示の糸(電位発生フィラメント)において、好ましくは、可塑剤および/または滑剤等の添加剤は入っていない。一般的に、糸において添加剤が含有されていると、表面電位が発生し難い傾向にあることが分かっている。そこで、適切に表面電位を発生させるため、糸には添加剤を含有させないことが好ましい。本明細書でいう「可塑剤」とは、糸に柔軟性を与えるための材料であり、「滑剤」とは、圧電性の糸の分子の滑りを向上させる材料である。具体的には、ポリエチレングリコール、ヒマシ油系脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸アマイドおよび/またはグリセリン脂肪酸エステル等を意図している。これらの材料が本開示の糸に含有されていない。
本開示の糸(電位発生フィラメント)は、加水分解防止剤を含有してよい。特に、ポリ乳酸(PLA)に対する加水分解防止剤を含有してよい。加水分解防止剤の一例として、カルボジイミドを含有してよい。より好ましくは環状カルボジイミドを含有してよい。より具体的には、特許5475377号に記載の環状カルボジイミドとしてもよい。このような環状カルボジイミドによれば、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができる。なお、環状カルボジイミド化合物に対し、高分子の酸性基を有効に封止できる程度にカルボキシル基封止剤を併用してもよい。かかるカルボキシル基封止剤としては、特開2005-2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物および/またはオキサジン化合物、などが例示される。
以下、加水分解防止剤の役割について説明する。従来から一般的に知られたPLAを含有する繊維またはフィラメント(表面電位を発生させない繊維またはフィラメント)は、PLAの加水分解によって酸が発生し、当該酸が菌に作用することによって抗菌効果を奏していた。そのため、PLAに加水分解が起きると繊維またはフィラメントの劣化が生じていた。しかしながら、本開示の電位発生繊維または電位発生フィラメントは、抗菌メカニズムが従来と異なり、上述したとおり表面電位を発生させることによって抗菌効果を奏するため、加水分解を起こす必要はない。さらに、本開示の電位発生繊維または電位発生フィラメントは加水分解防止剤を含有するため、繊維またはフィラメントに加水分解が起きることを防止して繊維またはフィラメントの劣化を抑えることが可能となる。
本開示の糸は、上記の態様、特にポリ乳酸から構成され得る糸に限定して解釈されるべきではない。また、本開示の糸の製造方法についても特に制限はなく、上記の製造方法に限定されるものではない。
-本開示の布の説明-
本開示の布は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントの表面にマイクロボイドを有して成る糸を含んでいる。本開示の布には、織物、編物、および/または、不織布などが含まれる。また、本開示において「生地」との用語は、衣服を作る素材を意図して使用するものの、「布」と同義として用いている。
ここで、布の一例として、上述した糸が編まれることにより編物を具体的に説明する。ここで、本明細書でいう「編物」とは、複数のループが互いに連結して成る組織を有する構造、すなわちニット構造を有するシート状の構造物を意味する。例えば、糸のループ(例えば輪状の部分)を作りそのループに次のループをひっかけることを連続して面または組織を形成することで編物を編成することができる。編物は、より具体的には、よこ編み、たて編み、丸編み、筒編み又は靴下編みなどの編み方により形成され得る組織を有していてよい。このような編物にはトリコットやラッセルなども含まれる。また、カットソーやニットソーなどの縫製品も本開示の編物に含まれる。さらにホールガーメントなどの無縫製品も本開示の編物に含まれる(WHOLEGARMENT(登録商標))。
本開示の編物に含まれ得る組織として、例えば、天竺(平編み、メリヤス編みとも呼ばれる)、ベア天竺、プレーティング天竺、スムース(インターロックとも呼ばれる)、鹿の子(表鹿の子、裏鹿の子)、ニットミス(フロートとも呼ばれる)、ハニカム、サーマル(ワッフルとも呼ばれる)、および/または、フライスなどの組織が挙げられるが、これらに限定されるものではない。編物の表裏で組織が異なっていてよい。また、組織に「タック」が含まれていてもよい。つまり、タック編みが併用されてもよい。組織には「ミス」が含まれていてよい。編物は、裏パイルであっても、裏起毛であってもよい。組織に依存して、布の肌触り、通気性、および/または、伸縮性などを変更することができる。
本開示において、「ニット」、必要に応じて「タック」および/または「ミス」の繰り返し最小単位を含む組織を「完全組織」と称する。
このような組織は編機を用いて形成しても、手編みにより形成してもよい。編機を使用する場合、その種類に特に制限はなく、従来公知の編機を特に制限なく使用することができる。
なお、上述の説明において、本開示の布を編物として説明したが、織物、組物、不織布、および/または、レースなどの繊維製品であってもよい。
-本開示の糸の製造方法の説明-
次に、本開示の糸の製造方法について説明する。本開示の糸の製造方法は、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントにマイクロボイドを形成する工程を備えている。
「外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメント」の準備は、従来から知られている特許6428979号公報と同様であるため、説明を省略する。以下ではマイクロボイドを形成する工程を詳述する。
[マイクロボイドを形成する工程]
マイクロボイドを形成する工程の一例として、アルカリ減量加工処理が挙げられる。繊維分野におけるアルカリ減量加工処理とは、繊維の表面をアルカリ溶液で処理することにより、風合い改善および/または光沢感を付与する目的で行われることが、一般的に知られている。
これに対し、本願発明者は、従来から知られている「繊維に対する風合い改善および/または光沢感を付与する目的」と異なり、「抗菌効果の高い糸,布および糸の製造方法を提供する目的」に基づいてアルカリ減量加工処理を施している。つまり、本願発明者は、「電位を発生させることができる電位発生フィラメント」に対する新たな知見として「アルカリ減量加工処理」を施すことによって、抗菌効果が高まることを見出した。当該知見は、「表面電位を発生させない繊維」からは導き出すことができない新たな知見である。
本開示の糸の製造方法によれば、アルカリ減量加工によって適切にマイクロボイドを形成することができるため、マイクロボイド中に菌が入り込むことにより、マイクロボイド中の電界が菌に作用して殺菌効果をもたらすことができる。
アルカリ減量加工処理について、処理液は、NaOHまたはNaHCOが好ましい。このような処理液であれば、電位発生フィラメントに対して適切にマイクロボイドを形成することができる。また、処理液の濃度について、マイクロボイドを形成できる程度の濃度とすることが好ましい。一例として、NaOHの濃度は3g/L以上であることが好ましい。
アルカリ減量加工処理の処理条件としては、減量率が10%以上となるように処理することが好ましい。しかしながら、この減量率に限定するものではなく、適切にマイクロボイドを形成することができれば、減量率が10%未満であってもよい。
アルカリ減量加工処理の処理時間および処理温度は、適切にマイクロボイドを形成することができるように適宜設定してよい。一例として、NaOH溶液の処理温度を50℃以上、処理時間を20分以上に設定してよい。しかしながら、上記処理条件に限定するものではなく、適切にマイクロボイドを形成することができれば、処理温度を50℃未満、処理時間を20分未満に設定してもよい。
[付加的工程(マイクロボイドの形成を促進させる工程)について]
本開示の糸の製造方法の好適な態様として、さらに電位発生フィラメントに対しマイクロボイドの形成を促進させる工程を備えてよい。
本明細書でいう「マイクロボイドの形成を促進させる工程」とは、電位発生フィラメントに対して物理的な処理を施すことを意図しており、一例として、バフ加工処理を意図している。なお、バフ加工とは、電位発生フィラメントを備えた布に対し擦り加工を施すことを意図している。
バフ加工(バフィング加工、サンディング加工ともいう)の方法および使用設備は特に限定されることはないが、バフの粗さやローラー(パイル・ローラー(PR)やカウンター・パイル・ローラー(CPR))の回転数、布の回転数、ブレーキ値および加工を施す回数などの因子によって、布および糸表面の状態を調整することができる。
以上説明したとおり、本開示の「マイクロボイドの形成を促進させる工程」を経ることにより、より適切に電位発生フィラメントに対しマイクロボイドを形成することができる。
本開示の糸を含む布に対し、マイクロボイドの評価および抗菌性評価を行った。以下、詳述する。
[マイクロボイドの評価]
下記表1に示す実施例1-1~1-2および比較例1-1~1-2の布に対し、電位発生フィラメントに形成されたマイクロボイドを電子顕微鏡にて確認した。
Figure 2024001705000002
表1中の実施例1-1および比較例1-1は、布に対して染色後の状態でアルカリ減量加工処理を行った。なお、実施例1-1および比較例1-1は、糸使いが同じであり、いずれもトータル繊度84dtex、フィラメント数72本とする、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる糸である。
一方、表1中の実施例1-2および比較例1-2は、染色される前の生機の状態でアルカリ減量加工処理を行った。なお、実施例1-2および比較例1-2は、糸使いが同じであり、いずれもトータル繊度84dtex、フィラメント数24本とする、外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる糸である。
実施例1-1および実施例1-2で行った「アルカリ減量加工処理」は、3g/L以上のNaOH溶液を使用し、処理条件として、処理温度50℃以上、処理時間60分以上の条件を採用し、減量率10%以上とした。
実施例1-1および実施例1-2の布を電子顕微鏡にて観察すると、図5に示すようなマイクロボイドを観察することができた。一方で、比較例1-1および比較例1-2の布を電子顕微鏡にて観察すると、マイクロボイドを観察することができなかった。
[抗菌性評価]
抗菌性評価を行うため、下記表2に示す実施例2-1~2-2および比較例2-1の布を作成した。
Figure 2024001705000003
なお、本明細書の抗菌試験の内容は、以下のとおりである。
(1)初期状態の比較例および実施例の製品について、生菌数を測定する。
(2)比較例および実施例の製品を120分静置後の生菌数を測定する。
(3)30分静置した比較例および実施例の製品に対し、90分連続して製品を伸縮させて表面電位を発生させた後の生菌数を測定する。
つまり、本開示の「抗菌活性値」とは、以下より算出される値を意図している。
抗菌活性値=生菌数A-生菌数B
生菌数A:120分静置後の生菌数
生菌数B:90分連続して製品を伸縮させて表面電位を発生させた後の生菌数
なお、本明細書の抗菌試験は、特許文献1~3に記載の抗菌試験(18時間後の生菌数観測)と異なり、比較的短時間での抗菌試験となっている。
また、生菌数の評価は、特許6922546号公報および特許6292368号公報に記載されているように、JIS L1902の手法に基づいて行った。なお、生菌数の数値は、Colony Forming Unit(コロニー フォーミング ユニット)の対数値(1gあたりのコロニーの対数値)を示すものである。
表2の結果によれば、実施例2-1および2-2の布は、比較例2-1の布よりも抗菌活性値が良好である結果が得られた。さらに、実施例2-2の布は、アルカリ減量加工処理に加えてバフ加工処理(マイクロボイドの形成を促進させる工程)を行っているため、マイクロボイドの形成が促進された結果、より高い抗菌活性値が得られた。
本開示の糸,布,および糸の製造方法の態様は、以下のとおりである。
<1>外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントの表面にマイクロボイドを有して成る、糸。
<2>前記マイクロボイドの大きさは、前記電位発生フィラメント径よりも小さい、<1>に記載の糸。
<3>マイクロボイドの大きさの上限は、3μmである、<1>または<2>に記載の糸。
<4>前記マイクロボイドの大きさの下限は、菌を収容できる程度の大きさである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の糸。
<5>前記マイクロボイドには、10V/m以上10V/m以下の電界強度が生じる、<1>~<4>のいずれか1つに記載の糸。
<6>前記電位発生フィラメントが圧電材料を含んで成る、<1>~<5>のいずれか1つに記載の糸。
<7>前記圧電材料がポリ乳酸を含んで成る、<6>に記載の糸。
<8>前記圧電材料は、添加剤を含有していない、<6>または<7>に記載の糸。
<9>前記圧電材料は、加水分解防止剤を含有する、<6>~<8>のいずれか1つに記載の糸。
<10>0.1Vより大きい表面電位を発生させる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の糸。
<11>前記電位発生フィラメント表面にアルカリ成分を有している、<1>~<10>のいずれか1つに記載の糸。
<12><1>~<11>のいずれか1つに記載の糸を備えた布。
<13>外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントにマイクロボイドを形成する工程を有する、糸の製造方法。
<14>前記マイクロボイドはアルカリ減量加工によって形成される、<13>に記載の糸の製造方法。
<15>前記アルカリ減量加工には、NaOHおよび/またはNaHCOが用いられている、<14>に記載の糸の製造方法。
<16>さらに、前記電位発生フィラメントに対し前記マイクロボイドの形成を促進させる工程を有する、<13>~<15>のいずれか1つに記載の糸の製造方法。
<17>前記マイクロボイドの形成を促進させる工程はバフ加工である、<16>に記載の糸の製造方法。
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本開示の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
本開示は、例えば、抗菌効果の高い糸および布に利用することができる。
1s,1z 糸
10 電位発生フィラメント
100 誘電体
900 延伸方向
910A 第1対角線
910B 第2対角線
MV マイクロボイド
K 菌
d ボイド幅

Claims (17)

  1. 外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントの表面にマイクロボイドを有して成る、糸。
  2. 前記マイクロボイドの大きさは、前記電位発生フィラメント径よりも小さい、請求項1に記載の糸。
  3. 前記マイクロボイドの大きさの上限は、3μmである、請求項1に記載の糸。
  4. 前記マイクロボイドの大きさの下限は、菌を収容できる程度の大きさである、請求項1に記載の糸。
  5. 前記マイクロボイドには、10V/m以上10V/m以下の電界強度が生じる、請求項1に記載の糸。
  6. 前記電位発生フィラメントが圧電材料を含んで成る、請求項1に記載の糸。
  7. 前記圧電材料がポリ乳酸を含んで成る、請求項6に記載の糸。
  8. 前記圧電材料は、添加剤を含有していない、請求項7に記載の糸。
  9. 前記圧電材料は、加水分解防止剤を含有する、請求項7に記載の糸。
  10. 0.1Vより大きい表面電位を発生させる、請求項1に記載の糸。
  11. 前記電位発生フィラメント表面にアルカリ成分を有している、請求項1に記載の糸。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の糸を備えた布。
  13. 外部からのエネルギーを受けて電位を発生させる電位発生フィラメントにマイクロボイドを形成する工程を有する、糸の製造方法。
  14. 前記マイクロボイドはアルカリ減量加工によって形成される、請求項13に記載の糸の製造方法。
  15. 前記アルカリ減量加工には、NaOHおよび/またはNaHCOが用いられている、請求項14に記載の糸の製造方法。
  16. さらに、前記電位発生フィラメントに対し前記マイクロボイドの形成を促進させる工程を有する、請求項13に記載の糸の製造方法。
  17. 前記マイクロボイドの形成を促進させる工程はバフ加工である、請求項16に記載の糸の製造方法。
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