JP2023501568A - 肝虚血再灌流障害におけるヘパラン硫酸(hs)オリゴ糖の効果 - Google Patents

肝虚血再灌流障害におけるヘパラン硫酸(hs)オリゴ糖の効果 Download PDF

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Abstract

対象の肝虚血再灌流(I/R)障害を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、肝I/R障害に苦しんでいる又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象を提供する段階;及びこの対象に1又はそれ以上のヘパラン硫酸(HS)化合物を投与する段階を含む。いくつかの態様では、この1又はそれ以上のHS化合物は、約5~約18糖単位、任意に、約12~約18糖単位を含む。いくつかの態様では、1又はそれ以上のHS化合物は、約12の糖単位を含む。【選択図】 なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,845号の優先権を主張し、本明細書にはその全体が参照により組み込まれる。
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号HL094463、HL144970、GM128484、及びHL142604の下で政府の支援を受けてなされた。そのため米国政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、一般に、肝虚血再灌流障害を治療するための方法及び組成物に関する。(本明細書中、虚血再灌流をI/R又はIRと表示する。)より具体的には、本願発明は、肝虚血再灌流(I/R)障害を治療するためのヘパラン硫酸オリゴ糖化合物、及び肝虚血再灌流(I/R)障害を治療するためにそれを使用する方法である。
肝虚血再灌流(I/R)障害は、肝移植及び肝腫瘍切除中の手術の主要な合併症である[1]。肝臓の手術では、しばしば、I/R障害の可能性を犠牲にして、失血を減らすためにプリングル操作を使用する必要がある[2]。最初の障害は、組織への血流が途絶え、酸素と栄養素の流れが不足する、虚血段階で始まる。この組織に血流が回復すると、この虚血組織への酸素と栄養素が再確立される。しかし、これは、実際には、血栓炎症を誘発することによって最初の虚血性障害を強め、これは止血と炎症の障害を特徴とする[1]。現在、I/R障害によって引き起こされる肝臓の障害から保護するために承認された薬はない。
血栓症と炎症とは、伝統的には、別のプロセスと見なされている。しかし、血栓症と炎症との関係を支持し、互いに刺激して強化するという証拠は増えており、これらはまとめて血栓炎症と呼ばれる[3]。血栓炎症は、I/R障害[3]、敗血症[4]、及び外傷[5]において明らかである。内皮への障害が、血栓炎症の病因の中心である。この内皮は、細胞表面にプロテオグリカンを提示することにより、循環システムための付着防止バリアとして機能する。これらのプロテオグリカン上のヘパラン硫酸(HS)鎖は、アンチトロンビンIIIに結合し、凝固因子FXaとトロンビンを阻害することができる。この内皮は、血栓炎症状態において、この抗接着性及び抗凝固性バリアを失う。さらに、この内皮の下に組織因子が横たわっており、血管壁の障害時に露出し、外因性凝固経路及びその後のトロンビン生成の強力な活性化因子として機能することができる[3]。さらに、I/R障害は、低酸素細胞が高移動度群ボックス1(HMGB1)を放出することをもたらす[6]。HMGB1は、肝臓I/R後の終末糖化産物(RAGE)活性化のために、受容体を介して好中球を動員することが示されている[7]。好中球の動員と浸潤は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を含むプロテアーゼを放出することによって、さらなる細胞死を引き起こす[8]。重度の血栓炎症は、最初に影響を受けた組織を超えて広がり、多臓器系の障害につながる可能性がある[3]。
患者の治療効果を改善するためには、血栓炎症の程度を軽減する治療法が非常に望ましい[9]。
ここでは、本発明のいくつかの実施形態を示し、多くの場合、これらの実施形態の変形例や置換例を示す。これらは、多数の様々な実施形態の単なる例示である。ある実施形態の一又はそれ以上の代表的特徴への言及も同様に例示である。このような実施形態は、典型的には、言及した(複数の)特徴の有無にかかわらず存在することができ、同様に、これらの特徴は、ここに示されているかどうかにかかわらず、ここに開示する本発明の他の実施形態に適用することができる。過度の繰り返しを避けるために、ここでは、これらの特徴の全ての可能な組み合わせを示さない。
本発明に従って提供されるのは、対象における肝虚血再灌流(I/R)障害を治療する方法である。いくつかの実施態様において、この方法は、(i) 肝I/R障害に苦しんでいる又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象を提供する段階;及び(ii) この対象に1又はそれ以上のヘパラン硫酸(HS)化合物を投与する段階、を含む。いくつかの実施態様において、この投与段階は、該対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える。いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物が、約5~約18糖単位、任意に、約12~約18糖単位を含む。いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、約12糖単位を含む。いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物のうちの少なくとも1つは、HMGB1に結合する。
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000002
(式中、Rは-NHSOH又は-NHCOCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドル、nは0~6の整数を表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の構造から成る。
Figure 2023501568000003
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の構造から成る。
Figure 2023501568000004
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000005
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000006
(式中、Rは-SOH又は-H、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、非抗凝固性ヘパリン及び低分子量ヘパリンで存在し、以下の構造式のうちの1を含む。
Figure 2023501568000007
Figure 2023501568000008
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000009
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表し、Rとnは以下のように定義される:
実施態様1では、Rは水素原子、nは1;
実施態様2では、Rは水素原子、nは2;
実施態様3(OSOH)及び実施態様4(OH)では、
Figure 2023501568000010
実施態様5(OSOH)及び実施態様6(OH)では、
Figure 2023501568000011
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000012
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この治療を必要とする対象が、哺乳動物の対象である。いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、医薬組成物の一部として投与される。いくつかの実施態様において、この医薬組成物は、HS化合物及び該HS化合物の投与のための薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む。
いくつかの実施態様において、この投与段階は、2又はそれ以上のHS化合物を投与する段階を含み、任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が別々に但し同時に投与され、また任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が異なる時間で投与され、また任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が単一の組成物で投与される。
本発明に従って提供されるのは、ヘパラン硫酸(HS)化合物である。いくつかの実施態様において、1又はそれ以上のHS化合物は、対象における肝虚血再灌流(I/R)障害の治療に使用するための組成物として提供される。いくつかの実施態様において、この組成物は1又はそれ以上のヘパラン硫酸(HS)化合物を含み、任意に、該1又はそれ以上のHS化合物は、約5~約18糖単位を含み、任意に、約12~約18糖単位、さらに任意に、該1又はそれ以上のHS化合物が約12糖単位を含む。いくつかの実施態様において、この組成物を対象に投与することにより、この対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性が与えられる。
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000013
(式中、Rは-NHSOH又は-NHCOCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドル、nは0~6の整数を表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の構造から成る。
Figure 2023501568000014
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の構造から成る。
Figure 2023501568000015
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000016
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000017
(式中、Rは-SOH又は-H、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、非抗凝固性ヘパリン及び低分子量ヘパリンで存在し、以下の構造式のうちの1を含む。
Figure 2023501568000018
Figure 2023501568000019
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000020
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表し、Rとnは以下のように定義される:
実施態様1では、Rは水素原子、nは1;
実施態様2では、Rは水素原子、nは2;
実施態様3(OSOH)及び実施態様4(OH)では、
Figure 2023501568000021
実施態様5(OSOH)及び実施態様6(OH)では、
Figure 2023501568000022
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000023
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、この1又はそれ以上のHS化合物は、HMGB1に結合する。いくつかの実施態様において、この治療を必要とする対象は、哺乳動物の対象である。いくつかの実施態様において、この組成物は、1又はそれ以上のHS化合物を投与するための、薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む。いくつかの実施態様において、この組成物は、2又はそれ以上のHS化合物を含む。
したがって、本発明の目的は、肝虚血再灌流(I/R)障害を治療するための方法及び組成物を提供することである。この目的及び他の目的は、本発明によって全体的又は部分的に達成される。さらに、上に述べられた本発明の目的、他の目的、及び本発明の利点は、以下の説明、図面及び実施例を検討した後に、当業者にとって明らかになるであろう。
本発明は、以下の図を参照することにより、よりよく理解されることができる。これらの図は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、単に本発明を明確にし、例示することを意図している。
図1A~Fは、肝臓I/Rのマウスモデルが肝障害マーカーを増加させることを示す。図1Aは、肝臓I/Rモデルのタイムラインを示す。図1Bは、血漿ALT濃度を示す棒グラフである。P=0.0083。図1Cは、H&E染色された肝壊死領域の割合(%)を示す棒グラフであり、オリジナルの100倍の倍率を使用して定量化された。P=0.0077。図1Dは、好中球の虚血性葉への浸潤を示す棒グラフであり、200倍の倍率の画像から免疫組織化学的染色によって定量化された。P=0.0018。図1Eは、血漿HMGB1濃度を示す棒グラフである。P=0.0129。図1Fは、血漿シンデカン-1濃度を示す棒グラフである。P=0.0170。データは平均±SEMを表す。偽物 n=4-5、I/R n=4-8。*P<0.05及び**P<0.01 (スチューデントのt検定による)。 図2A~Cは、HMGB1が高度に硫酸化された12-merに結合することを示す。図2Aは、化学酵素合成法によって調製された12merの構造を示す。図2Bは、フォンダパリヌクスを陽性対照とした、12-merのインビトロのFXa活性の測定値を示す棒グラフである。図2Cは、ビオチン化12-merを使用した肝臓溶解物からのHMGB1プルダウンのウエスタン分析を示す一連の画像である。 図3A及びBは、IR後に12-mer-1及び12-mer-3を使用した抗凝固及び肝障害のインビボの測定値を示す。血漿FXa活性(図3A)及びALT(図3B)は、偽物又は12-mer-1若しくは12-mer-3の投与のIR処置を受けたマウスから測定された。12-mer-1は、IRと比較してFXa活性(12-mer-1 対IR、P = 0.0057)及びALTを大幅に減少させた(偽物対IR、P = 0.0233; 12-mer-1 対IR、P = 0.0480; 12-mer-3 対IR、P = 0.6200)。データは平均±SEMを表す。すべてのグループでN=5-6。*P<0.05及び**P<0.01(一元配置分散分析及びそれに続くダネットの検定)。 図4A~Eは、12-mer-1が、肝I/R後の虚血葉の肝壊死領域を減少させることを示す。図4Aの肝壊死領域(%)は、H&E染色され、100倍の画像の元の倍率を使用して定量化された。偽物対IR、P = 0.0078; 12-mer-1対IR、P = 0.0287; 12-mer-3 対IR、P=0.1059。データは平均±SEMを表す。偽物 n=3、IR n=4,12-mer-1 n=6、及び12-mer-3 n=5。*P<0.05及び**P<0.01 対IR(一元配置分散分析とそれに続くダネット検定による)。図4B~Eは、H&E染色された肝臓組織の代表的な画像であり、100倍の倍率、スケールバーは200μm。 図5A~Fは、12-mer-1が、虚血肝臓における好中球の蓄積を減少させることを示す。図5Aは、偽物又は虚血性肝溶解物で測定されたミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を示す。偽物対I/R、P = 0.0121; 12-mer-1 対IR、P=0.0229。図5Bは、100倍の視野あたりの平均好中球を定量したものを示す。偽物対IR、P = 0.0248; 12-mer-1 対IR、P = 0.0142; 12-mer-3 対IR、P=0.0705。データは平均±SEMを表す。偽物 n=6、IR n=3-4、12-mer-1 n=4-6、12-mer-3 n=6。*P<0.05(一元配置分散分析とそれに続くダネット検定による)。図5C~Fは、好中球の免疫組織化学的に染色された肝臓組織の代表的な画像を示す。倍率200倍、スケールバー200μm。矢印(ピンク色)は、染色された好中球を示す。 図6A~Dは、肝保護に、HMGB1の結合と抗凝固が必要であることを示す。図6Aは、6-mer-AXa構造を例示し、図2Aの凡例が適用される。図6Bは、陽性対照として12-mer-3及び12-mer-1を含むビオチン化6-mer-AXaを使用した肝臓溶解物からのHMGB1プルダウンのウエスタン分析を示す。図6Cの血漿FXa活性は、偽物又は12-mer-3+6-mer-AXa若しくは6-mer-AXaのみの投与のIR処置を受けたマウスから測定された。IR対12-mer-3+6-mer-AXa、P = 0.0089; IR対 6-mer-AXa、P=0.0252。図6Dは、血漿ALTを示す。IR対偽物、P = 0.0026; IR対12-mer-3 + 6-mer-AXa、P=0.0086。データは平均±SEMを表す。偽物 n=4、IR n=3-5、12-mer-3 + 6-mer-AXa n=6、6-mer-AXa n=6。 図7A及びBは、オリゴ糖を使用したHMGB1プルダウンからの完全ウエスタンブロット画像を示す。図7Aは、入力サンプルを示す。レーン1:12-mer-4;レーン2:12-mer-2;レーン3:12-mer-3;レーン4:12-mer-1。図7Bは、溶出サンプルを示す。レーン5:12-mer-4;レーン6:12-mer-2;レーン7:12-mer-3;レーン8:12-mer-1。 図8A及びBは、12-mer-1及び6-mer-AXaオリゴ糖を使用したHMGB1プルダウンからの完全ウエスタンブロット画像を示す。図8Aは、入力サンプルを示す。レーン1:12-mer-3;レーン2:12-mer-1;レーン3:6-mer-AXa。図8Bは、溶出サンプルを示す。レーン4:12-mer-3;レーン5:12-mer-1;レーン6:6-mer-AXa。 図9は、本発明の代表的なHS抗凝固(AXa)8~18-mer構造体の構造式である。12-mer-1(12-mer AXa(n=3)とも呼ばれる)は、肝虚血再灌流マウスモデルで保護的である。式中のRは、図中に示されているように定義され、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルとして定義することもできる。 図10は、本発明の代表的なHS非抗凝固16~18-mer構造体の構造式である。これらの構造体は抗凝固剤ではない。肝IRで使用される18-mer(n = 6)構造体には、R1 =H及びR2=フェニル、X =ニトロ(パラ-ニトロフェニル)、たとえば官能性ハンドルが含まれる。R2は、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールとして定義することもできる。 図11A~Fは、図10の18 merが、肝虚血再灌流後の障害を減少させることを示す。図11Aは、IR手順の実験計画を示す。図11Bは、偽物、IR、及び18-merで処理されたIRマウスで測定された血漿ALTレベルを示すグラフである。18 merは、IRと比較してALTレベルを大幅に低下させる。データは平均±SEMを表す。偽物の場合はn=5、IR及び18-merの場合はn=7。* P <0.05、**P<0.01(ダネットの事後検定を使用した一元配置分散分析)。図11Cは、H&E染色された虚血性肝葉からの壊死領域の定量化を示すグラフである。図11D~Fは、壊死の定量化のためにH&E染色された肝臓組織の表現画像を示す。倍率100倍、スケールバー200μm。
図12A~Dは、図7の18merが炎症マーカーを減少させることを示す一連のグラフである。図12Aは、ELISAによって測定された血漿HMGB1レベルを示し、IRと比較して18merの治療群で減少している。図12Bは、免疫組織化学によって測定された好中球浸潤を示し、18merの治療群で減少した。図12Cは、ELISAで測定した血漿IL-6レベルを示し、18merの治療群で減少している。図12Dは、統計的に有意ではないが、TNF-αの血漿レベルは、18merの治療群で減少する傾向にある。 12-merの化学酵素的合成を示す概略図である。
以下、本発明をより完全に説明し、本発明のすべてではないがいくつかの実施態様を説明する。実際、本発明は、多くの異なる態様で具体化することができ、本明細書に記載の実施態様に限定されると解釈されるべきではない。これらの実施態様は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。
ヘパラン硫酸(HS)は、抗凝固薬のヘパリンと構造的に類似している。ヘパラン硫酸(HS)とヘパリンは、スルホ基を持つグルコサミン残基に結合したグルクロン酸(GlcA)又はイズロン酸(IdoA)の二糖繰り返し単位で構成されている[10]。ヘパリンは、ヘパラン硫酸(HS)よりも高度に硫酸化され、より多くのIdoA残基を持つ。敗血症やIRのような血栓炎症性疾患を治療するためのヘパリンや低分子量ヘパリン(LMWH)を使用する臨床研究は、その効果について結論が出ていない[11,12]。ヘパリンとその誘導体は、様々な鎖長と化学修飾を含む、複雑で構造的に特徴のないオリゴ糖混合物である。この構造の不均一性により、オリゴ糖構造とその生物学的機能との関係を定義することは困難である。さらに、構造的に均質なHSオリゴ糖が無いことは、治療薬として使用するためにHSの特性を利用する努力を妨げている[13]。この問題に対処するために、構造的に特異的なHSオリゴ糖を高効率で合成する化学酵素的方法が開発された[14-16]。
本発明の特定の態様によれば、抗凝固活性及び抗炎症活性を有する(例えば、HMGB1に結合する)特定のオリゴ糖は、単にHMGB1に結合するだけのオリゴ糖や抗凝固活性のみを持つオリゴ糖と比較して、IR媒介性肝障害を軽減するのにより効果的であることが示される。ヘパリンやLMWHではなく、合成HSオリゴ糖を使用することにより、オリゴ糖の肝保護効果は優れたものになる。
ヘパラン硫酸(HS)は、細胞表面や細胞外マトリックス上に多く存在する硫酸化グリコサミノグリカンであり、抗凝固性及び抗炎症性を含むいくつかの生物学的活性を持つ。肝虚血再灌流障害は、凝固反応と炎症反応に関連している。本発明に従って、定義された硫酸化パターンを有するHSオリゴ糖が合成され、合成抗凝固性HSオリゴ糖がマウスモデルにおける肝虚血再灌流障害を制限することが示された。本発明の特定の側面に従って、小さな標的HSライブラリーを使用して、抗凝固活性及び炎症性標的であるHMGB1への結合親和性の両方を有するオリゴ糖が、HMGB1にのみ結合するオリゴ糖又は抗凝固作用のみ有するオリゴ糖よりも、この障害を減少させることが実証された。本発明のHSオリゴ糖は、虚血再灌流障害に起因する肝臓障害を減少させるための新しい治療オプションを提供する。
限定することでなく入念にするために、本発明のいくつかの実施態様においては、本明細書に開示されているHS化合物の肝保護効果は、サイズ及び/又は硫酸化パターンを考慮したものである。1つの非限定的な例において、抗凝固活性及び抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する12-mer (12量体)オリゴ糖は、肝保護効果をもたらす。別の非限定的な例において、抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する12-mer (12量体)オリゴ糖は、硫酸化パターンの抗凝固活性を有する6-mer (6量体)と共に投与された場合に肝保護効果をもたらす。別の非限定的な例では、非抗凝固性であり、抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する18-mer (18量体)のHSオリゴ糖は肝保護効果をもたらす。
本発明のいくつかの実施態様において、ヘパラン硫酸(HS)12-mer (12量体)が虚血再灌流障害によって引き起こされる肝臓障害を軽減することができることが示されている。本発明は、肝移植や外科手術のために肝細胞に障害を与える炎症反応を低減する。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、約5~約18糖単位を含み。これは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18糖単位を含む。また、図面に代表的なHS化合物も開示されている。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールで置換されている。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、機能的ハンドルで置換されている。
I.定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。以下の用語は、当技術分野の当業者の1人によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本発明の説明を容易にするために示されている。
本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、別に定義されない限り、当技術分野の当業者の1人によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することを意図している。本明細書で使用される技術への言及は、当技術分野で一般に理解されている技術を指すことを意図しており、それは、当技術分野で当業者に明らかである、これらの技術の変形又は同等の技術の置換を含む。以下の用語は、当技術分野の当業者の1人によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本発明の説明を容易にするために示されている。本発明を記載する際に、いくつかの技術や段階が開示されていることは理解されよう。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれを他の開示された技術の1又はそれ以上、又は場合によってはすべてと組み合わせて使用することもできる。
したがって、明確にするために、この記載は、個々の段階のすべての可能な組み合わせを不必要な方法で繰り返すことは止める。にもかかわらず、この明細書と特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本発明及び特許請求の範囲内にあるということを理解して読まれるべきである。
長年の特許法の慣習に従い、一つの(a, an)及びその(the)という用語は、特許請求の範囲を含め、本出願で使用される場合、「1又はそれ以上」を指す。したがって、例えば、「一つの細胞(a cell)」と言及した場合には、複数のそのような細胞を含む、等である。
もし別途示されなければ、明細書及び請求の範囲で用いられる構成要素の量、反応条件、等々を表す全ての数は、用語"約"で全ての事例において修正されると理解すべきである。従って、それと反対に示されない場合は、本明細書及び添付した請求の範囲に述べられた数字的なパラメーターは、本明細書に開示された対象物により見出された好ましい特性によって変わりうる近似的なものである。
本明細書で使用する「約」という用語は、値又は組成物の量、質量、重量、温度、時間、体積、濃度、パーセンテージなどに言及する場合、特定の値から、一部の実施形態では±20%、一部の実施形態では±10%、一部の実施形態では±5%、一部の実施形態では±1%、一部の実施形態では±0.5%、及び部の実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し、このような変動は、開示された方法を実行するため、又は開示された組成物を採用するために適当である。
用語「comprising(から成る)」は、「including(含む)」、「containing(含む)」又は「characterized by(により特徴付けられる)」と同様に、包含的又は制約が無く、付加的な、非列挙の要素又は方法段階を排除しない。「comprising(から成る)」は、名付けられた要素は存在するが、他の要素も加えることが可能であり、それでも特許請求の範囲内の構成物を形成することができることを意味する技術用語である。
用語「consisting of(のみから成る)」は、請求の範囲に明記してない全ての要素、段階又は内容物を除外する。成句「consist of(のみから成る)」が、プレアンブルに直ちに続かないで、請求の範囲の本体に現れる場合、示された要素のみに限定されるが、他の要素は、全体として請求の範囲から排除されない。
用語「consisting essentially of(本質的に、から成る)」は、請求範囲を、明記した材料又は段階に限定して、さらに請求範囲の発明事項の基本的及び新規の特徴に実質的に影響しない材料又は段階を限定する。
用語「comprising(から成る)"、「consisting of(のみから成る)」及び「consisting essentially of(本質的に、から成る)」に関して、これらの3種の用語の1種が本明細書で用いられた時、本発明は、他の2種の用語のいずれかの使用を含めることができる。
本明細書で用いるように、用語"アルキル基"は、線状の(即ち"直鎖の")、分枝状の、又は環状の、飽和又は少なくとも部分的にまたある場合は完全に不飽和な(即ち、アルケニル基及びアルキニル基)炭化水素鎖を包含するC1~20を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル機、ブタジエニル基、プロピニル基、メチルプロペニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル機、ヘプチニル基及びアレニル基が挙げられる。"分枝した"とは、メチル基、エチル基、又はプロピル基のような、低級アルキル基が直鎖状のアルキル鎖に付加したアルキル基を表す。"低級アルキル基"は、例えば、1,2,3,4,5,6,7,又は8炭素原子のような、1~約8までの炭素原子、を有するアルキル基(即ち、C1-8アルキル基)を表す。"高級アルキル基"は、例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,又は20炭素原子、の様な約10~約20の炭素原子を持つアルキル基を表す。或る実施態様において、"アルキル基"は、特に、C1~8直鎖アルキル基を表す。別な実施態様において、"アルキル基"は、特に、C1~8分岐鎖アルキル基を表す。
アルキル基は、任意に、1又は2以上の、同一又は異なってもよいアルキル基置換基により置換できる("置換アルキル基")。"アルキル基の置換基"としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、水酸基、アリールオキシル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基及びシクロアルキル基が挙げられるが、これらに制限されない。任意に、アルキル鎖にそって1又は2以上の酸素原子、イオウ原子又は置換又は非置換の窒素原子を挿入できるが、ここで窒素置換基は、水素原子、低級アルキル基(以下"アルキルアミノアルキル基"と呼ぶ)又はアリール基である。
この様に、本明細書で用いられるように、用語"置換アルキル基"は、ここで定義されたように、1又は2以上の原子又はアルキル基の官能基が、他の原子又は官能基で置き換えられたアルキル基を含み、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基が挙げられる。
本明細書で用いる用語"アリール基"は、互いに縮合し、共有結合で連結した、又はメチレン基又はエチレン基部分のような、しかしこれらに制限されない、共通の官能基に結合した単一の芳香族環、又は、多環の芳香族環であることができる芳香族置換基を指す。共通の連結基はまた、ベンゾフェノンの場合のようなカルボニル基、又はジフェニルエーテルにおけるような酸素分子、又はジフェニルアミンにおけるような窒素分子でもあることができる。用語"アリール基"は、特に、複素環式芳香族化合物を含む。芳香族環は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルアミン基及びベンゾフェノン基からなる。特別な実施態様において、用語"アリール基"は、約5~約10の炭素原子、例えば、5,6,7,8,9又は10炭素原子、からなる環状芳香族を意味し、また5-及び6-員環炭化水素及び複素環式芳香族環を含む。
アリール基は同一又は異なる1又は2以上のアリール基置換基で任意に置換しうる("置換アリール基")。"アリール基の置換基"としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル機、水酸基、アルコキシル基、アリールオキシル基、アラルキルオキシル基、カルボキシル基、アシル基、ハロ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アシルオキシル基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキレン基及び-NR'R''基を含み、ここでR'及びR''は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基及びアラルキル基であってもよい。
従って、本明細書で用いられたように、用語"置換アリール基"は、本明細書で定義されたようなアリール基を含み、前記アリール基の1又は2以上の原子又は官能基は、他の原子又は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基を含む、官能基と置き換えうる。
アリール基の特別な例としては、シクロペンタジエニル基、フェニル基、フラン基、チオフェン基、ピロール基、ピラン基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンジミダゾール基、イソチアゾール基、イソキサゾール基、ピラゾール基、ピラジン基、トリアジン基、ピリミジン基、キノリン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、等々が挙げられるが、これらに制限されない。
用語"アラルキル基"は-アルキル-アリール基を指し、必要に応じて、このアルキル基及び/又はアリール基は1又はそれ以上のアルキル又はアリール基置換基を含む。
いくつかの実施態様において、用語「二価」は、結合する(例えば、共有結合する)ことができる、又は他のアルキル、アラルキル、シクロアルキル、又はアリール基などの他の2つの基に結合する基を指す。通常、この二価基の2つの異なるサイト(たとえば、2つの異なる原子)は、他の分子上の基に結合できる。例えば、この二価基はアルキレン基であってもよい。
「アルキレン」は、1~約20個の炭素原子(例えば、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 又は20個の炭素原子)を有する直鎖又は分岐の二価脂肪族炭化水素基であってもよい。このアルキレン基は、直線、分岐、又は環状であってもよい。このアルキレン基はまた、任意に、不飽和であってもよく、及び/又は1又はそれ以上の「アルキル基置換基」で置換されていてもよい。また、任意に、このアルキレン基に沿って、1又はそれ以上の酸素、硫黄、又は置換又は非置換の窒素原子(この窒素の置換基は前述のようにアルキルである。本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも呼ばれる。)が挿入されていてもよい。例示的なアルキレン基には、メチレン(-CH2-);エチレン(-CH2-CH2-);プロピレン(-(CH2)3-);シクロヘキセン(-C6H10-);-CH=CH-CH=CH-;-CH=CH-CH2-;-(CH2)q-N(R)-(CH2)r-(式中、qとrは、それぞれは、独立して0から約20までの整数であり、たとえば、0、1、2、3、4、5、6、7 、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり、Rは水素又は低級アルキル;メチレンジオキシル(-O-CH2-O-);及びエチレンジオキシル(-O-(CH2)2-O-)である。)が含まれる。一つのアルキレン基は、約2~約3個の炭素原子を有してもよく、さらに6~20個の炭素を有していてもよい。
「アリーレン」は、二価のアリール基を指す。
「官能性ハンドル(Functional handle)」は、化学酵素的合成を促進する化学基を表すために使用される。いくつかの実施態様において、一つの官能性ハンドルは、UV吸収する又はしない、及び/又は-C18カラムに結合する又は結合しない。いくつかの実施態様において、この官能性ハンドルは、検出可能なタグと呼ばれることもある。いくつかの実施態様において、この官能性ハンドルは、p-ニトロフェニルなどの、本明細書で定義されるようなアルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリール基を含む。
本明細書で使用される用語「及び/又は」は、物を列挙するときに使用される場合、単独で又は組み合わせて存在する物を示す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という表現は、個別にA、B、C、及びDを含むだけでなく、A、B、C、及びDの任意の及び全ての組み合わせ並びにサブコンビネーションを含む。
II.化合物、組成物、及び方法
本発明は、ヘパラン硫酸(HS)化合物及びこれを含む組成物(本明細書に開示されるようなHS化合物を含む医薬及び/又は治療用組成物を含む。)を提供する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、本明細書に開示されるように、1又はそれ以上のHS化合物を含んでもよい。このHS化合物を用いて対象を治療する方法も開示される。
いくつかの実施態様において、本発明は、ヘパラン硫酸(HS)化合物を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書に開示されるような1又はそれ以上のHS化合物を含む、医薬組成物などの組成物を提供する。したがって、いくつかの実施態様において、このHS化合物は、医薬組成物の一部として投与される。いくつかの実施態様において、この医薬組成物は、1又はそれ以上のHS化合物、及び1又はそれ以上のHS化合物の投与のための薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む。いくつかの実施態様において、対象における肝虚血再灌流(I/R)障害を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、肝I/R障害に苦しんでいる、又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象を提供する段階;及び、本明細書に開示される1又はそれ以上のHS化合物を対象に投与する段階を含む。いくつかの実施態様において、1又はそれ以上のHS化合物は、抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える糖単位に基づく硫酸化パターン及び/又はサイズを有し、対象に組成物を投与する段階が、この対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える。
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、約5~約18糖単位、任意に、約12~約18糖単位を含む。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、約12の糖単位を含む。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、HMGB1に結合する。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、図2Aに概略的に示されるような、12-mer-1 (12量体-1)、12-mer-2 (12量体-2)、12-mer-3 (12量体-3)、又は12-mer-4 (12量体-4)である。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、6-mer-AXa (6量体-AXa)である(図6Aに概略的に示されている)。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、図10に示され、実施例で論じられるように、18-mer (18量体)である。糖単位に基づいて様々な硫酸化パターン及びサイズを有するHS化合物の代表的な合成経路が実施例に示されて。抗炎症活性及び抗凝固活性をスクリーニングするためのアプローチもまた、実施例に示されている。
限定することでなく入念にするために、本発明のいくつかの実施態様においては、本明細書に開示されているHS化合物の肝保護効果は、サイズ及び/又は硫酸化パターンを考慮したものである。1つの非限定的な例において、抗凝固活性及び抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する12-mer (12量体)オリゴ糖は、肝保護効果をもたらす。いくつかの実施態様において、同じ又は類似の硫酸化パターンを有する11-mer (11量体)又は13-mer (13量体)は、同様に振る舞うはずである。別の非限定的な例において、抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する12-mer (12量体)オリゴ糖は、抗凝固活性を与える硫酸化パターンを有する6-mer (6量体)とともに投与された場合、肝保護効果を提供する。ここでも同様に、同じ又は類似の硫酸化パターンを持つ11-mer (11量体)又は13-mer (13量体)は同様に動作するはずである。別の非限定的な例において、非抗凝固性であり、抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有する18-mer (18量体)HSオリゴ糖などの、本明細書に開示されるサイズの範囲の大きい方の端にあるHS化合物は、肝保護効果を提供する。
本発明は、肝移植及び外科手術のために肝細胞に障害を与える炎症反応を低減する。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18糖単位を含む約5~約18糖単位を含む。代表的なHS化合物も添付図面に開示されている。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールで置換される。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、官能性ハンドルで置換される。
いくつかの実施態様において、抗炎症活性(HMGB1阻害を介してのように)及び抗凝固活性の両方の活性が、IRモデルにおいて保護を与えることが示されている。これらの活性は、1つの分子(例えば、本明細書で12-mer-1 (12量体-1)又は12-mer AXa (12量体- AXa)と呼ばれるHS化合物)又は2つの分子の組み合わせ投与(例えば、本明細書で6-mer-AXa (6量体-AXa、本明細書では図6Aに概略的に示されている) + 12-mer NS2S6S (12量体NS2S6S、本明細書では12-mer-3とも呼ばれる)呼ばれるHS化合物)に由来することができる。したがって、いくつかの実施態様において、糖単位の数に基づく硫酸化パターンとサイズを有する1又はそれ以上のHS化合物を投与する段階から成る組み合わせ治療が提供され、それは、抗炎症活性(HMGB1阻害などを介して)と抗凝固活性の両方を、肝I/R障害に苦しんでいる又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象のような、それを必要とする対象に与える。抗炎症活性及び抗凝固活性、並びにこれらに関連するHS化合物構造(硫酸化パターン及び糖単位の数に基づくサイズを含む)を評価するためのアプローチが、実施例を含めた本明細書に開示される。いくつかの実施態様において、この組み合わせ治療は、6-mer-AXa (6量体-AXa) + 12-mer NS2S6S (12量体NS2S6S、12-mer-3とも呼ばれる)を投与する段階を含む。
いくつかの実施態様において、2又はそれ以上のHS化合物が投与される場合、これら2又はそれ以上のHS化合物は、別々に但し同時に投与される。いくつかの実施態様において、これら2又はそれ以上のHS化合物は、異なる時間に投与されるが、それは所望の治療効果を有するために互いに十分に近接している。いくつかの実施態様において、これら2又はそれ以上のHS化合物は、単一の組成物又は処方物で投与される。
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の化学式から成る:
Figure 2023501568000024
(式中、Rは-NHSOH又は-NHCOCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドル、nは0~6の整数を表す。)
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の構造から成る:
Figure 2023501568000025
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の構造から成る:
Figure 2023501568000026
(式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の化学式から成る:
Figure 2023501568000027
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の化学式から成る;
Figure 2023501568000028
(式中、Rは-SOH又は-H、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
いくつかの実施態様において、このHS化合物は、非抗凝固性ヘパリン及び低分子量ヘパリンで存在し、以下の構造式のうちの1を含む:
Figure 2023501568000029
Figure 2023501568000030
いくつかの実施態様において、本発明は、5-mer (5量体)、6-mer (6量体)、又は7-mer (6量体)を含むHS化合物を提供する。一例において、この6-mer (6量体)は、本明細書で6-mer-AXa (6量体-AXa)と呼ばれるHS化合物である(図6Aに概略的に示されている。)。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の化学式から成る:
Figure 2023501568000031
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表し、Rとnは以下のように定義される:
実施態様1では、Rは水素原子、nは1;
実施態様2では、Rは水素原子、nは2;
実施態様3(OSOH)及び実施態様4(OH)では、
Figure 2023501568000032
実施態様5(OSOH)及び実施態様6(OH)では、
Figure 2023501568000033
いくつかの実施態様において、この官能性ハンドルは、p-ニトロフェニルなどの、本明細書で定義されるようなアルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリール基を含む。一例において、この6-mer (6量体)は、本明細書で6-mer-AXa (6量体-AXa)と呼ばれるHS化合物である(図6Aに概略的に示されている。)。いくつかの実施態様において、このHS化合物は、以下の化学式から成る。
Figure 2023501568000034
(式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
図9には、本発明の代表的なHS抗凝固性(AXa)8~18-mer (8~18量体)の構造式が示されている。その12-mer AXa (12量体- AXa) (n=3)は、肝虚血再灌流マウスモデルで保護的である。式中のRはそこに示されているように定義され、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルとして定義することもできる。いくつかの実施態様において、このようなHS化合物は、抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える糖単位に基づく硫酸化パターン及び/又はサイズを有し、対象に組成物を投与することにより、対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える。
図10には、本発明の代表的なHS非抗凝固性16~18-mer (16~18量体)の構造式が示されている。この構造体は抗凝固性ではない。肝臓I/Rで使用される18-mer (18量体)(n=6)の構造には、R=H、及びR=フェニルであり、X=ニトロ(パラ-ニトロフェニル)、たとえば官能性ハンドル、が含まれる。またRは、-H、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールとして定義することもできる。したがって、別の非限定的な例では、本発明のサイズ範囲の大きい方の端にあるHS化合物は、非抗凝固性であり、抗炎症活性を与える硫酸化パターンを有し、肝保護を提供する。
いくつかの実施態様において、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体又はアジュバントを含んでもよい。いくつかの実施態様において、この担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容可能である。この担体又はアジュバントは、望ましくは、それ自体が、その組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘発すべきでなく、毒性であってはならない。適切な担体は、高分子量で、ゆっくりと代謝される高分子であってもよく、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アンモニア酸コポリマー、不活性ウイルス粒子などである。
薬学的に許容される塩を使用してもよく、例えば、鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩など)又は有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩など)を使用することができる。
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、更に、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含んでもよい。このような組成物には、さらに、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質が存在してもよい。このような担体は、医薬組成物を、患者へ投与するために処方することを可能にする。
本発明の医薬組成物の適切な処方物は、水性又は非水性の滅菌注射液(抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤、殺菌性抗生物質、及びこの処方物を意図されたレシピエントの体液と等張にする溶質などが含まれる。)、及び水性又は非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤や増粘剤などが含まれる。)を含む。この処方物は、単位用量又は複数回用量の容器(例えば、密封されたアンプル及びバイアル)中に存在してもよく、使用直前に滅菌液体担体(例えば、注射用の水)を添加のみを必要とする、凍結状態又は凍結乾燥状態で保存することができる。いくつかの例示的な成分は、SDS(いくつかの実施態様において0.1~10mg/ml、いくつかの実施態様において約2.0mg/mlの範囲);マンニトール若しくは他の糖(いくつかの実施態様において10~100mg/ml、いくつかの実施態様において約30mg/mlの範囲);及び/又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。また、問題となる処方物のタイプに関して、当技術分野で慣用的な如何なる他の薬剤を使用してもよい。いくつかの実施態様において、この担体は、薬学的に許容可能である。いくつかの実施態様において、この担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容可能である。
本発明の医薬組成物は、5.5~8.5、好ましくは6~8、より好ましくは約7のpHを有してもよい。このpHは、緩衝液の使用によって維持することができる。この組成物は、無菌及び/又はパイロジェンフリーであってもよい。この組成物は、ヒトに関して等張性であってもよい。本発明の医薬組成物は、密閉された容器で供給することができる。
本発明による治療方法は、それを必要とする対象に、本発明のHS化合物又はその関連化合物を投与する段階を含む。
本発明の医薬組成物の有効用量が、それを必要とする対象に投与される。「治療有効量」、「治療有効用量」、「有効量」、「有効用量」という用語及びそれらの変形は、本明細書で交換可能に使用され、ある程度の効果(例えば、肝虚血再灌流(I/R)障害の症状の軽減)を生み出すのに十分な、本発明の治療組成物又は医薬組成物の量を指す。実際の投与量レベルは、特定の対象に対して所望の治療効果を達成するのに有効な量を投与するように、変えることができる。
いくつかの実施態様において、対象に投与される本発明の治療組成物の量は、対象の大きさ、体重、年齢、標的組織又は器官、投与経路、治療される症状、及び治療される症状の重症度を含むがこれらに限定されない多くの要因に依存する。
治療用組成物の効力は変動する可能性があり、そのため「治療的に有効な」量は変動する可能性がある。しかし、当業者は、以下に記載される評価方法を使用して、本発明の医薬組成物の効力及び有効性を容易に評価することができ、それに応じて治療計画を調整することができる。
III.対象(患者)
本発明は、望ましくはヒトについての発明であるが、本発明の原理は、その組成物と方法が無脊椎動物及び哺乳動物を含むすべての脊椎動物種に関して有効であることを示していることを理解されたい。これらは「対象」という用語に含まれることが意図される。さらに、この哺乳動物は、肝虚血再灌流(I/R)症状の治療をすることが望ましい任意の哺乳動物種、特に農業用及び家畜用哺乳動物種を含むと理解されたい。
本発明の方法は、温血脊椎動物の治療に特に有用である。したがって、本発明は、哺乳類及び鳥に関する。
より具体的には、本明細書で提供されるのは、哺乳類の治療法であり、この哺乳類には、ヒトだけでなく、絶滅の危機に瀕しているために重要な哺乳類(シベリアトラなど)、経済的に重要な哺乳類(人間が消費するために農場で飼育された動物)、及び/又は人間にとっての社会的重要な哺乳類(ペットとして、又は動物園で飼育されている動物)などが含まれ、それは、例えば、人間以外の肉食動物(猫や犬など)、豚(豚、豚、イノシシなど)、反芻動物(牛、牛、羊、キリン、鹿、山羊、バイソン、ラクダなど)、馬である。動物園で飼育されている絶滅危惧種の鳥や家禽、特に飼いならされた家禽(すなわち、七面鳥、鶏肉、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどの家禽)は、人間にとっても経済的に重要であり、これらの治療法も提供される。したがって、本明細書で提供されるのは、家畜(豚など)、反芻動物、馬、家禽などを含むがこれらに限定されない家畜の治療法である。
肝虚血再灌流(I/R)障害は、肝移植及び肝腫瘍切除中の手術の主要な合併症である。肝臓の手術では、しばしば、I/R障害の可能性を犠牲にして、失血を減らすためにプリングル操作を使用する必要がある。最初の障害は、組織への血流が途絶え、酸素と栄養素の流れが不足する、虚血段階で始まる。したがって、肝移植中に手術を受ける対象は、治療される代表的な対象(患者)である。しかし、肝I/R障害に苦しんでいる又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象など、本開示をレビューすれば、当業者に明らかになる任意の如何なる対象をも治療することができる。
以下の実施例は、当技術分野の当業者に、本発明の代表的な実施態様を実施するためのガイダンスを提供するために含まれている。本開示及び当技術分野における一般的なレベルの技能に照らせば、当業者は、以下の実施例が単なる例示であり、本発明の範囲から離れることなしに、多数の変更、修正、及び変更が可能であることを理解するであろう。
材料及び方法
オリゴ糖の化学酵素的合成
12-mer (12量体)及び6-mer-AXa (6量体-AXa)の合成は過去に報告されている[15]。図13も参照されたい。簡単に説明すると、12-mer-4 (12量体-4)を合成するために、グルクロン酸-pNPを、pmHS2を使用して、UDP-GlcNTFA(段階a)及びUDP-GlcA(段階b)で延長し、12-mer (12量体)を得た。次に、GlcNTFAをLiOHを用いて脱保護し、次にNSTでN-硫酸化して(段階c)、12-mer(12量体)のN-スルホグルコサミン残基を生成した。次に、6-OST1及び6-OST3を使用して6-O-硫酸化し(段階d)、12-mer-4 (12量体-4:GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S- GlcA-pNP)を生成した。12-mer-1、-2、及び-3(12量体-1、-2、及び-3)は、単糖を五糖中間体に伸長することによって合成した。次に、LiOHを使用してGlcNTFAを脱保護し、次にNSTを使用してN硫酸化して、2つのN-スルホグルコサミン残基を持つ、5-mer(5量体)を生成した。5-mer(5量体)NSをUDP-GlcNTFAで延長して、6-mer(6量体)の中間体を生成した。2つのN-スルホグルコサミン残基の間にあるグルクロン酸残基は、C5-エピメラーゼによるエピマー化と2-OSTによる2-O-硫酸化(段階e)を受けて、6-mer(6量体)の中間体GlcNTFA-GlcA-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-GlcA-pNPを生成した。6-mer-AXa (6量体-AXa)を生成するために、この6-mer(6量体)の中間体を段階c、d、e、及び3-OST1による3-O-硫酸化(段階f)により、GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S3S-IdoA2S-GlcNS6S-GlcA-pNPを生成した。12-mer-2 (12量体-2)を生成するために、6-mer(6量体)の中間体に、段階b、c、a、及びeを3回繰り返して、GlcNS-GlcA-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-GlcA-pNPを生成した。12-mer-2 (12量体-2)を、6-OST1及び6-OST-3によるGlcNS残基の6-O-硫酸化によって12-mer-3 (12量体-3)に変換し(段階e)、構造GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-GlcA-pNPを得た。最後に、段階fにより、12-mer-3 (12量体-3)を化合物12-mer-1 (12量体-1)に変換して、構造GlcNS6S-GlcA-GlcNS6S3S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-IdoA2S-GlcNS6S-GlcA-pNPを作成した。これらの異なる12-mer (12量体)及び6-mer-AXa (6量体-AXa)の純度は、高分解能DEAE-HPLCで測定すると、>95%であった。これらの化学構造を、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)及びNMRによって確認した[15]。
これらのオリゴ糖を、PCT国際特許出願(PCT/US2018/059152)の記載と同じ方法を使用してビオチン化バージョンに変換した。簡単に説明すると、pNPタグ(5~10 mg)及び0.5 mg Pd/Cを有する12-mer (12量体)及び6-mer-AXa (6量体-AXa)を、総量4mlで、20 mM NaOAc、pH5.0に溶解した。その反応混合物を真空にして、Hを3回再充填した。次に、その反応物を室温で4時間インキュベートした。その後、ろ過して木炭を取り除いた。濾過した溶液を、500mM Na2HPO4を用いてpH8.5に調整した。これにスクシンイミジル6-アジドヘキサノエート(開始オリゴ糖の20モル当量)を添加し、37℃で一晩インキュベートした。その反応物をDEAE-HPLCカラムで精製し、アジドタグ付きオリゴ糖を生成した。PBS(pH7.4)バッファーをNで5分間バブリングして、0.1 M CuSO4、0.1 Mトリス(3-ヒドロキシプロピル-トリアゾリルメチル)アミン(THPTA)(Sigma)、0.15 Mアスコルビン酸ナトリウム、0.01Mアジドタグ付きオリゴ糖、及び0.02Mビオチン-PEG4-アルキン(Sigma)から成るサンプル溶液を調製した。400μlのTHPTAと80μlのCuSO4との混合物を激しく攪拌し、これに160μlのアスコルビン酸ナトリウム、200μlのアジドタグ付きオリゴマー、及び200μlのビオチン-PEG4-アルキンを添加し、Nで2分間バブリングし、37℃で一晩インキュベートした。その反応物をDEAE-HPLCカラムで精製してビオチン化生成物を生成した。ビオチン化された12-mer (12量体)及び6-mer-AXa (6量体-AXa)は、ESI-MSによって確認された。
肝臓溶解物からのHMGB1のアフィニティー精製
PCT国際特許出願(PCT/US2018/059152)に記載の方法に従って、肝臓溶解物からHMGB1をアフィニティー精製するために使用して、6-mer-AXa (6量体-AXa)及び12-mer (12量体)ビオチン化オリゴ糖を調製した。簡単に説明すると、と殺時に液体窒素中で組織を急速凍結することによって、肝臓溶解物を調製した。その組織を、200 mM MES、500 mMリン酸塩、及び1 mMEDTAを含むpH6のバッファーで機械的にホモジナイズした後、3回凍結融解した。溶解したサンプルを10,000xgで15分間、4℃で遠心分離した。ビオチン化HSオリゴ糖(最終濃度0.1 mM)を100 mM NaCl 20 mM HEPES pH 7.2中の新鮮な肝臓溶解物(~0.6 mg)20μlと混合し、4℃で一晩インキュベートした。アビジン-セファロース及び増加する濃度のNaCl洗浄濃度を使用して、ビオチン化HS結合複合体の精製を行った。各サンプルの溶出液をゲル電気泳動で分離し、ニトロセルロースメンブレンに転写し、抗HMGB1一次抗体(Abcam)、続いて抗ウサギHRP(Abcam)を使用してHMGB1をブロットした。
インビトロ及びエクスビボのオリゴ糖の抗FXa活性の測定
評価は過去に報告されている方法[16]に基づく。簡単に説明すると、ヒトFXa(Enzyme Research Laboratories)をPBSで50Uml-1に希釈した。発色基質S-2765(Diapharma)を水中で1 mg ml-1に希釈した。インビトロの試験では、フォンダパリヌクス(商品名ARIXTRAで入手可能)と12-mer (12量体)オリゴ糖をさまざまな濃度(0~131 nM)でPBSに溶解した。16μlのサンプルを、60μlの35μlml-1アンチトロンビン(Cutter Biologics)と共に室温で2分間インキュベートした。次に、これに100μlのFXaを添加し、室温で4分間インキュベートした。これに30μlのS-2765基質を添加し、その反応混合物の波長405nmの吸光度を5分間連続して測定した。PBSは対照サンプルとして機能する。各サンプルの最大勾配を、対照サンプルの最大勾配で割ることにより、FXa活性(%)に変換した。
エクスビボ研究のために、再灌流期間の6時間後にマウス血漿を回収し、上記と同じように評価した。
肝臓虚血-再灌流手術の設計
肝臓虚血再灌流(IR)手術は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のマカリスター心臓研究所の動物手術コア研究所によって行われた。このマウス実験は、UNC動物管理及び使用委員会によって承認され、国立衛生研究所のガイドラインに準拠した。
約8週齢の雄のC57BL/6JマウスをIR手術に使用した。マウスに、外科的処置の30分前に、1mg/kgのオリゴ糖又は等量の生理食塩水を、皮下(SC)注射した。12-mer-3 (12量体-3) + 6-mer-AXa (6量体-AXa)の組み合わせ治療のために、等濃度の各オリゴ糖を組み合わせて1つの溶液にした。ケタミン/キシラジン麻酔下で、門脈を露出させるために腹部正中切開を行った。門脈と胆管の3つの主要な肝葉にクランプを配置して、70%の肝虚血を引き起こした。虚血性肝葉のブランチングの目視により、クランプが正しく配置されていることを確認した。虚血段階中の脱水を防ぐために、クランプ上の筋肉及び皮膚の一時的な縫い目閉鎖が使用された。マウスは、虚血段階(60分)の間、麻酔下で加熱パッド上にとどまった。クランプを60分後に取り外し、血液が組織を再灌流し始めると、虚血肝葉は赤色に戻り、正しい再灌流が起こっていることを示した。切開部を5-0絹縫合糸で2層に閉じ、マウスを活動状態に戻した(再灌流段階では麻酔を使用しなかった)。6時間後、マウスを再麻酔し、心臓穿刺により採血し、組織学のために虚血肝葉を採取した(10%ホルマリンで固定)。
肝I/R障害の評価
血漿ALTは、ALT Infinity試薬(Thermo Fisher)を使用して、製造元の指示に従って測定した。血漿TNF-αは、マウスTNF-αDuoSetキット(R&D Systems)を使用して、製造元の指示に従って測定した。血漿HMGB1レベルは、HMGB1 ELISA Kit(Tecan US)を製造元の指示に従って使用して測定した。血漿シンデカン-1レベルは、マウスシンデカン-1 ELISA(CellSciences)を製造元の指示に従って使用して測定した。プラスムIL-6レベルは、マウスIL-6 ELISA(R&D Systems)を使用して測定した。
組織学/免疫組織化学
虚血性肝臓組織を、室温で10%中性緩衝ホルマリン中24時間固定し、パラフィン包埋し、切片にした。肝臓切片(4μm)をヘマトキシリン-エオジン(H&E)で染色し、又はモノクローナル抗体抗好中球(Abcam、Ab 2557、NIMP-R14)で免疫染色した後、ヤギ抗ラット又はヤギ抗ウサギビオチン化二次抗体(Abcam)で免疫染色した。埋め込み、セクショニング、及びH&E染色は、UNCチャペルヒルの動物組織病理学及び臨床検査医学コア施設で行われた。H&E分析は、Aperio ImageScope Software(Leica Biosystems、Concord、Canada)を使用して、UNCチャペルヒルのトランスレーショナルパソロジーラボラトリーコアファシリティで行われた。IHC画像は、明視野顕微鏡(Leica DM 1000 LED、Leica Microsystems Inc.,イリノイ州、米国)に接続されたHDカメラを使用してキャプチャされ、ImageJを使用して処理された。好中球の定量化のために、5つの100x画像が各サンプルに対してランダムに選択され、平均好中球/フィールドが報告された。
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
虚血性肝葉を、50 mM CTAB 50mMリン酸カリウムpH6中で、10mg組織あたり100μlのバッファーの比率で、機械的にホモジナイズした。このサンプルを、15,000xgで20分間4℃で遠心分離し、上清を回収して-20℃で保存した。総タンパク質濃度を、ブラッドフォードアッセイによって測定した。10μlの肝臓溶解物を80μlの0.75mM H2O2及び110μlのTMB(TMB液体試薬、すぐに使用可能、Sigma)とともに、37℃で10分間穏やかに攪拌しながらインキュベートした。これに2.5 M H2SO4を添加して反応を停止し、波長450nmで読み取った。活性(U/gタンパク質)は、サンプルの吸光度からブランクの吸光度を差し引いたものをインキュベーション時間で割ったものとして計算された。この値を、タンパク質濃度により正規化した。
統計分析
すべてのデータは平均±SEMとして表される。実験グループと対照グループとの間の統計的有意性は、両側の対応のないスチューデントt検定により分析され、複数のグループ間については、一元配置分散分析とそれに続くダネット又はテューキーの多重比較検定、及びGraphPadPrismソフトウェア(バージョン7.03; GraphPad Software、Inc.,graphpad.com/scientific-software/prism/)を使用したログランク検定によるカプランマイヤー生存曲線によって分析された。
実施例1
肝虚血再灌流(I/R)は肝臓の障害と炎症を増加させる
部分肝I/R障害のマウスモデルを使用して、そのオリゴ糖のインビボ有効性を評価した。このモデルにおいて、クランプを用いて肝臓の70%に虚血を誘発した(図1A)。1時間後、クランプを取り外すと、再灌流期間が始まる。再灌流の6時間後に動物を犠牲にした。肝障害を、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、壊死細胞領域、及び虚血性肝臓への好中球浸潤の上昇によって測定した(図1B~1D)。さらに、虚血再灌流(I/R)は、血漿HMGB1(図1E、P=0.013)及びシンデカン-1(図1F、P=0.017)の有意な増加をもたらした。血漿HMGB1及びシンデカン-1レベルの上昇は、細胞死及び内皮障害の指標である[17,18]。
実施例2
HMGB1は高度に硫酸化されたHSオリゴ糖に結合する
HMGB1は、肝臓I/R後の炎症反応の障害に関与している[17,19]。最近の報告では、特定の残基繰り返し長のHSオリゴ糖へのHMGB1の結合が調査された[20]。
本実施例においては、硫酸化度と2-O-スルホイズロン酸残基を変えた複数の12-mer (12量体)のパネルをテストした。これらの12-merへアクセスすることにより、HMGB1結合に対する硫酸化又は2-O-スルホイズロン酸残基の影響をさらに詳しく分析することができた(図2A)。このパネルには、本研究における異なる硫酸化タイプをカバーする4つの12-mer (12量体)が含まれている。このうち12-mer-1 (12量体-1)の硫酸化は最高度であり、17個のスルホ基と4個の2-O-スルホイズロン酸残基を持つ。12-mer-2 (12量体-2)には10個のスルホ基があり、それは4つの12-merの中で最も低く、また4個の2-O-スルホイズロン酸残基を含む。12-mer-3 (12量体-3)には、16個のスルホ基と4個の2-O-スルホイズロン酸残基が含まれている。12-mer-1と12-mer-3の構造上の違いは、12-mer-1は1つのグルコサミン残基に3-O-スルホ基を含むが、この3-O-硫酸化は12-mer-3には存在しない。12-mer-4は12個のスルホ基を含むが、2-O-スルホイズロン酸残基は含まない。
12-mer-1の抗凝固活性は、Xa因子(抗FXa)の活性を阻害することによって測定したところ、商品名ARIXTRAで入手可能なFDA承認の抗凝固薬であるフォンダパリヌクスと同様であった。12-mer-1及びフォンダパリヌクスの抗FXaIC50値は、それぞれ63nM及び18nMであるが、12-mer-2、-3及び-4は抗FXa活性を示さなかったため、抗凝固活性はない(図2B)。
次に、ビオチンタグが付加されたオリゴ糖を使用して、肝臓溶解物から内因性HMGB1をプルダウンした(図2C)。興味深いことに、12-mer-1と12-mer-3はHMGB1のプルダウンに成功した。これは、このサイズのオリゴ糖では、硫酸化の程度がHMGB1の結合にとって重要な要素であることを示唆している。
図7A及びBは、オリゴ糖を使用したHMGB1プルダウンからのウエスタンブロット画像である。図7Aは、入力サンプルを示す。レーン1:12-mer-4;レーン2:12-mer-2;レーン3:12-mer-3;レーン4:12-mer-1。図7Bは、溶出サンプルを示す。レーン5:12-mer-4;レーン6:12-mer-2;レーン7:12-mer-3;レーン8:12-mer-1。
図8A及びBは、12-mer-1及び6-mer-AXaオリゴ糖を使用したHMGB1プルダウンからの完全ウエスタンブロット画像を示す。図8Aは、入力サンプルを示す。レーン1:12-mer-3;レーン2:12-mer-1;レーン3:6-mer-AXa。図8Bは、溶出サンプルを示す。レーン4:12-mer-3;レーン5:12-mer-1;レーン6:6-mer-AXa。
実施例3
12-mer-1 (12量体-1)はIR後の肝障害を軽減する
肝IRのインビボモデルにおいて、HMGB1に結合する能力に基づいて、12-mer-1 (12量体-1)及び12-mer-3 (12量体-3)を使用した。これらの化合物を、虚血の30分前に投与した。12-mer-1の抗凝固活性を血漿中で確認した(図3A)。12-mer-1と12-mer-3の両方ともHMGB1に結合するが、血漿ALTを有意に低下させたのは12-mer-1のみであった(図3B; 12-mer-1 対IR、P = 0.048; 12-mer-3 対IR、P = 0.620)。また、12-mer-1は、IRグループと比較して虚血性肝葉の肝壊死を減少させた(図4; 12-mer-1対IR、P = 0.0287; 12-mer-3 対IR、P=0.1059)。これは、12-mer-1の抗凝固性及び抗炎症特性が、肝臓のIR障害に対する保護を与えていることを示唆している。
実施例4
12-mer-1 (12量体-1)は、好中球の蓄積と虚血性肝臓へのミエロペルオキシダーゼ(MPO)とを減少させる
肝IRにおいては、再灌流段階で、好中球が虚血後の組織に急速に動員される[8]。好中球は、肝臓に移動した後、活性酸素種やプロテアーゼなどの細胞毒性化合物を放出して、障害された組織を取り除く[21]。好中球とその強力な積荷物は、健康組織に対する障害組織の特異性が欠如しているため、無菌性炎症における重要なエフェクターである。その結果、好中球の動員は継続し、炎症を永続させる。
エラスターゼ、MMP-9、カテプシンG、プロテイナーゼ-3、及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)などの、好中球由来のプロテアーゼは、IR誘発性肝障害に関与していると報告されている[8]。特に、MPOは好中球で高度に発現しており、好中球蓄積のマーカーとして機能する。MPOは、過酸化水素と反応することにより、組織の酸化ストレスに寄与する[8]。MPO活性は、虚血性肝溶解物で測定した(図5A)。12-mer-1 (12量体-1)による処理により、IRグループと比較して、MPO活性は60%減少した。これとは対照的に、12-mer-3グループとIRグループの間で、MPO活性はほぼ同じであった(それぞれ96.00対96.33 U/gタンパク質)。さらに、好中球の蓄積を、免疫組織化学により、虚血組織で測定した(図5B~F)。 MPOの傾向と同様に、12-mer-1は好中球浸潤を減少させたが、12-mer-3は減少させなかった(12-mer-1 対IR、P = 0.0142; 12-mer-3 対IR、P=0.0705)。
実施例5
抗凝固処理だけでは肝保護には不十分である
次に、肝保護には抗凝固活性が必要かどうかを調べた。そのため、6-mer-AXa (6量体-AXa)オリゴ糖(図6A)を使用した。6-mer-AXaは、12-mer-1 (12量体-1)と同様に、前に示したように、FXaの阻害を通じて抗凝固活性を示す[15]。ビオチン化6-mer-AXaは、肝臓溶解物からHMGB1をプルダウンしないので(図6B)、HMGB1が結合しない抗凝固活性の対照とする。IR後の肝保護に、抗炎症性(HMGB1結合など)とヘパラン硫酸オリゴ糖からの抗凝固性との両方が必要かどうかを判断するために、代表的なHS化合物のサイズと硫酸化パターンの観点から、6-mer-AXaオリゴ糖を、単独で、又は12-mer-3 (12量体-3)と組み合わせて、使用した。両方の処理群間で抗凝固剤レベルは類似していたが(図6C)、HMGB1結合能力(12-mer-3)と抗凝固活性(6-mer-AXa)とを有するオリゴ糖の組み合わせ処理のみが、IR後の血漿ALTを統計的に有意に低下させた。IR障害群と6-mer-AXa治療群との間でALT濃度に統計的差異はなかった。この結果は、二重の活性を持つ1つの化合物、又は別々の機能を持つ2つの化合物の組み合わせに由来する両方の活性が、肝保護の役割を果たすことを示す。
実施例1~5の考察
肝虚血再灌流障害(肝IR障害)は、アセトアミノフェン誘発性肝障害とは異なり、炎症に加えて凝固障害を伴うことが報告されており、そのため血栓炎症として説明されている[3]。抗凝固剤HSオリゴ糖は、アセトアミノフェン誘発性肝障害には効果がなかった[20]。しかし、肝IRには血栓炎症が含まれるため、本研究においては、肝IR障害において抗凝固活性とHMGB1結合とが肝保護にどのように影響するかを調べるために、抗凝固性12-mer-1 (12量体-1)が含まれている。そうすることにより、合成HSオリゴ糖が別の疾患モデルの治療薬であることが実証された。
実施例1~5において、様々な硫酸化パターンを有する12-mer (12量体)オリゴ糖のパネルをスクリーニングすることにより、HMGB1結合についてHSオリゴ糖の構造活性相関を調べた。いずれも高度に硫酸化されたオリゴ糖である12-mer-1 (12量体-1)と12-mer-3 (12量体-3)のみが、肝臓溶解物からHMGB1をプルダウンするのに成功した化合物であった。しかし、12-mer-1は、インビボで、虚血性肝葉のALT及び壊死を減少させることが観察されたが、12-mer-3はそうではなかった。12-mer-1の抗炎症作用は、HMGB1に結合する能力と結びついて、組織のMPOを減少させ、虚血性肝葉における好中球の蓄積を減少させる。興味深いことに、HMGB1との結合は、インビボで12-mer-3によって示されるような肝保護には十分ではない。IRモデルにおいて、6-mer-AXaと12-mer-3との組み合わせの使用、又は6-mer-AXaの単独使用により、抗凝固作用と抗炎症作用の両方が、肝保護を達成する役割を果たすことが示された。このようにして、HMGB1結合の有無による抗凝固性を調べた。6-mer-AXa単独の処理は、ALTの濃度を、統計的に有意に低下させなかったが、これは組み合わせ処理により低下した。特定の動作理論に拘束されることは望ましくないが、抗凝固と抗炎症の両方のメカニズムが肝臓IRの病態生理学に不可欠であるため、12-mer-1の肝保護効果は、抗凝固と抗炎症の二重の活動に起因するということができる。
実施例1~5は、2-mer-1 (12量体-1)が抗凝固性であると同時に活性な抗炎症性であることを示す。肝臓IRにおける12-mer-1の保護メカニズムに加えて、12-mer-1はいくつかの好ましい薬物のような特性をも有する。ほとんどの肝移植患者は腎機能も低下しているため[23]、12-mer-1の腎クリアランスが考慮された。12-mer-1の腎クリアランス障害を、腎臓IRモデルを使用して実証した[16]。しかし、12-mer-1は、均一な抗凝固活性を備えた均質な化合物であり、腎障害のある患者にとって安全な選択肢となる可能性があるため、投与の調整に適している。ヘパリン療法を受けている肝移植レシピエントの9%が出血性合併症のために外科的介入を必要とするという、出血の問題が報告されている[24]。低分子量ヘパリン(LMWH)は出血のリスクを低下させるが、プロタミンによって完全に逆転することはない[16]。12-mer-1の抗凝固活性はプロタミンによって逆転可能であり、出血の合併症を改善するための追加の利点が追加される[16]。したがって、投与を制御し、プロタミンによる可逆性の可能性を有することは、12-mer-1の側面である。さらに、12-mer-1は、高用量のラットモデルで毒性を示さなかった[20]。したがって、12-mer-1は、抗血栓炎症特性、プロタミンによる可逆性、毒性の欠如、及び投与を正確に制御する能力により、肝移植/IR患者にとって魅力的な治療法になる。薬物動態研究により、12-mer-1の投与と肝臓のIR障害に対する反応との関係を調査している。
ヘパリン及び脱硫酸化ヘパリンは、ほとんどの臓器及び組織における好中球のテザリング分子であるP-セレクチンに結合する[J. Wang; Geng, J., Thromb Haemost 90, 7 (2003)]。興味深いことに、肝臓への好中球の動員には、古典的なモデルと比較して、いくつかの違いがある。たとえば、肝臓への好中球の移動に、セレクチン又はβ2-インテグリンを介した接着が必要であるという証拠は少ない[8]。好中球は、むしろ、白血球輸送のほぼ80%が起こる肝類洞に物理的にトラップされている[S. L. Maas, O. Soehnlein, J. R. Viola, Frontiers in Immunology 9, (2018)]。そのため、特定の動作理論に拘束されることを望まないが、12-mer AXaによる処理後の好中球蓄積の減少は、セレクチン阻害によるものではないと考えられる。
低分子量ヘパリンであるダルテパリンは、ラットの肝臓のIR障害を減少させる[22]。興味深いことに、本研究では、選択的第Xa因子阻害剤であるDX9065aを使用した場合、保護が観察されなかった。これは、ダルテパリンの保護効果が抗凝固作用だけによるものではないことを示唆している。ダルテパリンがMPOレベルを低下させることは、好中球動員への影響を示唆している。しかし、ダルテパリンの構造特定が不完全であるため、さらなる生化学的分析は不可能ではないにしても、非常に困難である。化学酵素合成技術により、抗凝固活性を有する又は有さない、ヘパリンオリゴ糖が生成される。ヘパリンの抗炎症特性がますます認識されるので[25]、本発明は、生物学的効果の特徴付けのために、オリゴ糖の不均一な混合物を使用する課題を解決するのに役立つ。
化学酵素合成技術により、構造的に定義されたHSオリゴ糖が生成される。ヘパリンがその抗炎症特性でますます認識されるようになるにつれて[25]、本発明は、オリゴ糖の不均一混合物を使用するものから、新しいクラスの均一で精密なオリゴ糖治療への治療分野の転換に貢献する。
実施例6
肝虚血再灌流障害におけるHSオリゴ糖の効果 - 18-mer (18量体)の結果
背景:
N-スルホグルコサミンと2-O-スルホイズロン酸の繰り返し単位を持つ18-mer (18量体)を、肝虚血再灌流(IR)マウスモデルで使用した(図10)。この化合物は、抗凝固に必要な特定の硫酸化が欠落しているため、非抗凝固性である。上記のように、いくつかの実施態様において、18-mer (18量体)などより大きなHS化合物が使用される場合、非抗凝固性18-merは保護効果を示す。18 merによる処理、肝臓のIR障害の重症度を軽減する。
IR手順:
虚血段階開始の30分前に、1mg/kgの18-mer又は等量の滅菌生理食塩水を皮下注射により投与した。門脈と胆管を60分間クランプすることによって肝臓の70%までの虚血を引き起こした。クランプを取り外した後、肝臓組織と血液の回収のために動物をと殺する前に、再灌流段階が6時間続く。外科的対照として、その動物がIRマウスと同じ麻酔、腹部正中切開及び縫合を経験するように、偽手術を行った(図11A)。
結果:
18-merによる処理は、IR後の肝障害を減少させた。血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は肝障害のマーカーである。18-merによる処理は、IRグループと比較してALTレベルを低下させた(図11B)。
18-merの保護の組織学的証拠として、壊死領域の定量化のために虚血性肝葉をH&Eで染色した。18-merは、IRと比較して壊死領域を有意に減少させた(図11C~F)。
壊死領域の減少に加えて、18-merは多くの炎症性メディエーターにも大きな影響を及ぼした(図12A~D)。IR後に放出されるダメージ関連分子パターンとして知られるHMGB1は、無菌性炎症及び肝障害の広がりに関係している[A. Tsung et al., The Journal of experimental medicine 204, 2913-2923 (2007); J. C. Evankovich, SW; Zhang, R; Cardinal, J; et. al., J Bio Chem 285, 9 (2010)]。18-merが、血漿HMGB1(図12A)及び虚血性肝葉への好中球浸潤(図12D)を減少させることが観察された。さらに、18-merの処理により、IL-6及びTNF-αを含む他の血漿炎症マーカーが減少した。
結論:
18-merは、可能性として、HMGB1を介した好中球浸潤を阻害し、無菌性炎症を軽減することにより、肝臓のIR障害を軽減する。N-スルホグルコサミンと2-O-スルホイズロン酸の同じ繰り返し二糖単位を持つ16-merを含む、同様の構造を持つ他の化合物もインビボで有効であるといえる。さらに、これらの化合物は、N-,6-O-スルホグルコサミン及びグルクロン酸残基を有するように改変することが可能で、これもまた、インビボで有効である可能性がある。また、インビトロで結合を研究するために、これらの化合物をさまざまな化学的ハンドルで機能化することが可能であり、更に、肝臓IRの保護メカニズムを解明することができる(図10、Rの位置)。
参考文献
以下に挙げた文献及び明細書で引用した全ての文献は、それらが、ここで採用される方法、技術及び/又は組成を、補足し、説明し、その背景を提供し又は教示する限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。
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27. PCT 国際出願 PCT/US2018/059152, 国際公開番号WO 2019/090203, 国際公開日 2019.5.19
ここに開示した本発明の様々な詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更できることが理解されるであろう。更に、上記の記述は本発明を例証する目的のためのものであり、本発明を限定する目的のためのものではない。
図12A~Dは、図10の18merが炎症マーカーを減少させることを示す一連のグラフである。図12Aは、ELISAによって測定された血漿HMGB1レベルを示し、IRと比較して18merの治療群で減少している。図12は、免疫組織化学によって測定された好中球浸潤を示し、18merの治療群で減少した。図12Cは、ELISAで測定した血漿IL-6レベルを示し、18merの治療群で減少している。図12は、統計的に有意ではないが、TNF-αの血漿レベルは、18merの治療群で減少する傾向にある。 12-merの化学酵素的合成を示す概略図である。

Claims (29)

  1. 対象における肝虚血再灌流(I/R)障害を治療する方法であって、以下を含む方法。
    -肝I/R障害に苦しんでいる又は肝I/R障害に苦しむリスクがある対象を提供する段階;及び
    -この対象に1又はそれ以上のヘパラン硫酸(HS)化合物を投与する段階
  2. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、約5~約18糖単位、任意に、約12~約18糖単位を含み、この投与段階が、該対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性を与える、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、約12糖単位を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000035
    (式中、Rは-NHSOH又は-NHCOCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドル、nは0~6の整数を表す。)
  5. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の構造から成る、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000036
    (式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  6. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の構造から成る、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000037
    (式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  7. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000038
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  8. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000039
    (式中、Rは-SOH又は-H、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  9. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、非抗凝固性ヘパリン及び低分子量ヘパリンで存在し、以下の構造式のうちの1を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000040
    Figure 2023501568000041
  10. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000042
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表し、Rとnは以下のように定義される:
    実施態様1では、Rは水素原子、nは1;
    実施態様2では、Rは水素原子、nは2;
    実施態様3(OSOH)及び実施態様4(OH)では、
    Figure 2023501568000043
    実施態様5(OSOH)及び実施態様6(OH)では、
    Figure 2023501568000044
  11. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
    Figure 2023501568000045
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  12. 前記1又はそれ以上のHS化合物のうちの少なくとも1つが、HMGB1に結合する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記治療を必要とする対象が、哺乳動物の対象である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、医薬組成物の一部として投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記医薬組成物が、HS化合物及び該HS化合物の投与のための薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記投与段階が、2又はそれ以上のHS化合物を投与する段階を含み、任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が別々に但し同時に投与され、また任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が異なる時間で投与され、また任意に、該2又はそれ以上のHS化合物が単一の組成物で投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 対象における肝虚血再灌流(I/R)障害の治療に使用するための組成物であって、該組成物は1又はそれ以上のヘパラン硫酸(HS)化合物を含み、任意に、該1又はそれ以上のHS化合物は、約5~約18糖単位を含み(任意に、約12~約18糖単位、さらに任意に、該1又はそれ以上のHS化合物が約12糖単位を含み)、さらに任意に、該組成物を対象に投与することにより、該対象に抗炎症活性及び/又は抗凝固活性が与えられる、組成物。
  18. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項17に記載の組成物。
    Figure 2023501568000046
    (式中、Rは-NHSOH又は-NHCOCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドル、nは0~6の整数を表す。)
  19. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の構造から成る、請求項17又は18に記載の組成物。
    Figure 2023501568000047
    (式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  20. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の構造から成る、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000048
    (式中、Rは-SOH又は-COCH、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  21. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000049
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  22. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000050
    (式中、Rは-SOH又は-H、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  23. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、非抗凝固性ヘパリン及び低分子量ヘパリンで存在し、以下の構造式のうちの1を含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000051
    Figure 2023501568000052
  24. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項17~23のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000053
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表し、Rとnは以下のように定義される:
    実施態様1では、Rは水素原子、nは1;
    実施態様2では、Rは水素原子、nは2;
    実施態様3(OSOH)及び実施態様4(OH)では、
    Figure 2023501568000054
    実施態様5(OSOH)及び実施態様6(OH)では、
    Figure 2023501568000055
  25. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、以下の化学式から成る、請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物。
    Figure 2023501568000056
    (式中、Rは-H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、又は官能性ハンドルを表す。)
  26. 前記1又はそれ以上のHS化合物が、HMGB1に結合する、請求項17~25のいずれか一項に記載の組成物。
  27. 前記治療を必要とする対象が、哺乳動物の対象である、請求項17~26のいずれか一項に記載の組成物。
  28. 前記1又はそれ以上のHS化合物を投与するための、薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の組成物。
  29. 2又はそれ以上のHS化合物を含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の組成物。
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