JP2023180428A - 摺動部材 - Google Patents

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萌葉 黄木
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Abstract

【課題】高速回転時の溶融が起こらず、かつ高温環境下での変形が小さい摺動部材の提供。【解決手段】樹脂組成物からなる摺動部材であって、前記樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とカーボンファイバーを含み、前記ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上であって、かつ融点が320℃以上である、摺動部材。【選択図】なし

Description

本発明は、摺動部材に関する。より詳細には、自動車や、モータ、工作機械などで用いられる回転軸受に使用する摺動部材に関する。
回転軸受けは、例えば、高温環境や高速回転条件および高負荷条件等で使用される。
従来金属製であった部品を樹脂製とすることで、軽量化及び工程の合理化等が可能であり、自動車部品等で金属から樹脂への代替が行われている。
中でも、ポリアミド樹脂は、機械的性質、熱的性質及び耐油性に優れており、特に、ポリアミド樹脂にガラス繊維や炭素繊維を配合した強化ポリアミド樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等が大きく向上することから、自動車や電気及び電子製品等の部品に広く用いられている。
近年では、電気自動車の需要の高まりにより、モータ等の高速回転化が求められている。例えば特許文献1は、高速回転下での使用を想定し、耐熱性に優れたポリアミド10Tに、ガラス繊維又は炭素繊維を配合した転がり軸受用保持器を開示している。特許文献2は、耐熱性に優れたポリアミド9Tを使用し、繊維状充填剤を配合した転がり軸受用保持器を開示している。特許文献3は、ポリアミド4Tを使用し、ガラス繊維を配合した転がり軸受用保持器を開示している。
特許第6697235号公報 特開2001-317554号公報 特開2020-56417号公報
しかしながら、特許文献1~3に開示されている摺動性部品は、高速回転時の摩擦熱での焼き付き(溶融)の防止や高温環境下での遠心力による変形の防止の点で不十分であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高速回転時の溶融が起こらず、かつ高温環境下での変形が小さい摺動部材を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]樹脂組成物からなる摺動部材であって、前記樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とカーボンファイバーを含み、前記ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上であって、かつ融点が320℃以上である、摺動部材。
[2]前記樹脂組成物の全量に対する前記カーボンファイバーの含有割合は、10質量%以上40質量%以下である、[1]に記載の摺動部材。
[3]前記摺動部材は転がり軸受用保持器である、[1]又は[2]に記載の摺動部材。
本発明によれば、高速回転時の溶融が起こらず、かつ高温環境下での変形が小さい摺動部材を提供することができる。
<摺動部材>
本実施形態は、摺動部材に関する。摺動部材として、転がり軸受、転がり軸受用保持器、歯車、スラストワッシャー、シールリング等が挙げられる。なかでも摺動部材は転がり軸受用保持器であることが好ましい。
本実施形態の摺動部材は、樹脂組成物からなる。
≪樹脂組成物≫
本実施形態の摺動部材を構成する樹脂組成物について説明する。
樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とカーボンファイバーを含む。
[ポリアミド樹脂]
本実施形態に用いるポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上かつ融点が320℃以上である。ポリアミド樹脂は、樹脂組成物のベース樹脂となる。
摺動部品材料として最も多く用いられているポリアミドは、例えばPA66(融点265℃)、PA46(融点295℃)、PA9T樹脂(融点310℃)である。このため、ベース樹脂のポリアミド樹脂の融点が320℃以上であると、得られる摺動部材は、一般的な摺動材料であるポリアミドと同等以上の耐熱性を備える。このため、例えば摺動部材が高温高速回転となる条件下で使用される転がり軸受用保持器である場合、保持器の変形を小さくできる。
また、ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上である。このため、例えば摺動部材が転がり軸受用保持器である場合、130℃以上の高温下で使用した場合や、高速回転で使用した場合でも、保持器の変形を抑制でき、転動体と保持器の滑り摩擦による発熱を小さくできる。
ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。具体的には、不活性ガス雰囲気下で、ポリアミド樹脂を急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの温度を、ガラス転移温度(Tg)として測定する。
ポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。具体的には、不活性ガス雰囲気下で、ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度を、融点(Tm)として測定する。
本実施形態に用いるカーボンファイバーは、ポリアクリロニトリル系(PAN系)、ピッチ系、レーヨン系、リグニン-ポバール系混合物など原料の種類によらないで使用できる。
樹脂組成物の全量に対するカーボンファイバーの含有割合は、10質量%以上40質量%以下が好ましい。カーボンファイバーの含有割合が上記範囲であると、成形流動性の確保や、保持器の剛性を高め、高温、高速回転となる条件下でも保持器の変形を小さくできる。
さらに、保持器の形状を射出成形時に無理抜きする形状とする場合や、ウエルド部の十分な強度を確保することを考慮すれば、樹脂組成物の全量に対するカーボンファイバーの含有割合は、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。
本発明における摺動部品には、保持器機能や射出成形性を損なわない範囲であれば、必要に応じて、カーボンファイバーの添加剤を配合してもよい。他の添加剤として、例えば、ベース樹脂以外の他のポリマー、固体潤滑剤、無機充填材、酸化防止剤、帯電防止剤、離型材などを配合できる。具体的には、4フッ化エチレン樹脂、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ウォラストナイト、エラストマー等を添加したポリアミド樹脂を使用してもよい。
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物は、2軸押出機を用いて製造できる。2軸押出機は、例えば東芝機械(株)製のTEM35が使用できる。押出機長さ(L)と、スクリュー径(D)との比L/Dは、例えば47.6(D=37mmφ)とする。設定温度は、Tm2+10℃とする。Tm2が349℃のポリアミド樹脂を使用する場合、設定温度は359℃となる。スクリュー回転数は例えば300rpmとする。
2軸押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、ポリアミド樹脂を供給し、2軸押出機の下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口よりカーボンファイバーを供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして樹脂組成物である成形用ペレットを得る。
この成形用ペレットを用いて射出成形により摺動部品を成形する。射出成形時は、樹脂温度をベース樹脂の融点以上、金型温度をガラス転移温度以上に保持して行なう。
以下、本実施形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施形態は、実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例に用いる原材料、製造方法を一括して以下に示す。
<実施例1~3>
ポリアミド樹脂と、カーボンファイバーとを、それぞれ表1に示す割合で配合し、実施例1~3の樹脂組成物を製造した。
ポリアミド樹脂は、PA4T単位を主成分とするポリアミド樹脂(DSM社製ForTii Ace TD100)を使用した。
カーボンファイバーは、帝人製 HT C413を使用した。
上記原材料をそれぞれ表1に示す割合で配合し、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度Tm2+10℃(上記で得られたポリアミドを用いた場合、349+10=359℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、樹脂添え遺物を製造した。
2軸押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、ポリアミド樹脂を供給し、2軸押出機の下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口よりカーボンファイバーを供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして樹脂組成物のペレットを得た。
<実施例4>
ポリアミド樹脂と、カーボンファイバーとを、それぞれ表1に示す割合で配合し、実施例4の樹脂組成物を製造した。
ポリアミド樹脂は、下記に記載する重合法により得たポリアミド6Iを使用した。
カーボンファイバーは、帝人製 HT C413を使用した。
(ポリアミド6Iの重合)
イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩1500g、及び全等モル塩成分に対して1.0モル%過剰のアジピン酸、0.5モル%の酢酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
110~150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミド6Iを得た。
2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度Tm2+10℃(上記で得られたポリアミドを用いた場合、349+10=359℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、樹脂組成物を製造した。2軸押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、上記水分率を調整したポリアミドを供給し、2軸押出機の下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口よりカーボンファイバーを供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして樹脂組成物のペレットを得た。
<比較例1>
ポリアミド樹脂として、ポリアミド66(旭化成製1300)を使用し、カーボンファイバーとして帝人製 HT C413を使用した以外は、実施例1と同様の製造方法で樹脂組成物のペレットを得た。
<比較例2>
ポリアミド樹脂として、ポリアミド9T(クラレ製N1000A)を使用し、ガラスファイバーとして日本電気硝子製 ECS03T275H を使用した以外は、実施例1と同様の製造方法で樹脂組成物のペレットを得た。
<比較例3>
ポリアミド樹脂として、ポリアミド9T(クラレ製N1000A)を使用し、カーボンファイバーとして帝人製 HT C413を使用した以外は、実施例1と同様の製造方法で樹脂組成物のペレットを得た。
[PV限界値]
本発明における摺動性を確認するためPV限界値測定を実施した。
実施例1~4及び比較例1~3の樹脂組成物のペレットを使用し、住友重機械工業社製SE50Dの射出成形機を用いて、60mm×60mm×3mmの試験片を作成した。その後、30mm×30mm×3mmに切削し、鈴木式摩擦摩耗試験機(JIS K7218準拠)で測定した。
本測定はリングオンプレート方式で行い、試験荷重を1000N、10分毎に0.05m/sずつ速度を上昇させていく条件で測定した。リング材質はS45Cの炭素鋼、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリングを用いた。その結果を表1に記載する。
[150℃曲げ弾性率]
本発明における高温時の剛性を確認するため150℃曲げ弾性率測定を実施した。
実施例1~4及び比較例1~3で得られた樹脂組成物のペレットを使用し、[PV限界値]に示した条件で成形して得た試験片を80×10×4mmに加工し、ISO178に準拠し、試験速度2mm/minで曲げ強度を測定した。その結果を表1に記載する。
Figure 2023180428000001
上記結果に示した通り、本発明によれば、高速回転時の溶融が起こらず、かつ高温環境下での変形が小さい摺動部材を提供することが確認できた。

Claims (3)

  1. 樹脂組成物からなる摺動部材であって、
    前記樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とカーボンファイバーを含み、
    前記ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上であって、かつ融点が320℃以上である、摺動部材。
  2. 前記樹脂組成物の全量に対する前記カーボンファイバーの含有割合は、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記摺動部材は転がり軸受用保持器である、請求項1又は2に記載の摺動部材。
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