JP2023174602A - 樹脂表面親水化処理方法、樹脂表面親水化処理装置、電子基板処理装置 - Google Patents

樹脂表面親水化処理方法、樹脂表面親水化処理装置、電子基板処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で製造コストの高騰を抑止して行える樹脂表面親水化処理方法、処理装置を提供する。【解決手段】電子基板に用いる樹脂に各種の処理を施す樹脂表面親水化処理方法においては、樹脂製の基材の表面に対してプラズマを照射して、基材を構成する原子の少なくとも一部を脱離させる脱離工程(ステップS1)と、脱離工程を施した基材の表面にヒドロキシル基を導入する導入工程(ステップS2)と、プラズマにより生成したラジカルによって、所定の化学結合を行わせる結合工程(ステップS3)とを備え、結合工程(ステップS3)を、少なくとも導入工程(ステップS2)以降のタイミングで行う。【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂表面を親水化処理し、樹脂の表面に金属層や有機物層を形成した樹脂製品の製造装置及び製造方法に関する。
従来、各種の電子回路が形成される電子基板の基材として各種の樹脂が用いられている。例えば、ミリ波またはマイクロ波に対応可能な伝送損失が小さい電子基板、において、低誘電の樹脂製の基材が使われ始めている。この低誘電の樹脂としては、たとえば液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)などのフッ素樹脂があげられるが、LCPやPTFE等の樹脂材料は、配線材として使われる銅などの金属との密着性が悪いという問題がある。このため、基材の表面を化学的に荒らしたり、基材に密着させる銅箔などの金属の表面に凹凸を形成したりして、樹脂製の基材と銅などの金属の物理的な密着度を向上させる技術が知られている。また、樹脂製の基材の化学特性を変化させて他の金属や樹脂との結合度を強化するために、樹脂製の基材の表面にプラズマを照射して基材の表面を活性化させ、PTFE基材中のフッ素を、空気中の水分に由来するヒドロキシル基に置換し、基材の表面に銅箔などの金属箔や他の樹脂を強い結合度で付着させることで電子基板を形成することも行われる(たとえば、特許文献1参照)。
図8は、従来の樹脂表面親水化処理方法を示すフローチャートである。同図に示すとおり、従来の樹脂表面親水化処理方法においては、まず、PTFE等の基材の表面にプラズマを照射して、基材を構成する樹脂の原子の少なくとも一部を脱離させる(脱離工程、ステップS101)。脱離工程の後、基材を構成する樹脂にヒドロキシル基を付与することで基材の表面3の水接触角を小さくして濡れ性を改善する(導入工程、ステップS102)。その後、基材の表面に銅などの金属の鍍金を行ったり、基材の表面に銅などの金属や他の樹脂の融着、接着、接合などを行う(密着工程、ステップS103)。
特開2021-28964号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明に基づいて上述の脱離工程(ステップS101)と導入工程(ステップS102)を行っても、樹脂の表面が改質されて密着工程(ステップS103)を良好に行えるのはごく短時間にすぎず、時間の経過に伴って樹脂の表面の水接触角は再び大きくなる。そのため、表面を改質した基材と他の金属や樹脂との鍍金、融着、接着、接合を行う工程を短時間で行わないと基材と他の金属や樹脂との接合状態を良好にすることが難しくなるという問題がある。また、基材の表面を改質する工程と、表面を改質した基材に他の金属や樹脂を接合させる工程とを短時間で行わねばならないという工程上の制約が発生し、電子基板の製造における利便性が低くなり、電子基板の製造コストの高騰を招き得るという問題がある。
本願はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で、製造コストの高騰を抑止して行える樹脂表面親水化処理方法、樹脂表面親水化処理装置等を提供することを課題としている。
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、樹脂に各種の処理を施す樹脂表面親水化処理方法であって、前記樹脂の表面に対してプラズマを照射して、前記樹脂を構成する原子の少なくとも一部を脱離させる脱離工程と、該脱離工程を施した前記樹脂の表面にヒドロキシル基を導入する導入工程と、前記プラズマにより生成したラジカルによって、所定の化学結合を行わせる結合工程とを備え、該結合工程を、少なくとも前記導入工程以降のタイミングで行うことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記結合工程において行われる前記化学結合は、炭素-窒素結合、及び/又は、炭素-炭素結合であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記結合工程においては、前記導入工程で発生したラジカルに、前記樹脂の表面の近傍にプラズマにより生成した窒素ラジカルを照射することにより、炭素-窒素結合を行わせることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記結合工程においては、前記導入工程で発生したラジカルに、前記樹脂の表面の近傍にプラズマにより生成したアルゴンラジカルを照射することにより、炭素-炭素結合を行わせることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記結合工程を前記導入工程と同時に行うことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記結合工程を前記導入工程の後に行うことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記結合工程においては、プラズマにより生成した窒素ラジカルまたはアルゴンラジカルの発生量を該結合工程の時間経過とともに変化させることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記結合工程の後に行われる、前記樹脂の表面に電子基板を形成するための各種の工程を行う形成工程を備えたことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、樹脂表面親水化処理装置であって、請求項1乃至8の何れか一つに記載の樹脂表面親水化処理方法により、樹脂に各種の処理を施すことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、樹脂表面親水化処理装置であって、請求項1乃至8の何れか一つに記載の樹脂表面親水化処理方法により、電子基板に用いる樹脂に各種の処理を施すことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、プラズマにより生成したラジカルによって、所定の化学結合を行わせる結合工程を、少なくとも、プラズマを照射して樹脂を構成する原子の少なくとも一部を脱離させる脱離工程を施した樹脂の表面にヒドロキシル基を導入する導入工程以降のタイミングで行うことにより、ヒドロキシル基が導入されて水接触角が小さくなった樹脂の表面に、窒素ラジカルやアルゴンラジカルが施す化学結合が加わり、樹脂の表面の水接触角が小さくなった状態を、この化学結合が加わらない場合よりも長く持続させることが可能になる。そのため、樹脂の表面に他の金属や樹脂を接合させる工程を、樹脂の表面にヒドロキシル基が導入された後の長い時間帯に行うことが可能となる。そして、樹脂の表面にヒドロキシル基が導入されて長時間が経過した樹脂の表面に対して、他の金属や樹脂を強固に接合できる。これにより、樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で、製造コストの高騰を抑止して行うことができる。
請求項2乃至4のそれぞれに記載の発明によれば、ヒドロキシル基が導入された樹脂の表面にラジカルを照射して炭素-窒素結合、及び/又は、炭素-炭素結合を形成することにより、樹脂の表面の水接触角が小さい状態を、元素同士の共有結合による具体的な構成として実現できる。
請求項5に記載の発明によれば、結合工程を導入工程と同時に行うことにより、樹脂表面へのヒドロキシル基の導入を行いながら樹脂表面の元素の化学結合を行うことができる。これにより、工程数の減少や工程の所用時間の短縮を実現し、電子基板の製造時間の短縮や製造コストの高騰の抑止を実現できる。
請求項6に記載の発明によれば、結合工程を導入工程の後に行うことにより、樹脂表面へのヒドロキシル基の導入を行った後、樹脂表面の元素の化学結合を行うことができる。これにより、樹脂表面の元素の化学結合を、ヒドロキシル基の導入が完了した樹脂に対して行うことで、樹脂の表面の水接触角が小さい状態を確実に形成したうえで、その水接触角が小さい状態を長時間持続させることができる。これにより、樹脂の表面に金属や樹脂などの他の物質を強固に接合できる状態を、長時間持続させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、プラズマにより生成した窒素ラジカルまたはアルゴンラジカルの発生量を結合工程の時間経過とともに変化させることにより、導入工程によるヒドロキシル基の導入量と、結合工程による窒素ラジカルやアルゴンラジカル等による炭素の共有結合や炭素と窒素との結合する量を変化させることができる。これにより、樹脂と他の物質との密着力の向上と樹脂の水接触角の経時変化の向上の両立を実現することができる。
請求項8に記載の発明によれば、表面に他の金属や樹脂を強固に接合できる状態を、長時間持続させることができる樹脂製の基材を用いて電子基板の処理工程を行うことができ、樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で、製造コストの高騰を抑止して行うことができる。
請求項9に記載の発明によれば、樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程を簡略化して製造コストを低減させた状態で行うことのできる樹脂表面親水化処理装置を提供できる。
請求項10に記載の発明によれば、樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程を簡略化して製造コストを低減させた状態で行うことのできる電子基板処理装置を提供できる。
この実施の形態の樹脂表面親水化処理方法を構成するプラズマ処理装置を模式的に示す図である。 同上樹脂表面親水化処理方法の[一種めの処理工程]を示すフローチャートである。 同上樹脂表面親水化処理方法の[二種めの処理工程]を示すフローチャートである。 同上樹脂表面親水化処理方法の[三種めの処理工程]を示すフローチャートである。 従来の樹脂表面親水化処理方法および樹脂表面親水化処理装置において製造された樹脂表面親水化処理基板(2例)の水接触角の経時変化と、本発明の樹脂表面親水化処理方法および樹脂表面親水化処理装置において製造された樹脂表面親水化処理基板の水接触角の経時変化とを示す図である。 本発明の樹脂表面親水化処理装置による樹脂表面親水化処理方法において、基材表面から銅鍍金を剥離させる際の、剥離強度の経時的変化を模式的に示す図である。 この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置の樹脂表面親水化処理方法において製造された基材を用いた、試材ごとの剥離強度を示した分布図である。 従来の樹脂表面親水化処理方法を示すフローチャートである。
図1乃至図4に、この実施の形態を示す。
[全体構成]
図1は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理方法が用いられる樹脂表面親水化処理装置の一部を模式的に示す図である。
図1に示すとおり、この実施の形態の「樹脂表面親水化処理装置」「電子基板処理装置」としての樹脂表面親水化処理装置1Aは、プラズマ処理装置10を備える。図示しないが、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aは、さらに、基材上に金属箔を形成するための各種装置(スパッタリング装置など)、基材上に鍍金を行う鍍金装置、基材上に回路パターンを形成する現像装置やパターンエッチング装置などを備える。そして、樹脂表面親水化処理装置1Aにおいて、この実施の形態の樹脂表面親水化処理方法が実現される。
なお、樹脂表面親水化処理装置1Aには、プラズマ処理装置10と他の装置との間で基材1を搬送する、コンベア式やロボットアーム式の搬送装置(図示せず)が設けられていてもよい。また、基材1は図示したシート状に限定されず、ロール状であってもよい。
[プラズマ処理装置の構成]
図1は、この実施の形態のプラズマ処理装置を模式的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置10は、樹脂製の基材1の表面にプラズマを照射して、基材1を構成する樹脂の原子の少なくとも一部を脱離させ、その後、樹脂にヒドロキシル基を付与することで樹脂の表面の濡れ性を改善し、表面に金属層を接合させる際の接合状態を強固にすることができる。
プラズマ処理装置10は、真空チャンバ11と、ファインプラズマガン(Fine
Plasma Gun 以下「FPG」と称する。)12と、保持台13と、カバー14と、保持側電源15と、プラズマ側電源16と、第一ガス導入部17と、第二ガス導入部18とを備えている。
保持側電源15と保持台13と真空チャンバ11とは保持側回路19を形成している。また、プラズマ側電源16とFPG12と真空チャンバ11とは、プラズマ側回路20を形成している。
なお、図1には、真空チャンバ11の内部におけるイオン21とラジカル22の飛散方向の一部を矢印によって模式的に示している。
また、真空チャンバ11はグランド23に接続されている。グランド23は、保持側回路19とプラズマ側回路20の基準となる電位を設定する。
真空チャンバ11は内部を密閉して内部の気圧を大気圧よりも減圧できるチャンバである。真空チャンバ11は内部を減圧させたときの内部と外部の気圧差に耐えられる高い剛性を有する材質、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金などによって形成される。真空チャンバ11には、内部の気圧を大気圧よりも減圧して真空状態にするための真空ポンプ(図示せず)が設置されている。
FPG12は、真空チャンバ11内の上部に配置されて、真空チャンバ11内に導入された処理ガス(図示せず)をプラズマ化する。FPG12は、例えば国際公開第2014/175702号に記載されているものが採用できる。FPG12から発せられるプラズマは、窒素およびアルゴンの少なくとも一方を含んでいることが好ましい
保持台13は、基材1が存在する位置に依存する少なくとも一部に、保持側電源9からの保持側電圧(後述)の印加を受ける。
カバー14は基材1と同じ材料からなって保持台13の上面を覆い、FPG12から基材1にプラズマが均一に照射されるように構成されている。
保持側電源15は直流電源であり、プラスの電極が保持台13側に接続され、マイナスの電極が真空チャンバ11側に接続されて、保持側回路19に直流電圧を印加する。プラズマ側電源16は、直流電源であり、プラスの電極が保持台13側に、マイナスの電極が真空チャンバ11側に接続されて、プラズマ側回路20に直流電圧を印加する。なお、保持側回路19とプラズマ側回路20には、それぞれ回路の通電状態のON・OFFを切り替えるスイッチ(図示せず)が設けられている。
第一ガス導入部17と、第二ガス導入部18とは、それぞれ気体を真空チャンバ11内に導入するためのガス導通管である。第一ガス導入部17、第二ガス導入部18は、それぞれ開閉弁(図示せず)を備え、この開閉弁(図示せず)の開閉や開量によって真空チャンバ11内へのガスの導入の開始、停止や、ガスの導入量の調整を行う。
第一ガス導入部17は、後述する「導入工程」で使用される気体、例えば水蒸気を真空チャンバ11に導通するために用いられる。第二ガス導入部18は、「離脱工程」や後述する「結合工程」で使用される気体、例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N)ガスを真空チャンバ11に導通するために用いられる。
[基材]
この実施の形態において、基材1を構成する樹脂は、疎水表面を有するものであれば特に制限がないが、例えば、PTFEやPFAやPCTFEなどのフッ素樹脂、ポリイミド、またはLCPが挙げられる。具体的には、フッ素樹脂の場合、基材1の素材としての樹脂は、フッ素と炭素を含んでおり、樹脂の疎水表面から脱離する原子は主にフッ素と炭素である。分子結合が切れ、活性化した表面にヒドロキシル基を付与すること付与することで、フッ素樹脂の疎水表面を大きく親水化することができる。また、この現象は樹脂表面のみでおきている現象であり、その下のフッ素を含む樹脂の母材は、絶縁性が高く、比誘電率や誘電正接が小さく、信号の伝送損失が小さく、電気基板として優れている。
また、基材1の素材として用いられる樹脂は、上記の材質以外にも、ポリテトラフルオロエチレンや、全芳香族ポリエステルを含む液晶ポリマー等であってもよい。
[処理工程]
この実施の形態においては、プラズマ処理装置10において複数種類の処理工程が行われる。図2乃至図4にそれぞれの処理工程を示し、以下、それらの処理工程を説明する。なお、図2乃至図4はこの実施の形態の処理工程の例であって、同様の作用効果を奏するものであれば、図2乃至図4に示す処理工程以外のいかなる処理工程が適用されてもよい。
[一種めの処理工程]
図2は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aにおける一種めの処理工程のフローチャートである。この一種めの処理工程においては、「導入工程」と「結合工程」とは、別個の工程として独立して別個に行われる。以下、同フローチャートを参酌しながら、この実施の形態における電子基板の処理工程を説明する。
なお、以下は説明の簡単のため、特に説明の必要がある場合を除き、基材1の表面側と裏面側のうちの表面側のみに電子回路を形成するための工程について説明する。しかし、基材1の表面側と裏面側の双方に電子回路を形成することも可能であり、この場合は、以下に示すステップS1~ステップS4の処理工程は基材1の表面側と裏面側のそれぞれについて行われる。
[ステップS1:脱離工程]
樹脂表面親水化処理装置1Aのプラズマ処理装置10においては、保持台13に載置された基材1の表面にプラズマを照射する。具体的には、まずプラズマの照射によって基材1を構成する樹脂の原子の少なくとも一部を脱離させる(ステップS1、脱離工程)。
脱離工程においては、基材1の表面3(図2の上面側)にFPG12からのプラズマを照射して、基材1の表面3の樹脂の原子の少なくとも一部を脱離させる。例えば、PTFEの場合はフッ素が離脱することで、表面には活性な炭素ラジカルが存在する。そして、次のステップS2の導入工程で供給されるヒドロキシルラジカルと結合しやすい状態になる。
具体的には、第二ガス導入部18の開閉弁(図示せず)を開くと共に真空ポンプ(図示せず)を作動させて真空チャンバ11の内部を減圧し、真空チャンバ11内に窒素やアルゴンの処理ガスを導入する。
なお、ここでの処理ガスは、窒素の処理ガスのみ、または、アルゴンの処理ガスのみである。ただし、窒素の処理ガスとアルゴンの処理ガスが一緒に真空チャンバ11内に充填した状態になるように処理ガスを真空チャンバ11内に導入してもよい。さらには、窒素やアルゴン以外の、脱離工程に適したいかなる処理ガスを真空チャンバ11内に導入してもよい。
真空チャンバ11内に窒素やアルゴンの処理ガスが供給し、真空チャンバ11内が処理に適した圧力になったら、FPG12を動作させる。真空ポンプ(図示せず)を作動させ続け、処理に適した圧力になり続けるようにする。一定な圧力を維持するために、真空ポンプと真空チャンバ11との間に開口度を調整できるバルブ(図示せず)を設ける。このバルブの開口度を開ければ、真空度があがり、閉めれば、真空度が下がる。一定な圧力を維持するために、窒素やアルゴンの処理ガスの供給量を変化させることでも実現できるが、真空チャンバ11内に存在する窒素やアルゴンの分子量が変化し、離脱処理をするためにプラズマの量が変化してしまうので望ましくない。
保持側回路19をOFFした状態、すなわち、保持台13には保持側電源15から供給されず、電気的にグランドを維持する。この状態でプラズマ側回路20のスイッチ(図示せず)をONにしてFPG12をONにすると、FPG12の作用によって真空チャンバ11内に導入された窒素やアルゴンの処理ガスのプラズマが生成される。図2に示すように、発生したイオン21やラジカル22は、FPG12に距離が近く、かつ、グランドになって保持台13に向かって飛び、保持台13の上にある基材1に衝突する。主にイオン21の衝突の衝撃によって、基材1の表面3から樹脂の原子が脱離する。そして、プラズマ側回路20のスイッチ(図示せず)をOFFにしてFPG20をOFFにすると脱離工程は終了する。
[ステップS2:導入工程]
プラズマ処理装置10においては、脱離工程の後、基材1を構成する樹脂にヒドロキシル基を付与することで基材1の表面3の濡れ性を改善する(ステップS2、導入工程)。
導入工程の開始前は、保持側回路19もプラズマ側回路20も通電されていない状態である。
次に、保持側回路19に通電させ、保持台13上の基材1に保持側電圧としてのプラスの電圧を印加して導入工程を開始する。
導入工程においては、真空ポンプ(図示せず)を作動させて真空チャンバ11内部を減圧させた状態で、保持側回路19をONとし、保持側電源15の電圧を保持台13に印加させた状態で、第二ガス導入部18の開閉弁(図示せず)を閉じると共に第一ガス導入部17の開閉弁(図示せず)を開き、真空チャンバ11内からは脱離工程で使用した窒素および/またはアルゴンが排出され、これに替えて処理ガスである水蒸気が導入される。真空チャンバ11内に処理ガスが充填され、また真空チャンバ11内が処理に適した圧力を維持する。
なお、導入工程においては、水蒸気に替えて、又は水蒸気と共に、導入工程に適した他のいかなる気体が真空チャンバ11内に導入されるようにしてもよい。
次いで、プラズマ側回路20をONとし、プラズマ側電源16からFPG12に通電させると、真空チャンバ11内に充填された処理ガスのプラズマが生成する。このときの保持側回路19の電圧はプラズマ側回路20の電圧より小さいことが望ましい。
この状態において、FPG12により真空チャンバ11内の処理ガスにプラズマが発生すると、プラズマ中のプラスのイオン21のほとんどは、電位がグランドで、電位差が大きい真空チャンバ11の方向に移動する。一方、プラズマ中の極性がないラジカル22(ヒドロキシルラジカル)は、基材1に照射される。ラジカル22(ヒドロキシルラジカル)を基材1に照射することによって、基材1の表面にヒドロキシル基が導入される。そして、保持側回路19、プラズマ側回路20の通電を解除することで、導入工程が終了する。
なお、導入工程でヒドロキシル基が導入された基材1の表面は、水との接触角が10°以下、より望ましくは6°以下となっていることが望ましい。このようにすれば、後述の密着工程(ステップS4)において、基材1の表面に金属膜や金属鍍金などが強固に密着する。
[ステップS3:結合工程]
プラズマ処理装置10においては、導入工程の後、ステップS1の脱離工程で生成した表面には活性なラジカルとステップS2の導入工程で供給したラジカルがすべて結びつけば良いが、実際にはステップS1で生成した活性なラジカルが残っている。この活性なラジカルが多く残っていると、表面は活性な状態であり、はやく安定化させようと反転現象が生まれ、水接触角が大きくなり、ステップS1の脱離工程する前の状態に戻ろうとする。この課題を解決するために、基材1を構成する樹脂の表面に残っている活性なラジカルと結合させることで安定化させる。結果として、基材1の表面3の濡れ性が改善された状態の持続性を良好にする(ステップS3、結合工程)。
結合工程においては、真空ポンプ(図示せず)を作動させて真空チャンバ11内部を減圧させた状態で、保持側回路19をONとし、保持側電源15の電圧を保持台13に印加させた状態で、第一ガス導入部17の開閉弁(図示せず)を閉じると共に第二ガス導入部18の開閉弁(図示せず)を開く。これにより、真空チャンバ11内からは導入工程で使用した水蒸気が排出され、これに替えて処理ガスである窒素ガス、及び/又は、アルゴンガスが導入される。真空チャンバ11内に処理ガスが充填され、また真空チャンバ11内が処理に適した圧力を維持する。
なお、結合工程においては、窒素やアルゴン以外の、結合工程に適したいかなる処理ガスを真空チャンバ11内に導入してもよい。
次いで、プラズマ側回路20をONとし、プラズマ側電源16からFPG12に通電させると、真空チャンバ11内に充填された処理ガスのプラズマが生成する。このときの保持側回路19の電圧はプラズマ側回路20の電圧より小さいことが望ましい。
この状態において、FPG12により真空チャンバ11内の処理ガスにプラズマが発生すると、プラズマ中のプラスのイオン21のほとんどは、電位差が大きい真空チャンバ11の方向に移動する。一方、プラズマ中の極性がないラジカル22、すなわち、窒素ガスの導入によって発生する窒素ラジカルや、アルゴンガスの導入によって発生するアルゴンラジカルが、基材1に照射される。窒素ラジカルやアルゴンラジカル等のラジカル22を基材1に照射することによって、基材1の表面には、元素の化学結合、具体的には、例えば、炭素-炭素結合(C-C結合)や炭素-アルゴン結合(C-N結合)などの結合が発生する。そして、保持側回路19、プラズマ側回路20の通電を解除することで、結合工程が終了する。
結合工程において、プラズマ側回路20への通電をONしてから、解除するまでの間、同じラジカル量を発生するならば、窒素やアルゴン等のガス供給量が一定になるようにする。しかしながら、ラジカル量は時間経過ともに変化しても良い。
結合工程において、炭素-炭素結合(C-C結合)や炭素-アルゴン結合(C-N結合)が発生する理由を以下に説明する。
結合工程において、真空チャンバ11内に水蒸気(HО)とアルゴン(Ar)の混合気が存在する場合、プラズマ照射により生成されたアルゴンラジカルは基材1の表面の炭素(C)原子同士の結合を媒介する。
ここで、導入工程(ステップS2)による処理が行われた後も、基材1の表面にはヒドロキシル基(ОH)と結合しない炭素原子が存在する。結合工程におけるアルゴンラジカルは、ヒドロキシル基と未結合の炭素同士を結合させる機能を奏する。そして、アルゴンラジカルの媒介により、基材1の表面ではC-C結合の形成が促進される。C-C結合は親水性であるため水接触角を悪化させることはない。
そして、ヒドロキシル基との結合に加え、C-C結合が形成された基材1の表面は状態が安定化し、水接触角が小さい状態が安定的に長時間持続することになる。これにより、基材1の表面は、長時間にわたって濡れ性が向上し、金属膜等を強固に接合可能な状態を長時間持続させることができる。
一方、結合工程において、真空チャンバ11内に水蒸気(HО)と窒素(N)の混合気が存在する場合、プラズマ照射により生成された窒素ラジカルは基材1の表面の炭素原子に結合する。これは、上述のとおり、導入工程(ステップS2)による処理が行われた後も、基材1の表面にはヒドロキシル基(ОH)と結合しない炭素原子が存在するためである。C-N結合は親水性であるため水接触角を悪化させることはない。
窒素ラジカルは、ヒドロキシル基(ОH)と結合していない炭素原子と結合し、C-N結合となる。そして、ヒドロキシル基との結合に加え、C-N結合が形成された基材1の表面は状態が安定化し、水接触角が小さい状態が安定的に長時間持続することになる。これにより、基材1の表面は、長時間にわたって濡れ性が向上し、金属膜等を強固に接合可能な状態を長時間持続させることができる。
なお、PTFEの表面においてC-C結合形成を促進させる場合も、C-N結合を形成させる場合も、水蒸気(HО)とアルゴン(Ar)の好適な混合比や、水蒸気(HО)と窒素(N)の好適な混合比が存在することは明らかである(後述の[実施例2]参照。)。
[ステップS4:密着工程]
プラズマ処理装置10においては、結合工程の後、結合工程を終えた基材1によって電気基板を製造するため、基材1に他の金属や樹脂を密着させるための各種の工程が行われる(ステップS4、密着工程)。
密着工程においては、例えば下記に示す(工程A)~(工程D)が行われる。なお、(工程A)~(工程D)は、プラズマ処理装置10以外の各種装置(図示せず)において行われる。ただし、プラズマ処理装置10において下記に示す工程のうちの少なくとも一部が行われてもよい。
なお、下記(工程A)~(工程D)は密着工程を構成する工程の例示であり、密着工程において下記(工程A)~(工程D)以外の、電子基板を製造するために必要な各種工程が行われてもよいし、密着工程において下記(工程A)~(工程C)のうちの少なくとも何れか一つのみが行われてもよい。
(工程A:成膜工程)
ステップS3の結合工程を行った基材1は、成膜装置(図示せず)に移送されて、基材1の表面に所定の金属(例えば銅)の金属膜(図示せず)を成膜させる工程が行われる(成膜工程)。金属膜(図示せず)の蒸着は、例えばCVD法(化学気相成長法)やPVD法(スパッタリング法)等によって行う。
(工程B:鍍金工程)
ステップS3の結合工程(あるいは、さらに上記工程A)を行った基材1は、鍍金装置(図示せず)において、所定の金属(例えば銅)鍍金が行われ、回路間で電流を導通させる配線などを形成する(鍍金工程)。例えば、基材1に表裏面を貫通する穴を開けて表面側と裏面側にそれぞれ形成された電子回路同士を電気的に接続する場合などに、この鍍金工程で穴の内部に鍍金を行い、鍍金により表面側と裏面側の金属膜同士を接続することは有効である。
なお、鍍金の必要がない場合にはこの鍍金工程を省略することもできる。成膜工程で形成される金属膜の金属と鍍金工程で形成される鍍金とは、同一の金属であってもよいし、異なる金属であってもよい。また、鍍金の代わりに同一または他の種類の樹脂であってもよい。
(工程C:接続工程)
ステップS3の結合工程(あるいは、さらに上記工程Aや工程B)を行った基材1に対しては、他の樹脂や金属等を接続させる工程が必要に応じて行われる(接続工程)。接続工程において、基材1に対する他の金属や樹脂の接続は、接着剤等による接着、熱溶着、薬品による基材1等の化学的変性による接着、等、さまざまな方法が必要に応じて行われる。
上記工程A~工程Cに示す密着工程ののち、さらに、基材1に対して必要な各種工程が行われることで、基材1を用いた電子基板や樹脂表面親水化処理基板(いずれも図示せず)が製造される。
一種めの処理工程においては、導入工程(ステップS2)で基材1の表面にヒドロキシル基を導入して水接触角を小さくしたのち、結合工程(ステップS3)において基材1を構成する樹脂の表面の元素に化学結合としての炭素-炭素結合(C-C結合)や炭素-アルゴン結合(C-N結合)などの結合を発生させることで、基材1の表面3の濡れ性が改善された状態を長時間持続させることができる。また、導入工程(ステップS2)と結合工程(ステップS3)を別個の工程とすることで、製造工程の自由度や利便性を高めることできる。
[二種めの処理工程]
図3は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aにおける二種めの処理工程のフローチャートである。
図3に示すとおり、この二種めの処理工程においては、一種めの処理工程のステップS1と同様の工程(ステップS11、脱離工程)、ステップS4と同様の構成(ステップS13、密着工程)が設けられている点で一種めの処理工程と共通するが、ステップS2と同様の工程とステップS3と同様の工程とが、ひとつの工程として設けられている(ステップS12、導入工程)という点が一種めの処理工程と相違する。
以下、ステップS12の導入工程について説明する。なお、上述のとおり、ステップS11の「脱離工程」とステップS13の「密着工程」は一種めの処理工程の「脱離工程」「密着工程」と同様なので説明を割愛する。
[ステップS12:導入工程&結合工程]
プラズマ処理装置10においては、脱離工程(ステップS11)の後、基材1を構成する樹脂にヒドロキシル基を付与することで基材1の表面3の濡れ性を改善すると共に、基材1を構成する樹脂の表面の元素に共有結合を発生させて、基材1の表面3の濡れ性が改善された状態の持続性を良好にする(ステップS12、導入工程&結合工程)。
導入工程の開始前は、保持側回路19もプラズマ側回路20も通電されていない状態である。
次に、保持側回路19に通電させ、保持台13上の基材1に保持側電圧としてのプラスの電圧を印加して導入工程を開始する。
導入工程においては、保持側回路19をONとし、保持側電源15の電圧を保持台13に印加させた状態で、第二ガス導入部18の開閉弁(図示せず)を開き、真空ポンプ(図示せず)を作動させて真空チャンバ11内部を減圧する。なおこのとき、脱離工程(ステップS11)で開かれた第一ガス導入部17の開閉弁(図示せず)は開いたままにする。これにより、真空チャンバ11内には、処理ガスである窒素、および/または、アルゴンと、処理ガスである水蒸気が充填される。真空チャンバ11内に処理ガスが充填され、また真空チャンバ11内が処理に適した圧力になったら、その状態を維持するように図示しない真空ポンプと真空チャンバ11との間にある絞り(図示せず)で常時コントロールする。
なお、導入工程においては、窒素、および/または、アルゴン、及び、水蒸気と共に、導入工程に適した他のいかなる気体が真空チャンバ11内に導入されるようにしてもよい。
次いで、プラズマ側回路20をONとし、プラズマ側電源16からFPG12に通電させると、真空チャンバ11内に充填された処理ガスのプラズマが生成する。このときの保持側回路19の電圧はプラズマ側回路20の電圧より小さいことが望ましい。
この状態において、FPG12により真空チャンバ11内の処理ガスにプラズマが発生すると、プラズマ中のプラスのイオン21のほとんどは、電位差が大きい真空チャンバ11の方向に移動する。一方、プラズマ中の極性がないラジカル22(ヒドロキシルラジカル)は、基材1に照射される。ラジカル22(ヒドロキシルラジカル)を基材1に照射することによって、基材1の表面にヒドロキシル基が導入される。そして、保持側回路19、プラズマ側回路20の通電を解除することで、導入工程が終了する。
結合工程において、プラズマ側回路20への通電をONしてから、解除するまでの間、ラジカル量を変化させることで、導入工程によるヒドロキシル基の導入量と、結合工程による窒素ラジカルやアルゴンラジカル等による炭素の共有結合や炭素と窒素との結合する量を変化させることができる。真空チャンバ11内に充填される処理ガス総供給量はFPG12が生成する放電が暗放電の領域に入れるガス圧になるように設定することが望ましい。そこで、処理ガス総供給量を固定した状態で、ヒドロキシル基の導入量と窒素ラジカルやアルゴンラジカルの導入量のバランスを変化させる。導入工程&結合工程の前半の処理では、ヒドロキシル基を積極的に付与するために、窒素ラジカルやアルゴンラジカルの導入量を減らす。後半の処理では、窒素ラジカルやアルゴンラジカルの導入量を増やして、炭素-炭素結合(C-C結合)
や炭素-アルゴン結合(C-N結合)を積極的に促進させる。このように選択的に処理することで、同様の効果を短時間に実現することが可能になり、生産性が向上する。また、このバランスを最適化することで銅との密着力の向上と基材1の水接触角の経時変化の向上の両立を実現する。
なお、変化のさせ方は、前半の処理・後半の処理、という形にとらわれず、導入工程&結合工程の時間を変数にした数式で表現できる形で増加や減少させても良い。
二種めの処理工程においては、導入工程&結合工程(ステップS12)において、一種めの処理工程の「導入工程」と「結合工程」を同時に「導入工程&結合工程」として行うことができるので、「導入工程」と「結合工程」とを別個の工程として行った場合に比べて、工程の実行に要する時間を短縮したり、工程を簡略化して電子基板の製造コストを低下させることができる。
[三種めの処理工程]
図4は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aにおける三種めの処理工程のフローチャートである。
図3に示すとおり、この三種めの処理工程においては、一種めの処理工程のステップS1と同様の工程(ステップS21、脱離工程)、ステップS3と同様の工程(ステップS23、結合工程)、ステップS4と同様の構成(ステップS24、密着工程)が設けられている点で一種めの処理工程と共通する。ステップS22は、二種めの処理工程のステップS12と同様に、ひとつの工程として設けられている(ステップS22、導入工程&結合工程)という点が一種めの処理工程と相違する。
なお、上述のとおり、ステップS21の「脱離工程」、ステップS23の「結合工程」、ステップS24の「密着工程」は一種めの処理工程の「脱離工程」「結合工程」「密着工程」と同様であり、ステップS22の「導入工程&結合工程」は二種めの処理工程のステップS12の「導入工程&結合工程」と同様なので、それぞれ詳細な説明は割愛する。
三種めの処理工程においては、導入工程(ステップS22)と結合工程(ステップS23)において、表面にヒドロキシル基を導入して水接触角を小さくした樹脂の表面の元素に炭素の共有結合や炭素と窒素との結合を発生させることにより、樹脂の表面の元素にこの結合を発生させる工程を長時間行うことができる。フリーになって不安定になっている炭素ラジカルを減らすことを実現でき、表面の濡れ性が改善された状態が長時間にわたって持続する基材1の形成を、より確実に形成できる。
[作用効果]
以上、この実施の形態においては、プラズマにより生成したラジカルによって、所定の化学結合を行わせる結合工程(ステップS3,S23)や導入工程(ステップS12)を、少なくとも、プラズマを照射して樹脂を構成する原子の少なくとも一部を脱離させる脱離工程(ステップS1,11,21)を施した基材1の表面にヒドロキシル基を導入する導入工程(ステップS2,12,22)以降のタイミングで行うことにより、ヒドロキシル基が導入されて水接触角が小さくなった基材1の表面に、ラジカルが施す炭素-炭素結合(C-C結合)や炭素-アルゴン結合(C-N結合)等の化学結合が加わり、基材1の表面の水接触角が小さくなった状態を、この化学結合が加わらない場合よりも長く持続させることが可能になる。そのため、基材1の表面に他の金属や樹脂を接合させる工程を、基材1の表面にヒドロキシル基が導入された後の長い時間帯に行うことが可能となる。そして、基材1の表面にヒドロキシル基が導入されて長時間が経過した基材1の表面に対して、他の金属や樹脂を強固に接合できる。これにより、電子基板や樹脂表面親水化処理基板などの樹脂の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で、製造コストの高騰を抑止して行うことができる。
この実施の形態においては、ヒドロキシル基が導入された基材1の表面にラジカルを照射して炭素-窒素結合(C-N結合)、及び/又は、炭素-炭素結合(C-C結合)を形成することにより、基材1の表面の水接触角が小さい状態を、元素同士の共有結合による具体的な構成として実現できる。
この実施の形態においては、ヒドロキシル基が導入された基材1の表面にラジカルを照射して炭素-窒素結合(C-N結合)、及び/又は、炭素-炭素結合(C-C結合)を形成する工程を導入工程と同時に行う(ステップS21)ことにより、基材1表面へのヒドロキシル基の導入を行いながら基材1表面の元素の化学結合を行うことができる。これにより、工程数の減少や工程の所用時間の短縮を実現し、電子基板の製造時間の短縮や製造コストの高騰の抑止を実現できる。
この実施の形態においては、ヒドロキシル基が導入された基材1の表面にラジカルを照射して炭素-窒素結合(C-N結合)、及び/又は、炭素-炭素結合(C-C結合)を形成する工程を導入工程(ステップS2,S22)の後に行う(ステップS3,S23)ことにより、基材1表面へのヒドロキシル基の導入を行った後、基材1表面の元素の化学結合を行うことができる。これにより、基材1表面の元素の化学結合を、ヒドロキシル基の導入が完了した樹脂に対して行うことで、基材1の表面の水接触角が小さい状態を確実に形成したうえで、その水接触角が小さい状態を長時間持続させることができる。これにより、基材1の表面に金属や樹脂などの他の物質を強固に接合できる状態を、長時間持続させることができる。
この実施の形態においては、プラズマにより生成した窒素ラジカルまたはアルゴンラジカルの発生量を結合工程(ステップS3,S23)の時間経過とともに変化させることにより、導入工程(ステップS2,S22)によるヒドロキシル基の導入量と、結合工程(ステップS3,S23)による窒素ラジカルやアルゴンラジカル等による炭素の共有結合や炭素と窒素との結合する量を変化させることができる。これにより、樹脂と他の物質との密着力の向上と樹脂の水接触角の経時変化の向上の両立を実現することができる。
この実施の形態においては、表面に他の金属や樹脂を強固に接合できる状態を、長時間持続させることができる樹脂製の基材1を用いて電子基板の処理工程を行うことができ、基材1の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程の自由度や利便性が高い状態で、製造コストの高騰を抑止して行うことができる。
この実施の形態においては、基材1の表面に他の物質を接合させる工程を、製造工程を簡略化して製造コストを低減させた状態で行うことのできる樹脂表面親水化処理装置1Aを提供できる。
なお、上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、言うまでもない。すなわち、本発明の課題解決に適するものであれば、本実施の形態について、多様な変形例や応用例が考えられる。
[実施例1]
図5に、この実施の形態の実施例1を示す。
図5は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法において製造された基材1と、従来の樹脂表面親水化処理装置の樹脂表面親水化処理方法において製造された基材1の水接触角の経時変化を示す図である。
図5における、グラフ100は、従来の樹脂表面親水化処理装置の樹脂表面親水化処理方法であって基材の表面から構成する原子を脱離させる工程(図2に示すステップS1の「脱離工程」参照)のみを行い、基材の表面にヒドロキシル基を導入する工程(図2に示すステップ2の「導入工程」参照)を行わずに製造された基材の水接触角の経時変化を示している。
グラフ200は、従来の樹脂表面親水化処理装置の樹脂表面親水化処理方法であって、基材の表面から構成する原子を脱離させる工程(図2に示すステップS1の「脱離工程」参照)と、基材の表面にヒドロキシル基を導入する工程(図2に示すステップ2の「導入工程」参照)を行って製造された基材の水接触角の経時変化を示すものである。
グラフ300は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法であって、基材の表面から構成する原子を脱離させる工程(図4に示すステップS21の「脱離工程」参照)と、基材1の表面にヒドロキシル基を導入する工程(図4に示すステップ22の「導入工程&結合工程」参照)と、基材1の表面に炭素-窒素結合(C-N結合)や炭素-炭素結合(C-C結合)を導入する工程(図4に示すステップ23の「結合工程」参照)とよって、基材1の表面に炭素-窒素結合(C-N結合)や炭素-炭素結合(C-C結合)と付与した基材1の水接触角の経時変化を示すものである。
図5に示すように、グラフ100は工程終了後24時間経過後から水接触角が急激に大きくなり、工程終了後72時間で水接触角が約50°に達する。すなわち、水接触角が小さい時間を短時間しか持続できないことがわかる。
図5に示すように、グラフ200は工程終了後48時間経過後から水接触角が大きくなり、工程終了後72時間で水接触角が約22°に達する。すなわち、この状態でも、水接触角が小さい時間を短時間しか持続できないことがわかる。
図5に示すように、グラフ300は工程終了後96時間が経過しても水接触角が約5°の小さい状態を維持している。すなわち、この場合は、水接触角が小さい時間を長時間持続していることがわかる。
以上示すとおり、本発明の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法においては、水接触角が小さい時間を長時間持続させることができることが確認された。
[実施例2]
図6、図7に、この実施の形態の実施例2を示す。
実施例2においては、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法において製造された基材1の表面に銅鍍金を施し、基材1と銅鍍金が強固に接合されているか否かを確認する実験を行った。
実施例2においては、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aにより、板状のPTFEの基材1の表面に表面処理を行った。そして、表面処理を行った基材1の表面に銅鍍金を施した試材を作成した。そして、この試材の銅鍍金を基材1から剥離させる実験を繰り返し行った。
試材には所定の2箇所(板状の試材の左端から約10mmの地点1、左端から約60mmの地点2)の範囲を、地点1から地点2方向に幅5mmの帯状の切れ込みを形成した。試料を水平に設置し、試料から銅鍍金のみを剥がし、その銅鍍金の端部を強度測定器で把持し、把持部を垂直に引き上げる。地点1から地点2まで強度測定器で定速で引き上げあげることで、基材1から銅鍍金を剥離させた。このときの銅鍍金を剥離する力を測定し、その力から密着強度(剥離させる力)を求めた。
実施例2の実験は、結合工程(ステップS3,S12,S22,S23)において真空チャンバ11内に存在する混合気の混合比を変化させて製造した複数の試材についてそれぞれ行った。この実施例2で真空チャンバ11に導入する混合気は、水蒸気(HО)とアルゴン(Ar)の混合気である。実施例2では、水蒸気とアルゴンの分圧を変化させて結合工程を行いながら、複数の基材1を製造し、それらの基材1の表面に銅鍍金を施し、試材を製造した。
図6は、実施例2の試材において、基材1から銅鍍金を剥離させる際の、剥離強度の経時的変化を模式的に示す図である。
図6において、縦軸が剥離させる力の大きさ(N/mm)であり、横軸は時間(sec)である。図6のグラフ400に示すように、基材1から銅鍍金を剥離させる際の、時間の経過に伴う力の大きさは、剥離開始直後(約2sec)から剥離終了前(約52sec)まで約2.1N~約2.2Nという強い強度でほぼ一定に推移している。すなわち、基材1全体において、鍍金が十分な強度で接合していることがわかる。
以上示したとおり、本発明の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法において表面処理を行った基材1は、表面全体にわたって金属膜が強固に接合されていることが確認された。
図7は、この実施の形態の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法において製造された基材1を用いた、試材ごとの剥離強度を示した分布図である。
図7の分布図において、縦軸は鍍金を剥離させる力の大きさ(N/mm)であり、横軸は、結合工程(ステップS3,S12,S22,S23)を行う際の真空チャンバ11内の混合気の混合状態である。図7では、横軸方向の左方向ほど混合気におけるアルゴンの比率が高く、右方向ほど混合気における水蒸気の比率が高い。
図7の点500は試材ごとの地点1、地点2の剥離強度の平均値である。点500は、基材1を製造する際のアルゴンと水蒸気の混合比の相違にかかわらず概ね0.4N/mm~1.1N/mmという高い値に分布している。これは、地点1でも地点2でも同様の傾向が見てとれる。
これより、本発明の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法において表面処理を行った基材1は、アルゴンと水蒸気の混合比の相違にかかわらず、表面全体にわたって金属膜が強固に接合されていることが確認された。
図7のグラフ600は、同図に示す剥離強度の点500の最頻値近傍に引いた仮想線である。つまり、図7のグラフ600は、結合工程における水蒸気とアルゴンとの混合比の違いによる基材1と鍍金の剥離強度の相違を模式的に示した線である。
なお、図7のグラフ600には最高点700、つまり、銅鍍金の剥離強度が最も高くなる点が確認できる。これは、結合工程において、基材1の表面への金属の結合強度が最も高くなるような水蒸気とアルゴンの混合比が存在することを示している。すなわち、本発明の樹脂表面親水化処理装置1Aの樹脂表面親水化処理方法においては、基材1の表面改質の状態を最適化するアルゴンと水蒸気の混合比が存在することも確認された。
本実施形態の樹脂表面親水化処理装置1A、および樹脂表面親水化処理方法は、例えば、高速大容量の情報を通信する携帯電話に用いる回路基板の製造に用いられる。フッ素樹脂の比誘電率は空気の次に低いので、フッ素樹脂基板は、高周波基板の素材に特に適している。フッ素樹脂を用いた回路基板は、他の一般的な素材を用いた回路基板と比べて、高周波電流を流しても比誘電率および誘電正接が低く、誘電損失が小さい。
本実施形態の樹脂表面親水化処理装置1A、および樹脂表面親水化処理方法をフッ素樹脂基板の製造に適用した場合、製造した基板の親水性が向上し、銅配線との密着性が向上でき、高周波数帯での使用に耐えうる回路基板が提供できる。この高周波数帯での使用に適用できる技術は、携帯電話本体にとどまらず、携帯電話の基地局に使われる基板、家庭内、工場内、もしくは地域専用の通信用の基板、または自動車もしくはドローンなどの自動運転に用いられるミリ波レーダー用の基板にも適用できる。また、本実施形態のプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法は、上記以外の多様な分野の基板の製造にも用いられる。
1A・・・樹脂表面親水化処理装置(樹脂表面親水化処理装置、電子基板処理装置)
1・・・基材(樹脂)
S1・・・脱離工程
S2・・・導入工程
S3・・・結合工程
S4・・・密着工程

Claims (10)

  1. 樹脂に各種の処理を施す樹脂表面親水化処理方法であって、
    前記樹脂の表面に対してプラズマを照射して、前記樹脂を構成する原子の少なくとも一部を脱離させる脱離工程と、
    該脱離工程を施した前記樹脂の表面にヒドロキシル基を導入する導入工程と、
    前記プラズマにより生成したラジカルによって、所定の化学結合を行わせる結合工程とを備え、
    該結合工程を、少なくとも前記導入工程以降のタイミングで行うことを特徴とする樹脂表面親水化処理方法。
  2. 前記結合工程において行われる前記化学結合は、炭素-窒素結合、及び/又は、炭素-炭素結合であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  3. 前記結合工程においては、前記導入工程で発生したラジカルに、前記樹脂の表面の近傍にプラズマにより生成した窒素ラジカルを照射することにより、炭素-窒素結合を行わせることを特徴とする請求項1に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  4. 前記結合工程においては、前記導入工程で発生したラジカルに、前記樹脂の表面の近傍にプラズマにより生成したアルゴンラジカルを照射することにより、炭素-炭素結合を行わせることを特徴とする請求項1に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  5. 前記結合工程を前記導入工程と同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  6. 前記結合工程を前記導入工程の後に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  7. 前記結合工程においては、プラズマにより生成した窒素ラジカルまたはアルゴンラジカルの発生量を該結合工程の時間経過とともに変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  8. 前記結合工程の後に行われる、前記樹脂の表面に電子基板を形成するための各種の工程を行う形成工程を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂表面親水化処理方法。
  9. 請求項1乃至8の何れか一つに記載の樹脂表面親水化処理方法により、樹脂に各種の処理を施すことを特徴とする樹脂表面親水化処理装置。
  10. 請求項1乃至8の何れか一つに記載の樹脂表面親水化処理方法により、電子基板に用いる樹脂に各種の処理を施すことを特徴とする電子基板処理装置。
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