JP2023156097A - 蓄電デバイスならびにそれに用いられるバインダー、水分散体、樹脂組成物およびセパレータ - Google Patents

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禎之 酒井
Yoshiyuki Sakai
安紀子 今里
Akiko Imazato
愛玲 張
ai-ling Zhang
大輔 藤川
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Abstract

【課題】長期間の保存安定性に優れ、長期間保存した後でも優れた蓄電デバイスの特性やセパレータの特性(柔軟性、密着性、電解液耐性、耐熱性)を与えることができる蓄電デバイスのセパレータ基材の保護層を形成するためのバインダーにより、優れた特性を有する蓄電デバイスを提供すること。【解決手段】一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスであって、前記保護層は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する蓄電デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電デバイスと、それに用いられるバインダーおよびその水分散体、樹脂組成物ならびにセパレータに関する。
リチウムイオン二次電池をはじめとする蓄電デバイスは、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、繰り返し充放電も可能であることから、幅広い用途に使用されている。これらの蓄電デバイスには、異常時の安全性確保のため、一般的に電極間に多孔質構造を有する電気絶縁性のセパレータが設けられている。セパレータは、平常時はイオンの行き来が可能であるが、異常が生じて高温になった際には孔が塞がってイオンの行き来を遮断し、蓄電デバイスのショートを防ぐ。セパレータとしては、多孔質構造を有するポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン膜(一般的には「セパレータ基材」と称する)や、セパレータ基材に、バインダー樹脂や電気絶縁性の無機フィラーを含んだ樹脂組成物から形成される保護層を更に備えた形態が知られている。しかし、上記の保護層を形成するための樹脂組成物は、保存安定性に劣る場合が多く(多くの場合、バインダー樹脂や無機フィラー同士が凝集してしまう)、高温条件や長期間保管した後に再度分散してセパレータ基材へ塗布しても、優れたセパレータ特性(具体的には、セパレータ基材や無機フィラーに対する密着性、耐電解液性、耐熱性等)が安定して発現せず、それを使用した蓄電デバイスも優れた性能が得られないことが問題となっている。
蓄電デバイスに用いられる部材の強度や部材間の結着をより向上させる目的で、保護層にシラン化合物を添加する事例が挙られるが、上述したセパレータ物性の悪化や蓄電デバイスの性能低下はシラン化合物を含む場合に特に認められる。
例えば、特許文献1には、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを単量体単位として有する共重合体を含む熱可塑性ポリマーを含有する層と、セパレータ用基材とを有する積層体を備えた蓄電デバイスが開示されている。また、特許文献2ならびに特許文献3では、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランやテトラエチルオルトシリケートによって改質されたアクリル/フッ素共重合体を含む層でコートされたセパレータが開示されている。しかし、これら文献に開示されている発明は、いずれもセパレータと電極との間の密着性を改善することを目的とした発明であり、その他上記の諸問題については解決できていないのが現状であった。
特開2015-138770号公報 国際公開第2020/263936号 国際公開第2020/263937号
保護層を形成するための材料は、長時間の輸送や長期間の保管ができることが求められるが、これらは実用上の重要な問題である。更に、材料を長期間保管した後でも、セパレータや蓄電デバイスの特性が低下しないことも求められる。そこで、本発明が解決しようとする課題は、長期間の保存安定性に優れ、長期間保存した後でも優れた蓄電デバイスの特性やセパレータの特性(柔軟性、密着性、電解液耐性、耐熱性)を与えることができる蓄電デバイスのセパレータ基材の保護層を形成するためのバインダーとその水分散体および樹脂組成物を提供することである。また、優れた特性を有するセパレータおよび蓄電デバイスを提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスであって、上記保護層は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する蓄電デバイスに関する。
また、本発明は、上記シラン化合物が、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するアルコキシモノシラン化合物(b)の縮合体(B)を含む上記蓄電デバイスに関する。
また、本発明は、上記アルコキシモノシラン化合物(b)は、その完全加水分解物の25℃におけるオクタノール/水分配係数(logKow)が、-1.5~6である上記蓄電デバイスに関する。
また、本発明は、上記エチレン性不飽和単量体(a)が、酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む上記蓄電デバイスに関する。
また、本発明は、上記保護層が、さらに無機フィラーを含む上記蓄電デバイスに関する。
また、本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの上記保護層を形成するためのバインダーであって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するバインダーに関する。
また、本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの上記保護層を形成するためのバインダーの水分散体であって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物と、水性媒体とを含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するバインダーの水分散体に関する。
また、本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの上記保護層を形成するための樹脂組成物であって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物と、無機フィラーとを含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する樹脂組成物に関する。
また、本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスのセパレータであって、上記セパレータは、セパレータ基材と少なくとも一層の保護層とを有し、上記保護層は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する保護層を備えたセパレータに関する。
本発明により、長期間の保存安定性に優れ、長期間保存した後でも優れた蓄電デバイスの特性やセパレータの特性(柔軟性、密着性、電解液耐性、耐熱性)を与えることができる蓄電デバイスのセパレータ基材の保護層を形成するためのバインダーとその水分散体および樹脂組成物を提供することができるようになった。また、優れた特性を有するセパレータおよび蓄電デバイスを提供することができるようになった。
以下、本発明のバインダー、水分散体、樹脂組成物、セパレータ、蓄電デバイスの実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
まず、本明細書に共通した表記について説明する。「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。エチレン性不飽和単量体とは、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を意味し、酸性基を有する単量体(a1)、アミド基を有する単量体(a2)、ならびに酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)以外の単量体(a3)は、それぞれ単量体(a1)、単量体(a2)および単量体(a3)と略記することがある。エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するアルコキシモノシラン化合物(b1)および上記(b1)以外のその他のアルコキシモノシラン化合物(b2)は、それぞれシラン化合物(b1)およびシラン化合物(b2)と略記することがある。さらに、「(メタ)アクリ」と表記した場合には、特に説明がない限り、「アクリまたはメタクリ」を意味し、「メト(エト)キシ」とは、「メトキシまたはエトキシ」を意味するものとする。
≪バインダー≫
本発明のバインダーは、蓄電デバイスの電極間に設けられるセパレータの保護層を形成するために用いられる。バインダーは、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)とシラン化合物を含み、上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する。シラン化合物が炭素数3~12のアルキル基を有することにより、重合体(A)とシラン化合物との相溶性が向上し、重合体中におけるシラン化合物の極端な偏在化も少なくなって安定性が増すものと考えられる。また、シラン化合物がエチレン性不飽和基を有さないため、重合体(A)と化学結合したり、シラン化合物のエチレン性不飽和基同士が重合する恐れが少なく、十分な結着効果が得られなかったり、シラン化合物由来の凝集物が発生することに由来したセパレータや電池の特性に悪影響を及ぼす恐れがない。したがって、セパレータ基材に対する結着性や、無機フィラーを含む際の無機フィラー成分に対する結着性が飛躍的に向上し、セパレータや蓄電デバイスの特性が向上するものと考えられる。上記バインダーの形態は特に問わないが、水性媒体中で水分散体の形態をとることがより好ましい。
<バインダーの製造方法>
上記バインダーの製造方法としては、重合体(A)とシラン化合物とを混合する方法、エチレン性不飽和単量体(a)とシラン化合物を予め混合した後に重合する方法等、任意の方法で製造することができるが、より安定なバインダーを得られ易いという観点から、エチレン性不飽和単量体(a)とシラン化合物の前駆体を予め混合し、その混合物の乳化液を用いて乳化重合する方法が好ましい。
<バインダーの酸価>
バインダーは、酸価を有することが好ましい。バインダーが酸価を有する場合、バインダーの酸価は、2~40mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価の範囲が上記の範囲であることにより、樹脂組成物がより安定で、長期間保存後もバインダーのセパレータ基材に対する結着性や、無機フィラーを含む際の無機フィラーに対する結着性が良好であるため、セパレータや蓄電デバイスが優れた物性を発現できると考えられる。
<バインダーのガラス転移温度(Tg)>
バインダーのTgは、-60~40℃の範囲が好ましい。Tgが上記の範囲であることにより、結着時におけるバインダー成分の運動性が十分に確保されるため、セパレータ基材に対する結着性や、無機フィラーを含む際の無機フィラーに対する結着性がより向上する上、強度も確保される。これによりセパレータや蓄電デバイスの特性が向上するものと考えられる。Tgは、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製等)により測定し、求めることができる。
<重合体(A)>
本明細書において、重合体(A)は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体を指し、バインダーの主成分としてセパレータ基材と結着するために用いられる。また、無機フィラーを含む場合には、セパレータ基材と無機フィラー、および無機フィラー同士を結着するために用いられる。
エチレン性不飽和単量体(a)は、酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。単量体(a1)および/または単量体(a2)を含むことにより、樹脂組成物の経時安定性が向上し、経時後も優れたセパレータや蓄電デバイスの物性が発現できると考えられる。
<酸性基を有する単量体(a1)>
酸性基を有する単量体(a1)としては、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上記の内、単量体(a1)としては、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体を含むことが好ましく、カルボキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を含むことがより好ましく、(メタ)アクリル酸を含むことがさらに好ましい。
<アミド基を有する単量体(a2)>
アミド基(-CON=基)を有する単量体(a2)としては、例えば、
(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペンチルオキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペンチルオキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペンチルオキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド、メチレンビスアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。上記のなかでも結着性により優れ、セパレータの耐熱性、密着性、耐察性がより向上する観点から、単量体(a2)としては、ジアセトン(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリルアミドを含むことが好ましく、(メタ)アクリルアミドを含むことがより好ましい。
上記酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)の総量はエチレン性不飽和単量体(a)全量を基準として、0.5~10質量%含有することが好ましく、更に好ましくは0.8~7質量%の範囲である。上記の範囲で含むことにより、樹脂組成物の経時安定性がより向上し、経時後も優れたセパレータや蓄電デバイスの物性が発現できると考えられる。
<単量体(a1)、(a2)以外の単量体(a3)>
エチレン性不飽和単量体(a)は、酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)以外のエチレン性不飽和単量体(a3)を含んでも良い。
単量体(a3)としては、例えば、
ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸性基含有エチレン性不飽和単量体;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;
N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジエチルアミノスチレン等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
上記の内、単量体(a3)は、芳香族系エチレン性不飽和単量体、アルキル基含有エチレン性不飽和単量体、シクロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体、水酸性基含有エチレン性不飽和単量体のいずれかを含むことが好ましい。
更に上記単量体(a3)を含む場合、25℃におけるオクタノール/水分配係数(logKowと略記する)が、1~5である単量体を含むことが好ましい。エチレン性不飽和単量体(a)全量を基準として、logKowが1~5である単量体の含有率は、エチレン性不飽和単量体(a)全量を基準として、60質量%以上100質量%未満の範囲であることが好ましい。上記の範囲で含むことにより、重合体(A)と上記シラン化合物との相溶性がより良化する。例えば、バインダーが水分散体の形態をとる場合、シラン化合物が重合体(A)と分離したり、分散体中央部への極端な偏在化を抑制することができる。したがって、樹脂組成物の経時安定性により良好で、経時後も優れたセパレータや蓄電デバイスの特性を発現することができると考えられる。単量体(a3)は、蓄電デバイス性能がより向上することからlogKowが1.13~4.01である単量体を含むことがより好ましい。
logKowが、1~5であるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
スチレン(logKow3.06)、α-メチルスチレン(logKow3.06)、
ベンジルアクリレート(logKow2.32)、ベンジルメタクリレート(logKow 2.91)、フェノキシエチルアクリレート(logKow2.44)、
メチルメタクリレート(logKow1.13)、エチルアクリレート(logKow1.16)、エチルメタクリレート(logKow1.78)、プロピルアクリレート(logKow1.67)、プロピルメタクリレート(logKow2.28)、ブチルアクリレート(logKow2.23)、ブチルメタクリレート(logKow2.84)、t-ブチルメタクリレート(logKow2.67)、
ヘキシルアクリレート(logKow3.11)、ヘキシルメタクリレート(logKow3.50)、シクロヘキシルメタクリレート(logKow3.06)、
2-エチルへキシルアクリレート(logKow4.01)、オクチルアクリレート(logKow4.20)、イソノニルアクリレート(logKow4.66)
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
<重合体(A)の製造方法>
重合体(A)を製造するためのエチレン性不飽和単量体(a)の重合の方法は、溶液重合や懸濁重合、塊状重合や乳化重合等、特に制限されないが、水性媒体中で、高分子量且つ低粘度、高固形分の重合体が容易に得られる観点から乳化重合により製造することが好ましい。
重合体(A)は、溶媒に溶解した重合体であっても良いし、水性媒体中に分散し、粒子状の重合体であってもよいが、経時安定性により優れ、蓄電デバイスの特性が向上する観点から、粒子状の重合体であることがより好ましい。
<ラジカル重合開始剤>
エチレン性不飽和単量体混合物の重合反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。ラジカル重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体混合物100質量部を基準として、0.1~4質量部を用いることが好ましく、0.2~2質量部用いることが更に好ましい。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物;等を挙げることができる。
乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドのような従来既知のものを好適に使用することができる。
乳化重合により重合体(A)を得る際、水分散体の安定性の観点から界面活性剤および保護コロイドの少なくとも一方の存在下で行うことが好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤が好ましい。
非反応性界面活性剤として、アニオン性界面活性剤は、主骨格がスルホコハク酸エステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル、(メタ)アクリレート硫酸エステル、またはリン酸エステルであることが好ましい。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルシュウ酸エステル塩等が挙げられる。
非反応性界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤は、主骨格がアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、またはアルキルエステルであることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。
界面活性剤は、反応性界面活性剤を使用することもできる。ここで、反応性界面活性剤とは、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有する界面活性剤を指す。反応性界面活性剤としては、上記非反応性界面活性剤(好ましくは、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤)にラジカル重合可能な不飽和二重結合が結合した化合物を挙げることができる。
保護コロイドとしては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、デンプン、自己乳化分散性ポリエステル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等の水溶性高分子化合物が挙げられる。
界面活性剤や保護コロイドは、エチレン性不飽和単量体(a)の全量100質量部に対して、0.1~5質量部を使用することが好ましい。
<還元剤>
また、乳化重合では、重合開始剤とともに還元剤を併用してもよい。還元剤を併用することにより、乳化重合速度の促進や、低温での乳化重合が容易になる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素が挙げられる。これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体(a)の全量100質量部に対し、0.05~5質量部を用いることが好ましい。
重合温度は、重合開始剤の分解温度以上であればよく、例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常80℃程度である。重合時間は特に制限されないが、通常2~24時間である。なお、エチレン性不飽和単量体混合物は、上記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や放射線照射によって重合してもよい。
<緩衝剤または連鎖移動剤>
エチレン性不飽和単量体(a)の重合においては、必要に応じて、さらに緩衝剤または連鎖移動剤を用いてもよい。緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。連鎖移動剤は、例えば、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、t-ヘキシルメルカプタン、t-ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、t-デシルメルカプタン、ウンデシルメルカプタン、t-ウンデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、t-トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、へプタデシルメルカプタン、t-ヘプタデシルメルカプタン、t-ヘキサデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、t-へプタデシルメルカプタン、t-オクタデシルメルカプタン、メルカプタンメルカプト酢酸2-エチルヘキシル、メルカプト酢酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸ステアリル等が挙げられる。
緩衝剤は、エチレン性不飽和単量体(a)の全量100質量部に対し、0~1質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量部の範囲である。
また、連鎖移動剤は、エチレン性不飽和単量体(a)の全量100質量部に対し、0.4~3質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは0.6~2質量部の範囲である。
<塩基性化合物>
エチレン性不飽和単量体(a)の重合の際、または重合後、重合体(A)の安定性を高めるために、中和剤として塩基性化合物を使用してもよい。塩基性化合物としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基;アンモニア水や、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムといったアルカリ金属の水酸化物等の無機塩基等が挙げられる。塩基性化合物は、重合反応中に添加しても構わないし、重合反応完了後に添加しても構わない。塩基性化合物は、重合体(A)が酸性基を有する場合、重合体(A)中の酸性基1モルを基準として、0.75~1.2モルの範囲で使用することが好ましい。
<シラン化合物>
本発明に用いられるシラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するシラン化合物を含む。シラン化合物は、セパレータ基材や、無機フィラーを含む際の無機フィラー成分等に対する結着性をより向上させるために用いられる。シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するアルコキシモノシラン化合物(b)の縮合体(B)を含むことが好ましい。アルコキシモノシラン化合物(b)は、水と反応して容易にヒドロキシモノシラン化合物とアルコールを生成するが、ヒドロキシモノシラン化合物同士は、縮合して縮合体(B)を生成する。
エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するアルコキシモノシラン化合物(b)としては、例えば、プロピルトリメト(エト)キシシラン、ブチルトリメト(エト)キシシラン、ヘキシルトリメト(エト)キシシラン、オクチルトリメト(エト)キシシラン、デシルトリメト(エト)キシシラン、ドデシルトリメト(エト)キシシラン等が挙げられる。
セパレータ基材への密着性、電解液耐性、耐熱性や蓄電デバイスの特性等の観点から、シラン化合物(b)中のアルキル基の炭素数は、下限が3であり、6であることが好ましく、上限が12であり、10であることが好ましい。具体的には、ヘキシルトリメト(エト)キシシラン、オクチルトリメト(エト)キシシラン、デシルトリメト(エト)キシシランであることが好ましい。アルコキシモノシラン化合物(b)は、単独で使用しても構わないし、複数併用しても構わない。
更に上記アルコキシモノシラン化合物(b)は、その完全加水分解物の25℃におけるオクタノール/水分配係数(logKow)が、-1.5~6であることが好ましく、更に好ましくはlogKowが、-1.32~5.78の範囲である。分配係数(logKow)が上記数値の範囲内であると、重合体(A)と上記シラン化合物とが分離しにくくなり、重合体(A)との相溶性も良化する。例えば、バインダーが水分散体の形態をとる場合、シラン化合物が重合体(A)と分離したり、分散体中央部への極端な偏在化を抑制することができる。したがって、樹脂組成物の経時安定性により優れ、経時後も優れたセパレータや蓄電デバイスの特性が維持できると考えられる。
オクタノール/水分配係数(logKow)は、下記の(式1)により表され、ある化合物Xが水相と油相(オクタノール)、どちらに分配されやすいかを表す指標として用いられる。各化合物のlogKowは、フラスコ振盪法や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法などの実験からも算出することもできるし、ハンセン溶解度パラメータソフトHSPiPのYMB法(物性推算機能)等、化学構造からのシミュレーションで算出することも可能である。

(式1)
logKow=log(オクタノール相における化合物Xの濃度/水相における化合物Xの濃度)
完全加水分解物の25℃におけるオクタノール/水分配係数(logKow)が、-1.5~6.0である上記アルコキシモノシラン化合物(b)としては、例えば、
プロピルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow -1.32)、
ブチルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow -0.75)、
ヘキシルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow 2.99)、
オクチルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow 3.96)、
デシルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow 4.78)、
ドデシルトリメト(エト)キシシラン(完全加水分解物のlogKow 5.78)等が挙げられる。
上記シラン化合物は、重合体(A)を基準として、0.2~20質量%含有することが好ましく、0.4~10質量%含有することがさらに好ましい。含有率が0.2質量%以上であると、上記シラン化合物の効果を十分に発揮できるため、セパレータの密着性、電解液耐性、耐熱性や蓄電デバイスのサイクル特性がより向上する。含有率が20質量%以下であると、セパレータの電解液耐性や蓄電デバイスのサイクル特性がより優れたものとなる。
上記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するシラン化合物のみであることが好ましいが、諸物性に悪影響を及ぼさない範囲に於いてエチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するシラン化合物以外のシラン化合物を併用しても構わない。
≪バインダーの水分散体≫
本発明のバインダーの水分散体とは、本発明のバインダーと水性媒体とを含むものを指す。
<水性媒体>
本明細書において、水性媒体とは、水性の分散媒または水性の溶媒を指す。水性媒体としては、水を挙げることができるが、水溶性の溶剤を含んだものも水性媒体とみなす。水溶性の溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロゾルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられる。
<バインダー粒子の平均粒子径>
バインダーが水分散体の形態をとる場合、バインダー粒子は、動的光散乱で測定した際の平均粒子径が、50~500nmの範囲であることが好ましく、80~300nmの範囲であることがより好ましい。バインダー粒子の平均粒子径が上記の範囲であることにより、バインダーがイオン電導性に悪影響を及ぼしにくく、且つセパレータ基材に対する結着性や、無機フィラーを含む際の無機フィラーとの結着性にも優れるため、セパレータや蓄電デバイスの特性が向上するものと考えられる。
平均粒子径は、例えば、動的光散乱測定法(Nanotrac Wave II EX150、マイクロトラック・ベル社製等)により測定することができる。このとき得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とする。
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、蓄電デバイスのセパレータに保護層を形成するために用いられ、上記バインダーと、無機フィラーとを含む。本発明の樹脂組成物は、経時安定性に大変優れることから、高温で長期間保管した後もセパレータ基材への塗工性が良好であり密着性にも優れる。
<無機フィラー>
本発明に用いる無機フィラーは、基材上で耐熱性に優れる多孔質構造を形成することができる。無機フィラーは、溶剤や蓄電デバイスに用いられる非水系電解液等に溶解せず、形状が維持される粒子であることが好ましい。更に電気化学的に安定で蓄電デバイスの使用環境下でも安定な微粒子であることが好ましい。
無機フィラーとしては、非導電性の無機粒子であることが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト(AlOOH)、ギブサイト(Al(OH)3)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ZrO、アルミナ-シリカ複合酸化物等の無機酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の無機窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;
タルク、モンモリロナイト等の粘土粒子;
等が挙げられる。これらの粒子は、必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。上記で挙げた無機微粒子の中でも、分散安定性やセパレータの耐熱性、各種塗膜耐性により優れる点から、硫酸バリウムまたはアルミナの粒子を用いることがより好ましい。
無機フィラーの平均粒子径は、0.2~5μmの範囲であることが好ましく、0.3~2μmの範囲であることがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲であることにより、セパレータの耐熱性等により優れる上、イオン電導性も悪化しにくいことから電気特性がより良好な蓄電デバイスを得ることができる。無機フィラーの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子製「JSM-7800F」)を用いて、拡大倍率15000倍で観察した粒子粉体の画像を、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製「Winroof」)に導入して球状構造の抽出を行い、各粒子の円相当径の平均値として測定することができる。
樹脂組成物において、無機フィラー100質量部に対し、上記バインダーは固形分で0.5~4質量部含有されることが好ましく、1.0~3質量部含有されることがより好ましい。上記の範囲で含有されることで、樹脂組成物の保存安定性が良好な上、セパレータや蓄電デバイスの特性もより優れたものとなる。
<任意成分>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、溶剤、架橋剤、分散剤、結着剤等、その他添加剤を含有することが出来る。なお任意成分が保護層に残存する場合、セパレータや蓄電デバイスの諸物性に悪影響を与えないことがより好ましい。
≪セパレータ≫
本発明のセパレータは、セパレータ基材に、本発明のバインダー、バインダーの水分散体または樹脂組成物から形成された保護層を備えたものを指す。通常は、セパレータ基材の片面または両面に上記保護層が設けられた形態であるが、セパレータ基材が多孔質である場合、樹脂組成物等はセパレータ基材に含侵することもあり得るため、セパレータ基材中に保護層が形成された形態であっても良い。保護層は、通常、セパレータ基材上に樹脂組成物等を塗布した後、乾燥させることで形成することができる。
<セパレータ基材>
セパレータに用いられる基材としては、特に限定されないが、有機セパレータ用基材などの既知の基材が挙げられる。有機セパレータ基材は、多孔質構造を有する有機材料である。有機セパレータ用基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む多孔質膜、または不織布などが挙げられる。これらの基材の中でも、安全性に優れ、電気特性にも優れる点から、ポリエチレン基材を用いることが好ましい。
セパレータ基材の厚さは、特に制限はないが、好ましくは5~30μmの範囲であり、より好ましくは5~10μmの範囲である。基材の厚さが上記の範囲であることにより、電池の安全性が充分に確保される一方、良好なイオン電導性が維持されるため、蓄電デバイスがより優れた電気特性を発現できる。
<保護層>
上記保護層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは1~5μmの範囲であり、更に好ましくは1.5~3.5μmの範囲である。保護層の厚みが上記の範囲であることにより、セパレータの各種物性に優れ、蓄電デバイスの電気特性も良好となるために好ましい。
<セパレータの製造方法>
基材上に保護層を形成する方法としては、上記樹脂組成物等を基材上に塗布した後、次いで乾燥する方法や、離型基材上に樹脂組成物等を塗布し、乾燥して保護層を製造した後に基材の表面に転写する方法等が挙げられるが、均質な保護層が精度よく形成できる点から、樹脂組成物等を基材上に塗布した後、次いで乾燥する方法であることが好ましい。樹脂組成物等を基材上に塗布する方法としては、特に制限は無く、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り、バー引きなどの方法が挙げられる。
≪蓄電デバイス≫
本発明の蓄電デバイスは、一対の電極間に少なくとも一層の上記保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスを指す。蓄電デバイスとしては、電池、キャパシタ、コンデンサ等が挙げられるが、本発明の蓄電デバイスは、電池の一態様である二次電池、中でも非水二次電池として好適に用いられる。本発明の蓄電デバイスを非水二次電池として用いる場合、非水二次電池の一態様として、電極として正極および負極、上記セパレータならびに電解液を備え、必要に応じて電極用結着剤、集電体等を備えていても良い。正極、負極、電解液、電極用結着剤、集電体等は、従来公知のものを用いることができる。本発明の蓄電デバイスは、保護層を備えたセパレータが優れた性能を有することから、優れた電気特性(例えばサイクル特性)を発現する。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。また、表中の数値は、単位の記載がない場合には、固形分の質量部を表し、空欄は使用していないことを表す。なお、無機フィラーおよびバインダー粒子の平均粒子径および樹脂のガラス転移温度(Tg)、酸価の測定方法は以下の通りである。
<バインダー粒子の平均粒子径>
バインダー水分散体中でのバインダー粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定法を使用したD50平均粒子径である。測定は、バインダー水分散体を水で500倍に希釈した希釈液を作製し、該希釈液約5mLを使用してNanotrac Wave II EX150(マイクロトラック・ベル社製)により測定した。
<無機フィラーの平均粒子径>
走査型電子顕微鏡(日本電子製「JSM-7800F」)を用いて、拡大倍率15000倍で観察した無機フィラー粒子の画像を、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製「Winroof」)に導入して球状構造の抽出を行い、各粒子の円相当径の平均値として測定して算出した。
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計TAインスツルメント社製)を使用して測定した。具体的には、サンプルとなるバインダー溶液約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られる吸熱ピークをTgとした。
<酸価>
酸価は、JIS K2501に準拠して、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定を行い算出した。滴定には平沼産業社製:自動滴定装置COM-1600を用いた。
<logKowの算出方法>
単量体(a)およびアルコキシモノシラン化合物(b)の完全加水分解物のlogKow値は、ハンセン溶解度パラメータソフトHSPiP(ver.5.2.05)のYMB法(物性推算機能)により、上記化合物の構造式をSmiles記法に変換して入力することで算出した。
<バインダーの製造>
<実施例1>
単量体(a1)としてメタクリル酸1.0部、単量体(a2)としてアクリルアミド1.0部、単量体(a3)として、スチレン5.0部、メチルメタクリレート23.0部、2-エチルヘキシルアクリレート20.0部、ブチルアクリレート50.0部からなるエチレン性不飽和単量体の混合物100部に、水34.0部、アニオン性界面活性剤として20%エレミノールCLS-20水溶液(三洋化成工業社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム)4.8部(有効成分の含有量は0.96部)、アルコキシモノシラン化合物(b)としてオクチルトリエトキシシラン3.0部を添加した後、攪拌して滴下槽用の乳化液を調製した。
別途、還流冷却器、撹拌機、温度計、窒素導入管、および原料投入口を具備する容積2Lの4つ口フラスコを反応容器として準備し、水95部、アニオン性界面活性剤として20%ハイテノールNF-08水溶液(第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)1.2部(有効成分の含有量は0.24部)、上記で調製した乳化液7.0部を仕込んで、窒素置換しながら撹拌し、内温が75℃になるまで昇温した。昇温後、3.5%過硫酸カリウム水溶液7.5部を添加して内温を80℃に維持しながら乳化液の残りを3時間かけて滴下した。滴下完了後、更に80℃で4時間、内温を維持して反応を完了させた。反応後、内温が40℃未満になるまで冷却し、重合体のカルボキシ基に対して100%中和になるように25%アンモニア水を添加、更に水を添加してバインダーの固形分濃度が40.0質量%になるように調製し、バインダーの水分散体を得た。
<実施例2~25、比較例1~5>
表1~3に示す組成、および配合量(質量部)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂合成を行うことで、バインダーの水分散体を得た。尚、実施例16、17では反応容器に仕込む20%ハイテノールNF-08水溶液を1.2部から2.4部へ、実施例21、22では反応容器に仕込む20%ハイテノールNF-08水溶液を1.2部から0.2部へ、滴下槽に仕込む20%エレミノールCLS-20水溶液を4.8部から2.8部へ、それぞれ変更した。
Figure 2023156097000001
Figure 2023156097000002
Figure 2023156097000003
<実施例26>
<樹脂組成物の製造>
無機フィラーとして平均粒子径0.5μmのアルミナ粒子50.0部、分散剤としてBYK-154(ビックケミー・ジャパン社製、アクリル系共重合物のアンモニウム塩)0.5部および水42.7部をビーズミルに投入してアルミナの分散液を調製した。得られたアルミナ分散液に、実施例1で製造したバインダー水分散体を固形分相当で1.0部、増粘剤としてCMCダイセル1220(ダイセルミライズ社製、4%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液)0.6部、濡れ剤としてBYK-349(ビックケミー・ジャパン社製、ポリエーテル変性シロキサン)0.2部、消泡剤としてBYK-018(ビックケミー・ジャパン社製、破泡性ポリシロキサンと疎水性粒子の混合物)0.2部、イソプロピルアルコール1.0部を添加し、更に水を固形分濃度43%になるように加えた後、これらを混合して樹脂組成物を製造した。
<セパレータの製造>
セパレータ基材(膜厚8μm、多孔質ポリエチレンフィルム)の片面に、ドクターブレードを用いて上記樹脂組成物を塗工して、乾燥後の厚みが3μmになるように保護層を形成した。その後80℃のオーブンで5分間乾燥し、セパレータ基材の片面に保護層を備えたセパレータを製造した。
<電池の製造>
・正極の製造
正極活物質としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2293部、導電剤としてアセチレンブラック(デンカブラックHS100 デンカ株式会社製)4部、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(クレハKFポリマー W#1300 株式会社社クレハ・バッテリー・マテイラルズ・ジャパン社製)3部、N-メチルピロリドン45部を混合し、正極用合材インキを作製した。得られた正極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の目付け量が20mg/cm2となるようにドクターブレードを用いて塗布した後、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が3.1g/cm3である正極を製造した。
・負極の製造
負極活物質として人造黒鉛(CGB-20、日本黒鉛工業製)98部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(MAC500LC 日本製紙社製)1.5%水溶液66.7部(固形分として1部)をプラネタリーミキサーに入れて混練し、水33部、スチレンブタジエンエマルジョン(TRD2001、JSR社製)48%水系分散液2.08部(固形分として1部)を混合して、負極用合剤インキを作製した。得られた負極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上に、乾燥後の目付け量が12mg/cm2となるようにドクターブレードを用いて塗布した後、80℃で加熱乾燥した。さらにロールプレスによる圧延処理を行い、合材層の密度が1.5g/cm3である負極を製造した。
・電池の製造
正極と負極を各々45mm×40mm、50mm×45mmの大きさに切断した。上記セパレータを介して各々切断された正極と負極を対向させてアルミニウム製ラミネート袋に挿入し、袋内を真空乾燥させた。次いで、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比2:3の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた溶液)を袋内に注入した後、袋を封口して蓄電デバイスの一態様であるラミネート型非水二次電池を製造した。
<実施例27~50、比較例6~10>
実施例1で製造したバインダー水分散体を、表4~5に示すバインダー水分散体に変更した以外は、実施例26と同様にして、樹脂組成物、セパレータ、正極および負極を作製し、非水二次電池をそれぞれ製造した。更に後述する経時促進後の保護層形成用樹脂組成物ついても同様に保護層を備えたセパレータ、正極および負極を作製し、非水二次電池を作製した。
≪樹脂組成物の評価≫
<安定性試験>
実施例26で得られた製造直後の樹脂組成物(この樹脂組成物を「促進前の樹脂組成物」とする)をガラス製容器に入れ、密栓して暗所にて60℃3ヶ月間保管した(この樹脂組成物を「促進後の樹脂組成物」とする)。その後、容器内の温度を25℃にしてから容器を振とうして容器内の樹脂組成物の状態を観察した。保管前後の樹脂組成物について、水で500倍に希釈し、た試料をレーザー回折・散乱型粒度分布計(マイクロトラック・ベル社製、粒子径分布測定装置MT3000)でそれぞれ測定した。得られた平均粒子径の値から下記の式に基づいて平均粒子径の変化率を算出した。平均粒子径の変化率が小さい程、分散状態が保たれており経時安定性に優れると判断した。

平均粒子径の変化率(%)=[(保管前の平均粒子径)-(保管後の平均粒子径)/(保管前の平均粒子径)]×100

[評価基準]
S:平均粒子径の変化率が±5%以内である。(極めて良好)
A:平均粒子径の変化率が-10%以上-5%未満または5%を超え10%以下である。(良好)
B:平均粒子径の変化率が-15%以上-10%未満または10%を超え15%以下である。(使用可)
C:平均粒子径の変化率が-15%未満もしくは15%を超えるまたは樹脂組成物に凝集物が生成しており再分散しない。(不良)
≪セパレータの評価≫
<柔軟性>
促進前の樹脂組成物を用いて上記方法によってセパレータを製造し、幅10mm×縦50mmの大きさに切断し、試料とした。該試料を直径1.2mmφの金属製棒に巻き付けて1時間その状態を保った。1時間後、金属製棒からセパレータを外して保護層(幅10mm×縦50mm部分)の表面状態を目視で観察し、下記の評価基準に基づいて柔軟性を評価した。促進後の樹脂組成物についても同様にセパレータを製造して柔軟性を評価した。ひび割れの発生した面積が少ない程、柔軟性に優れる。

[評価基準]
S:保護層全体で変化が観察されなかった。(極めて良好)
A:保護層全体を基準として面積の1%未満でひび割れが認められた。(良好)
B:保護層全体を基準として面積の1%以上5%未満でひび割れが認められた。(使用可)
C:保護層全体を基準として面積の5%以上でひび割れが認められた。(不良)
<密着性>
促進前の樹脂組成物を用いて上記方法によってセパレータを製造し、幅25mm×長さ100mmに切断し、セパレータのセパレータ基材側の面とステンレス板とを両面接着テープで貼り合わせた。保護層側の面に幅18mmのセロハンテープを貼りつけて1kgの荷重でロール圧着した。温度25℃湿度50%の環境下で24時間静置後、セロハンテープの一端を180°方向に引っ張り、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-X」)にて剥離強度を測定した(剥離速度:10mm/分、単位:N/18mm幅)。促進後の樹脂組成物についても同様にセパレータを製造して密着性を評価した。剥離強度が大きい程、密着性に優れる。

[評価基準]
S:剥離強度が2.0N/18mm以上である。(極めて良好)
A:剥離強度が1.5N/18mm以上、2.0N/18mm未満である。(良好)
B:剥離強度が1.0N/18mm以上、1.5N/18mm未満である。(使用可)
C:剥離強度が1.0N/18mm未満である。(不良)
<電解液耐性>
促進前の樹脂組成物を用いて上記方法によってセパレータを製造した。得られたセパレータをエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=2:3(体積比)の混合溶媒に50℃で72時間浸漬した。浸漬後、セパレータをメタノールで洗浄し、更に25℃で減圧乾燥させた。乾燥後のセパレータを幅25mm×長さ100mmに切断し、上記の密着性評価と同様の手順でセパレータの剥離強度を測定した。浸漬前後の剥離強度の結果から下記の式に基づいて剥離強度の変化率を算出した。促進後の樹脂組成物についても同様にセパレータを製造して電解液耐性を評価した。剥離強度の変化率が小さい程、電解液耐性に優れる。

剥離強度の変化率(%)=[(浸漬前の剥離強度)-(浸漬後の剥離強度)/(浸漬前の剥離強度)]×100

[評価基準]
S:剥離強度の変化率が1%未満。(極めて良好)
A:剥離強度の変化率が1%以上3%未満。(良好)
B:剥離強度の変化率が3%以上5%未満。(使用可)
C:剥離強度の収縮率が5%未満。(不良)
<耐熱性>
促進前の樹脂組成物を用いて上記方法によってセパレータを製造した。セパレータをMD(流れ方向)100mm×TD(垂直方向)100mmに切り出して試料とした。試料を3枚の紙に挟み、140℃のオーブン中に2時間静置した。オーブンから試料を取り出して25℃になるまで冷却した後に、収縮率を以下の式に基づいて算出した。促進後の樹脂組成物についても同様にセパレータを製造して耐熱性を評価した。収縮率が小さい程、耐熱性に優れる。

試料面積(mm2)=(試料のMD長)×(試料のTD長)
収縮率(%)=[1-(加熱後の試料面積)/(加熱前の試料面積)]×100

[評価基準]
S:収縮率が5%未満。(極めて良好)
A:収縮率が5%以上10%未満。(良好)
B:収縮率が10%以上15%未満。(使用可)
C:収縮率が15%以上。(不良)
≪非水二次電池の評価≫
<サイクル特性>
促進前の樹脂組成物を用いて上記方法によってラミネート型非水二次電池を製造した。製造した電池を充放電試験ができるように接続して50℃恒温槽中に沈めた。充電電流60mAにて充電終止電圧が4.2Vとなるまで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.6mA)を行った後、放電電流60mAにて放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、初回放電容量を求めた。この充放電の操作を1サイクルとし、1200サイクル行い、放電容量維持率(初回放電容量に対する1200サイクル目の放電容量の割合)を算出した。促進後の樹脂組成物についても同様に電池を製造してサイクル特性を評価した。放電容量維持率が高いほどサイクル特性が良好であるといえる。

[評価基準]
S:放電容量維持率が95%以上。(極めて良好)
A:放電容量維持率が90%以上95%未満。(良好)
B:放電容量維持率が85%以上90%未満。(使用可)
C:放電容量維持率が85%未満。(不良)
Figure 2023156097000004
Figure 2023156097000005
表4、5に示すように、本発明のバインダーを含む樹脂組成物は、保存安定性に優れており、その樹脂組成物から形成された保護層を備えたセパレータは、柔軟性、密着性、電解液耐性、耐熱性に大変優れることが明らかとなった。更に本発明の蓄電デバイスは、サイクル特性が良好であることが明らかとなった。

Claims (9)

  1. 一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスであって、前記保護層は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する蓄電デバイス。
  2. 前記シラン化合物が、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するアルコキシモノシラン化合物(b)の縮合体(B)を含む請求項1記載の蓄電デバイス。
  3. 前記アルコキシモノシラン化合物(b)は、その完全加水分解物の25℃におけるオクタノール/水分配係数(logKow)が、-1.5~6である請求項2記載の蓄電デバイス。
  4. 前記エチレン性不飽和単量体(a)が、酸性基を有する単量体(a1)およびアミド基を有する単量体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む請求項1または2記載の蓄電デバイス。
  5. 前記保護層が、さらに無機フィラーを含む請求項1または2記載の蓄電デバイス。
  6. 一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの前記保護層を形成するためのバインダーであって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するバインダー。
  7. 一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの前記保護層を形成するためのバインダーの水分散体であって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物と、水性媒体とを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有するバインダーの水分散体。
  8. 一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスの前記保護層を形成するための樹脂組成物であって、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物と、無機フィラーとを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する樹脂組成物。
  9. 一対の電極間に少なくとも一層の保護層を備えたセパレータ基材を有する蓄電デバイスのセパレータであって、前記セパレータは、セパレータ基材と少なくとも一層の保護層とを有し、前記保護層は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体(A)と、シラン化合物とを含み、前記シラン化合物は、エチレン性不飽和基を有さず、炭素数3~12のアルキル基を有する保護層を備えたセパレータ。
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