しかしながら、仮止めした取付具50を所要の高さ位置まで移動させるには、ハンマー等によって当該取付具50を叩き上げることによって行っていたため、移動作業に多大な労力を要し、また所要の高さ位置まで正確に移動させることも困難を伴っていた。また、ハンマー等を用いた取付具50の移動作業中に、取付具50の変形又は破損が発生するため、取付具50の寿命が短い。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、仮止めした取付具の高さ位置を容易また正確に移動させることができ、また、取付具の寿命を相対的に長くすることができる養生ネット取付補助具を提供する。
(1)本発明に係る養生ネット取付補助具は、建築物から離隔した位置に立設される第1支柱と、それより建築物側に立設される第2支柱との間に布材を架設してなる足場にあって、前記第1支柱の布材より下方の高さ位置に仮止めされ、養生ネットが係止される取付具を、仮止めされた高さ位置より上方へ移動させて、養生ネットの足場への取り付けを補助する養生ネット取付補助具であって、前記布材に外嵌させる第1フック部と、前記第1支柱に外嵌させる第2フック部と、二重筒状の本体とを備え、前記第1フック部は前記本体の内筒に連結してあり、前記第2フック部は前記本体の外筒に連結してあり、前記本体は、当該本体の中心軸上における前記外筒と内筒との相対位置を調整可能に構成してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、建築物から離隔した位置に立設される第1支柱と、それより建築物側に立設される第2支柱との間に布材を架設してなる足場にあって、第1支柱の布材より下方の高さ位置に仮止めされ、養生ネットが係止される取付具を、仮止めされた高さ位置より上方へ移動させて、養生ネットの足場への取り付けを補助するように構成してある。
すなわち、布材に外嵌させる第1フック部と、第1支柱に外嵌させる第2フック部と、外筒内に内筒を挿通してなる二重筒状の本体とを備え、第1フック部は本体の内筒に連結してあり、第2フック部は本体の外筒に連結してある。本体は、当該本体の中心軸上における前記外筒と内筒との相対位置を調整可能に構成してあり、本体の中心軸上における外筒と内筒との相対位置を互いに離隔させると、第1フック部と第2フック部との間の距離が相対的に長くなり、本体の中心軸上における外筒と内筒との相対位置を互いに離隔させると、第1フック部と第2フック部との間の距離が相対的に短くなる。
かかる養生ネット取付補助具にあっては、本体をして、第1フック部と第2フック部との間の距離を適宜の長さ寸法に調整しておき、第1フック部を足場の布材に外嵌させる一方、第2フック部を第1支柱の取付具が仮止めされた高さ位置より下方の位置に外嵌させる。この状態で、本体をして、第1フック部と第2フック部との間の距離を縮小させると、第2フック部が取付具の底部に当接し、更に第1フック部と第2フック部との間の距離を縮小させると、第2フック部と共に取付具が第1支柱の上方へ移動する。そして、取付具を第1支柱の適宜高さ位置まで移動させたとき、本体をして、第1フック部と第2フック部との間の距離の縮小を停止させる。
このように、第1フック部を布材に外嵌させるとともに第2フック部を第1支柱の取付具の高さ位置より下方の位置に外嵌させた後、本体をして、第1フック部と第2フック部との間の距離を調整することによって、第1支柱に仮止めされた取付具を当該第1支柱の上方へ容易に、また所用の高さ位置へ正確に移動させることができる。そのため、移動作業に要する労力を可及的に低減することができる。一方、ハンマー等を用いることなく、取付具を移動させることができるため、取付具の変形又は破損を防止することができ、取付具の寿命を相対的に長くすることができる。
(2)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記外筒及び内筒の同じ側の一端にはそれぞれ底部が設けてあり、内筒内には、外筒と内筒との相対位置を調整するための調整用ボルトが、その一端部を外筒及び内筒の両底部を貫通する様態で挿通させてあり、内筒の底部には、前記調整用ボルトに外嵌させた筒状の調整用ナットが固定してあり、外筒の底部には、調整用ボルトを受ける環状の軸受けが固定してあり、調整用ボルトの外筒の底部から突出した一端部には、当該調整用ボルトを回転させるための頭部が設けてあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、外筒及び内筒の同じ側の一端にはそれぞれ底部が設けてあり、内筒内には、外筒と内筒との相対位置を調整するための調整用ボルトが、その一端部を外筒及び内筒の両底部を貫通する様態で挿通させてある。前述した内筒の底部には、調整用ボルトに外嵌させた筒状の調整用ナットが固定してあり、調整用ボルトは調整用ナットを貫通させてある。
また、外筒の底部には、調整用ボルトを受ける環状の軸受けが固定してあり、調整用ボルトは軸受けを貫通させてある。一方、調整用ボルトの外筒の底部から突出した一端部には、調整用ボルトを回転させるための頭部が設けてある。
そして、この頭部を例えば電動ドライバにて正逆回転させると、調整用ボルトが正逆回転するため、これに螺合した調整用ナットが調整用ボルトの長手方向へ進退移動し、これによって、調整用ナットが固定された内筒と、頭部に担持された外筒との相対位置が変動するので、第1フック部と第2フック部との間の距離を容易また正確に調整することができる。
また、このように比較的簡単な構成で、第1フック部と第2フック部との間の距離を調整することができるため、養生ネット取付補助具の製造コストを廉価にすることができる。
(3)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記第1フック部は、本体の中心軸と平行に配された棒状の支持部材で支持されており、支持部材と前記内筒とは連結部で連結してあり、該連結部は支持部材に外嵌させる環状部を有し、環状部に外嵌された支持部材と環状部とは支持部材の長手方向の適宜の位置で互いに固定可能に構成してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、第1フック部は、本体の中心軸と平行に配された棒状の支持部材で支持されており、支持部材と前記内筒とは連結部で連結してあり、該連結部は支持部材に外嵌させる環状部を有し、環状部に外嵌された支持部材と環状部とは支持部材の長手方向の適宜の位置で互いに固定可能に構成してある。
かかる構成では、環状部から第1フック部までの距離、即ち、第1フック部と第2フック部との間の距離を適宜調整することができる。これによって、布材と取付具との間の距離に応じて、第1フック部と第2フック部との間の距離を予め調整しておくことができるため、様々な足場に対応することができる。
(4)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記支持部材に外嵌された環状部を挟持固定するための一対の止部材が、前記支持部材に着脱可能に外嵌してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、支持部材に外嵌された環状部を挟持固定するための一対の止部材が、前記支持部材に着脱可能に外嵌してあるため、対をなす止部による環状部の挟持固定を解除させ、その状態で、環状部及び連結部を支持部材の長手方向の適宜位置に移動させた後、止部によって環状部を挟持固定することができる。従って、環状部から第1フック部までの距離を容易に調整することができる。
(5)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記支持部材はボルトで構成してあり、前記止部材は支持部材に螺合するナットで構成してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、支持部材はボルトで構成してあり、前記止部材は支持部材に螺合するナットで構成してあるため、比較的簡単な構成で第1フック部と第2フック部との間の距離を調整することができ、製造コストを廉価にすることができる。
(6)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記支持部材には当該支持部材を貫通する複数の貫通孔が、その長手方向へ適宜の距離を隔てて開設してあり、前記環状部の適宜位置には当該環状部を貫通する対をなす貫通孔が開設してあり、支持部材のいずれかの貫通孔と環状部の貫通孔との位置を合わせた状態でそれら貫通孔を挿通させて、支持部材と環状部とを互いに固定する第1固定ピンを具備することを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、支持部材には当該支持部材を貫通する複数の貫通孔が、その長手方向へ適宜の距離を隔てて開設してあり、前記環状部の適宜位置には当該環状部を貫通する対をなす貫通孔が開設してあり、支持部材のいずれかの貫通孔と環状部の貫通孔との位置を合わせた状態でそれら貫通孔を挿通させて、支持部材と環状部とを互いに固定する第1固定ピンを具備する。
かかる構成にあっては、第1固定ピンを抜いて、支持部材と環状部との固定を解除させ、その状態で、環状部に対して支持部材を、当該支持部材の長手方向の適宜位置に移動させた後、支持部材の適宜の貫通孔と環状部の貫通孔との位置を合わせ、第1固定ピンにてそれら貫通孔を挿通させることによって、支持部材と環状部とを互いに固定することができる。これによって、環状部から第1フック部までの距離を容易に調整することができる。
(7)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記支持部材及び環状部はいずれも、横断面視が正方形状に成形してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、支持部材及び環状部はいずれも、横断面視が正方形状に成形してあるため、第1フック部又は本体に、本体又は支持部材の中心軸と平行な軸回りに回動する外力が印加された場合であっても、当該外力に抗して第1フック部又は本体が回動することを回避することができる。これによって、本体に対する第1フック部の姿勢が当初のまま保持され、取付具の高さ調整作業を円滑に実施することができる。
(8)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記外筒の他端側の外周面には雄螺子部が設けてあり、前記第2フック部は支持アームにて支持されており、該支持アームは前記雄螺子部に外嵌螺合させた他の環状部にて支持されていることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、外筒の他端側の外周面には雄螺子部が設けてあり、前記第2フック部は支持アームにて支持されており、該支持アームは前記雄螺子部に外嵌螺合させた他の環状部にて支持されているため、支持アームを外筒回りに正逆回転させることによって、第2フック部と第1フック部との間の距離を容易に調整することができる。
(9)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記他の環状部には、支持アームの基端部を挿通させてこれを取り付けるための筒状の取付部が固着してあり、前記支持アームには当該支持アームを貫通する複数の貫通孔が、その長手方向へ適宜の距離を隔てて開設してあり、前記取付部の適宜位置には当該取付部を貫通する一又は複数対の貫通孔が開設してあり、支持アームのいずれかの貫通孔と取付部のいずれかの貫通孔との位置を合わせた状態でそれら貫通孔を挿通させて、支持アームと取付部とを互いに固定する第2固定ピンを具備することを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、他の環状部には、支持アームの基端部を挿通させてこれを取り付けるための筒状の取付部が固着してあり、前記支持アームには当該支持アームを貫通する複数の貫通孔が、その長手方向へ適宜の距離を隔てて開設してあり、前記取付部の適宜位置には当該取付部を貫通する一又は複数対の貫通孔が開設してあり、支持アームのいずれかの貫通孔と取付部のいずれかの貫通孔との位置を合わせた状態でそれら貫通孔を挿通させて、支持アームと取付部とを互いに固定する第2固定ピンを具備する。
かかる構成では、筒状の取付部内に支持アームの基端側を挿通させて、支持アームを取付部に取り付けあるため、本体から第2フック部までの距離を容易に調整することができる。これによって、様々な足場により対応することができる。
このとき、支持アームに開設された複数の貫通孔の内の適宜の貫通孔と、取付部に開設された適宜対の貫通孔との位置を合わせ、それら貫通孔に亘って第2固定ピンを挿通させることによって、支持アームを取付部に固定することができるため、かかる調整作業が容易であり、作業効率がより向上する。
(10)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記取付部は、そこに固定された支持アームの基端が前記頭部側の高さ位置に位置し、当該支持アームに支持された第2フック部が前記頭部から離隔する側の高さ位置に位置するように、前記本体の中心軸に直交する軸に対して傾斜させてあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、取付部は、そこに固定された支持アームの基端が前記頭部側の高さ位置に位置し、当該支持アームに支持された第2フック部が前記頭部から離隔する側の高さ位置に位置するように、前記本体の中心軸に直交する軸に対して傾斜させてある。つまり、取付具の高さ位置を調整する際、支持アームは、その基端部の高さ位置より第2フック部の高さ位置の方が高い姿勢に固定されている。
第1フック部を足場の布材に外嵌させる一方、第2フック部を第1支柱に外嵌させるとともに取付具に当接させ、この状態で、第1フック部と第2フック部との間の距離を縮小させると、第2フック部に連通する第2支持アームが取付られた取付部に、第1支柱から離隔する方向への力が印加されるため、第1支柱と平行であった本体が、本体の下端に向かうに連れて第1支柱との間の距離が増大する、所謂おじぎ姿勢になるが、前述した如く、取付部に取り付けられた第2支持アームは、その基端部の高さ位置より第2フック部の高さ位置の方が高い姿勢に固定されているため、本体のおじぎ姿勢が相殺されて、第2支持アーム及び第2フック部は、第1支柱に対して略直角の姿勢に保持される。これによって、第1支柱に仮止めされた取付具の高さ位置を円滑に調整することができる。
(11)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記頭部は、ドライバを連結させ得る形状に成形してあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、頭部は、ドライバを連結させ得る形状に成形してあるため、例えば電動ドライバを頭部に連結させ、当該電動ドライバにて頭部及び調整用ボルトを容易に正逆回転させることができる。
ここで、ドライバを連結させ得る形状としては、六角ボルトのようにその周面を多角形に成形した形状であってもよいし、十字穴、六角穴というようにその中央に適宜形状の穴を形成した形状であってもよいが、繰り返し使用の耐久性、作業性、及び入手容易性等の観点から六角ボルトの形状が好ましい。
(12)本発明に係る養生ネット取付補助具は、前記調整用ボルトの他端には、前記調整用ナットの内径より大きい外径の抜け止め部が設けてあることを特徴とする。
本発明の養生ネット取付補助具にあっては、調整用ボルトの他端には、前記調整用ナットの内径より大きい外径の抜け止め部が設けてあり、これによって、予め、第1フック部と第2フック部との間の距離を適宜の長さ寸法に伸長させる際に、調整用ボルトが調整用ナットから抜出することが防止されるため、安全性が高い。
本発明に係る養生ネット取付補助具を図面に基づいて詳述する。
なお、本実施の形態で説明する養生ネット取付補助具は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含むことはいうまでもない。
(発明を実施するための第1の形態)
図4は、建築工事で使用される足場及び養生ネットの一例を示す模式的斜視図であり、図中、100は足場である。
足場100は、相対的に建築物からより離隔した位置に配される管状の複数の第1支柱101,101,…と、建築物の近傍に配される管状の複数の第2支柱102,102,…とを、それぞれ同じ間隔で互いに対向するように立設してなり、対向する第1支柱101,101,…と第2支柱102,102,…との間は布材105,105,…にて連結してある。また、相隣る布材105,105、105,105,…,…の間には踏板材107,107,…を架設して、踏板材107,107,…上で作業者が作業をし得るようになしてある。一方、適宜の第1支柱101,101,…間、及び適宜の第2支柱102,102,…間には、筋交い104,104,…が架設してある。
各第1支柱101,101,…には養生ネットNを取り付けるべく、複数の対をなす取付具が着脱可能に、第1支柱101の高さ方向へ適宜の距離を隔てて取り付けてある。養生ネットNの上縁及び下縁にはそれぞれ、図示しない複数の鳩目が所定の間隔で設けてあり、各取付具には養生ネットNの鳩目を挿通させてこれを係止させる係止アームが設けてある。
図5は前述した取付具の斜視図である。
図5に示したように、取付具50は、内側を円弧状に成形してなるアングル形状の本体51の一端に、やはり内側を円弧状に成形してなり、本体51との間に第1支柱101(図4参照)を挟持するための挟持片52の一端を、ヒンジを介して開閉自在に連結して構成してある。
本体51の他端には、挟持片52を緊結するための緊結ボルト53の一端が、前記挟持片52の支持軸と平行をなす軸回りに回動自在に連結してあり、挟持片52の他端には緊結ボルト53を内嵌させるU字状の凹部52aが設けてある。そして、挟持片52を開けて本体51を第1支柱に外嵌させ、その状態で挟持片52を閉じて挟持片52及び本体51にて第1支柱を挟持させるとともに、緊結ボルト53の他端を挟持片52の凹部52aに内嵌させ、緊結ボルト53の前記凹部52aから突出した部分に螺合させたナット55を締め付けることによって、取付具50を第1支柱の適宜の高さ位置に固定する。
かかる取付具50の本体51であって、前述した挟持片52と対向する外側面には、養生ネットN(図4参照)を係止させるべく、横転L字状の2本の係止アーム56,56が突設してあり、養生ネットNに設けられた鳩目を係止アーム56に挿通させて、養生ネットNを係止アーム56に係止させるようになっている。
このような取付具50を用いて養生ネットNを足場100に取り付けるには、第1支柱101の下位側の適宜位置に取付具50を、その係止アーム56,56の先端が下方を向く姿勢で固定しておく一方、第1支柱101の上位側の適宜位置に他の取付具50を、その係止アーム56,56の先端が上方を向く姿勢で仮止めしておく。このとき、第1支柱101の上位側の取付具50は、所要の高さ位置より少し低い位置に仮止めしておく。
次に、第1支柱101の下位側に固定した取付具50の係止アーム56に、養生ネットNの下縁に設けられた鳩目を係止した後、第1支柱101の上位側に固定した取付具50の係止アーム56に、養生ネットNの上縁に設けられた鳩目を係止する。このとき、第1支柱101の上位側の取付具50は、所要の高さ位置より少し低い位置に仮止めしておくことによって、養生ネットNの鳩目を当該取付具50の係止アーム56に、容易に係止し得るようになしておく。
そして、第1支柱101の上位側の取付具50,50,…をそれぞれ所要の高さ位置まで移動させた後、ナット55を締め付けることによって、各取付具50,50,…を第1支柱101に固定するとともに、上下に対をなす取付具50,50、50,50、…,…の間に架設した養生ネットNを展張させるが、このとき後述する養生ネット取付補助具を用いる。
図1は、本発明に係る養生ネット取付補助具を示す斜視図であり、図中、30は2重筒状の本体である。また、図2は、図1に示した本体30の一部破断拡大側面図である。
図1及び図2に示したように、本体30は、有底円筒状の外筒32内に有底円筒状の内筒31を、両底部31a,32aが対向し、内筒31の一端部が外筒32の一端部から突出し得るように挿入してなり、外筒32は内筒31によって内筒31の中心軸と同軸上に進退自在に支持されている。
この内筒31の中心軸上には、内筒31と外筒32との長手方向の相対位置を調整する長尺の調整用ボルト33が挿通してある。また、内筒31の底部31a側の端部内には、筒状の長ナットを用いてなり、前記調整用ボルト33を螺合貫通させた調整用ナット36が固着してある。
前述した外筒32の底部32a側の端部には、ベアリングを用いてなる環状の軸受け37が内嵌固定してある一方、外筒32の底部32a中央には、調整用ボルト33の外径より僅かに大きい内径の貫通孔が開設してある。調整用ボルト33の前記調整用ナット36を貫通させた一端部は、軸受け37に内嵌され、該軸受け37にて回転自在に支持されている。更に、調整用ボルト33の軸受け37を貫通させた一端部は、外筒32の底部32aの貫通孔を貫通して外筒32の外方へ突出させてあり、当該端部には貫通孔の内径より大きい外径であり、電動ドライバといった適宜のドライバを連結させ得る形状に成形された頭部35が固着してある。これによって、外筒32の底部32a及び外筒32は当該頭部35及び調整用ボルト33にて担持される。なお、調整用ボルト33の他端部には、調整用ナット36の内径より大きい外径の筒状の抜け止め部34が外嵌固定してあり、調整用ボルト33の他端部が調整用ナット36から抜出することが防止されている。
ここで、頭部35の形状としては、六角ボルトのようにその周面を多角形に成形した形状であってもよいし、十字穴、六角穴というようにその中央に適宜形状の穴を形成した形状であってもよいが、繰り返し使用の耐久性、作業性、及び入手容易性等の観点から六角ボルトの形状が好ましい。
このように頭部35はドライバを連結させ得る形状に成形してあるため、例えば電動ドライバを頭部に連結させ、当該電動ドライバにて頭部及び調整用ボルトを容易に正逆回転させることができる。
かかる本体30から適宜長さ離隔させた位置には、棒状の支持部材14が本体30の中心軸と平行な姿勢で配置してあり、支持部材14は、当該支持部材14と内筒31の他端部との間に架設した連結部15を介して本体30に支持されている。連結部15の基端部は本体30の内筒31に固定してある一方、連結部15の先端部には、前記支持部材14に摺動可能に外嵌される環状部15aが設けてあり、環状部15aは支持部材14に移動可能に外嵌させた環状の止部16,16によって、支持部材14の長手方向の適宜位置に固定されている。
この支持部材14の先端近傍には第1フック部10が、当該第1フック部10の曲成中心軸が支持部材14と直交する姿勢で固定してあり、第1フック部10は前述した布材105(図4参照)に係合させるようになっている。
一方、養生ネット取付補助具1は、第1支柱101に外嵌させて、そこに仮止めされた取付具50(いずれも図4参照)に当接させる第2フック部20を具備しており、第2フック部20は、本体30を構成する外筒32に外嵌螺合させた支持アーム25によって、当該第2フック部20の曲成中心軸が外筒32の中心軸と平行な姿勢で支持されている。
前記外筒32の開口端部の外周面には、螺子山を螺設してなる雄螺子部32aが設けてあり、支持アーム25の基端部に設けた環状部(他の環状部)25aの内周面には図示しない雌螺子部が設けてある。そして、環状部25aを雄螺子部32aに外嵌螺合させて、支持アーム25は外筒32に、その長手方向へ移動可能に支持されている。
このような構成の養生ネット取付補助具1にあっては、外筒32の底部32aから突出した頭部35に、電動ドライバといったドライバを連結させ、当該ドライバにて頭部35を逆動させると、本体30の外筒32が内筒31から離隔する方向へ前進するため、第1フック部10と第2フック部20との間の距離が拡大する。一方、ドライバにて前記頭部35を正動させると、本体30の外筒32が内筒31側へ後退するため、第1フック部10と第2フック部20との間の距離が縮小する。
養生ネット取付補助具1は後述する如く、かかる動作並びに第1フック部10及び第2フック部20によって、第1支柱101に仮止めされた取付具50を、第1支柱101の適宜の高さ位置へ上昇させることができる。
なお、図1に示した養生ネット取付補助具1にあっては、支持部材14として長ボルトを適用し、止部16,16として前記支持部材14に螺合させたナットを適用し、支持部材14に外嵌させた環状部15aを止部16,16にて挟持固定する場合について示してあるが、本発明はこれに限らず、例えば、支持部材14として棒材を適用し、一方、止部16,16として、支持部材14に外嵌させる環状部材、及び、該環状部材を貫通するネジ孔に螺合させてあり、支持部材に当接して環状部材を固定する固定ネジ部材を適用することができることは言うまでもない。
一方、支持部材14を長ボルトで構成し、また、止部16,16を支持部材14に螺合するナットで構成した場合、支持部材14に外嵌された環状部15aを挟持固定し、また支持部材14に着脱可能に外嵌する構成を、可及的に簡単な構成で実現することができ、従って製造コストをより廉価にすることができるため好適である。
また、本形態に係る養生ネット取付補助具1にあっては、第1フック部10を支持する支持部材14は、当該支持部材14と内筒31の他端部との間に架設した連結部15を介して本体30に支持させ、また、連結部15の環状部15aを支持部材14に外嵌させて、支持部材14の長手方向における環状部15aの位置を変更可能にした構成について示したが、本発明はこれに限らず、例えば、その一端を内筒31に固定したL字状のアーム部材の他端に第1フック部10を固着させる、というように支持部材と連結部とを一体的に構成してもよい。
一方、第1フック部10を支持する支持部材14は、当該支持部材14と内筒31の他端部との間に架設した連結部15を介して本体30に支持させ、また、連結部15の環状部15aを支持部材14に外嵌させて、支持部材14の長手方向における環状部15aの位置を変更可能に構成した場合、第1フック部10を支持部材14の長手方向の適宜位置に固定することができるため、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を調整することができる。これによって、布材105と取付具50との間の距離に応じて、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を予め調整しておくことができるため、様々な足場に対応することができる。
更に、前述したように第2フック部20を支持する支持アーム25は、その基端部に設けた環状部25aを外筒32の雄螺子部32aに外嵌螺合させてあり、これによって、支持アーム25は外筒32に、その長手方向へ移動可能に支持されているため、支持アーム25を外筒32回りに正逆回転させることによって、第2フック部20と第1フック部10との間の距離を容易に調整することができる。
図3は、図1に示した養生ネット取付補助具1の使用様態を示す模式的側面図であり、本図を用いて養生ネット取付補助具が、第1支柱に仮止めされた取付具を適宜の高さ位置へ上昇させる動作について説明する。なお、図3中、図1に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
図3に示したように、足場100は第1支柱101と第2支柱102とを所定距離を隔てて対向配置してなり、第1支柱101の上端近傍位置と第2支柱102の上端近傍の位置との間に円筒状の布材105が架設してある。また、第1支柱101の上端から下方へ少し距離を隔てた位置に、前述した取付具50が仮止めしてあり、この取付具50の係止アームに、図示しない養生ネットの上縁に設けられた鳩目が係止される。
取付具50への養生ネットの係止作業が終了した後、養生ネット取付補助具1の第1フック部10を布材105に外嵌させる一方、第2フック部20を第1支柱101に外嵌させる。なお、養生ネット取付補助具1を足場100に配設するに当たって、養生ネット取付補助具1の本体30に設けられた頭部35を電動ドライバ等を用いて逆動させて、本体30の外筒32を降下させることによって、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を拡大させ、第1フック部10を布材105に外嵌させた状態で、第2フック部20が取付具50より下方に位置するようにしておく。
このとき、図2に示した如く、その一端に頭部35が設けられた調整用ボルト33の他端には、調整用ナット36の内径より大きい外径の抜け止め部34が設けてあるため、調整用ボルト33が調整用ナット36から抜出することが防止され、安全性が高い。
この状態で、電動ドライバといったドライバを前記頭部35に連結させ、当該ドライバにて頭部35を正動させて、本体30の外筒32を上昇させることによって、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を縮小させ、図3に示した如く、第2フック部20を取付具50の底部に当接させる。更に、ドライバにて頭部35を正動させて、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を縮小させると、第2フック部20が当接した取付具50が第1支柱101の上方へ移動する。
第1支柱101の所要高さ位置には図示しない目印が予め表記されており、取付具50が目印の位置に達するまで頭部35を正動させ、取付具50が目印の位置に達したときに、頭部35の回動を停止させる。そして、仮止めされた取付具50を本止めする。これによって、取付具50に係止された養生ネットが展張される。
その後、頭部35を再び逆動させて、取付具50から第2フック部20を離隔させ、その状態で、第1支柱101から第2フック部20を取り外し、また布材105から第1フック部10を取り外す。
このような養生ネット取付補助具1にあっては、電動ドライバといったドライバを用いて本体30の頭部35を正逆動させるだけで、第1支柱101に仮止めされた取付具50を所定の高さ位置まで容易に上昇させることができるため、第1支柱101における取付具50の移動作業に要する労力を大幅に低減させることができる。また、ハンマー等を用いることなく、取付具50を移動させることができるため、取付具50の変形又は破損を防止することができ、取付具50の寿命を相対的に長くすることができる。
(発明を実施するための第2の形態)
図6は、発明を実施するための第2の形態に係る養生ネット取付補助具を示す斜視図であり、第1フック部10の回動を防止し得、また、本体30から第2フック部20までの寸法を調整可能にしてある。なお、図中、図1に対応する部分には同じ番号を付して、その説明を省略する。
図6に示したように、第1フック部10は、少なくとも一端が塞止された角筒状の第2支持部材(支持部材)14bの前記一端近傍に固定されている。また、前述した連結部15の先端部には、適宜長さ寸法の矩形筒状になした第2環状部15bが設けてあり、この第2環状部15bに第2支持部材14bが挿通してある。
図7は、図6に示した第1フック部10及び第2支持部材14bの斜視図である。なお、図中、図1に対応する部分には同じ番号が付してある。
第2支持部材14bは横断面視が略正方形の環状になしており、第2支持部材14bの塞止された一端近傍に、短寸の帯板をU字状に成形してなる第1フック部10が、その一側外面を第2支持部材14bの一側面に対向する姿勢で固定されている。第2支持部材14bを構成する四側面にはそれぞれ、当該第2支持部材14bを貫通する複数対の貫通孔14h,14h,…、14h,14h,…が、第2支持部材14bの長手方向へ所定の距離を隔てて開設してあり、互いに対向する側面の対をなす貫通孔14h,14h,…、14h,14h,…に亘って第1固定ピン41(図6参照)を挿通させ得るようになっている。
図6に示したように、第2環状部15bの対向する両側面の略中央位置にはそれぞれ、当該第2環状部15bを貫通する第2貫通孔15h(15h)が開設してある。そして、第1フック部10の向きを決定した上で、前述した第2支持部材14bを第2環状部15b内に挿通させ、第2支持部材14bに開設された適宜対の貫通孔14h(14h)と、第2環状部15bに開設された対をなす貫通孔15h(15h)との位置を合わせ、それらの貫通孔14h(14h)及び貫通孔15h(15h)に亘って第1固定ピン41を挿通させることによって、第1フック部10の向き、及び第2環状部15bから第1フック部10までの距離を調整して、第2支持部材14bを第2環状部15bに固定してある。
一方、図6に示したように、外筒32の雄螺子部32aに外嵌螺合された環状部(他の環状部)25aには、短寸帯筒状の取付部26が、その中心軸が外筒32の中心軸と交差する姿勢で、また、その厚さ方向と直交する側面が環状部25aと対向するように固着してあり、該取付部26に、第2フック部20に連通する第2支持アーム(支持アーム)25bの基端側が挿通固定してある。
図8は、図6に示した第2フック部20及び第2支持アーム25bの斜視図である。なお、図中、図1に対応する部分には同じ番号が付してある。
図8に示したように、帯板状の第2支持アーム25bの先端側には、第2支持アーム25bと同じ幅寸法の第2フック部20が延設してあり、第2支持アーム25bの基端側には、当該第2支持アーム25bを貫通する複数(図8にあっては3つ)の貫通孔25h,25h,25hが適宜の間隔で開設してある。
図6に示したように、前述した取付部26の両側面にはそれぞれ、当該取付部26を貫通する一対又は複数対(図6にあっては2対)の貫通孔26h(26h),26h(26h)が開設してある。そして、前述した第2支持アーム25bの基端側を取付部26内に挿通させて、第2支持アーム25bに開設された適宜の貫通孔25hと、取付部26に開設された適宜対の貫通孔26h(26h)との位置を合わせ、それら貫通孔25h及び貫通孔26h(26h)に亘って第2固定ピン42を挿通させることによって、本体30から第2フック部20までの距離を調整して、第2支持アーム25bを取付部26に固定してある。
前述したように、取付部26の中心軸と外筒32の中心軸とは交差するように構成してあり、その交差角は、図6に示した場合において、外筒32の中心軸と直交する軸から時計回りに5°~25°範囲の適宜角度になしてある。これによって、取付部26に取り付けられた第2支持アーム25bは、その基端部の高さ位置より先端部の高さ位置、即ち第2フック部20の高さ位置の方が高い姿勢に固定される。
このような養生ネット取付補助具1aを用いて、足場100の第1支柱101に仮止めされた取付具50(いずれも図3参照)の高さ位置を調整するには、前同様、電動ドライバ等を用いて頭部35を正動又は逆動させて、第1フック部10を布材105に外嵌させた状態で、第2フック部20が取付具50より下方に位置するように調整しておき、養生ネット取付補助具1aの第1フック部10を布材105に外嵌させる一方、第2フック部20を第1支柱101に外嵌させる。
そして、電動ドライバといったドライバを頭部35に連結させ、当該ドライバにて頭部35を正動させて、本体30の外筒32を上昇させることによって、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を縮小させ、第2フック部20を取付具50の底部に当接させた後、更に、ドライバにて頭部35を正動させて、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を縮小させ、第2フック部20が当接した取付具50を第1支柱101の上方の所要位置まで移動させる。
このような養生ネット取付補助具1aにあっては、前述した種々の作用効果に加えて、本体30又は第1フック部10等に、第2支持部材14bの中心軸回りの外力又は本体30の中心軸回りの外力等が印加されると、本体30に対する第1フック部10の姿勢が変動しようとするが、前述したように横断面視が略正方形環状の第2支持部材14bを、横断面視が略正方形環状の第2環状部15b内に挿通させてあるため、前述したいずれの外力が印加された場合であっても、当該外力に確実に対抗することができ、本体30に対する第1フック部10の姿勢が当初のまま保持される。
本体30に対する第1フック部10の姿勢が変動すると、元の姿勢に戻す再調整を行わなければならないが、本養生ネット取付補助具1aにあっては、そのような姿勢変動を回避することができるため、再調整等が不要となり、作業効率が向上する。
また、本養生ネット取付補助具1aにあっては、第2支持部材14bに開設された適宜対の貫通孔14h(14h)と、第2環状部15bに開設された対をなす貫通孔15h(15h)との位置を合わせ、それらの貫通孔14h(14h)及び貫通孔15h(15h)に亘って第1固定ピン41を挿通させることによって、第2環状部15bから第1フック部10までの距離を調整することができるため、かかる調整作業が容易であり、作業効率がより向上する。
一方、本養生ネット取付補助具1aにあっては、短寸帯筒状の取付部26内に、帯板状の第2支持アーム25bの基端側を挿通させて、第2支持アーム25bを取付部26に取り付けあるため、本体30から第2フック部20までの距離を容易に調整することができる。これによって、様々な足場により対応することができる。
このとき、第2支持アーム25bに開設された適宜の貫通孔25hと、取付部26に開設された適宜対の貫通孔26h(26h)との位置を合わせ、それら貫通孔25h及び貫通孔26h(26h)に亘って第2固定ピン42を挿通させることによって、第2支持アーム25bを取付部26に固定することができるため、前同様、かかる調整作業が容易であり、作業効率がより向上する。
また、前述した如く養生ネット取付補助具1aの第1フック部10を布材105に外嵌させる一方、第2フック部20を第1支柱101に外嵌させるとともに取付具50(いずれも図3参照)に当接させ、この状態で、第1フック部10と第2フック部20との間の距離を縮小させると、第2フック部20に連通する第2支持アーム25bが取付られた取付部26に、第1支柱101から離隔する方向への力が印加されるため、第1支柱101と平行であった本体30が、本体30の下端に向かうに連れて第1支柱101との間の距離が増大する、所謂おじぎ姿勢になるが、前述した如く本養生ネット取付補助具1aにあっては、取付部26に取り付けられた第2支持アーム25bは、その基端部の高さ位置より第2フック部20の高さ位置の方が高い姿勢に固定されているため、本体30のおじぎ姿勢が相殺されて、第2支持アーム25b及び第2フック部20は、第1支柱101に対して略直角の姿勢に保持される。これによって、第1支柱101に仮止めされた取付具50の高さ位置を円滑に調整することができる。
なお、前述した養生ネット取付補助具1(図1参照)にあっても、環状部25aに固定された支持アーム25について、その基端部の高さ位置より第2フック部20の高さ位置の方が高い姿勢になすとよい。