JP4004644B2 - 角形鋼管柱の梁接合構造および接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、角形鋼管柱における高力ボルト等による梁接合構造および接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
角形鋼管柱にH形鋼などからなる鉄骨梁を接合する方法として、
(1) 梁端部に取付けたエンドプレートやスプリットティーなどの柱接合部材をワンサイドボルトで角形鋼管柱に接合するもの。
(2) 鉄骨梁の端部を直接に角形鋼管柱に溶接するもの。
(3) 梁との接合のためのボルト挿通孔を形成した角形鋼管柱の内面に、上記ボルト挿通孔に整合するねじ孔を形成したプレートを配置し、鉄骨梁の端部の柱接合部材のボルト挿通孔から角形鋼管柱のボルト挿通孔に通したボルトを上記プレートのねじ孔に螺着させることにより、梁を角形鋼管柱に接合するもの。
などが有る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(1)の梁接合方法では、高価なワンサイドボルトが多数必要であり、またワンサイドボルトで鉄骨梁を接合する角形鋼管柱の仕口部を強度確保のために増肉加工するなどの処理も必要になり、コストが高くつくという問題点が有る。
また、(2)の接合方法では、溶接個所の品質確保が容易でなく、角形鋼管柱に対して鉄骨梁を仮組みするのに高いコストがかかるという問題点が有る。
さらに、(3)の接合方法では、鋼管柱の裏面に配置するプレートにねじ孔の切りしろを確保し、所定の耐力を確保するために、十分なプレート厚が必要となり、寸法精度や位置精度を上げられないという問題点が有る。
【0004】
この発明は、このような課題を解消し、角形鋼管柱内にナットを精度良く容易に設置できて、低コストで簡単にかつ高精度に柱・梁の接合が行える角形鋼管柱の梁接合構造および接合方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の角形鋼管柱の梁接合構造は、複数のナットが取付けられたナット保持プレートを角形鋼管柱の内面に重ね、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにねじ込んだボルトにより、前記梁と角形鋼管柱とを接合する梁接合構造である。この梁接合構造において、前記角形鋼管柱には、プレート取付孔および位置決め孔を設け、前記ナット保持プレートには、被取付孔および位置決めガイド孔を設ける。この位置決めガイド孔は、角形鋼管柱の前記位置決め孔に挿通された位置決め治具が遊嵌可能でかつ角形鋼管柱長さ方向の一端が次第に窄まり、その窄まり端に前記位置決め治具が係合した状態で、角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とを整合させるものとする。ナット保持プレートは、前記プレート取付孔から被取付孔に挿入した軸状の締め付け具で前記角形鋼管柱に取付ける。
この構成の角形鋼管柱の梁接合構造によると、角形鋼管柱の内部にナット保持プレートを取付けるため、普通の高力ボルト等のボルトを用いて柱梁の接合が行える。そのため、ワンサイドボルトを用いる場合に比べて部品コストが節減できる。また、ボルト接合とするため、溶接の場合と異なり、仮組が不要で精度良く接合できる。ナット保持プレートは、角形鋼管柱の内部に挿入し、角形鋼管柱に設けられた位置決め孔からナット保持プレートの位置決めガイド孔に位置決め治具を挿入した状態で、さらに角形鋼管柱の内部に挿入することにより、位置決め治具と位置決めガイド孔の窄まり部とで案内されて角形鋼管柱の所定位置に配置される。このため、簡単に精度良くナット保持プレートの位置決めが行え、各ナットを精度良く位置決めできる。したがって、梁の接合に際してボルト接合が精度良く行える。また、ナット保持プレートは、梁の接合前に各ボルトを鋼管柱の所定位置に保持できるものであれば良く、梁の接合強度には影響しないため、板厚の薄いもので足りる。このため、角形鋼管柱の隣合う2面に梁の接合を行う場合にも、ナット保持プレートの厚みのために2面の角部のナットが互いに近づいて干渉し合うことがなく、ナット配置ができない範囲が少なくて済む。
【0006】
前記軸状の締め付け具はワンサイドボルトとしても良い。この明細書で、「ワンサイドボルト」とは、被締付け材の片面側からの操作で、被締付け材の他の片面側に頭部がボルト挿通孔に係合するように形成され、被締付け材を締め付けることができる軸状締め付け具のことであり、片側締め込みリベット、あるいはブラインドボルトと呼ばれるもの等を含む。この構成の場合、位置決めされたナット保持プレートの角形鋼管柱への取付け作業が、角形鋼管柱の外部からの作業だけで簡単に行える。このワンサイドボルトは、梁の接合強度に影響せず、ナット保持プレートを仮保持できるものであれば良いため、細いもので足りる。
ナット保持プレートの前記位置決めガイド孔は、角形鋼管柱の長手方向に離して複数設けても良い。この構成の場合、ナット保持プレートは角形鋼管柱の長手方向に離れた複数箇所で位置決めできるため、角形鋼管柱の長手方向の位置だけでなく、長手方向に対する傾きも規制でき、ナット保持プレートの位置決めをより高精度に行うことができる。
また、前記ナット保持プレートの一端に、角形鋼管柱の内側に曲げられた曲り片を設け、ナット保持プレートの引き込み用索材に設けられたフックに係合する引っ掛け孔を前記曲り片に設けても良い。この構成の場合、索材を用いてナット保持プレートを簡単に角形鋼管柱の内面の所定位置に移動させることができ、位置決め後には索材を引き戻すことで、索材のフックをナット保持プレートから簡単に外すことができる。また、ナット保持プレートに設けた曲り片があるため、ナット保持プレートの先端縁が角形鋼管柱の内面に引っ掛かることがなく、滑り易くなり、引き込みをより円滑に行うことができる。
さらに、前記ナット保持プレートに、位置決めガイド孔の窄まり部の縁部に沿って、窄まり端側へ次第に高くなる案内鍔を設け、この案内鍔は、位置決め治具の頭部に係合してナット保持プレートの角形鋼管柱内面からの浮き上がりを抑制するものとしても良い。この構成の場合、位置決めガイド孔の案内鍔に位置決め治具の頭部が係合した状態でナット保持プレートが角形鋼管柱内面に位置決めされるので、その位置決め状態においてナット保持プレートが浮き上がらず、軸状締め付け具の挿入による角形鋼管柱内面へのナット保持プレートの仮止めを容易に行うことができる。
【0007】
この発明の角形鋼管柱の梁接合方法は、以下の手順により角形鋼管柱に梁を接合するものである。先ず、ボルト挿通孔に整合してナットが取付けられかつ一端が窄まる形状の位置決めガイド孔および被取付孔を有するナット保持プレートを、角形鋼管柱の内部に挿入する。次に、角形鋼管柱に設けられた位置決め孔からナット保持プレートの位置決めガイド孔に位置決め治具を挿入し、この治具挿入後にさらにナット保持プレートを角形鋼管柱の内部に挿入する。これにより、前記位置決め治具と位置決めガイド孔の窄まり部とで案内してナット保持プレートを角形鋼管柱の内面の所定位置に配置する。この配置状態で互いに整合した角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とで軸状の締め付け具によりナット保持プレートを角形鋼管柱に止め付ける。次に、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにボルトをねじ込んで前記梁を前記角形鋼管柱に接合する。
この方法によれば、角形鋼管柱の内面に重ねたナット保持プレートを、位置決め治具と位置決めガイド孔の窄まり部とで案内して位置決めし、軸状の締め付け具でナット保持プレートを角形鋼管柱に仮止めするので、角形鋼管柱への梁接合を低コストで簡単かつ高精度に行うことができる。
【0008】
前記ナット保持プレートは、位置決めガイド孔の窄まり部の縁部に沿って、窄まり端側へ次第に高くなる案内鍔を有するものとし、ナット保持プレートの角形鋼管柱の内部への挿入に伴って、位置決め治具の頭部と前記案内鍔との係合によりナット保持プレートを角形鋼管柱の内面に押し付け、前記位置決め治具は、角形鋼管柱の位置決め孔内で回転可能で前記頭部が偏心した形状のものを用い、前記軸状の締め付け具によるナット保持プレートの取付後に、前記位置決め治具を回転させて前記位置決め孔から抜き出すようにしても良い。この構成の場合、位置決めガイド孔の案内鍔に位置決め治具の頭部が係合した状態でナット保持プレートが角形鋼管柱内面に位置決めされるので、その位置決め状態においてナット保持プレートが浮き上がらず、角形鋼管柱内面へのナット保持プレートの仮止めを容易に行うことができる。また、ナット保持プレートを軸状の締め付け具で角形鋼管柱内面に仮止めした後に、締め付け具を簡単に取り外すことができる。
この発明の角形鋼管柱の梁接合方法において、前記位置決め治具は、雄ねじ部を有する軸体の先端に起倒自在な頭部を有し、前記雄ねじ部にナットが螺合し、かつ前記頭部の起倒操作部材を有するものを用いても良い。この位置決め治具を用いた場合、ナット保持プレートと角形鋼管柱の管壁とを位置決め治具の頭部部材とナットとで挟み込んだ状態で、前記軸状の締め付け具によるナット保持プレートの角形鋼管柱への止め付けを行う。この方法の場合、ナット保持プレートに前記案内鍔を設けなくても、ナット保持プレートの止め付けのための軸状締め付け具の挿入時におけるナット保持プレートの浮き上がりが防止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この実施形態の角形鋼管柱の梁接合構造は、図6に示すように、複数のナット4が溶接により取付けられたナット保持プレート3を角形鋼管柱1の内面に重ね、梁端部の柱接合部材5および角形鋼管柱1に設けられたボルト挿通孔6,7から上記ナット4にねじ込んだボルト8により梁2を角形鋼管柱1に接合するものである。
【0010】
図1に示すように、角形鋼管柱1には、上記ボルト挿通孔7の他に、上記ナット保持プレート3を止め付けるためのプレート取付孔9、および後述する位置決め治具14の挿通が可能な位置決め孔10を設ける。ナット保持プレート3には、ナット4のねじ孔に整合するボルト挿通孔(図示せず)の他に、被取付孔11および位置決めガイド孔12を設ける。
【0011】
ナット保持プレート3の被取付孔11は、角形鋼管柱1の長手方向に対応するプレート両端部に近い位置に各々設ける。角形鋼管柱1のプレート取付孔9は、ナット保持プレート3を角形鋼管柱1の内面に位置決めした状態で、上記被取付孔11に整合するように設ける。ナット保持プレート3の位置決めガイド孔12は、角形鋼管柱1の長手方向に離して複数(ここでは2つ)設ける。また、このガイド孔12は、ナット保持プレートの幅方向中央位置に設ける。
【0012】
位置決めガイド孔12は、幅方向の両側へテーパ状に広がる拡幅部12aと、この拡幅部12aの窄まり端から角形鋼管柱1の長手方向に延びるとともに、その先端側が次第に窄まる窄まり部12bとからなり、その窄まり部12bの縁部に沿って、窄まり端側へ次第に高くなる案内鍔13を設ける。この位置決めガイド孔12には、角形鋼管柱1の位置決め孔10に挿通させる位置決め治具14(図3)が遊嵌可能である。位置決めガイド孔12における窄まり部12bの窄まり端に上記位置決め治具14が係合した状態で、角形鋼管柱1のプレート取付孔9とナット保持プレート3の被取付孔11、および角形鋼管柱1のボルト挿通孔7とナット保持プレート3のナット4とが整合するように、角形鋼管柱1側のプレート取付孔9、ボルト挿通孔7および位置決め孔10と、ナット保持プレート3側の被取付孔11、ナット4および位置決めガイド孔12の位置を決める。
【0013】
上記ナット保持プレート3の一端(位置決めガイド孔12の拡幅部12aが向く側の端部)には、角形鋼管柱1の内側に曲げられた曲り片15を設ける。この曲り片15の幅方向中間位置には、ナット保持プレート3の引き込み用索材16に設けられたフック17(図2)に係合する引っ掛け孔18を設ける。なお、ナット保持プレート3の軽量化が必要であれば、例えば図1に鎖線で示すように、切欠孔からなる切除部19を設けても良く、また後に図9(A)と共に説明するように分割型のプレートとしても良い。
【0014】
次に、図2を参照して、上記ナット保持プレート3を角形鋼管柱1の内面に止め付ける作業手順を説明する。
先ず、ナット保持プレート3の一端の曲り片15に設けた引っ掛け孔18に、引き込み用索材16に設けられたフック17を係合させた状態で、角形鋼管柱1の内部に引き込み用索材16を通して、この索材16を引くことにより、ナット保持プレート3を角形鋼管柱1内に引き込む(図2(A))。このとき、ナット保持プレート3の引き込み先端側に、角形鋼管柱1の内側に曲げられた曲り片15が設けられているため、角形鋼管柱1の内面に多少の凹凸があっても、ナット保持プレート3を円滑に引き込むことができる。
【0015】
ナット保持プレート3がプレート取付位置に近いところまで引き込まれた状態、すなわちナット保持プレート3における位置決めガイド孔12の拡幅部12aが角形鋼管柱1の位置決め孔10に重なる状態で、角形鋼管柱1の位置決め孔10に位置決め治具14を挿通し、位置決め治具14の先端部をナット保持プレート3における位置決めガイド孔12の拡幅部12aに遊嵌させる(図2(B))。このとき、位置決め治具14の回動位置は、図3に示すように、その頭部14cが軸心から位置決めガイド孔12の幅方向に向く姿勢となるようにする。
位置決め治具14は、図3および図4に示すように、角形鋼管柱1の位置決め孔10に回転可能に嵌合する円筒状の筒体14aと、この筒体14aに回転自在に貫通する軸部14bと、軸部14bの上端に設けられ軸部14bに対して偏心位置とした頭部14cと、軸部14bの下端に設けられたハンドル14dとを有する。筒体14aの下部には、筒体が角形鋼管柱1の位置決め孔10から角形鋼管柱1の内側に突入するのを阻止する規制鍔41aaを有する。
【0016】
図2(B)の状態から、引き込み用索材16によりナット保持プレート3をさらに引き込んで、位置決め治具14の軸部14bを位置決めガイド孔12における窄まり部12aの窄まり端に係合させる(図2(C))。このとき、ナット保持プレート3は、位置決め治具14と位置決めガイド孔12の窄まり部12bとで案内されるので、ナット保持プレート3の被取付孔11が角形鋼管柱1のプレート取付孔9に、またナット保持プレート3の各ナット4が角形鋼管柱1のボルト挿通孔7にそれぞれ精度よく整合する。しかも、位置決めガイド孔12は角形鋼管柱1の長手方向に離して2つ設けられ、各位置決めガイド孔12に対して、それぞれ位置決め治具14が係合するので、ナット保持プレート3の幅方向や回転方向の位置決めも行われる。さらに、図3に示すように、上記引き込み動作に伴い、位置決め治具14の頭部14cが、位置決めガイド孔12における窄まり部12bの縁部に沿って設けられた案内鍔13に係合するので、ナット保持プレート3が角形鋼管柱1の内面から浮き上がるのを抑制することができる。これにより、以後のナット保持プレート取付け作業を容易に行うことができる。
【0017】
この後、角形鋼管柱1のプレート取付孔9から、ナット保持プレート3の被取付孔11に軸状の締め付け具であるワンサイドボルト20を挿入して、ナット保持プレート3を角形鋼管柱1の内面に止め付ける(図2(D))。この場合のワンサイドボルト20は、単にナット保持プレート3を保持できるものであれぱ良いため、大きな締め付け力が不要で、細い安価なもので済む。
このため、ワンサイドボルト20は、例えば図5に示すような簡易な構成のもので済む。同図のワンサイドボルト20は、ピン21とこれに外嵌したスリーブ22とで構成され、工具23でピンテール21aを把持してスリーブ22を圧縮することにより、同図(B)のようにスリーブ22の先端に頭部22aが塑性変形で形成されるものである。この状態でスリーブ22の後端の大径部22bを縮径させてピン21の凹凸面部に止め付けることにより、被締め付け材(この例では角形鋼管柱1の管壁とナット保持プレート3)とが挟み付けられる。ピンテール21aは締め付け完了時に剪断され、除去される。このようにワンサイドボルト20を用いることにより、角形鋼管柱1の外側だけからの作業で容易にボルト接合が行える。
なお、ワンサイドボルト20は、同図のものの他に、各種の構成のものが使用できる。また、ワンサイドボルト20に代えて、他の軸状の締め付け具を用いても良い。
【0018】
ワンサイドボルト20によるナット保持プレート3の角形鋼管柱1への止め付けが終了すると、引き込み用索材16を引き込み方向と逆の方向に引いて、ナット保持プレート3における曲り片15の引っ掛け孔18から引き込み用索材16のフック17を外す。さらに、位置決め孔10から位置決めガイド孔12の窄まり部12bにわたって挿入されている位置決め治具14をこれらの孔から引き抜く。この引き抜き動作は、図3に示す状態から、図4に示すように、位置決め治具14の頭部14cが位置決めガイド孔12における窄まり部12bの案内鍔13から係合解除されるまで、位置決め治具14をそのハンドル14dで回動させることにより容易に引き抜くことができる。
【0019】
以上のように内面にナット保持プレート3を止め付けた角形鋼管柱1に対し、図6のように梁2の端部の柱接合部材5をボルト接合することにより、角形鋼管柱1に梁2を接合する。すなわち、柱接合部材5および角形鋼管柱1に設けたボルト挿通孔6,7から挿入したボルト8を、ナット保持プレート3のナット4にねじ込むことにより、角形鋼管柱1に梁2を接合する。ボルト8には、通常の高力ボルト等が使用できる。
図6において、梁2はH形鋼からなり、柱接合部材5はスプリットティからなる。上下の柱接合部材5は、先に梁2に取付けておき、この後に角形鋼管柱1にボルト接合する。柱接合部材5は、その横片5bを梁2の上下フランジ2a,2bに重ね、高力ボルト等のボルト25により梁2に締付け固定する。角形鋼管柱1には柱接合部材5の縦片5aをボルト締めする。
【0020】
なお、上記の説明では、説明を簡単にするために角形鋼管柱1の1つの内面にナット保持プレート3を止め付ける場合につき説明したが、角形鋼管柱1に接合する梁2の本数,方向に応じて、角形鋼管柱1の4つの内面のうち、2〜4面にナット保持プレート3を止め付けても良い。隣接する2つの内面にナット保持プレート3を止め付ける場合は、図7に示すように隣接するプレート側縁に近いナット4,4同志が近接することになる。しかし、ナット保持プレート3は柱・梁の接合強度に影響せず、板厚の薄いもので良いため、できるだけ薄いものを使用することで、直角に隣合うナット4,4同志の干渉が避けられる。
【0021】
なお、前記実施形態では柱接合部材5をエンドプレートとしたが、図8に示すように、梁2の端部の柱接合部材5をエンドプレートとしても良い。
また、前記実施形態ではナット保持プレート3に案内鍔13を設けたが、案内鍔13は必ずしも設けなくても良い。また、前記実施形態では専用の位置決め14を用いたが、シノ等の汎用の工具を位置決めガイド孔12に差し込む位置決め治具として使用しても良い。
【0022】
図9は、この発明の梁接合構造および接合方法で用いられるナット保持プレートの各種変形例を各々示す。図9(A)に示すナット保持プレート3Aは、2枚の分割プレート3a,3bを互いに離して設け、複数本の連結材41,42で両分割プレート3a,3bを連結したものとしてある。各分割プレート3a,3bは、複数のナット4を溶接し、位置決めガイド孔12および被取付孔11を設けたものである。連結材41,42は、棒状の部材であり、この例ではリボン状の板材を用いているが、鋼線であっても良い。連結材41,42の両端は、溶接またはピン等で分割プレート3a,3bに接合される。被取付孔11は、この例では、各分割プレート3a,3bにつき幅方向の2か所に設けてある。ナット保持プレート3Aのその他の構成は、図1と共に説明したナット保持プレート3と同じである。
この分割型のナット保持プレート3Aを用いた場合、ナット保持プレート3Aがさらに軽量化できる。また、両分割プレート3a,3bに、同じ構成のものを用いることで、生産性が向上する。その場合、曲り片15を有する分割プレート3aは、曲り片15を有しない分割プレート3bを準備しておき、その後に曲り片15を折曲形成する。
【0023】
図9(B)に示すナット保持プレート3Bは、図1のナット保持プレート3に、長手方向に沿うリブ43を設けたものである。リブ43は、複数本(例えば2本)平行に設けられる。リブ43は、ナット保持プレート3Bに溶接したものであっても良く、またナット保持プレート3Bが薄い場合は、2重の折り返し片として曲げ加工したものであっても良い。
このようにリブ43を設けることで、ナット保持プレート3Bの長手方向の剛性を高めることができ、これによりナット保持プレート3Bにより一層薄いプレートが使用できる。
【0024】
図9(C)に示すナット保持プレート3Cは、図1に示すナット保持プレート3において、曲げ片15を省略し、曲げ片15に代えて、ナット保持プレート3Cの鋼管接触面における長手方向の端部に面取部44を設けたものである。
このように面取部44を設けても、ナット保持プレート3Cの円滑な移動が行える。なお、このように面取部44を設けるのは、ナット保持プレートが一定以上の板厚を有するものである場合に効果的である。
【0025】
図10は、変形例にかかる位置決め治具51を用いた場合のナット保持プレート位置決め過程を示し、図11にその変形例の位置決め治具51を拡大して示す。この位置決め治具51は、軸体52の先端にこの治具の頭部となる頭部部材53を起倒自在に設け、かつ頭部部材53の起倒操作部材54を設けたものである。軸体52は、雄ねじ部52aを有し、ナット55が螺合している。
頭部部材53は、軸体52の先端付近に軸方向に沿って設けられた収容スリット56内に収容可能なものであり、頭部部材53の中央で両側に突出する支持ピン57が、軸体52に設けられたガイドスリット58に移動自在でかつ回転自在に係合している。ガイドスリット58は、軸体52に、収容スリット56から90°回転した位置に軸方向に沿って設けられている。頭部部材53は、一端部53aが円弧状に形成され、かつばね部材59により支持ピン57が軸体52の先端側へ付勢されている。この付勢により、頭部部材53は、自然状態では、収容スリット56の軸体先端側の端面に押し付けられ、図11(B)のように軸体52と直交して両端が軸体52から突出する姿勢を維持する。
起倒操作部材54は、頭部部材53をばね部材59の付勢力に抗して倒し、収容スリット56内に収める操作を行う部材である。起倒操作部材54は、この例ではワイヤロープ等の紐状体とし、軸体52に長手方向に沿って設けた溝からなる操作部材挿通路60内に挿通されている。起倒操作部材54の一端は頭部部材53に結合され、他端は軸体52の基端から突出して輪状の操作部54aとされている。
【0026】
図11の位置決め治具51を用いた場合における図1のナット保持プレート3の位置決め過程を図10と共に説明する。ナット保持プレート3を角形鋼管柱1内に概略位置まで挿入することは、図2と共に説明した方法と同じである。位置決め治具51は、起倒操作部材54を引くことにより頭部部材53を軸体52の収容スリット56内に倒れ状態に収めた状態で、角形鋼管柱1の位置決め孔10およびナット保持プレート3の位置決めガイド孔12にわたって挿入する。挿入後、起倒操作部材54を放すことで、頭部部材53は図11(B)のように両側に突出する。この状態で、ナット保持プレート3の移動を進めることで、図10(A),(B)に示すように、ナット保持プレート3が位置決め治具51に当たって位置決めされると、位置決め治具51のナット55を締め込み、位置決め治具51のナット55と頭部部材53との間でナット保持プレート3および角形鋼管柱1の管壁を挟み込む。これにより、ナット保持プレート3の浮き上がりが防止され、この浮き上がり防止状態で、ワンサイドボルト20(図2(D))等の軸状締め付け具の挿入が行える。なお、頭部部材53は、案内鍔13に係合することになるが、この構成の位置決め治具51を用いる場合は、案内鍔13は必ずしも設けなくてもよい。
ワンサイドボルト20等によるナット保持プレート3の取付けが終わると、位置決め治具51を取り外す。この取り外しは、ナット55を緩めることで、頭部部材53が倒れるため、そのまま引き抜くだけで行える。
【0027】
【発明の効果】
この発明の角形鋼管柱の梁接合構造および接合方法によると、角形鋼管柱内にナットを精度良く容易に設置できて、低コストで、簡単にかつ高精度に柱・梁の接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る角形鋼管柱の梁接合構造における角形鋼管柱とナット保持プレートとの分解斜視図である。
【図2】角形鋼管柱内面へのナット保持プレートの仮止め手順を示す説明図である。
【図3】(A),(B)は各々位置決めガイド孔への位置決め治具の係合状態を示す平面図および縦断面図である。
【図4】(A),(B)は各々位置決めガイド孔から位置決め治具を外す動作を示す平面図および縦断面図である。
【図5】角形鋼管柱内面へのナット保持プレートの仮止めに使用するワンサイドボルトの締結動作説明図である。
【図6】この実施形態に係る角形鋼管柱の梁接合構造を示す縦断面図である。
【図7】角形鋼管柱の隣接する内面間でのボルト、ナットの干渉の有無を示す説明図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る角形鋼管柱の梁接合構造を示す縦断面図である。
【図9】(A),(B)は各々ナット保持プレートの各変形例を各々示す斜視図、(C)はさらに他のナット保持プレートの変形例を示す部分側面図である。
【図10】(A),(B)は、各々変形例の位置決め治具を用いた場合の位置決め治具の係合状態を示す平面図および縦断面図である。
【図11】(A),(B)は各々位置決め治具の変形例の正面図および平面図である。
【符号の説明】
1…角形鋼管柱 11…位置決めガイド孔
2…梁 12b…窄まり部
3…ナット保持プレート 13…案内鍔
4…ナット 14…位置決め治具
5…柱接合部材 14c…頭部
6…柱接合部材のボルト挿通孔 15…曲り片
7…角形鋼管柱のボルト挿通孔 16…引き込み用索材
8…ボルト 17…フック
9…プレート取付孔 18…引っ掛け孔
10…位置決め孔 20…ワンサイドボルト
Claims (7)
- 複数のナットが取付けられたナット保持プレートを角形鋼管柱の内面に重ね、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにねじ込んだボルトにより、前記梁と角形鋼管柱とを接合する梁接合構造であって、前記角形鋼管柱に、プレート取付孔および位置決め孔を設け、前記ナット保持プレートに、被取付孔および位置決めガイド孔を設け、この位置決めガイド孔は、角形鋼管柱の前記位置決め孔に挿通された位置決め治具が遊嵌可能でかつ角形鋼管柱長さ方向の一端が次第に窄まり、その窄まり端に前記位置決め治具が係合した状態で、角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とを整合させるものとし、前記プレート取付孔から被取付孔に挿入した軸状の締め付け具で前記ナット保持プレートを前記角形鋼管柱に取付け、前記ナット保持プレートの一端に、角形鋼管柱の内側に曲げられた曲り片を設け、ナット保持プレートの引き込み用索材に設けられたフックに係合する引っ掛け孔を前記曲り片に設けた角形鋼管柱の梁接合構造。
- 複数のナットが取付けられたナット保持プレートを角形鋼管柱の内面に重ね、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにねじ込んだボルトにより、前記梁と角形鋼管柱とを接合する梁接合構造であって、前記角形鋼管柱に、プレート取付孔および位置決め孔を設け、前記ナット保持プレートに、被取付孔および位置決めガイド孔を設け、この位置決めガイド孔は、角形鋼管柱の前記位置決め孔に挿通された位置決め治具が遊嵌可能でかつ角形鋼管柱長さ方向の一端が次第に窄まり、その窄まり端に前記位置決め治具が係合した状態で、角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とを整合させるものとし、前記プレート取付孔から被取付孔に挿入した軸状の締め付け具で前記ナット保持プレートを前記角形鋼管柱に取付け、前記ナット保持プレートに、位置決めガイド孔の窄まり部の縁部に沿って、窄まり端側へ次第に高くなる案内鍔を設け、この案内鍔は、位置決め治具の頭部に係合してナット保持プレートの角形鋼管柱内面からの浮き上がりを抑制するものとした角形鋼管柱の梁接合構造。
- 前記ナット保持プレートの一端に、角形鋼管柱の内側に曲げられた曲り片を設け、ナット保持プレートの引き込み用索材に設けられたフックに係合する引っ掛け孔を前記曲り片に設けた請求項2記載の角形鋼管柱の梁接合構造。
- 前記軸状の締め付け具はワンサイドボルトである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の角形鋼管柱の梁接合構造。
- 前記ナット保持プレートの前記位置決めガイド孔は、角形鋼管柱の長手方向に離して複数設けた請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の角形鋼管柱の梁接合構造。
- ボルト挿通孔に整合してナットが取付けられかつ一端が窄まる形状の位置決めガイド孔および被取付孔を有するナット保持プレートを、角形鋼管柱の内部に挿入し、角形鋼管柱に設けられた位置決め孔からナット保持プレートの位置決めガイド孔に位置決め治具を挿入し、この治具挿入後にさらにナット保持プレートを角形鋼管柱の内部に挿入することにより、前記位置決め治具と位置決めガイド孔の窄まり部とで案内してナット保持プレートを角形鋼管柱の内面の所定位置に配置し、この配置状態で互いに整合した角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とで軸状の締め付け具によりナット保持プレートを角形鋼管柱に止め付け、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにボルトをねじ込んで前記梁を前記角形鋼管柱に接合し、前記ナット保持プレートは、位置決めガイド孔の窄まり部の縁部に沿って、窄まり端側へ次第に高くなる案内鍔を有するものとし、ナット保持プレートの角形鋼管柱の内部への挿入に伴って、位置決め治具の頭部と前記案内鍔との係合によりナット保持プレートを角形鋼管柱の内面に押し付け、前記位置決め治具は、角形鋼管柱の位置決め孔内で回転可能で前記頭部が偏心した形状のものを用い、前記軸状の締め付け具によるナット保持プレートの取付後に、前記位置決め治具を回転させて前記位置決め孔から抜き出すようにした角形鋼管柱の梁接合方法。
- ボルト挿通孔に整合してナットが取付けられかつ一端が窄まる形状の位置決めガイド孔および被取付孔を有するナット保持プレートを、角形鋼管柱の内部に挿入し、角形鋼管柱に設けられた位置決め孔からナット保持プレートの位置決めガイド孔に位置決め治具を挿入し、この治具挿入後にさらにナット保持プレートを角形鋼管柱の内部に挿入することにより、前記位置決め治具と位置決めガイド孔の窄まり部とで案内してナット保持プレートを角形鋼管柱の内面の所定位置に配置し、この配置状態で互いに整合した角形鋼管柱のプレート取付孔とナット保持プレートの被取付孔とで軸状の締め付け具によりナット保持プレートを角形鋼管柱に止め付け、梁端部の柱接合部材および前記角形鋼管柱に設けられたボルト挿通孔から前記ナットにボルトをねじ込んで前記梁を前記角形鋼管柱に接合し、前記位置決め治具は、雄ねじ部を有する軸体の先端に起倒自在な頭部を有し、前記雄ねじ部にナットが螺合し、かつ前記頭部の起倒操作部材を有するものとし、ナット保持プレートと角形鋼管柱の管壁とを位置決め治具の頭部部材とナットとで挟み込んだ状態で、前記軸状の締め付け具によるナット保持プレートの角形鋼管柱への止め付けを行う角形鋼管柱の梁接合方法。
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