JP2023135828A - 有段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】登坂路を走行していることに伴うパワーオン・ダウンシフトを変速ショックや変速応答性を悪化させることなく実行する。【解決手段】要求駆動力の増大要求の下で低速側の変速段に切り替えるオンダウンシフトが判断された場合(ステップS1)に、登坂路を走行していることの判断を行い(ステップS3~S6)、登坂路を走行していることの判断が成立した場合に、オンダウンシフトで解放される係合機構の解放油圧の指令値を、要求駆動力の増大要求がない状態で平坦路を走行している際に低速側の変速段に切り替えるオンダウンシフトの際の指令値より大きい指令値であって係合機構に掛かるトルクの増大補正値に基づいた指令値とする(ステップS7)とともに、オンダウンシフトのイナーシャ相の時間を平坦路でのオンダウンシフトのイナーシャ相の時間より長くする(ステップS8)。【選択図】図2
Description
この発明は、クラッチやブレーキなどの係合機構の係合および解放の状態に応じて複数の変速段を設定する有段変速機(自動変速機)を制御する装置に関し、特にダウンシフトを制御する装置に関するものである。
車両用の自動変速機では、エンジンの回転数を燃費の良好な回転数に維持し、また要求されている駆動力を出力するなどのために、アクセル開度や車速などに応じて変速段を決定し、アクセル開度や車速などが変化することに伴って、変速比を小さくするアップシフトや変速比を大きくするダウンシフトを実行している。変速はエンジンを含む駆動系統における回転部材の回転数の変化を生じさせる動作状態の変化であるから、慣性トルクなどに起因するショックが生じることがある。特許文献1には、エンジンを駆動状態に維持しつつ変速比を増大させるパワーオン・ダウンシフトを、ショックを悪化させずに実行するように構成した装置が記載されている。
特許文献1に記載された装置は、登坂路を走行している状態で次第に減速して停止する場合のダウンシフトを制御するように構成された装置である。登坂時には重力加速度に打ち勝って走行するためにアクセルペダルは僅かであっても踏み込まれており、エンジンは車両が後退しないように駆動力を出力している。これに対して車速は、前方の所定の箇所で停止するように次第に低下している。したがって車速が予めマップとして記憶しているダウンシフト線を横切るように変化すると、ダウンシフトの判断が成立してダウンシフトが実行される。特許文献1に記載された装置が想定しているダウンシフトは、高速側の変速段で係合している係合機構を解放し、かつ低速側の変速段を設定するための係合機構を係合させるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速である。クラッチ・ツウ・クラッチ変速でのパワーオン・ダウンシフトの場合、解放側の係合機構のトルク容量の低下(解放)が早いと、パワーオンであることによりエンジン回転数が急に増大する吹き上がりが生じ、これがショックの原因になることがある。そこで、特許文献1に記載された発明では、係合機構の解放時間を長くして、その係合機構をゆっくり解放することとしている。すなわち、係合機構のスイープダウン指示油圧の低下率を小さくしている。
特許文献1の装置によるように、パワーオン・ダウンシフトの際に解放する係合機構の油圧をスイープダウンすれば、その係合機構で受けるトルク(もしくは支えるトルク。分担トルク)がゆっくり低下するので、変速ショックを抑制することができる。その半面、変速の進行が遅くなるので、変速応答性の点では改善の余地がある。そこで、解放する係合機構の油圧(解放圧)を低く設定しておき、その油圧をスイープダウンさせることによる変速応答性の悪化を改善することが考えられる。こうすれば、平坦路でのパワーオン・ダウンシフトの際やコーストダウンシフト中にアクセルペダルが踏み込まれることによるパワーオン・ダウンシフトの際に係合機構の解放に要する時間が短くなって、解放油圧のスイープダウンによる変速の遅れを改善できる。しかしながら、登坂路を走行している際に次第に車速が低下してダウンシフトする場合には、登坂するため、あるいは登坂路で後退しないようにするために、アクセルペダルが既にある程度踏み込まれていてパワーオン状態になっている。このような状態で、解放圧のスイープダウンに伴う変速応答性を改善するべく解放圧を低く設定すると、登坂路であることに伴うパワーオンの分、回転数の変化が急激になり、変速ショックが悪化する可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、登坂路を走行していることに伴うパワーオン・ダウンシフトを変速ショックや変速応答性を悪化させることなく実行することのできる変速制御装置を提供することを目的とするものである。
この発明は、上記の目的を達成するために、係合および解放を油圧によって制御される複数の係合機構によって変速段を設定し、かつ要求駆動力と出力回転数との少なくとも二つのデータに基づいて設定するべき変速段を選択する有段変速機の変速制御装置であって、前記要求駆動力の増大要求の下で低速側の変速段に切り替えるオンダウンシフトが判断された場合に、登坂路を走行していることの判断を行い、前記登坂路を走行していることの判断が成立した場合に、前記オンダウンシフトで解放される係合機構の解放油圧の指令値を、前記要求駆動力の増大要求がない状態で平坦路を走行している際に低速側の前記変速段に切り替えるオンダウンシフトの際の指令値より大きい指令値であって前記係合機構に掛かるトルクの増大補正値に基づいた指令値とするとともに、前記オンダウンシフトのイナーシャ相の時間を前記平坦路でのオンダウンシフトのイナーシャ相の時間より長くするように構成されていることを特徴とするものである。
この発明の変速制御装置によれば、登坂路を走行している状態でのオンダウンシフトの際に、解放する係合機構の解放油圧の指令値を平坦路でのいわゆる通常のオンダウンシフトの際の指令値より大きくする。これと併せて、イナーシャ相の時間を通常のオンダウンシフトの場合より長くする。したがって、要求駆動力の増大要求に伴って入力回転数が増大しようとしていても、解放油圧が通常のオンダウンシフトの場合より高いことにより入力回転数が急激に増大することが回避もしくは抑制される。その結果、変速段を決める変速マップにおけるダウンシフト線を低車速側に設定しても、オンダウンシフトによる変速ショックを回避もしくは抑制でき、またイナーシャ相の時間を長くするとしても、変速時間は、解放油圧指令値を上記のように増大補正しない場合に比較して長くならず、変速応答性が特に悪化することはない。むしろ、ダウンシフト線を低車速側に設定できることにより、そのダウンシフト線に基づいた平坦路でのパワーオン・ダウンシフトや、コーストダウンシフト中のパワーオン・ダウンシフトの変速応答性を向上させることができる。
以下、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態はこの発明を実施した場合の一例に過ぎないのであって、この発明を限定するものではない。
先ず、この発明の実施形態における制御対象である有段自動変速機の一例について説明する。図1は前進10段後進1段の変速段を設定できるように構成した自動変速機におけるギヤトレーンを模式的に示すスケルトン図であり、ラビニョ型遊星歯車機構1と、二組のシングルピニオン型遊星歯車機構2,3と、複数の係合機構とを主体として構成されている。ラビニョ型遊星歯車機構(以下、仮に第1遊星歯車機構と記す)1は、第1サンギヤS1と、第2サンギヤS2と、第1サンギヤS1に噛み合っているロングピニオンギヤP1と、そのロングピニオンギヤP1および第2サンギヤS2に噛み合っているショートピニオンギヤP2と、これらロングピニオンギヤP1およびショートピニオンギヤP2を保持しているキャリヤC1と、各サンギヤS1,S2と同心円上に配置されてロングピニオンギヤP1に噛み合っているリングギヤR1とを有している。キャリヤC1が入力要素となっていて入力軸4に連結されている。
なお、入力軸4はトルクコンバータを介してエンジン(それぞれ図示せず)に連結されている。この入力軸4の回転数が入力回転数であり、また入力軸4から伝達されるトルクが入力トルクである。第1サンギヤS1は、第1ブレーキB-1を介してケーシングなどの所定の固定部5に連結され、第1ブレーキB-1が係合することにより第1サンギヤS1が固定されて第1サンギヤS1に反力トルクが作用するようになっている。
シングルピニオン型遊星歯車機構2,3のそれぞれは上記の入力軸4や第1遊星歯車機構1と同一軸線上に配置されており、一方のシングルピニオン型遊星歯車機構(以下、仮に第2遊星歯車機構と記す)2は、サンギヤS20と、そのサンギヤS20と同心円上に配置されているリングギヤR20と、これらサンギヤS20とリングギヤR20とに噛み合っているピニオンギヤP20を保持しているキャリヤC20とを有している。そのキャリヤC20が出力要素となっていて出力軸6に連結されている。
なお、出力軸6は、図示しないプロペラシャフトおよびデファレンシャルギヤを介して駆動輪に駆動トルクを出力するようになっている。また、同様に、他方のシングルピニオン型遊星歯車機構(以下、仮に第3遊星歯車機構と記す)3は、サンギヤS30と、そのサンギヤS30と同心円上に配置されているリングギヤR30と、これらサンギヤS30とリングギヤR30とに噛み合っているピニオンギヤP30を保持しているキャリヤC30とを有している。そのサンギヤS30は第2遊星歯車機構2におけるサンギヤS20と一体となって回転するように構成されている。また、キャリヤC30は前述した入力軸4に連結されていて入力要素となっている。
上記の各回転要素を連結する係合機構として、上記の第1ブレーキB-1に加えて、下記の四つのクラッチC-1,C-2,C-3,C-4と第2ブレーキB-2とが設けられている。すなわち、第1クラッチC-1は、第1遊星歯車機構1におけるリングギヤR1と第2遊星歯車機構2におけるサンギヤS20および第3遊星歯車機構3におけるサンギヤS30とを選択的に連結するように構成されている。また、第2クラッチC-2は、第1遊星歯車機構1における第2サンギヤS2と第2遊星歯車機構2におけるサンギヤS20および第3遊星歯車機構3におけるサンギヤS30とを選択的に連結するように構成されている。
第3クラッチC-3は、第1遊星歯車機構1におけるリングギヤR1と第2遊星歯車機構2におけるリングギヤR20とを選択的に連結するように構成されている。さらに、第4クラッチC-4は、第2遊星歯車機構2におけるキャリヤC20もしくは出力軸6と第3遊星歯車機構3におけるリングギヤR30とを選択的に連結するように構成されている。そして、第2ブレーキB-2は、第2遊星歯車機構2におけるリングギヤR20と所定の固定部5との間に設けられていてリングギヤR20を選択的に固定するように構成されている。
これらのクラッチC-1,C-2,C-3,C-4およびブレーキB-1,B-2は、摩擦式あるいは噛み合い式などの適宜の形式の係合機構であってよいが、図1に示すギヤトレーンにおいては、少なくとも第1クラッチC-1と第1ブレーキB-1とは、油圧によってトルク容量を制御可能な摩擦式係合機構によって構成されている。そして、これらの係合機構を表1の係合作動表に示すように係合および解放させることにより前進10段、後進1段の変速段を設定することができる。なお、表1において、「○」印は係合することを示し、空欄は解放してトルクを伝達しないことを示す。また「OD」は変速比が「1」より小さいオーバードライブ段であることを示している。
上記の各係合機構を係合および解放して所定の変速段を設定するいわゆる変速制御を行うための電子制御装置(ECU)7が設けられている。ECU7は、CPUや各種のメモリなどを主体として構成されたいわゆるマイクロコンピュータであって、図示しない各種のセンサで得られるデータ、および予め記憶しているデータなどに基づいて演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。
入力されるデータの例を挙げると、入力軸4の回転数で代表される入力回転数、出力軸6の回転数で代表される車速などの出力回転数、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度で代表される要求駆動力、係合機構の制御のためのオイルの温度である油温、上記のギヤトレーンを搭載している車両の前後加速度などである。
また、予め記憶しているデータの例を挙げると、出力回転数(車速)と要求駆動力(アクセル開度)とをパラメータとして、アップシフト線およびダウンシフト線によって各変速段の領域を定めた変速線図、登坂路を判定するための変速段についてのしきい値、ならびに出力回転数についてのしきい値、スロットル開度についてのしきい値、および前後加速度についてのしきい値、イナーシャ相についての補正時間、所定の変速を実行する際に解放する係合機構の油圧指令値についての補正値などである。
この発明の実施形態における変速制御装置は、要求駆動力がアイドリングなどの所定の状態より増大している状態で、車速が次第に低下して停車が想定されている際のダウンシフト(オンダウンシフト)を、登坂路において、平坦路でのパワーオン・ダウンシフト(オンダウンシフト)とは異なる制御で実行するように構成されている。図2はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、前述したECU7によって実行され、したがってECU7が変速制御用のコントローラとなっている。
図2に示す制御は例えば車両が走行している場合に実行され、先ず、オンダウンシフト判断があると(ステップS1)、解放クラッチに掛かるトルク(分担トルク)について油温に基づく補正、再回転数に基づく補正を制御指令値に反映させる(ステップS2)。
ここでオンダウンシフトとは、図示しないアクセルペダルが踏み込まれるなどアイドリング状態より大きい駆動力が要求されている状態(すなわち要求駆動力の増大要求の下)で、変速比を増大させる変速である。具体的にはアクセル開度もしくはスロットル開度が増大して車速および要求駆動力によって決まる走行状態が変速線図におけるダウンシフト線を横切って変化することにより、もしくは車速が低下することにより、走行状態が変速線図におけるダウンシフト線を横切って変化することにより、オンダウンシフトの判断が成立する。
また、ステップS2での補正の対象である解放クラッチとは、ステップS1で判断が成立している変速を実行することにより解放させられるクラッチであり、特に、ステップS1で判断されている変速が、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の場合の解放側のクラッチである。解放クラッチはその変速の進行を律することになるのに対して、分担トルクに応じたトルク容量は、その解放クラッチに供給もしくは排出されるオイルの温度に影響を受け、また解放圧を補正したことに伴う回転数に応じた補正を必要とする。したがって、ステップS2では、入力(もしくは検出)されたデータに基づいて補正を行う。
ついで、登坂路か否かの判断を行う。登坂路でのオンダウンは、平坦路でのオンダウンシフトと同様に、停車を想定もしくは目指したダウンシフトの場合があり、その場合には、平坦路でのオンダウンシフトとは異なる制御を行うことになるので、登坂路の判断を行うこととしてある。したがって、この判断は、言い換えれば、平坦路でのオンダウンシフトをベースとし、その制御内容の補正を必要とするか否かの判断である。
登坂路の判断では、先ず、現在変速段が予め定めた所定の変速段Aより低速側(変速比が大きい変速段)であるか否かを判断する(ステップS3)。この判断基準となっている所定の変速段Aは、一例として、前述した前進10段の変速機であれば、第3段もしくは第4段程度であってよい。また、出力軸6の回転数などの出力回転数(アウトプット回転数)Noが予め定めた基準回転数B(rpm)より低回転数であるか否かが判断される(ステップS4)。この判断は、車速についての判断に置き換えてもよく、要は、車両が停止を想定もしくは予定して走行しているか否かの判断である。したがって、基準回転数Bは、一例として、車速が20~30km/hの時の出力軸6の回転数であってよい。
さらに、スロットル開度Tapが予め定めた基準開度C(%)より小さいか否かを判断する(ステップS5)。このスロットル開度Tapは、スロットルバルブ(図示せず)の開度をセンサで実際に検出したいわゆる実際値である必要はなく、センサで検出された開度に何らかの加工もしくは補正を施した変速段判断用の開度であってよい。なお、登坂路の判定のためにスロットル開度Tapを判断項目として採用しているのであるから、その基準開度Cは、車両が通常走行する登坂路のうち勾配が大きいとされる登坂路を特に加速することなくゆっくり走行する際のスロットル開度程度の値であってよい。
またさらに、現在時点より前の予め定めた所定の時間の間における前後加速度の平均値Gavが判断基準値D以上か否かを判断する(ステップS6)。このステップS6は登坂路を判定するための一項目として前後加速度の大小を判断するものであるから、その判断基準値Dは実験などで定めた小さい値である。また、スロットル開度Tapに関連して前後加速度が変化するから、判断基準値Dはスロットル開度Tapに関連して変化する変数であってもよい。
これらステップS3ないしステップS6の四つの判断ステップにおける結果が肯定的である場合に、登坂路であることの判定を成立させる。なお、ステップS3ないしステップS6の判断の順序は、図2に示す順序に限らないのであって、適宜の順序としてよく、あるいは同時並行的に判断してもよい。
登坂路の判断が成立した場合、すなわち図2に示す例ではステップS6で肯定的に判断された場合には、解放クラッチの分担するトルクに坂路補正を反映させる(ステップS7)。ここで説明している実施形態は、通常の平坦路でのオンダウンシフトの制御をベースにして、登坂路でのオンダウンに適した制御となるように補正することとしている。したがって、オンダウンでは、要求駆動力が発生していて、解放クラッチに掛かるトルクが平坦路でのオンダウンシフトの場合より大きいから、解放クラッチを解放制御するための油圧である解放圧を求めるための分担トルクの値を増大補正する。
その補正は、上述したステップS3ないしステップS6の条件が成立した場合に行うのであるから、その増大補正値は、実験的に求めて予めマップとして用意しておくことができる。例えば、前後加速度と分担トルク(変速比と入力トルクとで求めることができる。)とを変数とし、前後加速度が大きいほど、また分担トルクが大きいほど、大きい値となるように補正トルクを定めた二次元マップを用意し、そのマップを利用して増大補正値を求めることとしてよい。
また、登坂時の目標変速時間に読み替える(ステップS8)。すなわち、ベースとしている平坦路でのオンダウンシフトにおいても、目標変速時間を予め定め、特にイナーシャ相の時間を定めてその時間内に同期回転数にまで変化させるように解放圧あるいは係合側の摩擦係合機構の油圧である係合圧を制御している。ステップS8では、そのイナーシャ相の時間を長くした目標変速時間を採用する。変速時間が短ければ、所定の回転部材の回転数(より具体的には入力回転数)の変化率が大きくなってショックが発生する可能性が高くなり、反対に変速時間が長ければ、所定の回転部材の回転数の変化率が小さくなってショックが発生しにくくなる半面、変速応答性が悪化する。
したがって、目標変速時間は、これらショックならびに変速応答性を考慮して実験的に定めてよい。例えば入力回転数の変化量(変速前後での回転数差)が大きいほど、変速時間を長くする。こうして定めた変速時間の間に、入力回転数が変速後の回転数である同期回転数に向けて滑らかに変化するように、解放圧をフィードバック制御する。なお、このような解放圧のフィードバック制御は、従来、変速時の制御として知られている制御である。
そして、上記のステップS1で判断が成立しているオンダウンシフトを開始する(ステップS9)。その一例は、後述する。なお、上述したステップS3ないしステップS6のいずれか一つの判断ステップにおける結果が否定的であった場合には、直ちにステップS9に進んで、オンダウンシフトを開始する。その場合、登坂路であることの補正を行わない分担トルクや目標変速時間による変速制御となる。すなわち、従来知られているオンダウンシフト制御である。
上記の登坂路での補正を行ったオンダウン制御による解放指示油圧の変化およびそれに伴う回転数、変速進行度の変化の一例を図3に模式的に示してある。ここに示す例は、前述した前進10段を設定可能な変速機で第3速から第1速にオンダウンシフトする場合の例であり、したがって第1ブレーキB-1が解放側係合機構であり、第1クラッチC-1が係合側係合機構になる。なお、図3で実線がこの発明の制御例を示し、鎖線が平坦路などでの通常のオンダウンシフト時の制御例を示している。
第3速で走行している状態の所定の時点t1に第1速へのオンダウンシフトの判断が成立すると、その直後のt2時点に解放指示油圧を、一時的に大きく低下させる。これは、係合させる際のいわゆるファーストフィルと反対の油圧の制御であり、圧着や弾性による接触(係合)などを解消する制御である。その後、完全系合時の指示油圧より幾分低い指示油圧に戻し、かつ所定の勾配で次第に低下させる。このように一時的に低下させた後に戻した指示油圧やその後に低下させる指示油圧は、前述した登坂路であることによる補正を行った分担トルクに相当する指示油圧であるから、通常の平坦路などでの通常のオンダウンシフトの場合の指示油圧より高い指示油圧になる。
解放側の係合機構である第1ブレーキB-1のトルク容量がある程度低下すると、第1ブレーキB-1に滑りが生じ始めて入力回転数などが変化し始める(t3時点)。すなわちイナーシャ相が開始する。入力回転数が変速後の回転数である同期回転数になるまでの時間は目標変速時間として設定されているから、入力回転数の変化勾配は同期回転数との差および目標変速時間から定まる。一方、入力回転数あるいは変速機における所定の回転部材の回転数は、解放側の係合機構である第1ブレーキB-1の解放油圧すなわち滑りの程度によって決まるから、入力回転数が所定の勾配で同期回転数に向けて変化するように解放指示油圧がフィードバック制御される。
入力回転数が変速後の回転数に同期してイナーシャ相が終了する(t4時点)。その時点では、解放指示油圧は一時的に維持し、係合側の係合機構である第1クラッチC-1の完全な係合を待ち、その後、解放に向けて解放指示油圧を低下させる。
一方、平坦路などでの通常のオンダウンシフトの場合は、変速進行度ならびに回転数および解放指示油圧が図3に鎖線で示すように変化する。したがって、イナーシャ相は上記のt4時点より早いt31時点に終了する。この発明の制御を行った場合には、イナーシャ相がt4時点終了し、通常のオンダウンシフトの場合よりイナーシャ相あるいは変速時間が長くなるが、その延長は、解放指示油圧(解放圧)を高くしている分、抑制される。また、アクセルペダルが幾分踏み込まれている登坂中のダウンシフトの際に、係合指示油圧を図3に鎖線で示す通常のオンダウンシフトの油圧としたとすれば、回転数の変化が急激になりすぎて変速ショックが発生もしくは悪化する。
したがって、この発明の実施形態における変速制御装置では、登坂路でのオンダウンシフトの場合、エンジン回転数などの回転部材の回転数が変速後の回転数に向けて変化しているイナーシャ相の時間を、平坦路などでの通常のオンダウンシフトの場合のイナーシャ相の時間より長くし、これに加えて解放圧制御に使用する分担トルクを増大補正して解放圧を、平坦路などでの通常のオンダウンシフトの場合の解放圧より高く制御する。そのため、例えば第3速から第1速へのダウンシフトを低車速で行うようにダウンシフト線を低車速側に設定した場合、そのようなダウンシフトを登坂路でかつパワーオン状態で実行するとしても、同期回転数に向けた回転数変化を迅速に生じさせてショックのない変速を達成することができる。
また、イナーシャ相の時間を長くして全体としての変速時間が長くなるとしても、分担トルクの増大補正に伴って解放油圧の指令値を高くするので、変速時間(イナーシャ相の時間)の延長を抑制できる。なお、ダウンシフト線を上記のように低車速側に設定することにより、平坦路などでの通常のオンダウンシフト中に再加速要求が生じることが少なくなり、再加速の応答性の悪化を運転者が体感することがなくなり、あるいはその頻度が低くなって、違和感のない変速機もしくは車両とすることができる。
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されないのであり、対象とする有段変速機は図1に示すギヤトレーン以外の構成であってよく、したがって設定できる変速段は前進10段以上もしくは以下であってもよい。また、この発明における登坂路の判断は、上述したステップS3ないしステップS6による判断に加えて、あるいは替えて、ナビゲーションシステムに備えられている地図情報に基づく自車両の現在位置の道路情報を使用してもよい。
1 ラビニョ型遊星歯車機構
2,3 シングルピニオン型遊星歯車機構
4 入力軸
5 固定部
6 出力軸
7 電子制御装置(ECU)
B-1,B-2 ブレーキ
C-1,C-2,C-3,C-4 クラッチ
C1,C20,C30 キャリヤ
R1,R20,R30 リングギヤ
S1,S2,S20,S30 サンギヤ
2,3 シングルピニオン型遊星歯車機構
4 入力軸
5 固定部
6 出力軸
7 電子制御装置(ECU)
B-1,B-2 ブレーキ
C-1,C-2,C-3,C-4 クラッチ
C1,C20,C30 キャリヤ
R1,R20,R30 リングギヤ
S1,S2,S20,S30 サンギヤ
Claims (1)
- 係合および解放を油圧によって制御される複数の係合機構によって変速段を設定し、かつ要求駆動力と出力回転数との少なくとも二つのデータに基づいて設定するべき変速段を選択する有段変速機の変速制御装置であって、
前記要求駆動力の増大要求の下で低速側の変速段に切り替えるオンダウンシフトが判断された場合に、登坂路を走行していることの判断を行い、
前記登坂路を走行していることの判断が成立した場合に、前記オンダウンシフトで解放される係合機構の解放油圧の指令値を、前記要求駆動力の増大要求がない状態で平坦路を走行している際に低速側の前記変速段に切り替えるオンダウンシフトの際の指令値より大きい指令値であって前記係合機構に掛かるトルクの増大補正値に基づいた指令値とするとともに、前記オンダウンシフトのイナーシャ相の時間を前記平坦路でのオンダウンシフトのイナーシャ相の時間より長くする
ように構成されていることを特徴とする有段変速機の変速制御装置。
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JP2022041116A Pending JP2023135828A (ja) | 2022-03-16 | 2022-03-16 | 有段変速機の変速制御装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2023135828A (ja) |
-
2022
- 2022-03-16 JP JP2022041116A patent/JP2023135828A/ja active Pending
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A621 | Written request for application examination |
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