JP2007263171A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タービン回転数よりもエンジン回転数の方が高いときのパワーオフダウンシフト時において、結合側摩擦要素の急係合を回避してショックの発生を防止する。
【解決手段】パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定すると変速の進行度合いを表すパラメータが目標値となるよう低速側摩擦係合要素の油圧をフィードバック制御するように構成するとともに、アクセルオフでのダウンシフト実行時においてエンジン回転数が該タービン回転数よりも大きい間は、タービン回転数の変化を判定しても、低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するように構成する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、自動車に用いて好適の自動変速機の制御装置に関するものである。
一般に、自動車用の自動変速機としては、エンジンの回転をトルクコンバータを介して入力し、複数組のプラネタリギアを有する変速機構により変速してドライブシャフト又はプロペラシャフト(車軸側)に出力するものが普及している。
この種の自動変速機における変速機構は、入力軸(インプットシャフト)の回転をシフト位置に応じてプラネタリギアを構成する特定のギア又はキャリアに伝動したり、特定のギア又はキャリアの回転を適宜アウトプットシャフトに伝動したりすることで変速が実行される。また、変速時に適宜特定のギア又はキャリアの回転を拘束するために、通常複数のクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素(又は単に摩擦要素と称す)を備えており、これら摩擦係合要素の結合(係合又は締結とも称す)や解放の組み合わせにより伝動経路を切り換えて所定の変速が行われるよう構成されている。また、通常これらの摩擦係合要素は、油圧の給排状態によって係合状態が制御される油圧式のクラッチやブレーキが適用される。
また、このような自動変速機では、第1変速段から第2変速段に変速する際に、第1変速段では、締結状態だったクラッチを解放するとともに、それまで解放状態だったクラッチを締結することで第2変速段への変速が達成される、いわゆるクラッチtoクラッチのシフト制御が実施される場合がある。
例えば、スロットル開度が所定値以下のダウンシフト(例えば3速から2速への変速)を実施する場合、それまで係合状態だった摩擦係合要素(解放側クラッチ)を解放側に制御するとともに、2速を達成する摩擦係合要素(結合側クラッチ)をフィードバック制御により解放状態から徐々に係合状態として2速へのダウンシフトを終了させている。
そして、このようなスロットル開度が所定値以下のなどのダウンシフト(パワーオフダウンシフト)では、エンジンは自ら回転上昇するようなトルクを発生しないので、一般的に結合側のクラッチの締結状態を制御することでタービン回転数を引き上げる。
このような変速手法ではブレーキ感(減速度)を伴うことになるが、発生するブレーキ感に違和感が生じないように、実変速判定後は結合側の摩擦要素の制御油圧をタービン回転数の変化率を目標としてフィードバック制御を実行することが一般的に行われている(例えば下記の特許文献1参照)。
ところで、この特許文献1では、ストットル開度が所定値以下であり、かつ車速に基づいて変速終了後のタービン回転数がエンジン回転数よりも大きくなる場合であると変速種別がパワーオフダウンシフトであると判定し、パワーオフダウンシフトと判定した場合に上記の結合側の摩擦要素の制御油圧のフィードバック制御を実行している。
また、上記特許文献1では、フィードバック制御の開始判断は、実質的にはタービン回転数の変化率が所定値を越えたことを検知して、フィードバック制御を開始している。
さらには、タービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNB以上高くなると(タービン回転数NTと変速前の同期タービン回転数NTIとの偏差NT−NTIが所定値ΔNB以上となると)、実変速開始と判断し、この時点(SB点という)からタービン回転数の変化率が所定値となるようにフィードバック制御を実行することも一般的に知られている。
特開平9−269060号公報
ところで、上記特許文献1では、上述のようにスロットル開度と、変速終了時のタービン回転数の予測値とエンジン回転数の予測値との関係からパワーオフダウンシフトと判定した場合、タービン回転変化率が所定値を越えると結合側の摩擦要素のフィードバック制御を開始しているため、ダウンシフト開始時に「エンジン回転数NE>タービン回転数NT」の状態(正駆動)でパワーオフダウンシフトが開始された場合〔例えばアクセルを軽く踏んだ状態(スロットル開度が所定値以下ではあるが若干エンジントルクが出ている状態)での手動のダウンシフトの場合〕には、以下の問題点が発生する。
すなわち、上記のようなダウンシフトの場合、エンジン回転数とタービン回転数とが等しくなるまで、タービン回転数NTはこれよりも高いエンジン回転数NEに引っ張られて上昇することとなる。
しかしながら、この状態でパワーオフダウンシフトロジックを適用すると、結合側の摩擦要素が係合開始していなくても、解放側摩擦要素のトルク容量が下がった時点でタービン回転数NTがエンジン回転数NEにつられて吹け上がり始め、タービン回転数変化率やタービン回転数が変化すると結合側の摩擦要素のフィードバック制御を開始してしまう。
ここで、フィードバック制御の開始時点では結合側摩擦要素は未締結であるため、フィーバック制御に関係なく、エンジン回転数NEにつられてタービン回転数NTが上昇していくことになるが、コントローラ側では結合側摩擦要素のフィードバック制御が機能してタービン回転数NTが上昇しているものと誤判定して、タービン回転変化率に基づいてフィードバック制御を継続してしまう(フィードバック制御の空打ち現象)。
しかしながら、ダウンシフト時には、変速後のタービン同期回転数>エンジン回転数となるため、当然ながらエンジン回転数NEではタービン回転数NTを同期回転数まで上昇させることはできず、タービン回転数NTがエンジン回転数NEに近づくと、タービン回転数NTの上昇が鈍化又は停止する。その結果、タービン回転数上昇率が所定値になるようにさらにフィードバック制御が過度に作用して、結合側の摩擦要素がいきなり高い油圧で締結してしまい、摩擦要素の急係合によりショックが発生するという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みて創案されたものであって、パワーオフダウンシフト時の結合側摩擦要素の急係合を回避してショックの発生を回避できるようにした、自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
このため、本発明の自動変速機の制御装置は、高速側変速段及び低速側変速段をそれぞれ確立させる高速側摩擦係合要素及び低速側摩擦係合要素を備え、該高速側摩擦係合要素の係合を解除するとともに該低速側摩擦係合要素を係合させることにより該高速側変速段から該低速側変速段へのダウンシフトが実行される自動変速機の変速制御装置であって、パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定すると変速の進行度合いを表すパラメータが目標値となるよう該低速側摩擦係合要素の油圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、該パワーオフダウンシフト実行時にエンジン回転数が該タービン回転数よりも大きい間は、該タービン回転数の偏差が所定値以上となっても、該低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するフィードバック制御開始禁止手段とを有することを特徴としている(請求項1)。
また、本発明の自動変速機の制御装置は、高速側変速段及び低速側変速段をそれぞれ確立させる高速側摩擦係合要素及び低速側摩擦係合要素を備え、該高速側摩擦係合要素の係合を解除するとともに該低速側摩擦係合要素を係合させることにより該高速側変速段から該低速側変速段へのダウンシフトが実行される自動変速機の変速制御装置であって、パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定すると変速の進行度合いを表すパラメータが目標値となるよう該低速側摩擦係合要素の油圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、該パワーオフダウンシフト実行時にエンジン回転数と該タービン回転数との偏差が所定値よりも大きい間は、該タービン回転数の変化を判定しても、該低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するフィードバック制御開始禁止手段とを有することを特徴としている(請求項2)。
また、該フィードバック制御手段は、該フィードバック制御を開始した後は、該エンジン回転数と該タービン回転数との関係が前記禁止の条件を満たしても該フィードバック制御を継続するのが好ましい(請求項3)。
また、該変速の進行度合いを表すパラメータは、該タービン回転数の変化率であってもよい(請求項4)。
本発明の自動変速機の制御装置によれば、パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定しても、エンジン回転数がタービン回転数よりも大きい間(請求項1)、又はエンジン回転数とタービン回転数との偏差が所定値よりも大きい間(請求項2)は低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するので、フィードバック制御の開始タイミングを誤判断するのを防止することができ、この結果フィードバック制御の過補正によって生じていたショックを回避することができ、滑らかな変速動作を実現することができるという利点がある。
また、フィードバック制御を開始した後は、エンジン回転数がタービン回転数よりも大きくなってもフィードバック制御を継続するので、変速中のエンジン回転数の吹け上がりや変速の進行停滞を回避することができる。
また、従来の変速制御装置に対して簡単な制御ロジックを追加又は変更するだけでよいので、コスト増や重量増を招くことがない。さらには、簡単な制御ロジックを追加又は変更するだけでよいので、新たに製造される自動変速機のみならず、すでに製造或いは使用されている自動変速機にも適用することができる。
以下、図面により、実施形態について説明する
まず、本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置について説明すると、図1はその構成を示す機能ブロック図、図2は自動変速機の構成を示すスケルトン図である。図1に示すように、本変速制御装置は、コントローラ1,タービン25及びタービンシャフト10の回転数NTを検出する入力軸回転数センサ(タービン軸回転数センサ)12,出力軸28の回転数Noを検出する出力軸回転数センサ(車速センサ)13,ATF(自動変速機用オイル)の温度を検出する油温センサ14,図示しないエンジンのスロットル開度を検出するスロットルセンサ30,エンジンの吸気量を検出するエアフローセンサ31及びエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ32の各種センサと、自動変速機7の油圧回路11とをそなえて構成され、コントローラ1により、上記各センサ12,13,14,30,31,32等からの検出信号に基づいて所望の目標変速段を決定するとともに、油圧回路11を介して目標変速段を達成するための変速制御を行なうようになっている。なお、図1においては、便宜上、左側(エンジンから遠い側)をフロント側、右側(エンジン側)をリア側とする。
自動変速機7の変速段は、自動変速機7内に設けられたプラネタリギヤユニット,複数の油圧クラッチ及び油圧ブレーキ等の摩擦係合要素の係合関係により決まる。例えば、図1においては、自動変速機7は4段変速の場合について示しており、摩擦係合要素として第1クラッチ15,第2クラッチ17,第3クラッチ19,第1ブレーキ22,第2ブレーキ23をそなえている。なお、この自動変速機7の詳細を図2に示す。また、図2において、各摩擦係合要素を示す符号は図1に示すものと対応している。
このコントローラ1による摩擦係合要素15,17,19,22,23の制御は、図1に示す油圧回路11を介して行なわれるようになっている。つまり、油圧回路11には、図示しない複数のソレノイドバルブがそなえられ、これらのソレノイドバルブを適宜駆動(デューティ制御)することによって、オイルポンプから送り出されるATFが摩擦係合要素15,17,19,22,23へ供給されるようになっている。コントローラ1では、スロットルセンサ30により検出されるスロットル開度と、出力軸回転数センサ13により検出される出力軸28の回転数Noに基づいて演算される車速とに基づき目標変速段を決定し、決定した目標変速段への変速に該当する摩擦係合要素15,17,19,22,23のソレノイドバルブに対して駆動信号(デューティ率信号)を出力するようになっている。なお、ATFは、図示しないレギュレータ弁により所定の油圧(ライン圧)に調圧されており、このライン圧に調圧されたATFが各摩擦係合要素15,17,19,22,23を作動させるべく油圧回路11へ供給されるようになっている。
ところで、コントローラ1内には、図1に示すように、各種の機能を有する手段(詳細は後述する)が複数設けられるとともに、変速マップ3も設けられている。
また、自動変速機7には運転モードを切り換える切換レバー(図示せず)が装着されており、運転者がこの切換レバーを操作することにより、パーキングレンジ、走行レンジ(例えば、1速段〜4速段)、ニュートラルレンジ及び後退レンジ等の変速レンジの選択を手動で行えるようになっている。
また、この走行レンジには自動変速モードと手動変速モード(マニュアルシフトモード)の2つの変速モードがあり、自動変速モードが選択された場合には、スロットル開度θTHと車速Vとに基づき予め設定された変速マップ3に従って自動的に変速が実施される(以下、通常変速又はスタンダード変速という)ようになっている。一方、マニュアルシフトモードが選択された場合には、変速段はこの変速マップ3にかかわらず選択された変速段に変速され、その後固定されるようになっている。
また、変速マップ3には、例えば図4に示すような特性が記憶されている。そして、通常変速時は、図4に示す変速マップ3に基づいて車速センサ13で検出される車速V及びスロットルセンサ30で検出されるスロットル開度θTHに応じた目標変速段が設定され、上述の第1〜第3クラッチ15、17、19及び第1〜第2ブレーキ22、23等の摩擦係合要素が、各々に設定されたソレノイドバルブによって制御され、図3に示すような結合あるいは解放の組み合わせにより、自動的に各変速段が確立されるようになっている。なお、図3の○印が各クラッチあるいは各ブレーキの結合を示している。
そして、図3に示すように、例えば第1クラッチ15,第2ブレーキ23が結合され、第2クラッチ17,第3クラッチ19,第1ブレーキ22が解放されていると2速段が達成されるようになっている。また、2速段から3速段への変速は、結合していた第2ブレーキ23を解放するとともに、第2クラッチ17を結合することにより達成されるようになっている。これらの摩擦係合要素15,17,19,22,23の係合状態は、コントローラ1によって制御されるようになっており、これらの摩擦係合要素15,17,19,22,23の係合関係によって変速段が決まり、また、結合,解放のタイミングを適宜はかりながら変速制御を行なうようになっている。
また、変速時においては、各ソレノイドバルブに対しコントローラ1から駆動信号が出力されるようになっており、この駆動信号に基づき各ソレノイドバルブが所定のデューティ値(デューティ率)で駆動されて、シフトフィーリングの良い最適な変速制御が実行されるようになっている。
次に、本発明の要部であるパワーオフダウンシフトの変速制御を3速段から2速段へのダウンシフトを例に説明する。なお、図3から明らかなように、3速段から2速段への3−2ダウンシフトでは第2ブレーキ23が結合側摩擦係合要素(低速側摩擦要素)に相当し、第2クラッチ17が解放側摩擦係合要素(高速摩擦要素)に相当する。
さて、本発明の自動変速機の制御装置は、パワーオフダウンシフト時には図5(a)〜(c)に実線で示すような特性で変速制御を実行するように設定されている。また、このようなダウンシフトを実現するために、コントローラ1内には、上述した変速マップ3以外にも、変速時における変速種別を判定する判定手段5と、判定手段5により変速種別がパワーオフダウンシフトと判定されると、当該ダウンシフトにおける結合側摩擦係合要素(低速側摩擦要素)及び解放側摩擦係合要素(高速側摩擦要素)に対して所定の制御信号を設定するパワーオフダウンシフト制御手段6とが設けられている。
また、このパワーオフダウンシフト制御手段6は、結合側摩擦要素に対して制御信号を出力する結合側摩擦要素制御手段8と、解放側摩擦要素に対して制御信号を出力する解放側摩擦要素制御手段9を備えており、さらには、結合側摩擦要素制御手段8は、パワーオフダウンシフト時にタービン回転数NTの変化率(変速の進行度合いを表すパラメータ)が所定の変化率(又は目標値)となるように、結合側摩擦要素に対応するソレノイドバルブに対してデューティ値をフィードバック制御するフィードバック制御手段2と、所定の条件が成立するとフィードバック制御手段2によるフィードバック制御の開始を禁止するフィードバック制御開始禁止手段4とを有している。
以下、詳しく説明すると、コントローラ1では、車速センサ13で得られる車速Vとスロットルセンサ30で得られるスロットル開度θTHとで規定される運転点が変速マップ3上の変速線を横切ると、このときの車両運転状態に基づいて変速種別を判定手段5で判定する。
特に、本第1実施形態の場合は、判定手段5により変速種別がパワーオフダウンシフトであるか否かが判定される。ここで、パワーオフダウンシフトであるか否かは、図示しないエンジン側のECU(コントローラ)から得られるエンジントルク情報に基づいており、エンジントルクが所定値以下であればパワーオフダウンシフトであると判定するようになっている。
そして、判定手段5により変速種別がパワーオフダウンシフトであると判定されると、パワーオフダウンシフト制御手段6により各摩擦要素の作動が制御されるようになっている。なお、図示はしないが、コントローラ1には、パワーオフダウンシフト制御手段6以外にも、パワーオンダウンシフト制御手段、パワーオフアップシフト制御手段及びパワーオンアップシフト制御手段の各種変速制御手段が設けられており、判定手段5で判定された変速種別に応じた変速制御手段により変速制御が実行されるようになっている。
さて、パワーオフシフトダウンであると判定された場合(ここでは3−2ダウンシフト)には、結合側摩擦要素(第2ブレーキ23)に対しては結合側摩擦要素制御手段8から制御信号が設定、出力されて、図5(b)に示すような特性で第2ブレーキ23が係合されるようになっている。また、解放側摩擦要素(第2クラッチ17)に対しては解放側摩擦要素制御手段9から制御信号が設定、出力されて、図5(c)に示すような特性で第2クラッチ17が解放されるようになっている。
すなわち、パワーオフダウンシフトが判定される(図5のSS点)と、解放側摩擦要素制御手段9では、第2クラッチ17の抜け時間t0を算出するとともに、結合側摩擦要素制御手段8では、第2ブレーキ23のがた詰め(プリチャージ)時間tFを算出するようになっている。ここで、抜け時間とは、解放側ソレノイドバルブのデューティ値を0%にしてから摩擦要素のピストンが戻り始めるまでに必要な時間である。
また、プリチャージとは、結合側ソレノイドバルブへの初期油圧指令後のピストンの無効ストロークを解消するために変速初期に一旦高圧の油圧指令を行なうものであって、本実施形態ではプリチャージ時のデューティ値は100%に設定されている。
そして、これらの時間t0,tFを比較して、解放側の抜け時間t0の方が大きければただちに解放側摩擦要素のデューティ値をt0時間だけ0に設定し、また、プリチャージ時間tFが大きければ直ちにプリチャージを開始する。なお、本実施形態の場合には、図5(b),(c)に示すように、t0>tFの場合を説明しており、変速判定と同時に解放側摩擦要素のデューティ値が0に設定される。
そして、その後SS点から(t0−tF)時間経過すると、図5(b)に示すように、結合側摩擦要素のプリチャージが開始されて、その後SS点からt0時間経過すると、図5(b),(c)に示すように、抜き時間制御及びプリチャージが同時に終了する(IF点)。
プリチャージが終了すると、結合側摩擦要素制御手段8では第2ブレーキ23に対し所定の初期係合油圧を求め、この初期係合油圧を達成するデューティ値DA1を設定し出力する。なお、デューティ値に応じて油圧が決定されるので、以下ではデューティ値と油圧とを同じ意味で扱うこととし、例えば「初期係合油圧を達成するデューティ値DA1」を単に「初期係合油圧DA1」と記す。
一方、解放側摩擦要素制御手段9では、抜き時間が経過すると摩擦要素(第2クラッチ17)のピストンがストロークせずに現在の状態を保持できる保持デューティ値DKAを求め、このデューティ値DKAを保持する。
そして、初期係合油圧DA1を出力後は、結合側摩擦要素制御手段8ではタービン回転数センサ12からの情報に基づいてタービン回転数NTの変化を監視し、タービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNB(例えばΔNB=50rpm)以上高くなったか否かを判定する。
ここで、従来では、NT−NTI>ΔNBが成立すると、実変速開始と判断し(SB点)、これ以降は例えばタービン回転数NTの変化率が所定値となるようにデューティ値のフィードバック制御が開始されるが、本発明の変速制御装置では、NT−NTI>ΔNBが成立してもすぐにフィードバック制御を開始するのではなく、所定条件が成立している間は、フィードバック制御の開始が禁止されるようになっている。
すなわち、NT−NTI>ΔNBが成立して実変速開始と判定されると、結合側摩擦要素制御手段8に設けられたフィードバック制御開始禁止手段4により、エンジン回転数センサ32で得られるエンジン回転数NE及びタービン回転数センサ12で得られるタービン回転数に基づいて、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの大小が比較されるようになっている。
そして、エンジン回転数NEがタービン回転数NTよりも大きい間はフィードバック制御の開始が禁止されるようになっている。つまり、フィードバック制御開始禁止手段4では、具体的には式(1)が成立している間は結合側摩擦要素のフィードバック制御の開始を禁止し、その後下式(2)が成立すると、上記フィードバック制御の開始を許容するようになっている。
NT≦NE・・・(1)
NT>NE・・・(2)
つまり、図5(a)のタイムチャートに示すように、パワーオフダウン時であっても状況よっては変速開始時にエンジン回転数NEの方がタービン回転数NTよりも高くなる場合があり、このような場合には、結合側摩擦要素のフィードバック制御を実行しなくても、摩擦要素が未締結のためタービン回転数NTはエンジン回転数NEにつられて上昇していく。
このため、結合側摩擦要素制御手段8でフィードバック制御を実行すると、コントローラ1では、このフィードバック制御が機能してタービン回転数NTが上昇しているものと誤判定して、図5(b)に破線で示すように、結合側摩擦要素のデューティ値のフィードバック制御を継続してしまうこととなる。
さらに、この状態で、タービン回転数NTがエンジン回転数NEに近づくと、タービン回転数NTの上昇が鈍化又は停止するため、コントローラ1ではタービン回転数NTの上昇率が所定値になるようにフィードバック制御が過度に作用して、高い油圧を出力してしまい、摩擦要素(第2ブレーキ23)が締結する際に、急係合してショックが発生しまうことになる。
これに対して、本発明の変速制御装置では、図5(b)に実線で示すように、実変速判定(SB点)後、NT>NEが成立するまでは、解放側摩擦要素制御手段8のフィードバック制御開始禁止手段4により、IF点で出力したデューティ値DKAが保持され、NT≧NEの成立後(SB′点参照)、フィードバック制御手段2による結合側摩擦要素のフィードバック制御が開始するようになっている。
そして、このような制御により、従来技術ではフィードバック制御の過補正によって生じていたショックを回避することができ、滑らかな変速動作を実現することができる。
また、フィードバック制御手段2は、フィードバック制御開始後は、エンジン回転数NEがタービン回転数NTよりも大きくなってもフィードバック制御を中止することなく継続するようになっている。これは、例えばフィードバック制御開始後にアクセルが踏み込まれてエンジン回転数NEが上昇し、エンジン回転数NE>タービン回転数NTとなった場合、再度フィードバック制御を禁止してしまうと、エンジン回転数NEが吹け上がってしまったり、結合側の油圧を下げすぎてNE>NTとなった場合に変速が進行しなくなってしまうからである。
そこで、本実施形態では、フィードバック制御開始後にNE>NTとなってもフィードバック制御を継続するように構成することで、変速中のエンジン回転数NEの吹け上がりや変速の進行停滞を回避するようにしている。
なお、フィードバック制御開始後の変速制御は従来と同様である。すなわち、結合側摩擦要請制御手段8では、上記SB′点においてタービン回転数NTの変化率が所定値となるようにデューティ値のフィードバック制御を開始した後は、タービン回転数NTが変速後の同期タービン回転数NTJに近づいたと判定すると、所定油圧DEを所定時間出力し、その後所定時間経過するとデューティ値を100%として結合側摩擦要素の制御が終了する。
具体的には、同期タービン回転数NTJとタービン回転数NTとの偏差(NTJ−NT)が所定値ΔNF以内になったか否かを判定し、この偏差が所定値以内になると同期したと判定する(同期判定、図中のFF点参照)。そして、同期判定が行われると、摩擦係合要素が確実に係合し、且つショックが発生しないように設定された所定油圧DEが出力され、その後、所定時間経過するとデューティ値100%が出力されて結合側摩擦要素の制御が終了する(SF点)。なお、この所定油圧DEはフィードバック制御終了時(FF点)における油圧(デューティ値)に対して所定油圧ΔDEを加算することにより設定される。
一方、解放側摩擦要素制御手段9では、IF点で油圧値DKAを出力した後は、結合側擦要素制御手段8と同様に、タービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNB(例えばΔNB=50rpm)以上高くなったか否かを判定する。
そして、NT−NTI>ΔNBが成立して実変速開始が判定されると(SB点)、解放側初期デューティ値DRが出力され、所定時間(100ms程度)だけこのデューティ値が保持される。このデューティ値はタービントルクが大きいほど大きな値に設定され、本実施形態のようにパワーオフダウンシフトでは解放側容量をほとんど持たない程度の小さな値に設定される。
その後は、タービン回転数の変化率が結合側摩擦要素での目標変化率よりも大きな値になるようにフィードバック制御される。ここで解放側のタービン回転数の目標変化率は、例えば結合側の目標変化率×1〜2程度に設定される。そして、このように解放側のタービン回転数の目標変化率を結合側よりも大きく設定することで、解放側の油圧低下を促進させて、結合側摩擦要素の制御でタービン回転数NTを容易にコントロールすることができる。
また、同期タービン回転数NTJとタービン回転数NTとの偏差(NTJ−NT)に基づいて同期判定が実行される(つまり、SF点に達する)と、油圧を0に設定して変速制御が終了する。
本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置は上述のように構成されているので、その作用について図6〜図10のフローチャート及び図11のタイムチャートを用いて説明すると以下のようになる。まず、図6に基づいて本実施形態に係る変速制御装置のメインルーチンについて簡単に説明すると、ステップS1において、変速機7の状態がパワーオフダウンシフトへ移行したか否かを判定する。なお、パワーオフダウンシフトの判定は、上述したように、エンジンECUからエンジンの出力トルク情報に基づいて判定する。
そして、パワーオフダウンシフトと判定すると、ステップS2で結合側摩擦要素の制御を実行するとともに、ステップS3で解放側摩擦要素の制御を実行し、ダウンシフトを完了する。なお、ステップS2の処理は結合側摩擦要素制御手段8により実行されるサブルーチンであって、同様に、ステップS3の処理は解放側摩擦要素制御手段9により実行されるサブルーチンである。
また、ステップS1でパワーオフダウンシフトが判定されなければ、そのままリターンして、ステップS1に戻り上記制御を繰り返す。
次に、図7及び図8を用いてステップS2のサブルーチンであるパワーオフダウンシフト時の結合側摩擦要素の制御内容について説明するとともに、図9及び図10を用いてステップS3のサブルーチンであるパワーオフダウンシフト時の解放側摩擦要素の制御内容について説明する。
さて、ステップS1において、パワーオフダウンシフトが判定されると、図7に示す結合側摩擦要素の制御が開始されるとともに、図9に示す解放側摩擦要素の制御が開始される。まず、図7のステップS11において、結合側摩擦要素に対する所定時間tFに亘るがた詰め制御(プリチャージ;図中ではtF出力制御と記す)が実行されるとともに、図9のステップS31において解放側摩擦要素に対する所定時間t0に亘る油圧抜き制御が実行される。
このがた詰め制御及び油圧抜き制御は、それぞれ図8及び図10に示すサブルーチンにしたがって実行される。ここで、これらのサブルーチンは、がた詰め制御と油圧抜き制御との2つの制御の終了時点が一致するように、がた詰め制御及び油圧抜き制御の開始時点を設定するべく設けられているものであって、略同時に処理実行される。
以下、図8及び図10を用いて説明する。さて、がた詰め制御が開始されると図8のステップS21で、また、油圧抜き制御が実行されると図10のステップS41でそれぞれ解放側の抜け時間t0及び結合側のがた詰め時間tFが算出される。そして、ステップS22及びステップS42においてそれぞれ、抜け時間t0とがた詰め時間tFとが比較される。
抜け時間t0>がた詰め時間tFであれば、結合側では、ステップS23においてt0−tF時間だけ経過後デューティ値Dc=100%に設定し、これをtF時間に亘り保持する。また、このとき解放側では、ステップS43において、直ちにデューティ値Dc=0%に設定し、これをt0時間に亘り保持する。
一方、ステップS22及びステップS42において、抜け時間t0≦がた詰め時間tFと判定されると、結合側ではステップS24において、直ちにデューティ値Dc=100%に設定し、これをtF時間に亘り保持する。また、解放側では、tF−t0時間だけ経過後デューティ値Dc=100%に設定し、これをt0時間に亘り保持する。
そして、このような制御を実行することにより、がた詰め制御と油圧抜き制御とが同時に終了する(図5のIF点参照)。
次に、図7及び図9に戻って説明する。なお、ここでは先に結合側摩擦要素のフローチャートを説明し、その後解放側摩擦要素のフローチャートを説明するが、これらの各フローチャートも独立して略同時に処理、実行されるものである。
さて、図7においてステップS11でがた詰め制御が終了すると、ステップS12に進み、結合側摩擦要素に対する所定の初期係合油圧DA1を求め、デューティ値Dcとして上記の初期係合油圧DA1を出力する。
そして、ステップS13に進んで、現在のタービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNBより高くなったか否かを判定する(即ちタービン回転数の偏差NT−NTIが所定回転数ΔNBより大きくなったか否かを判定する)。ここで、タービン回転数の偏差NT−NTIが所定回転数ΔNB以下であれば、ステップS12に戻り、初期係合油圧DA1が保持される。また、タービン回転数偏差NT−NTIが所定回転数ΔNBより大きくなると、実変速開始と判断(図5のSB点参照)する。
実変速開始と判断と判断されると、ステップS14に進み、タービン回転数NTとエンジン回転数NEとを比較する。そして、この結果、エンジン回転数NEの方が高いとステップS12に戻り、初期係合油圧DA1の保持が継続される。
つまり、この場合にはパワーオフダウンシフトであるにもかかわらずエンジン回転数NEのほうがタービン回転数NTよりも高い正駆動状態であり、このような状態では通常のパワーオフダウンシフトの制御ロジックを適用してもショックが発生するおそれがある。このため、本実施形態では、NT≦NEが成立している間は、フィードバック制御を開始せずに初期係合油圧DA1の保持を継続する(フィードバック制御の開始禁止)。
一方、NT>NEとなると、ステップS14ではタービン回転数NTが確実にエンジン回転数NEを上回ったと判定して、次にステップS15に進み、このステップS15において、タービン回転数NTの変化率が所定の目標値(目標スリップ回転変化率)となるようにデューティ値のフィードバック制御を開始する。
そして、ステップS16において、変速後の同期タービン回転数NTJとタービン回転数NTとの偏差(NTJ−NT)が所定値ΔNF内になったか否かを判定し、この偏差が所定値以内になるまではステップS15のフィードバック制御を実行し、偏差が所定値以内になると、変速が同期したと判定して(同期判定、図中のFF点参照)、ステップS17に進む。
ステップS17で同期判定が行われると、摩擦係合要素が確実に係合し、且つショックが発生しないように設定されたデューティ値DEが出力される。そして、ステップS18において、上記タービン回転数偏差(NTJ−NT)が所定値ΔNF内となったことを所定時間連続して検出すると、ステップS20に進みデューティ値100%を出力して、結合側摩擦要素の変速制御を終了する。
また、ステップS18でNTJ−NT<ΔNFを所定時間連続して検出できなかった場合には、次に、ステップS19に進み、デューティ値DEを出力してから所定時間(ステップS19の所定時間はステップS18の所定時間と同じであっても良いし異なっていても良い)経過したかを判定し、デューティ値DEを出力後所定時間経過していれば、たとえタービン回転数偏差が所定値ΔNF以内であることを所定時間連続して検出できなくても、十分変速が終了したと判定して、ステップS20に進んでデューティ値Dcを100%に設定する。また、ステップS19で所定時間経過していなければステップS17に戻り、ステップS17以降の制御を繰り返し実行する。
一方、解放側摩擦要素では、図9のステップS31で上述した解放側油圧抜き制御(図10のステップS41〜S44)が実行されると、次に、ステップS32に進み、所定の抜き時間経過後に所定の保持デューティ値DKAを求め、このデューティ値DKAを出力する。ここで、デューティ値DKAは解放側摩擦要素のピストンがストロークせずに現在の状態を保持できる程度の油圧値に対応している。
そして、ステップS33で実変速が開始したか(SB点)を判定する。つまり、現在のタービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNBより高くなったか否かを判定する(NT−NTI>ΔNB)。なお、このステップS33の判定処理は、図7の係合側摩擦要素のフローチャートにおけるステップS13の判定処理と同じである。
ステップS33でNT−NTI≦ΔNBと判定されると、ステップS32に戻り、初期係合油圧DKAが保持される。また、NT−NTI>ΔNBとなると(SB点)、ステップS34に進み、所定時間だけデューティ値DRが出力される。なお、このデューティ値DRはタービントルクが大きいほど大きな値に設定され、本実施形態のようにパワーオフダウンシフトでは解放側容量をほとんど持たない程度の小さな値に設定される。
デューティ値DRが出力されて所定時間経過すると、次にステップS35に進み、タービン回転数変化率が結合側摩擦要素での目標変化率よりも大きな値になるように解放側摩擦要素の係合油圧がフィードバック制御される。そして、このように解放側のタービン回転数の目標変化率を結合側よりも大きく設定することで、解放側の油圧低下を促進させる側にフィードバック制御が進行する。
そして、ステップS36において、変速後の同期タービン回転数NTJとタービン回転数NTとの偏差(NTJ−NT)が所定値ΔNF内になったか否かを判定し、この偏差が所定値以内になるまではステップS35のフィードバック制御を実行する。また、偏差が所定値以内になると、変速が同期したと判定して(同期判定、図中のFF点参照)、ステップS37に進み、フィードバック制御の目標タービン回転数変化率を変更してフィードバック制御を継続する。なお、この場合目標タービン回転数変化率はそれまでよりも小さい値に設定される。
その後、ステップS38に進み、係合側摩擦要素制御手段8において、結合制御終了(SF点)が判定されると、ステップS39でデューティ値Dc=0%を出力して解放側摩擦要素の変速制御を終了する。
図11は本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置と従来の技術との差を説明するための図であって、(a)〜(c)は従来技術における解放側摩擦要素、結合側摩擦要素、エンジン回転数及びタービン回転数の特性を示す図であって、(d)〜(f)は本実施形態における解放側摩擦要素、結合側摩擦要素、エンジン回転数及びタービン回転数の特性を示す図である。
図11(a)〜(c)に示すように、従来は、パワーオフダウンシフト判定時にエンジン回転数NE>タービン回転数NTの状態であると、実変速開始(SB点)が判定されると、このSB点からタービン回転数の変化率が所定の目標値となるようにフィードバック制御を開始するが、結合側摩擦要素は容量をもっておらず、タービン回転数NTはエンジン回転数NEに引き上げられて上昇しているため、結合側摩擦要素のフィードバック制御ではコントロールできない。さらに、結合側摩擦要素の未締結状態がフィードバック制御で保持され、その後、タービン回転数NTがエンジン回転数NEに近づいて、タービン回転数NTの上昇が鈍化したときにフィードバック制御が過度に作用して、高い油圧を出力してしまい、摩擦要素の急係合によりショックが発生する。
これに対して、本装置では、図11(d)〜(f)に示すように、パワーオフダウンシフト時には、エンジン回転数NE>タービン回転数NTの状態であると、タービン回転数変化率が所定の目標値となるような結合側摩擦要素のフィードバック制御の開始を禁止するので、上述したようなショックが生じることがなく滑らかな変速動作を実現することができる。
また、フィードバック制御を開始した後は、再びエンジン回転数NEがタービン回転数NTよりも大きくなってもフィードバック制御を継続するので、変速中のエンジン回転数NEの吹け上がりや変速の進行停滞を回避することができる。
また、本装置では、従来の変速制御装置に対して簡単な制御ロジックを追加又は変更するだけでよいので、コスト増や重量増を招くことがない。さらには、簡単な制御ロジックを追加又は変更で実現可能であるため、新たに製造される自動変速機のみならず、すでに製造或いは使用されている自動変速機にも本発明を適用することができるという特有の利点がある。
次に、図12に基づき本発明の第2実施形態に係る自動変速機の変速制御装置について説明する。なお、この第2実施形態は、上述した第1実施形態に対してフィードバック制御開始禁止手段の作用が異なるのみであって、これ以外は第1実施形態と同様に構成されている。したがって、以下では主に第1実施形態と異なる部分について説明し、それ以外の説明は極力省略する。
さて、上述した第1実施形態では、パワーオフダウンシフト時において、NT−NTI>ΔNBが成立してもすぐにフィードバック制御を開始するのではなく、NT≦NEが成立している間はフィードバック制御開始禁止手段4により結合側摩擦要素のフィードバック制御の開始を禁止するように構成されているが、本第2実施形態では、フィードバック制御開始禁止手段4は、タービン回転数NTに所定値ΔNT(ΔNT≧0)を加えた値とエンジン回転数NEとを比較し、下式(3)が成立している間は結合側摩擦要素のフィードバック制御の開始を禁止するようになっている。また、その後下式(4)が成立すると、上記フィードバック制御の開始を許容するようになっている。
NT+ΔNT≦NE・・・(3)
NT+ΔNT>NE・・・(4)
ここで、本来は第1実施形態のように、タービン回転数NTとエンジン回転数NEとの大小でフィードバック制御の開始を判断するのが好ましいが、実際にはセンサ(タービン回転数センサ12やエンジン回転数センサ32)の検出誤差により、NT>NEになっているにも関わらず、これをセンサが正確に検出できず、フィードバック制御が開始しないといった事態が生じることが考えられる。
そこで、本実施形態では、実際のセンサ誤差に応じたキャリブレーションを施したものであって、この誤差(ΔNT)を考慮して、NT+ΔNT>NEとなるとフィードバック制御を開始するようになっているのである。
なお、図12は本第2実施形態に係る自動変速機の制御装置の作用を説明するためのフローチャートであるが、本第2実施形態では、第1実施形態で説明した図7のステップS14を「NT+ΔNT>NEとなったか?」と読み替えるだけでよいので、これ以上の説明は省略する。
本発明の第2実施形態に係る自動変速機の変速制御装置は上述のように構成されているので、上述の第1実施形態と同様の作用や効果が得られるほか、センサの誤差を吸収でき、フィードバック制御の禁止時期や開始時期を正確に検出することができるという利点がある。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記の実施の形態においては、3−2ダウンシフト時を例にして説明したが、パワーオフダウンシフト時における全てのダウンシフトに適用するのが好ましい。
また、解放側摩擦要素及び結合側摩擦要素の作動特性は、図5に示すようなものに限定されるものではない。すなわち、少なくともパワーオフダウンシフト時にエンジン回転数NE>タービン回転数NTである間は結合側摩擦要素のフィードバック制御を禁止するものであれば、他の特性については種々変更可能である。また、上述した実施の形態においては、変速マップ3に基づくパワーオフダウンシフト時を例に説明したが、マニュアルシフトによる変速時に本発明を適用してもよい。
さらに、上述した実施形態では、「変速の進行度合いを表すパラメータ」として、タービン回転数NTの変化率を適用しているがこれに限られるものではない。
また、上述の実施形態では、「タービン回転数の変化の判定」として、タービン回転数NTが変速前の同期タービン回転数NTIから所定回転数ΔNB(例えばΔNB=50rpm)以上高くなったか否かに基づいて判定しているが、タービン回転数の変化に基づいて判断するものであればよく、例えば特許文献1のようにタービン回転変化率が所定値を越えたことをもちいて判定するものでもよい。
また、上述の実施形態では、「パワーオフダウンシフト」を、エンジン側のECU(コントローラ)から得られるエンジントルクが所定値以下であればパワーオフダウンシフトであると判定しているが、要はエンジントルクが所定値以下の状態で発生したダウンシフトであることを検出するものであればよく、スロットル開度が所定値以下であるか否かに基づいて判定したり、様々な手段の組み合わせを用いて判定してするものでもよい。
また、第2実施形態においては、センサ誤差を考慮して、NT+ΔNT>NE(ΔNE≧0)が検出されるまでは、フィードバック制御を禁止するように構成されているが、ΔNEは実際のセンサの誤差に応じて設定すればよく、ΔNE≦0であってもよい。
本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の要部構成を示す模式図である。 本発明が適用される自動変速機の構造を示すスケルトン図である。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の各変速段における摩擦締結要素の係合状態を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の変速マップを示す図である。 (a)〜(c)はいずれも本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の変速タイミングについて説明するためのタイムチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の変速タイミングについて従来の技術と比較しながら説明するためのタイムチャートであって、(a)〜(c)は従来の技術におけるタイムチャート、(d)〜(f)は本発明におけるタイムチャートである。 本発明の第2実施形態に係る自動変速機の制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
1 コントローラ
2 フィードバック制御手段
3 変速マップ
4 フィードバック制御開始禁止手段
5 判定手段
6 パワーオフダウン制御手段
7 自動変速機
8 結合側摩擦要素制御手段
9 解放側摩擦要素制御手段
10 入力軸又はタービンシャフト
12 入力軸回転数センサ(タービン回転数センサ)
15 第1クラッチ(摩擦係合要素)
17 第2クラッチ(摩擦係合要素)
19 第3クラッチ(摩擦係合要素)
22 第1ブレーキ(摩擦係合要素)
23 第3ブレーキ(摩擦係合要素)
35 油圧クラッチ機構(摩擦係合要素)

Claims (4)

  1. 高速側変速段及び低速側変速段をそれぞれ確立させる高速側摩擦係合要素及び低速側摩擦係合要素を備え、
    該高速側摩擦係合要素の係合を解除するとともに該低速側摩擦係合要素を係合させることにより該高速側変速段から該低速側変速段へのダウンシフトが実行される自動変速機の変速制御装置であって、
    パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定すると変速の進行度合いを表すパラメータが目標値となるよう該低速側摩擦係合要素の油圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
    該パワーオフダウンシフト実行時にエンジン回転数が該タービン回転数よりも大きい間は、該タービン回転数の変化を判定しても、該低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するフィードバック制御開始禁止手段とを有する
    ことを特徴とする、自動変速機の変速制御装置。
  2. 高速側変速段及び低速側変速段をそれぞれ確立させる高速側摩擦係合要素及び低速側摩擦係合要素を備え、
    該高速側摩擦係合要素の係合を解除するとともに該低速側摩擦係合要素を係合させることにより該高速側変速段から該低速側変速段へのダウンシフトが実行される自動変速機の変速制御装置であって、
    パワーオフダウンシフト実行時には、タービン回転数の変化を判定すると変速の進行度合いを表すパラメータが目標値となるよう該低速側摩擦係合要素の油圧をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
    該パワーオフダウンシフト実行時にエンジン回転数と該タービン回転数との偏差が所定値よりも大きい間は、該タービン回転数の変化を判定しても、該低速側摩擦係合要素の油圧のフィードバック制御の開始を禁止するフィードバック制御開始禁止手段とを有する
    ことを特徴とする、自動変速機の変速制御装置。
  3. 該フィードバック制御手段は、該フィードバック制御を開始した後は、該エンジン回転数と該タービン回転数との関係が前記禁止の条件を満たしても該フィードバック制御を継続する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の自動変速機の変速制御装置。
  4. 該変速の進行度合いを表すパラメータは、該タービン回転数の変化率である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の自動変速機の変速制御装置。
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