JP2023124372A - 乳化油脂組成物 - Google Patents

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啓彰 三原
Keiaki Mihara
綾夏 奥野
Ayaka Okuno
晶 太田
Akira Ota
陽亜 北村
Harua Kitamura
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Abstract

【課題】本発明の課題は、呈味性、及び、乳化安定性のいずれもが良好な、大豆由来麹発酵物含有乳化油脂組成物を提供することである。【解決手段】本発明は、油相及び水相を含む乳化油脂組成物であって、前記油相において、10℃の固体脂含有量と、35℃の固体脂肪含有量との差が14.0%以上45.0%以下であり、前記乳化油脂組成物が、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、大豆由来麹発酵物と、無機塩類とを含み、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量及び前記無機塩類の含有量が所定範囲である乳化油脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、乳化油脂組成物に関する。
近年、訪日外国人観光客の増加におけるインバウンド消費が増えており、消費者の嗜好はますます多様化している。中でも、外国人観光客の嗜好に合わせた、和風味の調味料を用いた各種食品が着目されている。
和風味を実現できる成分としては、例えば、大豆由来麹発酵物(醤油、味噌等)が挙げられ、これを含む乳化油脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
特開2006-166780号公報 特開2016-168002号公報
しかし、大豆由来麹発酵物は、通常、塩濃度が高く、このような成分を乳化油脂組成物に一定量以上配合すると、その乳化安定性を害し得ることが知られている。
本発明者らは、乳化油脂組成物の乳化安定性が、該乳化油脂組成物の呈味性にも影響することを見出した。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、呈味性、及び、乳化安定性のいずれもが良好な、大豆由来麹発酵物含有乳化油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、大豆由来麹発酵物含有乳化油脂組成物において、油相の固体脂含有量を所定の条件を満たすように調整し、かつ、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1) 油相及び水相を含む乳化油脂組成物であって、
前記油相において、10℃の固体脂含有量と、35℃の固体脂肪含有量との差が14.0%以上45.0%以下であり、
前記乳化油脂組成物が、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、大豆由来麹発酵物と、無機塩類とを含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記乳化油脂組成物に対して0.10質量%以上6.50質量%以下であり、
前記無機塩類の含有量が、前記乳化油脂組成物に対して0.50質量%以上である、乳化油脂組成物。
(2) 前記水相が前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、(1)に記載の乳化油脂組成物。
(3) 前記大豆由来麹発酵物が、味噌及び/又は醤油である、(1)又は(2)に記載の乳化油脂組成物。
(4) 前記味噌が粉末味噌であり、かつその粒度が、5.0μm以上100.0μm以下である、(3)に記載の乳化油脂組成物。
(5) 前記無機塩類の含有量が、前記水相に対して3.5質量%以上18.0質量%以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
本発明によれば、呈味性、及び、乳化安定性のいずれもが良好な、大豆由来麹発酵物含有乳化油脂組成物が提供される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<乳化油脂組成物>
本発明の乳化油脂組成物は、油相及び水相を含む乳化油脂組成物であって、油相において、10℃の固体脂含有量と、35℃の固体脂肪含有量との差が14.0%以上45.0%以下であり、乳化油脂組成物が、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、大豆由来麹発酵物と、無機塩類とを含み、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、乳化油脂組成物に対して0.10質量%以上6.50質量%以下であり、無機塩類の含有量が、乳化油脂組成物に対して0.05質量%以上であるものである。
大豆由来麹発酵物を配合した乳化油脂組成物に対しては多くのニーズがある。
しかし、大豆由来麹発酵物(醤油、味噌等)は塩濃度が高いため、一定量配合すると、乳化油脂組成物の乳化安定性を損ない得ることが知られている。
本発明者らは、このような乳化安定性の低下が、水相中の塩濃度や大豆由来麹発酵物に起因する固形分上昇に伴う油相との比重差によって生じることを特定した。
さらに、本発明者らは、乳化油脂組成物の乳化安定性、特に乳化時の分散相(水滴径)が、乳化油脂組成物の呈味性に影響することも見出した。
例えば、乳化安定性が向上し過ぎると、乳化油脂組成物の分散相(水滴径)が小さくなり呈味性が悪くなり得る。
反対に、乳化安定性が低下し過ぎると、水滴径が大きくなり、乳化油脂組成物をスプレッドした際に離水が生じる。
したがって、乳化安定性と呈味性との適正なバランスの実現が重要である。
本発明者らがさらに検討した結果、乳化油脂組成物の油相において、10℃の固体脂含有量と、35℃の固体脂肪含有量との差を14.0%以上45.0%以下に調整し、かつ、乳化油脂組成物に、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを所定量配合した場合、意外にも、良好な呈味性、及び、良好な乳化安定性を両立できることを見出した。
本発明において「呈味性」とは、乳化油脂組成物の味が感じられることを意味する。
「呈味性が良好である」とは、乳化油脂組成物の油相及び水相がバランス良く混じり合い、乳化油脂組成物の味が良好であることを意味する。
「呈味性が不良である」とは、乳化油脂組成物の油相及び水相の混合バランスの悪さや、油相及び水相の分離等により、乳化油脂組成物の味が悪いことを意味する。
乳化油脂組成物の呈味性は、実施例に示した方法で評価される。
本発明において「乳化安定性」とは、乳化油脂組成物を構成する水相と油相との分離や解乳化が生じにくいことを意味する。
乳化油脂組成物の乳化安定性は、実施例に示した方法で評価される。
本発明の乳化油脂組成物は、スプレッタビリティも良好であり得る。
本発明において「スプレッタビリティ」とは、乳化油脂組成物のスプレッドのしやすさ(広げやすさ)を意味する。
乳化油脂組成物のスプレッタビリティは、実施例に示した方法で評価される。
以下、本発明の乳化油脂組成物の詳細について説明する。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明の乳化油脂組成物は、「Hydrophilic-Lipophilic Balance」(HLB)が10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを、乳化油脂組成物に対して0.10質量%以上6.50質量%以下含む。
該ポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の乳化油脂組成物において乳化剤として機能する。
HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、その総質量が上記範囲であれば、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化安定性を保持しやすいという観点から、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の下限は、乳化油脂組成物に対して0.10質量%以上であり、より好ましくは0.30質量%以上である。
呈味性のバランスを高めやすいという観点から、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限は、乳化油脂組成物に対して6.50質量%以下であり、より好ましくは3.00質量%以下、最も好ましくは1.50質量%以下である。
「HLB」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略称であり、乳化剤の疎水性と親水性のバランスを表す数値を意味する。HLBは、0~20の範囲内の数字で表され、数字が小さいほど親油性が強いことを示す。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、アトラス法の算出法に基づき特定される。アトラス法による算出は次式を用いる。
HLB=20×(1-S/A)
(式中、S:ケン化価、A:エステル中の脂肪酸の中和価)
(大豆由来麹発酵物)
本発明の乳化油脂組成物は、大豆由来麹発酵物を含む。大豆由来麹発酵物は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において「大豆由来麹発酵物」とは、麹を用いて発酵対象物(大豆)を発酵させることで得られる、食用可能な発酵物である。
本発明において「麹」とは、コウジカビ(代表的には、Aspergillus P. Micheli ex Link)を穀物(米、麦、大豆、ふすま、ぬか等)等に繁殖させたものである。
大豆由来麹発酵物の由来となる大豆としては、マメ目マメ科ダイズ属の任意の大豆であってもよい。大豆の任意の形状、大きさ、色等は特に限定されないが、黄大豆、青大豆、黒大豆、赤大豆等が挙げられる。
大豆由来麹発酵物は、乳化油脂組成物中の無機塩類の含有量を調整しやすく、本発明の効果を奏しやすいという観点から、無機塩類の含有量が高いものが好ましい。
大豆由来麹発酵物の無機塩類の含有量の下限は、大豆由来麹発酵物に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上である。
大豆由来麹発酵物の無機塩類の含有量の上限は、大豆由来麹発酵物に対して、好ましくは35.0質量%以下、より好ましくは25.0質量%以下である。
なお、大豆由来麹発酵物が複数の種類の麹発酵物の組み合わせである場合、大豆由来麹発酵物の無機塩類の含有量の総量が上記範囲内にあればよい。
大豆由来麹発酵物としては、味噌(赤味噌、白味噌等)、醤油(濃口醤油、淡口醤油、再仕込み醤油、溜醤油、白醤油、グルテンフリー醤油等)、上記の大豆由来麹発酵物の減塩タイプの物等が挙げられる。これらの麹発酵物は、市販のものであってもよい。
大豆由来麹発酵物の製造方法は特に限定されず、得ようとする発酵物の種類等に応じた従来知られる発酵方法を採用できる。
大豆由来麹発酵物の形態は特に限定されず、液汁を漉した固形物であってもよく、液汁と固形物との混合物であってもよい。また、これらを濃縮したものや、乾燥させ粉末化したものであってもよい。
大豆由来麹発酵物として粉末味噌を使用する場合、呈味性を高めやすいという観点から、不溶性物質を含む粉末味噌が好ましい。
さらに、乳化油脂組成物の乳化安定性を高めやすいという観点から、粉末味噌の粒度は過度ではなくともよく、好ましくは100.0μm以下、より好ましくは5.0μm以上70.0μm以下、最も好ましくは5.0μm以上25.0μm以下の範囲である。
粉末味噌の粒度は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、商品名「SALD-2300」、(株)島津製作所製)によって特定できる。
本発明において「(粉末味噌に含まれる)不溶性物質」とは、主として、未消化の大豆、大豆種皮の構成成分、菌体(麹菌、酵母等)を包含する。これらの成分は、味噌汁の呈味性に関わり得る。
大豆由来麹発酵物は、本発明の乳化油脂組成物において、通常、水相中に分布するが、油相中にも分布することは排除されない。
大豆由来麹発酵物の配合量は、得ようとする風味の強さ等に応じて適宜調整できる。
大豆由来麹発酵物の配合量の下限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは1.00質量%以上、より好ましくは3.00質量%以上である。
大豆由来麹発酵物の配合量の上限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは30.00質量%以下、より好ましくは20.00質量%以下、最も好ましくは15.0質量%以下である。
また、大豆由来麹発酵物が複数の種類の麹発酵物の組み合わせである場合、大豆由来麹発酵物の配合量の総量が上記範囲内にあればよい。
(無機塩類含有量)
本発明の乳化油脂組成物は、乳化油脂組成物に対して0.50質量%以上の無機塩類を含む。
乳化油脂組成物の呈味を向上させやすいという観点から、無機塩類の含有量の下限は、乳化油脂組成物に対して0.50質量%以上であり、より好ましくは0.80質量%以上である。
乳化油脂組成物の乳化安定性をより損ねにくいという観点から、無機塩類の含有量の上限は、乳化油脂組成物に対して、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下である。
乳化油脂組成物中の無機塩類の含有量を調整する方法は特に限定されないが、無機塩類を含む食品素材(大豆由来麹発酵物等)を配合する方法、塩分(精製塩等)を添加する方法、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
本発明において「無機塩類」とは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。これらの無機塩類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
無機塩類としては、本発明の効果を奏しやすいという観点から、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。塩化ナトリウムとしては、精製物であってもよく、塩化ナトリウムを含む塩類であってもよい。塩化ナトリウムを含む塩類としては、塩化ナトリウム含有量の高いものが好ましく、例えば、讃岐塩、岩塩、天塩等が挙げられる。
乳化油脂組成物中の無機塩類の由来は特に限定されない。
乳化油脂組成物に含まれる無機塩類、大豆由来麹発酵物やその他の成分の構成成分であってもよく、精製物等であってもよい。
本発明において、無機塩類の含量は、無機塩類の種類に応じて従来知られる方法に基づき特定される。
例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムの濃度は、イオンクロマトグラフィー法や原子吸光法等により特定する。
(水相)
乳化油脂組成物を構成する水相には、水相成分として、水性溶媒(水等)、大豆由来麹発酵物、無機塩類、及び、任意の水溶性成分(HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤、糖類、呈味剤等)が含まれる。
水相成分の含量は、乳化油脂組成物を調製できる任意の量であり得る。
水相成分の含量の下限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは4.00質量%以上、より好ましくは8.00質量%以上である。
水相成分の含量の上限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは32.00質量%以下である。
水相中の大豆由来麹発酵物の含有量の下限は、水相に対して、好ましくは8.00質量%以上、より好ましくは10.00質量%以上である。
水相中の大豆由来麹発酵物の含有量の上限は、水相に対して、好ましくは60.00質量%以下、より好ましくは50.00質量%以下である。
水相中の無機塩類の含有量の下限は、水相に対して、好ましくは3.50質量%以上、より好ましくは4.00質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上である。
水相中の無機塩類の含有量の上限は、水相に対して、好ましくは18.00質量%以下、より好ましくは15.00質量%以下、さらに好ましくは11.00質量%以下である。
本発明の乳化油脂組成物において、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、好ましくは水相に存在する。
かかる場合、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の下限は、水相に対して、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、さらに好ましくは1.50質量%以上である。
HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の上限は、水相に対して、好ましくは17.00質量%以下、より好ましくは10.00質量%以下、さらに好ましくは3.00質量%以下である。
(油相)
本発明の乳化油脂組成物は、乳化油脂組成物に通常配合され得る任意の油脂を含む。通常、該油脂が、本発明の乳化油脂組成物における油相に相当する。
ただし、本発明において、油相に乳化剤や大豆由来麹発酵物が存在する態様は排除されない。
本発明の乳化油脂組成物において、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、油相に添加することもできる(ただし、水相に添加することで、呈味性、乳化安定性がより良好になり得る。)。
本発明における油相は、10℃の固体脂含量と、35℃の固体脂肪含量との差が14.0%以上45.0%以下となるように調整される。
以下、「10℃の固体脂含量と、35℃の固体脂肪含量との差」を、「SFC差」ともいう。
良好な口溶けと適正なスプレッタビリティを実現しやすいという観点から、SFC差の下限は14.0%以上であり、より好ましくは20.0%以上である。SFC差の上限は45.0%以下であり、より好ましくは40.0%以下、最も好ましくは30.0%以下である。
10℃の固体脂含量と、35℃の固体脂肪含量との差が14.0%以上45.0%以下である油相の調製方法は特に限定されないが、1種でSFC差を満たす油脂を使用してもよいし、2種以上の油脂を溶解することでSFC差を満たすよう調合してもよい。
本発明において、10℃又は35℃における乳化油脂組成物の固体脂含有量(SFC)は、実施例に示した方法で特定される。
油脂の含有量(複数の種類の油脂を含む場合はその総量)は、乳化油脂組成物を調製できる任意の量であり得る。
油脂の含有量の下限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは55.00質量%以上、より好ましくは65.00質量%以上である。
油脂の含有量の上限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは85.00質量%以下である。
本発明における油脂としては、通常、食用油脂が用いられる。このような油脂としては、植物性油脂、動物性油脂、合成油脂、加工油脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた調合油として用いてもよい。
植物性油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、ヤシ油、カカオ脂、パーム油、パーム核油及び藻類油等が挙げられる。
動物性油脂としては、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等に由来する油脂)、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂等が挙げられる。
合成油脂としては、中鎖脂肪酸油等が挙げられる。
加工油脂としては、上記の油脂に対して所望の処理を施した油脂であってもよい。このような処理としては、分別(例えば分別乳脂低融点部、パームスーパーオレイン等の分別)、硬化、エステル交換等が挙げられる。油脂に対しては、1又は2以上の処理を施してもよい。
良好な口溶けと適正なスプレッタビリティを有する乳化油脂組成物を得られやすいという観点から、油脂は、エステル交換油脂を含むことが好ましく、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含むことが特に好ましい。
ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂の原料であるラウリン系油脂は、通常、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のラウリン系油脂のうち、ヤシ油等に比べて融点が高く、高融点のエステル交換油脂を容易に得られるという観点から、パーム核油、その分別油や硬化油が好ましい。
ラウリン系油脂が硬化油を含む場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、微水素添加した硬化油、低温硬化した硬化油、又は完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂の原料であるパーム系油脂は、通常、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。パーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油やこれらの硬化油等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
パーム分別油としては、硬質部、軟質部、中融点部等を用いることができる。
パーム系油脂が硬化油を含む場合、水素添加量によってトランス脂肪酸の含有量が増加する虞があるため、微水素添加した硬化油、低温硬化した硬化油、又は完全水素添加した極度硬化油が好ましく、特に極度硬化油が好ましい。
パーム系油脂は、ヨウ素価が50以上60以下の油脂を含有することが好ましい。ヨウ素価が50以上60以下の油脂を用いることで、含有する飽和脂肪酸量から結晶性に優れ、また不飽和脂肪酸を含む点からフレーバーリリースが良好となり風味に優れた油脂の作製が可能となる。
エステル交換油脂において、ラウリン系油脂とパーム系油脂との比率(質量比)は、ラウリン系油脂:パーム系油脂=20:80~60:40であることが好ましく、40:60~60:40であることがより好ましい。
エステル交換油脂において、ラウリン系油脂と、パーム系油脂とのエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。
化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられる。
酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられる。位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。
エステル交換反応に用いる酵素触媒は、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定化したものを用いても、粉末形態のものを用いてもよい。
エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応が完了すると、通常、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂(a)中における質量比(SUS/SSU)が0.45~0.55の範囲内となる。SUS/SSUがこの範囲内であると、他の油脂との相溶性が良好になる。
エステル交換反応に化学触媒を用いる場合、反応条件は特に限定されないが、例えば、触媒を油脂質量に対して0.05~0.15質量%添加し、減圧下で80~120℃に加熱し、0.5~1.0時間撹拌することでラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応を平衡状態まで進行させ、エステル交換油脂を得てもよい。
エステル交換反応に酵素触媒を用いる場合、反応条件は特に限定されないが、例えば、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01~10.00質量%添加し、40~80℃でエステル交換反応を平衡状態まで進行させ、エステル交換油脂を得てもよい。
エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法でも行うことができる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行ってもよい。
ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂は、ヨウ素価が20以上45以下であることが好ましく、30以上40以下であることがより好ましい。ヨウ素価がこの範囲内であると、他の油脂との相溶性がよくなり、風味が良好であるとともに、乳化状態が良好な乳化油脂組成物を容易に得ることができる。ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の乳化油脂組成物において、エステル交換油脂を使用する場合、その含有量は特に限定されない。
本発明の乳化油脂組成物は、トリグリセリドの構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を含んでもよく、含まなくてもよいが、トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、血液中におけるLDLコレステロール量が増加し得る。よって、これを抑制しやすい点から、本発明においては、トリグリセリドの構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量は、トリグリセリドの構成脂肪酸全体の質量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが最も好ましい。
本発明の乳化油脂組成物は、上記のトランス脂肪酸量に調整しやすいという観点から、部分硬化油を含有しないことが好ましい。
本発明の乳化油脂組成物において、構成脂肪酸中におけるラウリン酸の下限値は、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは4.00質量%以上である。
構成脂肪酸中におけるラウリン酸の上限は、好ましくは20.00質量%以下、より好ましくは10.00質量%以下である。
本発明の乳化油脂組成物において、構成脂肪酸中におけるパルミチン酸の下限値は、好ましくは10.00質量%以上、より好ましくは20.00質量%以上である。
構成脂肪酸中におけるパルミチン酸の上限は、好ましくは60.00質量%以下、より好ましくは35.00質量%以下である。
本発明の乳化油脂組成物において、構成脂肪酸中におけるステアリン酸の下限値は、好ましくは3.00質量%以上、より好ましくは4.00質量%以上である。
構成脂肪酸中におけるステアリン酸の上限は、好ましくは15.00質量%以下、より好ましくは10.00質量%以下である。
本発明の乳化油脂組成物において、構成脂肪酸中におけるオレイン酸の下限値は、好ましくは30.00質量%以上、より好ましくは40.00質量%以上である。
構成脂肪酸中におけるオレイン酸の上限は、好ましくは60.00質量%以下、より好ましくは50.00質量%以下である。
本発明の乳化油脂組成物において、全トリグリセリド中、トリグリセリドに飽和脂肪酸が3つ結合した3飽和トリグリセリド(SSS)、及び2つ結合した2飽和トリグリセリド(SSU、SUS)の合計の下限値は、好ましくは25.00質量%以上、より好ましくは28.00質量%以上、最も好ましくは33.00質量%以上であり、上限値は65.00質量%以下、より好ましくは55.00質量%以下、最も好ましくは50.00質量%以下である。
(その他の成分)
本発明の乳化油脂組成物には、その水相及び/又は油相に、必要に応じて、糖類、乳化剤(HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル以外)、乳製品、呈味素材、増粘安定剤、タンパク質、アルコール、香料、着色料等を配合することができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
糖類としては、例えば、砂糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒糖、甜菜糖、赤糖等)、異性化糖、液糖、澱粉、デキストリン(澱粉の分解物)、澱粉糖化物、糖アルコール、乳糖等が例示される。前記糖アルコールとしては、1糖アルコール(ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール等)、2糖アルコール(マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール)、3糖アルコール(マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等)、4糖アルコール(マルトテトライトール等)等が挙げられる。
乳化剤(HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル以外)としては、通常食品に添加することができる乳化剤であれば特に制限はなく、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等)、スフィンゴ脂質、植物ステロール類、トマト糖脂質、サポニン(大豆サポニン、キラヤサポニン等)、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乳化油脂組成物にこのような乳化剤が含まれる場合、その含有量の下限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上である。
乳化油脂組成物にこのような乳化剤が含まれる場合、その含有量の上限は、乳化油脂組成物全体に対して、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下である。
乳製品としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、タンパク質濃縮ホエイパウダー、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、牛乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等)、バター、発酵バター、発酵乳等が挙げられる。
呈味素材としては、大豆由来麹発酵物以外の発酵物や、各種エキス(キノコエキス、昆布エキス、酵母エキス等)、スパイス、豆乳、みりん等が挙げられる。
増粘安定剤としては、例えば、寒天、アルギン酸ナトリウム、PGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、グルコマンナン、ジェランガム、大豆多糖類、イヌリン、タラガム、ローカストビーンガム、カードラン、アラビアガム、タマリンドシードガム、ウェランガム、ペクチン、結晶セルロース、セルロースエーテル等が例示される。前記セルロースエーテルとしては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、そら豆タンパク質、小麦タンパク質、カゼインタンパク質、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエイタンパク質等が挙げられ、その分解物等も好適に使用できる。
アルコールとしては、例えば、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
(各成分の配合比等)
本発明の効果をより奏しやすくする観点から、乳化油脂組成物の構成成分は以下のいずれか、又は全てを満たすように調整してもよい。
<乳化油脂組成物の製造方法>
本発明の乳化油脂組成物は、水相及び油相を含む乳化油脂組成物の製造方法として知られる任意の方法によって製造することができる。
乳化油脂組成物の形態は特に限定されないが、例えば、油中水型(W/O)乳化物、油中水中油型(W/O/W)乳化物、水中油型(O/W)乳化物、水中油中水型(O/W/O)乳化物等が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物は、バターの代替物として、また、マーガリン、ファットスプレッドとして利用され得ることから、油中水型乳化油脂組成物であることが好ましく、可塑性油中水型乳化油脂組成物であることがより好ましい。
水相及び油相は、各相を構成する成分を、撹拌機等を用いて適宜混合撹拌することで得られる。
乳化物は、水相及び油相から乳化物を製造できる任意の方法によって得られる。このような方法としては、水相を撹拌しながら油相を添加する方法、油相を撹拌しながら水相を添加する方法、水相及び油相を同時に添加して混合する方法等が挙げられる。
乳化剤を用いる場合、乳化剤は、その性質等に応じて任意のタイミングで水相及び油相に添加できる。
本発明の乳化油脂組成物の製造に際して、水相と油相との割合(質量比)は、好ましくは、水相:油相=32:68~13:87である。
<乳化油脂組成物の性質>
本発明の乳化油脂組成物は、良好な乳化安定性と、良好な呈味性とを備える。乳化油脂組成物の乳化安定性、呈味性は、実施例に示した方法によって評価される。
<乳化油脂組成物の用途>
本発明の乳化油脂組成物は、任意の飲食品に配合等して用いることができる。本発明の乳化油脂組成物によれば、該組成物を配合された飲食品等に良好な風味(特に、和風味)を付与できる。
本発明の乳化油脂組成物を配合し得る飲食品等としては、特に限定されないが、各種惣菜(煮物(きんぴら、ひじき煮、肉じゃが、筑前煮)、酢の物、餅等)、製菓(クッキー等)、製パン(食パン等)等が挙げられる。
本発明の乳化油脂組成物は、バターの代替物として、また、マーガリン、ファットスプレッドとして利用できる。
本発明の乳化油脂組成物は、ドレッシング、ディップソース等として利用し得る。
本発明の乳化油脂組成物は、ワサビ、にんにく、生姜、調味料(豆板醤、甜面醤等)と合わせた調味素材として利用できる。
本発明の乳化油脂組成物は、乳化油脂組成物を起泡させた状態で利用してもよい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<乳化油脂組成物(マーガリン)の作製>
下記の方法で、表3乃至6に示す油相及び水相を有する乳化油脂組成物を作製した。
(1)油相を構成する油脂を混合後、75℃に調温し、乳化剤を添加し油相を得た。
(2)水に対し、水相を構成する全成分を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。
(3)油相に水相を添加し、プロペラ撹拌機で撹拌して乳化(油中水型)した後、パーフェクターによって急冷捏和し、油中水型の乳化油脂組成物(マーガリン)を得た。
(4)得られた乳化油脂組成物は、以下の官能試験に供するまで5℃で保管した。
(エステル交換油脂の作製)
表3乃至6中の3種類の「エステル交換油脂」は、表1に示す原料を用いて、以下の方法で作製した。なお、表1中の数値の単位は「質量%」である。
なお、下記エステル交換油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1-2013ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に基づき測定した。
[エステル交換油脂1]
パーム油50質量%、パーム核極度硬化油26質量%、パーム極度硬化油24質量%を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。
[エステル交換油脂2]
パーム分別軟質油100質量%を原料に使用し、「エステル交換油脂1」の製法に準じてエステル交換油脂2を得た。
[エステル交換油脂3]
パーム油42質量%、パーム核油58質量%を原料に使用し、「エステル交換油脂1」の製法に準じてエステル交換油脂3を得た。
Figure 2023124372000001
(原料の詳細)
表1に示す原料の詳細は以下のとおりである。
[油相]
パーム分別硬質油:ミヨシ油脂(株)製
豚脂:商品名「純正ラード」、ミヨシ油脂(株)製
パーム油:商品名「精製パーム油」、ミヨシ油脂(株)製
菜種油:商品名「精製菜種油」、日清オイリオグループ(株)製
大豆油:商品名「精製大豆油」、ミヨシ油脂(株)製
[糖類]
赤糖:商品名「特製赤糖DSKD」、大東製糖(株)製
[大豆由来麹発酵物]
(1)大豆由来麹発酵物(粉末味噌)の粒径調整
粉末味噌をボールミルに供し、経時的にサンプルを採取し、以下の「2.大豆由来麹発酵物」に示す、粉体粒度の異なる粉末味噌を得た。なお、「粉末味噌-1」については、粉末味噌の水溶性画分を採取・乾燥したものである。
(2)大豆由来麹発酵物
粉末味噌-1:商品名「粉末赤味噌KM」、井村屋フーズ(株)製(粒度10μm未満)
粉末味噌-2:商品名「粉末赤味噌KM」、井村屋フーズ(株)製(粒度10μm以上25μm未満)
粉末味噌-3:商品名「粉末赤味噌KM」、井村屋フーズ(株)製(粒度25μm以上35μm未満)
粉末味噌-4:商品名「粉末赤味噌KM」、井村屋フーズ(株)製(粒度80μm)
味噌:商品名「プロ用赤」、マルコメ(株)製(粒度80μm)
醤油:商品名「キッコーマングルテンフリー一番しぼりしょうゆ」、キッコーマン(株)製(粒度0μm)
「粉末味噌-1」は、粉末味噌の水溶性画分を採取及び乾燥したものを用いた。
その他の粉末味噌は、粉末味噌をボールミルに供し、経時的にサンプルを採取することで、粉体粒度の異なる粉末味噌(粉末味噌-2乃至4)を得た。
粉末味噌及び味噌の粒度は、水へ懸濁したものをレーザー回折式粒子径分布測定装置(商品名「SALD-2300」、(株)島津製作所製)によってメディアン径として測定した。また、表3乃至6中の麹発酵物の配合量は、固形成分換算量である。
[乳化剤]
乳化剤の詳細を表2に示す。なお、乳化剤のHLBはアトラス法に基づき特定した。乳化剤番号1~5の乳化剤が、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルに相当する。
(表中の数値)
表3乃至6中、各項目及び各数値の意味及び測定方法は以下のとおりである。
[水相水分の測定方法]
水相水分(単位:質量%)は、水分計(商品名「MOC63u」、島津製作所製)によって測定した。
[無機塩類濃度の割合の測定方法]
乳化油脂組成物中の無機塩類の割合(塩化ナトリウム濃度、塩化カリウム濃度、塩化マグネシウム濃度の総量)はイオンクロマトグラフィー法により測定した。
[2・3飽和脂肪酸トリグリセリドの測定方法]
2飽和トリグリセリド及び3飽和トリグリセリド(2・3飽和脂肪酸トリグリセリド)の合計量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」及び「奨2-2013 2位脂肪酸組成」)に基づき測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
[構成脂肪酸の測定方法]
ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)に定められた方法に従い測定した。
[固体脂含有量(SFC)の測定方法]
10℃又は35℃における油相の固体脂含有量(SFC)は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9-2013 固体脂含有量(NMR法)」に準じて測定した。その結果を表中の「固体脂含有量」の項に示す。
また、10℃のSFCから35℃のSFCを引いた値を「固体脂含有量の差」の項に示す。
<乳化油脂組成物の評価>
得られた乳化油脂組成物について、以下の基準で各種評価を行った。評価を行ったパネルに関して、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20~40代の男性8名と女性12名をパネルとして選抜した。評価を実施するにあたりパネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに提示した。
その結果を表3乃至6中の「評価」の項に示す。
(マーガリンの呈味性)
10℃に調温した乳化油脂組成物を2g取り、口に含んだ時の呈味性について、以下の基準で評価した。
[呈味性の評価基準]
◎+:20名17名以上が大豆由来麹発酵物の風味を良く感じることができると答えた。
◎:20名中13名~16名が大豆由来麹発酵物の風味を良く感じることができると答えた。
〇:20名中9名~12名が大豆由来麹発酵物の風味を良く感じることができると答えた。
△:20名中5名~8名が大豆由来麹発酵物の風味を良く感じることができると答えた。
×:20名中4名以下が大豆由来麹発酵物の風味を良く感じることができると答えた。
(マーガリンの乳化安定性)
20℃に調温した各乳化油脂組成物5gをスパテラに取り、ステンレス製の板に塗布し、その乳化状態をデジタルマイクロスコープ(商品名「KH-8700」、HIROX製)にて観察し、以下の基準で評価した。
[乳化安定性の評価基準]
◎+:乳化物から水の分離がなく、乳化状態も非常に良好である。
◎ :乳化物から水の分離がなく、乳化状態も良好である。
○ :乳化物から若干の水が分離するが、乳化状態は良好である。
△ :乳化物から水が分離し、乳化状態も良好ではない。
× :乳化物から水が激しく分離し、乳化状態は不良である。
(マーガリンのスプレッタビリティ)
10℃で保管した各乳化油脂組成物20gをアルミトレイに取り、スパテラでトレイ表面に広げ、スプレッドのしやすさを以下の基準で評価した。
◎+:伸展性がよく、非常にスプレッドしやすい。
◎ :伸展性がよく、スプレッドしやすい。
○ :伸展性があり、スプレッドできる。
△ :伸展性がなく、スプレッドしにくい。
Figure 2023124372000002
Figure 2023124372000003
Figure 2023124372000004
Figure 2023124372000005
Figure 2023124372000006
表に示されるとおり、本発明の要件を全て満たす乳化油脂組成物によれば、呈味性及び乳化安定性のいずれもが良好だった。さらには、本例における乳化油脂組成物は、良好なスプレッタビリティをも有していた。
これに対し、本発明の要件を満たさない乳化油脂組成物によれば、呈味性及び乳化安定性のいずれか、又は両方が劣っていた。
特に、本発明の要件のうち、SFC差及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの要件を満たさなければ、良好な呈味性及び乳化安定性を実現しがたかった。

Claims (5)

  1. 油相及び水相を含む乳化油脂組成物であって、
    前記油相において、10℃の固体脂含有量と、35℃の固体脂肪含有量との差が14.0%以上45.0%以下であり、
    前記乳化油脂組成物が、HLBが10以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、大豆由来麹発酵物と、無機塩類とを含み、
    前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記乳化油脂組成物に対して0.10質量%以上6.50質量%以下であり、
    前記無機塩類の含有量が、前記乳化油脂組成物に対して0.50質量%以上である、乳化油脂組成物。
  2. 前記水相が前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載の乳化油脂組成物。
  3. 前記大豆由来麹発酵物が、味噌及び/又は醤油である、請求項1又は2に記載の乳化油脂組成物。
  4. 前記味噌が粉末味噌であり、かつその粒度が、5.0μm以上100.0μm以下である、請求項3に記載の乳化油脂組成物。
  5. 前記無機塩類の含有量が、前記水相に対して3.5質量%以上18.0質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の乳化油脂組成物。
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