JP2023098322A - 発酵麦芽飲料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒポキサンチンの含有量が低減され、そのことでプリン体濃度が十分に低減された発酵麦芽飲料を提供すること。【解決手段】発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、1ppm未満のヒポキサンチン濃度を有する発酵麦芽飲料。【選択図】なし
Description
本発明は、ビール等の発酵麦芽飲料に関し、特に、プリン体濃度が低減された発酵麦芽飲料に関する。
プリン体は、穀物や豆類、肉、魚など天然物全般に含まれている生体分子であり、これらを原料とする飲食品には比較的多く含まれている。一方で、プリン体は、高尿酸血症、ひいては痛風の原因となるため、消費者の健康志向から、プリン体の含有量がより低い飲食品への関心が高まっている。特に、アルコール飲料では、アルコール代謝により尿酸の生成が促進される。このため、麦芽等の麦類を原料とし、比較的プリン体濃度が高い発酵麦芽飲料においては、プリン体濃度が低減されつつ、従来のビール等が有する香味を保持したビール様発酵麦芽飲料に対する需要が存在する。
特許文献1には、発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程前に、煮沸処理後に得られた発酵原料液にプリンヌクレオシダーゼを混合する、又は前記発酵工程中の発酵液にプリンヌクレオシダーゼを混合することを特徴とする、発酵アルコール飲料の製造方法が記載されている。特許文献1の発酵アルコール飲料の製造方法によれば、製造される発酵アルコール飲料のプリン体濃度が低減される(要約)。
特許文献1には、実施例として、発酵原料に植物タンパク質と液糖のみを使用した発酵アルコール飲料が製造されている。具体的には、原料混合物にプリンヌクレオシダーゼ反応を行った後煮沸し、発酵させたサンプル2、原料混合物を煮沸した後、発酵させると同時にプリンヌクレオシダーゼ反応を行ったサンプル3、及びプリンヌクレオシダーゼを使用しなかったサンプル1が製造されて、プリン体濃度が測定されている。
特許文献1、段落0056の表1には、サンプル1~3のアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン及びプリン体合計の濃度について、サンプル1の発酵原料液の濃度を1とした場合の相対値が示されている。例えば、サンプル3では、アデニン、グアニン、プリン体合計の濃度は低下しているが、ヒポキサンチン及びキサンチンの濃度は低下せず、むしろ増大している。
特許文献2には、麦汁にヌクレオシドホスホリラーゼ及び/又はヌクレオシダーゼを作用させた後、煮沸処理して酵素を失活させ、その後さらに酵母を接種して発酵させることにより、発酵ビール様発泡性飲料を製造する方法が記載されている。ヌクレオシダーゼ及び/又はヌクレオシドホスホリラーゼを用いることにより、麦汁に含まれるプリン体のうちプリンヌクレオシドがプリン塩基に変換され、変換されたプリン塩基が酵母に資化されることによって、全体のプリン体が低減される。
特許文献2では、総プリン量は、プリン塩基とプリン塩基量に換算したプリンヌクレオシドの和として示され(第14頁第18~19行)、プリンヌクレオシドは、アデノシンとグアノシンとイノシンの総和として、そして、プリン塩基は、アデニンとグアニンとキサンチンの総和として示されている(第16頁第6~8行、表1)。
また、特許文献2では、ヌクレオシダ一ゼを破砕麦芽と共に加えて製造したヌクレオシド分解麦汁を用いてビール醸造が行われ、アデニン及びグアニンが発酵中に全て資化されて、発酵終了時には検出されなくなっている(第22頁第9行~第23頁第3行、図11A)。
特許文献3には、ビールや発泡酒等の発酵麦芽飲料を製造する際に、吸着剤、特に活性炭を用いて処理することにより、麦汁中のプリン体化合物を選択的に吸着、除去することができることが記載されている。特許文献3では、実施例として、ビールに多く含まれるプリン体化合物であるアデノシン、グアノシン、グアニンの3種のプリン体化合物の活性炭による吸着能が試験され、いずれも十分に除去されることが記載されている(段落0014)。
麦芽に由来し、発酵麦芽飲料に含まれるプリン体については、ヒポキサンチンのように、従来の発酵麦芽飲料のプリン体を低減する技術では低減されにくい種類が存在する。そのため、発酵麦芽飲料のプリン体を低減させる程度には未だ限界があり、プリン体濃度が十分に低減された発酵麦芽飲料を提供することは困難である。
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、ヒポキサンチンの含有量が低減され、そのことでプリン体濃度が十分に低減された発酵麦芽飲料を提供することにある。
本明細書でいうプリン体とは、ビールを過塩素酸を使用して加水分解することで得られるプリン塩基、即ち、アデニン、グアニン、キサンチン及びヒポキサンチンをいう。本願明細書でいうプリン体濃度とは、前記プリン塩基の合計濃度をいう。
本発明は、発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、1ppm未満のヒポキサンチン濃度を有する発酵麦芽飲料を提供する。
ある一形態においては、前記発酵麦芽飲料は、発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、10ppm以下のプリン体濃度を有する。
ある一形態においては、前記発酵麦芽飲料は、発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、3ppm以下のアデニン濃度、3ppm以下のグアニン濃度、及び3ppm以下のキサンチン濃度を有する。
ある一形態においては、前記発酵麦芽飲料は、50%以上の麦芽使用比率を有する。
ある一形態においては、前記発酵麦芽飲料は、3~6V/V%のアルコール濃度を有する。
ある一形態においては、添加されたアルコールを含有しない。
また、本発明は、麦汁を含有し、10ppm以下のアデニン濃度及び10ppm以下のグアニン濃度を有する発酵原料液に、酵母及びプリンヌクレオシダーゼを添加して発酵させる工程、を包含する、発酵麦芽飲料の製造方法を提供する。
ある一形態においては、前記発酵原料液は、吸着剤に接触させることで、アデニン濃度及びグアニン濃度が低減された麦汁を含むものである。
ある一形態においては、前記発酵原料液は、麦芽以外の植物に由来する核酸を含有しない。
ある一形態においては、前記発酵麦芽飲料の製造方法は、アルコールを添加する工程を包含しない。
本発明によれば、ヒポキサンチンの含有量が低減され、そのことでプリン体濃度が十分に低減された発酵麦芽飲料が提供される。
発酵麦芽飲料とは、原料として麦芽を使用し、原料に酵母を接種して発酵させる発酵工程を経て製造される飲料をいう。発酵麦芽飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又は低アルコール飲料であってもよい。発酵麦芽飲料は、アルコール含有蒸留液が混和されたリキュール類であってもよい。
アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。本発明の発酵麦芽飲料は、ビールテイスト飲料であることが好ましい。ビールテイスト飲料には、ビール、発泡酒、ビール又は発泡酒をアルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類等が含まれる。
プリン体の定量においては、アデニル酸及びアデノシンはアデニンと区別して定量することが困難であり、グアニル酸及びグアノシンはグアニンと区別して定量することが困難である。このため、本明細書では、「アデニン」には、アデニン塩基とアデニル酸とアデノシンの両方が含まれる。「グアニン」も同様である。発酵原料液や飲料中のプリン体濃度は、例えば、過塩素酸による加水分解後にLC-MS/MSを用いて検出する方法(「酒類のプリン体の微量分析のご案内」、財団法人日本食品分析センター、インターネット<URL: http://www.jfrl.or.jp/item/nutrition/post-31.html>、平成25年1月検索)や、LC-UVを用いた藤森らの方法(藤森ら:「尿酸」、1985年、第9巻、第2号、第128ページ。)等により測定することができる。
以下に、本発明の発酵麦芽飲料の製造方法を具体的に説明する。本発明の発酵麦芽飲料は、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒及び濾過の工程を経て製造することができる。
<仕込み工程>
仕込工程においては、発酵原料と原料水とを含む混合物を調製し、調製された混合物を加温して澱粉質を糖化して糖液を調製する糖化処理と、得られた糖液を煮沸する煮沸処理と、煮沸処理で得た煮汁から不溶物を除去する清澄化処理とを行う。
仕込工程においては、発酵原料と原料水とを含む混合物を調製し、調製された混合物を加温して澱粉質を糖化して糖液を調製する糖化処理と、得られた糖液を煮沸する煮沸処理と、煮沸処理で得た煮汁から不溶物を除去する清澄化処理とを行う。
(糖化処理)
発酵原料は麦芽を含有する。麦芽の含有量は、麦芽使用比率として、好ましくは、50質量%以上になる量である。そのことで、得られる発酵麦芽飲料のコク感及びビールらしい香味が向上する。麦芽使用比率とは、ホップと醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。発酵原料に用いる麦芽は、大麦麦芽であってもよく、小麦麦芽であってもよい。
発酵原料は麦芽を含有する。麦芽の含有量は、麦芽使用比率として、好ましくは、50質量%以上になる量である。そのことで、得られる発酵麦芽飲料のコク感及びビールらしい香味が向上する。麦芽使用比率とは、ホップと醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。発酵原料に用いる麦芽は、大麦麦芽であってもよく、小麦麦芽であってもよい。
麦芽使用比率は、得られる発酵麦芽飲料のコク感及びビールらしい香味と、飲用後のキレ感及び爽快感を両立させる観点から、好ましくは50%~100%、より好ましくは50%~80%である。
発酵原料は、副原料を含んでよい。副原料とは、麦芽とホップ以外の原料を意味する。該副原料として、例えば、大麦、小麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等のデンプン質原料や、液糖及びショ糖等の糖質原料がある。ここで、液糖とは、デンプン質を酸又は糖化酵素により分解、糖化して製造されたものであり、主にグルコース、マルトース、マルトトリオース等が含まれている。その他、香味を付与又は改善することを目的として用いられるスパイス類、ハーブ類、及び果物等も、副原料に含まれる。
発酵原料は、得られる発酵麦芽飲料に含まれるプリン体濃度を低減する観点から、麦芽以外に核酸を含有する原料を含まないことが好ましい。
糖液の調製は、穀物由来の酵素又は別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35~70℃で20~90分間保持する等、常法により行うことができる。なお、酵素を利用する糖化処理は、原料混合物が糖質原料であってデンプン質原料を含まない場合は、行う必要がない。
一般に、麦芽を酵素処理して得た糖液を麦汁という。麦汁は、麦芽エキスのように、濃縮した形態のものを使用してもよい。
(煮沸処理)
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。特にホップは、煮沸処理前又は煮沸処理中に添加することが好ましい。ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)及び煮沸条件は、適宜決定することができる。
(清澄化処理)
煮沸後の煮汁は、沈殿により生じたタンパク質等の不溶物を除去することが好ましい。不溶物の除去は、いずれの固液分離手段を使用して行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50~80℃程度で行われる。不溶物を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この不溶物を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
煮沸後の煮汁は、沈殿により生じたタンパク質等の不溶物を除去することが好ましい。不溶物の除去は、いずれの固液分離手段を使用して行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50~80℃程度で行われる。不溶物を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この不溶物を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
(アデニン、グアニン低減処理)
本発明の発酵麦芽飲料の製造方法では、発酵原料液として、好ましくは、アデニン濃度が10ppm以下に、グアニン濃度が10ppm以下になるまでプリン体濃度を低減させた上記煮汁を使用する。後述する発酵条件を使用して、かかる発酵原料液を発酵させることで、発酵中に、発酵液のヒポキサンチンの濃度を低減させることができる。発酵原料液のアデニン濃度は、より好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。発酵原料液のグアニン濃度は、より好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。
本発明の発酵麦芽飲料の製造方法では、発酵原料液として、好ましくは、アデニン濃度が10ppm以下に、グアニン濃度が10ppm以下になるまでプリン体濃度を低減させた上記煮汁を使用する。後述する発酵条件を使用して、かかる発酵原料液を発酵させることで、発酵中に、発酵液のヒポキサンチンの濃度を低減させることができる。発酵原料液のアデニン濃度は、より好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。発酵原料液のグアニン濃度は、より好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下である。
発酵原料液のアデニン濃度及びグアニン濃度を低減する方法としては、例えば、発酵原料液を吸着剤に接触させ、アデニン及びグアニンを吸着剤に吸着させて、発酵原料液から分離除去する方法が挙げられる。吸着剤は、糖液又は麦芽エキスに接触させてもよい。かかる場合、糖液又は麦芽エキスからアデニン及びグアニンが分離除去して、発酵原料液に導入されることがなくなる。発酵原料液からアデニン及びグアニンを除去するのに好ましい吸着剤には、活性炭が挙げられる。
本願発明で使用する発酵原料液は、発酵前において、例えば1~10ppm、好ましくは1~7ppm、より好ましくは1~4ppmのヒポキサンチン濃度を有している。
吸着剤は、使用量を増大させた場合、プリン体だけではなく、色素や苦味物質、香気成分も吸着除去されて、その結果、得られる発酵麦芽飲料のビールらしい香味が損なわれる。発酵麦芽飲料のビールらしい香味が損なわれないために、吸着剤の使用量は、プリン体濃度が、初期の濃度を基準にして、例えば50~11%、好ましくは40~15%、より好ましくは30~18%に低減する程度に制限する。
<発酵工程>
発酵原料液は、プリンヌクレオシダーゼ処理及び発酵に供する。プリンヌクレオシダーゼ処理は発酵原料液の発酵が終了するまでに行えば足り、発酵開始前に行ってよく、発酵開始後に行ってもよい。プリンヌクレオシダーゼ処理を行うことにより、ヒポキサンチン、及びプリンヌクレオシダーゼ処理により得られたアデニン及びグアニンを、酵母に資化させることで消費できる。
発酵原料液は、プリンヌクレオシダーゼ処理及び発酵に供する。プリンヌクレオシダーゼ処理は発酵原料液の発酵が終了するまでに行えば足り、発酵開始前に行ってよく、発酵開始後に行ってもよい。プリンヌクレオシダーゼ処理を行うことにより、ヒポキサンチン、及びプリンヌクレオシダーゼ処理により得られたアデニン及びグアニンを、酵母に資化させることで消費できる。
プリンヌクレオシダーゼ処理は、発酵工程前に、煮沸処理後、プリンヌクレオシダーゼが熱変性を起こさない温度以下に冷却した発酵原料液にプリンヌクレオシダーゼを混合し、その後当該発酵原料液に酵母を接種して発酵を行ってよく、発酵工程中の発酵液にプリンヌクレオシダーゼを混合してもよい。酵母接種前の発酵原料液にプリンヌクレオシダーゼを添加した場合、プリンヌクレオシダーゼが酵素活性を示す温度で所定時間プリンヌクレオシダーゼ処理を行った後に酵母を接種してよく、プリンヌクレオシダーゼを添加後ただちに酵母を接種して発酵を開始してもよい。
本発明において用いられるプリンヌクレオシダーゼは、微生物由来の酵素であってもよく、動物由来の酵素であってもよく、植物由来の酵素であってもよい。また、天然型の酵素であってもよく、天然型の酵素に人工的に適宜変異等が導入された改変体であってもよい。
プリンヌクレオシダーゼ処理におけるプリンヌクレオシダーゼの量や反応温度、反応時間等の条件は、使用するプリンヌクレオシダーゼの種類や酵素活性の強度等を考慮して適宜調整することができる。例えば、使用するプリンヌクレオシダーゼの量を多くしたり、プリンヌクレオシダーゼ処理の時間を長くすることにより、プリンヌクレオシダーゼ処理後の溶液中のヒポキサンチンの含有量をより低下させることができる。なお、本発明におけるヌクレオシダーゼの1Uは、1ppmのグアニンをグアノシンから遊離させるのに必要な酵素量として定義する。
例えば、100U/kg grist(穀物原料1kg当たり100U)以上、好ましくは500U/kg grist以上、より好ましくは1000U/kg grist以上のプリンヌクレオシダーゼを用いて、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは60分間以上、よりさらに好ましくは60~120分間保持することにより、効率よくプリンヌクレオシダーゼ処理を行うことができる。また、プリンヌクレオシダーゼ処理の時間を長くすることにより、使用するプリンヌクレオシダーゼの量を少なく抑えることもできる。
発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のプリン体濃度を十分に低減する観点から、ヒポキサンチン濃度が1ppm未満、好ましくは0.9ppm以下、より好ましくは0.8ppm以下である。但し、発酵液のヒポキサンチン濃度は、発酵過程において生成したアルコールの濃度が4V/V%になるように換算された値である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のプリン体濃度を十分に低減する観点から、プリン体濃度が7.8ppm以下、好ましくは6.5ppm以下、より好ましくは5.5ppm以下である。但し、発酵液のプリン体濃度は、発酵過程において生成したアルコールの濃度が4V/V%になるように換算された値である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のプリン体濃度を十分に低減する観点から、アデニン濃度が2.4ppm以下、好ましくは2ppm以下、より好ましくは1.5ppm以下である。但し、発酵液のアデニン濃度は、発酵過程において生成したアルコールの濃度が4V/V%になるように換算された値である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のプリン体濃度を十分に低減する観点から、グアニン濃度が2.65ppm以下、好ましくは2ppm以下、より好ましくは1.6ppm以下である。但し、発酵液のグアニン濃度は、発酵過程において生成したアルコールの濃度が4V/V%になるように換算された値である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のプリン体濃度を十分に低減する観点から、キサンチン濃度が3ppm以下、好ましくは2ppm以下、より好ましくは1.7ppm以下である。但し、発酵液のキサンチン濃度は、発酵過程において生成したアルコールの濃度が4V/V%になるように換算された値である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のビールらしい飲み応えを向上させる観点から、アルコール濃度が3~8体積%、好ましくは4~8体積%、より好ましくは5~8体積%である。
発酵工程後に得られる発酵液は、発酵麦芽飲料のビールらしい飲み応えを向上させる観点から、原麦汁エキス濃度が2~12質量%、好ましくは3~12質量%、より好ましくは4~12質量%である。
<貯酒工程及び濾過工程>
次いで、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4~0.5μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。得られた発酵ビール様発泡性飲料は、通常、充填工程により瓶詰めされて、製品として出荷される。
次いで、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4~0.5μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。得られた発酵ビール様発泡性飲料は、通常、充填工程により瓶詰めされて、製品として出荷される。
その他、酵母による発酵工程以降の工程において、例えば、加水してアルコール濃度が調整された、例えば、アルコール濃度が4%に調整された、発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。また、例えば、アルコール含有蒸留液又はアルコールと混和することにより、酒税法におけるリキュール類に相当する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。アルコール含有蒸留液等の添加は、アルコール濃度の調整のための加水前であってもよく、加水後であってもよい。添加するアルコール含有蒸留液等は、より好ましい麦感を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造し得ることから、麦スピリッツが好ましい。
尚、本発明の発酵麦芽飲料には、アルコール含有蒸留液又はアルコールを添加しなくてもよい。その場合は、発酵麦芽飲料は、発酵過程で生成したアルコールのみを含むことになる。
充填工程前に、プリン体濃度を所望の範囲内に調整するために、濾過前又は濾過後の発酵液に適量の加水を行って希釈してもよい。本発明に係る製造方法においては、煮沸処理後の植物タンパクをプリンヌクレオシダーゼ処理するため、植物タンパク由来のプリン体を効率よく酵母に資化させられるため、プリン体濃度が充分に低い発酵液を製造することができる。このため、プリン体濃度を例えば0.5mg/100mL以下、好ましくは0.4mg/100mL以下、より好ましくは0.2mg/100mL以下になるように加水する場合でも、加水量を抑えることができ、アルコール濃度やエキス分の低下を抑えることができる。つまり、本発明に係る製造方法により、アルコール濃度やエキス分を過度に低下させる必要なく、プリン体濃度が充分に低い発酵アルコール飲料を製造することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例>
1.1倍濃縮麦芽エキスに活性炭を添加し、室温で1時間撹拌した後に、活性炭を除去した。煮沸釜に、活性炭処理後の麦芽エキス、温水、ショ糖、ホップを添加し、得られた麦汁を60分間煮沸した。なお、麦芽エキスは麦芽使用比率が60w/w%となる量で添加した。煮沸後、蒸発分の温水を追加し、ワールプール槽にて熱トルーブを除去した後、プレートクーラーを用いて8℃まで冷却し、冷麦汁煮沸液を得た。
1.1倍濃縮麦芽エキスに活性炭を添加し、室温で1時間撹拌した後に、活性炭を除去した。煮沸釜に、活性炭処理後の麦芽エキス、温水、ショ糖、ホップを添加し、得られた麦汁を60分間煮沸した。なお、麦芽エキスは麦芽使用比率が60w/w%となる量で添加した。煮沸後、蒸発分の温水を追加し、ワールプール槽にて熱トルーブを除去した後、プレートクーラーを用いて8℃まで冷却し、冷麦汁煮沸液を得た。
冷麦汁煮沸液のプリン体濃度を測定した。アデニン濃度は2.09ppm、グアニン濃度は2.86ppm、キサンチン濃度は2.87ppm及びヒポキサンチン濃度は3.95ppmであり、これらを合計したプリン体濃度は11.77ppmであった。
活性炭処理前の麦芽エキスを使用した場合、冷麦汁煮沸液中のプリン体濃度は、58.85ppmになる。つまり、麦芽エキスを活性炭処理することで、冷麦汁煮沸液中のプリン体濃度は、活性炭処理前の麦芽エキスを使用した場合を基準にして、20%に低減されている。
この冷麦汁煮沸液を発酵タンクへ移送する途中で、ビール酵母とプリンヌクレオシダーゼを添加した。その後、7日間10℃前後で発酵させた後、ビール酵母を除去した。タンクを移し替えて発酵液を7日間10℃前後で熟成させた後、-1℃まで冷やし安定化させた。その後、脱気水を加えてアルコール濃度を4体積%に調節し、珪藻土を用いて濾過し、麦芽発酵飲料を製造した。
<プリン体濃度の測定>
得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定した。発酵原料液及び発酵麦芽飲料のプリン体の含有量は、過塩素酸処理後、LC-UVを用いた藤森らの方法(藤森ら:「尿酸」、1985年、第9巻、第2号、第128ページ。)に準じて、下記の条件で定量した。定量の結果を表1に示す。
得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定した。発酵原料液及び発酵麦芽飲料のプリン体の含有量は、過塩素酸処理後、LC-UVを用いた藤森らの方法(藤森ら:「尿酸」、1985年、第9巻、第2号、第128ページ。)に準じて、下記の条件で定量した。定量の結果を表1に示す。
カラム:Shodex Asahipak GS-320 HQ(7.5mm I.D.×300mm)
溶出液:50mM KH2PO4(pH 2.5)
溶出速度:0.8mL/min
検出器:UV(260nm)
カラム温度:35℃
溶出液:50mM KH2PO4(pH 2.5)
溶出速度:0.8mL/min
検出器:UV(260nm)
カラム温度:35℃
なお、予め過塩素酸処理を施した後にLC-MS/MS分析を行うため、溶液中のアデノシン及びアデニル酸はアデニンと区別されない。つまり、測定されたアデニン含有量は、アデニン塩基とアデノシンとアデニル酸の合計含有量である。グアニンについても同様である。
<官能評価>
発酵麦芽飲料を約4℃の液温に調温し、官能評価を行った。評価項目として、「ビールらしい香味」を設定し、訓練されたビール専門のパネリスト6名が、後述の基準に従って採点した。パネリスト全員の採点の平均値を各評価項目の評点とした。官能評価の結果を表1に示す。
発酵麦芽飲料を約4℃の液温に調温し、官能評価を行った。評価項目として、「ビールらしい香味」を設定し、訓練されたビール専門のパネリスト6名が、後述の基準に従って採点した。パネリスト全員の採点の平均値を各評価項目の評点とした。官能評価の結果を表1に示す。
ビールらしい香味の評価基準:
ビールらしい香味は、アサヒビール株式会社製「アサヒスーパードライ」(商品名)を5点、炭酸水を1点とし、5段階で採点した。評価点が3点以上の場合に良いと判断される。
飲み応えの評価基準:
飲み応えは、アサヒビール株式会社製「アサヒスーパードライ」(商品名)を5点、炭酸水を1点とし、5段階で採点した。評価点が4点以上の場合に良いと判断される。
ビールらしい香味は、アサヒビール株式会社製「アサヒスーパードライ」(商品名)を5点、炭酸水を1点とし、5段階で採点した。評価点が3点以上の場合に良いと判断される。
飲み応えの評価基準:
飲み応えは、アサヒビール株式会社製「アサヒスーパードライ」(商品名)を5点、炭酸水を1点とし、5段階で採点した。評価点が4点以上の場合に良いと判断される。
<比較例1>
冷麦汁煮沸液を発酵タンクへ移送する途中で、プリンヌクレオシダーゼを添加しないこと以外は実施例と同様にして麦芽発酵飲料を製造し、得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定し、官能評価を行った。結果を表1に示す。
冷麦汁煮沸液を発酵タンクへ移送する途中で、プリンヌクレオシダーゼを添加しないこと以外は実施例と同様にして麦芽発酵飲料を製造し、得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定し、官能評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
麦汁の成分としてプリンヌクレオシダーゼを添加すること、及び冷麦汁煮沸液を発酵タンクへ移送する途中で、プリンヌクレオシダーゼを添加しないこと以外は実施例と同様にして麦芽発酵飲料を製造し、得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定し、官能評価を行った。結果を表1に示す。
麦汁の成分としてプリンヌクレオシダーゼを添加すること、及び冷麦汁煮沸液を発酵タンクへ移送する途中で、プリンヌクレオシダーゼを添加しないこと以外は実施例と同様にして麦芽発酵飲料を製造し、得られた発酵麦芽飲料のプリン体濃度を測定し、官能評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (10)
- 発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、1ppm未満のヒポキサンチン濃度を有する発酵麦芽飲料。
- 発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、10ppm以下のプリン体濃度を有する請求項1に記載の発酵麦芽飲料。
- 発酵過程で生成したアルコールの濃度4V/V%あたり、3ppm以下のアデニン濃度、3ppm以下のグアニン濃度、及び3ppm以下のキサンチン濃度を有する、請求項1又は2に記載の発酵麦芽飲料。
- 50%以上の麦芽使用比率を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の発酵麦芽飲料。
- 3~6V/V%のアルコール濃度を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の発酵麦芽飲料。
- 添加されたアルコールを含有しない請求項1~5のいずれか一項に記載の発酵麦芽飲料。
- 麦汁を含有し、10ppm以下のアデニン濃度及び10ppm以下のグアニン濃度を有する発酵原料液に、酵母及びプリンヌクレオシダーゼを添加して発酵させる工程、を包含する、発酵麦芽飲料の製造方法。
- 前記発酵原料液は、吸着剤に接触させることで、アデニン濃度及びグアニン濃度が低減された麦汁を含むものである、請求項7に記載の発酵麦芽飲料の製造方法。
- 前記発酵原料液は、麦芽以外の植物に由来する核酸を含有しない請求項7又は8に記載の発酵麦芽飲料の製造方法。
- アルコールを添加する工程を包含しない、請求項7~9のいずれか一項に記載の発酵麦芽飲料の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2021215018A JP2023098322A (ja) | 2021-12-28 | 2021-12-28 | 発酵麦芽飲料及びその製造方法 |
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