JP2023073047A - ガラス形成剤およびその利用 - Google Patents

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Yoshihiro Suzuki
結希子 菊川
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Abstract

【課題】釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性を好適に向上させることができる技術を提供する。【解決手段】ここで開示されるガラス形成剤は、基材の上に形成された装飾膜を保護するためのガラス膜を形成するガラス形成剤である。上記ガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素を含んでおり、上記ガラスマトリクス元素として、少なくともSiと希土類元素とを含み、上記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、上記希土類元素の含有量は1モル%~70モル%である。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス形成剤およびその利用に関する。
陶磁器、ガラス器、琺瑯器等の物品の表面には、優美又は豪華な印象を与えるために、貴金属成分を含む装飾膜が形成されることがある。この種の物品は、典型的には、基材の上に所定の成分を含む装飾用組成物を付与した後、焼成処理を行うことによって形成される。
ところで、この種の物品には、例えばアルカリ性洗剤に浸漬されることが想定されるもの(例えば、食器等)がある。このとき、基材の上に形成された装飾膜がかかるアルカリ性洗剤によって損傷するおそれがある。このため、近年では、耐アルカリ性に優れた装飾膜を形成することができる装飾用組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、ニッケル等の耐アルカリ性を向上させるための元素を含むセラミック上絵付用水金が開示されている。
特許第3784973号公報
ところで、耐水性等をさらに強化するべく、基材として釉薬層が付与されたものが用いられることがある。そして、本発明者らの検討によると、かかる釉薬層はアルカリ性洗剤等のアルカリ性溶液によって損傷し易い傾向にあり、これによって、該釉薬層の上に形成された装飾膜が剥離し易いことが分かった。したがって、例えば基材として釉薬層が付与されたものを用いた場合においても、アルカリ性溶液による装飾膜の剥離を好適に防止することができる技術の開発が求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性を好適に向上させることができる技術を提供することである。
かかる目的を実現するべく、本発明は、基材と、該基材の上に形成された釉薬層と、該釉薬層の上に形成された装飾膜と、ここで開示されるいずれかのガラス形成剤によって形成されるガラス膜であって、上記釉薬層と上記装飾膜との間および/または上記装飾膜の上に存在するガラス膜と、を備えた物品を提供する。かかる物品において、上記基材、上記釉薬層、上記装飾膜および上記ガラス膜のうち、上記ガラス膜において上記希土類元素が最も多く存在している。
本発明者らは、ここで開示されるガラス形成剤から形成されるガラス膜を、釉薬層と装飾膜との間および/または装飾膜の上に具備させた構造を有する物品によると、例えばアルカリ性溶液に曝露された場合においてもガラス膜によって釉薬層が保護されるため、装飾膜の剥離を好適に抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、特に限定解釈されることを意図したものではないが、上記ガラス膜中には希土類元素が存在しており、かかる希土類元素は酸素親和性が高くガラスマトリクス中にドープされた態様で存在し得るため、ガラスの網目構造が引き締められるものと考えられ得る。さらに、ガラスマトリクス中の希土類酸化物は、アルカリ性溶液の曝露によって他の成分が溶出した後も残留して被膜化し得る。これらによって、ガラスマトリクスの内部へのアルカリ成分の侵入を好適に防止し得る。したがって、かかるガラス膜によってアルカリ成分から釉薬層が保護されるため、装飾膜の耐アルカリ性を好適に向上させることができるものと考えられ得る。
ここで開示される物品の好適な一態様において、上記ガラス膜の平均厚みは20nm~500nmである。物品がこのように平均厚みの小さいガラス膜を備えることにより、装飾膜の色や質感が好適に発揮され得る。
ここで開示される物品は、例えば上記基材の少なくとも表面はセラミックスから構成され得る。また、ここで開示される物品は、例えば食器を構成することができる。
他の側面として、本発明は、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜を保護するためのガラス膜を形成するガラス形成剤を提供する。上記ガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素を含んでおり、上記ガラスマトリクス元素として、少なくともSiと希土類元素とを含み、上記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、上記希土類元素の含有量は1モル%~70モル%である。
本発明者らは、ガラスマトリクス元素として希土類元素を所定量含有するガラス形成剤によると、耐アルカリ性に優れるガラス膜を形成することができることを見出した。
ここで開示されるガラス形成剤の好適な一態様において、上記希土類元素は、Sm、Y、PrおよびNdからなる群より選択される少なくとも1種である。希土類元素として上述したような元素を含有するガラス形成剤において、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性をより好適に向上させることができる。
ここで開示されるガラス形成剤の好適な一態様において、上記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、上記希土類元素の含有量は3モル%~30モル%である。希土類元素の含有量を上記範囲内としたガラス形成剤によると、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性をより好適に向上させることができる。
ここで開示されるガラス形成剤の好適な一態様において、上記ガラスマトリクス元素として、Biをさらに含む。ガラスマトリクス元素としてBiをさらに含むガラス形成剤において、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性をより好適に向上させることができる。
ここで開示されるガラス形成剤は、例えば少なくとも表面がセラミックスから構成されている基材であって、かつ、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜を保護するためのガラス膜の形成に好適に適用され得る。
第1実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。 第2実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。 第3実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。
以下、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、ガラス形成剤、装飾用組成物、釉薬の詳細な調製手段や物品の製造手順等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」との表記は、A以上B以下を意味する。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
<ガラス形成剤>
ここで開示されるガラス形成剤は、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜を保護するためのガラス膜の形成に用いられる。また、ここで開示されるガラス形成剤はガラスマトリクス元素を含んでおり、該ガラスマトリクス元素として、少なくともSi(ケイ素)と希土類元素とを含んでいる。また、上記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、上記希土類元素の含有量(以下、単に「ガラス形成剤中の希土類元素の含有量」ともいう)は1モル%~70モル%である。以下、各構成成分について説明する。
(1)ガラスマトリクス元素
本明細書および特許請求の範囲において「ガラスマトリクス元素」とは、ガラス膜(典型的には、酸化物ガラス膜)が形成された際に、ガラスマトリクスを構築し得る金属元素および半金属元素を包含する概念である。かかるガラスマトリクス形成元素の一例としては、Al、Ti、Zr、Si、Bi、Sm、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Sn、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、B、V、Fe、Cu、P、Sc、Pm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ni、In、Co、Cr等が挙げられる。また、ガラス形成剤中のガラスマトリクス元素の形態は、特に限定されず、金属レジネート、錯体、重合体、微細な粒子(ガラスフリット)等の種々の形態をとり得る。上述したように、ここで開示されるガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素として、少なくともSiと希土類元素とを含有する。
Siは、焼成処理後に酸化ケイ素(SiO)となり、ガラスマトリクスの骨格を構成し得る元素である。ガラス形成剤におけるガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたときのSiの含有量(モル%)(以下、単に「ガラス形成剤中のSiの含有量」ともいう)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。ガラス形成剤中のSiの含有量は、例えば20モル%以上であってもよく、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上であってもよい。また、ガラス形成剤中のSiの含有量は、概ね99モル%以下であり、例えば95モル%以下であってもよく、90モル%以下、85モル%以下であってもよい。
希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のなかから特に制限なく選択することができる。希土類元素は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの希土類元素は酸素親和性が高いため、例えばガラスマトリクス中にドープされることでガラスの網目構造を引き締めることができる。また、希土類酸化物は、アルカリ性溶液の曝露によって他の成分が溶出した後も残留して被膜化する。これらによって、ガラスマトリクスの内部へのアルカリ成分の侵入を好適に防止することができる。また、上述の希土類元素のなかでもSm、Y、Pr、Ndは、ガラス膜の耐アルカリ性を好適に向上させることができるため、好ましく用いられ得る。
ここで開示されるガラス形成剤では、希土類元素による耐アルカリ性向上効果を十分に発揮させるという観点から、ガラス形成剤中の希土類元素の含有量を1モル%以上に規定している。また、ガラス形成剤中の希土類元素の含有量(モル%)(2種類以上含有する場合は、その合計モル%)は、ガラス膜の耐アルカリ性をより好適に向上させるという観点から、好ましくは2モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上である。一方、ガラス膜中の希土類元素の含有量を増大させると、ガラスマトリクスの骨格を形成する成分であるSi等の割合が低下することにより、ガラス膜そのものの機械的強度が低下する傾向にある。このため、ここで開示されるガラス形成剤では、ガラス形成剤中の希土類元素の含有量を70モル%以下に規定している。また、ガラス形成剤中の希土類元素の含有量は、好ましくは65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下、40モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。即ち、ガラス形成剤中の希土類元素の含有量は、好ましくは3モル%~30モル%とすることができる。
また、ここで開示されるガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素としてBi(ビスマス)をさらに含有していることが好ましい。Biは、焼成処理後に酸化ビスマス(Bi)となり、ガラスマトリクスの骨格の一部を構成し得る元素である。かかるBiはガラスを軟化させる効果があるため、ガラス膜の他の層(あるいは膜)への接着性が向上するとされる。かかる接着性の向上によって、アルカリ性溶液に曝露された際のガラス膜の剥離を好適に抑止することができる。ガラス形成剤におけるガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたときのBiの含有量(モル%)(以下、単に「ガラス形成剤中のBiの含有量」ともいう)は、例えば1モル%以上であってよく、3モル%以上、5モル%以上、7モル%以上であってもよい。また、ガラスマトリクス元素中のBiの含有量の上限は、例えば20モル%以下であってもよく、15モル%以下、11モル%以下であってもよい。
ここで開示されるガラス形成剤は、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて、例えば上述したようなガラスマトリクス元素のうち、Si、希土類元素、Bi以外の元素(以下、「任意元素」ともいう)を含んでいてもよい。上記任意元素は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ガラス形成剤におけるガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたときの任意元素の含有量(モル%)(以下、単に「ガラス形成剤中の任意元素の含有量」ともいう。また、2種類以上含有する場合は、その合計モル%を意味する。)の下限値は特に限定されず、0.1モル%以上であってもよく、0.5モル%以上であってもよく、1.0モル%以上であってもよい。一方、ガラス膜の耐アルカリ性に影響する有効成分(Si、希土類元素等)の含有量の相対的な低下を防止するという観点から、ガラス形成剤中の任意元素の含有量の上限は、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下である。
(2)他の成分
以上、ここで開示されるガラス形成剤が含有するガラスマトリクス元素について説明した。なお、ここで開示されるガラス形成剤は、上述した成分の他に、ガラス膜の成形性などを考慮して種々の成分が添加されていることが好ましい。以下、ここで開示されるガラス形成剤に含まれ得る他の成分について説明する。但し、以下で説明する他の成分は、ここで開示される技術の効果を著しく妨げない限りにおいて、ガラス形成剤に使用され得る従来公知の成分を特に制限なく使用することができる。すなわち、ここで開示されるガラス形成剤は、その用途等に応じて、上述した必須成分以外の成分を適宜変更することができる。
まず、上述したとおり、ここで開示されるガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素の各々を金属レジネートの状態で含有していてもよい。金属レジネートは、金属を含む有機化合物(または、それを含むペースト,スラリー,インク)のことを意味し得る。かかる有機化合物は、例えば、金属と、有機物として金属レジネートに用いられ得る従来公知の樹脂材料等を含み得る。かかる樹脂材料としては、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、アビエチン酸、ナフテン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ネオデカン酸などの高炭素数(例えば炭素数8以上)のカルボン酸;スルホン酸;ロジン等に含まれる樹脂酸;テレピン油、ラベンダー油等の精油成分を含む樹脂硫化バルサム、アルキルメルカプチド(アルキルチオラート)、アリールメルカプチド(アリールチオラート)、メルカプトカルボン酸エステル、アルコキシド等が挙げられる。かかる金属レジネートとしては、例えば市販のものを用いることができる。なお、例えばSiレジネートを用いる場合、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、1種類のSiレジネートを用いてもよいし、2種類以上のSiレジネートを混合して用いてもよい。他の元素のレジネートについても同様である。
また、ガラスマトリクス元素の各々を金属レジネートの状態で含有するガラス形成剤では、該金属レジネートを分散または溶解させる溶媒(典型的には、有機溶媒)が用いられることが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばこの種のガラス形成剤やレジネートペーストに用いられる従来公知の有機溶媒を特に制限なく使用することができる。かかる有機溶媒の一例としては、1,4-ジオキサン、1,8-シネオール、2-ピロリドン、2-フェニルエタノール、N-メチル-2-ピロリドン、p-トルアルデヒド、安息香酸ベンジル、安息香酸ブチル、オイゲノール、カプロラクトン、ゲラニオール、サリチル酸メチル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、シクロペンチルメチルエーテル、シトロネラール、ジ(2-クロロエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジヒドロカルボン、ジブロモメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ピロリドン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プレゴン、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、テレピン油やラベンダー油等の種々のオイル等が挙げられる。これら有機溶媒としては、市販のものを用いることができる。なお、これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、金属レジネートは、例えばレジネートペーストとして市販されているため、かかるレジネートペーストをそのまま使用してもよい。
なお、上記有機溶媒の含有量(2種類以上含有する場合は、それらの合計含有量)は特に限定されず、他の層(あるいは膜)にガラス形成剤を付与する際の手段に応じて適宜調整されることが好ましい。例えば、インクジェット印刷やスピンコーターを用いる場合には、ガラス形成剤の粘度を比較的に低い範囲(例えば、10mPa・s~500mPa・s程度)に制御することが求められる。このため、インクジェット印刷用のガラス形成剤では、ガラス形成剤の総重量を100重量%としたときの有機溶媒の重量を10重量%~99重量%の範囲内に調節されることが好ましい。一方、刷毛塗りやスクリーン印刷を用いる場合には、一回の塗布で充分な厚みのガラス膜を形成することが好ましいため、有機溶媒の含有量を0重量%~10重量%程度の範囲内に調節し、500mPa・s~100000mPa・s程度の粘度を有するガラス形成剤とすることが好ましい。
また、ここで開示されるガラス形成剤は、ここで開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、他の付加的成分を含有していてもよい。かかる付加的成分としては、例えば、有機バインダ、保護材、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤などが例示される。これらとしては、例えば市販のものを用いることができる。上記有機バインダとしては、例えばセルロース系樹脂等の有機バインダ樹脂を用いることができ、ガラス形成剤の総重量を100重量%としたときの有機バインダの含有量を例えば0重量%~50重量%の範囲内とすることができる。なお、ここで開示される技術において金属元素や半金属元素を含む付加的成分を使用する場合には、該付加的成分に由来する元素の含有量も考慮して、上述したSiの含有量および希土類元素の含有量が所望の値となるようにガラス形成剤を調製することが求められる。
上述したとおり、ここで開示されるガラス形成剤に含まれるガラスマトリクス元素の形態は、金属レジネートに限定されず、例えば錯体、重合体、微細粒子であってもよい。例えば、錯体を用いる場合、該錯体を構成する配位子の種類は特に制限されず、一例としてはアルコキシド系配位子、ジケトン系配位子、カルボン酸塩系配位子、アミン系配位子等が挙げられる。かかる錯体しては、例えば市販のものを用いることができる。なお、ガラスマトリクス元素が金属レジネート以外の形態をとる場合には、上述した溶媒や付加的成分についても、該ガラスマトリクス元素の形態に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、微細粒子のような溶媒に溶解しない形態でガラスマトリクス元素を含有させる場合には、該微細粒子を適切に分散させることができる溶媒を選択すると共に、付加的成分として分散剤等を添加することが好ましい。
<物品の構成>
次に、ここで開示されるガラス形成剤から形成されるガラス膜を備えた物品の一実施形態(第1実施形態)について、図1を参照しつつ説明する。なお、以下の説明は、ここで開示される物品を以下の形態に限定することを意図したものではない。
図1は、第1実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。図1に示すように、第1実施形態に係る物品1は、基材2と、該基材の上に形成された釉薬層3と、該釉薬層の上に形成された装飾膜5と、ここで開示されるいずれかのガラス形成剤から形成されるガラス膜であって、該釉薬層と該装飾膜との間に存在するガラス膜4と、を備えている。このように、釉薬層3と装飾膜5との間にガラス膜4を備えた物品1によると、例えばアルカリ性溶液に曝露された場合においても、耐アルカリ性に優れるガラス膜4によって釉薬層3が保護されるため、装飾膜5の剥離を好適に抑制することができる。また、かかる構成とすることで、装飾膜5を最表面とすることができるため、ガラス膜4によってコートすることによる発色の影響を受けにくくなるため、好ましい。なお、ここで開示されるガラス形成剤は希土類元素を含有しているため、物品1は、基材2、釉薬層3、装飾膜5およびガラス膜4のうち、ガラス膜4において希土類元素が最も多く存在するという特徴を有する。かかる特徴の確認は、例えばFESEM-EDX(電界放出型走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析)を用いた元素マッピングやライン分析等によって行うことができる。以下、物品1が備える各構成要素について説明する。
(1) 基材2
先ず、ここで開示される物品が備える基材としては、少なくともその表面がセラミックスから構成されているものを好ましく用いることができる。そして、第1実施形態においては、基材2はセラミックスから構成されたものを用いている。ここで、本明細書および特許請求の範囲において「セラミックス」(以下、「セラミックス成分」ともいう)とは、酸化物に限られない無機化合物であって、ガラス(アモルファス構造体)に該当しない無機化合物等であり得る。また、上記「セラミックスから構成される」とは、基材を構成する成分のうち、重量基準で最も多く含まれている成分がセラミック成分であることを意味する。かかる基材は、セラミック成分を95重量%以上、97重量%以上、あるいは99重量%以上含むものであり得る。なお、セラミック成分以外の成分としては、例えば不可避的な不純物としての種々の金属元素や非金属元素等であり得る。かかるセラミック成分としては、例えば、Al、MgO、BeO、ZrO、TiO、Y、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、ベーマイト(AlOOH)等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。基材2の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、基材2の平均厚み)は特に限定されず、例えば0.1mm~1mmの範囲内とすることができる。なお、本明細書および特許請求の範囲において「平均厚み」とは、典型的には、顕微鏡観察下において、基材、膜、層が備える上下表面(例えば、図1のX方向における2表面)の間の最短距離を無作為的に3点測定したときの、該3点の平均値を意味し得る。また、ここで開示される物品が備える基材は、例えばCu(銅)、W(タングステン)等の金属材料等から構成されていてもよい。
(2)釉薬層3
釉薬層3としては、この種の技術に用いられる従来公知の釉薬から形成されるものであり得る。釉薬の一例としては、アルカリ-MgO-CaO-Fe-Al-SiO系の釉薬や、アルカリ-ZnO-Al-SiO系の釉薬等が挙げられる。後述する実施例で使用しているものは、その一例である。ここで、上記アルカリとは、例えばNaO等のアルカリ金属元素の酸化物を意味する。特に限定解釈されることを意図したものではないが、釉薬はこのようなアルカリ成分を含むものが多く、該アルカリ成分は、アルカリ性溶液がSi-O結合を切断しHSiO やSiO 2-等を生成する反応を誘起し得るため、釉薬層は耐アルカリ性に乏しいと考えられ得る。なお、ここで開示される技術はガラス形成剤に関するものであるため、釉薬の調製方法の詳細についての説明は割愛する。釉薬層3の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、釉薬層3の平均厚み)は特に限定されず、例えば100nm~5000nmの範囲内とすることができる。なお、基材として予め釉薬層3が形成されているものを用いることもできる。
(3)ガラス膜4
ガラス膜4は、ここで開示されるいずれかのガラス形成剤から形成されている。ここで開示されるガラス形成剤は希土類元素を含有しており、かかる希土類元素は酸素親和性が高い傾向にある。したがって、希土類元素がガラス膜形成時(具体的には、焼成時)にガラスマトリクス中にドープされ、これによってガラスの網目構造が引き締められるものと考えられ得る。また、ガラスマトリクスにおける希土類酸化物は、アルカリ性溶液の曝露によって他の成分が溶出した後も残留して被膜化する。これらによって、ガラスマトリクスの内部へのアルカリ成分の侵入を好適に防止することができるものと考えられ得る。
ガラス膜4の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、ガラス膜4の平均厚み)は特に限定されない。例えば、物品が備える装飾膜の色や質感が好適に発揮されるという観点から、好ましくは20nm~500nm、より好ましくは20nm~150nmの範囲内とすることができる。
(4)装飾膜5
装飾膜5としては、この種の技術に用いられる従来公知の装飾用組成物から形成されるものであり得る。装飾用組成物の一例としては、Pt-Si-Bi系の装飾用組成物や、Au-Si-Bi系の装飾用組成物等が挙げられる。後述する実施例で使用しているものは、その一例である。なお、ここで開示される技術はガラス形成剤に関するものであるため、装飾用組成物の組成、調製方法の詳細についての説明は割愛する。装飾膜5の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、装飾膜5の平均厚み)は特に限定されず、例えば50nm~200nmの範囲内とすることができる。
<物品の製造方法>
続いて、物品1の製造方法について説明するが、製造方法を以下の方法に限定することを意図したものではない必要に応じて、適宜工程を削除、追加することができる。また、必要に応じて、各工程の順序を入れ替えて実施することができる。
先ず、基材2を準備する。そして、基材2の表面に釉薬を塗布(付与)し、所定の温度(例えば、50℃~100℃程度)で乾燥させ、所定の温度(例えば、900℃~1300℃程度)で所定の時間(例えば、10~30分程度)焼成処理を行う。なお、基材として予め釉薬層が付与されたものを用いることもできる。次に、焼成後の釉薬の表面に、ここで開示されるガラス形成剤を塗布(付与)し、所定の温度(例えば、50℃~100℃程度)で乾燥させた後、所定の温度(例えば、600℃~1000℃)で所定の時間(例えば、10~30分程度)焼成処理を行う。続いて、焼成後のガラス形成剤の表面に、装飾用組成物を塗布(付与)し、所定の温度(例えば、60℃程度)で乾燥させた後、所定の温度(例えば、700℃~800℃程度)で所定の時間(例えば、10~30分程度)焼成処理を行うことで、物品1を製造することができる。
ここで開示される物品は、例えば食器を構成することができる。食器は、例えばアルカリ性洗剤に浸漬されることが想定されるため、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
<他の実施形態>
以上、ここで開示される物品の一実施形態(第1実施形態)について説明した。なお、上述の実施形態は、ここで開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
例えば図2は、第2実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。図2に示すように、第2実施形態に係る物品10は、基材12と、該基材の上に形成された釉薬層13と、該釉薬層の上に形成された装飾膜15と、ここで開示されるいずれかのガラス形成剤から形成されるガラス膜であって、該装飾膜の上に存在するガラス膜14と、を備えている。このように、装飾膜15の上にガラス膜14を備えた物品10によると、例えばアルカリ性溶液に曝露された場合においても、耐アルカリ性に優れるガラス膜14によって釉薬層13が保護されるため、装飾膜15の剥離を好適に抑制することができる。また、ガラス膜14を物品10の表面付近に配置することで、物品10に光沢(ラスター)を付与し得るため、好ましい。のなお、物品1と同様、ここで開示されるガラス形成剤は希土類元素を含有しているため、物品10は、基材12、釉薬層13、装飾膜15およびガラス膜14のうち、ガラス膜14において希土類元素が最も多く存在するという特徴を有する。また、基材12、釉薬層13、ガラス膜14、装飾膜15の構成については、それぞれ上述した基材2、釉薬層3、ガラス膜4、装飾膜5と同様とすることができる。そして、物品10は、例えば上述した物品1の製造方法において、ガラス膜と装飾膜の形成順序を入れ替えることで製造することができる。
例えば図3は、第3実施形態に係る物品の断面構造を模式的に示す図である。図3に示すように、第3実施形態に係る物品20は、基材22と、該基材の上に形成された釉薬層23と、該釉薬層の上に形成された装飾膜25と、ここで開示されるいずれかのガラス形成剤から形成されるガラス膜であって、該釉薬層と該装飾膜との間および該装飾膜の上に存在するガラス膜24a,24bと、を備えた物品が挙げられる。このように、釉薬層と装飾膜との間および装飾膜の上にガラス膜24a,24bを備えた物品によると、例えばアルカリ性溶液に曝露された場合においても、耐アルカリ性に優れるガラス膜24a,24bによって釉薬層23が上下から保護されるため、装飾膜25の剥離をより好適に抑制することができる。なお、物品1と同様、ここで開示されるガラス形成剤は希土類元素を含有しているため、物品20は、基材22、釉薬層23、装飾膜25およびガラス膜24a,24bのうち、ガラス膜24a,24bにおいて希土類元素が最も多く存在するという特徴を有する。また、基材22、釉薬層23、ガラス膜24a,24b、装飾膜25の構成については、それぞれ上述した基材2、釉薬層3、ガラス膜4、装飾膜5と同様とすることができる。そして、物品20は、上述した物品1の製造方法を参照して製造することができる。
また、例えば上記実施形態1~3に係る物品は、基材、釉薬層、ガラス膜、装飾膜のみを備えていたが、これに限定されず、他の層(あるいは膜)さらに備えていてもよい。そして、物品の形状は使用用途に応じて、適宜変更することができる。
[試験例]
以下、ここで開示される技術に関する試験例を説明するが、ここで開示される技術をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
1.サンプルの準備
<ガラス形成剤の調製>
本試験例では、ガラスマトリクス元素の含有量が異なる8種類のガラス形成剤を調製した(例1~8)。例1~8における各元素の含有量を表1に示す。なお、表1中の各数値は、ガラス形成剤に含まれるガラスマトリクス元素の合計モル数を100モル%としたときの各元素の含有量(モル%)を示している。また、本試験例におけるガラス形成剤の調製は、軟膏壺に各種原料(「各元素の原料」を参照)を調合し、株式会社シンキー製の撹拌機(製品名:自転公転あわとり練太郎)を用いて、回転数1800rpmで2分間の混合することで行った。ガラス形成剤は、25℃-100rpm(BrookfieldDV型粘度計で測定)における粘度が10~15mPa・s程度となるように適宜、株式会社ノリタケカンパニーリミテド社製の希釈溶剤(WAオイル)を添加して調製した。
<装飾用組成物の調製>
続いて、装飾用組成物を調製した。本試験例では、装飾用組成物に含まれる金属元素と半金属元素との重量の合計を100重量%とする重量比において、以下の組成:Pt;86.1重量%、Si;5.9重量%、Bi;8.0重量%となるように、装飾用組成物を調製した。また、本試験例における装飾用組成物の調製は、軟膏壺に各種原料(「各元素の原料」を参照)を調合し、株式会社シンキー製の撹拌機(製品名:自転公転あわとり練太郎)を用いて、回転数1800rpmで2分間の混合することで行った。装飾用組成物は、25℃-100rpm(BrookfieldDV型粘度計で測定)における粘度が10~15mPa・s程度となるように適宜、株式会社ノリタケカンパニーリミテド社製の希釈溶剤(WAオイル)を添加して調製した。
<各元素の原料>
なお、本試験例のガラス形成剤、装飾用組成物に含まれる各元素の原料は以下の通りである。下記原料としては、市販のものを用いた。
Si:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Sm:Smレジネート(サマリウム樹脂酸塩)
Y :Yレジネート(イットリウム樹脂酸塩)
Pr:Prレジネート(プラセオジム樹脂酸塩)
Nd:Ndレジネート(ネオジム樹脂酸塩)
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム)
<サンプルの作製>
本試験例では、各例について、図1に示すような基材、釉薬層、ガラス膜、装飾膜の順に積層された構造を有するサンプル(以下、単に「下地コートサンプル」ともいう)と、図2に示すような基材、釉薬層、装飾膜、ガラス膜の順に積層された構造を有するサンプル(以下、単に「上地コートサンプル」ともいう)とを作製した。以下、上地コートサンプルおよび下地コートサンプルの作製方法について説明する。
先ず、予め釉薬層が形成された白磁平板(縦:15mm、横:15mm、厚み:20mm)を準備し、この白磁平板を準備した。ここで、上記釉薬としては、酸化物換算のモル比で次の組成:SiO;70.8モル%,Al;16.4モル%,Fe;0.1モル%,CaO;4.2モル%,MgO;4.0モル%,KO;3.4モル%,NaO;0.6モル%,ZnO;0.5モル%を有するものを用いた。
次に、上地コートサンプルについては、上記釉薬層上に上記のとおり調製した装飾用組成物を塗布し、60℃で60分間乾燥させた後、800℃で10分間焼成した。その層上に、上記のとおり調製したガラス形成剤を塗布し、60℃で60分間乾燥させた。また、下地コートサンプルについては、ガラス形成剤と装飾用組成物を塗布する順序を入れ替えた。ガラス形成剤および装飾用組成物の塗布は、ミカサ株式会社製のスピンコーター:Opticoat MS-A-150を使用し、スピン条件を5000rpm、10秒間に設定して行った。そして、得られた積層体を、60℃に加熱したホットプレートで1時間乾燥させた後、800℃で10分間焼成することで、上地コートサンプルおよび下地コートサンプルを得た。ここで、FE―SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU-8200)を用いて焼成後の各上地サンプルおよび下地サンプルの断面を観察した結果、釉薬層の平均厚みは1000nm~3000nm、装飾膜の平均厚みは100nm~200nm、ガラス膜の平均厚みは50nm~150nmの範囲内であった。
2.評価試験
<耐アルカリ評価>
本試験例では、100℃まで加熱して沸騰させた0.5重量%のNaCO水溶液(3L)に各サンプルを30分間浸漬した。そして、浸漬後のサンプルを水洗し、ジルコンペーパーを10往復擦り付ける擦過試験を実施し、装飾膜に損傷が生じているか否かを観察した。そして、本試験例では、浸漬時間を30分単位で延長し、30%以上の装飾膜が残存した最大浸漬時間を「耐久時間(h)」とみなした。耐久時間が1.0時間以上である場合、充分な耐アルカリ性を有すると評価され、耐久時間が1.5時間以上である場合、優れた耐アルカリ性を有すると評価される。各下地コートサンプルについての結果を表1の該当欄に示した。また、表1には明記していないが、例2~4、6~8に係る上地コートサンプルについて、優れた耐アルカリ性を有する(換言すると、耐久時間が1.0時間以上である)ことが確認された。さらに、表1には明記していないが、ガラス膜が形成されていないサンプル(即ち、基材、釉薬層、装飾膜がこの順に積層されたサンプル)では、耐久時間が0.5時間未満であり、耐アルカリ性が充分でないことが確認された。
また、詳細なデータは掲載していないが、例2~4、6~8に係る下地コートサンプル・上地コートサンプルに対してFIB(Focused Ion Beam;収束イオンビーム)処理を行い、各サンプルの薄片化を行った。続いて、かかる薄片の断面に対して、FESEM-EDXを用いた元素マッピングおよびライン分析を行った。かかる測定は、電界放出型走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製:SU8230)と、エネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製の検出器:X-Max80,ソフトウェア:EMAX ENERGY バージョン2.04)を用いて、各例の測定用資料の表面における各元素の定性分析チャートを取得した。薄片化の条件や測定の条件は、上記装置のカタログに基づいて決定した。その結果、それぞれのサンプルにおいて、基材、釉薬層、ガラス膜、装飾膜の4層のうち、希土類元素が最も多く確認されたのはガラス膜であった。
Figure 2023073047000001
表1に示されるように、ガラスマトリクス元素としてSiと希土類元素とを含み、該ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、該希土類元素の含有量が1~70モル%の範囲内であるガラス形成剤から形成されるガラス膜を備えた例2~4、6~8では、ガラスマトリクス元素として希土類元素を含まないガラス形成剤から形成されるガラス膜を備えた例1と比較して、耐久時間が1.0時間以上であり、充分な耐アルカリ性を有することが確認された。一方、希土類元素の含有量が1~70モル%の範囲外であるガラス形成剤から形成されたガラス膜を備えた例5では、耐久時間が1.0時間未満であり、耐アルカリ性が充分ではなかった。また、希土類元素の含有量が3~30モル%の範囲内であるガラス形成剤から形成されるガラス膜を備えた例2、3において、耐アルカリ性がより優れることが確認された。そして、上記希土類元素のなかではプラセオジムを含むガラス形成剤から形成されたガラス膜を備えた例7において、耐アルカリ性が特に優れることが確認された。
上記の結果から、ここで開示されるガラス形成剤によると、釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜の耐アルカリ性を好適に向上させることができることがわかる。
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1,10,20 物品
2,12,22 基材
3,13,23 釉薬層
4,14,24a,24b ガラス膜
5,15,25 装飾膜

Claims (9)

  1. 釉薬層が付与された基材の該釉薬層の上に形成された装飾膜を保護するためのガラス膜を形成するガラス形成剤であって、
    前記ガラス形成剤は、ガラスマトリクス元素を含んでおり、
    前記ガラスマトリクス元素として、少なくともSiと希土類元素とを含み、
    前記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、前記希土類元素の含有量は1モル%~70モル%である、ガラス形成剤。
  2. 前記希土類元素は、Sm、Y、PrおよびNdからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のガラス形成剤。
  3. 前記ガラスマトリクス元素の総モル数を100モル%としたとき、前記希土類元素の含有量は3モル%~30モル%である、請求項1または2に記載のガラス形成剤。
  4. 前記ガラスマトリクス元素として、Biをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス形成剤。
  5. 前記基材の少なくとも表面はセラミックスから構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス形成剤。
  6. 基材と、
    該基材の上に形成された釉薬層と、
    該釉薬層の上に形成された装飾膜と、
    請求項1~5のいずれか一項に記載のガラス形成剤によって形成されるガラス膜であって、前記釉薬層と前記装飾膜との間および/または前記装飾膜の上に存在するガラス膜と、
    を備えた物品であって、
    前記基材、前記釉薬層、前記装飾膜および前記ガラス膜のうち、前記ガラス膜において前記希土類元素が最も多く存在している、物品。
  7. 前記ガラス膜の平均厚みは20nm~500nmである、請求項6に記載の物品。
  8. 前記基材の少なくとも表面はセラミックスから構成されている、請求項6または7に記載の物品。
  9. 食器を構成している、請求項6~8のいずれか一項に記載の物品。
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