JP2023108414A - 装飾用組成物およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁性と、光沢・発色とが好適に両立された装飾膜を備えるセラミックス製品を得るための技術を提供する。【解決手段】ここで開示される装飾用組成物は、貴金属有機化合物と、マトリクス形成元素を含有するマトリクス形成有機化合物とを含む。上記マトリクス形成有機化合物として、数平均分子量が2500以下のシリコーン樹脂およびSiを構成元素として含有するSi有機化合物であって、上記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、上記貴金属有機化合物の分解温度をTXとは、TSi<TXの関係を満たすSi有機化合物のうち少なくともいずれか一方を含んでいる。上記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、上記シリコーン樹脂および/または上記Si有機化合物由来のSiの含有量は25モル%以上である。【選択図】なし

Description

本開示は、装飾用組成物およびその利用に関する。
陶磁器、ガラス器、琺瑯器等のセラミックス製品の表面には、優美または豪華な印象を与えるために、貴金属成分を含む装飾膜が形成されることがある。かかる装飾膜は、例えば、金属レジネートなどの金属有機化合物を含有する組成物を基材の表面に塗布し、焼成することによって形成される。例えば、特許文献1および2には、かかる装飾膜の形成に用いられる装飾用組成物として、金(Au)を主構成成分として含有する上絵付用水金が開示されている。
特公平2-36558号公報 特開平6-48779号公報
ところで、貴金属成分を含む装飾膜を備えたセラミックス製品には、例えば電子レンジで加熱されることが想定されるもの(例えば、食器等)がある。しかしながら、かかる装飾膜は導電性を有するため、電子レンジでの加熱の際に該装飾膜の表面にスパークが生じることがあり、これによって該装飾膜が損傷するおそれがある。このため、近年では、絶縁性が好適に付与された装飾膜に関する技術の開発が求められている。一方、本発明者の検討によると、例えば装飾膜に絶縁成分が存在する場合、貴金属特有の明るい色調や美しい光沢が損なわれる傾向にあることがわかった。したがって、絶縁性と、光沢・発色とが好適に両立された装飾膜を備えるセラミックス製品を得るための技術の開発が求められている。
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、絶縁性と、光沢・発色とが好適に両立された装飾膜を備えるセラミックス製品を得るための技術を提供することである。
かかる目的を実現するべく、本開示は、セラミックス基材の上に装飾膜を形成する装飾用組成物を提供する。上記装飾用組成物は、貴金属元素を含有する貴金属有機化合物と、少なくともSiを構成元素として含むマトリクス形成元素を含有するマトリクス形成有機化合物と、を含み、上記マトリクス形成有機化合物として、数平均分子量が2500以下のシリコーン樹脂、および、Siを構成元素として含有するSi有機化合物であって、上記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、上記貴金属有機化合物の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすSi有機化合物のうち少なくともいずれか一方を含んでいる。ここで、上記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、上記シリコーン樹脂および/または上記Si有機化合物由来のSiの含有量は25モル%以上である。詳細については後述するが、かかる構成の装飾用組成物によると、絶縁性と、光沢・発色とが好適に両立された装飾膜を備えるセラミックス製品を得ることができる。
ここで開示される装飾用組成物の好適な一態様では、上記シリコーン樹脂を含んでおり、上記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、上記シリコーン樹脂由来のSiの含有量は50モル%以上である。かかる構成の装飾用組成物によると、より優れた光沢および発色を実現することができるため、好ましい。
ここで開示される装飾用組成物の好適な一態様では、上記貴金属有機化合物として、Auを構成元素として含む有機化合物および/またはPtを構成元素として含む有機化合物を含む。AuやPtを含む構成によると、優美または豪華な印象を与える装飾膜を得ることができるため、好ましい。
ここで開示される装飾用組成物の一態様では、上記セラミックス基材の上にはガラスコート層が形成されている。
また、他の側面から、本開示は、セラミックス基材と、該セラミックス基材の上に形成された装飾膜であって、ここで開示されるいずれかの装飾用組成物の焼成体である装飾膜と、を備えたセラミックス製品を提供する。上記セラミックス製品は、上記装飾膜において、SCI方式で測定したときの該装飾膜の8°グロス値が500以上であり、かつ、上記8°グロス値を、上記SCE方式で測定したときの上記装飾膜の明度Lで除した値(8°グロス値/明度L)は11以上である。ここで開示される装飾用組成物によると、絶縁性を有し、かつ、8°グロス値が500以上であり、8°グロス値/明度Lが11以上である光沢および発色に優れた装飾膜を備えたセラミックス製品を得ることができる。
ここで開示されるセラミックス製品の好適な一態様では、上記装飾膜のシート抵抗値は、1.0×10Ω/□以上である。かかる構成のセラミックス製品によると、例えば電子レンジで加熱された場合においてもスパークが生じにくいため、好ましい。
ここで開示されるセラミックス製品の一態様では、上記セラミックス基材の上にはガラスコート層が形成されている。また、ここで開示されるセラミックス製品は、例えば食器を構成することができる。
一実施形態に係るセラミックス製品の断面構造を模式的に示す図である。
以下、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、装飾用組成物の詳細な調製手段やセラミックス製品の製造手順等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」との表記は、A以上B以下を意味する。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
<装飾用組成物>
ここで開示される装飾用組成物は、セラミックス基材の上に装飾膜を形成するために用いることができる。また、ここで開示される装飾用組成物は、貴金属元素を含有する貴金属有機化合物と、少なくともSi(ケイ素)を構成元素として含むマトリクス形成元素を含有するマトリクス形成有機化合物と、を含んでおり、上記マトリクス形成有機化合物として、数平均分子量が2500以下のシリコーン樹脂、および、Siを構成元素として含有するSi有機化合物であって、上記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、上記貴金属有機化合物の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすSi有機化合物のうち少なくともいずれか一方を含んでいる。ここで、上記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、上記シリコーン樹脂および/または上記Si有機化合物由来のSiの含有量は25モル%以上であることを特徴とする。
上記の構成とすることにより、ここに開示される技術による効果が達成される理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、以下が考えられ得る。
例えば、装飾膜の光沢・発色を向上させる方法の一つとして、装飾膜中(換言すると、装飾用組成物中)の貴金属成分を増大させる方法が挙げられる。一方、装飾用組成物中の貴金属成分の濃度を増大させた場合、焼成時の貴金属成分(貴金属微粒子)どうしの焼結が過度に進行し易くなる傾向にあり、これによって、優れた絶縁性を担保することが困難になる。ここで開示される装飾用組成物では、装飾用組成物中にシリコーン樹脂と貴金属成分とを共存させることで、焼成時の貴金属核の過度な成長(換言すると、焼結)を抑制し、装飾膜において微粒子状態を維持したまま貴金属成分を存在させることができる。したがって、例えば貴金属成分を増大させた場合においても、絶縁性を好適に担保することができる。また、Si有機化合物であって、上記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、貴金属有機化合物の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすSi有機化合物によると、焼成時において貴金属成分(貴金属微粒子)が成長する前に酸化ケイ素系の重合物が生成し得る。したがって、装飾用組成物中にかかるSi有機化合物と貴金属成分とを共存させることによって、シリコーン樹脂を用いた場合と同様な効果を得ることができる。以上のメカニズムによって、ここで開示される装飾用組成物によると、絶縁性と、光沢・発色性とが好適に両立された装飾膜を備えたセラミックス製品を得ることができるものと考えられ得る。なお、上記の説明は、実験結果に基づく本発明者の考察であり、ここで開示される技術は、上記のメカニズムに限定して解釈されるものではない。以下、装飾用組成物が含有する各構成要素について説明する。
(1)貴金属有機化合物
貴金属有機化合物は、貴金属元素と有機物とを構成要素として含んでいる。かかる貴金属有機化合物を焼成すると、有機物が分解した後に貴金属成分が焼結することで、装飾膜において貴金属領域が形成される。ここで、貴金属元素としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。また、優美または豪華な印象を与える装飾膜を得るという観点から、貴金属元素としてAuおよび/またはPt(換言すると、Au有機化合物および/またはPt有機化合物)を含むことが好ましい。なお、貴金属有機化合物は、金属レジネート、錯体、重合体などの形態をとり得る。
ここで、貴金属有機化合物を構成する有機物は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。例えば、貴金属有機化合物として金属レジネートを使用する場合、かかる有機物としてはこの種の金属レジネートに用いられ得る従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用することができる。かかる樹脂材の一例としては、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、アビエチン酸、ナフテン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ネオデカン酸などの高炭素数(例えば炭素数8以上)のカルボン酸;スルホン酸;ロジン等に含まれる樹脂酸;テレピン油、ラベンダー油等の精油成分を含む樹脂硫化バルサム、アルキルメルカプチド(アルキルチオラート)、アリールメルカプチド(アリールチオラート)、メルカプトカルボン酸エステル等が挙げられる。かかる金属レジネートとしては、例えば市販のものを用いることができる。
また、例えば、貴金属有機化合物として錯体を使用する場合、かかる有機物としてはこの種の錯体に用いられ得る従来公知の配位子を特に制限なく使用することができる。かかる配位子の一例としては、アルコキシド系配位子、ジケトン系配位子、カルボン酸塩系配位子、アミン系配位子等が挙げられる。かかる錯体としては、例えば市販のものを用いることができる。また、重合体についても、市販のものを用いることができる。
なお、上記貴金属有機化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、例えば1種類の貴金属元素について1種類の金属レジネート(または、錯体)を用いてもよいし、2種類以上の金属レジネート(または、錯体)を混合して用いてもよいし、金属レジネートと錯体とを混合して用いてもよい。後述するマトリクス形成有機化合物に関しても同様である。
ここで、装飾用組成物における、貴金属元素およびマトリクス形成元素の合計モル数を100モル%としたときの、該貴金属元素の含有量(以下、単に「貴金属元素の含有量」ともいう,2種類以上の貴金属元素を含む場合は、それらの合計モル%を意味する)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。貴金属元素の含有量は、例えば40モル%以上であり、優美または豪華な印象を与える装飾膜を好適に得るという観点から、好ましくは50モル%以上(例えば、55モル%以上)、より好ましくは60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上とすることができる。また、貴金属元素の含有量の上限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されず、例えば95モル%以下であり、絶縁性に優れた装飾膜を好適に得るという観点から、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下とすることができる。なお、上述した貴金属元素の含有量の下限および上限は、特に制限なく組み合わせることができる。
また、上述したように、優美または豪華な印象を与える装飾膜を得るという観点から、貴金属元素としてAuやPtを含むことが好ましいとされる。ここで、装飾用組成物における、貴金属元素およびマトリクス元素の合計モル数を100モル%としたときの、Au、Ptそれぞれの含有量(以下、単に「Auの含有量」,「Ptの含有量」ともいう)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、かかる観点から、好ましくはAuの含有量:20モル%~60モル%程度、Ptの含有量:20モル%~85モル%程度とすることができる。
(2)マトリクス形成有機化合物
マトリクス形成有機化合物は、少なくともSiを構成元素として含むマトリクス形成元素を含有している。なお、本明細書および特許請求の範囲において「マトリクス形成元素」とは、装飾膜が形成された際に、非晶質の酸化物を形成し得る金属元素および半金属元素を包含する概念である。Siは、焼成時に酸化されてSiOとなり、非晶質酸化物領域の骨格を構築する元素である。そおして、上述したように、ここで開示される装飾用組成物は、Siを含む有機化合物としてシリコーン樹脂およびSi有機化合物のうち少なくともいずれか一方を含んでいる。以下、これらについて説明する。
シリコーン樹脂は、ケイ素(Si)と酸素(O)とからなるシロキサン結合(Si-O-Si)による主骨格を有する高分子有機化合物を意味し、いわゆるシリコーンオイル、シリコーンラバー、シリコーンレジン等を包含する概念であり得る。シリコーン樹脂は、直鎖型であってもよいし、分岐型であってもよい。また、付加硬化型であってもよいし、脱水縮合硬化型であってもよい。さらに、シリコーン樹脂は、室温(例えば25℃)において、固体状であってもよいし、液体状であってもよい。ここで、シリコーン樹脂の種類としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。シリコーン樹脂の主骨格としては、例えば、一般式:OH[-Si(R)O-]H(ここで、Rは水素または任意の官能基);で示されるシロキサン単位を含むポリシロキサンや、Rが任意のアルキル基であるポリアルキルシロキサン、または、シロキサン単位と該シロキサン単位とは異なるケイ素含有モノマーとが重合されてなるポリマーであってもよい。具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン等が挙げられる。特に好適な主骨格としては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。なお、シリコーン樹脂は、ポリエーテル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリル基、メチル基、水酸基等の他の置換基を主骨格の側鎖、末端、または両者に導入した変性シリコーンであってもよい。
また、ここで開示される装飾用組成物においては、上記シリコーン樹脂の数平均分子量を2500以下と規定している。特に限定解釈されることを意図したものではないが、シリコーン樹脂の数平均分子量が大きすぎると、該シリコーン樹脂と装飾用組成物に含有される他の成分との相溶性が低下する傾向にあり、これによって該装飾用組成物のセラミックス基材との濡れ性が低下し得る。かかる濡れ性の低下によって、装飾膜における白抜けが発生し得るため、好ましくない。詳細については後述するが、本発明者の検討によると、シリコーン樹脂の数平均分子量が2500以下である場合、かかる白抜けが生じにくいことが確認されたため、このように規定している。なお、シリコーン樹脂の数平均分子量の下限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば500以上であり、焼成時の貴金属核の過度な成長(焼結)を好適に抑制するという観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上とすることができる。また、シリコーン樹脂の数平均分子量は、装飾膜における白抜けをより好適に抑制するという観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1800以下とすることができる。ここで、上述したシリコーン樹脂の数平均分子量の下限および上限は、特に制限なく組み合わせることができる。なお、本明細書および特許請求の範囲において「数平均分子量」(以下、単に「Mn」ともいう)とは、標準物質(例えば、市販の水溶性糖類)を用いてゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定した個数基準の平均分子量を意味する。
上記シリコーン樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述したようなシリコーン樹脂としては、市販のものを用いることができ、例えば信越化学工業株式会社製やJNC株式会社製のものを用いることができる。
Si有機化合物は、Si(ケイ素)と、有機物とを構成要素として含む。かかる有機物としては、例えば貴金属有機化合物の欄で上げたものを用いることができる。ここで、上記Si有機化合物は、上記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、上記貴金属有機化合物の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすように構成されている。特に限定解釈されることを意図したものではないが、かかる構成の装飾用組成物を焼成すると、分解温度が相対的に低いSi有機化合物が優先的に分解・焼成されて酸化ケイ素系の重合物が生成され得る。かかる酸化ケイ素系の重合物によると、焼成時の貴金属核の過度な成長(焼結)を抑制し、装飾膜において微粒子状態を維持したまま貴金属成分を存在させることができる。
装飾用組成物中の、Si有機化合物の分解温度TSiおよび貴金属有機化合物の分解温度TがTSi<Tの関係を満たすようにする方法の一例としては、装飾用組成物を調製する前の(換言すると、装飾用組成物に添加する前の)、TG-DTAに基づく、Si有機化合物の分解温度(以下、「tSi」と表記する)を、貴金属有機化合物の分解温度(以下、「t」)よりも大きくする方法が挙げられる。詳細については実施例で説明するが、かかる分解温度tSiおよびtは、例えば熱重量測定装置によって測定することができる。tSiおよびtの値は、装飾用組成物においてTSi<Tの関係が満たされる限りにおいて特に制限されない。例えば、有機物の残留による品質低下を抑制するという観点から、tSiおよびtは、焼成温度よりも低温であることが好ましい。例えば、焼成温度を800℃に設定した場合、tSiは例えば250℃~370℃程度とすることができ、tは例えば380℃~500℃程度とすることができる。なお、tSiおよびtは、金属元素と結合する有機物の種類を変更することによって容易に調節できる。なお、tSiおよびtは、TG-DTAに基づいて規定されるものであり、測定方法の詳細については後述の実施例を参照されたい。
ここで、例えば装飾用組成物が複数の貴金属有機化合物を含む場合、装飾用組成物において、Si有機化合物の分解温度TSiと貴金属有機化合物の分解温度TとがTSi<Tの関係を満たす限りにおいて、tSi≧tの関係を満たすような貴金属有機化合物が少量含まれていてもよい。なお、装飾用組成物においてTSi<Tの関係を満たすには、装飾用組成物を調製する前の(即ち、装飾用組成物に添加する前の)貴金属元素を100モル%としたとき、tSi<tの関係を満たす貴金属有機化合物を構成する貴金属元素が、例えば90モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上(例えば、99.5モル%以上や100モル%)含有されることが好ましい。特に限定解釈されることを意図したものではないが、Si有機化合物と貴金属有機化合物との混合系においては、貴金属有機化合物の分解温度は単独で存在するときよりも低温側にシフトし得る。これは、貴金属の小粒径化により、該貴金属の表面積が増加し、貴金属有機化合物そのものの分解が促進されるためであると考えられ得る。
また、装飾用組成物におけるSi有機化合物の分解温度TSiおよび貴金属有機化合物の分解温度TがTSi<Tの関係を満たすことは、例えば以下の方法によって確認することができる。即ち、装飾用組成物のTG-DTAによって得られたDTA曲線において、Si有機化合物が含む有機物の焼成(分解)による発熱を示すピークと、貴金属有機化合物が含む有機物の焼成(分解)による発熱を示すピークとを確認することができ、かつ、Si有機化合物由来のピークを、貴金属有機化合物由来のピークと比較してより低温領域側に確認することができる。また、かかるTG曲線の変化に対応したDTA曲線の変化を確認することができる。かかるTG-DTAは、例えば市販の熱重量測定装置によって実施することができる。市販の装置の一例としては、株式会社リガク社製の装置が挙げられる。また、測定条件に関しては、装置のカタログ等に準じて適宜決定することが好ましい。かかる測定条件の一例としては、後述する実施例に記載の条件を挙げることができる。
また、ここで開示される装飾用組成物においては、上記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたときの、上記シリコーン樹脂および/または上記Si有機化合物由来のSiの含有量(以下、単に「Si含有量」ともいう)を25モル%以上と規定している。詳細については後述するが、本発明者の検討によると、かかるSi含有量が25モル%以上である場合、得られる装飾膜の光沢・発色が優れることが確認されたため、このように規定している。なお、Si含有量は、得られる装飾膜の光沢・発色をより優れたものとするという観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、70モル%以上とすることができる。また、Si含有量の上限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば100モル%であってもよいし、90モル%以下、80モル%以下であってもよい。なお、上述したSi含有量の下限および上限は、特に制限なく組み合わせることができる。
ここで開示される装飾用組成物では、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、マトリクス形成有機化合物として上述のシリコーン樹脂やSi有機化合物以外のマトリクス形成有機化合物(以下、単に「任意のマトリクス有機化合物」ともいう)をさらに含んでいてもよい。任意のマトリクス形成有機化合物としては、例えばマトリクス形成元素(具体的には、Si、Al、Bi、Ga、Li、Ca、Sc、Ti、V、Zn、Y、Zr、In、Sn、Te、La、Na、K、Rb、Cs、Sr、Cd、Sm等)と、有機物とを構成要素として含んでいてもよい。ただし、任意のマトリクス元素としてSiを選択する場合は、上述したSi有機化合物以外の有機化合物を意味するものとする。上述したマトリクス形成元素の中でも、例えばBi、Al、Zr、Ti、希土類元素等を含んでいることが好ましい。例えば、Bi(ビスマス)は、焼成後に酸化ビスマス(Bi)となり、マトリクスの骨格の一部を構成し得る元素である。かかるBiはマトリクスを軟化させる効果があるため、装飾膜の他の層(あるいは膜)への接着性が向上するとされる。また、例えばAl(アルミニウム)は、焼成後に酸化アルミニウム(Al)となり、耐薬品効果が向上させることができるとされる。そして、例えばZr(ジルコニウム)は、焼成後に酸化ジルコニウム(ZrO)となり、同じく耐薬品効果を向上させることができるとされる。なお、上記任意のマトリクス形成有機化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
また、装飾用組成物における、貴金属元素およびマトリクス形成元素の合計モル数を100モル%としたときの、任意のマトリクス元素の含有量(以下、単に「任意のマトリクス形成元素の含有量」ともいう,2種類以上の任意のマトリクス形成元素を含む場合は、それらの合計モル%を意味する)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。任意のマトリクス形成元素の含有量は、例えば1モル%以上であってもよし、1.5モル%以上、2モル%以上であってもよい。また、任意のマトリクス形成元素の含有量の上限は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されず、例えば10モル%以下であてもよいし、9モル%以下、8.5モル%以下であってもよい。上述した任意のマトリクス形成元素の含有量の下限および上限は、特に制限なく組み合わせることができる。
(3)他の成分
以上、ここで開示される装飾用組成物が含有する貴金属有機化合物およびマトリクス形成有機化合物について説明した。なお、ここで開示される装飾用組成物は、上述した成分の他に、装飾膜の成形性などを考慮して種々の成分が添加されていることが好ましい。以下、ここで開示される装飾用組成物に含まれ得る他の成分について説明する。ただし、以下で説明する他の成分は、ここで開示される技術の効果を著しく妨げない限りにおいて、装飾用組成物に使用され得る従来公知の成分を特に制限なく使用することができる。すなわち、ここで開示される装飾用組成物は、その用途等に応じて、上述した必須成分以外の成分を適宜変更することができる。
また、上述したような貴金属有機化合物やマトリクス形成有機化合物を含有する装飾用組成物では、該各々の有機化合物を分散または溶解させる溶媒(典型的には、有機溶媒)が用いられることが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばこの種の装飾用組成物やレジネートペーストに用いられる従来公知の有機溶媒を特に制限なく使用することができる。かかる有機溶媒の一例としては、1,4-ジオキサン、1,8-シネオール、2-ピロリドン、2-フェニルエタノール、N-メチル-2-ピロリドン、p-トルアルデヒド、安息香酸ベンジル、安息香酸ブチル、オイゲノール、カプロラクトン、ゲラニオール、サリチル酸メチル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、シクロペンチルメチルエーテル、シトロネラール、ジ(2-クロロエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジヒドロカルボン、ジブロモメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ピロリドン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プレゴン、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、トルエン、ターピネオール、テレピン油やラベンダー油等の種々のオイル等が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、金属レジネートは、例えばレジネートペーストとして市販されているため、かかるレジネートペーストをそのまま使用してもよい。
なお、上記有機溶媒の含有量(2種類以上含有する場合は、それらの合計含有量)は特に限定されず、セラミックス基材(あるいは、他の層)に装飾用組成物を付与する際の手段に応じて適宜調整されることが好ましい。例えば、インクジェット印刷やスピンコーターを用いる場合には、装飾用組成物の粘度を比較的に低い範囲(例えば、10mPa・s~500mPa・s程度)に制御することが求められる。このため、インクジェット印刷用の装飾用組成物では、装飾用組成物の総重量を100重量%としたときの有機溶媒の重量が10重量%~99重量%の範囲内に調整されることが好ましい。一方、刷毛塗りやスクリーン印刷を用いる場合には、一回の塗布で充分な厚みの装飾膜を形成することが好ましいため、有機溶媒の含有量を0重量%~10重量%程度の範囲内に調節し、100mPa・s~100000mPa・s程度の粘度を有する装飾用組成物とすることが好ましい。
また、ここで開示される装飾用組成物は、ここで開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、他の付加的成分を含有していてもよい。かかる付加的成分としては、例えば、有機バインダ、保護材、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤などが例示される。これらとしては、例えば市販のものを用いることができる。上記有機バインダとしては、例えばセルロース系樹脂、ロジン、脂環族系炭化水素樹脂等の有機バインダ樹脂を用いることができ、装飾用組成物の総重量を100重量%としたときの有機バインダの含有量を例えば0重量%~50重量%の範囲内とすることができる。
<セラミックス製品の構成>
次に、ここで開示されるいずれかの装飾用組成物から形成される装飾膜を備えたセラミックス製品の一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。なお、以下の説明は、ここで開示されるセラミックス製品を以下の形態に限定することを意図したものではない。
図1は、本実施形態に係るセラミックス製品の断面構造を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るセラミックス製品1は、セラミックス基材2と、ガラスコート層3と、装飾膜4とを備えている。以下、各構成要素について説明する。
(1) セラミックス基材2
本実施形態におけるセラミックス基材2は、セラミックスを主体としてから構成されている。ここで、本明細書および特許請求の範囲において「セラミックス」(以下、「セラミックス成分」ともいう)とは、酸化物に限られない無機化合物であって、ガラス(アモルファス構造体)に該当しない無機化合物等であり得る。また、上記「セラミックスを主体として構成される」とは、セラミックス基材を構成する成分のうち、重量基準で最も多く含まれている成分がセラミックス成分であることを意味する。かかるセラミックス基材は、セラミックス基材を構成する成分の全重量を100重量%としたとき、セラミックス成分を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上(例えば、97重量%以上や99重量%以上)含むものであり得る。なお、セラミックス成分以外の成分の一例としては、例えば不可避的な不純物としての種々の金属元素や非金属元素等が挙げられる。かかるセラミックス成分としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、べリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、イットリア(Y)、セリア(CeO)、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、ベーマイト(AlOOH)等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。セラミックス基材2の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、セラミックス基材2の平均厚み)は特に限定されず、例えば1mm~20mmの範囲内とすることができる。また、硬さや色などは、セラミックス製品の用途に応じて適宜変更することができ、ここで開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明は省略する。なお、本明細書および特許請求の範囲において「平均厚み」とは、典型的には、顕微鏡観察下において、セラミックス基材、膜、層が備える上下表面(例えば、図1のX方向における2表面)の間の最短距離を無作為的に3点測定したときの、該3点の平均値を意味し得る。
(2)ガラスコート層3
ガラスコート層3は、非晶質材料(例えばガラス材料)を主体として構成される層(例えば、非晶質材料の含有率が50質量%以上である層)であり得る。本実施形態では、ガラスコート層3を釉薬層としている。釉薬層は、基材の保護などのために基材の表面に形成され得る。釉薬層は、例えば、釉薬を基材の表面に塗布した後に焼成することによって形成される。ここで釉薬とは、焼成されることで酸化物となり、非晶質マトリクスを形成する金属元素および半金属元素を含有する薬剤であり得る。かかる釉薬は、装飾膜の非晶質領域に含まれる元素と同じ元素を含んでいてもよいし、異なる元素を含んでいてもよい。
釉薬層の組成は、ここで開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて、特に限定されず、セラミックス製の基材の保護に使用され得る従来公知の成分を適宜選択することができる。一例として、釉薬層は、Si、Al、Fe、Mg、Na、Zn、K、Ca、Snなどを含み得る。そして、これらの元素は、非晶質酸化物の形態でマトリクスを形成し得る。すなわち、ガラスコート層3には、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(NaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化スズ(SnO)などを含む非晶質マトリクスが形成され得る。なお、ガラスコート層3における各元素の存在比率は、ここで開示される技術を限定するものではないため、詳細な説明を省略する。ガラスコート層3の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、ガラスコート層3の平均厚み)は特に限定されず、例えば10μm~200μmの範囲内とすることができる。
(3)装飾膜4
装飾膜4は、ここで開示されるいずれかの装飾用組成物の焼成体である。かかる装飾膜において、SCI方式で測定したときの該装飾膜4の8°グロス値が500以上であり、かつ、上記8°グロス値を、上記SCE方式で測定したときの上記装飾膜4の明度Lで除した値(8°グロス値/明度L)は11以上であることを特徴とする。ここで開示される装飾用組成物によると、例えば8°グロス値が500以上であり、8°グロス値/明度Lが11以上である、光沢および発色に優れた装飾膜であって、さらに絶縁性に優れた装飾膜を備えたセラミックス製品を得ることができる。
上述したように、装飾膜4の光沢度は、SCI方式で測定した8°グロス値(以下、単に「8°グロス値」ともいう)によって評価することができる。かかる8°グロス値は、光沢度を示す値であり、該8°グロス値が高い程、装飾膜に光沢があると評価することができる。8°グロス値の測定は、例えばJIS Z 8741:1997に基づく60°光沢計に近似するように設計された分光測色計(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製のCM-700dまたはCM-600d等)を用いて行うことができる。なお、SCI(Specular Components Include)方式とは、正反射光を含めて測定する測定方式を意味する。
また、装飾膜4の発色性は、SCE方式で測定された明度L(以下、単に「明度L」ともいう。)によって評価することができる。明度とは、例えばJIS Z 8781:2013に基づくL表色系において、白みの程度を示す値であり、明度Lの値が高いほど、白みが強いことを示す。明度Lの測定は、JIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計(例えばコニカミノルタセンシング株式会社製のCM-700dまたはCM-600d等)を用いて行うことができる。なお、SCE(Specular Components Exclude)方式とは、正反射光を取り除き、拡散反射光のみを測定する方法であり、拡散反射測定方式とも呼ばれる。
ここで、例えば貴金属がアイランド化し、下地の色(例えば、白色)が見えた場合、いわゆる曇り(換言すると、発色の低下)が生じ得る。かかるサンプルにおいては、正反射光を除いた白さを表すSCE-L値が高くなる。一方、アイランド化していないサンプルにおいても、装飾膜の膜厚が小さい場合に、下地の色(例えば、白色)が強くなり、SCE-L値は高くなる。ここで、実際に装飾膜において曇り(発色性の低下)が生じたサンプルでは光沢度が低下する傾向にあるため、8°グロス値が低下するのに対して、膜厚が小さいサンプルでは光沢度が維持される。よって、8°グロス値を明度Lで除した値(8°グロス値/明度L)を測定することで、装飾膜の曇り(発色)を評価することができる。8°グロス値/明度Lの値が高い程、装飾膜における曇りが少ない(換言すると、発色性に優れる)と評価することができる。また、本発明者の検討によると、例えば8°グロス値が500以上であり、8°グロス値/明度Lが11以上である装飾膜は、光沢および発色に優れることが確認されている。
ここで、上記8°グロス値は、好ましくは530以上、600以上、650以上、700以上、750以上であり得る。また、8°グロス値/明度Lは、好ましくは15以上(例えば、16以上)、18以上、より好ましくは20以上、30以上、40以上とすることができる。
また、明度Lは、上記範囲を満たす値であれば特に限定されない。明度Lは、例えば10以上であり、好ましくは20以上、30以上とすることができる。一方、明度Lが高すぎる場合には、上記したように白みが強く曇った色調になりがちである。かかる観点から、明度Lは、好ましくは60以下、55以下とすることができる。なお、上記明度Lの下限、上限は特に制限なく組み合わせることができる。
装飾膜4が好適な色調を呈するためには、JIS Z 8781:2013に基づくL表色系における、色度aおよび色度bが適切な範囲に調整されていることが好ましい。色度aおよび色度bは、色の方向を示しており、+aは赤色方向、-aは緑色方向、+bは黄色方向、-bは青色方向を示す。かかる色度aおよび色度bの測定は、JIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計を用いて行うことができる。特に限定されるものではないが、SCE方式で測定した場合の色度a(以下、単に「色度a」ともいう。)は、例えば-10~20程度(好ましくは、-1~15程度)とすることができる。また、SCE方式で測定した場合の色度b(以下、単に「色度b」ともいう。)は、例えば-10~20程度(好ましくは、-5~15程度)とすることができる。
また、装飾膜4の絶縁性は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、シート抵抗値が1.0×10Ω/□以上である場合が好ましい。かかるシート抵抗値を有する装飾膜によると、電子レンジの加熱によってもスパークしにくいため、好ましい。また、かかるシート抵抗値は、例えば四探針法によって測定することができる。
装飾膜4の厚み(即ち、図1のX方向における幅)の平均値(即ち、装飾膜4の平均厚み)は特に限定されず、例えば50nm~200nm程度とすることができる。
<セラミックス製品の製造方法>
続いて、セラミックス製品1の製造方法について説明するが、製造方法を以下の方法に限定することを意図したものではない。必要に応じて、適宜工程を削除、追加することができる。また、必要に応じて、各工程の順序を入れ替えて実施することができる。
先ず、セラミックス基材2を準備する。続いて、セラミックス基材2の表面にガラスコート剤(例えば、ここでは釉薬)を塗布(付与)し、所定の温度(例えば、50℃~100℃程度)で乾燥させ、所定の温度(例えば、900℃~1300℃程度)で所定の時間(例えば、10~30分程度)焼成処理を行う。なお、予め釉薬層が付与されたセラミック基材を用いることもできる。次に、ここで開示される装飾用組成物を塗布(付与)し、所定の温度(例えば、50℃~100℃程度)で乾燥させた後、所定の温度(例えば、700℃~900℃)で所定の時間(例えば、10~30分程度)焼成処理を行うことで、装飾膜4を備えたセラミックス製品1を製造することができる。ここで、装飾用組成物の調製方法は、この種の組成物の従来公知の調製方法に基づいて行うことができる。後述の実施例では、かかる調製方法の一例を記載している。
ここで開示されるセラミックス製品は、例えば食器を構成することができる。食器は、例えば電子レンジで加熱することが想定されるため、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
<他の実施形態>
以上、ここで開示されるセラミックス製品の一実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は、ここで開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
例えば上記実施形態に係るセラミックス製品1は、セラミックス基材2、ガラスコート層3、装飾膜4のみを備えているが、これに限定されず、例えばセラミックス基材と装飾膜との間や、装飾膜の上に他の層(あるいは膜)さらに備えていてもよい。また、基材として、該基材の表面にマットや下絵付けなどの加飾材が施されたものを用いることもできる。なお、本実施形態に係るセラミックス製品1はガラスコート層3を備えているが、かかるガラスコート層3を備えていない態様とすることもできる。また、セラミックス製品の形状は使用用途に応じて、適宜変更することができる。
以下、ここで開示される技術に関する試験例を説明するが、ここに開示される技術をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
[試験例1]
本試験例では、組成が異なる12種類の装飾用組成物(例1~例12)を調製し、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L)と、絶縁性とを評価した。本試験例では、表1に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。なお、表1中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100モル%としたときの各元素の含有量(モル%)である。
(1)装飾用組成物の調製
各装飾用組成物の調製は、次のとおり行った。先ず、軟膏壺に各種原料を調合した。次いで、株式会社シンキー製の撹拌機(製品名:自転公転あわとり練太郎)を用いて、回転数1800rpmで2分間の混合を行った。適宜、テレピン油等の溶剤やロジン等のバインダ樹脂などを加え、粘度が10~15mPa・sとなるように調整した。このようにして、例1~12に係る装飾用組成物を調製した。以下、ここで用いた貴金属成分およびマトリクス形成成分の原料を示す。以下では、数平均分子量を「Mn」と表記している。なお、下記原料としては、自社製または市販のものを用いた。
Au:Auレジネート(金樹脂硫化バルサム、分解温度:474.6℃)
Pt:Ptレジネート(白金樹脂硫化バルサム、分解温度:401.8℃)
Rh:Rhレジネート(ロジウム樹脂硫化バルサム、分解温度:390.9℃)
Si-1:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩、分解温度:616.8℃)
シリコーン-1:シリコーン樹脂(Mn:1000、末端官能基:アミノ基)
シリコーン-2:シリコーン樹脂(Mn:1000、末端官能基:水酸基)
シリコーン-3:シリコーン樹脂(Mn:3500、末端官能基:メチル基)
シリコーン-4:シリコーン樹脂(Mn:5000、末端官能基:アミノ基)
Bi:Biレジネート(ビスマス樹脂酸塩)
Zr:Zrレジネート(ジルコニウム樹脂酸塩)
Al:Alレジネート(アルミニウム樹脂酸塩)
なお、上述の分解温度は、何れも、株式会社リガク社製の熱重量測定装置(TG-DTA/H)を用いたTG-DTA測定に基づいたものである。具体的には、対象となる金属有機化合物を空気流量が300ml/分の環境に配置し、10℃/分の昇温速度で室温(20℃)から1000℃まで昇温させ、有機物の燃焼(分解)によるDTA曲線の発熱ピーク温度を分解温度とみなした。なお、この発熱ピーク温度では、TG曲線において、有機物の燃焼(分解)による燃え抜けに起因する重量減少が確認される。
(2)各例に係るサンプルの作製
釉薬が表面に施された白磁平板(縦:15mm、横:15mm、厚み:20mm)を準備し、上記のとおり調製した装飾用組成物(例1~12)を白磁平板における釉薬の表面全体に付与(塗布)した。このとき、焼成後の装飾膜が50~150nmとなるように調整した。かかる装飾用組成物の付与には、ミカサ株式会社製のスピンコーター(Opticoat MS-A-150)を使用し、スピン条件を5000rpm、10秒間に設定した。装飾用組成物が付与された白磁平板を60℃のホットプレートで1時間乾燥させたのち、800℃で10分間焼成した。このようにして、例1~12に係るサンプルを作製した。
(3)光沢度および発色性評価
各例に係るサンプルが備える装飾膜の8°グロス値と、L値、a値、b値とをJIS Z 8722:2009に準拠した分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM-700d)を用いて測定した。なお、8°グロス値はSCI方式で測定し、L値、a値、b値はSCE方式で測定した。また、8°グロス値および明度Lから、8°グロス値/明度Lを算出した。結果を表2の該当欄に示した。ここで、8°グロス値が500以上かつ、8°グロス値/明度Lが11以上のものを光沢および発色に優れた装飾膜であると評価することができる。
(4)絶縁性評価
各例に係るサンプルが備える装飾膜のシート抵抗値(Ω/□)を測定した。シート抵抗値の測定は、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計(ロレスタGP MCP-T610)を用いて四探針法により測定した。かかるシート抵抗値が1.0×10Ω/□以上のものを絶縁性が充分である(〇)と評価し、1.0×10Ω/□未満のものを絶縁性が充分ではない(×)と評価した。結果を表2の該当欄に示した。
Figure 2023108414000001
Figure 2023108414000002
表2に示すように、数平均分子量が2500以下のシリコーン樹脂を含み、かつ、マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、シリコーン樹脂由来のSiの含有量は25モル%以上である例2~6、10、12に係る装飾用組成物を用いたサンプルでは、絶縁性と、光沢・発色との両立が好適に実現されることが確認された。また、例5および例6の評価結果からわかるように、シリコーン樹脂の末端官能基の種類による装飾膜の絶縁性、光沢・発色への影響はなかった。一方、数平均分子量が2500よりも大きいシリコーン樹脂を含む例7および8では、白抜けが発生し、光沢・発色に優れないことが確認された。また、例えば例2~6のなかでも、マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、シリコーン樹脂由来のSiの含有量は50モル%以上である例3~6では、絶縁性を有し、かつ、光沢・発色に特に優れる(より具体的には、8°グロス値が600以上であり、8°グロス値/明度Lが15以上である)装飾膜が得られることが確認された。
また、Siレジネート(詳しくは、装飾用組成物において、分解温度TSiが、Auレジネート,Ptレジネート,Rhレジネートの分解温度Tよりも大きくなるように調整されたSiレジネート)のみを用いた例1、9、11では、絶縁性および光沢・発色のいずれか一方に優れないことが確認された。特に限定解釈されることを意図したものではないが、例1では、Ptによるアイランド化が進行して装飾膜が曇ったため、光沢・発色に優れないものと考えられ、例9,11では、Au成分どうしの焼結が過度に進行したため、絶縁性が不十分になったものと考えられ得る。
[試験例2]
本試験例では、組成が異なる2種類の装飾用組成物(例13および例14)をさらに調製し、光沢度(8°グロス値)と、発色性(8°グロス値/明度L)と、絶縁性とを評価した。本試験例では、表3に示す組成となるように、貴金属元素およびマトリクス形成元素を混合した。なお、表3中の各数値は、装飾用組成物に含まれる貴金属元素とマトリクス形成元素との合計を100モル%としたときの各元素の含有量(モル%)である。
(1)装飾用組成物の調製
試験例1の「(1)装飾用組成物の調製」と同様な方法によって、例13に係る装飾用組成物を調製した。Au、Pt、Rh、Si-1、Al、Zr、Biの原料(即ち、Auレジネート、Ptレジネート、Rhレジネート、Si―1レジネート、Alレジネート、Zrレジネート、Biレジネート)は、試験例1の「(1)装飾用組成物の調製」と同じ原料を用いた。以下、本試験例において新たに用いた原料について記載する。なお、下記原料としては、市販のものを用いた。
Si-2:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩、分解温度:350.3℃)
Si-3:Siレジネート(シリコン樹脂酸塩、分解温度:267.5℃)
(2)例13および例14に係るサンプルの作製
試験例1の「(2)各例に係るサンプルの作製」と同様な方法によって、例13および例14に係るサンプルを作製した。
(3)光沢度および発色性評価
試験例1の「(3)光沢度および発色性評価」と同様な方法によって、例13および例14に係るサンプルが備える装飾膜の光沢度および発色性評価を行った。結果を表4の該当欄に示した。
(4)絶縁性の評価
試験例1の「(4)絶縁性の評価」と同様な方法によって、例13および例14に係るサンプルが備える装飾膜の絶縁性の評価を行った。結果を表4の該当欄に示した。
Figure 2023108414000003
Figure 2023108414000004
表4に示すように、Siを構成元素として含有するSi有機化合物(ここでは、Siレジネート)であって、装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、貴金属有機化合物(ここでは、Auレジネート、Ptレジネート、Rhレジネート)の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすSi有機化合物を含んでおり、かつ、マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、Si有機化合物由来のSiの含有量は25モル%以上である例13,14に係る装飾用組成物を用いたサンプルでは、絶縁性および光沢・発色に優れることが確認された。一方、Siレジネート(詳しくは、装飾用組成物において、分解温度TSiが、Auレジネート,Ptレジネート,Rhレジネートの分解温度Tよりも大きくなるように調整されたSiレジネート)のみを用いた例1では、光沢・発色に優れないことが確認された。
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 セラミックス製品
2 セラミックス基材
3 ガラスコート層
4 装飾膜

Claims (8)

  1. セラミックス基材の上に装飾膜を形成する装飾用組成物であって、
    貴金属元素を含有する貴金属有機化合物と、
    少なくともSiを構成元素として含むマトリクス形成元素を含有するマトリクス形成有機化合物と、
    を含み、
    前記マトリクス形成有機化合物として、数平均分子量が2500以下のシリコーン樹脂、および、Siを構成元素として含有するSi有機化合物であって、前記装飾用組成物中の、TG-DTAに基づく、該Si有機化合物の分解温度TSiと、前記貴金属有機化合物の分解温度をTとが、TSi<Tの関係を満たすSi有機化合物のうち少なくともいずれか一方を含んでおり、
    ここで、前記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、前記シリコーン樹脂および/または前記Si有機化合物由来のSiの含有量は25モル%以上である、装飾用組成物。
  2. 前記シリコーン樹脂を含んでおり、前記マトリクス形成元素中のSiの総モル数を100モル%としたとき、前記シリコーン樹脂由来のSiの含有量は50モル%以上である、請求項1に記載の装飾用組成物。
  3. 前記貴金属有機化合物として、Auを構成元素として含む有機化合物および/またはPtを構成元素として含む有機化合物を含む、請求項1または2に記載の装飾用組成物。
  4. 前記セラミックス基材の上にはガラスコート層が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾用組成物。
  5. セラミックス基材と、
    該セラミックス基材の上に形成された装飾膜であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾用組成物の焼成体である装飾膜と、
    を備えたセラミックス製品であって、
    前記装飾膜において、SCI方式で測定したときの該装飾膜の8°グロス値が500以上であり、かつ、
    前記8°グロス値を、SCE方式で測定したときの前記装飾膜の明度Lで除した値(8°グロス値/明度L)は11以上である、セラミックス製品。
  6. 前記装飾膜のシート抵抗値は、1.0×10Ω/□以上である、請求項5に記載のセラミックス製品。
  7. 前記セラミックス基材の上にはガラスコート層が形成されている、請求項5または6に記載のセラミックス製品。
  8. 食器を構成している、請求項5~7のいずれか一項に記載のセラミックス製品。
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